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213 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/10/04(土) 19:54:04 ID:8o9hmPnIO
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今日も今日とてヴィップ町は平和で。
今日も今日とてヴィップ町では事件が起きている。
番外編:詐欺罪
_
( ゚∀゚)「──って感じで、今はもう、特に何もないかなあ」
∬;´_ゝ`)「ええ……妹者も、そう言ってた」
ヴィップ小学校、応接室。
ローテーブルを挟んで向かい合う男女が2組。
一方はこの学校の教員、長岡ジョルジュと流石姉者。
2人と対面しているのが──
(*゚ー゚)「犯人が逮捕されたので、何も起こらなくなったんでしょう」
(,,゚Д゚)「そういうことよね」
猫田しぃと埴谷ギコ。
しぃはいつもの学生服だが、ギコは仕事中なのでワイシャツとスラックスだ。
先日捕まった妖怪の裁判にあたり、証拠品や証言を集めているところである。
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214 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/10/04(土) 19:54:58 ID:8o9hmPnIO
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ソファの背もたれに身を預け、しぃは窓を見遣った。
6月の夕空には重たい雲が広がり始めている。
雨が降りそうだ。鞄の中の折り畳み傘を確認する。
_
( ゚∀゚)「今回はどんな事件なんだ?」
(*゚ー゚)「詐欺罪ですね」
_
( ゚∀゚)「詐欺」
最近この学校の4年生の間で、こっくりさんが流行った。
怪談の定番こっくりさん。
鳥居のマークや数字、はい・いいえ、男・女等の選択肢を書いた五十音表と十円玉を用いる降霊術。
そのこっくりさんに関して、
「4年3組の教室でこっくりさんをすると必ず成功する」
という噂が流れた。
天気、テストの問題、事故──
そういった予言めいたものが、必ず当たる。
4年3組の教室でのみ。
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215 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/10/04(土) 19:55:46 ID:8o9hmPnIO
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(*゚ー゚)「10円玉が動く現象については大抵、暗示や無意識な筋肉の動きが原因とされる」
∬;´_ゝ`)「あ……そうなの?」
(*゚ー゚)「つまりは『無意識に』、『本人達の意思を反映して』動くわけだけれども……」
(,,゚Д゚)「そうなると今回の件が説明できないのよね」
_
( ゚∀゚)「実際に予言は当たってたからな」
(*゚ー゚)「というわけで、確実におばけが関わっていると言えます」
_
( ゚∀゚)「でも──その。おばけって、予言? とかって、出来んの?
前の裁判見た感じだと、神様ですらそういうのは出来なそうだったけど」
(*゚ー゚)「件のような、予言をする妖怪はいるにはいますけど……稀有な能力には違いないですね。
ただし今回は、そんな予知能力など無くても可能です」
∬;´_ゝ`)「どうして?」
(*゚ー゚)「天気の予言なら気象予報士にも出来る。
妖怪ともなれば、何十年も何百年も自然と共に生きてきた者が多いですから、
経験則を元に、一日二日先の天気を正確に読むくらいは可能でしょう」
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216 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/10/04(土) 19:56:58 ID:8o9hmPnIO
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(*゚ー゚)「テストの問題は職員室にでも行って見ることが出来るし、
事故や怪我の予言は──」
_
(;゚∀゚)「……予言した後に、自分が起こせばいいのか」
(*゚ー゚)「そうです」
一層顔を青ざめさせた姉者が、腰を曲げてソファの肘置きに身を倒す。
ジョルジュが慌てて姉者に声をかけて背中を撫で摩った。
(*゚ー゚)「天気やテストの予言程度ならば、然程問題はありません。
が、さすがに怪我を負わせるのは、やり過ぎだ」
(,,゚Д゚)「しかも、見返りまで要求してたからね……」
──初めは、報酬として生徒の持ち物を欲しがった。
ハンカチと傘。
場所は裏山を指定し、裏山の適当なところに置いておくと目を離した隙になくなっていたそうだ。
その次には食べ物。
それは翌日の給食の余りをこっそり差し出すことで済んでいたらしい。
この頃から、予言される「事故」の規模が大きくなっていく。
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218 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/10/04(土) 19:57:56 ID:8o9hmPnIO
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そうしてある日、校内で飼育されている兎が報酬に指定された。
兎をどうするんですか、と生徒が問うと、10円玉は「くう」の2文字のみをぐるぐると回り続けた。
異様さに怖じ気づいた生徒の1人が、10円玉から指を離してしまう。
こっくりさんと対話している最中に指を離すのは、よく知られているタブーだ。
その場にいた全員がパニックに陥った。
