( ^ω^)剣と魔法と大五郎のようです

二十一話

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94 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/09/29(日) 17:30:06 ID:SkkVWD8E0
 
〈;;(。个。)〉 「各員、配置についたようだな」

 サロンシティの中心部から北へ数キロ。
 霊峰イチ山に連なり、オーマ湖を囲う森の中に、その男はいた。

 『逆さ男』

 顔を隠すために着けた仮面が、笑顔の男を逆さまにした模様のためそう呼ばれるようになった。
 自分で選んだものでは無い。
 他人に与えられたものを、ただそのままつけた。

 顔を隠せれば、なんでもよい。
 ただ、『不慣れな職人が間違って模様を描いた不良品』という由来は、少しだけ気に入っている。

(//‰ ゚) 「……よくもまあ、これだけの人数が集まるもンだ」

〈;;(。个。)〉 「……」

(//‰ ゚) 「そこまでして潰す必要があンのかね」

〈;;(。个。)〉 「……」

(//‰ ゚) 「睨むなよ、『逆さ』。仕事なンだからしっかりやるさ」

〈;;(。个。)〉 「……そうしてほしいものだ」

96 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/09/29(日) 17:32:49 ID:SkkVWD8E0

 ヨコホリが禁恨党のアジトの一つを襲撃してから、二日が経った。
 成果はいまいちではあったがそれでいい。

 目的は、禁恨党の頭に血を登らせること。
 そしてそれを自覚させ、彼らの持ち味であるフットワークを鈍らせること。

〈;;(。个。)〉 「ィシ=ロックスは力だけの女でない。故に、そのいくらか賢いオツムに、自分の動きを制限してもらう」

(//‰ ゚) 「あー、やだやだ。お前は、もう少し敵をバカにしてやれよ」

〈;;(。个。)〉 「……俺は臆病なんでな」

 恐らく、目的は十分に達成しているだろう。
 あの襲撃から数度、あえて情報を流したうえで散発的に騒動を起こしているが、禁恨党の反応は鈍い。
 楔を打つことは叶った。
 あとはその楔が望みのタイミングで外れてくれれば良い。

〈;;(。个。)〉 「さて……」

 現在、早朝のまだ日が出かかってすらいない頃。
 大五郎の守備が最も薄い時間であり、故に、禁恨党が最も警戒を高めている時間。

 狙うのに、これ以上の時間は無い。

97 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/09/29(日) 17:34:28 ID:SkkVWD8E0

(//‰ ゚) 「……合図だ」

 森の中でも小高い山の、枝を払った木の上。
 見通しは非常によく、サロンシティの全体が一望できた。
 気候にも恵まれ、朝靄も視界を遮るほどの濃度は無い。

 その、サロンシティの各地で、細い煙が上がり始めていた。
 狼煙。今日のために集めた人員たちが配置についた合図だ。
 ヨコホリが横目で逆さ男を見る。

 仮面の中で、小さく息を吐いた。
 できれば実行せずに何とかしたかった。
 彼が合図を送れば、この、まだ辛うじて長閑と呼べるサロンの街は、戦場に変わる。

(//‰ ゚) 「……やらねえのか?」

〈;;(。个。)〉 「……準備を」

(//‰ ゚) 「……了ォ解」

 ヨコホリが鋼鉄の腕を前へ。
 しっかりと開かれた掌が狙う先は、丁度開けて見える大五郎のサロン支店。

 仮面をかぶったような、金属に覆われたヨコホリの右目に、複数の魔法陣が浮かび上がった。
 距離、そして風が引力の影響を計算し有効な射線を割り出しているのだ。
 彼自身の魔法では無く、造主である魔女が仕込んだ物らしいが、これが恐ろしい精度を発揮する。

98 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/09/29(日) 17:35:52 ID:SkkVWD8E0

(//‰ ゚) 「対象、固定」

〈;;(。个。)〉 「……撃て」

 逆さ男の声を聞くまでも無く、ヨコホリは魔法を発動した。
 呼吸のような気軽さで掌に風が集まり、拳大の塊となって即座に放たれる。

 普段使う格闘用の風の榴弾砲に、飛距離と追尾性を付加した改良版。
 魔女の『目』の魔法による座標指定の効果もあり、この一撃が目標を外れることは無い。

 数秒で目標へ到達した榴弾は、凶器と化した風を振りまいて炸裂する。
 並の民家であればこれだけで半壊。
 多少頑丈に作られている大五郎であっても、数発と持つまい。

 しかし。容易く蹂躙を赦すほど、大五郎も無策ではなかった。

〈;;(。个。)〉 「……やはり魔法の障壁を準備していたか」

(//‰ ゚) 「予定通りだな。続けるぜ」

〈;;(。个。)〉 「……ああ」

 望遠鏡や遠視魔法でみてやっと目に映る、大五郎の支店を囲む防御魔法。
 靄状の、対狙撃に重点を置いた柔軟性の高いものだ。
 無数に生み出した魔法のチャフにより魔法を減衰させ、対象に到達する前に劣化発動させるタイプ。

