('A`)百物語、のようです

廃村ツアー

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※『百物語のようです2014』参加作品です 百物語のようです2014 まとめ - ⊂ブンツンドー⊃

144 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/08/16(土) 20:21:04 ID:p/orKOsg0


――百物語は続いている。


ミルナの爺様の家を借りて、軽い気持ちではじめた百物語。
部屋は暗く、二間先に用意した蝋燭の光もほとんど届かない。
時計もろくに見えない闇の中では、どのくらいの時間がたっているのかもわからなかった。


(    )「……次は僕の番かな」


暗闇の中で声が上がった。
言葉を切り出すタイミングをうかがっていたかのような声。
少しだけ高い声は、語尾が消えかかっている。

この声は、ショボン……だろうか?



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145 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/08/16(土) 20:22:17 ID:p/orKOsg0

( ゚д゚ )「頼む」


誰が。いや、そもそも何人いるかさえもわからない部屋の中。
見えるものといったら、すぐそばにいるミルナの姿くらい。
俺には、同じ部屋にいるはずの声の持ち主すらわからない。


(    )「そうだね……」

('A`)「どうした? 話が思いつかないのか?」

(    )「そうじゃなくて……
      これって体験談でもいいのかな?」


ショボンはためらうように沈黙した後、やっとそう口にした。
体験談。ショボンは幽霊か何かを見たことがあるとでもいうのだろうか?
本当に? 偶然そう見えただけじゃないのか?


(    )「んー、何でもよかったんじゃないかお?」

川   )「私の話もほぼ体験談だったしな。問題ない」

ξ   )ξ「クーのは体験談とは少し違うような……。
       でも、ショボンの体験談にはちょっと興味あるわ」

(    )「いいから、さっさと話してほしいんだからな」


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146 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/08/16(土) 20:23:05 ID:p/orKOsg0


考えこんでいる俺を無視して、話は進んでいく。
あの一番はしゃいでいる声は……ツンだろうな、やっぱり。
そして、誰かが声を上げた声で、部屋は静かになる。


(´ ω `)「じゃあ、あの話にしようかな……」


そして、ショボンは語りだす。


(´・ω・`)「これは去年の話なんだけど……」



部屋に横たわる闇の中で、ショボンの顔がふと見えたような気がした。


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147 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/08/16(土) 20:24:44 ID:p/orKOsg0




              ('A`)百物語、のようです


                   廃村ツアー


                      .,、
                     (i,)
                      |_|



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148 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/16(土) 20:25:54 ID:p/orKOsg0

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僕ってさ、実はサークルをいくつか掛け持ちをしてるんだ。

いろんなサークルに興味があるっていうと嘘になるかな、実際のところは名前を貸してるだけだし。
そう。人数あわせってやつ。学校公認の部活もあるけど、同好会がほとんどかな。

でさ、その中の一つに元写真部ってのがあるんだ。
何が元かって?
そうだね、元はちゃんと活動していたんだけど、真面目な部員が卒業して、今はちゃんと活動してないって言えばわかるかな。
え、それで何をしてるかって?

……部長に振り回される会かな?



ああ、部長のこと?
きっちゃん先輩――、狐娘って言うんだけど知ってる?
狐娘。……狐娘 木津子先輩。
学部でも変人ってことで有名らしいんだけど……。
あ、これ本人が自分から言ってることだから、悪口ってわけじゃないよ。


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149 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/16(土) 20:27:29 ID:p/orKOsg0

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(;´ ω `)「……ごめん。僕が先輩を変人って言ったこと、やっぱ誰にも言わないで」


話し始めてすぐに、ショボンは言葉を切った。
時計がないからはっきりしないが、下手したら1分もたっていないだろう。
その先輩がどれだけ怖いのかは知らないが、いくらなんでも情けなさすぎじゃないか。


