■2012年芸術の秋ラノベ祭りのようです
└( ´_ゝ`)デザート×キャラバンのようです(´<_` )
└そのきゅう
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757 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/12/07(土) 20:01:42 ID:yZraviHw0
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/◎ ) 、/、; ) gu gi gi
一刀のもとに切り伏せられ、粘土板が崩れ落ちた。
ゴーレムを動かしていた、失われた文字が薄れ消えていく。
核の崩壊。その瞬間、ゴーレムを構成していた魔法は完全に消滅した。
(´<_` )つ==|ニニニ二フ
(;^ω^)
ごとりと音がして、ゴーレムの腕が落ちた。
無限軌道が潰れ、岩の重みに耐え切れず体が大きく倒れ込む。
( ´_ゝ`)
(゚A゚)
倒れてきた岩の衝撃に、地面が大きく揺れる。
ゴーレムはもはや、単なる巨大な岩の塊と化していた。
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758 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/12/07(土) 20:04:29 ID:yZraviHw0
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_.◎ ) 、/、; :::
岩の巨人は動かない。
崩れ落ちた体を再生しようとする気配もなかった。
(*´_ゝ`)「おお」
ヽ('∀`)ノ「やった、やったぞ兄者!」
ゴーレムを構成していた岩たちが、砕けはじめる。
音もなく崩壊は続き、最後には大量の砂と岩の欠片が残るだけとなる。
(*^ω^)「すっごいお、オトジャ!」
(´<_` )「……やった、のか?」
もはやそこにゴーレムの原型はない。
――そして、石の巨人は死に至り。その動きを永遠に止めた。
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759 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/12/07(土) 20:05:29 ID:yZraviHw0
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( ´_ゝ`)デザート×キャラバンのようです(´<_` )
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760 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/12/07(土) 20:06:21 ID:yZraviHw0
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そのきゅう。 ――そして、旅の終わり
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761 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/12/07(土) 20:08:05 ID:yZraviHw0
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ゴーレムが完全に動かなくなったのを見届けると兄者はその場に完全に倒れ込んだ。
もう自分の体を支えることも出来ないらしく、倒れこんだ姿のまま兄者は動かない。
ただ、その口だけを動かして、兄者は大きく息をついた。
(; _ゝ )「流石にこれは――」
( <_ ;)「――疲れたな」
弟者もそう返事を返すと、兄者の傍らに座り込む。そして、そのままその場に転がった。
さっきまで剥き身の刃を握っていたせいか、弟者の手からはまだ血が流れ続けている。
ともに満身創痍な状況。兄弟そろって、命があるのが不思議なくらいだった。
(; ^ω^)「大丈夫かお!」
そんな兄弟たちの傍らに、ブーンは飛び寄る。
ドクオはその場に浮いたままだったが、ブーンが動くのを見て慌てて飛びはじめた。
兄者も弟者も倒れこんだまま、ぴくりとも動こうとはしない。
(; _ゝ )「おい、弟者。いい加減に体力とか力とかその他もろもろを返せ。
もう口と指くらいしか動かんのだが……」
( <_ ;)「兄者が持っていったままの、疲労痛み傷その他もろもろを返せば考えてやろう」
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762 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/12/07(土) 20:10:25 ID:yZraviHw0
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(;´_ゝ`)「ハハハー、何のことかなー」
(´<_`#)「ハハハー、もちろん兄者のことだ」
動こうとはせず、口だけを使って兄弟の応酬は続く。
視線だけを動かして睨み合うが、互いに限界なのか殴りあうような気配はない。
弟者は拗ねたように顔を尖らせ、兄者といえばそっと弟から視線をそらした。
(´<_`#)「いいから、早く返せ」
(;´_ゝ`)「ちょっ、やめ、おねがいやめ!」
視線を逸らした兄者の胸ぐらを、弟者が掴む。
力を使い果たしたように横になっていた弟者が、動くとは思っていなかったのだろう。
突然の弟者の動きに、兄者の顔が驚いたかのように歪む。
兄者は弟の腕になんとか抵抗しようと大声を上げ、その瞬間顔面を真っ青にした。
(; ゚_ゝ゚)「っう――!!」
(´<_`#)「さっさと返せと言っているだろう。この阿呆!」
(iii ´_ゝ`)「えー、大丈夫だってぇ。全然、大したこと無いし……」
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763 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/12/07(土) 20:12:17 ID:yZraviHw0
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(´<_`#)「何度同じことを言わせる気だ、この馬鹿」
(#´_ゝ`)「いいや、決めましたー。ダメーですぅー」
兄者はそう言い切ると、弟者から全力で目をそらす。
弟者はそんな兄の姿を睨みつけるが、殴りかかるわけにもいかなかったのか手を放す。
(;´_ゝ`)「っう……」
( ;ω;)「あばばばば、やめるお。やめるおー」
(;'A`)「お前ら兄弟は、どうしてこう仲が悪いんだ……」
ドクオの声が聞こえたのか、弟者から開放された兄者の口元がわずかに歪む。
しかし、何も告げる気はないのだろう。兄者の口からは言葉は出てこなかった。
( ;ω;)「アニジャー、だいじょうぶかお? こういうときは、だいじょうぶでいいんだおね?」
( ´_ゝ`)「ふむ。この場合は、大丈夫であってるな」
( ;ω;)「ほんとかお? アニジャはだいじょうぶかお? だいじょうぶ?」
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764 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/12/07(土) 20:15:11 ID:yZraviHw0
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兄者の口元の歪みが消え、変わりに笑みが浮かぶ。
(*´_ゝ`)「なんて言ったって俺は流石だからな。
この程度ならば、全然平気だし。ものすごーく、元気な件」
( <_ )「……」
('A`;)::「――っ」
かわりに弟者の顔から表情らしいものが根こそぎ消えたのを、ドクオだけが見た。
(´<_` )「兄者、聞かせてくれ。
俺に痛みを返さないのは、本当に大丈夫だからか?」
(;´_ゝ`)「う、え?」
風向きが変わったことを悟ったのだろう、兄者の表情に困惑が浮かぶ。
弟者の声は静かで、感情らしい感情が見えない。
……これはマズい傾向だ、という思いが、兄者の脳裏に小さく広がる。
(;´_ゝ`)「えっと、ちょっとくらいは痛い件?」
( ;゚_ゝ゚)と( <_ )
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765 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/12/07(土) 20:16:13 ID:yZraviHw0
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とりあえずそう告げてみた兄者に向けて、弟者の腕が伸びる。
弟者は兄者の服の胸元を掴み、力任せにぐいと持ち上げた。
(iii ゚_ゝ゚)「――っ」
兄者の顔が一気に白くなり、呻き声とも呼吸とも付かない声が喉から漏れる。
(iii _ゝ )「ぐっ……っカ……ハッ」
と(´<_`#)「これでも大丈夫だというのか!?
本当はとっくに限界なんじゃないのか!?」
兄者の喉からは言葉にならない息が漏れるだけだ。
やめろと言いたいのか、何度か同じ形に口が動くが、それすらも声にならなかった。
(;゚A゚)「おい、兄者のやつ。やばいぞ!」
(#^ω^)「やめるお!!」
と(゚<_゚ ♯)「ろくに動けないんだろう? 話すことだって、つらいはずだ。
なのに、なんで兄者はそうやってヘラヘラと笑っていられるんだ!!!」
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766 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/12/07(土) 20:18:31 ID:yZraviHw0
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ドクオとブーンが弟者の肩をひっぱり、彼を止めようとする。
しかし、一度激高した弟者は止まらない。
(iii _ゝ`)「……っぃ」
と(<_゚ #)「俺がいつもどんな思いでいたか、兄者はわかってるのか!!!」
(#^ω^)≪放すお!≫
なおも兄者を締め上げようとする弟者の動きを、魔力の流れが断ち切る。
ブーンの使った暗示の力により、弟者の手の力が緩み兄者から離れる。
(*'A`)」「よしっ、ブーンよくやった!」
(;^ω^)「オトジャだめだお! そういうのぜんぜん楽しくないお!」
( <_ #)「なんで……」
弟者の目が、魔法を放ったブーンを捉える。
その口が歪みブーンに向けて怒りの声を上げようとし――、響いた声がそれを止めた。
(iii _ゝ )「……わか……って……た」
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767 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/12/07(土) 20:20:48 ID:yZraviHw0
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途切れ途切れに響いたその声の主は、兄者だった。
弟者の動きが止まる。
一方の兄者は浅い呼吸を何度か繰り返し、ようやく深く息をついた。
(iii ´_ゝ`)「……ほんと……容赦ないの……な」
(;'A`)「おい、兄者。本当に大丈夫か?」
(iii ´_ゝ`)「あー、骨が何本かいってるかな? 命には別状はないと思われ」
そのまま動かずに呼吸を繰り返すと、兄者の顔色はようやく落ち着いた。
「痛かったー」と呟く表情は、もういつもの兄者のものだ。
本気なのか、それとも表情を取り繕っているだけなのか。人間の感情に疎いドクオには理解できない。
(;^ω^)「……オトジャ」
( <_ )「……」
弟者の顔からは、怒りの色は引いていた。
代わりに浮かぶのは、途方に暮れ呆然とした表情だった。
(´<_` )「……わかっていたとは、どういうことだ?」
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768 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/12/07(土) 20:22:30 ID:yZraviHw0
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辺りに沈黙が落ちる。
弟者の視線は今や、ブーンではなく兄者に向けられていた。
( ´_ゝ`)「……」
('A`)「おい、答えてやれよ兄者」
(;^ω^)「……」
ドクオが促すように、兄者の肩を叩く。
ブーンは黙りこくって、兄者の姿を見守っている。
沈黙は長いようにも短いようにも思えた。そして、兄者は黙り込んだ末に、ようやく口を開いた。
(;´_ゝ`)「……やっぱ、話さなきゃダメだよな」
こういうのは柄じゃないんだよな、と頬をかきながら兄者は言う。
「むむー」とか「ふむー」とか意味のない言葉を呟いた後で、兄者はようやく語り始めた。
(;´_ゝ`)「あー、お前が10年前の件で後悔してるのは知ってた。
魔法や神秘のたぐいに俺を近づけないようにしてたのもな。まあ、やたらと暴力的ではあったけど」
.
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769 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/12/07(土) 20:24:19 ID:yZraviHw0
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(゚<_゚ ; )「気づいていたのか……」
弟者の瞳が、驚愕に見開かれた。
その声はかすかに震え、信じられないと呟いている。
そんな弟の態度に、失礼だなと言うように兄者は口元を歪ませた。
( ´_ゝ`)「だって、昔そう言ってたし。あれだけ露骨だと、流石の俺でも気づくわ。
というか、弟者は俺が気づいているって知らなかったことに驚きな件。
ブーンやドクオとかに対する態度とか、本当にもうひどかったし」
(;^ω^)て「そ、そうだったのかお!! オトジャはブーンがキライだったのかお?!」
('A`)「……ブーン。お前ってやつは、本当にいいやつだな」
心の底から驚いたような声を上げるブーンの姿に、ドクオはしみじみと言った。
ドクオとて弟者の行動原理を理解していたわけではない。しかし、嫌われているということくらいはわかっていた。
しかし、あれだけ無視され続けていたのに、嫌われていると思わなかったとは……。ブーンの脳天気さが、ドクオは少しだけ羨ましくなる。
(´<_` ;)「なら、どうして」
(;´_ゝ`)「いやぁー。俺もなぁー。
弟者が頑張ってるなら、その通りにしてもいいかな〜って思ったこともあったさ」
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770 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/12/07(土) 20:26:22 ID:yZraviHw0
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( -_ゝ-)「でも」
ドクオの戸惑いなど気づかないように、兄弟の会話は続く。
兄者は瞳を閉じて沈黙した後、意を決したように言葉を告げる。
( ´_ゝ`)「世界はさ、俺らがまだ知らないものや、面白いもので満ちてるんだ。
それを見ないふりをするだなんて、俺にはできない。ブーンじゃないが、そういうのは楽しくない」
そうやって、告げられた言葉はなんとも脳天気なものだった。
深い考えがあるだけではないその言葉に、ドクオは思わず声を上げようとする。
しかし、その言葉が向けられているのはドクオではなくて弟者だ。ドクオは出かかった声を、なんとか抑えた。
(*´_ゝ`)「お前が嫌いな、魔法や神秘のたぐいだってさ。悪いことだらけじゃないよ」
(´<_`#)「だが!」
弟者の声が怒りの色を帯びる。
しかし、弟のその様子に兄者は気分を害した様でもなく平然としていた。
( ´_ゝ`)「ブーンは悪いやつだったか?
