■( ´_ゝ`)時間を司るようです(´<_` )
└第22話「最」
- 464 名前: ◆MH/VTCEj3A[] 投稿日:2013/04/25(木) 22:06:32 ID:KaiFeRLs0
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掬い上げたのは誰か。
第22話「最」
- 465 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/25(木) 22:08:19 ID:KaiFeRLs0
- ('A`)「……子供?」
ぎい、と音を立てて向こうから開けられた扉。
向こうから扉を開けたのは小さな子供だった。
まだ8、9歳くらいに見える子供は、じとりとどこか薄暗い瞳で兄者を見つめていた。
言葉も発さないまま、見つめてくる子供が僅かに動いたと思った瞬間。
( ;・∀・)「ご主人ッ!」
( ;´_ゝ`)「う、わっ!?」
モララーが子供と兄者の間に走り割り込んだ。
モララーが駆け寄ってくるのが目に入った時、子供の手にいつからか握られていた何かが襲い掛かる。
青く光を放つサーベルを突き出した。そのサーベルに、子供から放たれた鎖のようなものが絡み付くのを感じ取ったモララーは素早く絡み付くそれを振り払う。
- 466 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/25(木) 22:10:10 ID:KaiFeRLs0
- 全員が武器を構えて警戒するその間、子供は静かに自分の手元に戻った鎖を見て一つ深呼吸をした。
子供が手にしているのは、その小さな体に不釣り合いなほど大きい乳切木だ。
長めの棒の一端に鎖が付いており、その鎖の先に分銅が付いている。
上から吊るせば乳切木の全長と子供の身長は同じくらいではないのかと思うほどだった。
( ФωФ)「……手間が省けて何よりである」
子供の居る向こう側、扉の先にある部屋でロマネスクはそう言って立っていた。
( ФωФ)「こんばんは。忌々しき者達よ」
( ;´∀`)「ロマネスク……!」
- 467 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/25(木) 22:11:35 ID:KaiFeRLs0
- ロマネスクはこちらを見て薄く笑うだけだ。
子供がくるりと兄者達に背を向けて、ロマネスクの元に軽い足音を立てて駆け寄っていく。
握った乳切木の鎖を床にずるずると引きずりながら、子供は駆ける。
( ФωФ)「ご苦労である、ミルナ」
( ゚д゚ )「……」
ロマネスクが頭を撫でるのを、子供は擽ったそうに片目を閉じて無言で受け入れる。
一見平和に見えるような光景も、それをやっている者の本質を知っていれば息を飲むのも無理は無かった。
( ・∀・)「ご主人。もしかして、あの子供がまだ会ってない1人ってやつかい」
- 468 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/25(木) 22:14:05 ID:KaiFeRLs0
- ( ;´_ゝ`)「……認めたくないけど」
('A`)「アレ、本当に子供なのか?」
( ´_ゝ`)「俺が見たのは、ロマネスクがあの子供を拾ったところ。と、あの武器を渡したところだ」
(*゚ー゚)「子供にまで戦わせるなんて……」
しぃがぽつりと呟いた後に、ミルナと呼ばれた子供が兄者達の方を振り返った。
まだ幼いせいかやけに大きく見える瞳は、いつの間にか先ほどまでの茶色ではなく紅色に輝いていた。
( ФωФ)「吾輩はあまり気が長い方ではない。吾輩が用があるのは過去の受継者だけ。
ミルナ、まず守護者から片付けるのである」
- 469 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/25(木) 22:15:29 ID:KaiFeRLs0
- ( ゚д゚ )「……」
ミルナはロマネスクの言葉に何も喋らずに頷いただけだ。
それでもミルナは再び引きずった鎖の音を響かせながら、兄者達の方へと向かい歩いてくる。
その様子を真正面から見据えながら、モララーはサーベルを肩に担いだ。
