※『夏物語のようです2016』参加作品です 夏物語のようです2016 まとめ - ('A`)mitinko
- 314 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2016/08/19(金) 20:04:13 ID:alE8X3hE0
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――夏といえば怖い話だ。
そう言い出したのは誰だっただろうか。
畳のにおいのする和室のなかで、闇が揺らぐ。
二間先の蝋燭の明かりは、ぼんやりとしたかすかな光しか届けてくれない。
その闇の中に、何人かの人影がある。
百物語。
夏になるとよくその名前を聞く怪談会。
定番なのは、部屋に集まり怪談を九十九話語るというもの。
百話語ると恐ろしいモノが出てくるらしいが、大体はそこまで話す前に終了するのがほとんどだ。
- 315 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2016/08/19(金) 20:05:41 ID:alE8X3hE0
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('A`)「今、何話目だっけ?」
俺たちは今、ミルナの爺さんの家を借りて、その百物語を本格的にやっている。
新月の夜の、暗い和室。
三間続きの和室の、一番奥に当たる部屋には火鉢に並べられた蝋燭が百本。
相手の顔もわからない闇の中で、俺たちは怪談を語り続けている。
( ゚д゚ )「……しまったな。失念していた」
( )「ええと、どうだったかな。ブーンはわかる?」
( )「おー? 僕は電話かけに行ってたから、わかんないお」
( )「えー。つかえないんだからなー」
呟いた言葉に、幾つもの声が返ってくる。
正面に座るミルナと、個性丸出しなブーンの声だけははっきりとわかるが、それ以外は誰がいるのかもわからない。
- 316 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2016/08/19(金) 20:07:25 ID:alE8X3hE0
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('A`)「……」
すぐ近くにいて、こうして話もしている。
なのに、顔が見えないだけで、俺はそこにいるのが親しい相手なのかすらわからない。
百物語がはじまってかなりの時間が経つのに、俺は未だにこの暗闇に慣れていなかった。
ξ )ξ「え? それだとマズくない? 百個、話すのよね」
そんな中、女の声が響いた。
高くも低くもない、普通の声。
大勢の中に紛れてしまえば、俺はきっとその声を見つけることはできないだろう。
( )「大体でいいと思うお!」
ξ )ξ「アンタは、ホントいつもおおざっぱね」
川 )「残っている蝋燭で判断すれば、いいんじゃないか?
自然に消えたものは……まぁ、考えても仕方ないだろう」
( )「クーは、あったまいいおー」
ブーンと、さっきとは違う女の声が聞こえる。
この凛とした声はクーのものだろう。ブーンが名前を出してなくてもわかる、特徴的な美しい声。
だとすると、もう一人の女の声はツンなのだろう。
- 317 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2016/08/19(金) 20:08:20 ID:alE8X3hE0
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ξ )ξ「じゃあ、話の数はこれで解決ね」
クーと仲の良い女子。
それでもって、俺やブーンのようなリアルが充実していないやつにも普通に話しかけてくれる貴重な存在。
ぱっと見は少し話しかけにくいが、なんだかんだで気さくな彼女。
( ゚д゚ )「そうだな。異論はない」
( )「一瞬、どうしようかと思っちゃったよ」
( )「さっさと次の話しようぜー」
ξ )ξ「次の話か……」
ツンが、ためらうように口を開く。
そういえば、途中参加のツンの話はまだ聞いていなかったような気がする。
('A`)「お前は、なんかネタはないのか?」
ξ; )ξ「んー、話すのは苦手なのよねー」
- 318 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2016/08/19(金) 20:09:32 ID:alE8X3hE0
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試しに聞いてみると、ツンが言葉を濁らせる。
怖い話を聞くのは好きだけど、話すのは苦手なタイプか。
そういうことなら、これまで話をしていないのも納得だ。
( ゚д゚ )「他にも話してないやつはいる。後にしてもいいが」
ξ; 〜 )ξ「これ以上プレッシャーがかかってもヤだし、話しちゃうわ」
津出 ツン。
俺たちと同じ大学に通う、日本生まれの日本育ちの日本人。
気さくだし、性格だってそんなに悪くない。
そんなツンが一見、話しかけにくい理由。
ξ )ξ「怖くなくても、つまんないって言わないでよね」
目の端に明るい色がよぎる。
蝋燭のかすかな光に浮かび上がるのは、金の髪。
冗談のように白い肌と、色素の薄い瞳は、テレビの向こう側でしか見たことのない色だ。
――津出 ツンは、金の髪と青い瞳をしている。
- 319 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2016/08/19(金) 20:11:01 ID:alE8X3hE0
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染めたものとは違う、生まれつきのその色。
それは、初対面の人間を一瞬だけ、戸惑わせる。
