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68 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/09/24(水) 18:44:53 ID:mGtrpong0
-
それはブーンが海に落ちたのと同時だった。
天秤から弾かれるように飛び上がったのは
アサウルスが隠していた "触腕" に
蚊蜻蛉よろしく潰されたはずのショボン。
( #´・ω・`) 「…やってくれたね」
水飛沫を蒔いて再度アサウルスの躯へと。
押し潰された傷は見当たらず、痛みを訴える素振りもない。
ξ;゚⊿゚)ξ _3 「 ーー 間に合っていたようね」
ツンが初めに蓄えていた魔導力は
ショボンのダメージを落下の瞬間癒していた。
…結果としてブーンへのフォローは間に合わなかったが、
彼があれくらいでどうにかなるなど思わない。
絶大な信頼と…それでも不安になる気持ちは、
背中合わせにツンの心を足踏みさせる。
( ゚д゚ ) 「…」
(´・ω・`) 「ブーンは?!」
ξ゚⊿゚)ξ
つ∴o 「ブーンもあの触角に!
でもすぐ戻るわ、貴方はアサウルスを!」
叫びながら魔導力を組み直し
【シールド】を発動。
幾何学模様の光の壁がショボンの目の前で
主張するも、やがて透過した。
-
69 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/09/24(水) 18:46:12 ID:mGtrpong0
-
,,
ィ'ト―-イ、 ζ⌒
以`θ益θ以 ζ 《ーー ガゴガガゴ》
ζ((@))((@))
ζ_,
"
アサウルスの巨躯に生えた細い腕が
触手として不規則にうねりをあげる。
やはり元の両腕が再生したわけではない。
(´・ω・`) (無から有を生み出すのは物理的にはあり得ない。
恐らくはエネルギー源があるんだ。
…何を元にしてあんなものを…?)
その時、アサウルスの膝元からも新たに黒い槍が飛び出し、走るショボンの頬を掠める。
また触手…だが痛みはない。
軽く手首を返すだけの小さな動きで、それを切断する。
(´・ω・`) 「…」
剣には血糊もなく、刃が欠けた様子もない。
容易く斬れた触手もそのまま海へと落ちる。
-
70 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/09/24(水) 18:48:31 ID:mGtrpong0
-
バシャァッ
聴こえる距離でも無いのに
重い音が耳に届いた気がした。
それは着水ではなく第三の触手が生まれた音。
先より細いそれを、今度は太股から生やしているのだと認識する前に身体が動く。
目の前の触手は桂剥かれて縦に割れる。
「この程度ならば」
ーー そう口にした直後、
ショボンの見ている世界が薄暗くなった。
(;´゚ω゚`) 「!!」
頭上から逆さまになったアサウルスの顔と、
開かれた顎が間近に迫っている。
全速力で横に翔びそれを避けると
いま居た場所は大きな顋が喰い破る。
……アサウルス自身の太股から。
外殻ごとバキバキと、躊躇なく真っ黒な口の中へとその下半身が消えていく。
噴き出すのは赤い血液ではない。
高粘度の黄ばんだ涎のようなものが辺りに飛び散った。
三 ´・ω・`; )「何やってるんだこいつは?!」
ブーツの裏で踏み締めるアサウルスの躯は岩のように硬く、尖った間接は崖の踊り場となるため足場には困らない。
困らないが……安全地帯とはなり得ない。
ショボンはその要塞の上を渡り移動した。
-
71 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/09/24(水) 18:50:00 ID:mGtrpong0
-
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ーー /ヽ゛シャ
ーー バキッ
ーー バキッ
ーー バシャァッ
バシャッ
ーー バ キ バ キ ッ
ξ; ゚⊿゚)ξ 「……」
( ; ゚д゚ ) 「……」
(# ц )
耳に届く数多の外殻の割れる音に、思わず開いた口が塞がらない。