 近距離間であれば強引に突っ切ることも可能だが、この距離ではそうそう簡単にはいかない。

99 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/09/29(日) 17:37:38 ID:SkkVWD8E0

(//‰ ゚) 「さァて、何発耐えル?」

 それでも、ヨコホリは狙撃を続けた。
 次々と風の砲弾を生み出し、放つ。
 新たに魔法を追加することで、それぞれの軌道はバラバラ。
 四方八方とはいかずとも、多角的に大五郎の支店に襲い掛かる。

 敵方の防御魔法のチャフは、魔法に反応し自動で迎え撃つものだ。
 故に、射線がバラバラの攻撃に対応し続ければ、

(//‰ ゚) 「グググ……見ィつけたァ」

 自然と、防御に穴が生まれてしまう。

 ヨコホリは、チャフの濃度の薄い軌道を計算。
 一先ずそれを保存し、別の起動からさらに支店を狙撃する。
 チャフが、さらに散った。

 その一点においては、もはや支店は丸裸も同然である。

(//‰ ゚) 「砕け散れェ!!」

 強化式を加え、威力を増した虎の子の一撃。
 それまでの砲弾よりも一回り大きく、単純な破壊力は二倍に近い。

 白い雲を引いて直進する魔法。
 拡散しきっていたチャフが対応しようとするも間に合わない。

100 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/09/29(日) 17:40:34 ID:SkkVWD8E0

 だが。あえて「やはり」という言葉を使えば。
 砲弾が支店に届くことは無かった。

(//‰ ゚) 「グッグッグ……」

 周囲で右往左往していた傭兵の中から一人が飛び出し、魔法を放って相殺したのだ。
 良い反応だ。高速で飛来する砲弾に、ピンポイントで空弾の魔法を当ててきた。
 強化版のため全く無傷では無かったであろうが、直撃の被害とは雲泥の差だろう。

 飛び出してきた傭兵は、金色の髪をなびかせて、こちらを睨む。
 遠視魔法でもなければ姿が見えてはいないだろうが、経験から放ったのがヨコホリであると気づいているはずだ。

〈;;(。个。)〉 「……相変わらず元気な小娘だ」

(//‰ ゚) 「グッグッグッ!会いたかったぜェ!ディレートリィィィ!!」

 金髪の傭兵、ツン=ディレートリ。
 ごく最近、大五郎兵士のリスト中で特記戦力扱いになった少女だ。
 ある程度の実力者であれば抑え込むことは容易いだろうが、この手の嗅覚鋭いタイプは乱戦で真価を発揮してくる。
 現に、彼女には既に何人か手練れを落とされているのだ。完全に無視はできない。

(//‰ ゚) 「やっぱり突っ込ンできやがった……可愛い奴だ」

〈;;(。个。)〉 「お前は狙撃を続けろ。あれは別の人員が対応する」

(//‰ ゚) 「アア、やだねえ。気に入った女の一人狙えねェなンてな」

  *  *  *

101 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/09/29(日) 17:43:59 ID:SkkVWD8E0

ξ#゚听)ξ 「ジョーンズさん!!足が早いのでも馬でもなんでもいいから何人か回して!!」

 叫ぶと同時、ツンは屋根を飛び降りた。
 落下する僅かな時間にブーツの魔法を発動。
 着地の衝撃で屈んだ体勢から、

ξ#゚听)ξ 「ダァッ!!」

 爆発を思わせる勢いで駆けだした。
 閉め切られた支店の雨戸が、余波の風でがたがたと揺れる。

(’e’) 「おっけ〜無理しないでね〜」

 ジョーンズの声を置きざりに、ツンは空を駆けた。
 ィシの言っていた通りだ、と独り言を喉の奥に隠す。

〈::゚−゚〉 『鳴りを潜めていたヨコホリの突然の行動に加え、『逆さ男』が現れた』

〈::゚−゚〉 『確実に企みがある。何かあっても迂闊に飛び込むなよ』

 走り出してから迂闊に飛び込んでいることに気付いたが、気にしない。
 別にうっかり忘れてたわけじゃない。バカにすんな。
 理由は今から考えるけど。

 ……支店の常備障壁と待機していた数人の魔法使いではヨコホリの猛攻はしのぎ切れないだろう。
 故に誰かが直接仕留めに行けなければならないのだ。だ。

102 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/09/29(日) 17:45:56 ID:SkkVWD8E0

ξ#゚听)ξ 「……ん?」

 魔法での迎撃を警戒しつつも、建物の屋根を飛び石の如く駆けて行くその途中。
 ツンは周囲の異変に気づく。
 明らかにサロンの住人ではない人間が多い。

 全員が武装を固めている。
 大五郎の傭兵では無い。間違いなく禁酒党だ。
 一瞬ツンを見たが、気にもかけない様子で支店の方へ向かっている。

ξ#゚听)ξ (狙撃だけじゃない、一斉に仕掛けてきた……!?)