ξ゚听)ξ「じゃあ、話すわよ」
明かりの加減で、ツンの顔がはっきりと見える。
いつもはくるくるよく変わる表情は、雰囲気に飲まれてかあまり感情が見えない。
暗い和室に佇む、金の髪の少女。
テレビや映画でも見ているような、現実感のない光景だった。
ξ゚听)ξ「これは、あたしのおばあちゃんから聞いた話なんだけどね……」
父方と母方、そのどちらにも異国の血が入っている、少女が語る。
――普段、見慣れたその顔は、不思議と美しく見えた。
- 320 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2016/08/19(金) 20:12:12 ID:alE8X3hE0
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('A`)百物語、のようです
幻の馬。
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(i,)
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- 321 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2016/08/19(金) 20:13:59 ID:alE8X3hE0
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これはおばあちゃんが小さい頃に、聞いた話なんだけど。
おばあちゃんのそのまたおじいちゃんの、おじいちゃんの……ええと、ご先祖様。
そのご先祖様……えっと、おじいちゃんでいいか。
そのおじいちゃんがね、
(*゚∀゚)
(*゚∀゚)「あ!」
まだ子どもの頃にね。キレイな馬を見たっていうの。
.
- 322 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2016/08/19(金) 20:16:12 ID:alE8X3hE0
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_
( ゚∀゚)「どうした?」
(*゚∀゚)「兄ちゃん、見てアレ!」
_
( ゚∀゚)「……すげぇなぁ」
おじいちゃんだけじゃないわ。
おじいちゃんのお兄さんも、おじいちゃんの村の人たちみんなも見たんだって。
(*゚∀゚)「なーなー、あれ乗っていい? 乗っていい?」
_
(; ゚∀゚)「お前一人じゃ、乗れねぇじゃねぇか」
(*゚ o゚)「兄ちゃんが手伝ってくれれば行けるし」
_
( ゚∀゚)「んじゃ、まずは兄ちゃんが乗ってやろう」
(*゚ 3゚)「兄ちゃんばっか、ずりぃー」
- 323 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2016/08/19(金) 20:20:28 ID:alE8X3hE0
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まだ若い、芦毛の馬。
見るからに手触りが良さそうな、輝く毛並み。金色に輝くたてがみはクシを入れたばかりのよう。
村にいるどの馬よりも。それどころか、村にいる人たちがこれまで見たどの馬よりも、その馬はキレイだった。
そんな馬が、おじいちゃんたちの前に現れたの。
美しくて立派な馬が一頭だけ。
しっかりと手入れがされているのに、どこにも飼い主らしい人はいない。
買おうと思ったら、いくら金があっても足りない。それくらい立派な馬だったんだって。
゙゙(; ゚━゚)「ここか!」
(*゚∀゚)「おっちゃん!」
あまりにも立派な馬だから、こんな馬が野生のはずがない。どこかから逃げてきたんじゃないか。
よほどの金持ちか偉い人の馬に違いない、って。
それほど大きくない村はすぐに、大騒ぎになったんだって。
£°ゞ°)「どうしますか?」
("・」・")「そのままには、しとけんだろうなぁ」
゙゙( ゚━゚)「じゃあ、預かるか?」
("-」-")「……それしかないだろうなぁ」
- 324 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2016/08/19(金) 20:21:13 ID:alE8X3hE0
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大人たちが集まって話し合って、結局、持ち主が見つかるまでは村で面倒をみようってことになったの。
村はずれに住んでいるおじさんがたくさん馬を飼っていたから、馬はそこで預かることになったわ。
£°ゞ°)「今日からキミは、しばらくウチの子ですよ」
(*゚∀゚)「いいないいなー」
その馬はとてもかしこい馬だったわ。
おじさんが持ってきた馬具をつけると、馬はおどろくほど素直に従ったわ。
暴れるんじゃないかって、おじさんは心配してたみたいだけど、そんな心配は全然なかった。
£°ゞ°)「キミの家じゃ馬の面倒は見れないでしょう?」
(*゚ぺ)「でもさー、でもー」
£°ゞ°)「しばらくは家にいるから、遊びに来てあげてください」
- 325 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2016/08/19(金) 20:23:27 ID:alE8X3hE0
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おじいちゃんは、その馬を一目見たときからものすごく気に入っていたの。
あの馬はすごかった。死ぬまでそれが、おじいちゃんの口癖だったそうよ。
だから、どうしても自分の家で預かりたかったんだけど、そればっかりはどうにもならなかったみたい。
£°ゞ°)「ほーら、良い子だ。おいで」
(*゚∀゚)「おっちゃん、おっちゃん。こいつに乗せてよ」
£°ゞ°)「ダメです」
_
