( ^ω^)ちょっと便利な異能力、のようです

第三話 条件の交換

52 名前:>>1[sage] 投稿日:2016/05/13(金) 07:57:36 ID:bQNEg.kc0

n|



なk|



なくしもn|



失くしもの みtくえだうs|



( ・∀・)(……っ)

.

53 名前:>>1[] 投稿日:2016/05/13(金) 07:58:31 ID:bQNEg.kc0

失くしもの |



失くしもの 見つけだす 内藤|



( ・∀・)「そいっ」カチリ


 …………。


( ・∀・)(……そりゃあ、出ないか)



( ・∀・)「……もいっこだけ」

.

54 名前:>>1[sage] 投稿日:2016/05/13(金) 07:59:14 ID:bQNEg.kc0

いしつb



いしつぶて|



(;・∀・)(あぁん!)



遺失物 内藤|



( ・∀・)「どうらっ」タァン


 …………。


( −∀−)(ダメ……か)



( ・∀・)「ツイッターでも検索かけてみよか」

.

55 名前:>>1[sage] 投稿日:2016/05/13(金) 07:59:41 ID:bQNEg.kc0

ちょっと便意rn|



ちょっと|



ちょっと便利な異能力、のようです
題3羽|



ちょっと便利な異能力、のようです
第三話 じょうk|

.

56 名前:>>1[sage] 投稿日:2016/05/13(金) 08:00:03 ID:bQNEg.kc0

 あまりにも広大な、電子の海。
引っかかりそうな文字を垂らしてみるも、釣果は、ゼロだった。


 あんなもの、どこぞで有名になっていてもおかしくないのに。
メディアも放っておくはずがないのに、テレビでそれらしき話題を観たこともない。


( ・∀・)(けっこうテレビは観てる方なんだけどなー)



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57 名前:>>1[sage] 投稿日:2016/05/13(金) 08:00:26 ID:bQNEg.kc0

 内藤さんのお話を聞いた後、特に何事もなく、部屋へと帰ることができた。

その不思議な力に関しては、圧倒的枚数の学問推奨おじさんブロマイドを請求されることはなく、口止めを頼まれることもなく。
内藤さんにお礼を言えば、じゃあよろしく頼むお、と、ただそれだけ。

うちに戻って半信半疑で手繰られた鍵を差し込んでみれば、鍵穴は拒むことなく左に傾げて、すたん、と小気味よくひと鳴き。
果たしてすんなりと僕に入室の権利を与えてくれたのであった。

.

 どさり。 と腰かけたのは椅子でも床でもなく、ベッド。
僕ばかり休むのもなんなので、僕より回復が必要であろう、飢えで力尽きた携帯に栄養チューブをぶっ差してやる。
目を覚ますのはしばらく先だろう。
とはいえ、家にさえ帰れればノートパソコンがあるので、特に支障はない。
今日はゆっくりおやすみ。

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58 名前:>>1[sage] 投稿日:2016/05/13(金) 08:00:56 ID:bQNEg.kc0

 とうとう匿っていた緊張と疲労がしびれを切らし、ため息へと姿を変えて勢いよく逃げていった。
文字通り一息ついた、といったところか。

言霊とは恐ろしいもので、口にしていくたびにそれが現実へと近づいていくらしい。
しかも、ネガティブなものに限って、とも耳にする。 嫌な話だ。
しかし、近づいていくも何も真実なので、声を大にして何度でも言おう。

今日は、疲れた。

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59 名前:>>1[sage] 投稿日:2016/05/13(金) 08:01:28 ID:bQNEg.kc0

 改めて見回したところでもはや見慣れた光景、なんてまだまだ言えない。
まだまだ五感に新鮮な、ほやほやのお部屋である。

どこもかしこも白色、あるいは申し訳程度の木目調。
さながらチュートリアルを終えたばかりの、白シャツ短パンアバターといったところだろうか。 ザ・無個性。

お気に入りのポスター、ぬいぐるみ、そんな賑やかし担当は不在である。
もっと言えば、ベランダにつながる窓を隔てる布切れすらも垂れていない。
実家の自室から持ってきてもよかったのだが、それに待ったを掛けたのは、誰彼ならぬ僕自身。

せっかくなのでこれから紡いでいく四年間で彩ってみようと思い立ち、少ない荷物でやって来たのだ。
過去は古巣に置いてきた。 何もかもが新しい僕、デビューなのだ。

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60 名前:>>1[sage] 投稿日:2016/05/13(金) 08:02:31 ID:bQNEg.kc0

でも、お気に入りの漫画やゲーム機は別なのだ。
……パソコンや携帯もないと困る。
家電も。 服やカバンも。 ついでに筆記用具も。

つくづく都合のいい裸一貫であろう。 そこは自分ルールのさじ加減だ。
イージーモード最高!


