( ´_ゝ`)時間を司るようです(´<_` )
第23話「不」



482 名前: ◆MH/VTCEj3A[] 投稿日:2013/04/26(金) 21:59:30 ID:U/AltkVA0
 
 
 
 
 
見えないで、見えないで。
 
 
 
第23話「不」

483 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/26(金) 22:02:00 ID:U/AltkVA0
( ゚д゚;)「――ッ!」

咄嗟の判断で顔を後ろに引いたミルナの、黒い前髪がはらはらと宙を舞った。
とん、とたたらを踏むように後ろに数歩よろけて、はっとしたように顔を上げた先にはしぃの放った銃弾が迫っていた。

( ゚д゚;)「っ、」

顔を逸らしたミルナの、頬に銃弾が掠めて後ろの壁に当たる音が聞こえた。
掠っただけでも効果はあったらしい。
傷跡が無い頬を片手で押さえてぐらついた途端、ミルナの体から紅い靄が浮かび上がった。
自分から立ち上る靄に驚いたのか、ミルナは自分の手を見つめて一瞬硬直する。

('A`)「貰ったッ!」

ドクオの声に振り返ったミルナの体には、既に矢が刺さっている。

484 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/26(金) 22:03:22 ID:U/AltkVA0
ミルナの上腕に刺さった矢は、痛みをもたらして顔を歪ませる。
だがその瞬間、矢から腕に緑の光が流し込まれたのを見て、ミルナが瞠目した。

( ゚д゚ )「――ぁ、」

これまで呻き声1つ上げることの無かった、幼い少年の声が微かに漏れる。
その声を聞いたか否か、モララーは床を蹴るとサーベルを持たない右手でミルナの首を掴んで床に押し倒した。
背よりも先に後頭部を床に強かに打ち付けて、ミルナの瞳がぎゅっと瞑られる。

( ・∀・)「しぃ」

(*゚ー゚)「うん」

485 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/26(金) 22:05:30 ID:U/AltkVA0
痛みで鈍くなった抵抗をもろともせず、モララーは短くしぃを呼んだ。
細めた目のままモララーの手に爪を立てたミルナは、だがしぃに撃たれるや否や瞳から紅い色を無くして気を失う。

( ´∀`)「……やったモナ?」

( ,,゚Д゚)「ああ、おそらく」

モナーとギコがそう会話を交わした横で、モララーはミルナの意識が無いことを確認すると、掴んでいた首を離して立ち上がった。
「行くよ」その一言だけで分かったらしい、ドクオとギコは走り出したモララーの後を追った。
モナーがミルナに、ドクオの矢が刺さった傷の治療を施す。

(*゚ー゚)「デレちゃん!」

486 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/26(金) 22:06:35 ID:U/AltkVA0
しぃが入った扉の近くで壁に寄りかからせたショボンと共にいたデレを呼ぶ。
デレはしぃの声にすぐ反応して振り返った。

(*゚ー゚)「この子、お願いしても平気? いざとなったら守ってもらいたいんだけど」

ζ(゚ー゚*ζ「……大、丈夫」

未だ後ろめたい気持ちがあるのだろう。
どこか気まずそうに、視線を合わさずに答えるデレは小走りでやって来ると床に倒れたミルナを抱え上げる。
抱え上げる際に一瞬だけ合った視線に、しぃが笑顔を向けるとデレは声を詰まらせて、何か言いたげに目を細めた。
何かと問おうとしたが、その前にデレが背を向けてしまう。

戻っていくデレの背中を見つめて、

487 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/26(金) 22:09:57 ID:U/AltkVA0
( ;´_ゝ`)「ブーンッ!!」

兄者の叫び声が聞こえた。
 
 
 
 
 
('A`;)「間に、合えっ!」

内藤がロマネスクに弾き飛ばされた直後、ドクオがクロスボウから矢を射る。
見もしないその矢を、ロマネスクはナイフを振っただけで全て弾き落とす。

( ・∀・)「はぁあああっ!!」

モララーの青い瞳が、ロマネスクの紅い瞳と交錯する。

488 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/26(金) 22:11:07 ID:U/AltkVA0
リーチの短いナイフとサーベルとではモララーの方に利がある。
過去の力を帯びた刀身で少しでも効果があれば、とモララーは刃を突き出した。