 ほんの一瞬迷う。
 大五郎にも警備の人間はいるが、十分な数とは言いにくい。
 近辺に常駐している兵を集めても40前後だろうか。

 ただでさえ連日のいざこざで疲弊しているのだから、この準備の差は大きい。
 援護に戻るべきか。
 しかし、現大五郎サロン支店のメンツで、瞬発的な移動能力に最も長けているのがツンだ。
 ツンより先にヨコホリを止めに行けるものはほとんどいないだろう。

ξ゚听)ξ (支店にはタカラも、他の傭兵もいる。たぶん大丈夫……)

ξ#゚听)ξ (それより私は、あのクソ○○野郎を、ぶちのめす!)

 迷いを振り切り地面を蹴る。
 その首元にいたニョロが身を斬る風に耐え兼ねて、服の中に潜って隠れた。

103 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/09/29(日) 17:47:58 ID:SkkVWD8E0

 ヨコホリの魔法攻撃は依然続いている。
 ツンには目もくれず、場所の移動すら行わない。
 誘い込まれているのか、それとも、別の狙いがあるのか。

 なんにせよツンヘの攻撃が無いならば、存分に飛ばすだけだ。
 全開で効果を発揮させていたため、ブーツの効力はもうじき切れる。
 ヨコホリの元に着くまでには間に合いそうにないが、どうせ森の中を飛び跳ねることはできない。

ξ゚听)ξ 「“ウィンドエッジ!!”」

 最後の一絞り、ブーツの魔法を一気に噴射し、森の中へ突っ込む。
 太い幹と枝だけを避け、細かい枝葉は雑に組んだ鎌鼬の魔法で払った。

 発動時間が終わり、ブーツに集まっていた風が周囲に散る。
 着地の衝撃で舞い上がった枯葉や腐葉土が錐もみしながら吹き飛ばされた。

ξ゚听)ξ 「……魔法の気配は……よし、目視と一致してる」

 休む暇なく、ツンは駆け出す。額にはじんわりと汗が滲んだ。
 魔法の補助があったとはいえ、2km近くを一気に駆け抜けてきたのだから、当然ではある。
 シャツの袖で汗を拭いながら、奇襲に備えナイフを右手に握った。

 ニョロにはすぐに発動できるよう、風の剣の魔法を展開させる。
 攻撃一辺倒でも、防御一辺倒でも無い汎用性の高い魔法だ。

104 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/09/29(日) 17:49:42 ID:SkkVWD8E0

 森の中を這うように駆けた。
 根を飛び越え枝をくぐり、蜘蛛の巣をかき分ける。
 時折肌にヒリヒリと響くのは、ヨコホリの放つ魔法が生み出す余剰魔力の波動。

 まだ支店が潰されていない証拠であり、これから潰されるかもしれない警告でもある。
 急がなければ。
 ツンの足は、さらに回転を増す。が。

ξ;゚听)ξ 「?!グェェッ?!」

 ヨコホリがいるであろう地点へあともう少し。
 ツンの息の乱れもピークに近くなった時、ニョロが俄かに暴れはじめた。
 唐突に首を絞めつけられ、流石のツンも足を止める。

ξ;゚听)ξ 「ちょ、ニョロ、死ぬから、今のは本t……」

 ニョロを引きはがしながら文句を垂れるツンの耳元を、黒い何かが過った。
 空気の痺れと、金属の擦れる音。
 それが鎖に繋がれた分銅だと気づいたのは、ツンの背後にあった木の皮が派手に飛び散ってからだった。

ξ;゚听)ξ 「なっ……?!」

 鎖が引き戻され、分銅が再び浮き上がる。
 暴れる鎖を躱しツンは大きく下がった。
 重く硬い鉄の塊だ。掠っただけでも致命傷になりかねない。

105 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/09/29(日) 17:50:59 ID:SkkVWD8E0

ξ;゚听)ξ 「……チィッ。ありがとうね、ニョロ……」

 引き戻された鎖の先を睨みつける。
 そこにいたのは、一人の男。
 枯れ木に白髪の鬘を被せたような、貧相な体をしていた。

 しかし、その眼光と、裸にジャケットを羽織った姿に、並ならぬ異常性を感じ取れる。
 半開きになった口元から、風鳴のような呻きが零れた。

ξ;゚听)ξ (面倒だな、巻くしかないか?)