今日起こった出来事は、本当に散々なことばかりだったのか?」
.
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771 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/12/07(土) 20:28:19 ID:yZraviHw0
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( <_ ;)「――っ!」
そして告げられた問いかけに、弟者はとうとう言葉を失った。
何度か口を開いて反論しようとした末に、弟者はブーンの顔を見た。
(;^ω^)「……あうあう」
(´<_`; )「……」
弟者の口からは言葉が出ない。
かわりにその眉がひそめられて、表情の薄い顔に困った様な色が浮かぶ。
兄者はそんな弟の表情を見て取ると、それ以上はたたみかけようとはせずに話題を変えた。
(*´_ゝ`)「それにだなー。お前が心配するからちゃんと、魔法は使わなかったんだぞー。
石板だけ……魔道具だけでなんとかしちゃったお兄ちゃんマジ偉い、マジ立派!」
(*^ω^)キャーカッコイイー シンデー('A`*)
(*´_ゝ`)「ほら、石板魔法ってもさー、魔力なしで誰でも使える便利アイテムだからさー。
技術の進歩って偉大だよねー。こんなに使えるんだって、わかったろ? だから今後も使用の許可をオネシャス」
ドゲシッ(#´_>`)つ)#)゚_ゝ゚)アイヤー
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772 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/12/07(土) 20:31:58 ID:yZraviHw0
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(´<_`#)「こ の 大 嘘 つ き が !」
怒りが限界を超えたのだろう、弟者は兄の顔を殴りつけると、とうとう大声を上げた。
さっきまで「とっくに限界なのだろう」と問いかけていたのと同じ人間とは思えない殴りっぷりに、ドクオは言葉を失った。
(#);_ゝ;)「ひどいっ、弟者たんのおにちくっ! 悪魔の所業っ!」
(´<_`#)「マッチ程度の火しか出せないシロモノで、あんな大火力出しておいて何言ってやがる!
さんざん魔力を使い倒しておいて、何が便利アイテムだ! それに最後の攻撃、お前その場で魔法石板作っただろ!
”使う”と”作る”じゃ大違いだ、この阿呆!」
(;´_ゝ`))「ヤ、ヤダナーソンナコトシテナイデスヨー。
そ、それに仮についさっきというか今作ってたとしても、石板使ったことにはかわりないじゃないですかー」
(;'A`)「……お前ら、なんだかんだ言って本当は元気だろ」
殴られたと文句を言う兄に、怒り顔で詰め寄る弟。
その姿は兄者が動かないことさえ除けば、朝から見慣れた二人の姿そのものだ。
⊂(´<_`#)「俺に気を使ったつもりだろうが……全然気遣いになってないぞ。
わざわざ面倒くさい真似しやがって、このアホ兄貴! 馬鹿たれ!」
.
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773 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/12/07(土) 20:34:30 ID:yZraviHw0
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( ´_ゝ`)「……だって、かっこつけたかったんだもん」
弟者に言われるがままになっていた兄者が、ぼそりと声を上げる。
その声は小さかったが、弟者はしっかりと聞いていた。
(´<_`#)「は?」
(#´_ゝ`)「俺だってお兄ちゃんだから、弟に対してかっこつけたくなるんですぅぅ!!!」
弟に聞きつけられて開き直ったのか、兄者は大きな声を上げる。
しかし、そう言い切ったことで満足したのか、兄者は怒りの表情を引っ込める。
( ´_ゝ`)「俺は、お前や妹者の兄貴だからな。こういう時くらいは、かっこつけさせてくれ」
そして、あげられた言葉は、先ほど上げた声とは対照的に落ち着いていた。
その真剣ともいえる言葉に、弟者の表情が固まる。
弟者の顔から興奮した様子が掻き消え、浮かんでいた表情が消える。
( <_ )「……」
一瞬、和らいだ空気が再び凍っていく。
兄者がしまったと思う頃には、もう遅かった――。
.
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774 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/12/07(土) 20:36:52 ID:yZraviHw0
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(;^ω^)「お? どうしたんだお?」
弟者の表情の変化に、ブーンが声を上げた。
しかし、ブーンの声に言葉を返すものは誰もいない。
(´<_` )「……兄者は俺だ」
長い長い沈黙の末、弟者は口にする。
絞り出したようなその声は、とても小さかった。
(´<_` )「俺の考えることが兄者の考えることで、兄者の考えることが俺の考えることだろう?」
泣くのを我慢する、子供のような声だった。
それでも、弟者の顔には何の表情も浮かんではいかなった。
(´<_` )「だから、兄貴なんて言うのは止めろ……」
泣くわけでも、すがるでもないその姿に、兄者は黙り込んだ。
.
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775 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/12/07(土) 20:39:18 ID:yZraviHw0
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( -_ゝ-)「……」
再び沈黙が流れた。
兄者は長い長い時間をかけて、弟者へ向ける言葉を探しているようだった。
沈黙は重く、どう反応していいのかわからないらしいブーンが辺りを飛び回りはじめる。
( ´_ゝ`)「弟者。お前も本当はわかっているんだろう?
こうしてつながってしまってはいるけど、俺とお前は別の存在だって」
そして、沈黙の末。
兄者はようやく答えを口にした。
(´<_` )「……兄者が何を言いたいのかわからない。俺は兄者で、兄者は俺だ」
('A`)「……」
それが、兄者と弟者の間にある決定的な考えの違いなのだろうと、ドクオは悟る。
遺跡の中でドクオが兄者に問いかけた、仲が悪いだろうという問いの答えはきっとこれなのだろう。
双子だから、魂を共有しているからこそ発生する、決定的な価値観の相違。
「仲が悪いわけじゃないんだ」という兄者の言葉の意味が、ドクオにはようやく理解できた気がした。
.
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776 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/12/07(土) 20:40:33 ID:yZraviHw0
-
(;´_ゝ`)「あー、違うって言っても通じないんだろうなぁ、お前さんには。
お前の言いたいこともわかるが、それは違うんだ。間違ってる」
兄者の言葉は、途切れ途切れではっきりとしなかった。
しかし、そこには紛れも無く真剣な響きがあった。
( ´_ゝ`)「俺とおまえは確かにつながっている。それは変えようのない事実だ。
だけど、さ。一度別れてしまったものは、もう取り戻すことなんて出来ないんだよ」
兄者の言葉に、弟者の眉がぴくりと動く。
弟者は顔をしかめ不愉快だという表情を隠しもしなかったが、兄の言葉をじっと聞いていた。
( ´_ゝ`)つ「お前の毛並みは若草の色だろう? 俺は、空の色だ。染めたってもう元には戻らない。
お前の背は俺よりずっと高いよな。誰も、俺がお前の兄貴だなんて思わない」
( ´_ゝ`)「お前は星が読めるか? 風は、空は読めるか? 無理だよな。
俺だってお前から力をぶんどったとしても弟者みたいに動けないし、料理だって作れない」
「ほら、違うだろう?」と兄者は言う。
そして、彼は真剣な表情のままさらに続きを口にする。
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777 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/12/07(土) 20:43:40 ID:yZraviHw0
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オレ オレ
( ´_ゝ`)「兄者は弟者じゃない。
だって、そうじゃないと俺らが別の人間として生まれた意味がないだろう?」
――それは、弟者にとって致命的な一言だった。
兄者がそれに気づいているかどうかは、わからない。
しかし、その言葉は兄者がこれまでの思いを何とか言葉にしているようにも見えた。
(´<_` )「……俺は!」
オレ オレ
( ´_ゝ`)「それにさ、兄者は弟者であるよりも、お前や妹者の兄貴でいたい」
弟者の言葉を遮るようにして、兄者が最後の言葉を口にする。
言い切ると同時に、兄者の顔にようやく笑みが浮かんだ。
(´<_` )「……」
( ´_ゝ`)σ「まあ、お兄ちゃんとしては、弟者はちょっとばかし俺に甘えすぎではないのかと思うのだが。
俺にばっかりべったりしてないで、少しはお兄ちゃん離れしなさいってことだ」
そして、出た言葉はかなりふざけた口調だった。
これまでの真剣な様子を恥ずかしいとでも思ったのか、兄者の口調にはさっきまでの真面目さは欠片もない。
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778 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/12/07(土) 20:45:07 ID:yZraviHw0
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( <_ ;)「そんな子供みたいなことはしていない」
( ´_ゝ`)「ええ? そうかぁ?」
(´<_`#)「だが、しかしっ!」
弟者の言葉は激しかった。
しかし、怒りの表情を浮かべながらも、弟者の口からそれ以上の言葉が出てこない。
ドクオは兄弟の姿をまじまじと眺め。そして、弟者に向けて助け舟をだすように、口を開いていた。
(;'A`)「……話し中のとこすまないが、兄者の話に説得力が皆無なんだが」
自分でも、どうしてそのようなことを言い出したのかドクオ自身もわからない。
ただ、一度話しだすとそれから先は意識しないでも、言葉はあふれだす。
(;´_ゝ`)て「なんと!」
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779 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/12/07(土) 20:48:11 ID:yZraviHw0
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('A`)「あっさりと盗賊の人質になった姿をオレは忘れない」
(;´_ゝ`)「ぐ、ぐぬ?!」
('A`)「砂クジラにふらふら近づこうとした姿をオレは忘れない」
(;´_ゝ`)て「はひぃ?!」
ドクオの言葉に、兄者の言葉の調子が面白いほど変わる。
先程までの真剣な色は薄れ、ろくに意味を成さない声が兄者の口からあがる。
それに調子を良くして、ドクオは思うがままに語り始めた。
('A`)「弟者の思惑に気づいてたのに、そのまま放置。
思うところがあってもなかなか言えないで、その挙句に兄弟仲悪化!」
::::( ∩_ゝ∩)::「ごめんなさい、俺が悪かったです」
途中から兄者が涙目になるが、ドクオは止まらなかった。
影の精霊の性質なのだろう。ドクオは意識しないまま、兄者が言われたら嫌であろう言葉を投げつけていた。
('A`)σ「ぶっちゃけ、学習能力ないだろお前……」
(;^ω^)て「もうやめてあげてー!!!」
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780 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/12/07(土) 20:49:05 ID:yZraviHw0
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('A`)⊂(´<_`#) ガシッ
そして、その瞬間。横から伸びてきた腕に、ドクオの体は掴まれた。
ぎりぎりと力を込めて、ドクオの細い体が握りつけられる。
ドクオを潰さんばかりに力を込めるその手は、弟者のものだ。弟者は、怒りの色を隠さないまま叫ぶ。
(´<_`#)「俺に何を言う、このクソ精霊!!」
(;´_ゝ`)「だから、俺はお前じゃなくて兄者でぇぇぇ!!!」
(´<_`#)「どっちも同じだろ、クソ兄者! どうせ半分は俺だ」
::(;゚A゚)::「ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!」
(;^ω^)「あばばばば」
ピントのズレた弟者の言葉に、兄者の悲鳴にも似た声が重なる。
しかし、弟者は兄の声に、罵声にも似た言葉を投げ返した。
ただ一人、その場の会話の流れに置いて行かれたブーンは、どうすることも出来ずに言葉にもならない声を上げる。
.
