■( ´_ゝ`)時間を司るようです(´<_` )
└第20話「飽」
- 421 名前: ◆MH/VTCEj3A[] 投稿日:2013/04/15(月) 23:37:51 ID:HqygebcE0
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もう飽き飽きだと男は笑った。
第20話「飽」
- 422 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/15(月) 23:39:05 ID:HqygebcE0
- ( ,,゚Д゚)(1,2,3)
弾数を数えながら、ギコは銃弾から逃れてリロードの機会を狙っていた。
ショボンが手にするのはIMI デザートイーグル。
普通のものよりも反動が大きいそれをいともたやすく扱い、正確に狙ってくるのだからたまったものではない。
自動拳銃の中ではメジャーだが、そもそも大型獣相手に作られた銃だということを思い出すとゾッとする。
(´・ω・`)「……意外に素早いなあ」
ショボンがそう零しながら、また引き金を引く。
その銃口から放たれた銃弾がギコの眉間を狙い――咄嗟に振った両手剣に弾かれ、遠く離れた床に耳障りな音を立てて転がった。
- 423 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/15(月) 23:40:13 ID:HqygebcE0
- ( ,,゚Д゚)(8)
あと1発。
そう思い両手剣を固く握り直し、床を蹴った時だった。
(´・ω・`)「どうせ、数えていたんだろう?」
ショボンが、そう言って笑った。
いつの間にか、ショボンの片手はズボンのポケットへと伸びている。
そのポケットから、ゆっくりと取り出されたのは。
ゆらりと紅い光を放つ、液体が入った小瓶だった。
( ;,゚Д゚)「ッ!」
- 424 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/15(月) 23:41:22 ID:HqygebcE0
- ショボンが小瓶を床に叩き付ける。
割れた小瓶から紅い蒸気が立ち上り、ショボンの体を覆って見えなくした。
僅かに漂う臭気から、それがまた毒なのだということを知らせてくる。
( ,,゚Д゚)「しかも、新手か……ッ!」
部屋全体に漂っていたのが花なら、こちらは菓子。
胸焼けするような、甘い匂いに眉を顰めた。
刹那。
( ;,゚Д゚)「ぐッ」
紅い霧から真っ直ぐに飛んできた銃弾が、ギコの肩を撃ち抜いた。
貫通したが故にパッとその場に舞った血に、背後から兄者の声が聞こえた。
- 425 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/15(月) 23:42:29 ID:HqygebcE0
- (*゚ー゚)「ギコ!」
しぃの声が、響く。
その直後に聞こえた銃声が1つ、2つ。だがそれが目の前ではなく、背後からのものだ。
しぃが撃った弾は紅い霧の中に吸い込まれていく。
(*゚ー゚)「ギコ」
( ,,゚Д゚)「ああ」
とん、としぃが銃を持っていない手でギコの肩を叩いた。
その一瞬触れただけで、ギコの血に濡れた傷口がみるみるうちに塞がっていく。
だがその代わりに、しぃが叩いた掌に持っていた青い石の破片が黒い砂となって床に落ちて行った。
( ,,゚Д゚)「ロマネスクに何らかの力を与えられたのは毒だけらしい。銃弾は何の変わりも無い」
(*゚ー゚)「分かった」
- 426 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/15(月) 23:43:51 ID:HqygebcE0
- そう言うしぃの顔色は、青い。
それを一瞥してから、そうだろうなとギコはすぐに前に意識を集中させた。
( ,,゚Д゚)(俺が異常なだけだ)
衰えることなど無い。
体に叩き込まれた、あらゆる毒への耐性など。
(´ ω `)「あーあ」
ショボンのどこか残念そうな声と共に、姿が見えないほどの霧が晴れる。
そして現れた光景に、瞠目した。
しぃが撃った弾は2発。
その2発は、確かにショボンの体に当たる――はずだった。
- 427 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/15(月) 23:45:12 ID:HqygebcE0
- 一層濃い紅の霧が、野球ボールのような大きさで2つ、ショボンの前に浮いている。
ショボンが銃を持たない左手を振ると、その霧は晴れて包まれていた2発の銃弾が床に落ちた。
(´・ω・`)「弾の無駄遣いだね。勿体ない勿体ない」
(*゚ー゚)「……じゃあ大人しく当たってよ」
(´・ω・`)「嫌に決まってるじゃない、かッ」
しぃを狙って銃声が響く。
咄嗟の判断で左に飛んだしぃの、元の胸の位置を銃弾が通り抜けて行った。
( ,,゚Д゚)(9!)
