('A`)百物語、のようです

廃村ツアー

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172 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/16(土) 21:15:58 ID:p/orKOsg0
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ひどい山道を通って、たどり着いたのは村だった。
村とは言ったけど、実際はそれほど大したものじゃない。小さな集落と言った方がいいかもしれないシロモノだった。
それでも、僕らはなんとか人のいそうな場所に着いたんだ。


(´・ω・`)「建物だ」

(*@∀@)「本当でござるか? これは僥倖!!」


見える家の数はそう多くない。
それでも休憩ができるかもしれないと、車を走らせる。すると、道端に花が供えられたお地蔵さんが見えた。
どうやら道はそこで終わりみたいで、そこから先は急に道幅が狭くなり、車じゃ入れない細さになっていた。


(´・ω・`)「行き止まり……みたいだね」

<_フ;ー;)フ「外にだして……死ぬ……」

イ从゚Д゚ノi、「もー、気合が足りないからよー」


僕は窓から周りを見回した。
路肩を使えばなんとか車の切り返しもできそうだ。

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173 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/16(土) 21:18:36 ID:p/orKOsg0

一時はどうなることかと思ったが、最悪でもこれで引き返すことができる。
山道から解放され、僕はようやくほっとした気持ちになっていた。


(-@∀@)「うーむ、ここはどこでござろう。
      ナビは完全に死んでるし、地図はどうであります?」

(´・ω・`)「うーん、さっぱりだね。
      それらしき道がそもそも見当たらないし」

イ从゚ぺノi、「そんなの人に聞けばいいじゃん」


そう言って、まずきっちゃん先輩が外に飛び出した。
それから、エクストが体をフラフラさせながら車から出た。


<_フ;ー;)フ「外だァァァァァ!!」


朝日と相談した結果、僕たちは休憩がてら、人を捕まえて道を聞くことになった。
朝日はしばらく渋っていたけど、最後には納得してくれたよ。
ここがどの辺りかもわからないし、あのひどい道をもう一度通るのはできれば避けたかったからね。
道に迷った辺りから廃墟探索は完全に諦めていたから、その時の僕らは設楽場温泉に帰るつもりだった。

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174 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/16(土) 21:20:37 ID:p/orKOsg0


(´・ω・`)「帰り道が見つけるといいんだけど」

(-@∀@)「まあ、こればっかりは運を天に任せるしか無いでありますな」


で、先に行った先輩たちを追って歩き出したわけだけど。
その村には、本当に人がいなかった。

田舎に行ったことがある人ならわかるだろうけどさ、昼間って意外と人がいないもんだよね。
大体は、昼食後の昼寝とか、仕事とか、畑や山を見に行ってるとかなんだろうけど。
だけど、それを差し引いても、あまりにも人がいないんだ。
そもそも人の気配がしないんだと、僕はしばらく歩いてから気づいた。


(´・ω・`)「誰もいない」


――どうしてだろうと、思った時にふとその理由がわかった。

どこの家も、窓が開いてないんだよね。
設楽場温泉のある山はとても涼しい。だけど、どこの家の窓も開いてないなんて流石に不自然だ。
それから妙に草が多いのも気になった。不自然にぽかりと開いた土地には、茂った雑草が藪と化している。


(´・ω・`)「……庭にしては不自然なような気が」

(-@∀@)「畑か田んぼでしょうな。手入れをしなくなって相当たってる感が」

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175 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/16(土) 21:23:23 ID:p/orKOsg0

ひょっとしたら、ここには誰も人がいないんじゃないかという不安は最初からあった。
僕らの入ってきたあの道じゃ、いくら車でもあまり通る気になれない。
それにこの荒れよう。人が住んでるなら、もう少し手入れをするもんじゃないだろうか。


