ブーン系ゴールドラッシュ2013〜突発! タイトル祭り〜
(-_-)は古本屋の幽霊のようです
  その二



17 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/03(金) 00:16:38 ID:3nD40kZ.0

ハローさんはあまりしゃべらない。
僕から話しかけるか、何か用事がないと口を開かない。
たまに店の奥のおそらく住居にいく以外はずっと本を読んでいる。

ここに来てから一週間たった。
あれから来たのは爺さん一人だけだ。名は荒巻というらしい。
5冊一気に買っていった。ハローさんによればいつものことだそうだ。

ハハ ロ -ロ)ハ「五日後にマタ来マスヨ。
          今までソウデシタカラ」

一日一冊読んでいる、ということなんだろう。

荒巻さんに僕は見えないようだった。
一応うろついてみたんだけど、見向きもされなかった。
空気の気持ちがわかった気がした。

18 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/03(金) 00:17:31 ID:3nD40kZ.0

(-_-)「…ハローさん」

ハハ ロ -ロ)ハ「ナンデショウ?」

僕から話しかけることで会話は始まる。
彼女と話すのは、楽しい。生きてる間話す相手がいなかったからかもしれないけど、
僕が思いもしない意見をもらえるからだろう。生きていればきっと話そうとも思わないほどに、僕らは対極だ。
そう思うと幽霊になってよかったのかもしれないな。
まぁ、ハローさんから話しかけられたのは最初を除いて一度だけだけど。

ハハ ロ -ロ)ハ『ヒッキー君』

(-_-)『なんですか?』

ハハ ロ -ロ)ハ『ごはん食べマスカ?』

(-_-)『あ、大丈夫です。おなかすかないので』

ハハ ロ -ロ)ハ『……ソウデスカ』

あの微妙な間はなんだったんだろう。
もしかしたらお供え物をしようと思ったのかもしれない。
お供えされても何も返せないからいいんだけど。

19 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/03(金) 00:18:27 ID:3nD40kZ.0

(-_-)「ここ、経営大丈夫なんですか?
     お客さん来ませんけど」

ハハ ロ -ロ)ハ「いいんデスヨ道楽みたいなものデスカラ」

(-_-)「そういうもんなのかなぁ……」

ハハ ロ -ロ)ハ「ソウイウもんデス。
          Don't worry.蓄えならアリマス」

(-_-)(貯蓄とかそういう問題じゃないと思う)

ハハ ロ -ロ)ハ「そもそもココはワタシの祖父の店デスカラ。
          なんとなく継いでイルダケデ、飽きたらやめマス」

(;-_-)「えぇ……」

ハハ ロ -ロ)ハ「ソウデスネ、やめたら何シマショウ?
          ニホン一周旅行とか楽しそうじゃナイデスカ?
          ワタシ京都行ってみたいデス。お寺巡りシマス」

(-_-)「僕が行ったら浄化されそうですね」

ハハ ロ -ロ)ハ「確かにアナタghostデスカラ。
          デモghostとしては浄化されたホウがいいのデハ?」

(;-_-)「うーん、それはそうなんですけど……」

そもそも自分が成仏できていない理由もわからないのだ。
天国だか地獄だか輪廻転生だか、何かしらあると思っていたのに幽霊ライフがはじまったのだ。
漫画とかなら現世に残る意味がある実は僕は……
的な展開が待っているんだろうが一切何もない。
何もない、とわかっていても期待してしまうのは仕方ないと思う。
少しくらい夢みたっていいじゃないか。僕は幽霊なんだ何も怖がることはない。

20 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/03(金) 00:19:19 ID:3nD40kZ.0

(;-_-)「なんとなく、何もわからないまま消えるのは嫌だなぁ、
      なーんて思うんですよ」

ハハ ロ -ロ)ハ「…ソウデスカ」

まぁ、生きてる人からすれば馬鹿みたいなんだろうな。
生きて状況を変えようともしなかった癖に何言ってるんだか。
結局僕は一番楽な道に逃げただけだ。思考停止は楽だから。
……まさか死んでからも思考する頭があるなんて思わなかったけれど。

