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192 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/16(土) 21:56:15 ID:p/orKOsg0
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中に入ってみると、ホコリとカビの入り混じったような匂いが鼻についた。
空気はよどみ、肌にべたりと絡みついてくるみたいだった。
<_プー゚)フ「ボロボロだな」
(-@∀@)「いやいや、かなりよい方かと」
それでも、家の中は、朝日の言うとおりかなりいい状態だった。
……まあ、所詮は廃墟だからね。人が住んでいる家とはそりゃあ違うよ。
天井には黒いカビのような物が生えていたし、床には得体のしれない赤黒いシミがポツポツとあった。
だけど、床も気をつけて歩けばしっかりしていたし、さっきの家と違って天井もまだ持ちそうだった。
(;@∀@)「エクスト氏。そこ腐ってるから気をつけて」
<_;プー゚)フ「うぉっ、マジ?!」
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193 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/16(土) 21:59:31 ID:p/orKOsg0
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懐中電灯の光を向けながら、土足で進んでいく。
昼間でも床が腐っていたり、釘やガラスが飛び出していることがあるから、素足というわけにはいかない。
慎重に足元を探りながら進んだ先で、きっちゃん先輩に声をかけられた。
イ从゚ ー゚ノi、「ショボンー、エクストー、こっちこっち!」
(;´・ω・`)「先輩、危ないから一人で進まないで」
先輩の声につられて言ってみると、そこには初めて見る光景が広がっていた。
一言で言うと――そこは宝の山だった。
民家だったらしいその建物には、ひと通りの家具がそろっていた。
台所らしき場所には割れた茶碗や、ホコリをふけばまだ使えそうなお椀が転がっていた。
足元に転がった木箱が邪魔であまり踏み込めなかったけど、転がっていた空き缶の表示は見たこともない古いものだった。
懐中電灯の光を向けてみた先には、色の剥げかけた仏壇が残っていた。
それだけでも驚いたけど、その中に位牌を見つけた時はさすがにぞっとしたね。
……そうだ。今日は持ってないけど、家や部室にはその時の写真がたくさんあるから今度見せるよ。
本当にすごかったんだから。
イ从゚ ー゚ノi、「すごいわね、これ」
(-@∀@)「拙者も、ここまで残留物の多い廃墟は初めてでござる」
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194 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/16(土) 22:01:55 ID:p/orKOsg0
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(*´・ω・`)「いいね、いいね!
こんなに物があるなんて珍しいんじゃないの!?」
(*@∀@)「ああ、この打ち捨てられた感じがなんとも物悲しくてキュンと」
(*´>ω<`)「キュンとかwww」
イ从*゚ ー゚ノi、「何それ」
特に、居間らしい部屋はすごかった。
ところどころ腐った畳の上に、ちゃぶ台がしっかりとした状態で置かれている。
壊れかけたタンスの中には、使われていたらしい服がそのまま残っていた。
<_フ*^∀^)フ「なーな―これ見ろよ!」
<_フ*^∀^)フ「ぱんつ!」
(-@∀@)「……どうしました、プラズマンくん」
(´・ω・`)「正気にかえりなよ、エクスト・プラズマン」
<_フ;゚Д゚)フ「お前ら、何で急に冷静になっちゃってるの?
呼び方違うし、キモっ!!!」
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195 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/16(土) 22:04:44 ID:p/orKOsg0
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イ从゚ ー゚ノi、b「ナイスぱんつ!」
<_ブ∀T)フ「うぉー、きっちゃん部長!! オレっち一生ついていきます!」
イ从*゚ ー゚ノi、「ふっふ。よきにはからっちゃいなさい!」
探索は楽しかった。
この村で初めて入る建物だったし、遺留品の多い廃墟に入るのも初めてだったからね。
懐中電灯を向けた先に、錆びついた時計があった時は、息が止まるほど興奮した。
朝日なんかは興奮して、カメラのフィルムを1本使いきっていたよ。
僕もカメラは朝日に任せるつもりだったけど、気づけばかなりの写真をとっていた。
<_プー゚)フ「なーな、これ昔のカネだろ? 記念に持って帰ろうぜ!」
ただ、エクストが戸棚の中から現金を見つけた時は流石に真っ青になったね。
いくらここが人のいない廃墟だからって、やっていいことと悪いことはある。
廃墟に入り込んでいる身で言えることじゃないけど、それでも最低限の礼儀っていうものがあるからね。
(;´゚ω゚`)「それだけはやめて!」
(iii@∀@)「エクスト氏ぃぃ!!! それはいくらなんでも犯罪でござるぅぅ!!
