( ´_ゝ`)時間を司るようです(´<_` )
第7話「動」



137 名前: ◆MH/VTCEj3A[] 投稿日:2013/03/13(水) 23:29:19 ID:d4Ct3Ghc0
三。
誰かが笑った。

二。
誰かが振り返った。

一。
誰かが唾を飲み込んだ。

零。
全員が駆け出した。
 
 
 
第7話「動」

138 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/13(水) 23:30:55 ID:d4Ct3Ghc0
( ・∀・)「何をやろうって言うんだい?」

( ´_ゝ`)「俺は過去の力を操れるって言ってたよな」

それってつまりさ、と兄者はモララーと視線を合わせた。

( ´_ゝ`)「対象に何か縁のある物なら、その持ち主の状態探れたりしないかなって」

( ・∀・)「……うーん、物による、かな」

モララーは腕組みをして考えているようだった。
あくまで兄者もモララーも、これまでの受継者のすべてを知っているわけではない。
前例が無ければ未知のことであって、試してみる外無かった。

139 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/13(水) 23:32:49 ID:d4Ct3Ghc0
( ・∀・)「ご主人はもしできたら、その方法で弟くんを探すつもりなんだろう?」

( ´_ゝ`)「ああ。てか、その実験を今からやってみたいわけなんだけど」

( ・∀・)「ぶっつけ本番だねえ」

まあいいや、とモララーは笑った。
モララーの表情に不安や心配は一切ない。
こういうところは好ましいな、と兄者は思った。

( ・∀・)「僕の言った能力応用にあたるのかな、一応。とりあえずやってみようか」

( ´_ゝ`)「ああ」

140 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/13(水) 23:33:46 ID:d4Ct3Ghc0
兄者は言うと、弟者の緑の石を取り出した。
罅が入ったそれは、目にする度に不安がじわりと滲んでくる。
兄者はその気持ちを振り払うように大きく深呼吸した。
自分の青い石はもう皆から見えるように服の下に隠すのはやめた。
その方が何かと気が付きやすいだろうと思ったからだ。

( ´_ゝ`)「我、過去を司る者」

体が何かに包まれたように暖かくなる。
奥底から湧き上がる、高揚するような不思議な感覚がくすぐったい。

141 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/13(水) 23:35:03 ID:d4Ct3Ghc0
( ´_ゝ`)「持ち得る限りの過去を我に示せ」

その言葉を紡いだ瞬間、体がぶわりと謎の浮遊感に襲われた。

(;´_ゝ`)(あ、)

やばい、かも。

平衡感覚が乱れて、ぐらりと床に膝をついた。
モララーの戸惑うような声がする。

( ・∀・)「大丈夫かい、ご主人」

そう言ってモララーが膝をついた兄者を立ち上がらせようと、腕を掴んだ。

143 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/13(水) 23:37:06 ID:d4Ct3Ghc0
その時。

( ;´_ゝ`)「――ッ!?」(・∀・; )

頭の中に、ざらざらとノイズと混ぜながら映像が流れ出した。

剣を支えにしていたクーが、力尽きてどさりと地面に倒れ込む。
それを見ていたデレが、つまらなさそうにクーの体を蹴った。

ζ(゚ー゚*ζ『意外とあっけなかったわね』

(´・ω・`)『……まあ、いいさ。目標は達成した』

144 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/13(水) 23:38:49 ID:d4Ct3Ghc0
男が、気絶したのだろう、ぐったりとした弟者を肩に担いでいた。
力無く垂れる右腕からは血が滴り落ちている。

ζ(゚ー゚*ζ『ショボン、そいつはどうするの?』

そいつ、とデレが顎で指したのは、肩で息をして横たわるモナーだ。
掌を撃ち抜かれ、両手が使えなくなったのだろう。血塗れの両手から、モナーの使っていたチャクラムが落ちている。
モナーは荒い息の合間から、デレ達を強く睨み付けていた。

(´・ω・`)『連れ帰る。治療ができるらしいからな。利用できるだろう』

( ;´∀`)『誰がッ、お前らに……!』

145 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/13(水) 23:40:03 ID:d4Ct3Ghc0
ζ(゚ー゚*ζ『はいはい、後でいいからそういうの。今は、おやすみ』

囁くように言ったデレの「おやすみ」という言葉に、モナーの目が虚ろになっていく。最終的には意識を失った。
「これでよし、っと」デレが楽しげに言い、ショボンと呼ばれた男はモナーを脇に抱えた。

(´・ω・`)『さて、帰るか』

ζ(゚ー゚*ζ『でも帰るってくらいの距離でもないね』

そう言ったデレは、少し歩くとハインの死体を蹴り上げた。

146 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/13(水) 23:41:06 ID:d4Ct3Ghc0
ごろりと転がったハインがいた場所に、デレが屈み込んだ。

ζ(゚ー゚*ζ『開けてー』

その風景とそぐわない、どこか間の抜けたような声に、地面が一度揺れた。
直後、デレとショボンの姿がそこから掻き消える。



がらりと場面が変わって、ひたすら真っ暗な闇が広がった。
誰かの呼吸音が聞こえる。時折げほげほと咳き込むその声に、兄者は聞き覚えがありすぎて肩を震わせた。

147 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/13(水) 23:42:59 ID:d4Ct3Ghc0
( ;´_ゝ`)「弟、者……!」

