('A`)百物語、のようです

おまじないのはなし

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89 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/08/18(日) 22:01:47 ID:fHkiEV2U0

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                                           `¨¨¨´




.

90 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/18(日) 22:11:18 ID:fHkiEV2U0


夏休みは、順調に過ぎていった。


中学校では小学校のとき以上に、夏休みの宿題があった。
短い期間ではあるが、部活動のために学校にも出なければならない。
それに、伯母さん――キュートの母親は、夏期講習にキュートを行かせていた。


ヾ||‘‐‘*||レ


ε......o川*゚ー゚)o


o川*゚ワ゚)o ||‘ワ‘*||レ



もちろん勉強だけじゃなくて、遊びの予定もたくさんあった。
友人と出かけたり、プールへ行ったり、家族旅行に行ったりと、彼女の夏はそれなりに充実していた。



――だから、キュートの中学生活はじめての夏休みは、それなりに忙しかった。



.

91 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/18(日) 22:13:03 ID:fHkiEV2U0

彼女は夏休みを、それなりに楽しく過ごしていた。

ただ一つ、気がかりがあるとしたらネーノのこと。
彼とは終業式の帰りに会ったっきりで、それからずっと姿を見かけていない。


o川*゚ー゚)o「ネーノくん……どうしてるかな」


毎日のように教室で見ていた彼の姿が見えないのは、とても寂しい。
キュートは何度かスーパーに出かけて見たけれども、ネーノに会うことは出来なかった。

……夏休み前に言った通り、祖父の家に出かけているのだろう。
キュートもそれは理解している。
しかし、それでもまだこっちにいるのではないかという思いが捨てきれなくて、ついスーパーへと足を向けてしまう。
その繰り返しだった。


o川*゚−゚)o「……元気かな」


腕の怪我はもう大丈夫だろうか?
あれからひどい怪我はしていないだろうか?


.

92 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/18(日) 22:15:50 ID:fHkiEV2U0

……彼に会えない日々は、キュートの不安を募らせた。

電話番号は知っている。
でも、かける勇気なんてないし、かけたとしても何を話したらいいのかわからない。
だから結局、キュートは机の上を見上げて溜息を付くだけ。


(  ・ω・) ニャー

o川*゚ー゚)o「カラマロスー、今キューちゃん考えごとでいそがしいから後でー」


――その日もキュートは溜息をつくと、机の下をうろうろしていた猫を部屋から追い出した。
ひと仕事を終えたキュートが振り返ると、机の上に置いた人形が目に入った。

おまじないの人形。
キュートが、ネーノに似せて作ったそれ。
この人形のせいで、ネーノは腕を怪我した……様な気がする。


o川;゚ー゚)o「……」


――彼がまた、何か危ない目にあっていたとしたら?
忘れていた不安が、キュートの中に沸き起こった。
ネーノにはずっと会えていない。だから、もし彼がまた怪我をしていてもキュートにはわからない。


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93 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/18(日) 22:19:06 ID:fHkiEV2U0

……ネーノくんは、無事なのだろうか?

キュートは急に、いてもたってもいられなくなった。
部屋を飛び出すと、居間にある電話の受話器を取る。
どうしてもネーノの声を聞いて安心したくて、プッシュキーへと指を伸ばす。


o川;>ー<)o「……」


そして、キーを押そうとして、


川*` ゥ´)「――何、電話? どこ? あんまり長電話しちゃやーよ」

o川;゚ー゚)o ビクッ


――母親の声に、その動きを止めた。


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94 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/18(日) 22:22:28 ID:fHkiEV2U0

