ブーン系ゴールドラッシュ2013〜突発! タイトル祭り〜
(-_-)は古本屋の幽霊のようです
  その三



51 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/03(金) 00:48:55 ID:3nD40kZ.0

気づけば僕がここに来て十日になる。
日付を数えていることに意味はない。
なんとなく、であって四十九日を気にしてるわけじゃない。断じて違う。

(-_-)「僕、消えちゃうのかなぁ」

嘘です。すごく気にしてます。

ハハ ロ -ロ)ハ「ナンデスカいきなり。縁起でもナイ」

(;-_-)「え、今でてました?」

ハハ ロ -ロ)ハ「バッチリ」

(;-_-)「あちゃー…
       いや、四十九日とかあるじゃないですか。
       四十九日たったら消えちゃうのかなぁ、なんて」

ハハ ロ -ロ)ハ「アー、ありマスネ。
          消えるかどうかワカリマセンケド」

(-_-)「ですねぇ…」

もし消えたら僕は今度こそ地獄行きなのかなぁ。
閻魔大王とかがいて舌を抜かれちゃうのかも。
その前に三途の川か。あ、六文銭持ってないや。

ハハ ロ -ロ)ハ「消えたらさみしくなりマスネ」

(*-_-)「え」

52 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/03(金) 00:49:45 ID:3nD40kZ.0

ハハ ロ -ロ)ハ「なんだかんだいって一緒にいまシタカラ。
          話し相手がいなくなるのはさみしいデス」

(;-_-)「そ、そうなんですか」

一瞬フラグがたったと思ってしまったよえぇ思ったとも。
考えたら幽霊とフラグとかねぇよ!触れもしないんだぞ僕は!

ハハ ロ -ロ)ハ「元の日常に戻るだけなんでスケド。
          やっぱり感慨深いものがアリマス」

(-_-)「そうですかね?」

ハハ ロ -ロ)ハ「ワタシはヒッキー君を知りましたカラ。
          一度知ったものはなかったことにはならないんデスヨ」

例え忘れてモネ、と付け加える。
すこし、わからない。忘れられたらなかったものと同じじゃないか。

53 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/03(金) 00:50:58 ID:3nD40kZ.0

ハハ ロ -ロ)ハ「わかりやすくいいまショウカ。
          昔のアルバムとか開くと記憶が蘇ってくるデショウ?
          確実に開くまでは忘れていたものデス。
          ならなぜ今は覚えているノカ?
          思い出したからデス。人はふとした時に何かを思い出しているのデスヨ
          もしヒッキー君を忘れたとしてもどこかで思い出しマス」

(-_-)「そう、なのかなぁ」

ハハ ロ -ロ)ハ「例えば幽霊トカ。ワタシの幽霊といったらアナタデスカラ」

(;-_-)「なんか嫌ですねそれ。事実なんですけど」

ハハ ロ -ロ)ハ「じゃあ泣き虫」

(;-_-)「更に嫌!」

ハハ ロ -ロ)ハ「ウーン…うつむきがちとか、糸目とか」

(;-_-)「身体的特徴にはいった!!
       僕のイメージ少ない!」
  _,
ハハ ロ -ロ)ハ「そんな考えて人見てマセンカラ。
          じゃあワタシのimageはどうナンデスカ」

54 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/03(金) 00:51:58 ID:3nD40kZ.0

(-_-)「え、…片言?」
  _,
ハハ ロ -ロ)ハ「なんか嫌デス」

(;-_-)「えーっと、本好き」
  _,
ハハ ロ -ロ)ハ「暇だから読んでるだけで別にソンナニ」

(;-_-)「えぇー…金髪とか、眼鏡とか」
  _,
ハハ ロ -ロ)ハ「結局見た目じゃないデスカ」

(;-_-)「むぐ、ぐぅ…ごめんなさい」

ハハ ロ -ロ)ハ「わかればいいのデス」

そう言ってハローさんは手の中の本に目を向ける。
これが会話終了の合図だ。僕も少し話疲れたので隅に戻る。

55 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/03(金) 00:52:55 ID:3nD40kZ.0