ハハ ロ -ロ)ハ「マァ、いいんじゃないデスカ?
          ghost life」

(-_-)「え」

ハハ ロ -ロ)ハ「普通なら経験できマセンシ。
          ちょっと憧れマスネ」

(*-_-)「そ、そう?」

21 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/03(金) 00:20:18 ID:3nD40kZ.0

そういわれると僕は今とても面白い状況にいるんじゃないか。
自分に霊感があったことなんてなかったけど、
皆が経験できないことをするというのは気分がいい。

(-_-)「そういうならハローさんだって、
     幽霊と話す機会なんてそうそうないですよね」

ハハ ロ -ロ)ハ「ム。……確かにソウデスネ」

(*-_-)「じゃあ僕たち面白い経験してますね!」

ハハ ロ -ロ)ハ「…フム。確かにオモシロイ」

ハローさんは感情が表に出にくい。
最初は僕の話が面白くないのかと思ったりしたが違うらしい。
昔からこうなのだそうだ。淡々としていて怖いと言われたこともあると聞いた。
片言でからかわれたこともあるらしい。無視していたら自然と消えたようだけど。

22 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/03(金) 00:21:11 ID:3nD40kZ.0

ハハ ロ -ロ)ハ『周りには好きに言わせておけばイインデスヨ。
          ドウセ他人デスシ、大体は何も考えてないんデスカラ。
          確かに言われたことは事実デスシ』

ハハ ロ -ロ)ハ『ア、事実じゃないのは否定シマシタヨ。
          下手な噂流されるの気持ち悪いカラ』

彼女の言葉は真実だ。きっと僕のはっきりしないところも同じようなことなのだろう。
彼女のように割り切れたら僕はここにはいないだろう。
僕はみんなにいい顔をしていたかったのだ。
周りをみれば、味方はいたのかもしれない。
どれもこれも今更、だけど。

( ´_ゝ`)「おーっす」

(´<_` )「やってるかーい」

ハハ ロ -ロ)ハ「やってマスヨ。イラッシャイ」

23 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/03(金) 00:22:15 ID:3nD40kZ.0

思考の海に沈もうとしたのを間延びした声が引き留めた。
よく顔の似た二人が店に入ってくる。この店の数少ない常連だ。

ハローさんは僕から意識を離した。僕は部屋の隅に戻る。
誰かが来たときは古本屋の通常に戻る。暗黙のルールみたいなものだ。

ただでさえ流行らないのに幽霊がいるだなんてわらえない。
…いや、逆に幽霊見たさの客がふえるかもな。
それは僕がお断りだ。幽霊になってまで見世物扱いなんて御免だ。

( ´_ゝ`)「ハローちゃん、なんか面白いの入った?」

ハハ ロ -ロ)ハ「ウーン、ぼちぼちデスネ
          兄者さんの気に入りそうなものはナイカナァ」

( ´_ゝ`)「むぅ。やっぱり来るの早かったかな?
      まぁいいや。適当にみつくろってくれる?」

ハハ ロ -ロ)ハ「かしこまりマシタ」

ここの古本屋は変わっている。
客の好みに従って店主が本を選ぶのだ。
確かに膨大な本から自分の気に入るものを見つけるのはむずかしいだろう。
だからといってこの膨大な本すべてをおぼえておくなんて、と話した時がある。

ハハ ロ -ロ)ハ『自分の店のものくらい、すべておぼえてマスヨ
          当然デショウ?』

…彼女の当然がよくわからない。

24 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/03(金) 00:23:22 ID:3nD40kZ.0

(´<_` )「お、珍しいもん読んでるな。
        お前オカルトとか信じないのに」

ハハ ロ -ロ)ハ「チョット、ヒトの読んでるものに勝手に触らないでクダサイヨ」

兄者さんによく似た男がハローさんが今まで読んでいた本を手に取った。
幽霊はいるのか、なんて随分実直なタイトルだがそれだけでわかる。
彼女は、僕の存在を認識したから。