既に誰も触れていない10円玉は、尚も独りでに動き続けた。
騒ぎに気付いたジョルジュが教室にやって来て、生徒達は彼に泣きつく。
こっくりさんを怒らせた、恐い、殺されるかもしれない──と。
このときに様子を見に来たのがジョルジュで良かった。
姉者だったら失神しているし、
他の教員であれば、生徒を叱るなり宥めるなり、とにかくその場で話を終わらせてしまっていただろう。
幽霊裁判を傍聴したことのある彼だから、迅速かつ適切な対処が出来た。
要するに、姉者を通してギコへ通報したのだ。
駆け付けたギコにより犯人である妖怪は逮捕された。
学校側は、集団ヒステリーとして片付けたという。
それが数日前のことで、こうして今に至る。
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219 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/10/04(土) 19:58:42 ID:8o9hmPnIO
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(*゚ー゚)「予言をするといって騙して、自ら事故を引き起こし、報酬を要求した。
これらは詐欺に当たります」
_
(;゚∀゚)「なるほどなあ。定番の怪談も、今や犯罪行為か」
カップに注がれた茶を飲み干し、しぃは腰を上げた。
深々とお辞儀する。
(*゚ー゚)「ご協力ありがとうございました」
_
( ゚∀゚)「あ、いや、こちらこそ」
∬;´_ゝ`)「も、もういいの?」
(,,゚Д゚)「とりあえず教員からの聞き込みは充分だけどー……」
(*゚ー゚)「よろしければ、例の教室に案内していただけますか」
_
( ゚∀゚)「そりゃ勿論。こっくりさん騒ぎのせいで
放課後の居残りがしばらく禁止になったもんで、今は生徒もいないから大丈夫だ」
(*゚ー゚)「ありがとうございます」
応接室を後にし、ジョルジュに先導される形で4年3組へ向かう。
こうして小学校の中を歩き回るのは久しぶりだ。懐かしい。
震えつつもギコに支えられながら付いてきていた姉者が、不意に訊ねた。
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220 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/10/04(土) 19:59:41 ID:8o9hmPnIO
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∬;´_ゝ`)「ツンちゃんが犯人の弁護するの?」
(,,゚Д゚)「いいえ、今回は別の弁護士ね」
_
( ゚∀゚)「え? あの人以外に弁護士いるのか、この町」
(*゚ー゚)「いますよ。……厄介なのが」
∬;´_ゝ`)「つ、強いってこと?」
(*゚ー゚)「いや、まあ決して弱くはない筈ですが、何というか……」
その弁護士の顔を思い浮かべ、しぃは溜め息をついた。
ヴィップ町の数少ない弁護士の中でも、出連ツンに次いでしぃと戦う機会の多い相手だ。
だが──
しぃは彼が苦手である。
敵として、ではなく、人として。
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221 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/10/04(土) 20:00:30 ID:8o9hmPnIO
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ツンといい、あの男といい、弁護士というやつは──
「はーっはっはっはっは!」
_
(;゚∀゚)「うおっ!?」
突如響き渡った声にジョルジュが肩を跳ねさせ、立ち止まった。
笑い声は、数メートル先、4年3組の教室から聞こえる。
_
(;゚∀゚)「な、何だ?」
∬;´_ゝ`)「生徒は誰もいない筈じゃ……」
姉者は自分の言葉に腰を抜かしかけたが、何とかギコによって食い止められた。
ギコがしぃに目配せする。しぃも同様に返して、頭を押さえた。
再度笑い声。
この声は。
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222 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/10/04(土) 20:01:48 ID:8o9hmPnIO
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(;*-ー-) ハァ
_
(;゚∀゚)「あ……行くのか!?」
早足で教室に向かう。
少し遅れてジョルジュが、更にその後をギコに支えられた姉者が追った。
ガラス越しに見えた背中に舌打ちしつつ、教室の扉を開け放す。
窓を見ていた男が、体ごと振り返った。
(*゚ー゚)「やっぱりあなたか」
¥・∀・¥「やあ、しぃ君! そうとも僕だ!」
白いシャツに白い蝶ネクタイ、白いベストの上には黒い燕尾服。
やたらめったら金ぴかなピアスや指輪をつけた男は、白い歯を光らせて、にっと笑った。
これで40代も半ばに差し掛かろうという中年である。
しぃは、先よりも重く深い溜め息を吐き出した。肺の中の空気を全て出さんばかりに。
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223 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/10/04(土) 20:03:02 ID:8o9hmPnIO
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(;゚∀゚)「は? 誰?」
(;,゚Д゚)「こんにちはマニーさん、今日も暑苦し……ドきっちりした格好ねえ」
(*゚ー゚)「汗だくですよ」
¥・∀・¥「はっはっは! 暑さなどに負けて己の信念を曲げては金持ちの名折れ!