改めて考えると、僕はハローさんを全く知らない。
ここの店主をしている女性としかわからない。
十日間共に過ごしているのにこれだ。お互いしゃべらないのもあるんだろうけど。
僕の死んだ理由も彼女は尋ねない。僕は楽なんだけど、気にならないのだろうか。
聞かれても困るけど。僕はきっと覚えてないで押し通してしまうだろう。
幽霊になっても僕は嫌われるのが怖いらしい。

「すいません、」

この店での聞きなれない声に顔をあげる。
流石兄弟は今日こないはずだ。荒巻さんが来るには日が早い。

ハハ ロ -ロ)ハ「ハイ、なんでショウ?」
  _
( ゚∀゚)「流石兄弟の知り合いなんスけど…」

(゚_゚)

なんで、彼が

56 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/03(金) 00:53:52 ID:3nD40kZ.0
ハハ ロ -ロ)ハ「アァ、昨日聞きまシタヨ。
          友達がへこんでいるから本をみつくろってほしいとかナントカ」
  _
(;゚∀゚)「いやほしい本は俺のじゃなくて友達のなんスけど、
     大丈夫ですか?」

ハハ ロ -ロ)ハ「ム。好みがわかっているのならできマスヨ。
          おおまかなジャンルでも教えてもらえれば」
  _,
( ゚∀゚)「ジャンル…たぶんミステリーとか推理物とかかなぁ。
      時間つぶせそうな感じのをお願いします」

ハハ ロ -ロ)ハ「かしこまりマシタ。
          何冊くらいにシマス?」
  _
( ゚∀゚)「とりあえず五冊くらいで。
      どんくらいかかるかわからないから」

ハハ ロ -ロ)ハ「フム、五冊ほど。
          少々お待ちクダサイ」

ハローさんが本を物色し始めた。彼は興味深そうに周りを見回している。
彼の視線が僕を通り過ぎていく。見えないとわかっていても体が強張る。
両手で口を覆う。声は聞こえる可能性があるのだ。
何があっても、彼に感づかれてはいけない。

57 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/03(金) 00:54:43 ID:3nD40kZ.0
  _
( ゚∀゚)「ここらへんのって勝手に読んでいいんスか?」

ハハ ロ -ロ)ハ「構いマセンヨ。」
  _
( ゚∀゚)「じゃあちょっとぶらつきますね」

言い終わる前から彼は歩き始めていた。
その足はまっすぐ僕の方へ向かってくる。

(; _ )(まさか、見えてる?!)

冗談だろう、霊感ある人間がそうそういてたまるか。
僕が硬直していると彼は僕の隣の本棚の前で立ち止まった。
上から下まで眺めて、気になったらしい本を手に取ってめくる。
どうやら僕は見えてないようだ。だが、安心できない。
彼がこちらに一歩踏み出すだけで僕と触れてしまう。

頼む、来ないでくれ、僕に、気づかないでくれ。

58 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/03(金) 00:55:34 ID:3nD40kZ.0

ハハ ロ -ロ)ハ「お客サン、できマシタヨ」
  _
( ゚∀゚)「えっもうできたんスか。
      早いっスね」

ハローさんの呼びかけで彼は奥へ戻っていく。
僕はそっと胸をなでおろした。冷や汗が背中をつたった気がした。

ハハ ロ -ロ)ハ「とりあえずここまで絞りマシタ。
          おおまかなジャンルなのでもしかしたら気に入らないかもシレマセン」

ハローさんは文庫本を15冊ほど持ってきていた。
これから五冊選別するのだろう。僕はまだ息を殺している。
  _
( ゚∀゚)「いや、いいんスよ読むの俺じゃないし…
      うーんこれ全部オススメなんスよね?」

ハハ ロ -ロ)ハ「エェ。個人的には、デスケド」

59 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/03(金) 00:56:23 ID:3nD40kZ.0
  _
( ゚∀゚)「じゃあこの五冊にします。
      残りもとっておいてもらえますか、また来ますんで」

