■( ´_ゝ`)時間を司るようです(´<_` )
└第24話「故」
- 505 名前: ◆MH/VTCEj3A[] 投稿日:2013/04/29(月) 22:35:04 ID:rRgcVZ/M0
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全てを知ってなお。
第24話「故」
- 506 名前: ◆MH/VTCEj3A[] 投稿日:2013/04/29(月) 22:37:12 ID:rRgcVZ/M0
- l从・∀・ノ!リ人『あにじゃ、あにじゃ』
幼い少女の声が聞こえる。
少女は笑っていた。
けれどその大きな眼に、光を反射して煌めく涙を湛えていた。
l从・∀・ノ!リ人『おっきいあにじゃもちっちゃいあにじゃも、ぜったいぜったい幸せになるのじゃ!』
指切り、と差し出された小指に、自分の指を絡ませたのを。
その少女の――妹者の、背後で。
母者がナイフの切り傷だらけで戦っていたことを。
父者がもう保たないと叫んでいたのを。
姉者が妹者の名前を呼んだのを。
- 507 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/29(月) 22:38:22 ID:rRgcVZ/M0
- 妹者が、笑って自分達から離れて行ったのを。
l从・∀・ノ!リ人『さよならなのじゃ、あにじゃ』
酷く泣きそうな声音だったことを。
(´<_` )「――妹、者」
( ´_ゝ`)(ああ、)
- 508 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/29(月) 22:39:38 ID:rRgcVZ/M0
- 思い出させてしまった、と。
兄者は失血で回らない頭の中で、鮮明にそう思った。
兄弟は最初から孤児だったわけではない。
父と母と、姉と妹と。一緒に暮らしていた。
もうずっと昔。封じ込めた記憶の中。
その家族を殺したのは、目の前にいるロマネスクだ。
(´<_` )「――ッ」
弟者が、声にならない声で瞠目したままぼうっと床を見つめていた。
突然の事実に心が追いつかないのは当然のことだ。
兄者自身はもう前に知っていたから、1人で考える時間もあった。だが、今は。
- 509 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/29(月) 22:41:04 ID:rRgcVZ/M0
- 家族の仇を目の前にしている、今は?
(´<_` )「……悪い、兄者」
( ´_ゝ`)「ぇ、」
弟者の手が、兄者の手に触れる。
能力を暴走させたままの兄者の過去の力は、最早詠唱も要らず勝手に発動する。
現に、触れただけで弟者の脇腹を一瞬で回復させる。
それと同時に弟者自身も能力を使ったらしく、兄者の腹にあった刺し傷がみるみるうちに治っていく。
(´<_` )「俺にはあいつの目的が分からない」
( ;´_ゝ`)「弟者、」
(´<_` )「だから、」
- 510 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/29(月) 22:42:21 ID:rRgcVZ/M0
- (´<_` )「あいつの望みがなんだろうと、俺はあいつを殺す」
( ;´_ゝ`)「弟者ッ!!」
言うなり、弟者は床に映し出される記憶に気を取られていたロマネスクに飛びかかった。
反応が遅れたロマネスクが、それでも振り上げたナイフで弟者の棒を受け止めた。
余程強く打ち込んだのか、ロマネスクの腕が衝撃で一瞬揺れる。
(´<_` )「ロマネスク」
そう呟くくらいの小さい声で、弟者は名を呼んだ。
煩わしげに表情を歪めたロマネスクの目の前で、突如弟者の棒が緑色の光を帯び始める。
緑の光が、棒を受け止めているロマネスクのナイフをも包んでいく。
( ;ФωФ)「!?」
- 511 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/29(月) 22:43:39 ID:rRgcVZ/M0
- (´<_` )「お前が何の目的で兄者を殺そうとするのかは理解できない」
驚きから弟者を弾いて、後ろによろけるように離れたが既に遅かった。
ナイフから伝った光が、手を、腕を、肩を。
次第にスピードを増して、緑の光はロマネスクの全身を覆って行った。
弟者はその光景を黙って見つめている。
緑に輝く瞳は、酷く冷めた色をしていた。
( ;ФωФ)「何、を……!?」
(´<_` )「だから」
自分の体を覆う緑の光に、ロマネスクが困惑したように自分の掌を見つめた。
- 512 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/29(月) 22:45:41 ID:rRgcVZ/M0