<_フ;∀;)フ「空気ウマイ! すずしい! ガタガタクネクネしない!!」


先を行くエクストが、草をかきわけて建物へと近づいていたのに気づく。
……だけど、途中でエクストは首をひねりながら別の家へ向かって走りだした。
どうしてだろう?と、エクストが最初に向かった家を眺めてみれば、玄関や勝手口らしき場所に雑草が生い茂っている。
そして、玄関の戸は、はめ込まれたガラスが割れていた。

なるほど、空き家だったのか。僕はそう思ったよ。


イ从#゚ ー゚ノi、「エクストー、先に行かないでよ!」

<_プー゚)フ「へへーん。最初はハズレだったが、一番乗りはオレサマだっ!」


エクストの後を、きっちゃん先輩が走りながら追いかけていく。
僕と朝日はため息を付きながら、二人の後をついて行った。


(-@∀@)「……これはひょっとしたらひょっとするかもですな」

(´・ω・`)「だね」


ひょっとしたら、僕たちは大変なものを発見してしまったのかもしれない。
これまで見かけた家。――いや、それだけじゃない。
この辺りにある家は全て空き家なのかもしれないという可能性が、頭をよぎる。
そうであるならば、僕たちがいるこの場所は……。

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176 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/16(土) 21:24:15 ID:p/orKOsg0

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僕たちはざっとその村を一周りした。

落ちている木の枝を踏み越え、雑草をかき分け、なんとか進めるところを進む。
荒れていたのは、最初に見かけた家や畑だけじゃなかった。
改めて見て回ると家は何軒もあるのに、その周りの道や畑は何年もの間放置されていたとしか思えないほど荒れていた。

その頃には僕は。いや、僕たちはここが廃村だと確信していた。


<_フ; ー )フ「疲れた、もうムリ」

イ从;-Д-ノi、「誰もいないー。つまんないー」


どこにも人の姿はなかった。
人の姿どころか手入れをされている気配すらない。
ここまで来ると、なんで建物があるのかさえ謎だ。


(-@∀@)「これはすごいですな」


朝日がカメラのシャッターを切りながらゆっくりと進む。
一枚、二枚……それだけじゃ物足りないのか、デジカメを取り出して撮影を始める。
僕は遅れがちな朝日に付き添いながら、辺りを見回して息をついた。

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177 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/16(土) 21:26:21 ID:p/orKOsg0

360度どこを見てもあるのは木の緑と、幹の茶色。
山をうめつくすように茂る緑は、目に痛いくらいに鮮やかだ。
緑の隙間を通るようにして見える家や、小屋らしき建物は沈黙し続けている。

人の声も、鳥の声さえもしなかった。
聞こえるのは、どこか遠くから聞こえてくるカナカナという蝉の声だけ。


(-@∀@)「ショボン氏。あちらをみてください」

(´・ω・`)「え?」


不意に声をかけられて、僕は現実へと引き戻された。
朝日がカメラを掲げながら、ある一点を指さしている。


(-@∀@)「あそこの。木の合間……あっちに、他とはすこし違う色が見えるでしょう。
      崩れてかけて危なっかしいこと限りないが、ありゃぁ、きっと石段か何かでござろう」

(´・ω・`)「石段? 何で?」

(-@∀@)「立地的に……寺か、神社か。
      きっちゃん氏に声をかけてみましょう。きっと面白いものが見えるでござるよ、旦那」


止める暇もなかった。
甲高い笑い声を上げながら、朝日は階段へと足を向ける。
旧式のカメラと、最新式のデジカメ。一人だけ大量の荷物を持ちながらも、朝日の足は軽やかだ。


(-@∀@)「この村が本当に生きているのか、それとも死んでいるのか。
      きっと、ここを登ればわかるはずでござる」

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178 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/16(土) 21:28:22 ID:p/orKOsg0
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イ从*゚ ー゚ノi、「なっ、にっ、がっ、あーるーかーなーっ」