ハハ ロ -ロ)ハ「大丈夫デスヨ。三百円にナリマス」
  _
( ゚∀゚)「お、安いっスね。流石の言うこと聞いてよかった」

彼は笑いながら後ろポケットに入っていた財布から百円を三枚取り出した。
財布についたストラップが僕を見る。
無機質な目が、僕を、責めている。
ああ、彼は、間違いない。

ハハ ロ -ロ)ハ「ウン、丁度デスネ。袋にいれマスカ?」
  _
( ゚∀゚)「あ、大丈夫ですそんままで。カバンあるんで」

そう言って肩に背負っていたカバンに本を入れていく。
もともとあまり入っていなかったのだろう、本を入れてもカバンはへこんだままだった。

ハハ ロ -ロ)ハ「アリガトウゴザイマシタ」
  _
( ゚∀゚)「はいまた来ます。じゃ」

60 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/03(金) 00:57:17 ID:3nD40kZ.0

彼は振り向かず出て行った。ハローさんは手元の本を読み始めた。
僕は口から両手を離す。強く抑えていたからすこし痺れた感じがする。
深い、溜息が口をつく。ハローさんがこちらを見る。

ハハ ロ -ロ)ハ「お知り合いデスカ?」

( _ )「……」

言葉がでなかった。とても疲れていた。
幽霊になって疲れを感じたのは初めてだ。それほど僕は緊張していた。
僕の沈黙を彼女がどう受け取ったのかはわからない。
彼女に視線を向けるのさえ億劫だった。

ハハ ロ -ロ)ハ「ア、六時デスネ。閉めマスカ」

彼女が立ち上がって、店のシャッターを閉める。
彼女が奥へ行くと同時にパチン、と電気が消えた。
暗闇が僕を包んだ。彼女も振り返らない。

僕の頭の中に彼の言葉が回っていた。
  _
( ゚∀゚)『また来ます』

また、彼は僕の前に現れるのだ。
なぜか一筋涙がこぼれた。

61 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/03(金) 00:57:59 ID:3nD40kZ.0
  _
( ゚∀゚)「ちーっすまた来ました」

ハハ ロ -ロ)ハ「イラッシャイ」

二日後、彼はまたやってきた。
僕は隅で体を縮める。息を殺す。
彼に見られるくらいなら早く消えてしまいたい。

ハハ ロ -ロ)ハ「本は喜んでもらえマシタカ?」
  _,
( ゚∀゚)「あー……たぶん」
  _,
ハハ ロ -ロ)ハ「ム。気に入りマセンデシタ?」
  _
(;゚∀゚)「いやいやそうじゃなくて。
     まだ読んでないっていうかなんというか。
     俺は面白いと思いましたけど」

62 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/03(金) 00:58:43 ID:3nD40kZ.0

ハハ ロ -ロ)ハ「アァそうなんデスカ。
          …なんだか声かすれてマセンカ?」
  _
( ゚∀゚)「…あぁ、話さなきゃいけない相手がいるもんで。
      ただの自己満足なんスけどね」

ハハ ロ -ロ)ハ「ソウデスカ。今日も五冊で構いマセンカ?」
  _
( ゚∀゚)「はい、お願いします」

前回選別は済んでいたから彼にはここを見て回る時間はない。
それが僕にとっての救いだった。

ハハ ロ -ロ)ハ「二百円にナリマス」
  _
( ゚∀゚)「相変わらず安いっスね」

前と同じように彼は財布を取り出す。ストラップが僕を見る。
あれには対になる片割れがいる。片割れを探して僕を見つめている。
泣いている、ように見えた。

63 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/03(金) 00:59:39 ID:3nD40kZ.0
  _
( ゚∀゚)「じゃあ、また来ますわ」

ハハ ロ -ロ)ハ「ハイ。アリガトウゴザイマシタ」

彼はしっかりした足取りで帰っていく。店からでたのを確認して息をつく。
ハローさんは僕を一瞥したけれど話しかけてこなかった。
彼女は必要なこと以外は話さない人だ。
それにも僕は救われた。

