( ´_ゝ`)時間を司るようです(´<_` )
第21話「独」



445 名前: ◆MH/VTCEj3A[] 投稿日:2013/04/22(月) 23:04:22 ID:TTEyE1WQ0
 
 
 
 
 
ずっと待ってた。
 
 
 
第21話「独」

446 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/22(月) 23:05:56 ID:TTEyE1WQ0
('A`)「……モナー」

部屋に入った途端、後ろにいたドクオがそう呟いた。
その声にはっとしたように奥を凝視すれば、確かに1人。
次に続く扉の前に、俯いている男がいる。その手には紅い光を帯びたチャクラムが握られていた。

見覚えのあるチャクラムに、一同は自然と身構えた。

( ´∀`)「排除排除排除排除排除排除排除排除」

('A`)「うるせえ」

( ;´_ゝ`)「ドクオ!?」

448 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/22(月) 23:08:53 ID:TTEyE1WQ0
小さく舌打ちして前に進み出たのはドクオだ。
手に緑の光を収束させて現したクロスボウをしっかと握ると、立ち止まってモナーに向ける。

止まっていた面子の中から1人動けば的になるのは必然と言えるだろう。
排除という言葉をひたすら繰り返すモナーは、チャクラムを持つ手を大きく後ろに引きつけてから音がするほどの速さでチャクラムを放った。
轟、音を立てて丸い刃の輪がドクオに襲い掛かる。

('A`)「はっ」

クロスボウを構えて照準を合わせていたドクオが、鼻で笑った。

449 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/22(月) 23:10:03 ID:TTEyE1WQ0
('A`)「遅いんだよ、モナー」

言うなり、ドクオはクロスボウの引き金を引いた。
ぱっと見ただけでは攻撃性に欠けると見えるかもしれない。
そんなクロスボウから放たれた矢は、ドクオが引き金を引いただけで緑色の光を帯びた一羽の鳥へと変わった。
矢は迫りくるチャクラムの刃に命中する。
バランスを崩して勢いを失ったチャクラムは相手を傷付けることなく、更に持ち主の手にも戻らず床に耳障りな音を立てて落ちた。

攻撃を防がれ、その上武器をも失ったモナーは一瞬の動揺の後腰に手を伸ばした。
見れば腰には短銃が収められているホルダーがある。
それを阻止しようと銃を手に取ったしぃよりも、やはりドクオの方が行動が早かった。

450 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/22(月) 23:11:16 ID:TTEyE1WQ0
ほんの一瞬。まさに一瞬だ。
モナーが手を伸ばした一瞬に、ドクオのクロスボウの矢がモナーの頬のすぐ側を掠めて行った。
それにはっとしたように顔を上げたモナーは、いつの間にか目前にまで駆け寄っていたドクオに胸倉を引っ掴まれてそのまま足払いをかけられる。
床に響く人1人分が倒れた音に、一同はドクオの早業に目を剥いた。

成す術も無く床に倒されたモナーの上に、ドクオが馬乗りになる。
胸倉を掴んで上げ、紅黒い瞳を真っ直ぐと正面から見据えた。

('A`)「モナー本来の動きじゃない。体がうまく動かないってのが見て取れるんだよ。

451 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/22(月) 23:13:05 ID:TTEyE1WQ0
そうだろ、モナー」

( ;´∀`)「……う、」

ドクオがそう呼んだ時、モナーの瞳に一瞬だけ緑の色が過った。

( ;´∀`)「う、ガああアァァアああああああッ!!!」

('A`)「そこに居んだろ、モナー!! 簡単に乗っ取られてんじゃねえよ!!!」

( ´_ゝ`)「弟者!」

(´<_` )「ああ!」

ドクオの言葉に苦しむように苦悶の声を上げ、モナーは耳を塞ごうとする。

452 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/22(月) 23:14:12 ID:TTEyE1WQ0
モナーを取り戻そうと呼び掛けるドクオの後ろで、兄者がふと気が付いて弟者を呼んだ。
伝えようとしたが、考えていることは同じだったらしい。
兄弟は頷くと、ドクオ達に駆け寄った。

暴れるモナーの体に触れると、詠唱を始める。
ぶわりと青と緑の光が広がって、4人を包み込んだ。

兄者が「モナーがロマネスクの力を流し込まれた」という過去を抹消し、
弟者がそれを手助けする為に主である自分の力を送り込む。

モナーの身の内に蟠るロマネスクの力を少しずつ消していく。
それが、2人が言葉を交わさずとも決めて思ったことだった。

453 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/22(月) 23:15:26 ID:TTEyE1WQ0
モナーのきつく閉じられた瞳が不意に大きく見開かれる。
その瞳の色が、紅と緑でちかちかと点滅した。

