ミセ* ー )リ 豪雨のようです

Page1

※『ブーン系紅白2017─夏の陣─』参加作品です ブーン系紅白2017まとめ - ブーン文丸新聞

1 名前: ◆G7lcTp3PKs[] 投稿日:2017/08/20(日) 00:25:35 ID:HyxvZm6I0





───ベチャッ



  ベチャッ


  ベチャベチャベチャベチャッ











  べチャリ。








,

2 名前: ◆G7lcTp3PKs[] 投稿日:2017/08/20(日) 00:28:06 ID:HyxvZm6I0

......八月十五日



('A`)「あーあー、今年もとうとう降り出したか。予報ちゃんと見といてよかった」

( ・∀・)「間一髪だったなぁ。ちょうどファミレスがあってよかったな」

('A`)「ああ、ついでだし雨宿りがてら飯にするか。ちょうど昼時だしな」

 大通り沿いに面する普通のファミレス。二人組のサラリーマンが窓際の席に腰を下ろしていた。長身の男───モララーが口を開く。

( ・∀・)「しっかし何なんだかね。俺未だに慣れねぇよこれ。気持ち悪い」

('A`)「俺はわりと慣れたけどな。まあでも気味はわりぃよなぁ」


小柄な方の男───ドクオの目線が窓の外を向いた。しとしとと降る小雨にまじって、時折ベチャッ、と水浸しのタオルが落ちたような音がかすかに鳴る。

('A`)「あ、また落ちたな」

( ・∀・)「迷惑だよなぁ、ほんと」


音のした方を見れば、大通りで女子高生と思しき少女が倒れていた。どうやら頭が割れているようで、脳漿が溢れている。
そんな惨状が広がっているのに、道行く人は傘を差しながらそれをさも存在しないかのように避けて歩く。
それどころかまた、一人、二人、少女の死体が落ちてくる。よくよく見れば、彼女達が瓜二つ(三人なら瓜三つだろうか?)であることが確認できる。

( ・∀・)「一体誰が名付けたんだろうなぁ?」








「“ミセリ豪雨”ってさ」

3 名前: ◆G7lcTp3PKs[] 投稿日:2017/08/20(日) 00:32:07 ID:HyxvZm6I0


 “その現象”が初めて起きたのは、三年前の八月十四日だ。当時未だかつてない現象だとして、日本中、いや世界中から注目を浴びた気象現象がとある地域で観測された。
ごく普通の雨雲から、日本人の少女のような人型が、小雨に混じって落下してくるのだ。同じ個体の人型が何百、何千体も。

落下する人型の特徴は、短い茶髪に赤いカチューシャ。白いブラウスの胸元には青いリボン。そして紺色のプリーツスカート、紺の靴下に赤いスニーカー。
いかにも日本の、今時の女子高生然としているそれは、微笑みを浮かべ続けている。
気味が悪いのは、身体の構造が人間と変わらないこと。彼女達は地面に落下する時、べチャリと音を立てながら、臓器を撒き散らして潰れる。
先程のように頭が割れている死体などざらにあり、無傷の個体はほぼ存在することはない。

そんな彼女達の死体は、一体どこへ行くのかというと。不思議なことに、雨が止んでから数時間もすると、彼女達は無色透明の液体と化し、そのまま他の雨と変わらず蒸発したり染み込んだりして消えていく。

観測されてからは、気分が不快になる公害であると政府へ対策を迫る者、終末論を振りかざす者、なかには落下している彼女達にも人権はあると騒ぎ出す団体も存在した。
しかし毒性もなく、危険性も無いとして政府は、国民の生活に支障を及ぼすものではない、と公言した。それもそのはずで、気分を害した以外に、それが元で怪我をした、物が壊れたという被害報告は全くないのだ。
不規則に落下する彼女達が、人間や物に危害を加えた前例は、一度もない。