(; ゚∀゚)「弟のヤツさっきから、ずっとこうなんだ。ちょっとくらい乗せてやってくれよ」
£−ゞ−)「大事な預かりものだからダメです。ウチの子ならいいけど、」
(*゚∀゚)「そいつらじゃヤダ!」
その馬を気に入っていたのは、おじいちゃんだけじゃなくてお兄さんもだったの。
だから、おじいちゃんはお兄さんと二人であの馬に乗せてください、って何度も頼んだの。
だけど、その馬にだけはどうしても乗せてもらえなかったわ。
……大切な預かりものだしね。
近所の子どもを乗せて遊ばせるなんて、おじさんもできなかったのね。
- 326 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2016/08/19(金) 20:25:15 ID:alE8X3hE0
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(*゚∀゚)「おっちゃーん、あの馬まだいるー?」
£°ゞ°)「おや、こんにちは」
_
( ゚∀゚)「こんにちはー」
おじいちゃんたちはそれでもあきらめずに、おじさんのところに通ったの。
おじさんも、二人が馬を見るぶんには怒らなかった。
おじいちゃんたちが気に入っていたその馬は、とても賢くておじさんの言うこともよく聞くいい子だった。
暴れないし、他の馬ともケンカもしない。環境の変化にとまどう様子もなかったみたい。
おじいちゃんたちが見に行くと、いつも近くによってきて懐いてくれたんだって。
_
( ゚∀゚)「あの馬は元気?」
£;−ゞ−)「それが……」
(;゚∀゚)「連れてかれちゃったの!?」
£;°ゞ°)「いえ、そうではなくてですね……」
だけどね、とても困ったことがあったの。
- 327 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2016/08/19(金) 20:27:09 ID:alE8X3hE0
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その子はね、どんなにおじさんが勧めてもエサだけは食べなかったの。
もちろんおじさんもいつも見ているわけじゃないけど、それでも飼い葉が減っている様子はなかった。
甘いものをあげてみても、外に出してみても草を食べないの。
無理やり食べさせても吐いてしまうって、おじさんは困っていたみたい。
_
(; ゚∀゚)「エサ食べないなんて、大丈夫なのか?」
£°ゞ°)「落ち着いているように見えても、やっぱり環境の変化には慣れないんでしょうねぇ。
調子を崩す前になんとか食べてもらいたいのですが……」
(;゚ぺ)「なんとかしてよ、おっちゃん!」
£;°ゞ°)「ええ、わかっていますよ」
それでも、その馬はエサを食べなかったわ。
水は飲むんだけど、おじさんが与えたエサだけはどうしても食べないの。エサのあげ方を変えてもダメだった。
みんな心配していたんだけど、その馬は弱る様子もなく元気だったんだって。
だから結局、おじさんが見ていない間に、草やほかの馬のエサを食べてるんじゃないかってことになったの。
まだ心配だけど、そういうことなら安心だ。って、みんなほっとしたわ。
- 328 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2016/08/19(金) 20:29:49 ID:alE8X3hE0
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困ったことは、他にもあったわ。
馬の持ち主がなかなか見つからなかったの。
あの馬は手入れしたばかりだったみたいにキレイだった。
ちゃんと人が世話をしている形跡はあったし、おじさんのいうこともちゃんと聞く賢い子だった。
捨てられたようにはとても思えない、とても立派な馬。
だから、おじさんや村の人達は、すぐに持ち主が見つかるだろうって思っていたの。
それなのに、持ち主は数日たっても現れなかった。
(*゚∀゚)「お前、ウチにこないか?」
_
( ゚∀゚)「ダメだって。親父も言ってただろ」
(*-∀-)「ちぇー」
£°ゞ°)「キミたちの家が、馬を飼えればよかったんですけどねぇ」
なかなかエサを食べない馬に、見つからない飼い主。
売るわけにもいかないし、下手な扱いもできない。
おじいちゃんたちは馬がいることに喜んでいたけど、おじさんはとても困っていたみたい。
- 329 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2016/08/19(金) 20:31:59 ID:alE8X3hE0
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そんな日々がしばらく続いた、ある日の晩。
――事件は起きたの。
£°ゞ°)「……っ」
( `v´)「大人しくしといたほうが、身のためだぜ」
まぁ、簡単に言っちゃうと……、
おじさんの家にね、強盗が現れたのよ。
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- 330 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2016/08/19(金) 20:33:25 ID:alE8X3hE0
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おじさんの家に押しかけてきたのは、二人組の男だったわ。
彼らは武器をちらつかせ、おじさんが止めるより早く襲いかかってきたの。
( `v´)「そっちはどうだ?」
(●冊●)「婆さんとおばちゃんが一人ずつだ」
£;°ゞ°)「二人はっ!」
( `v´)「殺しちゃあいねぇだろうな」
(●冊●)「とりあえずは」
( `v´)「……だ、そうだ。どうすりゃぁいいかは、わかるだろ?」
それで、どうなったか、って?
