ブーン系ゴールドラッシュ2013〜突発! タイトル祭り〜
(-_-)は古本屋の幽霊のようです
  その一



1 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/03(金) 00:03:05 ID:3nD40kZ.0

僕は学校でいじめられていた。
親にもいえなくて、味方もいなくて、結局僕は屋上から飛び降りた。
自殺は一番重い罪だったっけ?地獄ってあるのかな?
そんなことをぼんやり考えながら飛び降りた。
僕は、確かに死んだはずだった。

(-_-)(……なのに、)

ハハ ロ -ロ)ハ「…………」

どうして僕はここにいるんだろう。

2 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/03(金) 00:04:11 ID:3nD40kZ.0

気づいたらここにいた。もう三日前になる。
ここは古本屋だ。天井まである本棚にみっしり本が並んでいる。
客はあまりこない。今まで見たのは常連らしい男二人組と老後を楽しんでそうな爺さんだけだ。
こんな状態で大丈夫なのか、こっちが心配になるような客の少なさだ。


店主は肩までの金髪に銀縁の四角眼鏡、おそらく20代前半の女性だ。
古本屋に似合わない人だ、と思う。
彼女がなぜここの店主をしているのかはわからないが、スタバでコーヒー片手にパソコンを見ているほうが似合うだろう。
まぁ実際の彼女は椅子に座ってただ本を読み進めてるんだけど。

(-_-)「……なんでここにいるのかなぁ、僕」

3 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/03(金) 00:04:55 ID:3nD40kZ.0
口に出しても彼女は振り返ることもしない。
聞こえなければ当然か、僕は幽霊なのだから。
そもそもここがどこにあるのかも僕にはわからない。

目覚めた直後、ここの外にでてみたけれど全く知らない場所だった。
目覚めたという表現が正しいのかわからないけれど、確かに僕は幽霊だ。
証拠におなかは減らない。眠くはならないけどぼーっとした時間は増えた。

僕はあれからずっとここで本に囲まれながら座っている。
本は好きだけど、触れないんじゃ見ることもできない。
毎日ぼーっと過ごしていた。

家に帰ろうとは思わなかった。厳格な父は自殺した息子を情けないと思っているだろう。
なぜ戦う勇気を持たなかった、と墓に怒鳴っているかもしれないな。
母は優しかったけれど父に従順な人だった。
父と同じように怒っているかもしれない。なんで話してくれなかったの、と泣いている母が浮かんで消えた。

(-_-)「……今更関係ないか」

4 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/03(金) 00:05:40 ID:3nD40kZ.0
学校はどうなったんだろう。進学校だったから、マスコミの対応に追われていれば面白い。
いや、そもそも世間にでていない可能性もあるな。事なかれ主義の爺さん共がもみ消したかも。
……いや、ないな。父さんは弁護士だったから、いじめっこたちをおいつめているかもしれない。

部屋にある日記にはもう気づかれているだろう。昔からの習慣だったが、つけておいてよかったと思う。
いじめの内容、首謀者、実行者、事細かく書いてある。
追いつめられてつぶれてしまえばいい。僕みたいに。

ハハ ロ -ロ)ハ「ネェ」

5 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/03(金) 00:06:22 ID:3nD40kZ.0
そういやあいつらはどうなったんだろう。
死んだら祟ってやる、なんて考えてたな。今では他人事に感じるけど。
いじめは遊びのようなものだ、と聞いた。あいつらは僕を殴って笑っていたからきっとそうなんだろう。

いじめられた方はずっと憶えていて、いじめた方は一切憶えてないらしい。
そりゃそうか、遊びだもんな。だから同窓会とかで普通に話しかけられるんだろう。
やられた側だけずっと記憶が残ってるなんて不公平だよなぁ。

ハハ ロ -ロ)ハ「ネエ」

6 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/03(金) 00:07:03 ID:3nD40kZ.0