二人の視界で繰り広げられられているのは
咀嚼を行うアサウルスの上半身と、
それに抗いながらも無慈悲に暴れ貪られる下半身。
まるで異なる意思を内包しているかのように。
でなければ役立たずの躯に罰を与える司令塔。
…罪を精算する半身の罰音がこちらまで響く。
ミルナ達の場所からは陰になっているが
音はショボンの鼓膜も震わしているだろう。
雛鳥達が群れをなし、
同胞の生誕を祝うドラムが盛大に叩かれる。
-
72 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/09/24(水) 18:51:13 ID:mGtrpong0
-
ヽ /
γ ζ ζ
以 ζ `θ益θ ζ / :ギュルァアァ…
〜 、ヾ( ( @))((@) ゴアアァァアア…:
〆√ ヽ
∫ V⌒
(;´・ω・`) 「ーー …っ」
上半身を突き破りいづるのは無数の触手…
いや、黒い鞭、黒い大蛇とも。
ブーンの背を貫いた触角は目覚め、
黄色の眼の上から不規則にうねり、己よりも矮小な不死者を見下す。
一本一本、蛇が舌先を弄ぶかのように。
しなる鞭が外殻をバキリと叩くその度、
剥がれた破片が軍隊蟻へと姿を変えた。
ザワザワと ーー カサカサと ーー。
その巨躯を這う進軍は遅くない。
統率された蟻が向かうのは…甘く、甘い餌。
食すたびに栄養となり、
また子供を産み育むために必要な人間というエネルギーを求めているようだ。
-
73 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/09/24(水) 18:52:05 ID:mGtrpong0
-
:《クルゥルルル……キケケケ…》:
自らの下半身を瞬く間に喰らい尽くしたアサウルス。
歓喜しているのか、喉を震動させて唸った。
(; ゚д゚ ) 「!! こっちに向かってくる」
次の目標を定めたアサウルスが動き出す。
うねる大蛇が海を刺すごとに、少しずつ三日月島へと向かって。
朽ちて捨て置かれた両の腕は
その動きに抗わず、力なく揺れていた。
ξ゚⊿゚)ξ「そうね…いいじゃない、やってやるわよ」
(; ゚д゚ ) 「……?」
ξ゚⊿゚)ξ「【ライブラ】!」
光の珠となった魔導力が漂い始める。
間も無く一直線にアサウルスの巨躯に走るも
道中、その珠は二股に別れた。
一つは真っ直ぐアサウルスの元に。
もう一つは海の中へと潜り込むとやがて発光。
( ゚д゚ ) 「……いまのは?」
ξ゚⊿゚)ξ「生体反応を感知する魔法」
ミルナは今もまだ恐怖が抜けていない。
ツンもそうだと思っていた。
だから…彼女の落ち着き払った態度には
男として気を挫かれたような気になる。
-
74 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/09/24(水) 18:53:20 ID:mGtrpong0
-
ξ゚⊿゚)ξ「……」
ツンの脳内を巡る思考は素早かった。
直情型ではあるが決して浅はかではない。
ショボン一人でどこまで出来るのかが分からないが、囮と足止めは期待できない。
ここからは分担して戦わなくてはならない。
集束した触手が二足歩行を実現している。
ならばあれを止めればいい。
だが、あの腕のように一枚樹ではないだろう。
ξ -⊿-)ξ「……」
ともすればブーンのような【破壊】の剣技では恐らく相性が悪い。
あれを断ち斬るに優秀な【切断】の剣技を使う
ショボンが上半身の元に居てはいけないのだ。
まとめて分断するつもりでなければ止まらず…
どうであれ三日月島は世界から消失するに違いない。
-
75 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/09/24(水) 18:54:21 ID:mGtrpong0
-
ξ゚⊿゚)ξ「やっぱり…せめてもう一人いないといけないわね」
( ゚д゚ ) 「……さっきの男…ブーンは…?」
二人は海面を見るも、それらしき影は見当たらない。
あるのはアサウルスの外郭をなす細かな破片がパラパラと吸い込まれていく様のみ。
下の海にそびえ立つ大蛇は太陽コロナの如く
放射状を描きながら輪転する。