これから7月8月と夏の気温は僕を蝕んでいくが、僕は決して屈しない!」
白いハンカチで顔の汗を拭いながら、男、餅金マニーはよく通る声で言い切った。
ギコの後ろから顔を出した姉者が、恐る恐る口を開く。
∬;´_ゝ`)「……どなた?」
(;,゚Д゚)「ああ、この方、さっき言った──
今回の担当弁護士」
¥・∀・¥「餅金マニーという! 以後お見知り置きを!」
気障な仕草で自己紹介をして、マニーは腰から礼をした。
ああ本当に。
ツンといい、この男といい、弁護士というやつは何だって変わり者ばかりなのだ。
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224 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/10/04(土) 20:04:07 ID:8o9hmPnIO
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こちらに近寄ってきて、マニーは姉者とジョルジュに名刺を渡した。
白地に金色のラインが入った、シンプルながらも金のかかっていそうなデザイン。
∬;´_ゝ`)「あ、ご丁寧にどうも……えっ、会社の社長さん!?」
¥・∀・¥「いやT都に住んでいる僕の父が手広く商売をやっていてね、全国にも子会社を持っていて
僕はその内の一つをもらっただけなんだ、いやいや全く大したことじゃない」エヘン
∬;´_ゝ`)「ふんぞり返りながら丁寧な説明ありがとうございます……
社長さんやりながら弁護士のお仕事も出来るものなんですか」
¥・∀・¥「僕ほどの男ならばね」
(,,゚Д゚)「まあ、しぃも高校生で検事やってるし」
∬;´_ゝ`)「あ、そっか」
ジョルジュの方は賢明にも、既にこの男とまともに向かい合うことを放棄したのか
訝しげに室内を見渡していた。
結果、何かを見付けたらしい。
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225 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/10/04(土) 20:05:14 ID:8o9hmPnIO
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(;゚∀゚)「……あっ、妹者!」
l从・∀・;ノ!リ人「ぬおっバレたのじゃ!」
机の下に隠れていた少女が両手を挙げて立ち上がった。
流石妹者。姉者の妹。
マニーの背後に回り、妹者はジョルジュの視線から逃れた。
_
(;゚∀゚)「居残り禁止って言っただろ!」
l从・∀・;ノ!リ人「妹者だってリリちゃんと一緒に帰ってたのじゃ。
でもマニーさんが……」
¥・∀・¥「いやはや申し訳ない、流石妹者という少女が幽霊裁判に参加したことがある上、
今回の事件が起きた4年3組の生徒だという情報を得ていたのでね。
下校している生徒の名札を頼りに探し出し、現場へ案内してもらったというわけだ」
(;,゚Д゚)「まさか通学路に立って一人ひとりの名札見比べてたの?」
¥・∀・¥「そうとも!」
_
(;゚∀゚)「下手したら通報されますよ」
¥・∀・¥「金持ちは捕まらない!」
どういう理屈だ。
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226 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/10/04(土) 20:06:20 ID:8o9hmPnIO
-
∬;´_ゝ`)「妹者、勝手に教室まで連れてきちゃ駄目よ。
ギコ君達だって校長に話を通して来てるんだから」
l从・∀・;ノ!リ人「しかし姉者! 妹者はこの機会にマニーさんに恩を売らねばならん!