4 名前: ◆G7lcTp3PKs[] 投稿日:2017/08/20(日) 00:33:23 ID:HyxvZm6I0

彼女達について、不可解なことは他にもある。

一つ目。この現象は美布県下楽羽市周辺でしか観測できないこと。
二つ目。発生するのは八月十四日から二十日までの七日間のうち三、四回程。

この三年間、この条件が崩れることは無かった。気味の悪いほどに規則的な現象は、未だに学者達の研究の的である。

この現象は、発生地域の名前を取って『下楽羽豪雨』と正式に呼ばれることになった。恐らく天気予報の番組を見ても、そう言われているだろう。

しかし、現地の人間は違った。いつから呼ばれるようになったのか、どこから言われ始めたのか。ともかく、こう呼んでいるのだ。『ミセリ豪雨』と。



,

5 名前: ◆G7lcTp3PKs[] 投稿日:2017/08/20(日) 00:34:15 ID:HyxvZm6I0




( ・∀・)「おー晴れた晴れた。今回のはすぐ止んでよかったな」

('A`)「そうだな」

暇つぶしに長話をすること数十分。机の上の皿が空になる頃には、もう太陽は照っていた。ファミレスを二人で出る。
ふと大通りを見ると、既に少女は消えていた。人型の一際濃いシミだけがそこに残っている。それがあの残骸であることを思い出して、なんとなく避けた。






,

6 名前: ◆G7lcTp3PKs[] 投稿日:2017/08/20(日) 00:36:33 ID:HyxvZm6I0

......



『もしもし?姉だけど、生きてるー?母さん心配してっから、生存報告はしてよねー』

('A`)「……はいはい」

 ドクオが会社から帰ると、姉から留守電が入っていた。一人暮らしを始めてからだいぶ経つ、が、何せ実家が遠いものだからなかなか帰れない。
なので電話で定期的に連絡を取っている。

時間的にまだ起きているだろう。姉の番号に電話をかける。

('、`*川『あっもしもしー?留守電聞いてくれた?』

('A`)「聞いた聞いた。だからかけてんだろうが」

('、`*川『そりゃそうだ。まあ元気そうね。母さんも安心するわ』

('A`)「母ちゃん心配性だからなぁ」

('、`*川『あとは彼女でも出来てくれればねぇ……』

(;'A`)「うっ……」

この頃、実家に電話をすると大抵この話題になる。だからあんまりかけたくなかったのだが、こうなっては仕方がない。

('A`)「……俺はまだ結婚とか興味ないから」

('、`*川『そう言ってられんのも今のうちだよー?ていうか、モテないだけでしょ』

(;'A`)「ギクッ」

('、`*川『それ口で言う人滅多にいないし。……ならさあ、あんたんとこで降ってる、みせり?っての彼女にしちゃえば?』

('A`)「は?」

7 名前: ◆G7lcTp3PKs[] 投稿日:2017/08/20(日) 00:37:38 ID:HyxvZm6I0


唐突な姉の提案に、ドクオの身体は固まる。姉はそのまま続けた。

('、`*川『いや、実は面白い噂話聞いたんだけどさぁ。聞いてよ』

('A`)「なんだよ……」

('、`*川『落ちてきたミセリ……なるべく傷が少ないやつね?それを塩水に漬けるんだって。
そうすると人間と同じように動きだすんだってさ』

('A`)「胡散臭せぇ〜」

('、`*川『まあ私も胡散臭いと思うけどさぁ。モテないならもうなんでも良くない?』

('A`)「よくないですぅ〜。俺にも選ぶ権利あるわ。つか俺明日も早いから。そろそろ切るぞ」

('、`*川『はいはい、おやすみ〜』

そこで通話は切れた。馬鹿馬鹿しい、と思いながらシャワーを浴びて、寝た。

8 名前: ◆G7lcTp3PKs[] 投稿日:2017/08/20(日) 00:40:24 ID:HyxvZm6I0


......八月十七日



 二日後。ドクオは久々の三連休初日を楽しんでいた。多忙ゆえにロクに盆休みもとれなかったから、その分の休みをとったのだ。
今日はどこか行こうか。それとも漫画でも読みながら過ごそうか。そんな時、あの不快な音が聞こえてきた。思わず舌打ちする。
ミセリ豪雨だ。

('A`)(予報見んの忘れてたな)