店は暗闇に包まれる。同化して、僕が見えなくなる。
このまま消えてしまえばいい。また彼が来る前に、今すぐにでも。
きつく目を閉じる。なんで僕は幽霊になってしまったんだ。
彼に気づかれるくらいなら地獄に堕ちる方がマシだ。
どこかで猫の声がした、か細く鳴いていた。
なんとなく、僕に似ている気がした。

64 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/03(金) 01:00:35 ID:3nD40kZ.0

また二日後、彼はやってきた。僕は息を殺す。
置物になったと思う。彼には見えない置物だ。
気にも留められない存在になる。
  _
( ゚∀゚)「どー、も」

ハハ ロ -ロ)ハ「イラッシャイ…声、悪化してマスネ」
  _
( ゚∀゚)「あ゛−…わかります?」
  _,
ハハ ロ -ロ)ハ「かなり酷い声してマスヨ。
          目も腫れぼったいデスネ」
  _
( ゚∀゚)「いろいろ、ありまして。
      いや、ないのかな」
  _,
ハハ ロ -ロ)ハ「……ちょっと待っていてクダサイ」

ハローさんが奥に引っ込んだ。僕はちらと彼を盗み見る。
確かに体調は良くなさそうだ。目の周りが少し赤く、隈もできている。。
声は酷くかすれている。おそらく話すのもつらいだろう。
なにか、あったのだろうか。

65 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/03(金) 01:01:27 ID:3nD40kZ.0

何分たったかわからない。
彼が手持無沙汰に近くの本を手に取った時、両手にマグカップを持ってハローさんは帰ってきた。
甘い香りがふわっと広がる。

ハハ ロ -ロ)ハ「コレ、ドウゾ」
  _
( ゚∀゚)「なんですか、これ」

ハハ ロ -ロ)ハ「Honey teaデス。喉にいいんデスヨ」
  _
( ゚∀゚)「あ、ありがとうございます…」

ハハ ロ -ロ)ハ「ワタシも飲みたかったからお気にナサラズ。
          飲み終わるまでいていいデスヨ。
          椅子は…これをドウゾ」

カウンターの奥にあった椅子を差し出す。
彼は軽く頭を下げて受け取って、深く腰掛けた。
紫のマグカップからは薄く湯気がたっている。一口飲んで、深く溜息をついた。
よほど疲れているようだ。そんなに疲れているのになぜ、ここに来たのだろう。
  _
( ゚∀゚)「あ、これうまいっスね。いい匂いだし」

ハハ ロ -ロ)ハ「気に入ったのならよかったデス」

それきり会話は途切れる。ハローさんはいつものように本を読み始めた。
彼は一度カップに口をつけるもすぐ離してしまう。
両手でカップを包み込んで何か考えているようだった。

66 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/03(金) 01:02:10 ID:3nD40kZ.0
  _
( ゚∀゚)「……店主さんは、なんも聞かないんスね。俺のこと」

零すように彼はつぶやいた。ハローさんが彼に目を向ける。

ハハ ロ -ロ)ハ「? それは何か聞いてほしいということデスカ?」
  _
( ゚∀゚)「…そういうわけじゃ、ないんスけど。
      流石には散々聞かれたもんで。教えなかったけど」

ハハ ロ -ロ)ハ「アァ…彼らはアナタの友達デショウ?
          ワタシにアナタのことを聞く権利はアリマセンヨ。
          何か話したいことがあるのなら聞きマショウ。
          友達には話しにくいこともありマスカラ」
  _
( ゚∀゚)「……友達、ねぇ。
      じゃあ、聞いてくれますか。馬鹿な俺の話」

訥々と彼は語り始めた。

67 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/03(金) 01:02:57 ID:3nD40kZ.0
  _
( ゚∀゚)「俺には親友がいるんですよ。
      …いや、今ではいたっていうのかな。仲のいいやつがいたんです」
  _
( ゚∀゚)「物心ついたときにはいつも一緒でした。
      学校も一緒で、どんな時も気づけば隣にいたんですよ。
      俺とそいつ、性格は全く違いましたが不思議とウマが合ったっていうか。
      とにかく一緒にいました。親友だって、思っていました」
  _
( ゚∀゚)「でも高校離れちゃって。あいつ頭よかったから。
      会う機会もめっきり減っちまって。
      俺、そこそこ高校生活楽しくて。あいつもそうだと信じてたんです。
      メールもしてたし、時々道端で会ったりしてたんスよ。その時は楽しそうに笑ってたし。
      軽い冗談を言ったりして、何も変わってないと思ってました」