そんなんじゃ、いつか本当にお縄につきますぞ」
<_フ^ー^)フ「ダイジョーブだって、誰も見てねーし!」
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196 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/16(土) 22:05:35 ID:p/orKOsg0
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(iii´゚ω゚`)「窃盗はやばい! だめだよ、絶対!」
<_プ 3゚)フ「お前らケチだなー。ねー、きっちゃん部長」
イ从゚ ー゚ノi、「泥棒はないわー」
<_;プー゚)フ「え、部長?! あ、なんかゴメン」
これ以上ここにいたら、またエクストがまた何かを持ち帰ると言い出しかねない。
そう思った僕らは、エクストを引き連れてさっさと家からでることにした。
……ようやく外に出た時には、日の光の眩しさと木の緑で、別の世界にいるみたいだった。
イ从゚ ー゚ノi、「あー、空気がウマイっ。クリーチャーはいなかったけど、なかなか楽しかったね」
(´・ω・`)「……それにしても、何でお金が」
(-@∀@)「引っ越すなら普通、置いたままにはしていきませぬな」
<_プー゚)フ「えー、忘れたんじゃね?
うちのグランマやママンは、よくヘソクリなくしたって言ってるぜ」
少し気になることはあったけど、家の探索は十分すぎるほどに満足できるものだった。
山独特の涼しい空気に身を任せながら、僕は大きく息をついた。
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197 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/16(土) 22:07:22 ID:p/orKOsg0
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しばらく休憩してから、僕らは別の家を探索した。
ツタに絡まれたその家は、外観こそ荒れていたけれど、中の状態はとてもよかった。
家には前に住んでいた住人が残したらしい家具や、道具がそのままになっていた。
ホコリや建物の傷みにさえ目をつぶってしまえば、今でも誰かが住んでいるといっても信じてしまいそうだったよ。
<_プ∀゚)フ「水筒見つけたー!!」
イ从゚Д゚ノi、「お茶碗ビームをくらぇぇぇぇ!!!」
(#@∀@)「人の家の物で遊ぶとは何たる狼藉! 流石の拙者もプンプンですぞ!」
(;´・ω・`)「……楽しそうだね、みんな」
前の家と同じく、この家もいわゆるアタリ物件だった。
保存状態がよくて、残留物がここまで残っている廃墟なんて珍しいのに、それが二軒連続。
最初に覗いた家だって、しっかり中が見えたのだからアタリと言えなくもない。
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198 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/16(土) 22:09:22 ID:p/orKOsg0
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――今日はついてる。
そう信じこむ程度には、僕たちのテンションは上がっていた。
この機会を逃したら、こんないい廃村なんて見ることはできない。
できることならずっと、この廃村を回っていたかった。
(-@∀@)「ふむ。そろそろ3時を回りますな」
……とはいえ、時間もそろそろ遅いし、こんなところで日没を迎えるのはマズイ。
僕たちは相談した末、最期にもう一軒だけ探索して帰ろうと決めた。
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199 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/16(土) 22:11:19 ID:p/orKOsg0
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――え、夜のほうが探検にはいいんじゃないかって?
ダメだよ。
廃墟ってのは昼間でも、足元や周りの様子が見えづらいんだ。
そんな場所を視界の悪くなる夜に探索するなんて、それこそ自殺行為だ。
考えてみなよ。あの廃村で、崩れてきた天井に押し潰されたとするよ。
そうなったら、あの道の悪さじゃ、救急車どころか救助の人だって来られないんだから。
大怪我ですめばいいけど、ヘタしたら命を落とすことにもなるかもね。
だから、夜の探索はダメなんだ。
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200 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/16(土) 22:13:33 ID:p/orKOsg0
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('A`)「……なんというか、正直スマンカッタ」
軽く聞いた言葉に、真剣に答えを返されて俺は黙り込んだ。
ショボンのやつ、廃墟にはそれほど興味ないって顔をしておきながら結構、詳しい。
オカ研の件と言い、百物語にわりとノリ気で参加してきたことといい、大人しいくせにこういうことが好きなのかもしれない。
……目の前の相手の顔が見えない程度で、ビビっている俺とは大違いだ。
(*´ ω `)「本当は、エラそうなこと言えないんだけどね。僕も夜の廃墟で肝試しやったことあるし」
( ゚д゚ )「やったのか」
ξ; )ξ「アンタって意外と度胸あるわね」
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201 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/16(土) 22:15:22 ID:p/orKOsg0
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ツンの声にショボンは、「そんなことないんだけどなぁ」と返した。
暗闇の一角が動いているような気がするのは、きっと首でもひねっているのだろう。
ショボンのやつ。この感じだと、こういう感じのスポットには何度も行ってるんだろうな。
……この後のこいつの話が怖い。
(;´ ω `)「……ああ、そうだ。
ドクオじゃないけど、「夜に探検したら」っていうのは、エクストやきっちゃん先輩も言ってたよ。
もちろん。僕と朝日が全力で止めたけど、正直笑えない……」
ハハハと乾いた笑い声を上げたショボンが、言葉を切る。
しばらく飲み物を飲むような音が響いた後、ショボンは再び声を上げた。
(´ ω `)「じゃあ、続きと行こうか。
――エクストときっちゃん先輩を説得した僕らは、最後の家へと向かった」
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202 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/16(土) 22:17:59 ID:p/orKOsg0
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僕たちが最後の探索場所に選んだのは、集落のなかでも特に立派な家だった。
家というよりは屋敷かな。
村長か何か。きっと、村でも有力者の家だったんだろうね。
家のすぐ脇には倉があって、いかにも金持ちの家って感じだった。
イ从゚ぺノi、「これで最後とかつまらないー」
<_プ∀゚)フ「そーだそーだ、もっと回ろうぜぃ!」
(-@∀@)「エクスト氏はあのひどい道を夜間運転する自信がおありで?