そしてゆくゆくは社長になるであろう高校生の息子さんとお近付きにならねば!!」
∬;´_ゝ`)「高校生とお近付きになってどうするっていうのよ小4が」
¥・∀・¥「安心したまえ僕の息子は年下好きだ!」
(,,゚Д゚)「小学生は年下とか年上とかそういう問題じゃないんじゃ……」
(;*゚ー゚)「あーもう! ええい、一旦黙れ! 話を横に逸らすな!」
¥・∀・¥ + キラッ
マニーが笑顔で黙った。
声も仕草もやかましい男だが、素直ではある。
咳払いをし、しぃは整理のために問い掛けた。
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227 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/10/04(土) 20:07:51 ID:8o9hmPnIO
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(*゚ー゚)「……何をしに来たんですか?」
¥・∀・¥「弁護のために色々調べているんだ。
現場も見ておくべきだろうと思ってここに来た」
(*゚ー゚)「何か分かりました?」
¥・∀・¥「いま来たばかりだから何とも言えないな」
(*゚ー゚)「はあ」
¥・∀・¥「大丈夫だ、君達の邪魔はしない!
それに僕としても調査を長引かせたくはないんだ、妻の美味い手料理が待っているのでね!」
¥・∀・¥ + キラッ
やっぱり苦手だ。
うるさい。鬱陶しい。
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228 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/10/04(土) 20:09:08 ID:8o9hmPnIO
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¥・∀・¥「それにしてもしぃ君。3月の裁判では出連弁護士に負けはしたものの、
君もなかなかの活躍をしたそうじゃないか。
その後の裁判も長引いたが、犯人が極刑に処されてようやく終わった」
(*゚ー゚)「どうも」
¥・∀・¥「君の父の死についても明らかになったね。
悪霊に殺されていたなんて、とても残念なことだ……」
(*゚ー゚)「……はあ」
目を伏せ、首を振るマニー。ちゃらちゃらとアクセサリーが鳴った。
あの裁判以降、色々な者からそういった哀悼の言葉をもらってきたが、
この男からは会う度に言われている気がする。
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229 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/10/04(土) 20:11:00 ID:8o9hmPnIO
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¥‐∀‐¥「猫田つー……彼は僕の良きライバルだった。
同じ頃にこの町で弁護士と検事という立場になった僕らは、毎夜しのぎを削り、
互いに勝った負けたの大接戦……」
(,,゚Д゚)「マニーさん全敗だったわよね……」
(*゚ー゚)「父さんが負けた記録がないからにはそうだろうな」
¥‐∀‐¥「途中で僕がT都に移住せざるを得なくなり、僕と彼の決着はつかないままになってしまった。
いずれA県に戻り再戦すると誓っていたというのに……
ああっ! 僕がいない間に、彼は……」
(,,゚Д゚)「移住っていうか、逃げたわよね」
(*゚ー゚)「『弁護士殺しの町』と本格的に呼ばれるようになったのは、彼が逃げた頃からだと聞いている」
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230 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/10/04(土) 20:12:33 ID:8o9hmPnIO
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¥・∀・¥「しかし、一昨年! つーの娘である君が検事になったと聞き、僕は戻ってきた!
さあ猫田しぃ! 君の父が果たせなかった決着を、
彼のために……そして僕のために、今度こそつけようじゃないか!」
(,,゚Д゚)「父親の方に勝てなかった恨みを娘の方で晴らそうって感じよね」
(*゚ー゚)「今のところ僕に対しても全敗なんだが、彼にとっての決着とはどういう意味なのだろうか」
¥・∀・¥「そのためにも速やかに調査を始めようか!