68 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/03(金) 01:03:45 ID:3nD40kZ.0
  _
(  ∀ )「だけど、嘘だったんスよね。
     そいつね、屋上から飛び降りたっていうんです。
     学校が楽しかったなら、そんなことするはずないじゃないですか。
     そしたらね、日記があったっていうんです。
     いじめられてたっていうんです」
  _
(  ∀ )「俺、なんも知らなかった。
     あいつがどんだけ苦しんだか。どんだけ辛かったか。
     どんだけ、助けてほしかったか」
  _
(  ∀ )「しかもあいつが飛び降りたとき、俺友達と笑ってた。
     知ったのは家に帰ってから。家に電話がきててさ。
     まさに血の気が引くっての?気づいたら病院にいたよ」
  _
(  ∀ )「白いベッドに、あいつが寝てるんだ。
     頭に包帯ぐるぐる巻いて。血の気のない顔して。
     おばさんは泣いてた。おじさんも泣きそうだった。
     俺は……泣いてたのかな。わからない」
  _
(  ∀ )「そしたら、医者が来て何か言った。
     おじさんは怒ってた。おばさんは崩れ落ちた。
     俺も医者に掴みかかったと思う。なんか叫んだかな、ふざけるな、とか」

69 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/03(金) 01:04:30 ID:3nD40kZ.0
  _
(  ∀ )「あぁ、もうおきないかもしれないって言ったんだ。
     目を覚まさない可能性が高いって。
     信じられるかよ、こいつは生きてんだぜ。
     勝手に殺すなよ。俺の親友なんだよ」
  _
(  ∀ )「こいつの手、あったかいんだよ。
     生きてんだよ。生きてんだよ。
     誰かに押さえつけられてもずっと叫んでたな。
     その日どうやって帰ったのかも覚えてない。
     気づいたら朝になってた。」
  _
(  ∀ )「病院行こうとしたら親に止められてさ。
     お前がいて何ができるって。正論だよ。
     俺には何もできやしない。でもおとなしく学校なんて行っていられない。」
  _
(  ∀ )「言い争って、結局負けて、学校終わったら見舞いに行っていいって。
     それから毎日。動かないあいつの横に座って。
     昔の話とか延々とした。修学旅行で揃いで買ったものとか、運動会で最後転んだとか。
     でも、話すこと、尽きた」
  _
(  ∀ )「話してんの俺だけだから。こいつは返しちゃくれない。
     なんだろう、不安なのかな。
     本当にこいつがいなくなった気がした。
     実は魂がどっかいっちゃってるのかも、なんて思った」

70 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/03(金) 01:05:32 ID:3nD40kZ.0
  _
(  ∀ )「そしたら急に怖くなった。
     こいつをなんとかして繋ぎ止めないといけない。
     だけど俺、こいつのことわからないんだ。
     新しい思い出がないんだ。俺の中のこいつは止まっちまってるんだ」
  _
(  ∀ )「だから、本に頼った。
     安い古本屋聞いて、ここに来て。
     買っていったの、あいつの横で読んだんだ。
     ずっと声だしてさ、通じろって」
  _
(  ∀ )「あいつずっと寝たままだけど、通じろって。
     でもさ、昨日気づいたんだよ。
     こいつは俺のこと親友だって思っていたのかなって」
  _
( ;∀;)「思っていたなら相談したんじゃないか。
      もしかしたらそう思っていたのは俺だけだったんじゃないか。
      聞いてもこたえねぇんだよ。動きもしねぇ。
      否定してくれねぇとさぁ。どうすりゃいいんだよ俺は。
      あぁくそ、涙が出てきた。ちくしょう。
      なんでなんだよ、ちくしょう…」