揺れますぞ、危ないですぞ、気持ち悪くなりますぞ」
<_フ;゚ー゚)フ「あれれー、オレ早く帰って温泉に行きたくなって」
イ从#゚ ー゚ノi、「この裏切りものー!!!」
きっちゃん先輩は最後まで納得してなかったみたいだけど、それでも最後には折れてくれた。
朝日の説得がきいたのか、それとも単に飽きたのかはわからないけどね。
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203 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/16(土) 22:19:21 ID:p/orKOsg0
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(´・ω・`)「大きな家だね」
屋敷はこれまで見た建物の中で、一番状態がよかった。
元々、頑丈な作りだったんだろうね。
柱は太くてしっかりしていたし、ふすまの上にある鴨居……だったかな? には、キレイな細工がされていた。
床の間にはホコリを被った掛け軸がそのまま残されていた。
イ从*゚ ー゚ノi、「すっごーい」
この家は残留物もすごかった。
例えば、ある部屋には小さな戸棚と人形がいくつか飾られていた。
遊びの途中だったのか、ままごとの道具らしいおもちゃが転がっていて、そこに人形が一つちょこんと置かれていた。
<_;プー゚)フ「ひぃぃぃぃぃ!!!」
エクストはよほど人形に驚いたのか、半泣きになっていたっけ。
他にも、広げられたままの新聞とか、積み重ねられた本がそのまま残っていた。
ちょっと外出しただけ。本当にそんな感じだった。
だけど、残されている新聞は黄色く変色して触ったら崩れそうだったし、本だって見たことのないような古いものだった。
(-@∀@)「日付は……かなり前ですな。
数十年も前のものでござったとは」
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204 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/16(土) 22:21:25 ID:p/orKOsg0
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屋敷は広くて、いろいろな部屋があった。
どの部屋にも物が残されていて、僕らはそのたびに息を呑んだ。
子供部屋、客間らしき部屋、仏間。この家の人がどんな生活をしていたか、目に浮かぶみたいだった。
(´・ω・`).。oO(……あ)
そして、僕は見つけたんだ。
なんとなく触ってみた、戸棚の中にそれはあった。
昔のお金が入った、がま口の財布。
真剣に探せば通帳とか、ハンコみたいなものも見つかったかもしれないね。
でも、僕はそれどころでなかった。
(;´・ω・`).。oO(……何で、また)
背中が、ぞわりとした。
お金を見つけるのは、二回目だ。
最初の家でみつけたときは、エクストの行動を止める方に気を取られてそれほど意識してなかった。
だけど、ここでも見つけたとなるとやっぱりおかしい。
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205 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/16(土) 22:23:31 ID:p/orKOsg0
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(´・ω・`)「ねぇ、朝日」
エクストやきっちゃん先輩には黙っていたよ。
エクストはいいやつだけどバカだから、そんなこと行ったらさっきみたいに持って帰ろうと言いかねない。
きっちゃん先輩は……、うん。まぁ、こっちも考えなしの人だからね。
(´・ω・`)「ここ、やばいかも」
(-@∀@)「……」
だから、僕は朝日にだけこっそりと話した。
朝日はさ。口調はいろいろとアレだけど、僕ら4人の中では一番慎重でいろいろなことに詳しい。
だからなのか、僕が言いたいことを全て理解してくれた。
(-@∀@)「……早めに帰ったほうがいいかもしれませんな」
どうやら朝日も薄々、感じていたらしい。
ここの廃屋たちは残留物が多いんじゃない。多すぎるんだ。
人の生活の気配が残りすぎている。
(-@∀@)「夜逃げでピンチ程度ならよいのでありますが、そうはいかないでしょうなぁ」
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206 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/16(土) 22:25:20 ID:p/orKOsg0
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それまでは深く考えてはいなかったけど、やっぱりこの村はおかしい。
仮に過疎や生活難で移住したとしても、残されているものが多すぎるんだ。
よほど切羽詰まった理由がない限り、人は現金や財布を残したまま出て行かない。
朝日の言うとおり夜逃げなら、なおさら。
それに、位牌が残っているのもおかしい。
仮に、自然災害か何かでやむを得ず出て行ったとしても、現金や位牌があるなら間違いなく取りに戻るはずだ。
でも、それがない。
どう考えたって普通じゃない。
生活の気配が残りすぎた村。
それはまるで何かの理由で人だけが失われてしまったようだった……。
イ从゚ ー゚ノi、「んー、どしたん?」
(;´・ω・`)「い、いやなんでも」
胸の中に何か冷たいものがたまっている。
これから嫌なことがあるとわかっているのに、何もできなくてただ待っている時と同じ気分だ。