(;'A`)「訂正するぐらいなら、最初から言わなきゃいいだろ」

川  - )「そういじめてやるな、ドクオ。
     ショボンの中ではおそらく複雑な葛藤があったのだろう」

(;´ ω `)「……ごめん、みんな本当に忘れて。
      考えなしだった僕が悪いから、この話はもう忘れよう? ね?」


思わず出た不満は、おそらくクーの声によってなだめられた。
俺としてはいじめたつもりなどなかったのだが、どうやらショボンの地雷だかトラウマだかを踏んでしまっていたらしい。
とりあえず「すまん」と謝ると、ショボンに続きを話すように頼むことにした。


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150 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/16(土) 20:30:05 ID:p/orKOsg0


('A`)「それより続きを」

(;´ ω `)「あ、ああ。そうだね」


ξ   )ξ「きつねむすめ……きつ……あ!」


――のだが、ショボンの声は途中から言葉にならなくなった。
ショボンの声を遮るように。突然、女――ツンが声を上げたからだ。
ツンは長いこと唸っていたが、何か思いついたのかぽんと手を叩いた。


( ゚д゚ )「知っているのか?」

ξ   )ξ「もしかして社会学部の人?
      前にキレイな先輩が、学校にテント張ってるのを見たことあるわ」

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151 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/16(土) 20:32:25 ID:p/orKOsg0


ツンは一人納得しているが、俺は話についていけない。
どうやら他の奴らも同じらしい。
しばらくツンの何だか分からない説明を聞いていたが、とうとうブーンらしき声が助けに入った。


(    )「テントって学祭か何かの準備かお?
      ツンもよくそれで、ショボンの先輩ってわかったおね」

ξ;   )ξ「そうじゃなくて、キャンプしてたの、キャンプ! しかも学校で!
       なんだろうって思ってずっと見てたんだけど、駆けつけてきた警備員に連れてかれちゃったの!!」


が、……意味がわからない。

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152 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/16(土) 20:34:15 ID:p/orKOsg0

ツンの言いたいこと自体はかろうじて分かったが、今度はその先輩らしき人が何を考えているのかわからない。
なんだ、その奇行。確かにそれが本当なら相当な変人だろうが、本当にそんなやついるのか?
そう思って他の奴らの様子を伺ってみたが、どいつもこいつも何も言わない。
……まさか、本当なのか?


(´ ω `)「…それ、間違いなく先輩だと思う。
      前に、キャンプしてたら学生課に怒られたって言ってたから……」

(;'A`)「……」

ξ;   )ξ「あ、本当にそうなんだ」

(;'A`)「とんでもねーヤツだな、その部長ってのは」


そう言葉を返すと、ショボンがいた辺りから大きなため息が聞こえた。
どうやらその先輩とやらは想像以上に、困った人物らしい。


(´ ω `)「きっちゃん先輩はさ、そういう人なんだ」


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153 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/16(土) 20:37:52 ID:p/orKOsg0


(´ ω `)「そんなきっちゃん先輩が部長になったらどうなるか……想像つくでしょ」


想像はつくが、深くは考えたくない。
少なくとも、まともに写真をとってないことだけは確かだろう。
全然知らない部ではあるが、空中分解してないことを祈るだけだ。


(;´ ω `)「も、もちろんちゃんと写真を撮ろうとして入部した人もいるんだよ。
      でも、残った部員は不真面目なやつがかなり多くて……」

('A`)「それで、部長に振り回される会か」

(´ ω `)「……うん」

(    )「おーん。なんかすごそうだお」


暗闇の向こうで、力ない笑い声が上がる。
ショボンの声か、それとも話を聞いている誰かのものなのか。闇の中では、はっきりとしなかった。


(´ ω `)「それでね……」


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154 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/16(土) 20:40:33 ID:p/orKOsg0
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部活だけど、活動自体は楽しかったよ。