ああ、安心して。
おじさんたちは、ちゃんと無事だったわ。
- 331 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2016/08/19(金) 20:35:23 ID:alE8X3hE0
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……そんなの、ホラーじゃない?
ドクオ。アンタねぇ、人の話をいちいち邪魔するのやめたほうがいいわよ。
感想とかならいいけど、怖いか怖くないかなんて人によって違うじゃない。
今度やったら、無視してやるから覚えときなさいよ。
大体、なんで百物語で、普通の犯罪の話なんてしなきゃいけないのよ。
これおばあちゃんに聞いたのよ。
孫に強盗殺人事件を語るおばあちゃんなんてイヤすぎるでしょ。
……
……ごめん。
あたしも、ちょっと言い過ぎたかも。
続きよね。ええと、……
- 332 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2016/08/19(金) 20:37:25 ID:alE8X3hE0
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£;°ゞ°)「……」
おじさんたちは命だけは無事だったわ。
だけど、抵抗できないように縛り上げられて、家中を荒らされたの。
( `v´)「随分と貯めこんでるようだが、これだけとは言わねぇよな。
こっちは人質が一人減ろうが、別にかまわないんだぜ?」
£;°ゞ°)「うっ」
男たちは暴れて、かたっぱしから金目の物を集めたわ。
それだけじゃ飽きたらずに、もっとよこせと言い出したの。
おじさんがどんなに抵抗してもムダだった。
- 333 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2016/08/19(金) 20:39:44 ID:alE8X3hE0
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£; ゞ )「……馬を、預かっています」
(#`v´)「馬だぁ?!」
£; ゞ )「……この村で今、一番価値があるのはあの馬です」
それでおじさんは、仕方なくあの馬のことを話したの。
あの馬ならまず間違いなく高値がつく。おじさんはそれを知っていたから、話すしかなかった。
……自分と家族の命がかかってるからね。あたしも、おじさんが悪いとは思わないわ。
£; ゞ )「……ここ、です」
( `v´)「こいつか」
(●冊●)「間違いないな」
(*`v´)「シケた村かと思ったら、とんだ儲けものじゃねぇか」
馬なんてと、はじめはバカにしていた強盗たちも、その馬を見るなり目の色を変えたわ。
堂々としたその姿は、他のどの馬と比べても圧倒的に美しかった。
この馬なら間違いなく金になると、強盗たちは大喜びだった。
- 334 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2016/08/19(金) 20:41:44 ID:alE8X3hE0
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(*`v´)「こいつを売りゃぁ、豪遊間違いなし、っときた」
(●冊●)「久しぶりの儲けだ」
(*`v´)「こんな場所さっさとおさらばして、一杯やろうぜ」
£;°ゞ°)「……っ」
強盗たちは馬を奪うと、盗んだものをありったけその馬に積んだわ。
そして、おじさんたちを縛り上げたまま残して、二人で馬に乗ったの。
£;°ゞ°)「――あぁ」
(*`v´)「じゃあな、おっさん!