(´<_` )「幽霊ねぇ…いるなら見てみたいもんだ」

( ´_ゝ`)「何を言う弟者。幽霊はいるぞ、見えないだけで」

(´<_` )「兄者と違って俺は自分の目で見たものしか信じない主義なんだよ」

( ´_ゝ`)「浪漫のないやつめ…信じた方人生が豊かになる気がしないのか」

(´<_` )「しない」

( ´_ゝ`)「わーお即答。お兄ちゃん傷ついちゃう」

うん、僕も正直信じてなかった。
居たら面白いよなぁ程度だった。
まさか自分がその面白対象になるなんて思わなかった。

ハハ ロ -ロ)ハ「ナラ見てみればいいんじゃナイデスカ?」

25 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/03(金) 00:24:36 ID:3nD40kZ.0

( ´_ゝ`)「え」(´<_` )

6冊ほど本も持ってきたハローさんは爆弾を落としていきました、
そう、僕の存在のカミングアウトです……

(;゚_゚)(ってちょっと待てええええええい!!)

ええ?!なんで!?何がどうしてそうなるの?!
いるかもしれない浪漫だよねーHAHAHAで終わる流れだったよね今!


(*´_ゝ`)「えっなにハローちゃん幽霊に知り合いいんの?」


(´<_` )「わお超非現実。流石にないぞハロー」


ハハ ロ -ロ)ハ「イエ、本気デスヨ
          実際そこにイマスシ」

26 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/03(金) 00:25:32 ID:3nD40kZ.0

(;゚_゚)(ハローさああああああん!?!?!!)

彼女の指はまっすぐ僕をさしている。
多少は仲良くなったと思っていたのに!なにこの裏切られた気持ち!

(*´_ゝ`)(´<_` )クルッ

二人同時に振り向いたが、弟者さんは眉をしかめている。
兄者さんは首をかしげてから近づいてきた。

(;゚_゚)「うわ、」

思わず声が漏れた。ピク、と二人の耳が動く。
そっくりな双子は顔を見合わせる。

27 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/03(金) 00:26:29 ID:3nD40kZ.0

(*´_ゝ`)「聞こえたか弟者」

(´<_` )「……あぁ、信じがたいが確かに声がした」

(*´_ゝ`)「ここには俺らとハローちゃんしかいない
        つまり?」

(´<_` )「…姿の見えない誰かがいる、ということになる」

……え、

(;-_-)「みえてない、の?」

(*´_ゝ`)「!! 見えてないぞ!」

(´<_` )「そうはっきり言うことじゃないと思う」

28 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/03(金) 00:27:33 ID:3nD40kZ.0

(*´_ゝ`)「うーん声の発信源的にここらへんなはずなんだけどなー
        なんとか姿見せれたりしない?」

兄者さんと僕の距離はとても近い。手を伸ばせば触れられる距離だ。

(-_-)「姿はどうにもできないけど、触れそうなくらいに近いですよ」

(*´_ゝ`)「まじで?! えっ触ってみて触ってみて」

(´<_`;)「流石に無防備すぎるだろ兄者。
      仮にも幽霊だぞ、乗っ取られたらどうする」

ハハ ロ -ロ)ハ「ワタシも触れたことはアリマセンヨ」

(-_-)「僕も触ったことないからどうなるかわかんないですよ。
     乗っ取りとかするつもりはないけど」

(;´_ゝ`)「なんで皆そういう不安になるこというかなぁ…」

今更生きた体がほしいとは思わないけど、用心にこしたことはないだろう。
生きた側からすれば僕はおかしな存在なのだから。

29 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/03(金) 00:28:33 ID:3nD40kZ.0

( ´_ゝ`)+「しかし俺は触るぞ、この膨大な好奇心は抑えきれん!」

(´<_`;)「おいおい…これで兄者がどうにかなっちまったらなんて説明すりゃいいんだ俺は」

ハハ ロ -ロ)ハ「好奇心に殺された、とかでいいんじゃナイデスカ?」

(´<_`;)「冗談にならん…
      兄者が触るんなら俺も触る」

( ´_ゝ`)「なにをいうか弟者。俺にもしものことがあったときどうする。
      お前はそこで見ていろ」

(´<_` )「もしもが起きたとして、二人の方なんとかなりそうだろうが。
        どうにかなるときも一緒だ」

( ´_ゝ`)「……わかった。じゃあ幽霊!よろしく頼む!」

(;-_-)「えぇ…」

なんで僕はさして歳の変わらなそうな男二人に頭を下げられているんだろう。
なんで僕は握手を求められているんだろう。
この状況なんかに似てる。あれだ、同時告白してお願いします!ってやつだ。
この二人顔かっこいいし背高いしモテるだろうなぁ。
女の子にやってあげればいいのに。脱線した。