とにかくきっちゃん先輩が、活動的でね。みんなで集まってはいろんなことをしてた。
夜の学校を探検したり、インチキ降霊術をしてみたり、お化けの被り物でよそのサークルの部室に突撃してみたりね。
古いビデオを引っ張り出してきて、昔の心霊番組や映画を見るなんてしょっちゅうだった。
学校のそばにある廃墟に潜り込んだ時は、ものすごく盛り上がったよ。

……なんていうか、ほぼオカルト研究会だよね。
今年、新入生が何人か入ったんだけど、みんなびっくりしてた。
逃げた新入生がいなかったのが、一種の奇跡だったね。


……話がそれてるね、ゴメン。
僕はもともと上の先輩たちが引退した後、人数合わせのために引っ張り込まれたんだ。
そういった経緯で入った部だけど、それでもきっちゃん先輩たちとバカをやるのは楽しかった。

だからなのか、思い返せば参加率はけっこうよかったような気がする。
結局の所、掛け持ちしている部の中でも元写真部にはかなり思い入れがあったんだね。

写真部とは名ばかりの変な部だったけど、僕以外の部員もみんな楽しくやっていたみたいだった。
まあ、中には先輩狙いのやつも何人かいたみたいだけど、モメることも特になかったよ。

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155 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/16(土) 20:42:12 ID:p/orKOsg0

それで、僕がこれからする話なんだけど。
全てのはじまりは、きっちゃん先輩の思いつきだったらしい。
試験もレポートも大体終わり、いざ夏休みというその日、先輩は突然言い出したそうだ。


イ从゚ ー゚ノi、「夏なんだから、合宿しよ!」

(-@∀@)「え?」


残念ながら僕はその場にいなかったんだけど、それはもう大騒ぎだったらしい。


<_プー゚)フ「いいじゃん! いつやるんだ?」

イ从゚Д゚ノi、「今」


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156 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/16(土) 20:44:28 ID:p/orKOsg0


从´ヮ`;从ト「わわ。え? えっ?」

(;@∀@)「よ、世の中にはいろいろと段取りというものがあってですな。
      というか、いくらなんでも無理でござる!!! ご慈悲を!
      そもそも、きっちゃん氏はどこへ行くつもりでありますか?」

イ从゚ ー゚ノi、「そんなの今から決めるに決まってるじゃん」

(;@∀@)「きっちゃん氏ぃ。ご乱心にも程があるであります。
      ちょっと、引きずらないで! きっちゃん、きっちゃん氏ぃぃぃ!!!」

从´ヮ`;从ト「きっちゃぁーん」


きっちゃん先輩が思いつきで行動するのはいつものことだ。だけど、いくらなんでも急すぎる。
そう思ったみんなは必死で先輩を説得した。
部員総出で「後日にやろう」と訴えた結果、その日は何とか事なきを得た……らしい。

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157 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/16(土) 20:46:36 ID:p/orKOsg0
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――そして、それから数日後。



イ从゚ ー゚ノi、「ついにきたわ! エクスト、車っ!」

<_プー゚)フ「まかせろっ! 見ろよー、このピカピカな新車を!」


僕は学校に呼び出されていた。
ご丁寧にも、軍手や懐中電灯といった持ち物の指定付き。
一体、何をするつもりなんだろうと思った僕を出迎えたのは、元写真部のメンバーだった。


(*@∀@)「おお、ショボン氏。来ていただけましたか。
      拙者、感謝感激雨あられでござる!!!」


きっちゃん先輩こと狐娘木津子と、同じ学部のエクスト・プラスマン。
……そして、学部は違うけど学年は同じ、朝日アサピーがそこには来ていた。


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158 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/16(土) 20:48:25 ID:p/orKOsg0


(*@∀@)「今日の計画でありますが……」


――計画を担当した朝日によると、僕たちは日帰りで設楽場温泉に出かけることになっているらしかった。

合宿をするにはどうしても準備に時間がかかる。
でもそれじゃあ、待ちきれなくなった先輩が何を言い出すかわかったものじゃない。
大変なことになる前に、とりあえず遠出だけでもして、先輩の機嫌を取ろうということらしかった。