店内に彼の嗚咽だけが響く。僕は、彼の涙もぬぐえない。
君がそんなこと思ってるだなんて、知らなかった。
君がそんなことしてるなんて、知らなかった。
泣かないでくれよ。君はいつも笑っていたじゃないか。
君に泣かれたら、僕はどうしていいかわからない。

71 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/03(金) 01:06:30 ID:3nD40kZ.0

いつの間にかハローさんは新たなマグカップにハチミツティーを注ぎなおしていた。
それを彼が握りしめていたカップと交換する。

ハハ ロ -ロ)ハ「ドウゾ。温かいものを飲むと落ち着きマスヨ」
  _
( ;∀;)「……ありがとう、ございます」

彼はすぐに飲み始めた。
喋りつかれたのだろう、みるみる内にカップが空になる。

ハハ ロ -ロ)ハ「もう一杯、持ってきまショウカ?」
  _
( ぅ∀;)「あぁ、いや、大丈夫です。
       すごいですね、なんか落ち着きました。のどもマシになったし」

ハハ ロ -ロ)ハ「それはヨカッタ」

72 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/03(金) 01:07:39 ID:3nD40kZ.0
  _
( ゚∀゚)「…聞いてくれて、ありがとうございました。
      なんか楽になった気がします。誰にも言えなかったんで」

ハハ ロ -ロ)ハ「ワタシは聞いただけデスヨ」
  _
( ゚∀゚)「それだけでよかった、みたいです。
      結構長い間居ちゃったな。今日は帰ります。
      本は明日また取りに来ますんで」

ハハ ロ -ロ)ハ「ソウデスカ。ではまた明日」
  _
( ゚∀゚)「はい、明日」

来たときより幾らか顔色がよくなった彼が帰っていく。
僕は見送るしかできない。ここで声をかけてどうなるんだ。
僕の涙はとまらない。とまらない。

ハハ ロ -ロ)ハ「サテ、どうしマスカ、ヒッキー君」

73 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/03(金) 01:08:34 ID:3nD40kZ.0


アナタなのデショウ?彼の親友は。


…その通りです。お見通しですね。


アナタはわかりやすいデスカラ。
彼はこたえマシタヨ。今度は、ヒッキー君の番デス。


……はい。


どうこたえるかは知りマセン。ただ、後悔のないヨウニ。
アナタは珍しくもチャンスを手にしたのデスカラ。


……はい。…ハローさん。


ナンデショウ?


ありがとう、ございました。
…また、会いましょう。


…エェ、また。
待ってマスカラ。

74 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/03(金) 01:09:51 ID:3nD40kZ.0

目が覚めて真っ先に視界にとび込んできたのは真っ白な天井だった。
横を見ると彼が座っている。
家に帰ったのではなく僕の元によっていたようだ。
彼は僕が起きたことに気付いてないらしい。
腕を組んで俯いている。眠っているのかもしれない。

(-_-)「…じょる、じゅ」

久々に出した声はかすれていてとても小さかった。
しかし彼を起こすには十分だったようだ。ぼんやりした目でこちらを見ている。
  _
( "∀")「よぉヒッキー、おはよう」

(-_-)「…うん、おはよう」

起き上がろうとする僕の手を彼が引っ張って手伝ってくれる。
ありがとう、つぶやくととーぜんだろーなんてまだふわふわした返事をする。

75 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/03(金) 01:10:39 ID:3nD40kZ.0

(-_-)「あのね、ジョルジュ。僕はね、君を親友だと思ってるよ」
  _
( "∀")「うんうん」

(-_-)「相談しなかったのはね、君に迷惑をかけたくなかったからなんだ。
     君の生活を邪魔したくなかったんだ」
  _
( "∀")「ばかだなーめーわくなわけねーだろー。
      たよれよおれさまをよー」