 ツンの画策を、掲げられた男の左手が封じる。
 男を中心に魔法陣が浮き上がり、円の淵に沿って魔法の障壁が現れた。
 檻だ。複数の細い障壁によってツンは閉じ込められる。

ξ;゚听)ξ 「露骨な時間稼ぎを!」

£ ゚ ゞ゚) 「……………………………それは」

ξ;゚听)ξ

£ ゚ ゞ゚) 「……………………………違うぞ」

ξ;゚听)ξ

£ ゚ ゞ゚) 「……………………………少女よ」

ξ;゚听)ξ 「……ハッ!露骨な時間稼ぎを!!」

107 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/09/29(日) 17:53:27 ID:SkkVWD8E0

£ ゚ ゞ゚) 「……………………………我が名は」

ξ#゚听)ξ 「長い!!」

£ ゚ ゞ゚) 「……………………………ロm」

 あまりに緩慢に口上を述べる男に対し、ツンは全力の蹴りを放った。
 全身で飛び込みながら、足の裏を男の顔面に叩き込む。
 ロなんとかは、表記しがたい声をあげ吹き飛ばされ、魔法の檻に背中からぶつかった。

ξ;゚听)ξ (あれ、意外に弱い?)

 木の葉を蹴ったのかと思うほど軽かった。
 受け流されたというわけでは無さそうだ。
 鼻の骨が粉砕される感触が、ちゃんと足の裏に残っている。

 しかし、男はすぐに立ち上がった。
 ダメージを思わせないしっかりとした足取り。
 右手に巻き付けた鎖を、じゃらりと持ち上げる。

£ ゚ ゞ゚) 「…………………………この程度の攻撃は」

ξ;゚听)ξ (嘘でしょ?鼻が折れただけじゃ済まないはず……)

£ ゚,ゞ゚) 「…………………………すごい痛い。鼻血止まらない」

ξ゚听)ξ

 正直どう扱っていいか分からなかった。

108 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/09/29(日) 17:55:04 ID:SkkVWD8E0

 とりあえず、ダメージはちゃんとあったらしいので、男は無視し意識をちらりと障壁へ向ける。
 頑丈な魔法障壁だ。
 触れた際に反動のある準攻撃型のものでは無い様だが、その分強固に作られている。
 
 生半可な魔法では恐らく通用しない。
 実際の鉄檻を破壊できる程度の威力は欲しいだろう。
 ツンが扱う魔法の中でそんなことが出来るのは、一つしかない。

 ここでそれを使うのは、無駄だ。
 結果に対する消耗が大きすぎる。
 であれば残りの選択肢は。

£ ゚ ゞ゚) 「…………少し、早口で…………話そう」

ξ゚听)ξ 「……ニョロ、あいつを仕留めるわよ。術者が気を失せれば、効力も下がるはず」

£ ゚ ゞ゚) 「…………この障壁は…………特製だ…………ちょっとやそっとじゃ…………」

 言葉と同じくゆっくり近づく男に対し、ニョロが魔法を発動した。
 中空に現れる三本の風の剣。
 それが三様の軌道を取りながら男に襲い掛かる。

 男は雑に鎖分銅を振り回し、これを迎え撃った。
 分銅と鎖に弾かれた風の剣は、形状を保てず強めの突風となって男に到達する。
 白く艶の無い髪の毛が大きく靡いた。

109 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/09/29(日) 17:56:20 ID:SkkVWD8E0

£ ゚ ゞ゚) 「……我は、山幻旅団が……末幹……ロミス……オットリー……」

ξ#゚听)ξ 「こなクソ!!」

 ナイフを握りしめ、ツンは突進。
 男、ロミス=オットリーは鎖を振るって応対したが、これを伏せて回避する。
 分銅が引き戻されるまでのいくらかの隙に、ツンは思いっきり地面を蹴った。

£ ゚ ゞ゚) 「……貴様を……ま」

 ナイフを固く握った拳でロミスの頬を全力で殴り抜いた。
 肉が潰れ骨の砕ける感触。
 大きく仰け反ったロミスは数歩下がって、檻に凭れかかる形で倒れた。

ξ;゚听)ξ 「強いんだか弱いんだかわかんないわこいつ……」

 あまりに全力で殴ったため、拳が少しだけ痛む。
 ともあれ術者は気絶させた。
 あとは障壁が自然に消えるのを待つか、多少なりとも強度が落ちたところを狙って破壊すればいい。