        (iii@∀@)】「ショボン氏っ! どうしても来てほしいであります!
              拙者1人で、きっちゃん氏とエクスト氏の相手は無理でござる! 無理でござるよぉぉ!!」


……それで僕が呼び出されたわけだった。
連絡をくれた朝日の必死な姿を思い出す。
集まったのが4人だけなのが残念だったけど、あの急な呼び出しでよく4人も集めたものだと僕は感心したよ。


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159 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/16(土) 20:50:14 ID:p/orKOsg0

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僕たちの行き先は設楽場温泉ということだったけど、その目的は温泉じゃなかった。
……軍手や懐中電灯が持ち物にある時点で、なんとなく普通ではない気がしていたけどね。


イ从*゚ ー゚ノi、「オカ研と言ったら、やっぱオカルトっぽい所よ!」

(-@∀@)「いやいや、きっちゃん氏。写真部でござるよ」

<_プー゚)フ「オカルトって言ったら、心霊スポットか?
        やべー、呪いのトンネルとか通るのか? なぁ、なぁ?!」

(-@∀@)「……写真部」


普通の場所は嫌だという先輩と、朝日の間でいろいろとあったらしい。
僕は詳しく知らないけど、その結果、廃墟を探すということで話がまとまったらしい。

廃鉱山とか廃工場は、下調べに時間がかかる。
だけど、きっちゃん先輩が待ってくれるとは思えない。
朝日は手軽に行けそうな、ホテルやドライブインの廃墟を探してみることにしたそうだ。

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160 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/16(土) 20:52:23 ID:p/orKOsg0

廃墟の中でも、廃ホテルっていうのは定番だ。
ものの本によると廃墟っていうのは基本的には人のいたところにしかないらしい。
じゃあ、その廃ホテルがどこにあるかっていうと、それは主に町か観光地となる。
だけど、大きい街や人気がある土地だと、潰れたホテルはすぐに更地か、新しい建物になってしまう。

となると、目指すは寂れかけた観光地ってわけになるわけさ。


イ从*゚ ー゚ノi、「やっぱこれぞ青春って感じよね。廃墟っ、廃墟っ!」

(-@∀@)「きっちゃん氏、過度な期待は禁物ですぞ。
      拙者、全力を尽くす次第ではありますが、上手くいくとは限らないのが世の中でござる」

<_プー゚)フ「っていうか、温泉行こうぜ、おんせんー」

(´・ω・`)「……なんていうか、みんな元気だよね。朝から」


――それで、思いついたのが隣の県の設楽場温泉ってわけ。

温泉街ならきっと、寂れて廃墟になったホテルの一軒や二軒あるだろう。
それに、あのあたりは山だからね、道中にもめぼしいものがあるかもしれない。
もし何も見つからなかったとしても、最低でも温泉があるからね。
風呂にでも入っておけば、きっちゃん先輩やエクストをごまかせるだろうとなったわけさ。


イ从*゚ ー゚ノi、「お風呂セットも準備ばっちし!」

<_プ∀゚)フ「待ってろよ、温泉まんじゅう!!」

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161 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/16(土) 20:53:22 ID:p/orKOsg0


……ドクオ?

さっきからどうしたのさ。そんなにブツブツ呟いて……
え、温泉?
ああ、日帰り温泉くらいあるだろうって話。


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162 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/16(土) 20:55:20 ID:p/orKOsg0

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(    )「そういえば、設楽場温泉には、混浴で有名な旅館があるおね」


誰が言ったかわからんが、あまりにも素敵でミラクルな言葉が聞こえたような気がする。
こんよく? 混浴だとっ。


(#゚A゚)「なぁんだと!! けしからんっ、けしからんっ!!!」

(;´ ω `)「ど、どうしたの急に」


気づけば俺は、ショボンの声をさえぎって叫んでいた。


(#゚A゚)「年上のお姉さんと旅行で温泉とか羨ましすぎだろ!!」


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163 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/16(土) 20:57:38 ID:p/orKOsg0