ギコは元から、しぃを狙われたことを気にしなかった。
むしろチャンスだと思ったほどだ。
- 428 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/15(月) 23:46:21 ID:HqygebcE0
- きっかり9発。つまり、弾倉が空になった。
リロードの機会を待っていたギコは自分に銃口が向けられていないのを好機と見、走り出した。
一際強く床を蹴り上げ、跳躍する。
頭の上に振り上げた両手剣を、自分が落ちる勢いに乗せ、ショボンの頭めがけて振り下ろした。
( ,,゚Д゚)「あああッ!!」
ギコの目が青く光る。
ショボンの目が頭上から迫るギコを映して。
(´・ω・`)「甘いよ」
ギコの振り下ろした剣を、紅い霧が受け止めた。
まるで鉄の壁に叩き付けているような、押してもびくともしない霧に舌打ちする。
- 429 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/15(月) 23:47:34 ID:HqygebcE0
- 剣を押し付けたままの霧に、足を付けた。剣を受け止めたままの霧は鉄の壁同然のままだということを利用して、床に見立てて蹴って再び宙に飛んだ。
その間にリロードを終わらせて向けられた銃口に、ギコは剣を盾にした。
ギコを狙うショボンへと、しぃが銃弾を撃ち込む。
ショボンの視線がギコから外れて、しぃが撃った銃弾が再び紅い霧に包まれた。
ショボンが視線を逸らしたその隙に、ギコが着地して体勢を整える。
だが、次の瞬間。
ギコは血を吐き出した。
( ;,゚Д゚)「ぐ、げほ……ッ」
(;*゚ー゚)「ギコ!」
- 430 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/15(月) 23:48:43 ID:HqygebcE0
- 突然の吐血でほんの一瞬、意識がショボンから外れてしまう。
その一瞬が、命取りだった。
(´・ω・`)「さよなら」
ショボンの撃った弾が、ギコの胸へと吸い込まれていった。
ギコが仰向けに床に倒れる。
しぃはショボンがそれに気取られているうちに発砲する。2発。
だがまたもや止められ、更に弾切れを起こしてリロードしようとしたしぃの前腕をショボンが撃ち抜いた。
持っていた銃を取り落とし、少し離れた場所に銃が転がった。
迂闊に動けば撃たれるであろうという状況に、しぃが動くことを止めてショボンを睨み付ける。
(´・ω・`)「君はそこで待ってなよ。先に彼を殺すから」
- 431 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/15(月) 23:49:52 ID:HqygebcE0
- (;*゚ー゚)「っ」
ショボンの言葉に動きたくなるのを抑えて、しぃはぐっとその場に留まった。
だがショボンの視線がしぃから外れたところでそっと石の破片を取り出し、撃ち抜かれた前腕を治療する。
あとはどうやって銃を回収するか、ショボンから目を離さずしぃは機会を伺った。
倒れ込んだギコは苦しげな表情でごぽり、と引き続き吐血している。
撃たれた胸だけでなく、とうとう回った毒の為でもあった。
(´・ω・`)「僕、君にとても興味があるんだけど」
(´・ω・`)「君、どうしてここまで平気だったんだい? これだけの時間ならもうとっくに死んでるはずなんだけど」
- 432 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/15(月) 23:51:29 ID:HqygebcE0
- (´・ω・`)「君だけ、他の奴らと違って治療も何も受けずここまできたよね? すごいなあ、すごいなあ」
(´・ω・`)「どれだけの毒に耐えられるか、試してみたいものだね」
( ;,゚Д-)「……るせえ」
ギコが苦悶で歪めた表情の中で、片目を開けてショボンを見る。
その瞳は変わらず青色のままだった。
( ;,゚Д-)「ガタガタ抜かすな、ゴルァ」
(´・ω・`)「それを言うならこっちのセリフだよ」
- 433 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/15(月) 23:52:12 ID:HqygebcE0
- ショボンが言いながら銃口をギコに向ける。
乾いた音が響いて、ギコの左腕がびくりと波打って血を散らした。
くぐもった呻き声が喉の奥で消えた。
暗殺任務を失敗して、路地裏に怪我をしたまま倒れていたのはもう随分と前のこと。
そして、それをしぃに助けてもらったのも。
暗殺者として、あらゆる技術を身に付けさせられた。
毒の耐性も、その1つに入る。
- 434 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/15(月) 23:53:06 ID:HqygebcE0
- 相手を殺す手段を己で知るべし。それに何も疑問を感じなかった。
毒を飲んで、死ぬギリギリまで耐えて、解毒剤を飲んで、また毒を飲んで。ずっと繰り返し。
やがて解毒剤がいらなくなるまで。そうやって体に覚えさせる。
こんなところで役に立つなど思っていなかった、とギコは思う。