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781 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/12/07(土) 20:51:36 ID:yZraviHw0
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(;´_ゝ`)「だぁーかぁーらぁー!! もう大人なんだからやめなさいって!
お前がお兄ちゃんのことを俺というたびに、家庭内の空気がどんどんと悪く」
(´<_`*)「……誰も居ないところならいいのか、俺?」
兄者の言葉に、ずっと機嫌が悪そうにしていた弟者の表情が輝く。
その表情を見て、兄者はとうとう頭をガクリと落とした。
体の具合が良ければ頭を抱えたり、両手を振り上げていたであろう勢いで兄者は大きく嘆く。
(#´_ゝ`)「そういう問題じゃない! 嬉しそうにするのもやめ!
自分と他人はしっかりと区別しなさいというお話だ!」
_,
(´<_` )「む? よくわからんぞ、兄者。だって兄者は俺なんだろ?」
(;´_ゝ`)「ああ、もう! これだから嫌だったんだ俺は!
こんなもん子供のうちに、自然とわかる問題だぞ」
(;^ω^).。oO(なんだかわかんないけど、たいへんだおー)
兄弟の話の流れに置いて行かれた、ブーンは首をかしげながら思う。
そして、精霊のもう一人。弟者の手に握られているドクオは、ふと思った。
('A`).。oO(あ、これオレ助かったんじゃね?)
.
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782 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/12/07(土) 20:53:23 ID:yZraviHw0
-
(´<_` )「?」
( _ゝ )「もうやだ、お兄ちゃんやめたい。
なんで、本気でわからないとかそんな顔してるの?」
(´<_` )「……つまり、俺の方が兄をやればいいのか?
まあたしかに、肉体的には俺のほうが2年ほど年上になるが……」
(#´_ゝ`)「ダメー、お兄ちゃんの座はゆずりません!!」
(´<_` )「……? 違うのか?」
双子は互いにしかわからない話をずっと続けている。
ドクオは兄弟の言葉を、なんとなく聞きながら。彼ら兄弟がもめている根本的な原因に気づいた。
なるほどそういうことか、とドクオは弟者に握りつけられているのをすっかり忘れて、呟いた。
('A`)「つまりは、弟者が兄離れできない心配性だったのが全ての原因だと」
('A`)⊂(´<_`#)ギリギリギリ
その言葉と、弟者の腕に力がこもるのはほぼ同時だった。
弟者は兄者との言い争いに必死だったのを忘れて、腕に力を入れドクオの体を締め付けていく。
その力は、細いドクオの体を引きちぎろうとするほど強力だ。
.
-
783 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/12/07(土) 20:55:37 ID:yZraviHw0
-
(;゚ω゚)て
(;´_ゝ`)「ちょ、弟者弟者! 顔が真顔! やめて!」
弟者の行動に、ブーンの表情が凍る。
突如黙り込んだ弟を不思議に思った兄者も、顔を上げて真っ青になった。
(;゚A゚)「イダイイダイ!! 羽もげちゃうぅぅ!!!」
(´<_` )「オレとしては死んでくれても問題はないのだが」
( ;ω;)「おーん! やめるおー!!!」
ドクオを握る弟者の手にさらに力がこもる。
締め付けられる力は一向に緩む気配はなく、やがてドクオの意識が遠のいていく。
.
-
784 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/12/07(土) 20:57:26 ID:yZraviHw0
-
(#´_ゝ`)「やめろ!!」
兄者の声が聞えると、ドクオは思った。
――そう思うと同時に、弟者の手の力が急に弱くなる。
(*'A`)「勝つる!」
しめたと思いながら、ドクオは弟者の手の間から脱出すると、あわてて距離をとった。
(;'A`)「ふぅ。たすかったぁぁぁ……」
(´<_`#)「このっ!」
弟者が、逃げたドクオを再びつかもうと腕を伸ばす。
それを押さえ込んだのはブーンと、動けなくなっていたはずの兄者だった。
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785 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/12/07(土) 21:00:04 ID:yZraviHw0
-
(#´_ゝ`)つ「いい加減にしろ。これ以上やるなら、日干しにするぞ!」
兄者の一喝が、弟に向けて飛ぶ。
さっきまでちっとも動けなかったのが嘘のように、兄者の体はがっちりと弟を押さえ込んでいる。
(゚<_゚ ii)「――ぐっ」
一方、押さえつけられた弟者の顔は真っ青だ。
その唐突な弟者の変化に、ドクオは兄者が弟者の力を奪ったのかとようやく気づく。いや、痛みを戻したのかもしれない。
そうか、兄者にも出来たのかとドクオは弟者の姿を眺めながら思った。
(∩#´_ゝ`)∩「弟者っ、返事っ!」
(´<_` ii)「とてつもなく痛いのだが……」
( ´_ゝ`)「安心しろ、俺はもっと痛いから」
顔を青くした弟者は、先ほどまでとは一転してかすれた声で言う。
そんな弟に視線を向けながら、兄者はきっぱりと言い切った。
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786 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/12/07(土) 21:02:42 ID:yZraviHw0
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(´<_` ii)「なんだと……よくもそれで、大丈夫だと言ったな」
(;^ω^)「いたいのはよくないお……」
(;´_ゝ`)「あー、正直すまんかった」
兄弟とブーンの会話に、ドクオは今度こそ本当に助かったらしいと悟る。
しかし、このままでいれば、また下手なことを呟いて弟者に握りつぶされかねない。
ドクオはなんとか弟の前から脱出できないかと、辺りを見回し――気づく。
('∀`)「結界が解けてるじゃねーか!!!」
ゴーレムの出現以後、部屋にかかっていた結界が消えている。
どういうわけで、結界が消えたのかはドクオにはわからない。
しかし、脱出を阻んでいた障害が消えたことに、ドクオは心の底から喜んだ。
(;´_ゝ`)「なんと!!」
(; ゚ω゚)「え? え? どうしたんだお?!」
('A`)>「というわけで、オレは助けを求めに行ってくるから!」
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787 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/12/07(土) 21:04:16 ID:yZraviHw0
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兄者やブーンの驚きの声に言葉を返さないまま、ドクオの姿が掻き消えた。
どうやら影に潜り込んだらしい。と、兄者は少し遅れて理解する。
(;^ω^)「おーん、ドクオまつおー!!」
ブーンも少し遅れて理解したのか、ドクオの消えた先――、影へと飛び込もうとする。
が、ブーンの体は音を立てて、固い地面へと激突した。
ブーンは起き上がると、ドクオが潜り込んだ草むらの影ヘ向けて腕を伸ばす。
( ´ω`)ノ「入れないお……」
影を叩いてみるが、地面の硬い感触が返ってくるだけで何も反応がない。
ブーンは肩を落とすと、兄者や弟者の元へと舞い戻る。
(;´_ゝ`)σ「逃げたわけじゃないよな……さっき思いっきり、弟者に握りつぶされてたし」
(-<_- ii)「知らん。俺は兄者のいうことはもう聞かん」
(;´_ゝ`)「……弟者のやつまた、スネてるし」
ブーンが舞い戻った先では、双子の兄弟はまた言い争いをはじめた。
しかし、その空気は先程までと比べると幾分か柔らかい。
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788 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/12/07(土) 21:07:03 ID:yZraviHw0
-
(-<_- ii)「拗ねてない」
(;´_ゝ`)>「ちぇー、スネてると思うんだけどなぁ」
兄者は大きく溜息をつくと、ブーンに向けて苦笑いをしてみせる。
兄者はさてどうしようと辺りを見回し、草むらへと視線を向ける。
( ´_ゝ`)「弟者の尊い犠牲のお陰で動けるようになったし。今のうちに……」
( ^ω^)「アニジャ、どうしたんだお?」
( ´_ゝ`)「ちょっと忘れ物をだな」
兄者はブーンの言葉に応えると、壁へと向かって足を向ける。
顔を時折、引きつらせるのはまだ胸や体が痛むからなのだろう。
弟者が不機嫌そうに眉をひそめたが、兄を力づくで止めようとまではしなかった。
(*´_ゝ`)「よしっ――」
兄者は草をかき分けて進むと辺りを見回し、そしてその場に屈みこんだ。
何かを拾い上げているようだが、それが何かまでは弟者の場所からは見えない。
それは何だと弟者が問いかけるよりも早く、兄者は拾い上げたそれを懐へと仕舞いこんでいた。
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789 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/12/07(土) 21:08:39 ID:yZraviHw0
-
_,
(´<_` )「……」
( ^ω^)「うーん、何だおねー?」
(´<_` )「さてな」
( ゚ω゚) !