百物語とか正直どうでもいい。今は、こいつをとっちめ――


(;-д- )「……祖父たちに聞こえるから、声を抑えてくれないか」

川  - )「ミルナもこう言っている。
     羨ましいのはよくわかったから、続きを聞くことにしよう」


――ようとした動きは、闇の向こうから聞こえてきた声に止められた。
蝋燭の明かりの中で、めったに表情を変えないミルナが困ったように眉を寄せるのが見えた。
もう一つ聞こえてきたのは、クーの声だろうか。


(;'A`)「あ、ああ。スマン」


……人の家でとんでもない失態を晒してしまった。
そう思うと、恥ずかしくて、今すぐにでもこの場から頭を抱えて逃げ出したくなる。
無意味に、ペットボトルからジュースを飲んでみたが気まずさは消えない。


(;´・ω・`)「……えっと、じゃあ続きを話すね」


そんな俺を気使うように、ショボンは恐る恐る続きを話し始めた――。

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164 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/16(土) 21:00:00 ID:p/orKOsg0

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設楽場温泉についたのは、ちょうど昼くらいだった。
それで、軽く回ってみたんだけど、残念ながらそれっぽい廃墟は見当たらなかった。
設楽場温泉自体は確かにさびれているにはいたんだけど、それでも夏休みだからか観光客も多かった。


(-@∀@)「ちょっとメジャーすぎましたかねぇ」

<_プ∀゚)フ「うぉぉぉ、温泉卵食いてぇぇぇ!!!」

(´・ω・`)「あるの? 温泉卵」


それでもひと通り散策してみようってことになって、僕たちは温泉街を巡った。
大通りからはなるべく外れて、それらしき廃墟がないか見て回る。

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165 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/16(土) 21:02:17 ID:p/orKOsg0

イ从*゚ ー゚ノi、「ふふーん。地酒ゼリーだってー!」

(;@∀@)「きっちゃん氏ぃぃぃ。
      それ食べたら運転できないではござらぬかぁぁぁ!!!」

イ从*>〜<ノi、「おいしぃぃ!!!」

<_プД゚)フ「きっちゃん部長ずりぃ、オレもオレも!」


途中で店をひやかしながら歩きまわったけど、なかなかいい建物は見つからなかった。
いい感じにボロい建物はいくつかあったんだけど、まだ現役だったり、人通りがそこそこあって入るのは無理そうだった。


(-@∀@)「不覚っ。場所の選択を完全に見誤ったでござる」

(´・ω・`)「まぁ、こればっかりは詳しく調べてみないとね」


もっとマイナーでブームも過ぎ去った観光地を探すんだった。
朝日が後悔していたけど、時すでに遅しさ。
正直、僕も廃墟が探索できると期待していたから、残念といえば残念だったかな。


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166 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/16(土) 21:04:16 ID:p/orKOsg0

イ从#゚ ー゚ノi、「ねー、どうしてさっきのとこ入らなかったの?」

(-@∀@)「無理でござる。向かいのおみやげ屋さんがスナイパーの目で見張っていたでござる。
      見つかったら、間違いなく公権力によるタイーホフラグ」

イ从#゚ 3゚ノi、「やだやだー」

<_プー゚)フ「なーなー、酒屋行ってもいいだろ? 地酒飲みたい地酒ー!!!」


辛抱できなくなった先輩と、あっちこっちにフラフラするエクストを丸め込みながら、僕らは進んだ。
とはいえ、このまま町を歩くのも不毛だから、方針を変えることにした。
それで僕らは当初の目的を果たすため、車で町外れを目指すことになった。
温泉街の中心部から離れれば、人目がなくて条件のいい廃墟が見つかるかもしれないからね。