 なんにせよ今後、大人になったらお酒の瓶を飾ってみるもよし、サボテンを飼ってみるもよし。
無限大の選択肢が与えられている、というわけだ。


まあ、お部屋のデコレーションについては今はどうでもいい、いつでもできるし、今じゃない。
このまま寝るのも上策ではあるが、ちょっと明日のことについてでも考えておこう。
ちらりとカレンダーを見やれば、その日付は上下に並んで赤々としている。

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61 名前:>>1[sage] 投稿日:2016/05/13(金) 08:02:55 ID:bQNEg.kc0

 考えるとは言っても、明日の予定が特にあるわけでもない。
大学のガイダンスはまだ少し先だし、授業の履修を決めなければバイト探しも始められない。
ゴロゴロしながらシラバスをめくって面白そうな授業に目星をつけて、
その後は先刻見つけたゲームセンターに早速浸かり込むのもアリっちゃアリなのだが。

( −∀−)(よろしく頼む、かぁ)

内藤さんからのただひとつのお願いが、さっきから僕の脳内で上目遣いだ。



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62 名前:>>1[sage] 投稿日:2016/05/13(金) 08:03:21 ID:bQNEg.kc0

( ・∀・)「ちょっと便利な、異能力……」

 異能力。
心をくすぐる単語である。
バトル、ファンタジー、アドベンチャー。
そんな夢ある平面世界に、この異能力というモノはつきものだ。

 空を飛んだり、未来を視たり、過ぎた時間を戻したり。
僕も児童と呼ばれる頃には、うんうん唸って力を込めて、無駄な努力をしたものだ。

――ほら、今、僕の心の声が聞こえてる君もそうだろう? そう、君だよ。
――気付いてないとでも思ったのかい? バレバレだよ?

……とかもね。 よくやってたなぁ。

 と、見せかけて実はやっぱり聞こえてる君も、隠さなくたっていい。
誰だって、やらないはずがない。 異論は、認めない。
小さな頃に起こす空想と現実の混濁。
いわば、ファンタジー・コンプレックス。

 そう、たとえば……

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63 名前:>>1[sage] 投稿日:2016/05/13(金) 08:03:58 ID:bQNEg.kc0

 登下校時は自転車で下り坂をカッ飛ばしながら背中の肩甲骨あたりから大きな翼が具現化するイメージをしてみたり、
寝るときはいつ翼が生えてきてもいいように横向きやうつぶせで寝たり……あ、これ高二の時だ。

 未だ見えぬ先の世界の片鱗を掴むべく、
正確な位置はよくわかってないけどとりあえず前頭葉っぽいところに力を込めて自称無心モードを発動させて集中してみたり……
あれ、これは去年だった気がするぞ。

.     ブ ラ ッ ク ・ ヒ ス ト リ ー
 遠き日の謎の全能感と満ち溢れた自信よる愚かな言動の数々を止めるべく、時間よ戻れなんて念じるのは毎夜の日課だし。

.

64 名前:>>1[sage] 投稿日:2016/05/13(金) 08:05:22 ID:bQNEg.kc0

 ……え、やだ、もしかして僕、痛い子予備軍?
いや、でも誰にもばれないようにやってたし、セーフだよね?
え、ばれてなかったよね? 大丈夫だよね??

(;Φ∀Φ)「……エ?……ヨネ?……ネ?」

(;^ω^)「またそんなむつかしい顔をする……
       ま、深いこたないお。
       要は魔法や奇跡じゃない、って言いたいんだお」

(;・∀・)「あ、え、いやっと、その、ど、どう違うんですか?」

(;´ω`)「大丈夫かお? 実は相当体調しんどいかお?」

(;・∀・)「いえ! そんなことは!
       だあいじょぶぅですので続けてください!」

 心底どうでもいいことで人を心配させてしまうと、罪悪感がとてつもない。
たびたび回路から脱走して、いらん所へちょっかい掛けまくるこの思考の馬鹿は、どうにかならないものだろうか。 本当に。

.

65 名前:>>1[sage] 投稿日:2016/05/13(金) 08:05:53 ID:bQNEg.kc0

( ^ω^)「ならいいんだけど……ムリしちゃダメお?
       じゃあ話を戻すけど、えーっと、あぁ、違いだおね。
       おっきな意味はそこまで、なんとなくの感覚だお。
       魔法は呪文唱えたり、魔法陣作ったり、魔力を消費したりってイメージあるお?」

( ・∀・)「あぁ、確かにそうですね」

( ^ω^)「だからそれとは違うかなって。
       準備は不要、疲れもしない。
       代償、契約なんもなし、だお」

( ・∀・)「じゃ、奇跡と違うってのは?」

( ^ω^)「これは個人的な意見なんだけど、何回も起こせないから奇跡は奇跡なんじゃないかなって……
       いや、なんかの受け売り入ってるかお? まぁいいお。
       たとえば、神様とかなら別かもだけど、僕は普通の人間だおん」

 いわく『異能力』を使っておいて、普通の人間を自称するのもどうなんだろうか。
なんて思ったが、なんとなく言いたいことはわかった気がする。

というかこの人、たぶんそっちの話題イケるクチだ。
ふと改めて辺りを見回せば、案の定。
いくつかの雑誌やコミックが転がっていた。


 ……あっ、フィギュアもある。

.