ξ゚⊿゚)ξ「ミルナ、貴方泳げる?」
( ゚д゚ ) 「えっ」
ξ゚⊿゚)ξ「ブーンを助けなきゃ」
( ゚д゚ ) 「…し、しかし……」
(# ц )
彼らの隣には自責の念に押し潰されたでぃ。
未だ横たわり起きる様子はない。
( ゚д゚ ) 「…」
まずミルナはこう考える。
『もしもツンが眠らせた住人が目覚めたら?』
…しかしその憂慮は見透け、遮られる。
ξ゚⊿゚)ξ「【スリプル】は刺激さえ与えなければ解けないと思うわ。
あの怪物と戦うのよ、私達もね」
-
76 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/09/24(水) 18:55:30 ID:mGtrpong0
-
ミルナは次にこう考えた。
自分達がやるのだ。 誰でもない。
そう、自分が。
( ゚д゚ ) 「…」
ξ゚⊿゚)ξ「私がショボンと一緒に時間を稼いでくるから、その間に貴方はブーンを引き揚げてきて」
自分はショボンのためにこの島に残った。
友達のために残ったのだ。
でぃにもそう言ったじゃないか。
( ゚д゚ ) 「……」
ξ゚⊿゚)ξ「危険がないとは言えないわ。
でも…私達がやらないともっと状況は悪くなる」
あの怪物に立ち向かえとは誰も言っていない。
誰にも言われていない。
ショボンも逃げろと警告していた…。
それを信じて人々を避難させたのも自分だ。
"現在" を選んだのは他でもない自分自身。
さっきまで、何か自分に出来ることはないかを
必死に考えていたはずだ。
ーー 自分に出来ることを。
ξ゚⊿゚)ξ「お願い」
( ゚д゚ ) 「…」
( ゚д゚ ) 「…俺は」
-
77 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/09/24(水) 18:56:28 ID:mGtrpong0
-
( ゚д゚ ) 「ーー ここで、でぃを護る」
ξ゚⊿゚)ξ
口をついて出た言葉は、提案の否定。
時間にしてひととき。
しかし、心の中では何日も何週間も考え抜いたほどの疲労感を伴った。
彼は彼なりに精一杯思い悩んだ。
ショボンを引き揚げろと言われれば、
もしかすると否定しなかったかもしれない。
むしろ今、危機に晒されているのは
あの触手にまみれた上半身に囲まれているショボンではないかとも心配する。
ξ゚⊿゚)ξ「……」
身の丈を知らなくてはいけない。
単なる島内の運び屋だった自分が、あんな大きな怪物にこれ以上近寄れるわけがない。
( ゚д゚ ) 「ちなみに、あんたの魔法が確実に解けないという保障はあるのか?」
避難中に遭遇したアサウルスを通り抜けた住人らは、蟻の尖兵となって戻ってきてしまった。
まだ来るかもしれない。
もしそうなってしまえば…?
でぃの瞳が決定的にもう開かなくなるのは嫌だ。
ξ゚⊿゚)ξ「……。
経験上、可能性として高いってだけね。
私もこんなのと戦ったことはないもの」
-
78 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/09/24(水) 18:57:24 ID:mGtrpong0
-
( ゚д゚ ) 「……そうか」
ξ゚⊿゚)ξ「この島に武器はある?」
( ゚д゚ ) 「そこの崖下にショボンが用意した得物が沢山あ 「ありがと。」
( ゚д゚ )
ξ゚⊿゚)ξ「それを借りてくわね」
言葉尻はツンの言葉と重なりかき消される。
冷たくも鋭くもない、優しい声色を残して
ツンは走り去っていった……。
( ゚д゚ )つ 「あ…」
( ゚д゚ ) 「……」
( д )
----------
-
79 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/09/24(水) 18:58:48 ID:mGtrpong0
-
三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三
ヽヽヽヽヽヽ\\ヽヽヽヽヽヽヽヽヽヽヽヽ
ヽヽヽヽヽヽ \\ ヽヽヽヽ ヽヽヽ ヽ
ヽヽヽヽヽヽヽ \\ ヽヽヽ ヽヽ
ヽヽヽ ヽヽ \\ ヽ ヽ
ヽヽ ヽ ヽ \\ ズアッ !!