弟者の短い素っ気ない返事に、ブーンの瞳が大きく見開かれる。
なにかおかしな事でも言っただろうかと弟者は内心で首を傾け、ブーンに向けて短く問いかける。
(´<_` )「……どうした?」
(*^ω^)「オトジャがお話してくれたお! うれしいお!!」
話すだけならもっと前から話しているだろうと弟者は言いかけて、その言葉を飲み込む。
弟者がブーンにしっかりと話しだしたのは、ゴーレムが出現した時からだ。
ブーンからしてみれば、非常事態に対応するための一時的な手段と思っても不思議ではないだろう。
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790 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/12/07(土) 21:10:16 ID:yZraviHw0
-
喜ぶのはそれでか。
弟者は、ブーンの考えを推測すると小さく笑みを浮かべる。
(´<_` )「そんなことが嬉しいとは、ブーンは変なやつだな」
(#^ω^)「そんなことじゃないお! ブーンにとってはすっごく大事なんだお!」
ブーンの様子が真剣なものだから、弟者はつい笑ってしまう。
そして、笑ってから弟者は、あれだけ毛嫌いをしていた精霊相手に笑える自分に驚いた。
_,
( ^ω^)「むぅぅ、なんでオトジャは笑うんだお?」
(´<_` )「さてな」
(;^ω^)「オトジャがいじわるするおー」
不思議と嫌悪感は湧き上がってこなかった。
むしろ、こうなってしまえばもっと前から話せばよかったとすら思えるから不思議だ。
(´<_`*)「はいはい」
ブーンの言葉に弟者は笑って、空を見上げた。
脇腹をはじめとした体の至る部分が痛みを訴えてくるが、そう嫌な気持ちではなかった。
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791 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/12/07(土) 21:13:16 ID:yZraviHw0
-
・
・
・
ドクオが帰ってくる気配はなかった。
逃げてしまったのか、それとも本人の申告の通り助けを呼びに行ったのか。
確かめることが出来ない弟者にはわからない。
(´<_`; ).。oO(流石にいつまでもこのままというわけには、いかないな)
しかし、外に出る気力や体力は、尽き果ててしまっている。
痛みを訴える脇腹や、疲労にあえぐ全身が、もう寝てしまえと強烈に誘いかけてくる。
それでも、どうにかして外に出なければならない。
(´<_` )「兄者、いつまでそうしている。
動けるならばそろそろ助けを――」
意を決して声を上げた、その瞬間。
弟者の目の前に、薄水色の毛並みの手がつきつけられる。
驚いて視線をあげると、そこには辺りを歩いて満足したらしい兄者の姿があった。
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792 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/12/07(土) 21:14:59 ID:yZraviHw0
-
( ´_ゝ`)「ほい、忘れ物。これを忘れるなんてとんでもない」
(´<_`;)「あ……ああ」
兄者の手から差し出されたものを弟者は受け取る。
一体なんだろうと手を開いてみれば、そこにあるのは金貨や銀貨だった。
――そういえば、ゴーレムに向けて投げつけていたのだった。
弟者はそう思い、礼を言おうとして――扉の外が、急に騒がしくなっていることに気づいた。
( )「…い!……、 ! …か!?」
( )「 える? 、… !」
ドンドンと何かを叩きつける音、それから扉越しではっきりしないが呼びかける声も聞こえる。
(´<_` )「兄者、何か聞こえ……」
弟者がそう声を上げた瞬間、足元が揺らぐ。
一体、何事だと弟者はシャムシールの柄に手を掛ける。
敵か? だとしたら戦わなければならない――。
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793 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/12/07(土) 21:16:16 ID:yZraviHw0
-
しかし、弟者の警戒は杞憂で終わった。
弟者の足元を一瞬だけ揺るがして登場したのは、ドクオだった。
(;'A`)「おい! 人を呼んできたぞ!」
おそらくは、影から出たのであろう。
ドクオは自らの言葉通り、ちゃんと仕事を果たしたらしい。
逃げたのではなかったのか、と弟者は反射的に言いかけて、精霊ではあるとはいえ流石に失礼かと思い直す。
(*´_ゝ`)「おお、本当に助けを呼んできたのか! てっきり逃げたのかと!」
<(;'A`)>「もう、それは忘れてくれ!」
一方の兄者は、ドクオに驚いたような表情を浮かべると、すぐにそう言い放った。
どうやら兄者は思慮という言葉をどこかに置き去りにしてきてしまったらしい。
( ^ω^)「ドクオ、呼んできたって誰をだお?」
(;'A`)「そうだ! そうだよ、聞いてくれよ!」
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794 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/12/07(土) 21:18:14 ID:yZraviHw0
-
ドクオは兄者の言葉に頭を抱えてのたうちまわった末、扉を指さした。
(;'A`)ノ「ちゃんと連れてきたぞ、麗しのしぃさんを!」
(,,#゚Д゚)「ゴルァーーっ!!!」
ドクオの声と、男の野太い声が聞こえるのはほぼ同時だった。
全身の毛を逆立てたギコが、扉をこじ開けその中へと入ってくる。
(,,#゚Д゚)「坊主ども、いるか!?」
( ;_ゝ;)「しぃ者、随分とゴツくなって!」
(;^ω^) !?
兄者たちのいる最奥の壁際と、入り口の扉は遠い。
だから、あまりにもひどいその言葉はギコには届かなかった。
(,,*゚Д゚)「よかった! そこにいやがったか!」
(;゚ー゚)「みんな、大丈夫?!」
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795 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/12/07(土) 21:20:13 ID:yZraviHw0
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ギコの後に続くようにして、しぃの姿が現れる。
黒のドレスと赤の飾り紐が風に揺れ、しぃの桃色の毛並みが鮮やかに見えた。
広間の一番奥に兄者や弟者がいることに気づくと、しぃはドレスが汚れるのにも構わず駆け出した。
(;゚ー゚)「血まみれじゃない!? 大丈夫なの兄者くん」
しぃは長い距離を駆け抜け兄弟のすぐ傍らにたどりつくと、顔を青くした。
手当も何もしていない兄者の頭は、流れだした血で赤く染まっている。
( ´_ゝ`)「あー、これは俺じゃなくて弟者が」
(#゚ー゚)「兄者くんは、黙ってて!」
(;´_ゝ`)て「なんと理不尽な!?」
そう叫んだ瞬間に、口の中が切れたのか、兄者の口元から血が溢れ出る。
兄者はあわてて血を拭うが、その行動は遅かった。
しぃは真っ青な顔で兄者の怪我を見、弟者の様子を尋ねた。
(;゚−゚)「弟者くんは、大丈夫なの?」
(´<_`; )「俺は、兄者に比べればマ」
(#゚ー゚)「やっぱり、血が出てる。それに、全身ボロボロじゃない」
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796 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/12/07(土) 21:22:56 ID:yZraviHw0
-
(,;゚Д゚)「おい、本当に何かあったのか?」
最奥の間は、ギコが知るものとは異なっていた。
何か大きなものに滅茶苦茶にされた地面と、踏み荒らされた草。
部屋の奥には何処から出現したのかわからない、大きな岩の塊――ゴーレムの成れの果てがゴロゴロとしている。
祭壇の周りは割れたり倒れたりした壺や燭台が散乱している。
そして何より目を引いたのは、部屋の最も奥に位置する壁が焼け焦げたかのように黒く汚れていることだ。
( ´ω`)「すっごいいろいろあったんだお……たいへんなんだお……」
(,,;゚Д゚)「二人はボロボロだし、一体どうしたんだ」
武器を構え周囲を警戒し、何もないことを確認したところでギコはそう口にした。
しかし、ギコの疑問に答えるものはいない。
正確にはブーンが答えているのだが、ブーンの言葉では説明にはなっていないし、精霊を見ることの出来ないギコにはわからない。
(,,;゚Д゚)「おい、兄者」
(;゚ー゚)「ギコくん。今はそれより応急処置を」
(,,;-Д-)「……だな」
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797 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/12/07(土) 21:24:21 ID:yZraviHw0
-
ギコは背負っていた荷物から、何やら袋を取り出すとしぃに手渡した。
そこには包帯や塗り薬らしきものが入れられている。
(;゚ー゚)「怪我の具合はどうなの?」
(;´_ゝ`)「そう言われると、説明のしづらい……」
(*'A`)ノ「しぃさん、お手伝いしますぅ!」
しぃは袋の中から布を水筒と取り出すと、兄者の被り布を外し傷の観察をはじめる。
兄者はそれに、居心地悪そうに視線を外すと、言葉を濁す。
ドクオはといえばしぃと一緒にいるのが嬉しいのか、ニヤニヤと笑顔を浮かべしぃの周りをひたすら飛び回っている。
(*'∀`)「しぃさん! しぃさん!」
(;´_ゝ`)「お前はちょっと黙ったほうがいいと思う件」
(;゚ー゚)「ほら、兄者くん。おしゃべりしてないで、ちゃんと怪我を見せて」
(#'A`)「ずるいぞ! オレだってしぃさんに優しく手当てされたい!」
しぃは兄者の怪我の具合を見ると、困ったように息をついた。
(;゚ぺ)「どうしよう、仙丹で足りるかしら。あまり具合がひどいようなら、もっと他のお薬を……」
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798 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/12/07(土) 21:27:16 ID:yZraviHw0
-
(,,゚Д゚)「弟者は手を出せ。薬の前に怪我の方をどうにかする」
と(´<_` )「把握した」
( ^ω^)「いたいのいたいのとんでいけーだお!」
一方、弟者にはギコが慣れた手つきで治療の準備を始める。
弟者の手を眺め「無茶しやがって」と口にすると、鞄の中から布を引っ張り出した。
(´<_` )「それは何だ?」
( ^ω^)「オマジナイってやつらしいおー」
(,,;゚Д゚)「え? 止血用の普通の布だが……」
弟者の問いかけに、ブーンとギコが同時に言葉を返す。
両者の答えに弟者は「ふむ」と呟くだけだ。
弟者の様子にギコは「そんなに変なものに見えるか?」大きく首をかしげると、弟者の腕を縛り上げ止血をしていく。
(´<_`;)「また、あの胡散臭い薬を飲まされるのか……」
弟者はギコにされるがままになりながら、小さく呟いた。
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799 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/12/07(土) 21:28:58 ID:yZraviHw0
-
・
・
・
治療にはそれほどの時間はかからなかった。
弟者は「あんな胡散臭い薬は嫌だ」と抵抗していたが、それも虚しく終わった。
しぃの笑顔と、ブーンの「おクスリのまなきゃダメだおー」という言葉が効いたらしいが真相は定かではない。
ヾ(*´_ゝ`)ノ「見ろ、ブーン!! 俺、復活! 俺、ふっかーつ!!」
( ;ω;)「よかったおー」
兄者も弟者も受けたダメージが大きすぎたためか、仙丹を使っても完全回復というわけには行かなかった。
とはいえ、一時は完全に動けなくなっていた兄者にとってはそれでも嬉しいのだろう。大はしゃぎだった。
(;゚ー゚)「もう、あくまで応急処置なんだから無茶しないで」
(´<_`;)「……応急処置ってことは、まだあるのか?」
(,,;-Д-)「しぃは胡散臭い薬を集めるのが好きだからな。覚悟しとけ」
(*'A`)「しぃさん……なんて素敵な趣味なんだ」
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800 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/12/07(土) 21:30:36 ID:yZraviHw0
-
( ´_ゝ`)b「まぁ、何事も経験だ。諦めろ」
眉をひそめて嫌そうな表情を浮かべた弟に向けて、兄者は言い放つ。
弟者はその言葉に言葉を返そうとして、ギコが何かを言おうとしていることに気づいた。
弟者が顔を向けると、ギコはそれを会話終了の合図と見たのか、大きく口を開いた。
(,,゚Д゚)「――で、何があったんだ?」
(*゚−゚)「……」
猫の耳をピン立てて告げたギコの言葉に、兄者の顔がひきつり固まる。
兄者は助けを求めるように視線を右へ左へと泳がせたが、誰からも助けを出そうとはしない。
兄者は「ぐぬ」と奇声を発すると、答えを考えこむように黙った後ゆっくりと声を上げた。
(;´_ゝ`)「……いや、ちょっと大冒険みたいな?」
(´<_` )「ゴーレムが出た」
(,, Д ) ゚ ゚
.
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801 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/12/07(土) 21:32:47 ID:yZraviHw0
-
おそらくは話が穏便に済むようにと考えられた言葉は、弟者によって即座に打ち砕かれた。
その言葉に、ギコは絶句し、目玉が飛び出さんばかりに目を見開いた。
青い毛並みに覆われた顔が青ざめ、尻尾が一気に逆立つ。
(,,ii゚Д゚)「な、ななななな」
(;゚ 。゚)「そ、それってどういうこと?」
ゴーレムという言葉は、ギコにもしぃにも覚えがあった。
その昔に、猛威を振るったという人工の怪物。その名は老人の口や、お伽話によって聞かされている。
さらに言えば、しぃはソーサク遺跡の調査の責任者を務める学者だ。
ゴーレムが出現した時の恐ろしさは、彼女が誰よりもよくわかっていた。
_,
(´<_`#)「どういうことだもない。ここは安全なんじゃなかったのか?」
(,,ii゚Д゚)「何十回も調査してるんだぞ、何でよりにもよってそんなことに」
( - -)「ギコくん。もういいわ、これはこちらの落ち度よ。
本当にごめんなさい」
動揺を隠しきれないギコとは対照的に、しぃは冷静さを取り戻していた。
責任者らしくピンと背筋を伸ばして、彼女は謝罪の礼をとる。そこには先ほどまでの動揺は微塵も見られない。
代わりに、緊張をたたえたような硬い表情だけがそこにあった。
.