(´・ω・`)「朝日の話だと、寺か神社って話だけど」


僕は先輩たちに慌てて声かけると、朝日の後を追いかけはじめた。
朝日は一足先に階段を登り始めていたから、それを追いかけるのは大変だった。
きっちゃん先輩はまだ乗り気だったけど、エクストは階段を見た途端に嫌そうな顔をした。
嫌がるエクストの背を僕ときっちゃん先輩が無理やり押し、僕らは石段を登った。


<_;フー )フ「……っ」


石段は思ったよりも長くって、段差がキツかった。
それでも普通に階段があるところはまだよかったけど、崩れている場所はもう大変だった。
むき出しの地面をよじ登り、何かの拍子に階段が崩れないか心配しながら僕らは進んだ。


(*@∀@)「みんなも来てくれたでありますか」

(;´・ω・`)「行かなきゃよかったって、後悔しているところだよ……エクストが」

<_;フー )フ「……ムリぃ」


朝日と合流し、石段を登る。
「もうカンベンしてくれ」と泣きつくエクストを引きずって、僕らは頂上へとたどり着いた。

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179 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/16(土) 21:31:20 ID:p/orKOsg0

イ从* >∀<ノi、「とーちゃぁぁぁぁく!!!」


――その先に広がっていたのは、完全に潰れた建物だった。
屋根は落ち、柱や壁に至っては原形すらとどめていない。

そこにあったのは、どうやら神社だったらしい。
階段を登ってすぐのところにある、倒れた鳥居がかろうじてその名残を残していた。


(-@∀@)「まあ、こうなりますか」

イ从;゚ ー゚ノi、「うわー、なにこれ腐ってるぅぅ」

(*@∀@)「いやいや、きっちゃん氏。これは上等な方でござるよ」


カメラを取り出して撮影しながら、朝日は笑った。
社殿だったと思われる建物は、どこも無事なところがない。
賽銭箱に入っていたものらしい、錆びた小銭がいくつか、地面に転がっているのが見えた。


<_;フー )フ「なんも、ねーのかよ」

イ从゚ぺノi、「もー、なさけないなぁ。運動しなさいよね、運動」


ゼイゼイと息をあげたエクストは、その場にぺたりと座り込んで動かなくなった。
とりあえず、エクストはきっちゃん先輩に任せて、僕は朝日を引き連れて辺りを見物することにした。

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180 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/16(土) 21:32:19 ID:p/orKOsg0


(´・ω・`)「見事にボロボロだね。誰もいないのかな」

(-@∀@)「その可能性が高いでござるな。
      ……しかれども、まったく手入れがされていないわけではなさそうですぞ」


朝日に言われてみると、確かに神社のあたりはそれほど荒れてはいなかった。
原形を留めてない本殿のひどさに気を取られていたけど、よくみればゴミを集めたり、木の手入れをした跡がある。
それでも落ちた枝葉が散らばっているが、他に比べるとまだ少しは整えられていた。


(-@∀@)「あちら側になにかありそうですな。
      他に比べて、足元も整備されているみたいでござる」

(´・ω・`)「あっち?」


朝日の言う方角には、社殿の脇を抜けて更に奥に続く道があった。
木々の間を抜ける道は、人が何度も通ったのか足元がしっかりと固められていた。


(-@∀@)「きっちゃん先輩ではないが、ワクワクするでござるな」

(;´・ω・`)「え、二人で行くの?」

(*@∀@)「エクスト氏が動けない今、拙者たちが動かなくてどうするでござる。
      きっちゃん氏が帰るぞと言い出さないうちに、行くであります!」

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181 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/16(土) 21:35:53 ID:p/orKOsg0

途中でなくなるのではと恐れたが、道はちゃんと奥の小さな広場まで続いていた。
思いの外整えられたそこにあったのは、小さな祠だった。

社殿とは違って、祠は意外なほどしっかりしていた。
屋根もちゃんと付いているし、古びて入るけれどもどこも壊れていない。
そして、その前にはいつのものかわからない酒瓶と、造花らしい花が飾られていた。