今晩は妻の得意な筑前煮とコロッケが待っている!」
(,,゚Д゚)「あ、意外と庶民的なメニューなのね」
¥・∀・¥ + キラッ
踵を返し、マニーは窓際まで戻ると、クレセント錠を引き上げ窓を開けた。
しぃも彼の隣に立つ。マニーの香水の匂いの他に、湿った香りが鼻に触れた。
一雨来そうだ。
(*゚ー゚)「1組や2組に比べると、この教室の方が裏山に近い」
¥・∀・¥「そうだね。だから依頼人も、子供達の呼び出しに応えやすかったのさ」
窓の向こうに裏山が見える。
被告人である妖怪は、その山に住んでいた「モノ」だ。
だからこの教室で行われたこっくりさんにのみ反応したし、報酬も山で受け取っていた。
それは被告人本人がそう供述した話。
取り調べには協力的だった。
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231 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/10/04(土) 20:13:15 ID:8o9hmPnIO
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(*゚ー゚)「──被告人は罪を認めていますね」
¥・∀・¥「ああ。通報されたときもその場で待っていたしね。
反省はしているようだよ」
ぽつり。ぽつり。
目の前を何かが落ちていく。
やがてそれらは増えていき、ざあざあと激しい音を立て始めた。
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( ゚∀゚)「雨か」
l从・∀・;ノ!リ人「むおー、傘忘れてきたから降りだす前に帰ろうと思ってたのに!」
∬´_ゝ`)「ちゃんと持っていきなさいって朝言ったでしょ」
(,,゚Д゚)「車で送っていきましょうか?」
l从・∀・*ノ!リ人「ギコさん大好きー」
(*゚ー゚)「……マニーさん、窓閉めましょう」
マニーは眉間に皺を寄せて裏山を見つめている。
風で入り込んだ雨がしぃやマニーの服を濡らした。
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232 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/10/04(土) 20:14:24 ID:8o9hmPnIO
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ふと、ざあざあという音に混じって、声がした。
下からだ。少しだけ身を乗り出す。
ミ,,゚Д゚彡
(*゚ー゚)「──フサだ」
(,,゚Д゚)「え?」
大きな獣が、校舎の下からこちらを見上げている。
猫田家使役霊の古参、フサ。
尻尾を揺らしながらしぃを呼んでいるようだ。
(*゚ー゚)「被告人について調べるように言っておいたんだが」
(,,゚Д゚)「何か分かったのかもね。
フサさんが校内に入ったら小さなおばけ達が驚いちゃいそうだし、あたしが話聞いてくるわ」
ギコが小走りで教室を出ていった。
今のギコの発言から、校内に複数のおばけがいることに耳聡く気付いた姉者の顔色は既に土気色。
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233 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/10/04(土) 20:15:18 ID:8o9hmPnIO
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(*゚ー゚)(……見えなくなった)
ギコと離れたことにより、しぃの視界からフサが消えた。
しばらくして、傘を差したギコがフサのいる(であろう)辺りにやって来る。
何やら話しているらしいギコを眺めていたしぃは、顔に雨粒が当たる感触で我に返った。
(*゚ー゚)「マニーさん、窓を……」
¥・∀・¥「気になっていることがあるんだ」
(*゚ー゚)「はい?」
マニーは依然、裏山を凝視し続けている。
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234 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/10/04(土) 20:18:22 ID:8o9hmPnIO
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¥・∀・¥「依頼人は物を食べなくても生きていける妖怪だった。
なのに初めの報酬に食べ物を指定し、その後には兎まで要求した」
(*゚ー゚)「物を食べなくてもいい?」
初耳だ。
どうやってそれを知ったのかと問えば、マニーは分厚い財布を取り出し、開いた。
ぎっしり詰まった札束。妹者が目を輝かせる。
財布を右手、札束を左手に構え、マニーが妙なポーズをとった。勇ましい顔をしているので、決めポーズらしい。
■⊂¥・∀・¥つ□「大抵のことは金で何とかなる!!」
(*゚ー゚)
¥・∀・¥ + キラッ
(*゚ー゚)「凄腕の霊能力者に協力を依頼したんですね」
¥・∀・¥「きみの母君だ」
(#゚ー゚)「あのババァ!!」
朝から家中の使役霊が出払っていると思ったら。
あれだけの数を動かすとなると、かなりの金額になったろう。
フサまで駆り出されていなくて良かった。
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235 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/10/04(土) 20:19:24 ID:8o9hmPnIO
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¥・∀・¥「そんな風に罵るものじゃあないぞ! 綺麗で聡明な人じゃないか。