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802 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/12/07(土) 21:34:33 ID:yZraviHw0
-
(;´_ゝ`)「ギコ者やしぃ者が悪いわけじゃないんだから、時に落ち着け弟者!
しぃ者もそこまで深刻にならなくとも、俺らは平気だし。大事には……」
(*゚−゚)「ダメよ。責任はちゃんと取らなきゃいけないわ。
申し訳ないのだけれど、ここを出たらもっと詳しく話を聞かせて貰える?」
(;´_ゝ`)「……ぐ、ぬぅ」
しぃの言葉は正論だ。
それがわかってしまうから、兄者もそれ以上庇い立てするような言葉が出せない。
(,,;-Д-)「……」
(´<_`;)「……」
( ^ω^)「……お?」
しぃの言葉を否定するものは誰もいなかった。
弟者はしぃの言葉に毒気を抜かれたように黙り込み、ギコは悔しそうな表情を浮かべ小さく舌打ちをする。
ただ一人、状況をあまり理解できていないらしいブーンだけが、首を横にかしげて飛んでいた。
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803 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/12/07(土) 21:36:09 ID:yZraviHw0
-
( ゚−゚)「じゃあ、話は後ですることにして、とりあえずは外に出ましょう?
ここじゃあ、何かあっても対処できないわ」
(*'A`)「素晴らしいです、しぃさん!」
(*゚ー゚)「ギコくんも、ね?」
(,,-Д-)「……わかったよ」
誰からの答えがないのを、肯定の合図ととったのかしぃが話をまとめる。
彼女はなだめるようにギコの肩を叩くと、兄者と弟者を扉へ向かうように促す。
( ´_ゝ`)「うーむ。名残惜しいような気がするが、この場所とはお別れか」
(´<_`;)「名残惜しいなどとよく言えたものだな。俺はこんなところはもう御免だ」
( ´ω`)「もう出れないかと思ったお…」
そんな会話を繰り広げながら、兄弟は立ち上がる。
治療の甲斐もあって、二人の足取りは軽い。遺跡から出るのには何の支障も無いだろう。
先ほどまで大怪我をしていたとは思えない彼らの気楽な様子に、ギコは大きく溜息を付いた。
.
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804 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/12/07(土) 21:38:08 ID:yZraviHw0
-
(,,;゚Д゚)「まったく、お前ら二人は。
どうしてそう毎度、毎度、厄介事に巻き込まれるんだ?」
それは、ギコにとっては心の底から出た言葉だった。
信じられないという気持ちと、おそらく自分ならば耐えられないだろうという感服の気持ちを込めてギコは告げる。
(´<_`#)「そんなの俺が知りたいくらいだ」
(,,-Д-)「ほんとに、毎回命があるのが不思議なくらいだぞ」
(*´_ゝ`)「うむ。退屈な日常にはこれくらいのスパイスがないとな」
(´<_`#)「兄者はっ――、」
ギコと兄者の言葉に声を荒げながら、弟者の思考は一瞬止まった。
兄者は余裕な様子で、笑顔を浮かべている。
あれほどひどい目にあったのに、笑っていられる兄者が不思議で……。
自分はこんなにも苛ついているのというのに、どうして兄者はそうなんだと声を上げようとして、弟者はふと気づく。
(´<_` )「……」
.
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805 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/12/07(土) 21:40:20 ID:yZraviHw0
-
――俺と、兄者が違うというのはこういうことか。
.
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806 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/12/07(土) 21:42:16 ID:yZraviHw0
-
考えてみれば当たり前なことだったが、それは弟者にとってはじめての感覚だった。
こんな簡単なことに、なぜこれまで気づかなかったのだろう。
そう不思議に思いかけたところで、弟者は先ほどの兄者の発言に聞き逃せない部分があったことにようやく気づく。
( ´_ゝ`)「ん? どうかしたか?」
(´<_`#)「こんなことがそう毎度毎度あってたまるか。
お前はアホか! 馬鹿か! 死ぬのか!」
('A`)「同じようなこと兄の方も言ってなかったか?」
( ^ω^)「んー、おそろいなのかお?」
(´<_`#)「こんなのと一緒にされてたまるか!!!」
気づけば、兄者はにやにやと笑顔を浮かべている。
何が面白いのかわからないが、兄者は笑いながら口を開いた。
( ´_ゝ`)「でも、ま。大丈夫だろうさ。
俺だけなら死ぬかもしれんが、俺にはよくできた弟がいるしな」
(´<_` )「……なんというか。兄者はたまに本気ですごいな」
.
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807 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/12/07(土) 21:44:23 ID:yZraviHw0
-
「俺」ではなくて、弟扱いされたのは癪だった。
けれども、いつもの笑顔でそう言い切れる兄者は、実はすごいやつなのではないか。
――気づけば弟者は、そう自然に思っていた。
\(*´_ゝ`)/「そうかそうか〜。お兄ちゃんは本当にすごいか〜
かっこよくてイッケメーン!で、道行くおにゃのこたちも惚れちゃう感じか」
(´<_` )「ああ、自分一人で必死だったのがアホらしくなった。
でも、イッケメーン!じゃないし、道行くおにゃのこたちは惚れないから安心しろ」
\( ;_ゝ;)/「ひどい」
「俺」というくくりを外して、兄者を別の人間としてみる。
兄者の言うことは今はまだ正直よくわからないが、少しずつ気づいて、慣れていけばいい。
いくらでも時間はあるのだから――。
弟者ははじめて、自分とは違う存在である兄へと向けて、言った。
(´<_`*)「流石だよ、兄者は」
弟者は笑顔を浮かべている。
それは人ではないブーンやドクオのような精霊ではなかなかできない、少年のような笑みだった。
.
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808 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/12/07(土) 21:46:38 ID:yZraviHw0
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(,,゚Д゚)「おい、いつまで話してるんだ? さっさと行くぞ!」
(*゚−゚)「もしかして、まだ具合が悪い?」
ギコとしぃが、呼ぶ声が聞こえる。
いつの間にやらギコは、しぃとともに扉の間近へと進んでいた。
(*'∀`)「しぃさん待ってくださーい!!」
(;^ω^)「おいてかないで、だおー」
二人の呼びかけに、ドクオとブーンが飛んで行く。
そして、残された兄弟も笑い合うと、扉へと向けて走りだした。
ヾ(*´_ゝ`)ノシ「今行くぞー」
(´<_` )「急ぐのはいいが、転ぶなよ」
走りながらも、弟者は最後に一度だけ振り向いた。
崩れ落ちた巨大な岩の欠片、焼け焦げた壁、荒らされた祭壇と地面。
――戦闘の傷をいたるところに残しながらも、遺跡はひっそりと、静かに眠っている。
弟者は小さく頷くと、今度こそ振り返らずに走り始めた。
.
-
809 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/12/07(土) 21:48:18 ID:yZraviHw0
-
――――――――――――――――
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――――――――――――――
――――――――――――
そこからは驚くほど何事も起こらなかった。
ゴーレムとの死闘が嘘だったように、遺跡はただ静かに横たわっていた。
荒れた庭を抜け、浮き彫りの施された廊下を通り、そして黒い鉄の扉を開く。
行きにはとても長いように感じられた道のりは、あっけないほど短かった。
(#*゚;;-゚)「……!」
そして、調査隊本部では、でぃが待ち構えていた。
一人で留守番をしていたらしい彼女は、半分泣きそうになりながらも一同を出迎えた。
(*´_ゝ`)ノシ !
(#;゚;;-゚)「……」
黒い大きな天幕で治療の続きを受け、休息をとる。
それから、しぃによる長い長い質問が終わった頃には、かなりの時間がたっていた。
.
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810 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/12/07(土) 21:50:23 ID:yZraviHw0
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(;´_ゝ`)「時に弟者よ、日の高さがえらいことになっているのだが……」
(´<_`;)「なんと」
天幕の下から空を見上げた兄者の声は曇っていた。
弟者はその声に慌てて空を見上げて、日がかなり傾いていることに気づいた。
ソーサク遺跡に到着した時には太陽はまだ真上に近い所にいたはずだから、あれからかなりの時間が過ぎたことになる。
柔らかくなっている日差しが、夕暮れはもう近いことを告げている。
(*゚ー゚)「あら……もう、こんな時間?」
(#゚;;-゚)「……みんなが……帰ってくるね」
(,,゚Д゚)「寝床なら用意できるから泊まっていけ」
しぃとでぃの姉妹と、ギコが宿泊を薦めてくる。
しかし、兄者と弟者はその言葉に首を縦には振らなかった。
(; ´_ゝ`)「いや時に待てギコ者よ。俺らは今日中に帰らなければマズイのだ」
(´<_` )「そうだな。今からでも帰らないと差し障りがある」
.
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811 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/12/07(土) 21:52:59 ID:yZraviHw0
-
空に落ちかかる太陽を見上げて、弟者は眉根をよせる。
予定よりも遥かに時間がたってしまっている。このままだと、日暮れまでに流石の街にたどり着くことは出来ないだろう。
となると……、
(´<_` )「夜行で強行軍か。どれだけかかることやら……」
( ;゚_ゝ゚)「夜行だと……。そんなことしたら、お兄ちゃん死んじゃう!
もうちょっと早く帰れないの!? 明日は、妹者たんと遊ばなきゃいけないんだぞ!」
(´<_` ;)「そんなこと言ったって、荒巻や中嶋の足ではどうやったって時間がかかるぞ。
それにこのまま帰らないと、兄者が一番まずい件」
兄者と弟者のやりとりに、ブーンは首を傾げた。
街に帰らなければならないのはわかったけれども、それはどうして美味しくないことになるのか。
( ^ω^)「んー、何でだお?」
(´<_` )「何でって、……そりゃあ、兄者は母者お抱えの星読み師だからな。
大商隊の逗留の間は治安が不安定になるから、兄者が抜けるのはマズイ」
(*゚ー゚)゛
(i;゚ー゚).。oO(あの、弟者くんが精霊とお話してる……)
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812 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/12/07(土) 21:54:28 ID:yZraviHw0
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(;'A`)「お前、実はすごかったのか?」
(*´_ゝ`)b「流石だろ、俺」
(´<_` )「タダ飯食らいなんだから、せめてそのくらいは働け」
(;´_ゝ`)て
しぃの内心の動揺に気づかないまま、兄弟たちの話は進む。
精霊などを嫌い、完全に目の敵にしていた弟者の豹変。
しぃの内心の動揺は相当なものだったが、彼女の心情に共感してくれるはずのギコやでぃは残念ながら精霊が見えない。
「どうしたの?」としぃは問いかけようとして、その言葉をそっと胸に押さえ込んだ。
せっかくの弟者の変化だ。このまま見守ってあげたいと思うのは、年長者としても、弟者の姉の友人としても間違っていはいない気がした。
(,,;゚Д゚)「おい、お前らまさか本気で帰るつもりじゃねぇだろうな」
(´<_` )「帰るつもりですが、何か」
(,,#゚Д゚)「駄目だ駄目だ。旅慣れてないお前らお坊ちゃんじゃ無理だ。
特に、兄者。あれだけの大怪我だ。いくら回復したといったって、限界があるわボケ」
(;゚ー゚)「うーん。星読みは水鏡で伝えるというのじゃ、ダメなのかしら?」
(;´_ゝ`)「だがしかしだな……」
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813 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/12/07(土) 21:56:26 ID:yZraviHw0
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( ´_ゝ`) !