何かがおかしい。それはわかっているのに、僕はどうすればいいのかさえもわからなかった。
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207 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/16(土) 22:27:18 ID:p/orKOsg0
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<_;プ∀゚)フ「ああ゙ぁーっ!!」
――その時、エクストが大げさな声を上げた。
(;@∀@)「どうしたでありますか、エクスト氏」
<_ブ∀T)フ「タタミに足がぐじゅって、気持ちわるっ!」
腐った畳を踏み抜いて大騒ぎをするエクストに目を向けると、途中に奇妙なものがあることに気づいた。
……あ、エクストは特に怪我してなかったから安心して。
下手をしたら大惨事だったけど、エクストは本当に運がいいよね。
イ从;゚ ー゚ノi、「あーあ、床抜けてるじゃな……あれ?」
そこで、きっちゃん先輩はあるものに気づいた。
……それは、黒いシミ。
シミは一つじゃなくて、ぽつり、ぽつりと、一定の間隔をおいてついていた。
こういう汚れはそう珍しいものじゃない。現に、これまで入った家にもいくつか見つけた。
だけど、先輩はそうは思わなかったみたいだ。
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208 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/16(土) 22:29:42 ID:p/orKOsg0
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イ从゚ ー゚ノi、「これさ、もしかしたら血だったりしてね」
<_プー゚)フ「血? 別に赤くないぞ」
(-@∀@)「血というのはしばらくすると黒く変色するのですよ、エクスト氏」
<_;プー゚)フ「マジで?!」
ぽつり、ぽつりと続くシミは奥のふすまへと向かって進んでいた。
おそらくまだ進んでいない部屋へと続くふすまを前に、僕らは足を止めた。
イ从゚ ー゚ノi、「ホラーっぽくてドキドキしない?」
<_;プー゚)フ「怖いからヤメロってー」
イ从 ゚∀゚ノi、「これを開けたら、お化けがギャァって〜」
<_;フ>ー<)フ「ヤメロよってー」
ふすまは、まだ何とか動きそうだった。
びびるエクストや、それから我先へと飛び出して行きそうな先輩。
それを押しとどめて、僕は腐りかけたふすまへ手をかけた。
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209 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/16(土) 22:31:49 ID:p/orKOsg0
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――ガタン、と大きな音をたててふすまが開く。
その向こうは真っ黒だった。
先輩の手にした懐中電灯が、闇の中を照らす。
じれったいくらいに狭い範囲しか照らさないオレンジ色の光のなかで、僕は――僕たちは見た。
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210 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/16(土) 22:33:51 ID:p/orKOsg0
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……そうだ。
ちょうど、ここみたいな感じの部屋だった。
ふすまの向こうはこんな感じの和室で、タンスと……布団らしきものが見えた。
タンスはボロボロだった。
それこそ刀か何かで切りつけたように、不自然な傷が一面についていた。
イ从 ー ノi、「なに、これ?」
明かりを向けた布団は、茶色く変色していて。
そこから、畳、タンス、そして天井へと向かう黒い……何か、が見えた。
それは、
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211 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/16(土) 22:35:28 ID:p/orKOsg0
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(´・ω・`)「――血だったと、思う」
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212 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/16(土) 22:37:41 ID:p/orKOsg0
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最初、それが現実だと思えなかった。
どこかで見た映画や、ゲームの光景だろうと思った。
ああ、僕は疲れてるんだな。
そう思ってしまうくらいに、現実感のない光景だった。
<_プー゚)フ「どうした、しょぼくれー」
イ从゚Д゚ノi、「早く行ってよ、見えないーっ!!」
そして、エクストたちの声で、僕はようやくそれが現実だということを理解した。
不自然なくらいにボロボロなタンス、そこに飛び散る黒いシミ。
布団を汚して床からタンス、天井へと続くこの黒いものは――
――壁に飛び散った、血しぶきの跡。