兄者がそう呟いた直後、ノイズの走る映像がからりと晴れて無くなった。

どっと押し寄せた記憶の波に、兄者はわずかに痛む頭を押さえた。
力を使うのはまだこれが3回目。まだ力の調整がうまくとれていないのかもしれない。

( ;´_ゝ`)「……弟者、が、」

( ;・∀・)「ああ。僕も見えてたよ」

少し困惑の混じったようなモララーの声に、兄者は「え」と驚きで振り返る。
視線を受けたモララーは笑う。

148 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/13(水) 23:44:12 ID:d4Ct3Ghc0

( ・∀・)(……ご主人の伸びしろはどこまであるんだろうねえ)

そう思いながらも口には出さず、モララーは「立てるかい、ご主人」と再度腕を掴んだ。

( ・∀・)「ご主人は力のコントロールを覚えた方がいいかもね。少し暴走してるような気がするんだ」

( ´_ゝ`)「ん、ああ……頑張る」

( ・∀・)「とりあえず、場所は分かったね。あとは護身術か」

未だふらついている兄者を見て、モララーは「多分今は無理だね」と言った。
反論ができるわけもない兄者はその言葉に素直に頷く。

149 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/13(水) 23:45:27 ID:d4Ct3Ghc0
( ・∀・)「まあ、体を鍛えるのはまだ難しいと思うから。今はその場しのぎだけど銃を渡そうと思ってる。
照準を合わせて引き金を引く。簡単に見えるけど難しいから、少し練習してもらうよ」

( ´_ゝ`)「銃、か。エアガンでBB弾撃ったことあるくらいだ」

( ・∀・)「BB弾とは懐かしいねえ。もう随分と長いこと実弾しか撃ってないよ」

( ;´_ゝ`)「怖いこと言うな!」

はは、とモララーは嘘か本当かわからない笑顔で笑った。

150 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/13(水) 23:46:39 ID:d4Ct3Ghc0
 
 
 
 
 
未だ青い瞳をした兄者は、ドクオを見て「あ」と声を漏らした。

( ´_ゝ`)「そういえば、治せるのに治してなかった」

('A`)「ん? ああ」

兄者はドクオの腹に触れ、詠唱した。青い光がじわりとドクオを包み込み、収束する。
兄者が手を離せば、傷は綺麗さっぱり無くなっていた。
できた、と呟いた兄者をじっとドクオは見つめている。

151 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/13(水) 23:48:22 ID:d4Ct3Ghc0
('A`)「……本当に、兄弟なんだな」

( ´_ゝ`)「よく言われる。そっくりだろ」

ξ ゚听)ξ「そういえば、一回主を未来の受継者と間違えてたわね」

ツンが言ったその言葉に、ドクオは「ああ」と頷いた。

('A`)「お前らは会ってないから分からないだろうが、そっくりだぞ」

( ´_ゝ`)「特に双子ってわけでもないんだけどな……俺の方が2歳上」

152 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/13(水) 23:49:33 ID:d4Ct3Ghc0
雑談に突入するかと思われた話題は、「しぃ」とモララーの声でぷつりと切れた。

( ・∀・)「ご主人に銃の指導を頼みたいんだ。いいかな?」

(*゚ー゚)「うん、いいよ。最初は銃だろうなって思ってたの」

兄者は意外だと感心した。
しぃは治療担当とだけ思っていたのだ。穏やかで優しい彼女が銃を使うところを想像できない。
声にこそ出さないが、兄者の思いが分かったらしい。しぃは兄者に向かって微笑むと――手に持った銃をちらつかせた。

153 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/13(水) 23:51:43 ID:d4Ct3Ghc0
( ;´_ゝ`)「え!?」

(*゚ー゚)「気付かなかったでしょう?」

しぃが銃を取り出すところが全く見えなかった。
しぃは悪戯が成功したと喜ぶように、無邪気な笑みを浮かべて銃を腰に戻した。
上着でよく見えていなかったが、腰にはちゃんとホルダーが着いていた。

( ,,゚Д゚)「居場所は分かったが、どうするんだ?」

( ・∀・)「できる限り早く、未来の受継者の奪還だね。その後はやってから考える」

('A`)「行き当たりばったりだな」

( ^ω^)「始まりも突然だったからしょうがないお」

154 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/13(水) 23:52:58 ID:d4Ct3Ghc0
「というわけでご主人」モララーがくるりと兄者に向き直る。

( ・∀・)「君が如何に早く銃を使えるようになるか、だよ。それによって突入日が決まる」

( ´_ゝ`)「!」

先ほどの映像が蘇る。

自分の体も見えないような闇。
その中に、弟者はいつからいるのか分からない。

けれど、そう長く居させるわけにはいかないのだ。

155 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/13(水) 23:54:06 ID:d4Ct3Ghc0
兄者は緑の石の罅を撫でた。撫でたからといって直るわけでもない。
だが、この罅を一刻も早く無くしたいと思った。

兄者はしぃに頭を下げた。

( ´_ゝ`)「ご指導よろしくお願いします!」
 
 
 
 
 
第7話「動」・終



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