('A`)「モナー!!」

ドクオは呼ぶ。
ひたすらにモナーの名前を呼ぶ。

('A`)「戻って来い、モナー!!」

(´<_`; )「……帰って来い……ッ」

じわり、弟者の額に脂汗が浮かぶ。
モナーに送り込む力は、あまりスムーズに中へと進んではくれない。

454 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/22(月) 23:16:35 ID:TTEyE1WQ0
それほどまでにロマネスクから与えられた力が、追い出されないようにと躍起になっているようで、弟者は吐き気がするくらいだった。

('A`)「モナー!!!」

( ;´∀`)「……ぁ、」

モナーの苦しみに満ちた声が、急にふつりと止んだ。
これまでの苦しみが嘘のように、突如静寂に満ちた空間を壊したのは、この空間を作り上げたモナー自身だった。

( ´∀`)「……ああ……」

耳を塞いでいた手がだらりと落ちる。

455 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/22(月) 23:17:35 ID:TTEyE1WQ0
ドクオが掴んだ胸倉だけで上体を起こされたモナーは、目を閉じていた。

( ´∀`)「……夢、を、見てたモナ……」

そうぽつりと響いた部屋は、皆口を噤んでいる。
何故か、この静寂を破ってはいけないような気がしたからだ。
熱に浮かされておぼろげな頭を働かせたモナーが、言葉を紡いでいるからこそ。

邪魔してはいけない空間だと。

( ´∀`)「守護者の、みんなが、いて。僕らは主を、主達を狙う輩を監視してて。
      ある日、主の部屋に侵入されるモナ」

ぐ、と弟者が喉の奥に言葉を飲み込んだ。

456 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/22(月) 23:18:57 ID:TTEyE1WQ0
( ´∀`)「そこから、みんな、死にかけて。ジョルジュが死んで、ハインが死んで、ドクオも死にかけてて」

モララー達が歩み寄る。
モナーが想いを繋げて言葉にするのを、黙って聞きながら兄弟に一歩引くようにジェスチャーした。

( ´∀`)「クーが死んで、主も死にかけてて。でも、僕は利用されるモナ」

('A`)「……ああ」

( ´∀`)「気持ち悪い力を流し込まれて、底無し沼にはまるみたいな。
ずっと出てこれないで沈むような、そんな夢だったモナ」

('A`)「……そうか」

457 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/22(月) 23:20:54 ID:TTEyE1WQ0
( ´∀`)「僕、だけ。僕だけモナ」

そう言って、モナーは目元を自分の手の甲で隠した。

(  ∀ )「みんな死んで、死にかけてたのに、僕だけ。大した怪我もせずに、1人だけ」

('A`)「ああ」

(  ∀ )「……もう……1人は、嫌モナ」

(  ∀ )「死にたく、ないモナ」

('A`)「モナー」

ドクオが掴みあげていた胸倉を下ろして、モナーの背中が床に付いたのを確認して手を離した。
馬乗りだった体勢を止め、モナーの体の上からどく。

458 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/22(月) 23:22:32 ID:TTEyE1WQ0
('A`)「夢じゃないんだよ、モナー。お前が見てた夢、全部夢じゃないんだ」

(  ∀ )「……わかってるモナ」

目元に押し付けていた手の甲をぐい、と乱暴に移動させる。
手の甲でなく腕で目元を隠して、モナーは引き攣った笑いを浮かべた。

( ;∀ )「わかってる、モナ……」

僅かにずれた腕から覗く瞳は、澄んだ森の色をしていた。
 
 
 
 
 
('A`)「うっし、大丈夫だな」

459 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/22(月) 23:23:52 ID:TTEyE1WQ0
多少赤く腫れた目元で、それでもモナーは何も言わずにチャクラムを拾い上げて戻ってきた。
チャクラムが淡い緑色を帯びる。
戦う意思が損なわれていない、その精神力の強さにふと弟者はモナーに視線を遣った。
瞬間、目が合う。

(´<_` )「……」

( ´∀`)「……主」

言葉に詰まる弟者を知ってか知らずか、モナーは弟者と目を合わせて呼んだ。

( ´∀`)「よくぞご無事でいてくれたモナね」

(´<_` )「……お前が見張ってた癖によく言う」

460 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/22(月) 23:25:07 ID:TTEyE1WQ0
( ´∀`)「そうモナ?」

(´<_` )「ああ」

そう答えて笑うと、モナーも笑った。
痛みを乗り越えた先の強さを持った笑顔だった。
 
 
 
 
 
( ,,゚Д゚)「……これ、どういうことだ」

扉を見たギコがそう呟いた。
扉、らしきもの。は、ある。が、取っ手も鍵穴も何も付いていないのだ。

461 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/22(月) 23:26:22 ID:TTEyE1WQ0
どうやってモナーがこの扉を越えてきたかなど、覚えているわけもない。
首を傾げながらモララーがその扉に触れて――敵に遭遇したように飛び退いて扉から距離を取った。

( ・∀・)「ご主人、扉から目を離すな!」

( ;´_ゝ`)「!?」

モララーの声に身構えながら扉を見て、兄者は瞠目した。
 
 
 
 
 
第21話「独」・終



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