(ii´・ω・`)「あ」
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213 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/16(土) 22:39:58 ID:p/orKOsg0
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<_プー゚)フ「よっしゃ、二番乗りっ!」
イ从゚ぺノi、「なにそれ、シミ? 汚いわねぇ」
僕を押しのけて、部屋の中に入ったエクストと先輩が、わけのわからないことを言っている。
どうして、わからないんだ。
先輩が、汚いと言っているそれはきっと、シミなんかじゃない。
(ii´・ω・`)「違うよね。これ違うよね」
前の部屋で見た、黒いシミが浮かぶ。
ひょっとしたらと笑った、ポツポツと落ちたシミ。
それから、あれと似た得体のしれないシミを見たのを思い出す。
最初の家。
それから、次の家にもあった。
残された家具、生活用具、位牌、現金――これまで、この村で見た光景が次々と脳裏に浮かぶ。
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214 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/16(土) 22:42:27 ID:p/orKOsg0
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(iii@∀@)「ショボン、先輩連れて外っ!」
イ从*゚ ー゚ノi、「どうしたのよ、アサピー。まさか怖いのっ?!」
朝日が叫んだ。いつものフザケてるのとは違う、低い真面目な声だった。
だけど、僕は動けない。
どうしていいのか、どう動いていいのかさえもわからなかった。
――ヤバイかもとは思っていた。
だけど、現実にそれらしい痕跡を見つけてしまうと、もうダメだった。
<_プ∀゚)フ「なー、なー!! これって剣じゃね? かっけー!!!」
イ从*゚ ー゚ノi、「日本刀……? ボロボロだけど」
エクストが細長いものを拾い上げた。
闇の中に浮かぶそれは、先輩の言うとおり刀で。
先輩が懐中電灯で照らした、その刀身は――黒く、こびりつくものがあって。
.
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215 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/16(土) 22:43:29 ID:p/orKOsg0
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ホラー映画で見た、安っぽい光景がいくつも目に浮かぶ。
振り上げられた日本刀。振り回されるそれは、タンスを切りつけ、そして布団に居る人へ向け振り下ろされて……。
首から吹き出る血と、悲鳴までもが脳内でリアルに再生される。
(ii´・ω・`)「ひっ」
イ从゚ぺノi、「もう、さっきからどうしたのよ。二人して情けない」
(iii@∀@)「血だよ、血っ!! この量じゃ助からな」
朝日がこらえきれずに大声を上げた瞬間、――何かが、落ちてきた。
それから、少し遅れてドサリという、重い音。
<_;フー )フ「う――ぁぁぁぁぁぁっ」
イ从;゚ ー゚ノi、「――っ」
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216 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/16(土) 22:45:32 ID:p/orKOsg0
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なんだろうと、考えている余裕はなかった。
視線を横へと向けて、僕は見たような気がする。
暗闇の中に横たわる、何か大きな影。
1メートルかそれ以上の、大きさのしっかりとした重さを持ったそれ。
(iii@∀@)「外っ、警察っ、早くっ!!!」
(ii´・ω・`)「あ――」
僕は見た。
確かに見たんだ。それは、
――それは、確かに人間のカタチをしていた
気が……
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217 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/16(土) 22:47:36 ID:p/orKOsg0
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(ii´ ω `)「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
気づいたら僕は走っていた。
それは、僕だけじゃなくてみんなも同じで。
僕らは屋敷から出て、村の中を走り抜けて、車へと向かっていた。
どこかで引っ掛けて作った、傷が痛かった。
それでも止まってる余裕なんかなくて、転びかけたエクストを二人がかりで引っ張りながら走った。
(iii´・ω・`)「車っ――」
<_;フー )フ「……ひっ、ぁ、あ」
そして、ようやく車へとたどり着いた。
息をつく暇を惜しんで、エクストを車へと押しこむ。
(;@∀@)「先輩も早くっ!」
イ从;゚ ー゚ノi、「うんっ」
そして、車は走りだした。
――道端のお地蔵さんに供えられた花。
そのしなびかけた白と黄の色だけが今でも目に焼き付いている。
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