まあ僕の妻ほどではないがね! はっはっは! はっは──」
マニーは笑顔のまま声を止めた。
裏山の中腹辺りを食い入るように見つめている。
しぃもそちらを見遣ったが、雨中に草木があるばかりだ。
──いや。
(*゚ー゚)「……?」
何かが蠢いている。
ほとんどが草むらに隠れていて分かりづらいが、ピンク地に薄黄色の斑点模様。
あれは──
l从・∀・ノ!リ人「傘じゃ」
いつの間に隣に来ていたのか、同様にマニーの視線の先を追った妹者が言った。
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236 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/10/04(土) 20:19:59 ID:8o9hmPnIO
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l从・∀・ノ!リ人「づーちゃんが前に使ってた傘じゃのう」
∬´_ゝ`)「づーちゃんって、妹者のクラスメートの?」
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(;゚∀゚)「え? あいつの傘って──まさか、こっくりさんにあげたやつか?」
直後、傘が陰に消えた。
それと同時にマニーが踵を返し、教室を飛び出していく。
(;*゚ー゚)「ちょっと、マニーさん……──何なんだ!」
逡巡して、しぃもそれに続いた。
*****
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237 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/10/04(土) 20:21:20 ID:8o9hmPnIO
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(;*゚ー゚)「中年のくせに足の速い……」
来客用玄関から外に出たマニーは、裏手に回って山へと入っていった。
ギコ達がいるのとは別方向。
しぃは少し立ち止まり、ギコの方へ走った。
(*゚ー゚)「ギコ!」
ミ,,゚Д゚彡「あ、お嬢さん」
(,,゚Д゚)「やだ、あんた傘も差さないで」
(*゚ー゚)「いいから来い!」
ギコの手を引っ張り、裏山に向かいながらマニーのことを説明する。
隣で、フサが「ああ」と声をあげた。
ミ,,゚Д゚彡「俺もそのことを話しに来たから。
被告人は必要ない筈のものを欲しがってたっていうのが気になって」
裏山の手前で、フサに待機を命じた。
フサは目立つ。そもそも図体がやたらと大きいので、
小さな山中では満足に動き回れない。
傘をフサに預け、ギコが先に山へ入った。しぃがその後を追う。
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238 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/10/04(土) 20:21:58 ID:8o9hmPnIO
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(,,゚Д゚)「食べ物はともかく、わざわざ指定してまで欲しがってたハンカチや傘を
被告人が持ってなかったのは、たしかに気になってたのよね。
どこにやったのか訊いても『捨てた』としか言わないし」
(*゚ー゚)「……それらを本当に必要としていたのは、別の誰かだった可能性があるな」
(,,゚Д゚)「だとして、何でそれを言わなかったのかしら」
(#゚ー゚)「ああクソッ、何だって幽霊裁判の被告人は隠し事ばかり!」
(,,゚Д゚)「隠し事がなかったら何でもスムーズに終わってるわよ」
(;*゚ー゚)「それもそうだが──うおっ!」
泥濘に足をとられ、滑り落ちかけた。
ギコが手を掴んでくれたおかげで何とか持ち堪える。
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239 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/10/04(土) 20:23:15 ID:8o9hmPnIO
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(;,゚Д゚)「大丈夫? あんたの悲鳴って色気ないわ」
(;*゚ー゚)「どうでもいい。──マニーさんはどこだ?」
(;,゚Д゚)「さあ……傘が見えたってのは、どの辺り?」
(;*゚ー゚)「多分もう少し上……」
「──ぬわあああああ!!」
(,,゚Д゚)「……あっちね、マニーさん」
(*゚ー゚)「そうだな」
左方から聞き馴染んだ声と転がり落ちる音がした。
足元に気を付けながら、そちらに進む。
時折、葉っぱが顔や首筋に当たる度に雨水が流れ込んできて苛ついたが
ずぶ濡れになるにつれ、どうでもよくなってしまった。
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240 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/10/04(土) 20:25:02 ID:8o9hmPnIO
-
やや開けた場所に出る。
細い枝が落ちていて、頭上を見ると、斜面に足跡がついていた。
結構な高さから落ちたらしい。
(*゚ー゚)「大丈夫ですか」
¥・∀・¥「うむ。少々腰をやった」
しぃの足元、尻を上げた状態で倒れているマニーが、変わらぬ笑顔で答えた。
妙な掛け声をあげて立ち上がり、腰を摩る。上等な燕尾服が泥まみれだ。
(;,゚Д゚)「いやあああ! いかにも高そうな服が!!」
¥・∀・¥「金持ちの気品はこの程度で揺るがない!」
(*゚ー゚)「そういう話ではなく」
¥・∀・¥ + キラッ
ふと振り返ったマニーはぐるりと身を返し、奥へと進んだ。
しぃとギコも顔を見合わせ、後に続く。