(´・ω・`)「ほこら、かな。花……か。いつ供えたんだろう」

(-@∀@)「生花ならともかく造花じゃ、わからんでござるな
      それほど汚れてないから古くはないと思うのでありますが……」


パシャリと、朝日がカメラのシャッターを切る。
朝日が黙りこんでしまえばもう、辺りは蝉の声とカメラの立てる音しかしない。


(-@∀@)「でもまあ、ここには今でもちゃんと人の手が入っているようですな。
       他の建物と違って寺社仏閣と墓場は、人がいなくなっても手入れすることが多い所でござるから」


朝日の言葉を聞きながら、僕は少し驚いた。
この誰にもいないような村でも、神社の手入れをするような人がいる。
……その人は、何を思って誰もいない寂しい村でゴミを拾い、花を供えたのだろう。


(´・ω・`)「わからない、か」


カナカナとセミは鳴く。
僕は祈るわけでなく――ただ、ぼんやりとそこに立っていた。

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182 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/16(土) 21:36:41 ID:p/orKOsg0

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イ从゚ ー゚ノi、「よしっ、どこかの家に入ろう」


戻ってきた僕らを迎えたのは、きっちゃん先輩のそんな一言だった。
朝日と行った祠の話はしたのだけれども、どうやらきっちゃん先輩のお気に召さなかったらしい。


(;´・ω・`)「はい?」

イ从゚ ー゚ノi、「みんな、ここがどこだと思う? 廃墟よ、廃墟っ!!
       廃墟ときたら探索でしょーが。これオカルト研究会の鉄則!」

(;@∀@)「オカルト研究会じゃなくて、写真部ですぞ……」


きっちゃん先輩は腕を振るうと、探索するべきだと熱弁をふるい出した。朝日や僕の声はもちろん無視している。
いろいろ言っていたけど、そのほとんどが散歩と山登りは飽きたという内容だった。
しばらくその場で、ごちゃごちゃ話していたけど、先輩の暴走は止まらない。


ミoイ从*>ー<ノi、o彡「せっかくそれっぽい建物いっぱいあるんだから入りたいー」

(;´・ω・`)「……先輩、かわいこぶってもダメです」

イ从゚ 3゚ノi、「ケチー」

<_プ3゚)フ「ズルイぞー、しょぼくれー」

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183 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/16(土) 21:38:25 ID:p/orKOsg0

僕や朝日は説得したけど、きっちゃん先輩は主張を曲げなかった。
それどころか、体力が回復したエクストまできっちゃん先輩の主張にノッてきたからもう手に負えない。
先輩は元々、言い出したら聞かない人だ。だから、こんな状態になったら説得も効果がない。


イ从*゚ ー゚ノi、「ふっふーん。わかればいいのよ。わかれば」


僕たちは結局、先輩の言葉に従うことになった。
村の建物を探索するという一大イベントに先輩の顔はとたんに生き生きとしはじめる。


イ从 ゚∀゚ノi、「こういう怪しげな村には、謎のクリーチャーが出るのが鉄則なのよ!
       屍人とか、ゾンビとか、幽霊とか。んー、ワクワクするっ!!」

<_プ∀゚)フ「よっしゃ、ゾンビっ!
        ゲームで鍛えたオレサマの腕前、見せてやるぜ!」

(;´・ω・`)「は、はは。いるといいね、クリーチャー」

(-@∀@)「いや、クリーチャーはいないでござろう」

イ从゚ ー゚ノi、「じゃあ、行くわよ!」


きっちゃん先輩とエクストはごきげんな調子で進んでいく。
僕と朝日はため息を付きながらそれを追いかけた――。

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184 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/16(土) 21:40:38 ID:p/orKOsg0