全面的に肯定するけど、今のは僕の意見じゃない。
昔いじめられてたというドクおじさんの話だ。
ドクおじさんはいじめられて悔しくて、見返すために会社を立ち上げたそうだ。
実際おじさんは成功して貧富の差、という復讐を果たした。
おじさんが成功したと聞いた時のいじめっこの顔はとても面白かったらしい。

('A`)『あいつら擦り寄ってきてさぁ、さも旧来の友人ですみたいな顔すんのよ。
    もう笑えたねあん時。俺を屑みたいに扱っておいてさぁ。
    お前ら俺のこといじめたよな?って聞いたら目ぇ丸くしてさぁ。
    あんなの冗談にきまってんじゃんwwwwだってよwwww』

('A`)『だからさ、そっかー冗談かー。お前○○に勤めてるよね?
    俺あそこと契約してるんだわ。覚えておけよっつったら
    すっげぇ青ざめてんのwwww何するとも言ってねぇのにwwww
    冗談だよーっていったけどね。』

7 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/03(金) 00:07:45 ID:3nD40kZ.0
冗談じゃなかったんだろうなぁ。その会社はつぶれたらしい。よくわからないけど。
もしかしたらおじさんは僕がいじめられやすいのを見抜いてこの話をしたのかもしれない。
人間決まるのは大人になってからだ、と伝えたかったのかもしれない。
僕は死んでしまったけれど。

ハハ ロ -ロ)ハ「  ネ  エ  」

そういやさっきから店主が何かを呼んでいる。
ここには僕と店主しかいないのに何を呼んでいるのだろう。
店主に目をやると、カッチリ視線があった。
眼鏡の奥の澄んだ青い目が僕を見つめている。

(;-_-)「…………え」

8 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/03(金) 00:08:43 ID:3nD40kZ.0
僕の後ろには本しかない。僕と店主しかこの場にいない。
つまり呼ばれているのは僕だ。

(;-_-)「……僕、ですか?」

ハハ ロ -ロ)ハ「アナタ以外にダレがいるというんデスカ?」

(;-_-)「いや、そうですけど……」

9 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/03(金) 00:09:28 ID:3nD40kZ.0
え、僕死んだよね?
幽霊だよね一応。何あっさり呼ばれてるの?
そもそも三日間無視されてたよね?
いきなり霊感に目覚めちゃった系店主?僕がそばにいたから?
うわー悪いことしちゃったなぁ…

いろいろ浮かんでは消えて、結局残ったのはこれだけだった。

(-_-)「……僕のこと、見えるんですか?」

10 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/03(金) 00:10:23 ID:3nD40kZ.0
ハハ ロ -ロ)ハ「何当たり前のコト言ってるんデスカ」

あぁ、目覚めさせてしまったらしい。
ごめんなさい名も知らぬ店主さん。
不可抗力とはいえあなたにいらぬ力を与えてしまいました。

ハハ ロ -ロ)ハ「ソンなほこりくさい所にいて、平気なんデスカ?」

(;-_-)「え、あ、はい、出ますゴメンナサイ」
 
ハハ ロ -ロ)ハ「? ナゼ謝るのデスカ?」

(;-_-)「な、なんとなく…ですかね?」
 
ハハ ロ -ロ)ハ「ナゼ疑問形なのデスカ?」

(;-_-)「な、なんとなく……」
  _,
ハハ ロ -ロ)ハ

11 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/03(金) 00:11:16 ID:3nD40kZ.0
店主が眉をしかめる。僕のはっきりしない所が気に入らないのだろう。
そういやいじめの始まりもこれが原因だったなぁ。
はっきりしない奴、と言われたのから広まった気がする。

とりあえず隅からでて、店主に近づいてみる。
彼女は一切目をそらさない。まっすぐすぎる視線は、怖い。
なんとなく責められている気分になる。僕は彼女の目を見れない。

店主は古本屋の奥で僕を待っている。
近づきすぎると何かに負けそうで、店主まで2メートルほどの距離で立ち止まる。  
立ちっぱなし、というのは幽霊でも気分が悪い。
疲れるわけじゃないけど、座りたい。
近くに高いところの本をとるためだろう踏み台があったので使わせてもらうことにする。
汚れることは気にしなくていい。僕は幽霊なのだから。