( ・∀・)「ご主人、油断しない方がいい。後ろにはあのロマネスクが控えてるんだ、何かされてもおかしくない」
( ´_ゝ`)「ああ」
モララーの声に応えるように銃をその手に構えた兄者が、いつでも撃てるようにと引き金に指をかける。
その指をかけた、かちりという小さな音。
その音を合図にしたように、カッと紅い目を見開いたミルナが一跳びでモララーと兄者の間に割って入った。
- 470 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/25(木) 22:17:02 ID:KaiFeRLs0
- ( ;´_ゝ`)「早……ッ!?」
( ;・∀・)「ご主人!!」
瞠目する兄者に、ミルナが振るった乳切木の鎖がうねりながら狙いを定める。
一瞬で眼前に迫った鎖に、兄者が訪れるであろう衝撃に反射的に目を瞑った。
(´<_`; )「こ、のッ!」
ひゅ、と兄者の鼻先に弟者の棒が掠める。
それに驚きで声を上げそうになる前に、棒に鎖が絡み付くのを見て「弟者!」と兄者は叫んだ。
ミルナの鎖に絡み取られた棒が自由に動くわけがなく、弟者は思い通りに動かぬ棒に舌打ちする。
ふと棒を捕らえたミルナと目が合った瞬間――持っていた棒に引きずられる形で、乳切木を振るったミルナによって弟者の体は大きく動かされて兄者にぶつかった。
子供の力如きに体を引きずられた弟者と皆が驚きに目を瞠った。
- 471 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/25(木) 22:19:01 ID:KaiFeRLs0
- ( ФωФ)「ああ、そういえば受継者と守護者を引き離すようにも言ってあったか……お利口であるな」
( ;・∀・)「クソッ!」
兄弟と守護者達の間に、ミルナは立っている。
弟者の棒から鎖を外したミルナは、最早気にしないとでも言うように兄弟達に背を向けた。
( ;´_ゝ`)「なん、で……ッ!?」
疑問から声を発した兄者の言葉が、すぐに止まった。
兄弟達がぶつかって倒れ込んだ床から、ぶわりと紅い禍々しい光が湧き上がった。
紅い光は驚きで動けない兄弟達をドーム状の形で包み込む。
あまりに一瞬のことで、反応が遅れた守護者達が兄弟を呼んだ。
( ;´_ゝ`)「なんだよ、これっ!」
- 472 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/25(木) 22:20:23 ID:KaiFeRLs0
- どん、と内側から兄者がドームを叩いた。
ドームは硬く、兄者が叩き付けた拳にもびくともしなかった。
むしろドームを叩いた時にした音が重く鈍く、よほど強固で破れそうにないものだと無意識のうちに悟ってしまう。
ドームの壁は全体が紅いものの、透明にはなっている。
だからこそ眼前で繰り広げられる、参戦することもできず閉じ込められた状態に唇を噛むことしかできなかった。
ミルナの小さな体が、守護者達の間で跳ねる。
( ;´_ゝ`)「みんな……!」
(´<_`; )「……!」
- 473 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/25(木) 22:21:41 ID:KaiFeRLs0
- 守護者達に想いを馳せる兄者の後ろで、弟者は振り返って息を詰めた。
ドームに向かって歩いてくるロマネスクに、鋭い視線を投げた。
(*゚ー゚)「ギコ!」
( ,,゚Д゚)「ああ!」
ミルナの体を狙って放たれた弾丸は、宙に舞った鎖によって弾かれる。
間を置かず横から駆け込んでくるギコに視線だけちらりと遣って、一歩踏み外すように後ろにずれてギコの攻撃を躱した。
不意に横に乳切木を薙ぐ。
するとドクオの放ったはずの矢が2本3本と鎖に絡め取られて、次々に床に落ちて行った。
かと思えば自分の前に斜めに構えた棒に、チャクラムが真正面からぶつかって床に当たりながらモナーの元へ滑っていく。
- 474 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/25(木) 22:23:24 ID:KaiFeRLs0
- ('A`;)「化け物か……!?」
ドクオが呟いたのも無理はない。