ずぼら故、洗濯物はまだ出してない、が一応ベランダの窓を開けた。瞬間、目の前の物干し竿に見覚えのある少女が引っかかっていることに気付いた。

(;'A`)「うお!」

思わず仰け反る。ミセリだ。まさかベランダにまで入ってくるとは思わなかった。今まで間近で見たことがないそれを、まじまじと観察する。

9 名前: ◆G7lcTp3PKs[] 投稿日:2017/08/20(日) 00:42:05 ID:HyxvZm6I0


ミセ* ー )リ


見れば見るほど、その辺の女子高生にしか見えない。窓の外で繰り広げられている地獄絵図の原因とは到底思えなかった。

('A`)(よく見ると普通に可愛いな)

好みのタイプでは無かったが、ミセリは普通に生きていれば美少女の類だろう。
ふと、姉の話が脳裏をよぎった。

“('、`*川『落ちてきたミセリ……傷が少ないやつね?それを塩水に漬けるんだって。そうすると人間と同じように動きだすんだってさ』”

そういえば、目の前のミセリには、目立った傷はなかった。

('A`)(……)


正直、下心がなかったと言えばそれは嘘になる。しかしそれよりも好奇心が勝ってしまって、ミセリを降ろして浴槽に運んでみる。

('A`)「絵面だけ見れば俺犯罪者だな」

そんなことをボヤきながら、浴槽の中を水で浸して、食塩を適当に入れた。
ダメで元々、どうせ何もなければ溶けてしまう存在だ。実験したところで彼女に人権など無い。
ドクオは浴槽の蓋を閉め、ミセリが動き出すのを待っている間、漫画を読むことにした。


,

10 名前: ◆G7lcTp3PKs[] 投稿日:2017/08/20(日) 00:45:14 ID:HyxvZm6I0


......



 周囲の暗さに気付いて、ドクオ目を覚ました。いつの間にか寝てしまっていたらしく、時刻は十八時を過ぎている。

('A`)(あーあ、また寝過ごしちまった)

自分のだらしの無さを後悔しながら起き上がる。が、部屋に人の気配を感じて、硬直した。

(; A )(……空き巣、か……?)

もし空き巣や強盗ならば、自分に勝機などない。ここで自分の人生は終わるのだろう。
ならばうじうじしていても仕方がない、そう思い意を決して、ふり返った。

11 名前: ◆G7lcTp3PKs[] 投稿日:2017/08/20(日) 00:45:56 ID:HyxvZm6I0


ミセ*゚ー゚)リ


そこには、浴槽に寝かせた筈のミセリが、こちらを見つめながら立っていた。

(;゚A゚)「!!!??」

一瞬で頭が覚醒する。急いで立ち上がり、浴室に向かった。

(; A )(……蓋が、空いてる……)

恐る恐る浴槽の中を覗く。たまたま間違えて瓜二つの女子高生が入ってきただけではないか、いやそうであってほしい。

その願いも虚しく、浴槽は空っぽになっていた。あれだけ溜めた食塩水すらも、跡形もなく消えている。

(; A )「う……そだろ」

有り得るはずのない現実が、目の前にあった。後ずさる、と同時に誰かに当たった。短い悲鳴を漏らし、振り返る。

12 名前: ◆G7lcTp3PKs[] 投稿日:2017/08/20(日) 00:47:19 ID:HyxvZm6I0


ミセ*゚ー゚)リ

(; A )


ミセリだ。付いてきたのだろうか。思わず身構える、がミセリはあの微笑みをたたえたままこちらを見つめるだけだった。
しばらくそうしたまま、数分が経過する。このまま放置するわけにはいかない、とドクオは少女に話しかけてみることにした。

(;'A`)「お前……なにモンだ?」

ミセ*゚ー゚)リ

(;'A`)「どこから入ってきた?ここ二階だぞ?鍵はかけたはずなんだが」

ミセ*゚─゚)リ

(; A )「……何が目当てだ?こんなボロアパートに住んでるんだ。金なんてないぞ。援交なんてやめとけよ……」

ミセ*゚ -゚)リ

一言も話さないが、段々見たことの無い表情に変わっていく。どことなく、寂しそうな。
一番聞きたくなかった疑問を、そっと、ぶつける。

(; A )「……お前、ミセリ、なのか?」






ミセ*^∀^)リ


笑った。いつも見る微笑みよりも深く、嬉しそうに。それは、人間の娘と何も変わらない、愛くるしい微笑みだった。


,

20 名前: ◆G7lcTp3PKs[] 投稿日:2017/08/20(日) 13:06:45 ID:HyxvZm6I0


......