(-_-)(見られちゃってるけど)

12 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/03(金) 00:12:09 ID:3nD40kZ.0

ハハ ロ -ロ)ハ「アナタ、ナマエは?」

(;-_-)「あ、ヒッキーといいます……」

ハハ ロ -ロ)ハ「ソウ。ワタシはハロー。ヨロシク」

(;-_-)「え、あぁ、よろしく……」

いやいやいやよろしくしてどうする。
店主もといハローさんは僕に興味をなくしたらしい。手元の本を読み進め始めた。
待ってくれ、僕は聞きたいことがたくさんあるんだ。

(-_-)「あ、あの!」

13 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/03(金) 00:13:07 ID:3nD40kZ.0

ハハ ロ -ロ)ハ「……ナァニ?
          ソンな大きな声をださなくテモ聞こえマス」

(;-_-)「あ、あごめんなさい」

思ったより大きな声がでてしまったらしい。
考えてみれば自分から話しかけるなんていつ以来だろう。
いじめられてからも、いじめられる前からも僕は受動的だった。
誰かの声に応えた記憶はあるけど自ら近づこうとしたことはなかったんじゃないか。
だから味方がいなかったんじゃないか。

14 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/03(金) 00:14:10 ID:3nD40kZ.0

(-_-)「き、聞きたいことがあるんですけど」

ハハ ロ -ロ)ハ「ナンデスカ?」

(-_-)「えぇ、と。
     ……僕のこと、見えてるんですよね?」

ハハ ロ -ロ)ハ「さっきも言いマシタ」

(;-_-)「あ、……ごめんなさい」
  _,
ハハ ロ -ロ)ハ

つい聞いたことを繰り返してしまった。そもそも会話までしておいて見えてないわけがない。
彼女は同じことを繰り返すのは嫌いなようだ。
たぶん彼女は僕みたいな人間は嫌いなんだろうな。
ハッキリしたものが好きそうな感じがする。

(-_-)「……じゃあ、なんで三日間無視したんですか?」

15 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/03(金) 00:15:02 ID:3nD40kZ.0

ハハ ロ -ロ)ハ「いるナァとは思いマシタケド、
          何もしなさそうだしいてもイイカナァ、と」

(-_-)「じゃ、じゃあなんで今話しかけたんですか?」

ハハ ロ -ロ)ハ「三日前以外微動だにシナカッタので、
          とりあえずナマエくらい聞いておこうカナァ、と」

(-_-)「あ、そうなんですか……」

僕のせいで霊感に目覚めたようではなかったらしい。

(-_-)「……あの、僕、幽霊ですよね?」

ハハ ロ -ロ)ハ「ソウなんじゃないんデスカ?
          本人もワカラナイコト、ワタシには答えられマセン」

(-_-)「ですよ、ねぇ」

確かに僕は死んだ。だから幽霊のはずだ。
あっさり会話しているけど僕は死んでいてハローさんは生きている。
通常ならありえないけれど、そもそも幽霊になってしまったのだから今更だ。
というか、

(-_-)「……あの、僕ここにいてもいいんですか?」

16 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/03(金) 00:15:57 ID:3nD40kZ.0

ハハ ロ -ロ)ハ「? ソレを決めるのはワタシじゃありマセン。
          ヒッキー君デショウ?」

(-_-)「……え」

それは、居たければ居てもいいということなんだろうか。
聞こうとして、やめた。きっと彼女は自分の意志がない人間は嫌いだから。

(-_-)「……じゃあ、お邪魔します」

ハハ ロ ーロ)ハ「随分今更デスネ。
          どうぞ、ゆっくりしていってクダサイ」

彼女がふっと微笑んだ。
不意の笑顔はすぐ消えてしまったけど、僕の心に強く残った。
これが初めての会話だった。

一、幽霊になりまして



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