三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三
-
80 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/09/24(水) 18:59:44 ID:mGtrpong0
-
\\,,'∴
゜" ザ
「キリがない!」 (´・ω・`;)つ←── シ
. ュ
// ∵ ッ
//
孤立奮闘するショボンの視界には
四方八方から襲い掛かってくる黒き森。
何度斬り伏せても一歩を踏み出さないうちに
いくらでも頭をしならせ垂れてくる。
捌き切れない鞭は
ツンの【シールド】によって防いではいる…
かといって無防備に身体を晒すほど全面的に
信用することはできない。
(´・ω・`;) 「見えているのに ーー」
このままでは辿り着かない。
触手の先にはアサウルスの弱点とされる
二つの太陽が大きく脈打つ。
だが険しい道のりだった。
海空を見下ろせば
心なしか三日月島が近寄っている気がする。
-
81 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/09/24(水) 19:01:17 ID:mGtrpong0
-
足下の軍隊蟻は魔導力の放出で対応できるだけ
まだ救いがあった。
それでも魔導力は無尽蔵とはいかない。
気を抜けばこの不死の身は漆黒に染まり、
跡形もなく喰い尽くされるだろう。
蟻が食むのは肉体ではない。
魂の器である生命を貪るのだ。
痛みのない死が何をもたらすのか、もう一度試す気にもならなかった。
(´・ω・`) 「…」
ふと。
肌が触れあうほど目の前で
瞳から光を失っていった兄者の顔を思い出す。
触手の森をいくら斬ったところで
その数を減らすこともなければ、本体にダメージがあるかも疑わしい。
アサウルスの進攻も止めなくてはならない。
太陽に己の刃が通用するかも分からない。
「ショボン!」
(´・ω・`) 「ーー !」
逆扇に降り下ろされる触手群に危うく刺し貫かれるところだった。
身体一つ分の後退で事なきを得ると、無防備なそれを横薙ぎに一閃。
ーー だがそこにはひときわ太い触手…いや、
触腕が螺旋を描き、ショボンの首に迫る。
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82 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/09/24(水) 19:02:14 ID:mGtrpong0
-
ξ゚⊿゚)ξ「させないわ!」
一度はショボンを危うく潰し殺した触腕。
二度目は不自然に軌道を変え、
あられもない方向へと尖端を歪み刺した。
その根元は空気の抜けたゴム毬のように大きくひしゃげている。
そうさせたのはツンが突き出す小さな拳。
(;´・ω・`) 「……無茶苦茶だな」
ξ゚⊿゚)ξ「せえっ ーー!」
回想と実相の狭間に気を取られ過ぎた彼を救った声主が、休まず大きく振りかぶるのは鋼のツルギ。
切断…までは出来ずとも大木を切り倒したように触腕を無力化した。
⊂ξ ゚⊿)ξ「アサウルスの移動を止めましょ。
貴方は下に行って。
私が代わりにここで注意を引くから」
ブーンと一緒にいた女性…ツンといったか。
正直なところ同じことを考えていたので
ショボンは彼女の提案に反論する気はない。
その身を案じることもなければ、
性差による気遣いもない。
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83 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/09/24(水) 19:03:31 ID:mGtrpong0
-
「恩に着る」
 ̄´・ω・)
そう言い残し、触手のすき間を潜り抜けた。
さっきのように悠長に飛び降りはしない。
弾丸のように海面まで一直線に翔んだ。
それを捕えられる触手はなく、
今度は一方的にショボンの狙い通りその脇をすり抜け、直後アサウルスのバランスが少し崩れる。
「行き掛けの駄賃、
貰っておくよ ーー」ω・`)
ショボンはそのまま海の中へ。
上がる水柱の数は両手に足りなかった。
後を追うように、
アサウルスの脚を構成する大蛇の成れの果てもブチブチと悲鳴をあげて沈んでいく。
-
84 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/09/24(水) 19:04:33 ID:mGtrpong0
-
ξξ゚⊿゚)ξ:「ーー …さっそくやってくれたのね」
上にいたツンの足場が大きく揺れる。
出現した急勾配の坂を転げ落ちないようにと
外郭に突き立てようと試みたツルギは刺さらなかった。
その点はやはり男二人のようにはいかない。
相手が困難であればあるほど、
剣は単純な力で優劣が決まるものではないらしい。
ξ゚⊿゚)ξ∩「やっぱりこっちの方が ーー」
じっと手を見つめる。
細く白い女性らしい形と、男性顔負けの握力を誇る指先が徐々に赤く染まりゆく。
ξ゚⊿゚)ξつ「【フレアラー】!」
色が抜けると同時、空気が鋭く鳴り、駆けた。
広範囲の炎がツンを中心に走り盛る。
根元から焼き尽くされる黒い触手が
まるで踊り死よろしく狂い悶え、粒子となり散っていく。
その威力は残骸を蟻に変質する間すら与えない。
ξ゚⊿゚)ξつ「ーー 私には向いてるのかしら?」
-
85 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/09/24(水) 19:05:43 ID:mGtrpong0
-
( ゚д゚ ) 「…ショボン」
遠巻きに居るミルナからも、ショボンの姿はよく見えた。
海に落ちたのはきっとブーンを捜しに行ったのだろう。
ツンの提案通り。
それをしなかった自分の代わりに。
戦いが始まってどれほどの時間が経ったのか…
小一時間程度?