 時刻は二十時を過ぎていた。とても自炊などする気にならず、近所のコンビニで弁当を買ってきた。
一応ミセリにも買ってきた方がいいだろうか、と思いとりあえず女子高生の好きそうな冷凍パスタとプリンを買ってみた。

(;'A`)「あー、夕飯、食べるか?」

ミセ*゚ー゚)リ

ミセリは何も言わない。とりあえず目の前に温めたパスタを出してみた。

ミセ*゚ヮ゚)リ

すると少し嬉しそうに口元を緩ませた。そういえばこいつらはフォークなんて使えるのだろうか。
そう思うよりも早く、ミセリはトレーを持ち上げて口元に持っていくと、

ミセ*゚ヮ゚)リ ゴクゴク

まるで飲み物のように飲み干した。

(;'A`)(まじかよ)

トレーの上に盛られたパスタは、あっという間に彼女の胃袋に収まったようだ。満足そうな顔でミセリはこちらを見つめてきた。

('A`)「……プリンあるけど」

ミセ*゚ヮ゚)リ !

その一言に、ミセリの身体は揺れる。どうやら好物なのかもしれない。冷蔵庫から取り出して、フタをはがしてやる。

ミセ*^ヮ^)リ ♪

先程よりも更に嬉しそうにプリンのカップを掴んで、一気に煽った。綺麗に形の整えられたプリンが、そのまま口の中へ消えていくのが見えた。

('A`)「美味いか?」

ミセ*゚ヮ゚)リ ♪

どうやら美味いらしい。うっとりと顔を綻ばせていた。

,

21 名前: ◆G7lcTp3PKs[] 投稿日:2017/08/20(日) 13:08:54 ID:HyxvZm6I0


その後、いつもは適当に済ませる風呂の掃除を丁寧にやった。あんなものを浸したわけだし、何があるかは分からない。毒性は無いと言われてはいるが、単に気味が悪かった。

掃除を終えると、そのままシャワーを浴びた。流石に浴槽に浸かる気にはならなかったから。
頭を洗いながら、ミセリのことを考える。

('A`)(……どう見ても普通の人間だよな)

もしかしてドッキリじゃないだろうか。そんな思いが頭を過ぎる。しかしだとしたら、誰が、どんな意図で?
そもそも、あんな少女が落下するのが日常と化している現状がおかしいのだろうか。

('A`)(あいつは何なんだ)

人に害を及ぼすわけでも、幸運をもたらすわけでもない。ただ落下して、臓器を撒き散らして、溶けていくだけの存在。
何を訴えたいのだろう。そもそも何故ミセリと呼ばれているのだろう。

('A`)(考えてばっかりじゃキリがねぇな)

そういえば、この噂話を聞いてきたのは姉だ。明日電話して噂の出処を聞いてみよう、そう思った。


,

22 名前: ◆G7lcTp3PKs[] 投稿日:2017/08/20(日) 13:10:07 ID:HyxvZm6I0



......八月十八日



('、`*川『あの噂話の出処が知りたい?』

('A`)「うん、どこで聞いたんだ?」

 翌日、起きて真っ先に部屋を見回した。夢であってほしいと未だに思っていたのだが、残念ながらミセリは、相変わらず部屋の隅で蹲っていた。

仕方なく電話機の方へ向かう。姉なら何か知っているかもしれない。少なくとも何かしら情報は得られるはずだ。そんな淡い期待を胸に、実家の番号を押したのだ。

,

23 名前: ◆G7lcTp3PKs[] 投稿日:2017/08/20(日) 13:12:09 ID:HyxvZm6I0


('、`*川『何?アンタやっぱり寂しくなっちゃったの?』

('A`)「……そういう訳じゃないけど。あーほら、同僚が興味持っちゃってさ、教えてやろうと思って」

('、`*川『ふーん、物好きも居たもんねぇ』

(;'A`)「ハハ……」

お姉さん、物好きなのはアンタの弟だよ。そう言いたいのを我慢して、ドクオは乾いた笑いで誤魔化した。

('、`*川『私も詳しくは知らないんだけどね。前にSNSで知り合った娘が、ネットの掲示板か何かでそういう話を見たって。
まあネットの噂なんて大抵嘘だしねぇ。その子も半信半疑だったけど』