ロマネスクが、モララーの突撃に何の抵抗も見せずに笑った。

( ;・∀・)「!」

ずぶり。
ぬかるんだような音がして、モララーのサーベルがロマネスクの腹に吸い込まれる。
攻撃を与えたはずのその感触に、モララーは嫌な汗がこめかみを伝うのをやけに鮮明に感じた。
 
 
 
( ФωФ)「愚か、愚か」

489 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/26(金) 22:12:27 ID:U/AltkVA0
 
 
 
ゆっくりと響く、ロマネスクの低い声が耳を打つ。
モララーは刺し貫いたサーベルの刃を抜こうと、サーベルを引いた。
だが、サーベルは抜けない。

( ФωФ)「中でも、受継者は特別愚かであるな」

モララーのサーベルを、紅い縄状のような光――例えるなら、紅い蛇。
それが伝ってきて、モララーの手首に到達し。
蛇の鼻先が、モララーの顔を向いてぴたりと止まって。

( ;・∀・)「――ッ!!」

首を逸らしたモララーの、肩を大きく食い破って、背後に居たギコへ、しぃへ、次々と襲い掛かっていった。

490 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/26(金) 22:13:55 ID:U/AltkVA0
( ;´_ゝ`)「みんなァっ!!」

(´<_`; )「びくともしない……!」

耐え切れず表情を歪ませて守護者を見守る兄者の後ろで、弟者が棒を壁にぶつけるも効果は無い。
兄者の銃で撃てば、とも考えたがもし破れずに跳弾したらと考えると下手に撃てない。
守護者を襲った紅い蛇は何か仕込んでいるのか、モララー達は攻撃を受けるなり崩れ落ちてまともに動くことができなかった。
兄弟の目には、床に刺した両手剣を支えにやっと立てているようなギコが映っていた。

ζ(゚ー゚*ζ「『消えろ』ッ!」

遠くから発せられた、凛とした声が響く。
デレも守護者の血を引いている。
微弱ながらも青い光を帯びて、デレの衝撃波がロマネスクの力で動けない皆を助ける――はずだった。

491 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/26(金) 22:16:05 ID:U/AltkVA0
守護者達に降り注ぐはずだった青い衝撃波が、飛んできた紅い光に全て消し去られる。
それを見たデレはびくりと肩を震わせた。

( ФωФ)「……ほう」

ζ(゚ー゚*;ζ「……!」

ロマネスクの視線がデレに向く。
ひたりと真っ向から見つめられたデレが、恐怖からか目を大きく見開いた。

( ФωФ)「愚かすぎてかける言葉も無い」

( ´_ゝ`)「やめろ……」

492 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/26(金) 22:17:11 ID:U/AltkVA0
( ФωФ)「さらばである」

( ;´_ゝ`)「やめろおおおおおッ!!」

兄者が激しく拳を打ち付け、ドームの中で叫んだ。

その目の前でデレが、紅い蛇に襲われて床に倒れ込む。
見ていることしかできず、悔しさで爪が皮膚に食い込んで血が流れた。

( ФωФ)「さあ」

倒れるデレを見届けたロマネスクが、兄弟達の方へと向き直った。
弟者が睨み付けながら棒を構え、兄者も銃を構える。
動くことのできないドームの中で、歩いてくるロマネスクの足音を聞き続けるのはまるで死刑執行の前に覚悟させるかのようだった。

493 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/26(金) 22:19:08 ID:U/AltkVA0
( ФωФ)「これで最後である、憎き時間の受継者よ」

( ;´_ゝ`)「……はっ」

兄者が、屈するものかと強い意思を秘めた瞳で冷や汗をかきながら笑った。

( ;´_ゝ`)「お前の望みなんか、叶えるもんか!」

( ФωФ)「――屑が」

ロマネスクが兄者に手を伸ばす。
その瞬間に紅いドームが無くなったのを晴れた視界で確信して、兄者は引き金を引いた。
タァン、その音と共に反動で揺れた銃をしかと感じた兄者の銃弾はロマネスクの掌を貫通する。
その貫通した衝撃で止まったロマネスクを、兄者の後ろから跳んだ弟者が棒で首を狙って振りかぶった。