それとも実は丸一日経過してはいないか?
人は…そんな短時間で恐怖を克服できるのか?
( ゚д゚ )
アサウルスの上部でも赤い光が見える。
あれは炎か、得体の知れない別の何かか。
礼拝堂の前で足を地につけているのは彼一人。
ただ目の前のそれを見ているだけ。
(# ц )
( ゚д゚ ) 「なあ、でぃ。 大丈夫か?」
返事はない。
胸部の上下運動から彼女に息があるのは分かっている。
まだ…目覚める様子はない。
( ゚д゚ ) 「お前が俺なら、助けに行けるのか?」
そんな彼女に問い掛けている自分を、
ミルナは酷く卑怯者だと罵った。
----------
-
86 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/09/24(水) 19:06:51 ID:mGtrpong0
-
。
.゜
(´・ω・`)(……いた)
海中のそれほど深くない位置、
岩のソファで眠るブーンを見つけた。
首を反っているせいで表情は見えない。
。
゚.
(;´・ω・)(まずい!)
……近付いて、そこで始めて気が付いた。
彼の身に無数の蟻が集っている ーー。
生物には一定の酸素が必要なのだとしても。
アサウルスの破片は o
その全てが "蟻" であり、 ゜.
巨獣アサウルス ( ´>ω<)
そのものなのだ。
既存の生態系から勝手に
その性質を思い込んでいたせいで失敗する。
あの時も騙された。
O
o 。 。
.゚ o .
( ´>ω・) .゚
(:::ω:::::)
ひとまずはこちらが先決。
ブーンにへばりついている蟻群を引き剥がすべく、ショボンは魔導力を放出 ーー
-
87 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/09/24(水) 19:09:19 ID:mGtrpong0
-
。
.゜
(;´・ω・`)( ーーするとなれば、この蟻は…?)
この後どこに向かうかを想像し、息を飲む。
( ^ω^)『"魔導力" を意識するんだお』
ブーンから受けたアドバイス。
あのお陰でショボンは蟻に喰われず戦うことができた。
何故、この男はそれを言えたのだろう。
ショボンが三日月島で過ごした100年間、
魔導力に関する事項は
ビコーズの神託と、実生活における朧気な感覚のみが身体に教えてくれていた。
だが……それだけだ。
ツンも防御壁を張っていた。
ブーンも自身の傷を癒していた。
でもショボンにはそれがまだ出来ない。
これ以上のやり方が分からない。
。
.゜
(´・ω・`)(何かあるんじゃないか?
"魔導力" にはもっと重要な性質が)
-
88 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/09/24(水) 19:10:41 ID:mGtrpong0
-
試しに放出する魔導力の感覚を変えてみる。
…しかし、何も変化の起きないままに
ブーンを貪る蟻達がただ剥がれていくだけだ。
黒い雲がぶわりと一斉に浮力を得てしまう。
慌てて鞘から剣を抜き放つも
水中では思うように動けず、刃は虚しく水を切る。
霧散する蟻は散り散りに…やがて取り返しのつかないほどその範囲は拡がってしまった。
。
.゜
(;´・ω・`)(くそっ…!)