(-_-)「じゃあ、いきますよ」

30 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/03(金) 00:29:38 ID:3nD40kZ.0

( ´_ゝ`)「おう」

(´<_` )「どんとこい」

(-_-)「せー、のっ」

掛け声とともに二人の手を跳ね上げた、つもりだった。
だけど、すりぬけた。僕の手は何にも触れなかった。
しかし相手は違うようだ。

( ゜_ゝ゜)(゜<_゜ )

ぶわっと毛を逆立てて微動だにしない。
見開かれた目がちょっと怖い。というか、

ハハ ロ -ロ)ハ「どうしまシタ?お二人サン」

(;-_-)「も、もしもーし…」

どうしよう、恐れていたもしもが起こってしまったのかもしれない。
いや僕乗っ取ってないけど?!それともやっぱり霊的ななにかのせい!?

(;_;)「ハローさん…どうしよう…」

31 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/03(金) 00:30:30 ID:3nD40kZ.0

二人を動かない状態にしてしまった責任は僕にある。
いや、確かに触れるのを決めたのは二人だけど、僕が触れなければよかっただけなのだ。

ハローさんは呆れたように溜息をついて、こっちへ歩いてくる。
あぁ、ごめんよハローさん。僕は二人を運び出す手伝いすらできやしない。

ハハ ロ -ロ)ハ「二人ともふざけるのはココマデデス」

ぽん、と二人の肩にハローさんが触れた。

( ´_ゝ`)「!!」(´<_` )

(*´_ゝ`)「うおーすっごい寒気した!すげぇ!幽霊すげぇ!!」

(´<_`;)「うおお…二度と経験したくないぞこんなの……」

(;_;)「え、」

何もなかったように二人は話し始めた。

32 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/03(金) 00:31:28 ID:3nD40kZ.0

(;_;)「ふ、ふたりとも大丈夫なんですか?」

(*´_ゝ`)「あぁ!このとおりピンピンしてるぞ」

(´<_` )「一応なんともないぞ」

(;_;)「…よ、よかったあぁぁあ……」

(´<_` )「む、幽霊泣いているのか?」

ハハ ロ -ロ)ハ「ボロ泣きデスヨ」

(;´_ゝ`)「なんと。何故泣くのだ幽霊よ」

(´<_`;)「そうだぞ泣く必要がどこにある。
      俺達は大丈夫だぞ」

(;_⊂)「うぇええぇ……よかったよぉぉ……」

33 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/03(金) 00:32:23 ID:3nD40kZ.0

(;´_ゝ`)「むぅ、見えないと慰めるのも難儀するな」

(´<_`;)「見えたところで触れるわけにはいかないがな。
      あの感覚は遠慮したい」

ハハ ロ -ロ)ハ「二人とも立ったまま気絶して動かなかったカラ。
          モシモが起きたんじゃないかって心配したんデスヨ」

( ´_ゝ`)「なんと」

(´<_` )「記憶がない」

ハハ ロ -ロ)ハ「気絶してマシタカラ」

(*´_ゝ`)「幽霊に触ると一時的に気絶するのかな!
       どう思うよ弟者!」

(´<_` )「正直実験するのは避けたい。
        するなら兄者一人でどうぞ」

( ´_ゝ`)「俺ももうやだよ」

(´<_` )「なん…だと…」

(ぅ_⊂)「……」

34 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/03(金) 00:33:17 ID:3nD40kZ.0

