■( ´_ゝ`)時間を司るようです(´<_` )
└第19話「助」
- 400 名前: ◆MH/VTCEj3A[] 投稿日:2013/04/13(土) 00:26:45 ID:VuKQcKCQ0
(*゚ー゚)『ねえ、あなた、大丈夫?』
少女が青年を見つけたのは、本当に偶然だった。
路地裏で腹から血を流して倒れていた青年を見つけたのは。
( ,,゚Д゚)『……構うな、ガキ』
(*゚ー゚)『どう見たって同い年くらいだと思うんだけどな』
( ,,゚Д゚)『……』
- 401 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/13(土) 00:28:27 ID:VuKQcKCQ0
- 少女が興味津々に青年の顔を覗き込む。
青年は鬱陶しいとでも言うように眉を寄せると、視線から逃れるように顔を背ける。
青年は白いシャツを血で汚していた。少女は汚れない制服を着ていた。
少女は楽しげに笑うと、屈んでいた体を戻して言った。
(*゚ー゚)『ねえ。助けてあげようか』
( ,,゚Д゚)『……は?』
彼女が手を差し伸べた頃。
第19話「助」
- 402 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/13(土) 00:30:06 ID:VuKQcKCQ0
- ('A`)「しぃ?」
内藤とツンが残ったことによって後ろに回ったしぃは、前にいたドクオに声をかけられてはっと顔を上げた。
('A`)「大丈夫か? 疲れたのか」
(*゚ー゚)「ううん。ちょっと思い出してただけ」
('A`)「? そうか」
大丈夫だそうだ、ドクオが前に声をかけたことから自分のせいで歩みが止まっていたのだと気付く。
それに申し訳なく思いながら、しぃ自身も大丈夫だと言おうと前を向いた時だった。
- 403 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/13(土) 00:31:09 ID:VuKQcKCQ0
- ギコと、目が合った。
(*゚ー゚)「……大丈夫」
そう言って笑いかけると、一同は大丈夫だと判断したらしい。
皆が前に向き直る中で、ギコだけが名残惜しげに「しぃ」と声に出さず象ってから前を向いた。
(*゚ー゚)(大袈裟だなあ)
しぃは先ほど思い出していた自分達の出会いと照らし合わせながら、独りでに笑って居た。
( ´_ゝ`)(そういえば、2人共恋人だったよなあ)
- 404 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/13(土) 00:32:07 ID:VuKQcKCQ0
- 早々に前に向き直っていた為、ギコがしぃに声無く呼びかけるのを見た兄者は素直にそう思った。
内藤とツンも付き合っている。
守護者の一族も惹かれ合うようにできているのだろうか、と考えてから心の中で「リア充爆発しろ」と静かに呪った。
( ,,゚Д゚)「扉、あったぞ」
ギコの言葉に、はっと身を引き締める。
前回のこともあって警戒しているらしい。ギコは両手剣を手に握ると、ドアノブを掴んで押し開けた。
部屋の内装はデレがいた所と変わらない。白い壁、天井、床。
- 405 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/13(土) 00:33:36 ID:VuKQcKCQ0
- (´<_` )「……なんだか、甘い匂いがしないか?」
そう口にしたのは弟者だった。
その言葉にこくりと兄者も頷いた。
部屋に入った時からずっと、花の芳香をめちゃくちゃに詰め込んだような甘ったるい匂いがしていた。
甘い、を通り越して吐き気さえ覚えるような。そんな匂いだった。
( ´_ゝ`)(……吐き気?)
ふと、兄者は自分が思ったことに疑問を持った。
吸い続ければ鼻は慣れていくものだ。だが、じわりじわりと吐き気は頭を出してきている。
- 406 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/13(土) 00:34:53 ID:VuKQcKCQ0
- 部屋の中に視線をぐるりと巡らせて。
部屋の隅に、割れたワイングラスとぶちまけられた紅い液体が、見えた。
兄者が一点を見つめていることに気が付いたのだろう、モララーが「ご主人?」と声をかけて視線を追って――
( ;・∀・)「ご主人! 自分達の周りの空気を元通りにすることはできるかい」
( ;´_ゝ`)「え? あ、ああ」
突如叫んだモララーに肩を揺らしながらも、兄者はぺたりと床に手を着けた。
やけに切羽詰まったような表情が気になった。
- 407 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/13(土) 00:36:07 ID:VuKQcKCQ0
- ( ´_ゝ`)「我、過去を司る者。過去在った姿へ戻れ」
そう呟くと、兄者の体から発生した青い光が、兄者を中心にドーム状に広がった。
それは緩やかな風を起こしながら、範囲を拡大して――だが、一番遠くにいたギコを包んだところで、紅い火花を散らしてその進みを止めてしまった。
( ;´_ゝ`)「え!?」
( ・∀・)「……やっぱりか」
ち、と舌打ちしたモララーはそのあと小さく咳をした。
( ・∀・)「部屋の隅に落ちているあれは、きっと毒だ」
- 408 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/13(土) 00:38:09 ID:VuKQcKCQ0
- ( ´_ゝ`)「毒?」
( ・∀・)「そう。ただの液体かとも思ったけど、微妙に紅く発光してる」
言われて全員の視線がワイングラスに向いた。
床に染み込み始めた液体は、時折宝石のようにきらりと紅い光を一際強く放っていた。
( ・∀・)「長時間吸っていれば、きっと死ぬだろう」
( ´_ゝ`)「範囲がこれだけしか広がらないなら、俺と一緒に移動するのが無難だけど……」
( ,,゚Д゚)「いや」
ギコが警戒するように、視線をぎろりと向けている。
- 409 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/13(土) 00:39:37 ID:VuKQcKCQ0
- ( ,,゚Д゚)「そういうわけにもいかないらしい」
ギコが見つめている先の扉が、向こうから開けられた。
(´・ω・`)「やあ」
男は、平然と毒で満ちた空間に何も着けずに歩いてきた。
(´・ω・`)「初めましての方が少ないけど、一応自己紹介でもしておこうか。
僕はショボン、今日は君達を殺す為にこの部屋を仕掛けさせてもらった」
(´・ω・`)「……ああ、不思議そうな顔をしてるね。でも、当然だろ?