暗殺者に失敗など許されない。失敗すれば死。
つまり、自分を助けたしぃも危ない。
だから教えた。けれど、ある程度は既に知っていた。
(*゚ー゚)『私、守護者の一族なの』
彼女の言うことは分からなかった。
だが、彼女に連れられてその守護者とやらに会いに行って。
- 435 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/15(月) 23:54:49 ID:HqygebcE0
- ( ・∀・)『おやおや、君も僕らの同胞じゃないか。初めまして』
( ,,゚Д゚)『……は?』
( ・∀・)『はは、君は分からなくても、僕には分かるよ。君は守護者の一族だ』
(*゚ー゚)『本当に?』
じゃあおそろいだね、と。
隣からこちらを覗き込んで、しぃがはにかむように笑ったのを。
覚えている。
( ,,゚Д-)「……まあ、これまで飲んだことのない毒だったからか」
ギコは笑った。
- 436 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/15(月) 23:56:11 ID:HqygebcE0
- ( ,,゚Д゚)「でも、もう戦える」
(;´・ω・`)「な……ッ!?」
言った直後、ギコは跳ね上がるように起き上がって青く光る両手剣を横に薙いだ。
ショボンの両足の脛を斬り付ける。横一直線に引かれた赤い線から小さく血が噴き出して、ショボンがその場に膝を付いた。
( ,,゚Д゚)「しぃ!」
ギコの声に応えるように、銃声が1つ。
青い光を纏った弾丸が、ショボンの後頭部に当たった。
びく、と大きくショボンの体が揺れる。だが、傷は負っていない。
- 437 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/15(月) 23:57:55 ID:HqygebcE0
- ( ;´_ゝ`)「あれは……!?」
( ・∀・)「しぃのあの弾は、人を傷付けるものじゃない」
(´<_` )「……過去の力、か」
弟者が呟いたのを合図にしたように、部屋の隅にあった液体が紅い色を無くして透明に変化していった。
そしてショボンの体を取り巻いていた紅い霧も無くなっていく。
( ・∀・)「しぃは元から石の扱いが上手くてね。石に僅かに残っている力を、自分の銃弾に纏わせるのも器用にやってのける」
(´・ω・`)「……どうして」
ショボンが小さく呟いて、体を大きく傾かせた。
白い床に横に倒れて、駆け寄ってきたギコとしぃを虚ろな瞳で見つめる。
- 438 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/15(月) 23:59:34 ID:HqygebcE0
- ( ,,゚Д゚)「しぃが撃った弾なんか放っておけばいいものを、お前はわざわざ振り返った。
つまり、攻撃は視認しないと防げないんじゃないかと思ってな」
(´・ω・`)「違う、そうじゃない。毒だ」
消えそうな声で問いかけるショボンに、ギコは納得がいったようにああ、と返事した。
( ,,゚Д゚)「吐血はしたが、つまりそれは死ぬ直前までいったってことだ。後は体が勝手に死なないように耐性を作るようになってる」
(´・ω・`)「……ふざけた体だね」
(*゚ー゚)「ねえ、1つだけ聞いていい」
倒れたショボンの前に、しぃはしゃがみ込む。
近くなった視線で、しぃは落ち着いた声で問うた。
- 439 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/16(火) 00:00:57 ID:NT.TMUhM0
- (*゚ー゚)「どうして、ロマネスクに協力したの」
(´・ω・`)「……は、そんなの」
(´・ω・`)「人生に飽きたからだよ」
そう言って、ショボンは意識を失った。
('A`)「こいつはバーの元マスターだって言ったよな。で、飽きたっていうのは心当たりがある」
改めての治療を施しながら、何もすることのないドクオがそう言った。
- 440 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/16(火) 00:02:30 ID:NT.TMUhM0
- ('A`)「こいつには妻子がいたらしい。だが、交通事故で2人とも亡くして、その後すぐにバーを閉めてるんだ」
(´<_` )「……過去を恨む理由は十分だな」
('A`)「だろ? 一気に人生のどん底に突き落とされた。孤独感に苛まれる人生に飽きた、そういうことなんだろう」
ギコの治療が終わったのを見計らって、ドクオが立ち上がる。
気を失ったショボンを見て、「どうするよあれ」と指差した。
( ・∀・)「……後から来るであろう内藤達に回収させようか。今連れて行っても邪魔だろうし」
- 441 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/16(火) 00:03:40 ID:NT.TMUhM0
- ( ´_ゝ`)「なあ、それって結局面倒くさいだけじゃ」
( ・∀・)「よーし行くよー」
第20話「飽」・終
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