背中から首筋まで、海水より冷たい手のひらに
ショボンの心ごと鷲掴みにされる気がした。
この蟻達はこのまま海の中をさ迷うのだろう。
棲息域にある生物がその生命を喰い荒らされる未来図が、否が応にも脳裏を支配する。
ーー 弱肉強食。
長年培われた食物連鎖に異変が起きる。
ともすれば島の住人のように、
関わった生き物が蟻の尖兵として再びショボンの前に現れるかもしれない。
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89 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/09/24(水) 19:11:38 ID:mGtrpong0
-
……揺らめく視界から蟻が消えた後。
ショボンは気持ちを切り替えブーンを担いだ。
全身に細かな傷は見られるが、致命傷はなさそうに思える。
彼の肉体は、蟻の牙を殆ど通していない。
ならば気を失っているのは
体力的な問題ではなく、精神的な何か……
万が一、彼が蟻に感染したとなれば大問題だ。
。
.゜( ω )
(´・ω・`) (…どっちがいいかな)
ショボンのなかで一巡した思考は
ブーンを素直に引き揚げることとなった。
暴走を恐れて今ここでひと殺すよりも、
復活を望んでアサウルスを早めに撃破する。
親元のアサウルスが死ねば
先ほど逃した蟻群も
その姿を維持できなくなる可能性に賭けた。
。
.゜( ω )
( ´・ω・`) (頼むよ、ブーン)
ブーンの探索にそれほど時間は掛けていない。
早めに戻ればツンも無事である可能性が高まるのだ。
若き不死者は酸素を求め、
海面に射し込む光のもとへと戻りながらも
その眩しさに瞳を閉じた。
-
90 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/09/24(水) 19:12:53 ID:mGtrpong0
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『なあショボン?』
『なに? 兄者さん』
( ´_ゝ`)『お前、海の中をもっと見てみたいか?』
(´・ω・`) 『…まあ、興味はあるけど』
(´<_` )『生身じゃ限界がある…、が。
なんなら船に屋根をつけて囲ってしまえば潜水できるんじゃないかと思ってな』
(´・ω・`) 『そうなの?』
(´<_` )『酸素の供給や船体バランス、
エンジンの問題もあるだろうが、理論的には可能だと思うぞ』
( ´_ゝ`)『夢が広がるな……
うはww超重量潜水艦アニジャwwwwww 』
(´・ω・`) 『島の皆が乗れるくらいでっかいのねwwwwスピードシップ緒本wwww』
(´<_`;)『お前らそんなんだったか…?
無理いうな。 第一、それを造るのは誰だよ』
アナタ!
( ´・ω・)σ ワーイ ムーリー
( ´_ゝ`)σ ∩(´<_`∩)
キミダッ! ムリムリムリー
-
91 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/09/24(水) 19:14:20 ID:mGtrpong0
-
( ω )
ii(´>ω・`)ii 「ーー ぶはっ」
海面に上がると、ありったけの酸素と
肺の中にどっぷりと溜め込んでいた二酸化炭素をコンバートする。
口を開けて何度も何度も息を吸い込んだ。
身体の中を流動する血液がグングンと活性化され、体内からエネルギー通貨を支払い終えると彼の身体に軽さが戻ってくるようだ。
巣潜りして遊んだ幼い頃よりも
長く潜れたのは身体の成長か、
不死ゆえにかはもう分からない。
「…惜しかったな…」
解体した潜水艦を尊び、一度だけ欠伸を許す。
( ゚д゚ ) 「ショボーン! そこかぁ!」
振り向けばそう離れていない海の上…
真剣な顔をして小舟を走らせるミルナの姿。
( ω )
(ι ´;ω・`) 「ミルナ……君は…」
( ゚д゚ ) 「ブーンはこっちに乗せて、お前はツンの所へ行ってくれ」
( ω )
(ι うω・`) 「……君も無茶するなあ」
-
92 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/09/24(水) 19:15:14 ID:mGtrpong0
-
横付けた小舟にブーンを乗せると、ミルナの嘔吐く声が聴こえた。
後から乗り上げたショボンが見たものは
背骨を挟むように2つの大穴で肉を抉られていた不死者の大きな背中。
ーー 常人であれば十二分に致命傷だ。
(;´・ω・`) 「これは酷い」
( ; ’ ω^)「……お」
(; ゚д゚ ) 「だ、大丈夫か? 動かない方が」
(;’ ω^)
つ◎ 「ぐ……助かったお」
目を覚ました途端に大汗をかきながらも
震える手で【ヒール】を詠唱。
弱々しい光がブーンを包む。
(;‘ ω^)
つ◎ 「ツンは…どこだお?」
(´・ω・`) 「陣形を変わってもらった。
僕が君を助けたのは移動を開始したアサウルスの足止めついでだよ」
-
93 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/09/24(水) 19:16:15 ID:mGtrpong0
-
一瞬だけ ーー 苦虫を噛み潰したような顔で
ブーンは目を伏せた。
それはショボンの言葉に、ではない。
(;^ω^)
つ◎ 「…急いで戻るお。
触覚に刺された時、急激な眠気に襲われた…
あれに不意をつかれたらツンも ーー」