o川;゚ー゚)o「……その」

川*` ゥ´)「なになに? ひょっとして、男の子?
      男の子なのね! もー、キューもすっかりお年ごろになっちゃって」


ヒール伯母さん……キュートの母親は、キュートの様子を見るなり興味津々となった。
声をワントーン高くして、目をキラキラと輝かせて、キュートに詰め寄る。


o川;゚д゚)o「ちが」

川*` ゥ´)σ「もー、いっちょまえに照れちゃってぇ!」


ヒール伯母さんは、なんというかこういうノリの人だ。
気さくで良い人なのだけれれども、少しばかりデリカシーに欠けることがある。
そんな母親の前で、ネーノに電話をかける度胸はキュートにはなかった。
しかし、ここまできて電話をかけないのも不自然だ。彼女はそう考えて――、


o川;゚ー゚)o「……クーお姉ちゃん! どうしても相談したいことがあって!」

川*` ゥ´)「ああ、クーちゃん? だったら電話じゃなくて、家に来てもらいなさいよ。
      クーちゃんも夏休みなんでしょ? せっかくだし、ごちそうしちゃうわ」


クーお姉ちゃん――つまり私に、おまじないやネーノについて相談しようと思いついた。
「相談したいことがあるの」という言葉と夕飯のお誘いに、特に予定がなかった私は二つ返事で了解した。


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95 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/18(日) 22:25:31 ID:fHkiEV2U0

そして、電話を終え部屋に戻った彼女は、気づいた。
――部屋の扉が開いている。
確か部屋から出るときに閉めたはずなのにと、首をひねりながらキュートは部屋に入る。


o川*゚ー゚)o「……?」


しかし、そこには誰もいなかった。
正確にはいたのだけれども彼女の目には入らなかった。
彼女は首をひねりながら机をなんとなく眺め、そこにあるべきものがなくなっていることに息を呑んだ。


o川;゚ー゚)o「――っ!!」


――人形。
おまじないのための、人形。
確かに机の上におかれていたはずのそれが、なくなっている。
キュートの頭から血の気が引き、落ちているのではないかと机の下を覗きこんで。


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96 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/18(日) 22:27:11 ID:fHkiEV2U0

――


(  ・ω・)


床で動きまわる、白い猫の存在に気づいた。
カラマロス。私が大佐と呼ぶ、キュートの家の飼い猫。
彼が興奮した様子で、何かをひっかき咥え暴れまわっている。


o川;゚д゚)o「ああっ」


カラマロスはその爪で何かを熱心に攻撃をして、遊んでいた。
前足でひきよせたり、飛ばしたり、爪を出して引っ掻いてみたり。それはもう、やりたい放題だ。
そして、彼がやりたい放題している何かは――、




――キュートの作ったおまじないの人形だった。


.

97 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/18(日) 22:29:12 ID:fHkiEV2U0


o川#゚ー゚)o「やめてぇっ!!」

(; ・ω・) !


その瞬間、キュートの頭は真っ白になった。
代わりに浮かんだのは、ネーノの腕に巻かれた白い包帯とギプス。


o川# д )o「だめぇぇぇっ!!」


キュートは手を伸ばし、叫んだ。
床に広がった雑誌に足を取られながらも、カラマロス――猫を捕まえようと走り寄る。
キュートは飼い猫の狼藉を慌てて止めようとしたのだが、カラマロスはその剣幕に驚いたのだろう。
白い毛を、倍以上にふくらませた。


(# ・ω・)


.

98 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/18(日) 22:29:52 ID:fHkiEV2U0

キュートのすぐ脇を、カラマロスの白い体がすり抜けるようにして通り抜けた。
白い毛を逆立てながら、カラマロスはスピードを上げて走る。


その口は――しっかりとおまじないの人形を咥えている。


カラマロスは人形を咥えたまま、開いた扉をくぐり外へと飛び出した。


(# ・ω・)

o川; д )o「待って! 返してぇぇぇぇ!!!」


階段を凄まじい速度で駆け抜ける軽い音の後を、キュートは追いかける。
しかし、白い体はすばしっこくて手が届くどころか、逆に距離を広げられていく。
足元を踏み外しそうになる体を、腕で支えながらキュートはなんとか階段を降りきった。