494 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/26(金) 22:20:18 ID:U/AltkVA0
だがいつまでも止まるロマネスクでもない。
貫通した掌の血で赤い穴から、紅い蛇が現れる。

その紅い蛇が、弟者の脇腹を食いちぎった。

(´<_`; )「う、が……ッ!」

( ;´_ゝ`)「弟者あっ!!」

眼前で、弟者の緑の石に罅が入る。
血を散らして床に落ちた弟者に気を取られ、兄者は自分の首に伸びる手に気が付かなかった。

( ;´_ゝ`)「っ、う!」

495 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/26(金) 22:21:13 ID:U/AltkVA0
容赦無い力で首を掴まれ、足が空を掻く。
ロマネスクの手によって全体重を支えられた兄者は、圧迫される呼吸に酸欠で視界が霞む。
酸素を求めてぱくぱくと金魚のように口が開閉を繰り返す。

更にロマネスクが、持っていた紅いナイフを兄者の腹を刺した。
茶の瞳が突如走った痛みに見開かれ、ごぷりと口の奥から血がせり上がる。

(;*゚ー゚)「……ッある、じ……!」

床に倒れて立ち上がれないしぃがもどかしさに拳を握った。

496 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/26(金) 22:22:39 ID:U/AltkVA0
だが体全体に燃え上がるような熱が、手足は感覚が無くなるほど冷たくなっている。
声を出すのも、体を動かすのも激しい激痛が走る中で、それでも主がむざむざと殺されかけるのを見つめることしかできない。

( ; _ゝ )「か……っぁ……ッ」

兄者の腕が、とうとう力無くだらりと垂れる。
ぴしりと罅が入った青い石が、瞳を閉じた兄者の胸で淡く光を持ち始めた。

( ;・∀・)「何故、能力が……!?」

モララーがそう口にした途端、カッと強すぎる青い光が目を灼いた。
首を掴んでいたロマネスクの手を、青い1本の青い線が伝って床へと一直線へ向かう。
その線が床に到達すると、床一面が青い光を放った。

497 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/26(金) 22:23:56 ID:U/AltkVA0
( ;・∀・)「ご主人!?」

ぐったりと目を閉じた兄者に返事は無い。
驚いたように瞠目するロマネスクが床を振り返ると、床がさっと色を変えた。

視界が赤い液体で染まる。
手に持ったナイフから、血が伝う。
目の前には自分がたった今刺した人だったものが転がっている。

( ФωФ)「……やめろ……」

ロマネスクが唸るように低く呟いた。

( ;ФωФ)「やめるのであるッ!!」

498 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/26(金) 22:25:27 ID:U/AltkVA0
ナイフを振るう。人が倒れる。
路地裏に追い込んだ女は、その青い瞳を怯えさせていた。

( ;ФωФ)「吾輩の記憶を、覗くなァッ!!」
 
 
 
『生とは何か、そう言ったな』
 
 
 
青い瞳の女の胸を刺したところで、緑の瞳の男が現れる。
涙を流しながら女を抱きかかえて名を呼んで、その光景を煩わしいと思い踵を返した時だった。
足首が何かに掴まれて、振り返る。

499 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/26(金) 22:27:24 ID:U/AltkVA0
『いいだろう』

緑の瞳がぎろりと睨み付けてくる。
怨嗟の念がありありと見えた。

『いいだろう、殺人鬼』

男は笑った。
憎い憎いと語る、凄惨な笑みだった。

『そんなに分からないなら、永遠に与えてやるよ』

ロマネスクの手が、掴む力を失くした。
支えを無くした兄者の体が床に落ちる。
すぐ近くに落ちた兄者の体に、声をかけながら弟者が手を伸ばした。

(´<_`; )「あに、じゃ」

500 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/26(金) 22:28:46 ID:U/AltkVA0
( ;´_ゝ`)「だめ、だ、弟者」

血でうまく話せない兄者が、それでも弱々しく譫言のように呟いた。

( ;´_ゝ`)「今、俺に、さわるな……ッ!!」

その声が聞こえた時には既に遅かった。
弟者の手が、投げ出された兄者の手に触れる。
その瞬間、再び床が青く発光して新たな記憶を流し始めた。
 
 
 
 
 
第23話「不」・終



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