眉根を寄せて真剣に思い悩んでいた兄者の脳裏に、雷光のようなひらめきがよぎる。
兄者はその考えを手繰り寄せ、少しの間考え込む。
そして、思いついた考えが実現可能だと確信すると、兄者は笑顔を浮かべた。
(*´_ゝ`)「要するにだ、夜になるまでに帰れればいいのだろう?
流石だよな、俺。完璧じゃないか!」
(´<_` )「……兄者。それができるのならば、そもそも俺らはここまで思い悩んでいないのだが」
(,,-Д-)「弟者に賛成だ。ここからだと、どれだけ急いでも途中で日が暮れるぞ。危険だ」
弟者やギコの反対にあっても、兄者の表情は崩れない。
むしろ聞いてくれといわんばかりに弟者とギコの顔を交互に眺め、笑顔を浮かべる。
( ^ω^)「飛べばひとっ飛びだと思うんだけど、ちがうのかお?」
('A`)「ブーン。それは、お前しかできない」
(;^ω^)「そ、そうなのかお?」
('A`)「弟者が言ってただろう。人は、飛べないってな」
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814 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/12/07(土) 21:59:25 ID:yZraviHw0
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(*´_ゝ`)「ふっふっふー」
兄者は笑顔を浮かべ、弟者やギコの反応を待ち続ける。
しかし、兄者のその期待はすぐに打ち砕かれた。
(*゚ー゚)「とりあえず水鏡で連絡してみたらどうかしら?」
( <_ )「水鏡……」
(*゚ー゚)「あくまでも一つの手段だけどね。無理にとは言わないわ。
使いたいということなら、弟者くんたちのかわりに私かギコくんが連絡を取るから安心して」
(,,゚Д゚)「まあ、お前らはここで休んでいればいいってことだ」
( <_ )「……」
誰も聞いていない。
それどころか、弟者は鏡という単語に意識を奪われ沈黙すらしている。
表情すら浮かべない完全なる真顔。弟者のことは心配ではあるが、今はそれよりも……
ヾ(;´_ゝ`)ノシ「俺って無視されてないか? なんで、なんで?」
( ;_ゝ;)ブワッ (^ω^;) ('A`)
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815 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/12/07(土) 22:00:30 ID:yZraviHw0
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( ;_ゝ;)ヾ(^ω^ )ヨシヨシダオー ('A`;)
('A`;).。oO(兄者のヤツ、やっぱアホなんじゃないか?)
兄者はひとしきり大袈裟に泣いてみたが、ブーン以外誰にも相手をしてもらえない。
それを悟った兄者はブーンの頭を撫でると、そばにいた弟者のマントを引っ張り声を上げた。
( ´_ゝ`)「だーかーらー、そんな顔しなくても帰れるんだって! ちゃんと、夜までに!」
(´<_` ;)「え? あ……よかった、な?」
(#`_ゝ´)「ちゃんと聞けって! 弟者が協力さえしてくれればどうにかなる!」
_,
(´<_` )「……」
弟者は眉をひそめると、兄者の姿を見た。どうやら兄者がまたろくでもないことを考えている、と思ったようだ。
一方の兄者は大きく頷くと、弟者の顔をまっすぐに見据える。
兄者の表情はいつのまにか真剣で、自信のなさそうな様子は微塵も見られなかった。
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816 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/12/07(土) 22:02:41 ID:yZraviHw0
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( ´_ゝ`)「弟者、何があっても協力してくれるな」
(´<_` )「……」
弟者はその問いに返事をしなかった。
先程までのふざけた態度とはまったく違う真剣な様子に、弟者の視線が小さく泳ぐ。
( ´_ゝ`)「……」
弟者は何も答えない。
兄者もまた、真剣な顔を崩さないまま、弟者の返事を待つ。
(;'A`)「一体、兄者のヤロウは何する気なんだ?」
( ^ω^)「ブーンにはわかんねーですお」
そして、長い沈黙の末、弟者は大きくため息をついた。
(´<_` )「兄者のことだから根負けして、冗談の一つでも言い出すのかと思ったのだがな」
( ´_ゝ`)b「お兄ちゃんだってやる時はやるのだ――とでも、言っておこう」
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817 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/12/07(土) 22:05:19 ID:yZraviHw0
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兄者と弟者のやりとりに気づいた、ギコとしぃが顔を上げる。
しかし、2人の会話だけでは兄者が何を狙っているのかはわからない。
ギコとしぃは顔を見合わせると、ちいさく首をひねった。
(-<_− )「把握した。不安なことこの上ないが、ここは俺が折れよう」
(*´_ゝ`)「つまり、何が起きても文句はないと」
(´<_` )「……文句は言う。が。協力するといった以上はつきあおう」
弟者の言葉に兄者は、眉を寄せる。
しかし、ここが妥協点だと思ったのか、「ふむ」と頷く。
(*´_ゝ`)「よし、約束したからな。
絶対、ぜぇーーったい協力しろよな!」
(,,゚Д゚)「おいおい、危ないことはすんじゃねーぞ」
(;゚ー゚)「……」
ヾ(*´_ゝ`)ノ「ギコ者も、しぃ者大丈夫だって! このお兄ちゃんを信頼しなさいって!」
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818 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/12/07(土) 22:06:04 ID:VPyeQ90g0
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あのシーンくるか
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819 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/12/07(土) 22:08:12 ID:yZraviHw0
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兄者は天幕の中から出ると、空を見上げた。
そして、大きく息を吸うと口元に指を当てる。
兄者が息をはくと同時に、空に鋭い音が響く。
指笛だ。
その音は、砂煙にけぶる空へと溶けて消える。
ただ、それだけ。しばらくしてみてもそれっきり何も起こらない……ように見えた。
(*゚ー゚)「……?」
(,,;゚Д゚)「何も起きねえじゃねぇか」
ギコが青い尾をくねらせて、溜息をつく。
しかし、そうではないことをギコとしぃ以外の全員が知っていた。
⊂二(*^ω^)二⊃「きたお!」
('A`)>「こんな場所まで、よくもまあ」
それは、まるで朝の繰り返しだった。
ブーンとドクオの精霊二人が、空を見上げて呟く。
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820 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/12/07(土) 22:10:26 ID:yZraviHw0
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砂で霞みながらも、それでも青い空に黒い影が浮かんでいた。
影はみるみるうちに大きさを増し、驚くほどの速さで近づいてくる。
それは、大振りな牛や馬ほどの大きさだった。
がっちりとしたその体は鱗に覆われ、背には薄い飛膜を持った巨大な翼が生えていた。
夕暮れの空のような、薄桃色の光がきらめく。
:::(,,;゚Д゚):::「ななな、な、なんじゃこりゃぁぁぁぁ!!!」
(*゚ワ゚)+「竜よ。飛竜だわ!! すごい、こんなに近くに!」
(#;゚;;-゚)「……っ!」
黄金の色を湛える瞳が揺れる。
その巨体には不釣り合いな、愛らしい顔つき。
夕暮れ色に輝くその体は、竜そのもの。生ける伝説とも讃えられる、空の王者がそこにいた。
(*´_ゝ`)ノシ「ピンクたーん!! こっち、こっちだ!!!」
(´<_`; )「……まさか」
兄者の顔が輝き、弟者の顔が引きつる。
対照的な表情を浮かべる兄弟に向けて、ピンクたんと可愛らしい呼び名で話しかけられた竜は唸るように声を上げる。
そして、翼を大きく羽ばたかせると、薄桃色の竜は兄者の正面へと着地した。
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821 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/12/07(土) 22:12:59 ID:yZraviHw0
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(Σ Οw)
ずどんという音と共に、大地が揺れる。
しぃは大きく瞳を輝かせ、ギコは大きく口をあけて、でぃは無言で息を呑み、竜の姿を見つめている。
ヾ(*^ω^)ノシ「ピンクたんだおー」
(*´_ゝ`)ノシ「よしよーし、よくぞ来てくれたなピンクたん!」
兄者の声に、竜は子猫のように頭を兄者の体へとこすりつけた。
喉の奥でぐるぐると鳴る声は甘えた生き物そのもので、空の王者らしき威厳はない。
(*゚ー゚)+「ねえ、兄者くん。この子どうやって懐かせたの?
噛まれたり、暴れたりしない? やっぱり賢い? 何を食べるの? 生態は?」
(,,;゚Д゚)「しぃ、落ち着け! そんなホイホイと、近づくんじゃねぇ!」
(*^ー^)「あら、学問の探究って大事なことよ」
(∩;゚Д゚)∩「しぃ! 落ち着け、危ない! これだから学者ってヤツは…」
(#;゚;;-゚) ビクビク
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822 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/12/07(土) 22:14:15 ID:yZraviHw0
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好奇心収まらぬしぃをギコがなだめ、立ち直ったしぃがでぃを落ち着かせる。
興奮の時間は過ぎ、辺りにはようやく落ち着きが訪れた。
( ´_ゝ`)「荒巻たちラクダがダメなら、竜のピンクたんにお願いすればいい」
(´<_`; )「まさか、ここでこいつを持ってくるとは……」
(*´_ゝ`)「どーだ、びっくりした?」
夏の出歩くことすらままならない季節も過ぎ去り、それでも暑さを失わない秋。
日は傾き、夕暮れの気配が漂い始めたその時刻。
兄者はよっと声を掛けると、竜の背に軽々とまたがった。
( ´_ゝ`)「まあ、いろいろあったが……」
砂漠の真っ只中。
オアシスの麓にひろがる故郷から離れたソーサク遺跡。旅の終着の地。
災難も終わったし、ここから先は帰るだけ。
(*´_ゝ`)つ 「さあ、行こう」
そして、兄者は双子の片割れに向かって、手を差し伸べた――。
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823 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/12/07(土) 22:16:58 ID:yZraviHw0
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差し出されたその腕は、まるで朝の繰り返しだった。
(-<_- )
弟者は兄の背を眩しそうに見やって、その瞳を閉じる。
ためらいはほんの少し、もう言われるまでもなく返事は決まっていた。
(´<_` )「流石だよな、兄者は」
( ´_ゝ`)b「知らなかったのか? 俺は、流石なのだ」
(´<_` )「悔しいが、約束してしまったからな。こうなったら付き合ってやるさ」
ふてぶてしいまでの片割れの言葉に、弟者は笑みを浮かべる。
口元を上げるだけの小さな笑顔。でもそれは、弟者の本心からの表情だった。
弟者の足が、地を蹴る。
⊂(´<_` )
――差し出されたその腕を、弟者はとった。
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824 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/12/07(土) 22:19:02 ID:yZraviHw0
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(*´_ゝ`)ノシ「じゃあなー、しぃ者もギコ者もでぃ者も元気でー!!」
( ^ω^)「アラマキとナカジマをおねがいだおー!」
(´<_` )「ラクダを頼むな」
(#*゚;;-゚)「……わかってる。……二人とも、元気で」
(,,゚Д゚)「達者でな―。こっちの調査が終わったら顔を出すから、その時は歓迎しろよ!」
(*゚ー゚)「みんな気をつけてね。危ないことだけはしちゃダメよ……」
<(*'A`)>「わかりました! わかりましたよ、しぃさん!!」
(;゚ー゚).。oO(どうしてあんなに嬉しそうなんだろう。あの子)
二頭のラクダをでぃたちに譲り、別れの言葉を交わす。
ラクダは砂漠の民たちにとっては財産に等しい。
だから、荒巻と中嶋は大切に扱ってもらえるだろう。
( ´_ゝ`)「よーし、懐かしき我が家へ出発だ!!」
.