毒を作った奴が、自分の毒にやられるわけがないじゃないか」
(´・ω・`)「今日の毒が一番よくできたと思うんだ。少し吸っても体に残る。
確実に今、どこかの細胞が死滅していってるだろうね」
- 410 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/13(土) 00:40:35 ID:VuKQcKCQ0
- (´・ω・`)「さて。君達はずっとそこから動かないつもりかな?
的が止まっているとすごく撃ちやすくて結構だけれど」
( ・∀・)「……よく喋るねえ、君」
そう言いながら、モララーの後ろでは既に兄者が動いている。
最初の一説だけ詠唱した兄者は、青い瞳でショボンの様子を伺いながら皆を治療するタイミングを計っていた。
それを見倣うように、しぃも小さな麻袋から石の破片を取り出して、それでも動き出せずに止まっている。
さてどうしようかと、モララーは思考を巡らせた。
確認を取っていないが、遠距離攻撃である兄者・しぃ・ドクオがこのドームの中から攻撃すれば穴が開いてしまうだろう。
そうすれば毒が中に流れ込んでしまう。
- 411 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/13(土) 00:42:18 ID:VuKQcKCQ0
- かといって、このまま動けずにいればショボンの言う通り一方的に蜂の巣にされるに違いない。
( ,,゚Д゚)「珍しく真剣な顔してんじゃねえぞ、ゴルァ」
背後から肩に手を置かれたと同時に聞こえた声に、モララーは特に驚いた表情は見せなかった。
だが、少し眉を寄せて問いかける。
( ・∀・)「君の体験したことのないものだろうし、大分ブランクがある。それでもいいのかい」
( ,,゚Д゚)「らしくないって言ってんだ、モララー」
それは酷い、とモララーは笑った。
そのモララーの横をすり抜けて、歩き出すギコに兄者が呼びかける。
( ;´_ゝ`)「ギコ!? やめろ、出るな!」
- 412 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/13(土) 00:43:51 ID:VuKQcKCQ0
- ( ,,゚Д゚)「大丈夫だ、主」
兄者の制止にそう答えながら。
ギコは、兄者の形成したドームから1人抜け出した。
( ,,゚Д゚)「毒には慣れてる」
(´・ω・`)「……へえ」
ショボンがそう呟きながら、愉しげに笑んだ。
そして、取り出した銃をギコに向けて見せる。
(´・ω・`)「君が倒れるのはいつだろうね」
( ,,゚Д゚)「ほざいてろ」
- 413 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/13(土) 00:45:22 ID:VuKQcKCQ0
- タァン、ショボンの銃口が火を噴いた。
それを剣で弾いて、ギコはショボンへ駆けて行った。
ギコがショボンの相手を務める間、全員の体から毒を取り除いた兄者は安心から息を吐いた。
その兄者の体を治療して、麻袋の中身を確認したしぃは立ち上がった。
(*゚ー゚)「じゃあ、私も行ってくるね」
( ;´_ゝ`)「は!?」
- 414 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/13(土) 00:46:54 ID:VuKQcKCQ0
- 当然とでも言うように言い放ったしぃに、兄者が驚いて声を上げる。
弟者も声こそ上げなかったが瞠目してしぃを見つめていた。
引き留められたしぃは首を傾げている。
( ;´_ゝ`)「いや、ギコもだけど大丈夫なのか!?」
(*゚ー゚)「? うん。石の残りもまだあるし」
(´<_`; )「おい」
石の残りを確認した上で行くということは、毒を治療する必要があるということだ。
けれどしぃは平然とした顔で、AMTバックアップDA45をその手に取る。
(*゚ー゚)「ギコが行ってるんだもの。私が行かなきゃ」
- 415 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/13(土) 00:48:09 ID:VuKQcKCQ0
- ( ;´_ゝ`)「いや、でも……!」
( ・∀・)「大丈夫だよ、ご主人」
しぃを後押しするように続けられたモララーの言葉に、兄者が言葉を詰まらせる。
それを見て、モララーがしぃを振り返ると頷いた。
しぃも同じように頷いて、ドームの外へと一歩踏み出した。
( ;´_ゝ`)「一体どうして、」
( ・∀・)「2人はね」
モララーが、静かに言う。
- 416 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/13(土) 00:50:46 ID:VuKQcKCQ0
- ( ・∀・)「互いが視認できる場所にいれば、いつも一緒に戦うんだよ」
『ねえ。助けてあげようか』
過去の自分が投げかけた言葉に、しぃは笑った。
今思うと随分と偉そうな口を叩いたものだ、と笑いは治まりそうにはない。
笑って戦場に行くなど、異質でしかないだろう。
それでも、しぃは笑顔を浮かべた。
- 417 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/13(土) 00:51:37 ID:VuKQcKCQ0
- (*゚ー゚)「今、助けに行くよ」
第19話「助」・終
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