 しかし。

ξ;゚听)ξ 「?!」

£;#),ゞ゚) 「……………………ふう」

 檻に触れようとしていたところ、背後から頭へ向かって飛来した鎖分銅。
 直感的に回避できたが、冷や汗が一気に噴き出す。
 飛びのきながら睨みつけた先にいるのは、頬を赤くはらした、ロミス=オットリー。

110 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/09/29(日) 17:57:55 ID:SkkVWD8E0

£;#),ゞ゚) 「……………………早口で話すの」

ξ;゚听)ξ 「なんなのよこいつ!しつこい!!」

£;#),ゞ゚) 「……………………疲れた」

ξ#゚听)ξ 「うざいんだって!!」

 顔面を打ち据えてもダメならば、呼吸を潰しにゆく。
 懐にひと息で潜り込み、鳩尾に拳を叩き込んだ。
 ロミスの体が僅かに浮く。口からは唾液と呻きが漏れた。

 二歩後ずさって、ロミスは膝をついた。
 腹を押さえ、蹲る。

ξ;゚听)ξ 「流石にこれで……」

£;#),ゞ゚) 「……………………なんちゃって」

ξ;゚听)ξ 「やっぱりか!!」

 起き上がった顔面を膝で打ち抜いた。
 ロミスは背骨を軋ませ、ブリッヂの体勢で倒れる。
 手ごたえが確実にあるのだが、どうにも嫌な感じが拭えない。

111 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/09/29(日) 17:58:45 ID:SkkVWD8E0

£;#),ゞ゚) 「……………………さすがにちょっと、やられ過ぎた」

 ロミスは、巻き戻しでもするかのように起き上がり、ツンに手を伸ばす。
 反射的に後退し、ニョロに鎌鼬の魔法を放たせた。
 これは鎖を撒いた腕に弾かれ、直撃には至らない。

ξ;゚听)ξ 「……なんなのよ、コイツ」

£;#),ゞ゚) 「…………我は、ロミス=オットリー…………山幻旅団で最も…………」

ξ;゚听)ξ 「でぇい!!」

£;#),ゞ゚) 「…………粘り強い男」

ξ;゚听)ξ 「?!」

 倒せないというだけで弱い相手だと、油断した。
 ロミスが左手で鎖の先端を大きく引き、再び飛び込んだツンの足を地面に垂れていた鎖で絡め取る。
 軸足を攫われ思いっきり地面に転ばされた。

 ロミスの攻撃は止まらない。
 左手で短く持った鎖の先端を、倒れているツンに対し思いっきり振り下ろす。
 慌てて身を捩じって回避。ツンの体から指一本の隙間も無い地面に分銅が土を散らしながら食い込んだ。

ξ;゚听)ξ 「くッ」

 起きようとするも、足を取られてままならない。
 ロミスは、再び鎖を振り上げる。

112 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/09/29(日) 18:00:19 ID:SkkVWD8E0

ξ;゚听)ξ 「ニョロ!!」

 ニョロが顔を出し、大きく威嚇。
 同時に空弾の魔法を放ち、ロミスの顔面をぶち抜いた。
 振り上げた鎖の慣性もあり、細い身体は後ろへと倒れる。

 やや引き寄せられる形になりつつも、ツンは鎖を振りほどいた。
 すぐさま立ち上がり、起き上がりかけのロミスの顔面を、

ξ#゚听)ξ 「ダラァ!!!」

 ブーツの魔法を発動した足で、全力で蹴り抜く。
 頭だけで飛んでいきそうな会心の一撃。
 少し体を浮かせて吹っ飛んだロミスは頭から落ち、跳ねてから地面をゴロゴロと転がる。

 藻のような髪の毛には、折れた小枝が何本か刺さっていた。

ξ;゚听)ξ 「冗談でしょ……なんで気絶しないのよ……」

 まるでゾンビの如く、ロミスは再び起き上がった。その形相に、ツンは後ずさる。
 顔は既に原形を留めていない。
 ツン自身が「殺してしまったかも」と肝を冷やすほどの攻撃を三発も受けているのだから当然だ。

 それでいて復活してくるのは、明らかに異常。
 魔法によって体を修復している様子も無いし、本当に死んでしまっていてもおかしくないのに。

113 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/09/29(日) 18:01:08 ID:SkkVWD8E0

:::£;#),ゞ゚)::: 「叩かれた程度では………………我は落ちん………………」 プルプル

ξ;゚听)ξ 「くそ……急がないといけないってのに……」

 ロミスに捕まり、かなりの時間を食った。
 ジョーンズに頼んでいた援軍の方が先についているかもしれない。
 魔法の檻のせいでその他の魔法の気配も感じることが出来ず、焦りばかりが募る。