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( ゚д゚ )「それは、犯罪ではないのか?」


ショボンの話を遮って言ったのは、珍しいことにミルナだった。
不法侵入だと言いたいのだろうか。
真面目で堅物なミルナはどうやら、他人の家に上がり込むことが気になったみたいだ。


('A`)「……これまで散々、廃墟の話をしておいて今更じゃないか」

( ゚д゚ )「そうだが。人がいないと言っても、家なのだろう? 勝手に入るのはよくない」

(    )「細かいこと気にするやつだな、お前」


言われてみればそうかもしれないが、そこで話を止められても困る。
そんなこと言い出したら、最初に言ってた廃墟に行った話とか、肝試し全般がアウトになってしまう。
おいおい、どうするんだよと俺は言いかけて、

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185 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/16(土) 21:43:23 ID:p/orKOsg0


(;´ ω `)「そうだね。やっぱりそうなるよね。僕は止めたんだけど……」


ショボンがいつもの語尾が消えかける弱々しい口調で呟いた。
何度か口ごもりながらショボンは言いかけて、その言葉を途中で切ってしまった。


(´ ω `)「……そうだね。
       きっちゃん先輩やエクストばっかりに責任を押し付けるってのも、卑怯だよね」

(    )「ショボン……」


暗闇の中、暗く光る瞳が見えたような気がした。
ショボンは相変わらずの弱々しい口調で、それでもはっきりと本当のことを口にした。


(´ ω `)「ミルナの言うとおり、本当は犯罪だよね。
      だけどさ、僕たちはどうしても好奇心を抑えきれなかったんだ」

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186 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/16(土) 21:44:49 ID:p/orKOsg0

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……念願の廃墟を見つけて、僕のテンションはかなり上がっていた。


廃村なんて滅多に見れるものじゃない。
それも有名どころじゃない場所となれば、余計にそうだ。
これを逃したら、いつ行けるかわからない。
それに、人の住まなくなった家は長持ちしないからいつ倒壊するかわからないしね。
有名ドコロの廃墟みたいに解体される恐れだってあった。

だから、僕たちはこのチャンスを逃すつもりはなかった。


さっきは止めたって言ったけど。
本当のことを言うと、その時の僕はかなり積極的だった。
まあ……ね。

うん、わかってるよ。
廃墟探索っていうのはさ、元々そういう趣味なんだ。
廃墟関係のHPや本を見れば、そういう警告はいくらでもしてある。
でもさ、僕たちは元々廃墟を探しに来てたんだ。
それっぽい物件があるというのならば、多少の危険を犯しても見たくなるのは当然だよね。


そういうわけだったから、僕らは喜んで廃屋探索へと向かったんだ。

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187 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/16(土) 21:46:46 ID:p/orKOsg0

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神社の階段を下ると、先輩とエクストは真っ先に手近な家へと向かった。
エクストなんかは、神社で倒れかけていたのとは別人みたいな動きだった。
きっちゃん先輩とエクストは、家の前で立ち止まると僕と朝日を呼んだ。


<_プー゚)フ「しょぼくれー、あさぴー来いよ! すげーぜ!!!」

イ从゚ ー゚ノi、「こっちからだと中、見えるよ!」


そこにあった家は、何ていうかもう家じゃなかった。
遠くから見た時はまだまともな建物に見えたけど、近づいてみるとその家には壁がなかった。
正確には、先輩が指さしている一面にあたる壁が外れて、野ざらしになっていた。

板張りの小屋ってあるだろ?
木の板だけを打ち付けて作ったような、古いやつ。
そういうのって、古くなると釘が外れたりして木が外れちゃうんだ。あの家もちょうどそんな感じだった。


イ从゚ ー゚ノi、「見てよ、すっごいボロボロ!」

(;@∀@)「あー、きっちゃん氏。それ以上入ると危ないですぞ」

イ从゚ 3゚ノi、「え〜〜」

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188 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/16(土) 21:49:17 ID:p/orKOsg0