- 兄者も守護者も、弟者が何をしようとしているのか分からず呆然とそれを見ている。
(´<_` )「俺は、お前の未来を否定する」
( ;ФωФ)「――ッ!」
弟者の言葉がきっかけだったように、緑の光が一瞬で緑の炎へと変貌した。
全身に纏っていた光が発火して、体を焼くのにロマネスクは悲鳴を上げることもできずにその場に膝を付いた。
( ;´_ゝ`)「弟者……!」
(´<_` )「兄者はお前を助けようとしてたかもしれない。だが、俺は」
立ち上がって止めに行くことができなかった。
治された腹の痛みが、残って動くことができなかった。
それでも、兄者は。
- 513 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/29(月) 22:47:51 ID:rRgcVZ/M0
- 自分の弟が人を殺めるところを、ただ見ていることなどしたくなかった。
(´<_` )「俺には、自分の家族の仇を生かす優しさなんてない」
緑の炎が小さくなっていく。
炎に巻かれていた、体と思われる黒い部分が灰になることもなく消えていく。
そして最後には、何も残らなかった。
( ´_ゝ`)「ロマネスクは、ひたすら『生』がどうしてあるのか、『生』とは何なのかを探求してた」
- 514 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/29(月) 22:49:10 ID:rRgcVZ/M0
- 呆気なく全てが終わった。
兄者と弟者が能力を以て守護者達の傷を治している最中、兄者はぽつりとそう零した。
( ´_ゝ`)「142年前の27人目、つまり過去の受継者。
その人を殺した時、未来の受継者から『生』の探求の為に『生』を押し付けられた」
兄者の脳裏に浮かんだのは、脱獄してから自殺を試みてもすぐに回復する自分に発狂するロマネスクの姿だ。
どれだけ自分の首を刺しても、痛みも何も無い。
少量の血が流れ、だがすぐに塞がるという事実。
途方に暮れるよりも、受継者への憎しみが勝った。
( ´_ゝ`)「俺は、そうなってしまってもロマネスクを」
(´<_` )「助けたかった、のか?」
- 515 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/29(月) 22:50:05 ID:rRgcVZ/M0
- ( ´_ゝ`)「……助ける、とは少し違ったかもしれないけど」
それでも、と兄者は呟いて目を閉じた。
( ´_ゝ`)「人並みの死は、与えてやりたかったと思うよ」
(´<_` )「……」
弟者が口を噤んで視線を逸らしたのを、兄者は違うのだと言いたかった。
俺は、
( ´_ゝ`)(俺は、お前に人1人を殺めたっていう事実を背負わせたくなかった)
そう言えなかったのは、彼に家族という記憶を与えたことへの負い目か。
- 516 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/29(月) 22:51:55 ID:rRgcVZ/M0
- もう、兄者には分からなかった。
( ´_ゝ`)「モララー」
( ・∀・)「うん?」
ロマネスクという脅威の存在がいなくなっても、守護者達は変わらず傍にいた。
弟者はまた学校に通いだしている。
突然の失踪に戸惑っていた学校側は、これまた突然の帰還に騒然とした。
が、世間の波もそう長く続くわけではないようだ。
- 517 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/29(月) 22:54:26 ID:rRgcVZ/M0
- 兄者も職場に復帰して、以前と変わらぬ生活を送っている。
( ´_ゝ`)「ちょっとさ、知りたいことがあるんだ」
( ・∀・)「うん」
( ´_ゝ`)「だからさ」
( ´_ゝ`)「飛空艇の書庫、入れてもらってもいい?」
( ・∀・)「……ご主人」
- 518 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/29(月) 22:55:35 ID:rRgcVZ/M0
- モララーは変わらぬ笑みを顔に張り付けて、それでも視線は怪訝そうだった。
( ・∀・)「別に書庫に入るのはいいんだけどさ」
真っ直ぐ正面から見据えてくる漆黒の瞳は、兄者の心を見抜こうとして、できずに細められる。
それを受け止める兄者は、口元に淡い笑みを浮かべていた。
( ・∀・)「何を、考えてる?」
( ´_ゝ`)「……何も、考えてないよ」
第24話「故」・終
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