('A`)「掲示板……」

なるほど、ああいう場所なら胡散臭い噂話なんかもよく出回っている。ミセリについて話し合うスレッドなんていっぱいあるだろう。

('A`)「サンキュー、あとは自分で調べてみるわ」

('、`*川『はいはーい』

そう言って電話を切る。そして個人用のノートパソコンを取り出して、一番に思い付いた掲示板サイトを開いた。

,

24 名前: ◆G7lcTp3PKs[] 投稿日:2017/08/20(日) 13:13:57 ID:HyxvZm6I0


スレッド検索をすると、いくつかのスレッドが引っかかった。


──────

1.ミセリ豪雨は地球滅亡のカウントダウンである★3(276)

2.ミセリちゃんファンクラブスレPart54(823)

3.ミセリちゃんの血みどろおぱんつぺろぺろ(82)

...

──────

見事に覗きたくないスレッドばかりで、クリックするのを躊躇する。スクロールしても変態じみたスレか陰謀論者が立てたようなスレくらいしか引っかからない。
ここは収穫無しか、ため息をついて閉じようとすると、一つの古いスレッドに目がいった。

──────

...

72.みせりがうごいた!!れ!(146)

...

──────

見る人もあまり居ない過疎板のスレだ。慌ててスレ立てしたのか、変換もされていない。感嘆符の誤字から察するに、きっとこのスレ主はスマホで立てたのだろうか。
そのタイトルに目を惹かれて、思わずクリックした。


,

25 名前: ◆G7lcTp3PKs[] 投稿日:2017/08/20(日) 13:15:12 ID:HyxvZm6I0


──────

みせりがうごいた!!れ!

1:名無しさん 20xx/08/18 ID:jo3y

やべー!


2:名無しさん 20xx/08/18 ID:p86g

釣り乙

3:名無しさん 20xx/08/18 ID:ssAo

パンツうp

4:名無しさん 20xx/08/18 ID:jo3y

ちょっとさっきあったこと書くから待ってて
≫2
マジだよ
≫3
頼んでみるわ

......

──────


それは、ちょうど一年前のスレだった。なるほど、ちょうどミセリ豪雨の季節だ。更にスクロールしてみる。

,

26 名前: ◆G7lcTp3PKs[] 投稿日:2017/08/20(日) 13:16:25 ID:HyxvZm6I0


──────

......


10:名無しさん 20xx/08/18 ID:jo3y

なんか後輩の女が塩水に漬けるとミセリが動くって話してたから、気になってさっき降ってきた奴漬けたんだよ
そしたらミセリがまじで動き出した

あとごめん、スマホのカメラ壊れてた

11:名無しさん 20xx/08/18 ID:ssAo

はい釣り解散

12:名無しさん 20xx/08/18 ID:BOh5

はーつっかえ

13:名無しさん 20xx/08/18 ID:wkuc

低レベルな釣りやめろや

14:名無しさん 20xx/08/18 ID:jo3y

釣りじゃねーって

......

──────

どうやら釣り扱いされてしまっていたらしい。当たり前だ、とドクオは思った。
いつも降ってくる物体が動き出すなど、荒唐無稽でしかないのだから。
ただ、このスレ主の状況が他人事に思えず、スレを読み進めた。


,

27 名前: ◆G7lcTp3PKs[] 投稿日:2017/08/20(日) 13:17:46 ID:HyxvZm6I0

──────

......

34:名無しさん 20xx/08/18 ID:pp2x

まあ信じてやるとして なんでやろうと思ったの?

35:名無しさん 20xx/08/18 ID:jo3y

≫34
信じてくれ!
ラブドール欲しかったけど高かったから

36:名無しさん 20xx/08/18 ID:BOh5

俺のミセリたんに性的な目向けんなよ

37:名無しさん 20xx/08/18 ID:jo3y

≫36
悪いな ミセリたんの処女はもらうぜ
今プリンあげたら喜んでた 可愛い

......


58:名無しさん 20xx/08/18 ID:jo3y

ミセリが元気ないんだが

59:名無しさん 20xx/08/18 ID:pp2x

餌とかあげた?塩水で動くなら塩水飲ませてみれば?