イ从゚ワ゚ノi、「あっちの山のほう、なんか見えない?」

<_プー゚)フ「えー、ドレドレ? ドレよ」

(-@∀@)「……建物で、ござろうか?」


みんな行ったことあるかもしれないけど、設楽場温泉って山の中にあるんだよね。
だから、車でちょこっといくだけですぐに山だ。
人気のない山の中にきっちゃん先輩は、建物らしき影を見つけた。

……コンクリートの建物だろうか。
山の中に団地や会社があるとは思えないから、おそらくはホテルか、工場の一部。
温泉地からは結構遠い場所にあるから、ひょっとしたらひょっとするかもしれない。

目的のものも見つからず、迷走していた僕らは迷うこと無く山への道に入った。

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167 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/16(土) 21:06:58 ID:p/orKOsg0

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山道も最初のうちは順調だった。
だけど、どんどん道が細くなっていく。
コンクリートの建物の方にハンドルを切ったせいか、途中でカーナビに道が表示されなくなってしまった。
今思えば、ここで引き返せばよかったけどね。
それでも、もったいないからと道を無理に走ったのが悪かったらしい。


(;@∀@)「む。う、ハンドルが」

(;´・ω・`)「大丈夫、朝日?」


……気づけばUターンもできない細い一本道を、僕らは走っていた。


(ii@∀@)「きっちゃん氏。この道はもう無理でござる!!」

<_;フ−)フ


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168 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/16(土) 21:08:57 ID:p/orKOsg0

イ从゚ ー゚ノi、「しかたないわねー。引き返すことを許可する!」

(;´・ω・`)「引き返すのはいいけど、これUターンできるの?」

イ从*゚ ー゚ノi、「じゃあ、バックで引き返したら?」

(;´・ω・`)「そんなことしたら谷底に向かって真っ逆さまだよ」


このままじゃ立ち往生するぞと思っても、道が狭すぎて引き返すこともできない。
道はどんどん悪くなり、そうこうしているうちに舗装がなくなり、砂利道に入った。
これはヤバイと思ったけど、どうしようもない。最終的に車は、草だか道なんだかよくわからないところを走るハメになっていた。


<_;フ−)フ「むり」


あまりの道の酷さに、エクストが途中でゲロゲロと吐き出した。
それにつられて、僕も朝日がもらいゲロしそうになってさ大変だったよ。


<_;フー)フ「死ぬ」

(;@∀@)「エクスト氏ぃぃぃぃ」

(;´・ω・`)「袋っ! 吐くなら袋っ!! 先輩っ、そっちの窓開けて!!」

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169 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/16(土) 21:10:23 ID:p/orKOsg0


え? 先輩?


イ从゚ぺノi、「どれだけ軟弱なのよ、もー」


先輩は平然としてたよ。
なんかもう、「ちょっと男子〜、クサイからやめてよね〜」とかそんな感じだった。
……僕は乗り物には強い方だと思ってたけから、あの先輩を見た時は軽くショックだったよ。

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170 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/16(土) 21:12:49 ID:p/orKOsg0

……それから、どのくらい車を走らせたかな。
エクストのヤツが半泣きから本気で泣き出したところで、きっちゃん先輩が窓へとピタリと張り付いた。


イ从゚ ー゚ノi、「あ」


先輩は食い入るように、外を見つめている。
一体どうしたんだろうと思った所で、先輩は「家だ」と叫んだ。


(´・ω・`)「……今、何て」

イ从*゚ワ゚ノi、「家だぁぁぁっっ!!」


目に痛いほどの緑の中、木とは違う色が見えた。
なんだろうと目を凝らしてみて、僕もようやく気づいた。

家がある。
それも、一軒だけじゃない。
立ち並ぶ木のカーテンの向こうに、家が立ち並んでいるのが見えた。

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171 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/16(土) 21:13:50 ID:p/orKOsg0

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(´・ω・`)「――そう、」





(´・ω・`)「僕らは、村を見つけたんだ」


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