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825 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/12/07(土) 22:21:41 ID:yZraviHw0
-
(´<_`;)「た、頼むな。ピンク……たん」
(Σ*Οw)
弟者が恐る恐る声を上げると、竜は喉を鳴らして返事をした。
案外いいやつなのかもしれない……と、弟者は一瞬思いかけてすぐに気を引き締める。
何しろ竜に乗って飛ぶのなんて初めてだ。これから何が起こるのか、わからない。
(´<_`;)「おい、兄者。気をつけろ」
(*´_ゝ`)「大丈夫だって! ピンクたん、飛べ!!」
(\(Σ*Οw)
^^
夕焼け色の竜の翼が広げられ、二度三度と上下に動かされる。
羽の動きは力強さを増していき、やがては完全な羽ばたきとなった。
(゚<_゚ ; )「時に待てぇ!!! 心の準備が」
弟者の叫びも虚しく、竜の足が地を離れる。
竜の翼は大きな風を起こし、その体躯を空へと浮かび上がらせる。
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826 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/12/07(土) 22:23:50 ID:yZraviHw0
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(;゚A゚)「ちょ、オレを置いていくなぁぁぁ!!!」
兄弟をその背に乗せて、竜の背は高く高く舞い上がっていく。
地面は遠のき、飛び降りたら命がないような高度まで舞い上がる。
(*^ω^)ノシ「ブーンもいっしょにいくおー!!」
(\(Σ*Οw)
^^
そして、竜の体は街へと向けて飛び立つ。
風は兄者の頭の飾り布や、弟者のマントを飛ばさんとばかりに吹き荒れる。
(゚<_゚ ; )「と、と、と、飛んでる!!!」
(*´_ゝ`)「あったりまえだろ、ピンクたんは飛んでいるのだ!!」
兄者は竜の首にしがみついて笑い、弟者は表情を凍りつかせる。
ドクオはなんとか竜にしがみつき、ブーンは風を捉え気持よさそうに飛ぶ。
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827 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/12/07(土) 22:25:56 ID:yZraviHw0
-
( ^ω^)「お? 雨のにおいがするお」
(´<_`;)「なん、だと……」
空を覆う雲は、暗く厚い。
確かに兄者も雨が降ると言っていたが、まさかそれが今とは……。
こいつは雨でも大丈夫なのだろうか?――と、弟者は竜の顔をそっと伺う。
(Σ;Οw)
弟者の視線を受けてか。それとも、本能的に天候の変化を感じたのか。
竜は小さく唸ると、背の翼を大きく羽ばたかせる。
いつの間にか、肌を撫でる風は、空気がじとりと水気を含んでいる。
(*'A`)「影が出てきた。これはオレにも勝機が」
( ´_ゝ`)「――きた!」
雲から滴り落ちた雨粒が、兄者や弟者の体へと落ちる。
しかし、その毛並みを湿らせる程度でそう勢いは強くない。
雨粒は細かく、視界を白にゆっくりと染めていく霧のような雨だった。
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828 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/12/07(土) 22:28:33 ID:yZraviHw0
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弟者は何気なく視線を地面に向け、そして息を呑んだ。
その動きにつられたのかドクオも地上を――、一面に広がる砂の丘を眺め声を上げた。
(;'A`)「へっ?」
見下ろした地面は、雨に濡れていなかった。
降りしきる雨は、大地に届かずに消える。
熱を吸った大気があまりにも暑すぎて、雨は降るそばから乾き地面には届かない。
(´<_` )「……」
飛ぶことの出来ない弟者にとって、それははじめて見る光景だった。
伸ばした片手ははっきりと雨に濡れている。それなのに、砂丘はこの雨など知らないように横たわっている。
その不思議な光景を、弟者はただ見つめていた。
( ^ω^)「アニジャの天気よほーがあたったお! すごいお!」
d(*´_ゝ`)「晴天。砂嵐なし。風、気温ともに良好。夕暮れに雨が降るけど、霧雨。地面には届かず。
バッチリだろ! なんと言ったって、外したことはないからな!」
.
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829 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/12/07(土) 22:30:17 ID:yZraviHw0
-
やがて、しとしとと竜や兄者たちの体を濡らしていた雨も止む。
雲の間からは強い日差しが再び現れ、砂丘を明るく染める。
そして、弟者は見た。
(´<_` )「……っ!!」
空に、虹がかかっている。
赤や青に色づく光が、光の橋を地上へと向けて投げかけている
こんなものめったに見れないとか、すごいとか言いたいことはいくらでもあるはずなのに言葉にならない。
兄者は気づいていない。きっと、ブーンやドクオもだ。
早く伝えなければと思いながらも、弟者は虹から目を離すことが出来ない。
(´<_` )「……」
美しかった。
空の上を飛んでいるという怖さも、もしこの竜が暴れたらという不安も頭のなかから消え去っていた。
弟者の体から緊張が解け、体の震えも止まる。
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830 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/12/07(土) 22:32:27 ID:yZraviHw0
-
(;´_ゝ`)「おい、弟者大変だ! 見ろって!! にじ、虹だって!!!
あっ、消え――」
兄者が虹の存在に気づいた時には、その形は空に溶けて消えようとしていた。
それでも、なんとか弟にその存在を知らせようと手を伸ばして、虹を指し示す。
(;゚A゚)ノ「もう限界! 兄者、影かせ影っ!」
( ;`、ゝ´)「今は影より見るものがだなぁ!!」
しかし、それを邪魔するように、竜をしがみつくのも限界になったドクオが兄者に飛びかかる。
兄者はドクオを振り払いながらも、皆の視線を虹へと向けようとするが、その時にはもう遅かった。
虹は半ば以上薄れ、はっきりとした形を失っている。
( ;_ゝ;)「そ、そんな……」
(; A ) ツカレター
( ^ω^)「……オトジャ? オトジャはにじ見れたかお?」
落胆する兄者から目を話し、ブーンは弟者へ問いかける。
その質問に、弟者は大きく頷く。
瞬く間に薄れ、もう消え失せて見えない虹の残像を弟者はひたすら追い続けていた。
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831 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/12/07(土) 22:34:56 ID:yZraviHw0
-
・
・
・
嘘のように、空の旅は快適だった。
(´<_` )「……」
一度、風にのってしまえば大きく揺れることもなかったし、風に吹き飛ばされるようなこともなかった。
落ちればひとたまりもないだろうが、広くしっかりした背は安定感があり、よほど馬鹿なことをしない限りは落ちる心配もなさそうだ。
⊂二( ^ω^)⊃「おっおー、楽しいお」
気づけば、弟者の体から余計な緊張は解けていた。
そもそも、冷静になって考えてみたら、ここにはブーンがいるのだ。
風を操ることが出来るブーンの力があれば、万が一落ちたとしても命の心配はない。
(´<_` )「……そうか」
……そんな風に考えられるほどに、いつの間にかブーンを信用している自分に、弟者は小さく苦笑いをする。
精霊なんて見るのも嫌だった自分は、一体何処へ行ってしまったというのか。
怖がりすぎてるだけという言葉が、ふいに脳裏に浮かんだ。
それはいつか、でぃが言っていた言葉だった。今日の事なのに随分前の出来事に感じる。
怖がりすぎているだけ……か。と弟者は息をつく。
何事も踏み込んでみたら、意外と大したことではないのかもしれない。
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832 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/12/07(土) 22:36:40 ID:yZraviHw0
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遺跡を見て回り、ゴーレムと戦い、竜に乗る。
今日はなんという一日なのだろう。朝、目覚めたときは、こんな未来が待っているなんて思ってもいなかった。
(´<_` )「とんでもない一日だったな」
視線を下向けると、どこまでも広がる砂地が見える。
これなら予想よりも早く帰れそうだと考えながら、弟者はふと思い出した。
――そうだ。今日が終わる前、帰る途中に寄ろうと思った場所があったのではなかったのか?
(´<_` )「……そうだった。途中で下ろしてもらいたい所があるのだが」
弟者は前に座る兄に向けて、声を上げる。
兄者は弟の言葉にビクリと体を大きく震わせると、声だけで返事を返した。
(;´_ゝ`)「ま、まさか気持ち悪くなったのか?! それとも大自然が呼んでる的な」
(´<_` )「違う」
( ^ω^)ダイシゼン?
('A`)ベンジョ ダ ベンジョ
( ^ω^)ニンゲンッポイオー
(´<_` )「違うといっているだろうが……」
.
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833 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/12/07(土) 22:39:20 ID:yZraviHw0
-
兄者や精霊たちの掛け合いに、弟者が気を悪くした様子はなかった。
竜の上で動くのを嫌がったのか、それとも単に精霊たちに慣れたのかはわからない。
弟者は視線を地上に投げかけたまま、淡々と声を上げる。
(<_` )「花が見たいんだ」
( ^ω^)「花だったら、オトジャの家にあるんじゃないかお?」
(´<_` )「そうじゃなくて、明日は妹者の……」
後ろから聞こえた弟者の声に、兄者は肩を震わせ始める。
気分が悪いのは兄者ではないかと、弟者が声を上げようとする。
が、兄者の震えはそのまま笑い声へと変化する。
(*´_ゝ`)「ふっふっふー」
(;'A`)「兄者、気持ち悪っ!」
( ;´_ゝ`)「流石に失礼だぞ、ドクオ者よ!」
兄者はドクオに言葉を返しながらも、懐を探る。
そして、そこから何かを取り出すと、それを弟者に向けて差し出した。
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834 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/12/07(土) 22:41:16 ID:yZraviHw0
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(; ゚_ゝ゚)つ「うわぁぁぁっと」
(#゚ω゚)「あぶないお!」
その拍子に、兄者の体がぐらりと揺れる。
空の上にいるということをすっかり忘れたのだろう、兄者の体は大きく傾き、そのまま倒れ込みそうになり、
――その体を弟者の手がぐいと掴んだ。
弟者は慌てることなく、服の背を掴むと兄者の体をピンクたんの背へと引っ張り上げる。
(´<_`#)「兄者は学習というものをしないのか!」
(;´_ゝ`)「正直すまんかった。――って、今はそうじゃなくて!」
兄者は手にしたものを弟者に向けて差し出す。
弟者は目の前に差し出されたそれに、怒鳴るのを忘れて息をのむ。
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835 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/12/07(土) 22:43:05 ID:yZraviHw0
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兄者の手にしたそれは、花に見えた。
六枚の花弁を持つ、決して派手ではないけれども可憐な形をした花。
しかし、それはただの花とは違っていた。
(´<_` )「……これ、は?」
兄者の手にしたその花は、淡く色づきながらも透き通っていた。
まるで繊細なガラス細工だ。
触れた感触はガラスのように硬質でありながら、淡く透き通るその色は水のように移り変わっていた。
( ´_ゝ`)「なんでも、西方に咲く花らしい。
こっちでも育てることは出来るらしいのだが、暑すぎてどうしても花が咲かないらしい」
(´<_` )「そんなものが、どうして……」
( ´_ゝ`)「ソーサク遺跡の最後の広間。あそこ、涼しかっただろ」
弟者はその言葉に、兄者が今日一日の間何を企んでいたのかようやく察した。
ソーサク遺跡の奥にこの花が咲くことを、兄者はギコから聞いていたのだろう。
そして、兄者はギコの言葉から思いついたに違いない。
( ´_ゝ`)b「ソーサク遺跡のあの場所はどういうわけか、西方に近い環境らしいんだ。
だからなのか、あの部屋ではこの花がよく咲くらしいのだよ!」
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836 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/12/07(土) 22:46:00 ID:yZraviHw0
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明日は、妹者の誕生日だ。
大商隊を迎える準備のために、ひたすら空や星を読んで働かされていた兄者は、妹者への贈り物を用意できていなかったに違いない。
残り短い準備期間の中で、兄者は妹者へ何を贈ろうと考えただろうか。
l从・∀・ノ!リ人
まだ十にも満たない妹者に贈るのに、装飾品はまだ早すぎる。
自然と妹者に贈るものといえば、少女の好むかわいらしいものになる。
異国の鳥、猫。リボン。装飾の施された綺麗な布――候補になりそうなものはいくつかあるが、兄者はきっとこう思ったのだろう。
そうだ。花はどうだろうか。
(-<_- ).。oO(俺だけあって、考えることは同じなのだな)
ソーサク遺跡には、珍しい花がある。
父者の育てる中庭では見ることのできない、きれいな花だ。
これを贈り物にしよう。妹者はきれいなものが好きだから、きっと喜ぶ――そう、思ったのだろう。
.