ハハ ロ -ロ)ハ「ム…どうかシマシタカ、ヒッキー君」

( ´_ゝ`)「え、誰ヒッキーって」

(´<_` )「幽霊じゃないの」

( ´_ゝ`)「mjd?!ヒッキーっていうのか!
      俺は兄者!」

(´<_` )「俺は弟者」

( ´_ゝ`)「「我等合わせて流石兄弟!」」(´<_` )

ハハ ロ -ロ)ハ「……」(-_-)

( ´_ゝ`)+「決まったな弟者」

(´<_` )「ちくしょう…ばかばかしいと思いつつ
        合わせてしまう自分が悔しい…」

( ´_ゝ`)ノシ「なーにいってんのお兄ちゃんと仲良くしてくれたっていいじゃなぁい?
          へるもんでないんだから」

(´<_` )「なんかへりそう。MP的なものが」

( ´_ゝ`)「なん…だと…」

35 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/03(金) 00:34:16 ID:3nD40kZ.0

(-_-)「……仲良しなんですね」

ハハ ロ -ロ)ハ「いつものことデスヨ」

うらやましい、なぁ。
 
(  ∀ )

僕が唯一親友だと言える彼が頭をよぎった。
彼は別の高校で楽しくやっているようだった。
なんで自殺する前に彼に会わなかったんだろう。
彼ならいじめなんて笑い飛ばしてくれたかもしれない。
いや、そもそも彼は僕のことなんて忘れているかもしれないな。
親友と思っていたのは僕だけ、だったりして。

36 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/03(金) 00:35:17 ID:3nD40kZ.0

( ´_ゝ`)「あ、そうだせっかくだから写真撮ろう写真!
      写るかもしれないし!」

(´<_` )「携帯しかないぞ」

( ´_ゝ`)「いーんだよ大事なのは心意気だから」

(´<_` )「そういうことじゃないだろ…」

( ´_ゝ`)「じゃあハローちゃん撮って!
      ヒッキーは俺らの間にカモン!」

(;-_-)「写るかわかりませんよ?」

( ´_ゝ`)「気合いだ気合い!」

ハハ ロ -ロ)ハ「なんでワタシガ…」

(´<_` )「お前以外に誰がいるというんだ」

ブツブツと文句を言いながらもハローさんは携帯をこちらに向けてくる。
二人に触らないよう慎重に僕は間に立つ。

37 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/03(金) 00:36:05 ID:3nD40kZ.0

( ´_ゝ`)v「はい弟者ヒッキー、ピースピース」

v(´<_` )「はいはいピースピース」

(-_-)v「ぴ、ピース…」

ハハ ロ -ロ)ハ「OK?ハイ、チーズ」

ピロリーン、と軽い音とともにフラッシュで目がくらむ。
自分が写ったかはわからないが、まっすぐな光はやはり苦手だ。
無条件で視界が狭まるのはよくないと思う。

( ´_ゝ`)「どう?どう?写った?」

ハハ ロ -ロ)ハ「ワタシは見えますカラナントモ」

【( ´_ゝ`)v(-_-)vv(´<_` )】

38 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/03(金) 00:36:59 ID:3nD40kZ.0

(´<_` )「うーん…薄ぼんやりなにかいる気がしないでもない」

( ´_ゝ`)「むぅ駄目だったか」

(-_-)「……なんか、ごめんなさい期待にそえなくて」

( ´_ゝ`)「何、気にすることはない」

(´<_` )「それ空気王。
        いいんだよ駄目元だったんだから」

( ´_ゝ`)「そうそう。話せただけでも面白かったよ」

(-_-)「…でも」

( ´_ゝ`)「しかし流石だな俺等。とうとう幽霊の友ができたぞ」

(´<_` )「ああ。まさか人外の友ができる日が来るとは思わなんだ」

(-_-)「え、」

彼らは何と言った。
この僕を、友達と言ったのか。

39 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/03(金) 00:37:46 ID:3nD40kZ.0