60:名無しさん 20xx/08/18 ID:yk8u

寿命やろ

61:名無しさん 20xx/08/18 ID:jo3y

塩水飲ませたら治った


......

──────

,

28 名前: ◆G7lcTp3PKs[] 投稿日:2017/08/20(日) 13:18:58 ID:HyxvZm6I0


塩水。そういえばうちのミセリは大丈夫だろうか。パソコンから目を離す。

('A`)「おいミセリー……」

ミセ;´p`)リ グデン

(;'A`)(なんかぐったりしてる!)

急いで塩水をコップに作り、ミセリの口元にやった。

(;'A`)「ほれ、飲め」

ミセ*´p`)リ ゴクゴク

ミセ*゚o゚)リ !

ミセ*゚ヮ゚)リ ♪

('A`)「おお……」

塩水を飲み干すと、ミセリは見事に復活した。塩辛くないのだろうか、とドクオは思ったが、まあ人間とは味覚が違うのかもしれないと自己解決した。

('A`)(……こいつ、寿命とかあんのかな?)

先程眺めていたスレで、寿命という単語が目に入ったことを思い出した。
普通のミセリは時間が経つか太陽の光を浴びると溶けて消えてしまう。
ならこのミセリはどうなのか?

ミセ*゚ー゚)リ ♪

('A`)「……」

彼女達が溶けてゆく姿を思い出して、ドクオは今まで感じなかった一種の哀れみのようなものを覚えた。

,

29 名前: ◆G7lcTp3PKs[] 投稿日:2017/08/20(日) 13:20:57 ID:HyxvZm6I0


......



('A`)「さぁて、メシ作るか」

ミセ*゚ー゚)リ ?

 ちょうど正午を回った頃。規則的な空腹感に見舞われて、台所に立った。

ドクオは基本的に自炊をしている。貧乏性故、実家から定期的に送られてくる大量の野菜なんかを消費しなければならないからだ。
昨日はコンビニで買ってきたが、今日はその分明日の飯も作らねばなるまい。

('A`)「肉ないけどカレーでいいや」

ミセ*゚ヮ゚)リ !

('A`)「カレー好きなん?」

ミセ*^ヮ^)リ ♪

('A`)「そうかそうか、庶民派だな」

ミセ*゚ー゚)リ チラッ

('A`)「なに?見たいの?」

ミセ*゚ヮ゚)リ

(*'A`)「ふふ……可愛い奴め」

ミセ*^ー^)リ ♪

('A`)(……なんか彼女っつーよりペット飼ってる気分だ)

,

30 名前: ◆G7lcTp3PKs[] 投稿日:2017/08/20(日) 13:22:38 ID:HyxvZm6I0


当初は下心さえあったものの、彼女の純真無垢な姿を見るうち欲望などすっかり失せていて、代わりに愛玩動物へ向ける愛着のような感情が胸を支配する。

どうやら彼女は無害そうだ。必要な栄養素は塩水くらいで、あとはなんでも食べる。特にプリンなんかは大好物のようだ。感情もちゃんとあるらしいし、言葉は無くとも意思疎通はできる。
正直、これらを回収して商売でも始めそうな企業でも出てきそうなものだが。

もしかしたら、まだ世間の関心を引くには早いのかもしれない。そのうち老人の話し相手だとか、雑用だって覚えさせれば出来るかもしれない、ともかく彼女たちは、無限の可能性を秘めているだろう。

何故この事実が公表、周知されずに噂話のままなのだろうか。

('A`)(……悪用する奴とか出てくるかもしれんからかなぁ……)

ちらりと隣のミセリを横目で見る。ミセリは視線に気付かないまま、グツグツと煮える鍋の中身をまるで子供のように眺めていた。

('A`)(……悪用なんてされたらやだな)

そういえば先程のスレでは“ラブドール”代わりに使うような文言が出ていた。

('A`)(……生きてるとして、今頃何してんだろ)

ニュースでそんな話は見たことが無い、ということはまだ隠しているのだろうか。

('A`)(……あとでもう一度覗いてみるか)

ドクオはミセリと同じように、具材が煮え立つ鍋を眺めた。


,

inserted by FC2 system