運がよけりゃぁ、助けられるだろうさ!」
――そして、走りだそうとしたその時。
- 335 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2016/08/19(金) 20:43:10 ID:alE8X3hE0
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馬が、暴れだしたの。
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- 336 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2016/08/19(金) 20:45:55 ID:alE8X3hE0
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それはすごい、暴れ様だった。
(●冊●;)「な」
(#`v´)「何やってんだ、このクズ!」
賢くて大人しかったのが嘘みたいに、馬は興奮していたわ。
体を何度も大きく上下に振って、激しく声を上げた。
目は血走り、口からヨダレをぼたぼたと垂らして、それはすさまじい形相だった。
自分に乗っているのが、悪党だって知っているみたいだった……後におじさんは、そう言ったそうよ。
- 337 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2016/08/19(金) 20:47:23 ID:alE8X3hE0
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(#`v´)「おい、なんとかしろ!」
(●冊●;)「くっ」
£;°ゞ°)「ひっ」
馬の暴れ様は凄まじくて、積んだ荷物がかたっぱしから落ちるくらいだった。
だけど、不思議なことに強盗たちは馬から落ちはしなかったわ。
よほど必死でしがみついたのか、それとも馬が惜しかったのか……それは誰にもわからない。
(#゜v゜)「――ぐぅぅっ!!」
そして、馬はひときわ大きく声を上げると、強盗を乗せたまま走りだしたの――。
£°ゞ°)「……そんな、」
……あの馬も、強盗たちも夜の闇に消え。
そして、そこには縛り上げられたままのおじさんだけが残ったわ。
- 338 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2016/08/19(金) 20:49:47 ID:alE8X3hE0
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おじさんたち家族が助けられたのは、夜が明けるよりも早かった。
なんだったかな……。理由は忘れちゃったんだけど、おじさんの家に用があった人がいたの。
゙゙( ゚━゚)
从゚×ナ;从
で、その人が縛られたまま床に転がされている奥さんを見つけてびっくり仰天。
別の部屋にいたお婆ちゃんも救出されて。それから、馬小屋にいたおじさんも助けられたの。
゙゙(;゚━゚)
从゚×ナ;从
£;−ゞ−)
- 339 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2016/08/19(金) 20:51:29 ID:alE8X3hE0
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村はもう大騒ぎ。
大きな事件なんて、もう何年も起こっていない村だったから。それはもうすごかったらしいわ。
盗まれたのが、あの馬というのも騒ぎを大きくする一つの原因だったみたい。
(;"・」・")「それで、被害は? 馬以外はどうなってる」
£;°ゞ°)「私たちは、そう大きな怪我もなく。
あとは、家の中が荒らされたのと、家具が壊されて……」
゙゙(;゚━゚)「無事でほんとうによかった」
おじさんたち家族は小さな怪我くらいで、みんな無事だった。
盗られたものも、馬が暴れた時に落ちたおかげでほとんどなかった。
荒らされた家だけはどうしようもなかったけど、それでもおじさんたちは喜んでいたわ。
- 340 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2016/08/19(金) 20:53:55 ID:alE8X3hE0
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だって強盗よ。
さっきのドクオの話じゃないけど、殺されたっておかしくはなかったんだもの。
それが、命が助かっただけじゃなくて、盗まれたものも返ってきた。これって奇蹟みたいなものじゃない?
£°ゞ°)「ああ、これもあの馬のおかげです」
("・」・")「被害がこの程度ですんで、本当によかった。
何より、お前たちが無事なのが嬉しい」
゙゙( ゚━゚) 「あの馬は、神の使いにちげぇねぇ」
村の人たちも、これは奇蹟に違いないって思ったの。
自分たちがこうして助かったのは、日頃の信仰のおかげだろう。
村人たちのおこないを見た神が、村を守るためにあの馬をつかわしたのだろう、ってね。
- 341 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2016/08/19(金) 20:55:51 ID:alE8X3hE0
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村人たちはその後、恩人である馬の行き先を探したけれど……馬は、見つからなかった。
それらしい馬が売られたって話もなかったし、見た人もいなかったわ。
£°ゞ°)「ああ、あの馬は一体……」
从゚×ナ;从「……無事やと、ええんやけど」
せめて、持ち主にお礼を言おう。
そして、できれば代わりの馬を贈ろう、って探したけど。
あの馬の持ち主は見つからなかった。それどころか、それらしい噂さえもなかったの。
不思議な事に、おじさんたちを襲った強盗のその後の行方もわからなかったわ。
- 342 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2016/08/19(金) 20:57:37 ID:alE8X3hE0
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そう。――あの美しい馬は幻のように現れて。そして、姿を消してしまったの。
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