( ´_ゝ`)「む、馴れ馴れしかったか」

(´<_` )「いやこれはあれだ。そんなに仲良くもないのに
        俺達親友だよな!みたいな事言われて言葉に詰まってる状態」

( ´_ゝ`)「やめて、俺の心の奥の何かが壊れそう」

(;-_-)「あ、いや、違うんです」

( ´_ゝ`)「いや俺が悪かった、いきなり友とかひくよなドン引きだよな。
      ごめんよヒッキー俺なんかテンションあがっておかしくなってたんだ。
      気にしなくていいからほんと。知り合いでいいからほんと」

(´<_` )「あ、なんかスイッチはいった」

ハハ ロ -ロ)ハ「アナタがいれたんデショウ」

(;-_-)「いや本当にそうじゃなくて!
       僕が友達でいいのかってことなんですけど!」

40 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/03(金) 00:38:32 ID:3nD40kZ.0

( ´_ゝ`)「「…は?」」(´<_` )

きょとんとして二人はこちらを見る。
僕のことは見えないから視線は合わないけど、確かに顔はこちらを見ている。
なんとなく居心地が悪い。もともと見られるのは苦手なのだ。

(-_-)「だ、だって僕幽霊だし、別に面白いこともできないし、
     友達になってもなにもできないし、いつまでここにいるかもわからないし…」

どんどん目線が下がる。顔をあげられない。
僕はできないことばかりだ。わからないことばかりだ。
こんな僕と友達になってなにがいいのだろう。
きっと彼も僕なんて忘れている。僕はその程度の人間だ。

41 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/03(金) 00:39:31 ID:3nD40kZ.0

( ´_ゝ`)「なんと、友は益か損かで選ぶものだったか弟者」

(´<_` )「ふむ、難しい問題だ。人それぞれともいえる。
        しかし俺等の友の概念は決まっているだろう兄者」

( ´_ゝ`)「おうよ。友になるのは面白いやつだ。
      どうしても益が必要だというのなら存在が俺等の益になる者を友とする」

(´<_` )「そうだヒッキーは面白い。
        姿の見えぬ声だけの幽霊なんて興味をそそられるだろう?」

( ´_ゝ`)「いまんとこそれしか情報がないけどな。
      徐々に相手を知っていくもんじゃないのか友なんて。
      何かをしてもらう相手ではないだろう。それは奴隷だ」

(´<_` )「それにヒッキーいいやつだからな。
        たぶん生きてても友達になっていたよ」

(-_-)「……そう、ですか」

42 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/03(金) 00:40:14 ID:3nD40kZ.0

( ´_ゝ`)「うむ」

(´<_` )「だから、友達になろう」

( ´_ゝ`)「握手できないけどな」

僕はいいやつなんかじゃない。
自分を殺した大馬鹿者だ。いじめに対抗することもしなかった弱い人間なんだ。
きっとそれを知れば二人は離れるだろう。軽蔑するだろう。
それでも、今だけでも、

(;_;)「ぅぇ、」

面と向かった友達だなんて、久しぶりなんだ。

ハハ ロ -ロ)ハ「ア、泣いた」

43 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/03(金) 00:41:10 ID:3nD40kZ.0

(;´_ゝ`)「ええええええええ?!今の泣くところなの?」

(´<_`;)「まじか…泣くほど嫌いか」

(;´_ゝ`)「やっぱり強引すぎた?写真嫌いだった?」

(´<_`;)「あ、俺等の背とか?威圧感あるって言われんだよね」

(;´_ゝ`)「考えたら180超えに挟まれるって怖いよね!?
        いやほんとごめん無神経で」

ハハ ロ -ロ)ハ「ヤーイ、泣かせてヤンノー」

(´<_`;)「ええい茶化すなハロー」

(;´_ゝ`)「そうだぞこっちは必死なんだから」

(;_;)「ち、ちがうんですぅぅ」

44 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/03(金) 00:42:01 ID:3nD40kZ.0

(´<_`;)「違うって、じゃああれか。似すぎて怖いとか」

(;´_ゝ`)「それは双子だから勘弁願いたい不可抗力だ」

(;_;)「そうじゃなくて、うれしいだけなんですぅぅ」

( ´_ゝ`)「…へ?」(´<_` )