川#` ゥ´)「キュー! 家の中を走らない!!
      これからクーちゃん来るっていうのに、何してんのアンタは」

o川; д )o「あとで!!」


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99 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/18(日) 22:31:43 ID:fHkiEV2U0

開いた窓の向こうへ、カラマロスは体を滑り込ませる。
それを追って、キュートも玄関へと向かう。
靴を履く時間も惜しくて、サンダルを足に突っかけると、そのまま彼女は走りだした。


o川; д )o「どこっ!? どこなのっ!!」


白い猫の姿は、どこにも見えない。
それでも、家の周りを何度もまわって、そしてようやく――キュートはカラマロスの姿をとまった車の下で見つけた。


o川;゚ O゚)o「お願い、返して!!」


車の下に潜り込んで隠れたカラマロスは、キュートの声に体をぴくりと動かした。


その口は人形を咥えたままだ。


カラマロスは緊張した様子で、キュートが車の下を覗き込むキュートを睨み返す。
しかし、彼は先程のように走り出しはしなかった。


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100 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/18(日) 22:34:11 ID:fHkiEV2U0


カラマロスはキュートの姿を瞬きもせずにじっと見据え続けている。
彼の姿は、一見するとすぐにでも捕まえられそうだ。
しかし、実際は誰かが一定距離内に近づいたら、すぐ逃げ出せるように緊張しながら姿勢を整えている。
……猫というのは、そういうものだ。


o川;゚ー゚)o「お願い、返してっ!!」


キュートは大きな声を上げて、車の下へと手を伸ばす。
しかし、彼女の手は愛猫に届くには短すぎた。
キュートが慌てて地面にしゃがみ込む頃にはもう、カラマロスの白い体は走り出していた。


o川;゚д゚)o「カラマロスー!!!」


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101 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/18(日) 22:36:28 ID:fHkiEV2U0

私が、彼女の家に到着したのはちょうどその頃だ。

私とキュートの家はそう遠くない。同じ武雲市内だから、自転車でも行き来できるし。車ならばもっと早い。
何も知らない私は、カラマロスとの追いかけっこに興じるキュートに向けて、気楽に話しかけた。


川 ゚ -゚)「キュート、遊びに来てやったぞ」

o川; − )o「――っ」


しかし、彼女は私の声に返事を返さなかった。
私に目をくれることもないまま、カラマロスが逃げた方にむけて走りだした。

  _,
川 ゚ -゚)「……どうしたんだ、あの子は?」


血相を変えて走る彼女の姿に、私は「ああ、暑いのにキュートもよくやるな」と脳天気なことを考えていたような気がする。
私は馬鹿だった。
もっと彼女の顔を真剣に見ていれば、ただ事ではないとすぐに気付けたはずだったのに。


川 ゚ -゚)「まあ、いいか」


――だけど、その時の私は何も考えなかった。
キュートの家にお邪魔して、涼しい部屋で伯母さんと話しながらキュートのことを待った。
……馬鹿だと言ってくれて構わない。私はキュートの助けにはなれなかったのだ。


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102 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/18(日) 22:38:05 ID:fHkiEV2U0

キュートは、飼い猫の姿を追って走った。

白い体はすぐに捕まえられそうなのに、どれだけ走っても追いつけない。
それに距離を詰めたと思っても、気づいた瞬間にはすぐに視界からいなくなっている。
白い猫の姿を何とか見つけ出し、そして、捕まえられることのできないまま逃げられるという、追いかけっこが続いていた。


(  ・ω・)


カラマロスは、人形を放そうとしない。
だから、キュートもあきらめることができない。


o川; д )o


その日は、35度を超える猛暑日。
空気はベタベタと重いのに、日差しは焼けるように強かった。
蝉の声は耳がおかしくなるくらいに煩くて、木の緑は目に痛いほどに輝いていた。


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103 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/18(日) 22:40:39 ID:fHkiEV2U0