──大して進まぬ内に、「それ」を見付けた。
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241 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/10/04(土) 20:26:05 ID:8o9hmPnIO
-
(*゚ー゚)「あ」
(,,゚Д゚)「傘……」
¥・∀・¥「ははは! 見付けたぞ!」
ピンクに薄黄色の斑点。
こちらに先端を向ける形で開かれた傘が、大木の下に落ちている。
よく見れば、その傘は震えていた。
大股で進み寄り、マニーが傘を引っ掴む。
ほんの少しの抵抗の末、傘はマニーの手に渡った。
¥・∀・¥「観念したまえ!」
∧ ∧
(;TДT)「あわあっ!!」
──傘の下に、少年がいた。
少年とはいっても顔つきや体のあちこちに獣の名残があって、人間ではない。
人間らしい部分にのみ目を向ければ、妹者と同じ年頃か。
肘に布が巻かれている。キャラクターものの柄。
中央にある黒ずんだ汚れは──血だろうか。
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242 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/10/04(土) 20:27:16 ID:8o9hmPnIO
-
::(;TДT)::「あわ、わわわ、わわわわ」
(;,゚Д゚)「あなた……」
Σ::(;TДT)::「ひいっ!!」
ギコが近付いただけで、少年の震えが激しくなる。
少年はすぐに後方へ走ったが、ぎこちない動きで数歩進んだだけで転んでしまった。
それでもなお逃げようともがき、結局上手く動けないのか、倒れ込んだ姿勢で大泣きし始めた。
(;TДT)「わああああん!!」
(;*゚ー゚)「ちょ、ちょっと──」
(;TДT)「オマエモカー! お前らもモカーのこと苛めるのかー!」
(;*゚ー゚)「は?」
(;,゚Д゚)「そんなことしないわよ」
(;TДT)「嘘だー! うわあああん! わああああ!!」
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243 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/10/04(土) 20:27:54 ID:8o9hmPnIO
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──どうにも話が見えなくて、しぃもギコも、呆然と立ち尽くした。
¥・∀・¥ + キラッ
子供の泣き声が響き渡る中、マニーだけが満足げに頷いていた。
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244 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/10/04(土) 20:28:51 ID:8o9hmPnIO
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(*゚ー゚)「──つまり……君は元々、他県に住むただの犬だったが、
何故か徐々に今のような姿に変わり始めてしまったんだな」
(;TДT)" コクコク
(*゚ー゚)「それで化け物だと苛められるようになり、
人目につかぬように彷徨い続け──先日、この町に辿り着いた。
この山に隠れたところ、被告人と出会った。ということでよろしいか」
(;TДT)" コクコク
何とか少年──モカーと名乗った──を宥めて聞き出した情報を整理すると、
そういうことになるらしい。
しぃはギコを見上げた。特に意味はない。
ただ、ひどく困った顔でもしていたようで、ギコが肩を叩いてくれた。
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245 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/10/04(土) 20:30:36 ID:8o9hmPnIO
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¥・∀・¥「これで、依頼人が何故報酬を欲しがったのかが理解できた」
それに反し、にんまり顔のマニーがモカーの頭を撫でる。
モカーは悲鳴をあげて肩を跳ねさせたが、びくびくしながらもマニーの手を受け入れた。
この怯えようからして、よほど手酷く人間に苛められたのだろう。
先ほど上手く動けていなかったのは、恐怖のせいというよりは、
まだその体の動かし方に慣れていないからか。
肘の傷のはどうして出来たものだろう。
苛められたせいにしろ転んだだけにしろ、血の汚れを見るに、なかなか深い傷に思える。
¥・∀・¥「ハンカチは傷を覆うため、傘はこの雨季に備えるため。
食べ物は、この子が食事を必要とする生き物だからだ」
(,,゚Д゚)「でも食事は給食で済んでたのに、どうして急に兎を欲しがったのかしら?」
(;TДT)「……人間の食べ物が合わないから……」
¥・∀・¥「元が犬だというし、肉が必要だと思ったんだろう。
この子も依頼人も、自分で動物を狩るのは苦手なのかな」
被告人がモカーのことを話さなかったのは、恐らく、モカーがとても臆病だからだ。
進んで罪を認めたのは、警察が山に入ってモカーを見付け、関係者として取り調べるのを避けるため。
──これらが真実とするならば、こちらは、諸々の見方を変えなければならない。
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246 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/10/04(土) 20:32:18 ID:8o9hmPnIO