(; ゚д゚ ) 「眠りって、【スリプル】とかいう魔法をあの怪物も使うのか?」
(´・ω・`) 「魔法については僕も分からない…
けど、嫌でも気付かされたよ。
アサウルスは単なる蟻の怪物じゃないって」
(;^ω^)
つ◎ 「ビコーズがこの日のために僕らを呼んだのも頷けるお」
(´・ω・` ) 「……」
当の御神体…そういえば姿が見当たらない。
( ^ω^)「それでも僕たちは出来ることをやるだけだお」
-
94 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/09/24(水) 19:17:01 ID:mGtrpong0
-
両腕を粉砕されたアサウルスが取った行動は
[無防備]。
少し考えれば罠だと分かるはずが、あの時は
なぜ二人とも隙をみせてしまったのか。
まるで思考や感情が "留められず先走った" かのように。
(´・ω・`) 「行こう。 今度こそヘマはしない」
( ^ω^)「だお!」
言うが早いか ーー
頭上に陣取るアサウルス目掛けて
不安定な船を足掛かりに二人の不死者が姿を消す。
彼らの跳んだ反動で船体は大袈裟に沈み、
辺りを波立たせた。
:(( ゚д゚ ): 「……三人とも無事でいてくれよ」
戦いに参加しないミルナも、
顔をあげると自分が今どこに居るのかを思いだして島へと戻る。
小さな舟を真逆に漕ぎだし、急いでアサウルスの元から離れる。
(( ( ゚д゚ ) 「………」
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95 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/09/24(水) 19:18:01 ID:mGtrpong0
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ここまで来るのも大きな勇気がいった。
もう充分だと思った。
同時に胸に去来するのは
ショボンに置いていかれた寂しさと、
とてもついていけないであろう不死者とアサウルスの戦闘に腰の引けた自身の不甲斐なさ。
この舟も、恐ろしい形相で蟻と化した人々が
乗っていたものをなんとか心を奮い立たせ、
押して海に漕ぎ出したのだ。
ショボンやブーンの身を案じながらも
同時に船底にも誰か張り付いていやしないかと想像したりもした。
これ以上は心がもちそうにない。
今日だけで一生分の感情を揺さぶられた気がする。
・・・・・・・
ーー 不自然なほどに。
(( ( ゚д゚ ) 「……俺はもう」
充分だ。 何度もそう思ってる。
ショボンやブーンやツンの三人を
信用する、しないの問題ではなかった。
「でぃを連れて…この島から離れよう」
人の言葉は口にして始めて完成する。
決意も、事実も、史実も、
……その心も。
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96 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/09/24(水) 19:18:46 ID:mGtrpong0
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(;^ω^)「ツン!」
ξ;;-⊿-)ξ「……」
前線に復帰したブーンの目に飛び込んできたのは、肩を落とし、へたりこむツン。
周囲の触手は根元から焼け枯れたものと
いまだ健在のものがある。
…だが、いずれもその動きは停滞。
代わりに蟻の大群がその尖端から続々と姿を現し始めていた。
(´・ω・` ) 「……」
ξ;;゚⊿-)ξ「二人とも…戻れたのね。 良かった」
三( ^ω^)「どうなってるお?!」
ξ;;゚⊿゚)ξ「こっちに来ちゃダメよ、ブーン!」
(;^ω^)):「おっ」
駆け寄るブーンを制止。
ツンの言葉は続く。
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97 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/09/24(水) 19:20:38 ID:mGtrpong0
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ξ;;゚⊿゚)ξ「アサウルスに魔法を返されたわ。
【リフレクト】とでも言うのか…とにかく、
私が使った【フレアラー】もそのままね」
ξ;;゚⊿゚)ξ「いま動きがないのは【スリプル】を放ったから。
でも…きっとそれももうすぐに返される」
瞬間、ショボンの頭に
浮かんだのはミルナの言葉。
ξ;;゚⊿゚)ξ「アサウルスは魔導力を吸っているのよ、蟻から、触手から…。
喰い喰われたものは養分として、アサウルスが使えるようになる」
ーー ミルナが【スリプル】を
知っているタイミング
ξ;;゚⊿゚)ξ「私自身ももう魔導力が吸いきられて動けそうにない。
だから今のうちに……アサウルスを倒して」
( ^ω^)「残るはあの太陽と触角かお」
ーー ブーンが触角から受けた
眠りのダメージ
(#^ω^)「把握したお、今すぐに ーー
ーー それ以外に与えた魔導力が
まだ残ってるのではないか…?
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98 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/09/24(水) 19:21:33 ID:mGtrpong0