子供が1人に対してこちらは大人が5人。
一度に全員を相手にしているのにも関わらず、大したダメージを与えることができない。
それがロマネスクが与えた力であることは明白だった。
少しでも兄者達の方に視線を遣ったモララーは、視界の端に飛んできた鎖の先の分銅にサーベルを振るった。
間近でした耳障りな音にモララーは眉を顰めた。
ほんの一瞬でも気を逸らしただけでこの有様なのだから、恐ろしいものだと苦笑が漏れた。
ミルナの紅い瞳が真っ直ぐにモララーを捉える。
真横から飛んできたチャクラムを鎖で絡め取ってからモナーの方へと投げ返し、モララーに向かって来ようと足に力を込め、モララーもそれに応戦しようとサーベルを構え直した時だった。
- 475 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/25(木) 22:25:03 ID:KaiFeRLs0
-
ξ ゚听)ξ「『止まれ』ッ!!」
( ゚д゚ )「!」
突如横からぶつかってきた青い衝撃波に、ミルナの体が軽々と吹っ飛ばされた。
体重を感じさせないほどに宙に浮いたミルナは、されど空中で体勢を立て直すために一回転して床に降り立つ。
そして衝撃波を発せられた扉の方をぎろりと睨み付ける。
ξ ゚听)ξ「お待たせ!」
( ^ω^)「遅くなったお!」
- 476 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/25(木) 22:26:26 ID:KaiFeRLs0
- 中に入ってきたツンと、内藤がそう高らかに言った。
後から続いてきたデレが、その肩に気を失ったショボンの腕を回している。
( ・∀・)「ツン、内藤! ご主人達の救出に回れ!」
ξ ゚听)ξ「分かった! そっちは!?」
( ・∀・)「こっちはこっちで片付ける!」
モララーは叫ぶような声で指示を出すと、サーベルを握り直した。
ミルナは先ほどのツンの衝撃波の余韻か、立ってはいたが一度ふらりと体勢を崩してまた立て直した。
向こうのペースが崩れた、とモララーは確信する。
サーベルを一度振る。
サーベルの刀身に帯びた青い光が一際強くなり、モララーの目が青く変わった。
( ・∀・)「反撃させてもらうよ――クソガキが」
- 477 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/25(木) 22:28:08 ID:KaiFeRLs0
-
( ;^ω^)「主イィッ!!」
( ;´_ゝ`)「ブーン! ツン!」
ξ ゚听)ξ「『切り裂け』ッ!」
走りながら発動したツンの衝撃波が、青い円盤が2つ軌道もばらばらにロマネスクの元へと飛んで行った。
追撃を狙う内藤が、青い光を帯びたナックルダスターを嵌めた拳に力を込めて跳躍した。
- 478 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/25(木) 22:29:14 ID:KaiFeRLs0
-
( ФωФ)「甘い」
だが、それはロマネスクの退屈そうな声と共に全て切り捨てられる。
ツンの円盤は、ロマネスクが刹那のうちに掌に現した紅黒いナイフによって1つは半分に、もう1つは受け流されたことによってツンの元へと跳ね返った。
切羽詰まったような声音で「『砕けろ』!」と発動された青い小さな礫によって砕かれる。
追撃を狙っていた内藤が、ツンの攻撃が跳ね返されたことに唇を噛みながら拳をロマネスクにめり込ませる――はずだった。
- 479 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/25(木) 22:31:30 ID:KaiFeRLs0
- ナックルダスターが、ナイフ1本に軽々と受け止められてびくともしない。
しんと静まったその静寂の内に、内藤が大きく目を見開いてロマネスクは厭な笑みを浮かべた。
静寂で止まった時がその瞬間に還元されたように、内藤の体が紅い波動に大きく弾かれて床に叩き付けられた。
( ;´_ゝ`)「ブーンッ!!」
兄者の声に、ロマネスクは嗤った。
第22話「最」・終
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