:::£;#),ゞ゚)::: 「…………その手の刃で…………我の首を掻けば…………それで終いであるのに…………」 プルプル

ξ;゚听)ξ (……めっちゃプルプルしてる)

:::£;#),ゞ゚)::: 「…………甘い。…………殺意の無い戦士など…………じゃれつく猫にも劣る…………」 プルプル

ξ;゚听)ξ 「ッ……お望み通り、やってやるっての!!」

 姿勢を低く前へ出ようとしたツンヘ、ロミスは分銅を投げつける。
 横へ飛んで回避するも、ロミスは伸びきった鎖を横へ振り回し追撃。
 ツンは跳ねて暴れる鋼鉄の鞭を飛んで躱し、上方を覆う魔法の檻に足をついた。

ξ#゚听)ξ 「あああ!!!」

 全体が振動するほどの力で、檻を蹴る。
 落下のエネルギーも付与されたこの一歩は、音に近い速さを生み。
 ツンは烈風の如くロミスへと突進する。

 逆手に持ったナイフの狙いは、ロミスの首。
 いくらタフであっても首を裂かれれば無事に済むはずがない。

114 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/09/29(日) 18:02:32 ID:SkkVWD8E0

 交叉。

 耳を劈くような金属音が響き渡る。
 すり抜けざまに首を切り裂こうと振り抜いたツンのナイフは、右腕の鎖に防がれた。
 僅かに腕を斬ったが、深い傷では無い。

 勢い止まらず、半ば檻に衝突する形になったツンヘ、すぐさま分銅が放たれる。
 何とか横へ躱すも、鎖に引かれるようにロミス本体も飛び込んできた。
 体勢も意識も整わないツンは、回避だけに集中し地面を蹴る。
 ロミスとは対極の位置へ転がって距離を取った。
 
:::£;#),ゞ゚)::: 「…………貴様……………人を殺めたことが…………無いな…………」 プルプル

ξ;゚听)ξ 「……だから何だってのよ」

:::£;#),ゞ゚)::: 「…………愚かしい…………我が出向いて…………時間を稼ぐような相手には…………」 プルプル

ξ;゚听)ξ 「やっぱり時間稼ぎか!」

:::£;#),ゞ゚)::: 「…………さて小娘…………我が「稼げ」と言われた時間…………」プルプル

ξ;゚听)ξ

:::£;#),ゞ゚)::: 「……………………貴様は立っていられるか?」 プルプル

ξ;゚听)ξ 「…………クソッ!」

  *  *  *

115 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/09/29(日) 18:04:37 ID:SkkVWD8E0

( ;`ー´) 「魔法反応3、位置情報送るんじゃネーノ!」

( ,,^Д^) 「……」

 タカラは弓を構え、支店の屋根に立っていた。
 目元には味方の魔法使いが発動した探知魔法の簡略図が浮かび上がっている。
 方角と魔法反応の位置がわかるだけの簡素なものだが、今はこれで十分だ。

 やっと見慣れてきた探知図に従い、飛来する魔法へ弓を構えた。
 秒と待たず直撃する恐れのあった魔法弾を、タカラの放った矢が貫く。
 風の暴威が散乱し、その余波でもう一つの魔法弾も誘爆した。

 残りの一つを支店にかけられたオートの防御魔法が防ぎ、一旦は攻撃をやり過ごす。

( ;`ー´) 「何度見てもすげえんじゃネーノ……あれを射抜くのかよ……」

( ,,^Д^) 「さてと」

 タカラは魔法の迎撃が終わりと判断ずるや否や、再び背中の筒から矢を引き抜く。
 弓にあて、やや上方に向かって指を離す。
 風切り音を立てて発射された矢は空中を弧を描きながら泳ぎ。

( ;゚'μ゚) 「ぬうあ?!」

 大剣を振り回し暴れていた禁酒党兵士の太腿に突き刺さった。
 今まさに斬り下しをしようとしていた敵の男は、膝から崩れ落ちる。

116 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/09/29(日) 18:05:39 ID:SkkVWD8E0

( ,,^Д^) 「ジョーンズさん、倉庫に予備の矢があるから取ってきてくれにゃ」

(’e’) 「うわぁ〜〜店長マジ雑用〜〜」

 ジョーンズに頼みながら、さらに矢を放ち敵兵の一人を無力化する。
 物陰にさえいなければ、どこでも狙える。
 支店周囲は今現在タカラの独壇場であった。

( ,,^Д^) (……まあ、悪いことばっかりじゃないにゃ)