66 名前:>>1[sage] 投稿日:2016/05/13(金) 08:07:03 ID:bQNEg.kc0

( ・∀・)「つまり、トンデモ発明品を駆使しまくる超高校生級の小学生がただの探偵を自称するようなもんですかね」

( ´ω`)「あのキャッチコピーをギュッと縮めると、隠し通してる正体が浮かび上がってくるおね」

( ・∀・)「つまり……内藤さんの本名はチョ・ベンイであると……」

(;´ω`)「どこの三流カンフースターだお、それ。 弱そうだし……
       僕は生まれも育ちも内藤ホライゾンだお」

( ・∀・)「にしても耳馴染みいいですね、『ちょっと便利な異能力』って。
       自己紹介の時に使ってるんですか?」

( ^ω^)「いやぁ、実は僕の力じゃないことにしてるお。
       必要な場合は、ちょっと職場を借りて、うまいことやってるお」

( ・∀・)「職場?」

( ^ω^)「まま、それも今度教えるお。
       というか、そう、そうだったお。
       職場で思い出したけど、実は僕、明日早いんだお……」

.

67 名前:>>1[sage] 投稿日:2016/05/13(金) 08:07:33 ID:bQNEg.kc0

 しまった。
疲れで配慮を怠るあまり、遠慮を失くしていた。
内藤さんはどう見ても学生ではない。
普通の生活をしている限り、職に就いてないなんてことはないだろうに。

(;・∀・)「あぁっ、内藤さんのこと全ッ然考えてなかった!
       すみません!」

( ´ω`)「いやいや、言ってなかったし、こっちこそごめんだお。
       それにやっぱり、守屋くんも今日は疲れてるお?
       だから、また今度。
       お互い引っ越す予定もなし。 この先、時間はたっぷりあるお」

.

68 名前:>>1[sage] 投稿日:2016/05/13(金) 08:07:57 ID:bQNEg.kc0

 玄関まで、ゆっくりと送り届けてもらいながらも、会話は続いていく。
この人の性格もあいまってか、おしゃべりが、とても楽しい。

(* ・∀・)「なんだか、見失ってた遠慮すら手繰ってもらった気がします」

 靴を履きながらも無言になることはなく。

( ^ω^)「おっお、そういうのはー、この力じゃ無理だお。
       第一ポッケから出せないし」

(* ・∀・)「うはっ、確かにそうですね」

 初めて訪れた家の鍵を、内側からでも勝手に触るのはのは、なんとなくはばかられる。
開けてもらえるよう、自然な挙動で伝えると、これまた自然に応えてくれた。

内藤さんが、サムターンをひねる。
そして僕が、ドアノブをひねる。

闇から這い伸びてきた、少し冷え込んだ外気が、僕の素肌をなぜる。

.

69 名前:>>1[sage] 投稿日:2016/05/13(金) 08:08:29 ID:bQNEg.kc0

 四月。 暦の上では春。
春、はる。
遥かへと旅立つ別れと、遥かから訪れる出会い。
人間関係の、節目の季節。

そんな春とはいえ、その季節の特徴とされる暖気は、まだ幼く、脆い。

これからの成長を考えると、どうか君には若いままでいてほしい、なんて願ってもしまう。

こんな春の夜のような……
つまりは、涼しい、という気候が、僕はとても好きだから。

.

70 名前:>>1[sage] 投稿日:2016/05/13(金) 08:08:57 ID:bQNEg.kc0

( ^ω^)「じゃ、お疲れさん。
       また来るお……って、そうだ」

( ・∀・)「はい?」

( ^ω^)「守屋くん、お願い、ひとつあるんだお」

(;・∀・)「えっと、すみませ、あの、今、お金は……」

( ´ω`)「ノンノンお、そういうんじゃないお。
       さっきのは、お近づきのしるし。
       これからは、お友達のよしみ。」

 そもそも誰からもお金なんて取ったことないお、と続ける。

( ・∀・)「じゃあ、お願いっていうのは一体……」

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71 名前:>>1[sage] 投稿日:2016/05/13(金) 08:11:11 ID:bQNEg.kc0

 内藤さんはポリポリと頭を掻くと、そのまま腕を前にまっすぐと伸ばしながら言った。

( ^ω^)σ「この人のこと。
        探し出せ、なんて言わないお。
        無理に嗅ぎまわる、なんてことももちろん。
        ただ、手掛かりになりそうなことがわかったら……
        なーんでもいい、どうか教えてほしいんだお」

 指を差したその先には、さくらんぼに懐かれた一枚の写真があった。



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72 名前:>>1[sage] 投稿日:2016/05/13(金) 08:11:50 ID:bQNEg.kc0



ちょっと便利な異能力、のようです
第三話 条件の交換
おしあみ|



おし|



おしまい|

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