水も帽子も持たないままキュートは走った。
暑い日差しの中を、彼女は人形を取り返そうと、一人走り続けていた。


o川; − )o「ネーノくん」


キュートが本当に、おまじないのことを信じていたのか、それともそうでないのか。
――私には、わからない。


o川 ;д )o「ネーノくんっ!!」


それどころか私は、その時の彼女が何を思い考えていたのかすら、知らない。
彼女は語ろうとしなかったし、彼女の異変に気づかなかった私に問いかける資格もない。


o川 ;д )o「――っぁぁぁぁぁ!!」


ただ、彼女は本当にネーノのことが好きで。
彼のことだけを思って走り続けたということだけは――わかっている。


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104 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/18(日) 22:42:11 ID:fHkiEV2U0

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――私がキュートを見つけた時、彼女は川にいた。



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105 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/18(日) 22:44:13 ID:fHkiEV2U0


キュートの家から何本か道路を渡った先。
その川の水の流れの中に、彼女は座り込んでいた。
帰りの遅いキュートを探し回っていた私は、ずぶ濡れのキュートを見て血の気が引いたよ。


o川 ;ー;)o「ぅ……ぁ……」

川;゚ -゚)「キュート、どうした!?」


キュートが追いかけていたはずの、カラマロスは土手で毛づくろいをしている。
だけど、彼女はもう猫には目を留めない。
彼女は呆然と川の流れていく先を見つめていた。

そして、私の姿に気づくなり声を上げて泣きだした。


o川 ;д;)o「キューちゃんが悪いの、キューちゃんがぁぁぁぁぁ!!!」


キュートの顔は涙で、くしゃくしゃだったよ。
おしゃれに気を使うような女の子が、涙も拭わず、鼻水まで出して泣くんだ。

――私は、その時になってようやく、取り返しの付かないことが起きたのだと悟った。


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106 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/18(日) 22:46:55 ID:fHkiEV2U0


o川 ;д;)o「行っちゃった……どうしよ……ネーノくん」

川; - )「キュート!」


私はキュートを抱きしめた。
……抱きしめることしか、できなかった。
川の中で座り込むキュートは全身が濡れていて、周りの暑さが嘘のように冷えきっていた。


川 ゚ -゚)「ほら、キュート。しっかりしろ。
     このままじゃ、風邪をひく。この時期に風邪をひくと辛いぞ」

o川 ;д;)o「……ぅ」

川 ゚ -゚)「いくらでも話を聞いてやるから。な?」


立ち上がろうとしないキュートの手を引いて、川から引き上げて。
二人で、手をつないだまま帰った。



――それでも、キュートは泣いたままだった。


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107 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/18(日) 22:48:40 ID:fHkiEV2U0


その日の夜、キュートは全て私に話してくれたよ。
そして私はやっと、何が起こっていたのかを知った。


おまじないのこと、スーパーでのこと、ネーノと一緒にいた女の子のこと。
……それから、ネーノ少年の怪我のこと。
彼の怪我は、自分のおまじないのせいではないか。


それら一つ一つをキュートは、泣きながらも語ってくれた。
彼女の顔色は青くて、それでも瞳だけはギラギラと輝いていて、妙な凄みがあったことを覚えている。

それだけ彼女は思いつめていたのだろうな。
ようやく相談できる相手ができて、それで一気に感情が吹き出したようだった。

キュートは、途切れること無く語り続けたかと思えば、唐突に泣いたり、喚いたりを繰り返した。



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108 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/18(日) 22:50:48 ID:fHkiEV2U0

彼女は、人形の行方も話してくれた。


o川 ゚−゚)o「カラマロスはね、橋のところまで逃げたの。
       それでね橋の横にあるパイプみたいなところをカラマロスは走ってね、そこで落としちゃったの」