( ;`ー´) 「砲撃来るんじゃネーノ?!さっきより反応デカいんじゃネーノ!!」

( ,,^Д^) 「矢がねーにゃ。魔法班頼むにゃ」

 今のところ最後の矢を、路地を抜けて支店に接近してきていた敵兵に放つ。
 肩口に矢を受けた敵は仰け反って尻を着いた。

 再び飛来した、これまでより大きな魔法弾を地上の魔法使いが障壁を作って防ぐ。
 準備していた設置型の障壁魔法はかなり消耗しており、ほとんど役には立たない。
 タカラと、数人の魔法使いで何とかしのぐしかない状況だ。

( ,,^Д^) 「きついにゃぁ……せめてツンがあと三人くらい居たらにゃ……」

 ぼやいてから、やっぱ嫌だなと考えを改めた。
 ツンの特性はこういった乱戦の遊撃に非常に向いているが、あれが四人となると心労が10倍くらいになりそうだ。
 支店を守り抜く前にタカラの頭の毛が抜けてしまう。

117 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/09/29(日) 18:07:17 ID:SkkVWD8E0

 禁酒党及び付随する敵の兵士達は、小隊を組んで街の構造を利用し進撃してくる。
 大五郎側の警備は元々支店に待機していた十数人と、近辺からかき集めた計40名弱。
 現在密使を走らせて各地の待機場所に駐在していた傭兵も呼び戻しているが、敵に妨害されうまくいかない。

 敵方も街に余計な被害を出さないよう意識しているお蔭もあってか、
 強引に数で押し切るようなマネをしてこないのが幸いだ。
 もしそうなれば疲弊している環境もあって、確実に押し負けるだろう。

 希望は、サロン各地で自主的に集い、後方から敵を乱している大五郎の傭兵隊。
 そして早々に連絡を飛ばした本隊からの援軍。
 長期戦になるだけの拮抗する戦力を集めれば、相手も兵を引くだろうとジョーンズは予想していた。

( ,,^Д^) 「つったって、援軍が来るまでもつかにゃあ……」

(’e’) 「タカラく〜ん、矢持ってきたよ〜」

 ジョーンズの放り投げた矢の束を矢筒に差し、一本を弓につがえる。
 素早く引いてチラと目標を定め、指を開く。
 木製の矢が飛来した無色の砲弾を貫き、炸裂させた。

( ,,^Д^) 「ジョーンズさん、ありったけ持ってきてくれにゃ」

(’e’) 「うわ〜ハードワーク〜〜」

 なんでこの非戦闘員こんな余裕なんだろうか。
 敵はまだ支店までは至ってこそいないが、いつどこから抜けてきてもおかしくない。
 目的は確実に、支店そのものと、サロン大五郎のトップである店長のジョーンズ。
 傭兵たちを信じるが故の余裕か、何か策があるのか、それとも天然か。
 周囲の人間の方がハラハラしてしまう。

118 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/09/29(日) 18:08:19 ID:SkkVWD8E0

 支店に至る道は、主に二つ。
 一つめは目の前を通る商店通り。
 現在ここは魔法のトラップと、弓矢等による遠距離の射撃合戦だ。
 商品用の樽や木箱を土嚢代わりに、敵の侵攻を抑えている。

 二つめは、裏通り。
 表側に比べれば道も狭く入り組んでいるため、敵も好んでは使わない。
 ここには腕利きの隊が出張っており、散発的に来る敵の侵入を防いでいる。

 このほかにも細い路地があるが土嚢を積んで塞いだのでノーカウント。
 支店がここに選ばれた理由は、単なる人の多さだけでなく、この防衛の容易さだ。
 建物の密度が高く、敵の進路を限定しやすい。

 もし、支店がもっと開けた土地にあったならば、この人数差で凌ぐことは難しいだろう。
 だがそれでいても、敵は別の道を見出してくる。
 たとえば、

\(^o^)/ 「ィィィィッヤッハァァァァァ」

 魔法使いや身軽な戦士による、屋根や空中を使った奇襲。
 主に、タカラが警戒するのはこれらだ。

( ,,^Д^) 「ッ!」

\(^o^)/ 「オワタァ?!」

 木の板に乗り飛来した魔法使いを撃ち落とす。
 彼に便乗していた二人の戦士が、屋根に飛び降り一直線にこちらを目指してきた。

119 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/09/29(日) 18:09:41 ID:SkkVWD8E0