(-_-)「うん。あとね、僕のために怒ってくれてありがとう」
  _
( "∀゚)「とーぜん…って、あれ」

(-_-)「あと、本嬉しいよ。ちゃんと読むからね。
     あとお見舞いも毎日ありがとう。
     でもジョルジュが元気じゃないと僕も困っちゃうから。
     ちゃんと休んでよね」

76 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/03(金) 01:11:31 ID:3nD40kZ.0
  _
(;゚∀゚)「休めないのは誰のせいだと思ってんだ!じゃない!ヒッキー!ヒッキー起きた!!
     おばさん!売店いってんだ!呼んでくるからちょっと待ってろ!」

立ち上がって廊下にむかうジョルジュを追いかけるように声を出す。
これを言わないと意味がないのだ。

(-_-)「ジョルジュ、ありがとう。
     僕、君の親友でいられて嬉しいよ」

扉に手をかけた彼が立ち止まる。
くるっと回ってこちらに戻ってくる、って、え
  _
(♯゚∀゚)「お ま え 人がどんだけ心配したと思ってんだバーカ!
       何が親友だよ当たり前だろバーカ!
       お前は俺の親友なんだから勝手に死ぬとかゆるさねぇからなバーカ!
       俺様に献上する品考えとけバーカ!
       おじさんにこってり怒られちまえバーカ!バーカ!!バーカ!!!」

( _ )「ちょ、じょ、るじゅ、しま、ってる、くび、」
  _
(;゚∀゚)「おぉうすまん」

(;-_-)「げほ、……まさか起きてすぐ死にかけるとは思わなかったよ」
  _
( ゚∀゚)「愛のムチってやつだ。じゃ、おばさん呼んでくるから」

77 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/03(金) 01:12:35 ID:3nD40kZ.0

そのあとはすごかった。
母さんは号泣して、父さんには怒鳴られた。
だけど、二人とも苦しいくらいに僕を抱きしめた。
母さんにつられて僕も泣いた。
父さんもちょっと泣いていた、かもしれない。

後遺症とかはなかったらしく、先生は奇跡だと言っていた。
奇跡かどうかはわからないけど、確かに僕は幽霊だった。
だからまぁ、奇跡があったっていいだろう。幽霊だっているのだから。

問題がなかったので退院は思ったよりはやくできた。
僕はジョルジュのいる学校に転校することにした。
いじめっこはいなくなったらしいけど、周りの人に気を使われるのは嫌だった。
だったら何も知らないところから始めたいという僕の意見を父さんは受け入れてくれた。
中途半端な時期の転校になるけど、まぁジョルジュがいるし大丈夫だろう。

78 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/03(金) 01:13:18 ID:3nD40kZ.0

そして僕はここに来ている。

(-_-)「…なんか、なつかしいな」

年季の入った古本屋。
天井まである本棚にびっしり詰まった本。
奥に座る、金髪の女性。

ハハ ロ -ロ)ハ「おや、イラッシャイ」

(-_-)「いらっしゃいました。
     …約束、しましたので」

ハハ ロ ーロ)ハ「きちんと来たことは褒めてあげマショウ。
          五日ぶりデスカ」

(-_-)「それくらいになりますね。
     学校の準備とか退院とかいろいろありまして」

ハハ ロ -ロ)ハ「ソウデスカ。
          ……ヒッキー君がいなくなってから退屈だったんデスヨコッチハ」

(-_-)「え」

79 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/03(金) 01:14:12 ID:3nD40kZ.0

ハハ ロ -ロ)ハ「ふとしたとき話す相手がいないといいマスカ。
          なんだかさみしいナァと感じるんデスヨ」

(;-_-)「え?え?」

ハハ ロ -ロ)ハ「でもヒッキー君はもう幽霊じゃないデスカラ。
          ここにいてほしいナァなんて思うのはいけないんデスヨネェ」

(;-_-)「え?学校帰りにきて話し相手くらいにはなりますよ?」
  _,
ハハ ロ -ロ)ハ「…マァ、今はそれでよしとしまショウ。
          約束デスヨ」

(*-_-)「…はい、約束です」

どうやら僕はこれからもここにいられるらしい。

(-_-)は古本屋の幽霊のようです

おしまい



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