カラマロスの咥えた人形は川へと落ちた。

それを見たキュートは、慌てて川岸へと降りたそうだ。
落ちた人形は初めは川岸の草に引っかかていたが、キュートが川岸に着いた頃にはもう見えなくなっていた。
それでも、どこかにあるはずと、キュートは川の中を探しまわり。


o川 − )o「……」


――彼女が再び見つけた頃にはもう、人形は早い流れに乗っていた。
キュートは追いかけたが、もう手遅れで……人形は、とうとう彼女の手の届かないところまで行ってしまった。


o川 ;−;)o「ネーノくんに、何かあったらどうしよう」

川 ゚ -゚)「大丈夫だ。大丈夫だから、な」


そう言って泣く彼女の体を、私は抱きしめるしか出来なかった。
彼女は私の体に体を預けて、ずっと泣いていた――。



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109 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/18(日) 22:53:04 ID:fHkiEV2U0

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そこまで話し終えると、クーは沈黙した。
しばらく待ってみたが、クーはなかなか続きを話そうとする気配がない。


('A`)「それで?」


とうとう俺はクーのいる暗がりに向けて話し始めた。
ほの暗い闇の中、クーの着ているブラウスだけが白く浮かび上がっている。
クーは俺の言葉に、かすかに身動きしたようだった。
微かに吐息を漏らした後に、再び話し始めた。


川 ゚ -゚)「――おまじないの人形が見つかることはなかった」

(    )「残念だおー」


それはそうだろうなと、俺は頷く。
しかし、俺が気になるのは人形の行方じゃなくて、話の続きだ。


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110 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/18(日) 22:55:40 ID:fHkiEV2U0


('A`)「……続きは? あるんだろう?」


俺の問いかけに、クーは再び沈黙した。
迷っているかのように黙りこみ、しばらくたってからようやく彼女は口を開いた。


川 ゚ -゚)「……何もなかったよ、その日は。
     私は伯母さんに頼まれて、キュートの家に泊まったのだが、何もなかった」


――その日、は。
という言葉に、背筋がぞわりとした。


本当に何もなかったのならば、あえて「その日は」なんて言わない。
何かが、あったのだ。
キュートという女の子が恐れていたことが、おそらく現実に起こったのだろう。


……はっきり言おう。
俺は話を促したことを、後悔しだしていた。

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111 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/18(日) 22:57:19 ID:fHkiEV2U0


('A`)「なあ、クー」


聞きたくない。
これから先、クーが話すことはきっと悪いことだ。
それは、きっとついこの前まで小学生だった女の子が目の当たりにするには、辛い話に違いない。


川 - )「本当に、何もなかったんだ。
     キュートは涙をこらえてネーノ少年の家にも電話をかけたが、彼は元気だということだった」


俺の呼びかけを、否定するかのようにクーは話し続ける。
誰も、相槌を打ったり、話しかけようとはしない。

部屋の空気が、息苦しくて。
額から、ぬるりと汗が伝うのを俺は感じていた。


川 - )「異変が起こったのは、……二日後の、夜」



そして、クーは再び話しはじめた。



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112 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/18(日) 22:59:51 ID:fHkiEV2U0

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o川 ;д;)o「ネーノくんが、ネーノくんが死んじゃったの」






――家へと戻った私のもとに、その電話がかかってきた。



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113 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/18(日) 23:01:17 ID:fHkiEV2U0

根野ネーノが死んだ。
その言葉を私は信じることが出来なかった。


          ( `ー´)「お祭り、一緒に行こうな」


だって、そうだろう。
ネーノ少年が死ぬ理由が、見当たらない。
彼には腕の怪我以外には持病も、自ら死を選ぶ動機もないはずだ。
何より彼は、祭りにいくことを楽しみにしていた。
そんな彼が、死ぬなんてことがあるだろうか?


川; - )「……なんで、」

o川 ;д;)o「    」

川 ゚ -゚)「え?」


そして、私はなぜ彼が死んだのかを知った。



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114 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/18(日) 23:03:10 ID:fHkiEV2U0




交通事故。





彼は滞在していた祖父母の家の近くで、車にはねられたのだ。






――そして、それっきり帰らなかった。

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