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(,,゚Д゚)「被告人はモカー君のために必要なものを調達してたのね」
(*゚ー゚)「……だが、やり方に問題がある。
『予言』にかこつけて事故を起こしていたのも、事故を拡大していったのも、許されざることだ」
¥・∀・¥「そうだなあ。恐らくは報酬のレベルを上げるために、
予言内容もそれに釣り合うようにしたかったのかな」
(*゚ー゚)「それもあるでしょうが……。だとしても、被告人は逮捕当日のこっくりさんにおいて、
不必要に子供達を怖がらせるようなこともしていました。
いささか楽しんでいたのではないか、とも取れる」
(,,゚Д゚)「妖怪の性かしらねえ」
モカーを助けていたのは善行だ。
しかし子供達を怯えさせ、「予言」のために無関係の人々に怪我をさせたのは悪行である。
善人とも悪人とも──そもそも「人」ではないが──言えない。
どちらに傾くかは、裁判で決まること。
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247 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/10/04(土) 20:33:57 ID:8o9hmPnIO
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(;TДT)「……で、でも、俺のためにやってくれたことだから……
あんまり、苛めないであげて……」
¥・∀・¥「問題ない!! 罪は罪だから償わなければならないが──
この僕が! 依頼人の刑を軽くするため奮闘する!」
::(;TДT)::
(;,゚Д゚)「大声出す度にモカー君がびっくりしてるから、やめてあげて」
(*゚ー゚)「だからといって軽すぎて不当な刑になるのであれば僕は納得しませんよ」
¥・∀・¥「はっはっは、望むところだとも。金持ちは負けない!!」
(*゚ー゚)「泥だらけでは説得力がありませんが」
¥・∀・¥ + キラッ
(,,゚Д゚)「その続きは法廷でね。
──でもモカー君、被告人が逮捕されてから、ご飯はどうしてたの?」
(;TДT)「木の実とか、草とか……
でも、この山に来る前もそんなのばっかだったから、平気……」
タイミングよく、ぎゅうう、とモカーの腹が鳴った。
お腹がすいたと涙目で呟く姿は、とても平気には見えない。
ここに来たことで少し生き長らえたにしろ、いずれは野垂れ死んでしまうのではないか。
そんな不安を抱かせる。
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248 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/10/04(土) 20:35:31 ID:8o9hmPnIO
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(*゚ー゚)「どうする」
(,,゚Д゚)「人間に苛められてたってことは、人に見られないように姿を消すってのが出来ないわけよね。
なら、こんな小さな山でずっと身を隠してもいられないわよ」
(*゚ー゚)「裁判長に相談してみるか」
¥・∀・¥「それには及ばない!!」
うるさい。
マニーはモカーを抱え上げた。いきなり高くなった視点に、モカーが悲鳴をあげる。
いらん刺激を与えるなというのに。
¥・∀・¥「依頼人は僕に命運を賭けている! 僕には責任がある!
ならば僕はモカー君に対する責任も負わねばならない!」
(*゚ー゚)「ちょっと言ってる意味が分かりませんが……
そこまで言うからには、何とかする手立てがあるんでしょうね?」
¥・∀・¥「勿論!」
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249 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/10/04(土) 20:36:18 ID:8o9hmPnIO
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そうしてマニーは肩車の要領でモカーを担ぎ、
片手に財布を構えて、叫んだ。
¥・∀・¥つ■「大抵のことは! 金で何とかなる!!」
言うと思った。
ツンといい、この男といい、弁護士というやつは。
何だって、こう──人助けが好きなのだ。
日も暮れて暗くなっていく中、マニーのアクセサリーが、僅かな光を反射し輝いた。
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250 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/10/04(土) 20:36:55 ID:8o9hmPnIO
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¥・∀・¥「……」
(*゚ー゚)「なに固まってるんですか。決めポーズはもう分かりましたよ」
¥・∀・¥「力んだら、さっき痛めた腰がマズいことになった」
(*゚ー゚)
¥・∀・¥
¥・∀・¥ + キラッ
(*゚ー゚)「ギコ、適当に担いでいってやれ。モカー君は僕と一緒に山を下りよう」
(;TДT)「あわわ」
(*,゚Д゚)「あらあら失礼するわねマニーさん。ああん密着!」
¥・∀・¥「金持ちは素直に身を委ねる!」
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251 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/10/04(土) 20:38:17 ID:8o9hmPnIO
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今日も今日とてヴィップ町では事件が起きていて。
今日も今日とて、ヴィップ町は平和である。
番外編:終わり