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837 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/12/07(土) 22:48:04 ID:yZraviHw0
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(*´_ゝ`)「旅に出るぞ!」
今日一日の兄者の唐突な言葉と行動の意味が、今ならわかる。
兄者は妹者の誕生日に間に合わせるために、今日中にソーサク遺跡に行って帰ってくる必要があったのだ。
(´<_`#)「兄者は、もう少し根性をみせようか」
(;´_ゝ`)σ「根性を見せろって言われてもな……お前さんが加減さえしてくれれば、俺ももうちょっと」
(´<_` )「ふむ。そういえばそうだったな」
日頃から弟者に力や体力を回している兄者一人では、この遺跡まで来ることが出来ない。
体力の問題もあるし、万が一のことを考えれば護衛だって必要になる。
それで兄者は、休みで家にいて、なおかつ護衛も出来て、自分と同じく妹者への贈り物を用意できていないであろう弟に目をつけた。
( ´_ゝ`)「弟者ぁあ、いるかぁぁぁぁあ!!!」
つまりはじめから、弟者は妹者への贈り物を手に入れるための相方として選ばれていたということだ。
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838 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/12/07(土) 22:50:16 ID:yZraviHw0
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(´<_` )「ふむ、なるほど。それで、その遺跡には何をしに?」
(;´_ゝ`)「――えっ?」
(´<_`;)「――えっ?」
l从・∀・;ノ!リ人「――えっ?」
目的を問われた兄者がすぐに答えられなかったのも当然のこと。
あの時、兄者のすぐそばには妹者がいた。
大方兄者は、本人を目の前にして、これから誕生日の贈り物を取りに行くのだと言うのをためらったのだろう。
魔法石板用の石板を取りに行くというのは口からの出任せだ。
妹者がいなくなってからも、石板と言い続けたのはきっと引込みがつかなくなったからなのだろう。
だから、石板を拾ったから帰ると主張する弟者に対してボロを出した。
η(#´_ゝ`)η「大体、目的のブツはこれじゃな」
兄者の目的は、はじめからこの花だった。
だから、石板を拾ったあの段階では帰るわけには行かなかったのだ。
そして、兄者は花を探して最奥の間に辿り着き、ゴーレムに襲われ部屋に閉じ込められるはめになった。
それでも兄者は戦いの後のごたごたの間に、探していたのだろう。
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839 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/12/07(土) 22:52:44 ID:yZraviHw0
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――そして、旅の終わり。
兄者は無事にこの珍しい花を手にしている。
要するに、今日一日の出来事は全て兄者の計画通りだったというわけだ。
(´<_`;)「……よくもまあ、ここまで俺を騙してくれたものだな」
(;^ω^)「だました? アニジャだましてたのかお?!」
やっと呟いた弟者の言葉に、兄者はにんまりと笑う。
顔を見なくても弟者にはその声の調子でわかる。今の兄者は絶対に調子にのっている。
(*´_ゝ`)「ふっふっふー。
ギコ者やしぃ者からこの花のことは聞いていてな。これが今日、遺跡へ行った真の目的だったのさ」
(´<_`; )「――今日、最大にやられた気分だ」
弟者は息をつく。
兄者のことだから何も考えていないと思っていたのに、実際のところは大違いだった。
それにまんまと乗せられていたのだから、弟者としてはもう苦笑いをするしか無い。
(*>_ゝ<)「ほめてもいいのだよ、弟者くん」
(´<_` )「あー、はいはい。流石流石」
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840 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/12/07(土) 22:54:43 ID:yZraviHw0
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(*^ω^)「あー、みんな見るお!」
('A`)「えー」
そんな兄弟たちの会話を遮るように、ブーンは手を翼のように広げながら声をあげる。
その声にドクオが面倒そうに声を上げ、溜息をついていた弟者も顔を上げる。
(;´_ゝ`)「ねぇ、ちょっと俺への褒め方ゾンザイじゃない?」
(´<_` )「お前のような嘘吐き、知るか」
兄者の言葉に返事をしながら、弟者はブーンが言った先を眺める。
弟者は下を見下ろし。そして、息を呑んだ。
(´<_` )「――あ、」
砂の丘のまっただ中に見えるのは、湖の姿がくっきりと見える。
慣れ親しんだ、“流石”の街。
それを取り囲むように、どこまでも続いていく砂の丘が見える。黄金の大地は、風が作り出す模様に彩られていた。
日は大きく傾き、砂の地平に落ちかかる太陽は火のように赤い。
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841 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/12/07(土) 22:57:52 ID:yZraviHw0
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('A`)「もうこんなとこまで来てたのか」
(*^ω^)「あとちょっとで、街だおねー」
世界が少しずつ、赤へと染まり、闇へと沈んでいく。
それは、決して恐ろしいものではなかった。
(*´_ゝ`)>「おお!!」
自分が生まれる前から、魔王の時代から、それよりもずっと前の時代から。
ずっと続いてきた一日の終り。夜へと続く、夕暮れのほんの一瞬。
落ちゆく空の色は、竜の鱗のきらめきと同じ色をしている。
それを見ながら、弟者は思う。
(´<_` )「……こういうのも、悪くないな」
空は橙に、赤に、紫に、青にかわり、やがて漆黒の夜が訪れようとしている。
星がその数を増し、柔らかい月の光が太陽に変わり空を明るく照らしはじめる。
そこにはもう、昼の名残はどこにもない。
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842 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/12/07(土) 22:59:48 ID:yZraviHw0
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(;´_ゝ`)「うう、さぶぃー。
こりゃあ、早く帰らんと凍死しちまうわ」
(*^ω^)「お? これくらいで寒いんですかお?」
( ´_ゝ`)b「俺は人間の中でもそうとう貧弱な部類に入るぞ!」
太陽が落ちるのと同時に訪れる風の冷たさに、前に座る兄者の体が大きく震えた。
灼熱で満たされる昼が嘘のように、この地の夜は寒い。
そうか。今日も、もう終わるのか。
弟者は不思議と名残惜しい気持ちになり、ふと口を開く。
どうせ今日はとんでもない一日なのだ。
もうーつや二つくらい、普段ならば絶対にあり得ないことが増えたって、別に悪くはないだろう。
(´<_` )「……ドクオ」
そして、弟者はドクオに話しかけた。
今日一日を共に過ごしながらも、決して話そうとはしなかった相手。
それどころか、死んでいなくなればいいとさえ思っていた、憎い敵のような存在。
そのドクオに向けて、弟者は言葉を発した。
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843 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/12/07(土) 23:01:23 ID:yZraviHw0
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(;'A`)「ん?」
ドクオは小さく声を上げた後に、その声の主が弟者であることにその表情を固くした。
兄者の姿を見て、それから辺りを見回す。が、声の主は弟者という事実に変わりはない。
( ;A;)「ごごごごごめんなさい」
(´<_` )「いや、今はまだ怒ってはいない」
(#'A`)ノ「まだって、やっぱ怒るんじゃねーかよこのおにちく!!」
ドクオの反応に、弟者はふむと息をつく。
実際に声をかけて話してみれば、ドクオとの会話もまた、それほど不快ではなかった。
ドクオの方も、弟者によって散々な目に合わされているというのに、その言葉はこれまでとそう変わりはない。
良くも悪くも、精霊という生き物は単純なのかもしれない。
――と、弟者は考えて、これも今日までは決して考えようとはしなかったことだな。と、小さく苦笑する。
(´<_` )「いろいろと悪かった」
(;゚A゚)「は? お前、ついに頭おかしくなったんじゃねーか?」
弟者が苦笑いを浮かべたまま、今日一日のあまりにも遅い謝罪をすると、ドクオは途端に妙な顔になった。
その顔があまりにも変なので、弟者はつい笑ってしまう。
――何が精霊は楽しいぐらいしか感情が残っていない、だ。人間と変わりはしないじゃないか。
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844 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/12/07(土) 23:03:10 ID:yZraviHw0
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なんだか、何もかもが愉快でおかしかった。
今日一日は本当に散々だったが、最後にこんなにおかしいことが待っているとは思わなかった。
(´<_` )「そうかもな。長年の苦労がたった一日でダメになって、ヤケを起こしてるんだ」
(;´_ゝ`)「え? なんで、俺の頭を叩くの?
てか、なんでお前は爆笑してるの? そもそも、何で急にそんなに素直になっちゃってるのさ?!」
これまでの十年間が間違っていたとは思わない。
兄者は危なっかしいし、危険だという自覚もないまま、これからも妙な出来事に突進するだろう。
だから、これからも自分は兄者を止めたり、諌めたりしなければならないだろう。
(-<_- *)「さてな」
――けれども、それも必死になって抱え込む必要は無いかもしれない。
馬鹿でヘラヘラとしているけれども、俺の半分はそれなりにすごいやつだった。
だから、一人で背負い込まなくても、きっと二人ならなんとかなる。
それに自分が気付けていなかっただけで、助けてくれる奇特なやつもちゃんといる。
かつてのツンや、先生のように。
そして、今日のブーンや、ドクオのように。
――だから、俺はきっとこれからも大丈夫だ。
ちゃんと、弟者として。普通の一人のように、やっていくことが出来る。
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845 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/12/07(土) 23:05:55 ID:yZraviHw0
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(;´_ゝ`)「ちょ、おま。このお兄ちゃんに嘘つくって言うのか?
考えてることがだだ漏れの、あの弟者くんは一体何処へっ!?」
(;'A`)「あれでだだ漏れだというのか、お前は!!!」
(´<_` )「人をなんだと思っているのだ、失礼な」
( ^ω^)「……」
(*^ω^)「ブーンもまざりたいおー!!」
弟者の口元が、自然とゆるむ。
たまには、こんなのも悪くはない。と、弟者は思う。
(\(Σ*Οw)
^^
竜の背から見る世界は、なんだかとっても広く見えた。
それこそ、
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846 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/12/07(土) 23:06:41 ID:yZraviHw0
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――彼が、ずっと嫌っていた、魔法のように。
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847 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/12/07(土) 23:07:22 ID:yZraviHw0
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( ´_ゝ`)デザート×キャラバンのようです(´<_` )
おわり
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