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(#^ω^ ̄  ̄ あれを叩き壊す!」
ツンを傷付けられて怒ったブーンの姿が消え
 ̄  ̄´・ω・`)
今度は先走る感情に "感染" していない
ショボンの姿が消えたのはまったくの同時。
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99 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/09/24(水) 19:22:23 ID:mGtrpong0
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太陽に飛び込む二人を迎え撃つ二本の触角。
以`θ益θ以 《 ーーギギィ》
アサウルスの口角が釣り上がった気がした。
その尖端に込められた魔導力は、
(#^ω^)「!!」 (´・ω・`) 彡
【破壊】と【切断】
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100 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/09/24(水) 19:23:32 ID:mGtrpong0
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「だが次は僕の読み勝ちだ、アサウルス」
(´・ω・`)つ←── 「あの日、僕を
彡つ 殺せなかった失態を悔やむんだね」
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101 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/09/24(水) 19:24:25 ID:mGtrpong0
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二本の触角は二人の不死者に個々肉薄。
だが一本はショボン自らの抜刀術により
正面から相殺される。
魔導力の波動がショボンの身体を大きく後方に吹き飛ばした。
そしてもう一本…
ショボンの投擲した黒い槍は触角を
ブーンの眼前で貫き、軽く引き千切る。
以`θ益θ以 《ーー !!!?!》
あの日、ショボンと兄者を貫いた黒い槍。
今なら分かる。
兄者が先に貫かれたせいで、
この槍に込められた魔導力がその時点で失われたのだと。
先にショボンを貫きさえすれば
ショボンは一度死に、
そのまま不死蟻の尖兵と化す…
そういう筋書きだったのかもしれない。
現実には兄者が死に、
蟻になれず命を失った。
ショボンは兄者によって
その不死の命を助けられていたのだ。
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102 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/09/24(水) 19:26:31 ID:mGtrpong0
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(メメ´;; ω・`)
つ 「…一矢報いるのはその槍って決めてたからね」
空っぽの黒い槍は触角の魔導力を吸い込み
その威力を100%引き出したといえる。
果たしてその役目を達成したことになった。
(# ゚ω゚)「ぜぇえあァァアアッッ!!」
今度こそ完全なる無防備になったアサウルスの太陽の元に、全力で剣を振りかぶる男。
ーー 最も善なる精神を保ち続け
千年間、人を助け続けてきた不死者。
同時に【破壊】を司る、愚直で優しき人間。
その剣が、橙色に脈打つ剥き出しの太陽…
アサウルスの心臓を叩き壊した ーー!
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103 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/09/24(水) 19:27:17 ID:mGtrpong0
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三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三
三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三
三三三三三三三三三三三三三三三三三三
三三三三三三三三三三
三三三三三
三
三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三
三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三
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104 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/09/24(水) 19:28:42 ID:mGtrpong0
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