(ぅ_;)「ぼ、ぼくのこと、ともだちっていってくれて、うれしかったんですぅ」

ぬぐってもぬぐっても涙が止まらない。
僕は、さみしかったんだ。友達がほしかった。
無条件で話しかけてくれる相手がほしかった。

45 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/03(金) 00:42:49 ID:3nD40kZ.0

( ´_ゝ`)「な、なーんだよー焦ったじゃん嫌われたかと思ってさー」

(´<_` )「あー心臓に悪。泣かれるってどうも嫌だね」

(;_⊂)「ご、ごめんなさぃぃ」

( ´_ゝ`)「あーいいのよいいのよ。嬉し泣きなら大歓迎さ」

(´<_` )「友達になるだけで号泣とかあれだな。
        お前生前友達いなかったろ」

(;_;)「うぇえええぇえん」

(;´_ゝ`)「なんでお前は火に油注ぐような真似を…」

(´<_`;)「いや、まさか当たるとは思わなくてだな。
      冗談だからね?もう俺等がいるじゃん」

ハハ ロ -ロ)ハ「ソウデスヨ。そもそもヒッキー君の友達一号ワタシデスカラ」

46 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/03(金) 00:43:42 ID:3nD40kZ.0

(ぅ_;)「え?」

ハハ ロ -ロ)ハ「? ワタシとヒッキー君は友達デショウ?」

(;_;)「そ、そうなの?」

ハハ ロ -ロ)ハ「聞かれても困りマスネ。
          少なくともワタシハソウ思ってマスケド」

(;_;)「そ、そっかぁ」

(ぅ_⊂)ゴシゴシ

( _ )「そっかぁ」

僕は幽霊だけれど、友達ができた。
どうしても生きている間に会いたかったと思ってしまう。
もしも、を望むことが増えた。
だけど生きている間に会ったとして、きっと僕は友達になれなかっただろう。
今友達になれたのは幽霊だからだ。
幽霊になって、ハローさんといたからだ。

48 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/03(金) 00:44:29 ID:3nD40kZ.0

(-_-)「ありがとう、ございます」

ハハ ロ -ロ)ハ「イエイエ」

( ´_ゝ`)「よろしくなヒッキー」

(´<_` )「友達になってありがとうってどうかと思うけどまぁいっか。
        よろしく」

(*-_-)「…うん、よろしく!」

幽霊になって、よかった。

二、友達ができまして

49 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/03(金) 00:45:58 ID:3nD40kZ.0
幕間

(´<_` )「あ、幽霊信じたわけじゃないから」

( ´_ゝ`)「なんだと。友達になった相手になにをいう」

(´<_` )「いや見えないし声だけだし。
        なんかの思念体かもしれないだろ」

(;´_ゝ`)「思念体っていうと幽霊より怖い気がする」

ハハ ロ -ロ)ハ「幽霊って呼んでたじゃナイデスカ」

(´<_` )「呼び名なかったから便宜的に」

( ´_ゝ`)「何この子頑固」

(-_-)「別に僕はどっちでもいいですけどね」

50 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/03(金) 00:47:57 ID:3nD40kZ.0

今日も店は閑古鳥が鳴いている。
もう三日前のことだが、あの後流石兄弟には僕のことを秘密にしてもらった。

(-_-)『あの…僕のこと、誰にも言わないでくださいね』

( ´_ゝ`)『? なんで?面白いじゃん幽霊』

(;-_-)『言ったら誰か来ちゃうじゃないですか!
       見世物みたいになるの、嫌なんです。
       それに、ハローさんにも迷惑ですし』

ハハ ロ -ロ)ハ『確かに本目当てじゃない人が来るのはチョット』

(´<_` )『あーそっか。把握した』

( ´_ゝ`)『自慢したかったのになぁ…』

残念そうに兄者さんは肩をおとしていたけど仕方ない。
店と僕の平和のためである。
二人は僕との約束を守ってくれているようで、あれからここに妙な人は来ていない。
学校帰りらしい流石兄弟が顔をのぞかせて、十分ほど話して帰っていっただけだ。
彼らの制服には見覚えがあった。ここは僕の住んでいたところからそう遠くはないらしい。
それがわかったからといってどうするわけでもないけど。



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