( ;`ー´) 「魔法反応!さっきのデカいのが三つ!!」

( ;,^Д^) 「くっ、二つは何とかしてくれにゃ!!」

 一つは魔法のチャフが相殺。
 二つはタカラは矢を撃ちこみ防御。
 三つは味方の魔法使いが上手く軌道を変え、空で爆発させた。

 しかし、この隙に先ほどの戦士二人がタカラにたどり着く。

 タカラは矢を抜き取るが、迫る敵兵に構える余裕が無い。
 不安定な屋根の上で、首に向かって振るわれた短剣を伏せて躱し。
 肩を入れたタックルで、そのまま突き落す。

( ;`ー´) 「やばいんじゃネーノ?!小さいのが反応五つ!!軌道がはバラバラ!!」

( ;,^Д^) 「クッ!」

 半端な受け身で地面に落ち呻く敵の顔面にジョーンズが立て看板を叩きつけた。
 さすがに堪えたのか、看板をずらしたそこには白目を剥いた敵の姿。

(’e’)bそ  ビシッ

 ドヤ顔で親指を立てるジョーンズを無視し、タカラは低い姿勢のまま弓に矢を当てた

120 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/09/29(日) 18:11:16 ID:SkkVWD8E0

 鏃を向けると、もう一人の敵兵が怯む。
 手に持った草刈鎌を反射的に眼前に引き上げた。
 元からこの近距離で矢を放つ気の無かったタカラは、この隙に立ち上がりながらの前蹴り。

 唐突の攻撃に反応の遅れた敵は、一人目と同じく地面に落ち、ジョーンズの看板攻撃を脳天で受け止めた。

(’e’)bそ  ビシィッ

 もはや落とした後については一切気にかけていないタカラ。すぐさま振り返り矢を放つ。
 狙いは味方が防ぎきれなかった最後の魔法弾。
 ほぼ直撃寸前のそれに辛うじて間に合った矢は、屋根をいくらか剥されるだけの功績をあげた。

( ;`ー´) 「タカラァ!また三つ!!」

( ;,^Д^) 「おいおい、まだ止められねえのかにゃ、ツン!」

( ;`ー´) 「そろそろ俺たちの魔力も苦しいんじゃネーノ!!」

( ;,^Д^) 「死ぬ一歩前までひねり出せにゃ!!」

( ;`ー´) 「辞めてやるこんな仕事!!」

 文句を言いつつも、飛来した三つをそれぞれ相殺。
 しかし、余波により少しづつ支店の損傷が増えている。

121 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/09/29(日) 18:12:44 ID:SkkVWD8E0

 誰が一人欠けても危ういこの状況。
 再び敵方の魔法使いが飛行魔法を使って空に躍り出る。
 先ほどと異なるのは、同乗していたのが短弓を構えた弓兵だったこと。

( ;,^Д^) 「ッ!」

 タカラの反応よりも早く、敵が矢を放つ。
 素早く撃ちこまれた矢を躱すことは難しく、タカラは左の肩口で受け止めた。

(;’e’) 「うわぁ〜〜」

( ;,^Д^) 「チィッ!」

 タカラは突き刺さった矢を引き抜き、唇で血を拭ってから射返す。
 見事に魔法使いを射抜き、二人揃って地面へ落下させた。

 矢創はすぐに塞がった。問題は傷よりも、純粋に押し切られ始めているということ。
 この状況で、敵の幹部クラスが前線に出張ってきたとしたら洒落にならない。

( ;`ー´) 「タカラァ!!」

( ;,^Д^) 「うっせ!!黙って情報送れ!!」

( ;`ー´) 「酷いんじゃネーノ?!」

 味方から送られてくる座標を確認し、目視。
 瞬く間に迫る五つの魔法弾の先頭を射抜き、誘爆でさらに二つ。
 残った二つは魔法使いが補充した魔法のチャフが防いだ。

122 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/09/29(日) 18:13:53 ID:SkkVWD8E0

( ;`ー´) 「……ん?」

( ;,^Д^) 「どうしたにゃ?」

( ;`ー´) 「敵の狙撃手の魔法の反応はあるんだけど、こっちには飛んできてねーんじゃネーノ」

( ;,^Д^) 「ツンが着いたってことかにゃ?」

( ;`ー´) 「対象増やすと俺が死ぬから誰だかはわかんねえんじゃネーノ。でも、狙撃は止みそうじゃネーノ」

( ;,^Д^) 「……わかったにゃ。ネーノは変わらず警戒続けてくれにゃ」

( `ー´) 「わかったんじゃネーノ」

( ,,^Д^) 「魔法班は交代で温存しながら地上班の援護。ジョーンズさん、矢の補充遅いにゃ」

(’e’) 「うわぁ〜威厳がみるみる無くなっていく〜〜」

( ,,^Д^) 「あんた初めから威厳なんてねえにゃ」

(’e’) 「言葉の矢に射抜かれて辛い」

( ,,^Д^) 「……さて、やっと攻めに出られるかにゃ……」

 タカラの弓が、キリキリと音を立てる。
 狙いを定める彼の目は、狩人のそれとなっていた。

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