<_フ*^∀^)フ

(´・ω・`)「エクストもダメだからね」

<_フ;゚ー゚)フ「そ、そそ、そんなこと思ってねーし!!」


中に入り込もうとする先輩たちを止めながら、最初にカメラを構えた朝日が。
それから少し遅れて僕が、崩れ落ちた家の中をのぞき込んだ。


――長年放置されていたということは、ひと目でわかった。


最初に目についたのは、建物の中を斜めに走るいくつもの板だった。
これは何だろうと考えた後に、天井の板が外れかかっているのだと気づく。

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189 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/16(土) 21:50:51 ID:p/orKOsg0


イ从゚ ー゚ノi、「アタシも入るぅぅー!!」

<_;フ>∀<)フ「いーれーろぉぉぉ!!!」


(#´・ω・`)「ダメだって!!」


建物は大きく歪み、奥の方の天井は完全に落ちてしまっている。
目を凝らしてみれば、床があったと思われる部分は地面がむき出しになっていて、草が生えていた。
タンスや戸棚みたいなものも見えたけど、上から落ちかかってる天井の板や、草に隠れてよく見えなかった。


(-@∀@)「素晴らしいですが、こりゃあいつ崩れてもおかしくないですな」

<_;プー゚)フ「マジ?」


考えるまでもなく、危険だった。
このまま入り込んだら、あの神社みたいにいつ天井が崩れるかわかったもんじゃない。
名残惜しかったけど、この家は危険だし、村には他にも家がある。
朝日が写真を撮り終わるのを待ってから、僕らは別の民家へと向かった。

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190 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/16(土) 21:52:22 ID:p/orKOsg0

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次に向かったのは、そのすぐ近くにある民家だった。
例によって家の周りは草だらけで、窓は締め切られ、人の気配はどこにもなかった。


イ从゚ ー゚ノi、「入っていい? 入っていい?」

(-@∀@)「そうでござるな……」


家を見上げ、朝日は考えこんでいた。
入っていいものか、入るならどこから入るのか悩んでいるんだろう。
僕は入れそうな入り口がないか歩こうとして、エクストの声を聞いた。


<_プー゚)フ「こっち! こっち! 鍵かかってねーぜ!!!」

(´・ω・`)「!?」


気づくと、エクストが拾った木の枝を振り回しながら家の角の方に立っていた。
エクストのいる方に向かうと、勝手口らしき場所に木の枝を向ける。
そちらに駆け寄って見てみれば、エクストの指す扉は中の様子が見えるくらい開いていた。


(´・ω・`)「誰も、いない……?」

<_プー゚)フ「だろー。スゴイだろ!」


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191 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/16(土) 21:54:30 ID:p/orKOsg0

覗いてみた室内は暗く、奥のほうははっきりと見えない。
しかし、玄関にはホコリや木の葉が降り積もっていて、長年誰も使っていなのはすぐにわかった。


イ从゚∀゚ノi、「よくやった、エクスト!」

<_プ∀゚)フ「やったぜ、きっちゃん部長っ!」

イ从> ー<ノi、「開けるぞドーンっ!!!」


これなら中が、探索できるかもしれない。
そう思いだした瞬間、きっちゃん先輩がエクストに突進して扉に手をかけた。
止めるよりもはるかに先輩の動きは早かった。
途中で何かにひっかかったのだろう、先輩は何度か押したり引いたりしていたが、すぐに扉は開いた。


イ从#゚ ー゚ノi、「アタシにかかればざっと、こんなもんよ!」

<_プー゚)フ「きっちゃん部長すげぇぇ!!!」


イ从゚∀゚ノi、「野郎ども探検よ!!!」

(;@∀@)「あ、足元にはくれぐれも気をつけるでござるよ」


呆然とする僕の横で、朝日が鞄から懐中電灯を差し出した。
きっちゃん先輩はそれを受け取ると、家の中へと踏み込んでいった。

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