-
134 名前: ◆MiP3CC60hw[] 投稿日:2017/08/26(土) 23:07:47 ID:.Uw5vVOg0
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(;・∀・)(……?)
一言で言い表すなら、違和感。
いつもは無い何かがあるというよりは、いつもはあるものが無いような、そんな不安を覚えた。
(;・∀・)(……なんだろう。何かが足りないような気がする)
漠然としたもので、原因はまるで分からない。まるで湿気を帯びた熱気のように、不安が肌に纏わりつく。
(;・∀・)(それに……なんか、前にもこんな感覚があったような……)
(#゚;;-゚)「モララー? どうかしたの?」
(;・∀・)「……いや、なんか体がおかしいような……」
(#゚;;-゚)「確かにモララー、顔が青白い。風邪?」
(;・∀・)「神は病気にならないよ」
(#゚;;-゚)「じゃあ、なんで……?」
(;・∀・)「な、なんでだろう……でもなんとなく、覚えがあるような……」
(;#゚;;-゚)「……誰か呼んだ方がいいんじゃないかな。モナーさんとか」
(;・∀・)「う、うん。そうする……」
-
135 名前: ◆MiP3CC60hw[] 投稿日:2017/08/26(土) 23:08:21 ID:.Uw5vVOg0
-
( ´∀`)「来たモナよ。どうしたモナ?」
(;・∀・)「なんか、体の調子がおかしいんだよ」
( ´∀`)「……どう、おかしいモナ?」
(;・∀・)「なんか……力が入らないっていうか……」
( ´∀`)「ギコとしぃを呼んでくるモナ。でぃ、モララーの傍にいて」
(;#゚;;-゚)「え? は、はい」
(;・∀・)「おい、モナー? 行っちゃった……なんなんだよ……」
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136 名前: ◆MiP3CC60hw[] 投稿日:2017/08/26(土) 23:08:59 ID:.Uw5vVOg0
-
( ´∀`)「連れて来たモナ」
(,,゚Д゚)「なんだー? どうしたんだ、モララー」
(*゚ー゚)「何かあったの?」
( ´∀`)「モララー、訊きたいことがあるモナ」
(;・∀・)「なんだ?」
( ´∀`)「今日、参拝しに来た人はどれくらいいたモナ?」
(;・∀・)「参拝しに来た人……あっ!」
(;#゚;;-゚)「……!」
(;・∀・)「……誰も、来ていない」
(;,゚Д゚)「……おい、それってまさか」
(;*゚−゚)「……そのまさかのようね」
( ´∀`)「モララー」
( ´∀`)「どうやら、信仰が失われているようモナ」
-
137 名前: ◆MiP3CC60hw[] 投稿日:2017/08/26(土) 23:09:26 ID:.Uw5vVOg0
-
( ・∀・)神様と(#゚;;-゚)生贄のようです
其の伍
.
-
138 名前: ◆MiP3CC60hw[] 投稿日:2017/08/26(土) 23:10:07 ID:.Uw5vVOg0
-
(;#゚;;-゚)「そ、それって……モララーは消えちゃうの!?」
( ´∀`)「神社もあって、神体もあるからまだ大丈夫モナ。信仰が失われたっていってもゼロではないだろうし」
( ´∀`)「信仰と神社と神体は、柱みたいなものモナ」
(;#゚;;-゚)「柱?」
( ´∀`)「そう、柱。今のモララーは大量の柱を失って崩れた建物と同じモナ」
( ´∀`)「神社の柱と神体の柱、そしてわずかに残った信仰の柱。これが今、モララーを支えているものモナ」
( ´∀`)「でも、それもいつ崩れるかは分からない。だから、急いで柱を直さないといけないモナ」
(;#゚;;-゚)「ど、どうやって……」
( ´∀`)「それはモナがやるモナ。でぃ、ギコ、しぃには残りの柱を守ってもらうモナ」
( ´∀`)「まず、ギコとしぃは神社。村民が取り壊しにかかるからそれを防ぐモナ」
(;#゚;;-゚)「と、取り壊し……!?」
( ´∀`)「二人を呼びに行く時、村人の会話で分かったモナ」
(;,゚Д゚)「何考えてんだよ、村人は……」
(;*゚−゚)「ねぇ、ここの宮司は!? 何をしてるの!?」
(;・∀・)「……うち、兼務神社なんだよ。基本的に宮司はここにいない」
(;#゚;;-゚)「兼務神社……?」
(;・∀・)「複数の神社で同じ宮司が働くことがあるんだよ。
その宮司がいつもいる神社が本務神社、普段いない神社を兼務神社っていうんだ」
(;#゚;;-゚)「そ、そんな……」
( ´∀`)「だからこそ、ギコとしぃに守ってもらいたいモナ」
(,,゚Д゚)「分かった」
(*゚ー゚)「任せて!」
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139 名前: ◆MiP3CC60hw[] 投稿日:2017/08/26(土) 23:10:38 ID:.Uw5vVOg0
-
( ´∀`)「それから、でぃ。神体の刀を守るモナ」
(;#゚;;-゚)「わ、わたしが?」
( ´∀`)「モララーと一緒に守るモナ。大丈夫、でぃならできる」
(;#゚;;-゚)「は、はい……」
( ´∀`)「それと、モララーの傍にいてあげるモナ。でぃがいることでモララーの支えになるモナ」
(;#゚;;-゚)「! はい!」
-
140 名前: ◆MiP3CC60hw[] 投稿日:2017/08/26(土) 23:11:07 ID:.Uw5vVOg0
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( ´∀`)「それじゃ、各自移動モナ。ギコ、しぃ、本殿には近づかせたら駄目モナよ」
(,,゚Д゚)「ああ!」
(*゚ー゚)「守り抜いてみせるわ」
( ´∀`)「モララーとでぃは本殿の中にいるモナよ」
(;・∀・)「おう……」
(;#゚;;-゚)「はい!」
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141 名前: ◆MiP3CC60hw[] 投稿日:2017/08/26(土) 23:11:56 ID:.Uw5vVOg0
-
(;-∀-)「……」
本殿の中で、御神体の刀を抱えてモララーは座り込む。丸まった背中が小刻みに震えているのが痛々しい。
(;#゚;;-゚)「モララー……大丈夫……?」
(;-∀-)「ちょっと……まずいかな。昔、信仰を失ったときよりも、残った信仰が少ない……」
(;#゚;;-゚)「そんな……」
(;-∀-)「……」
(;#゚;;-゚)「わ、わたしはモララーのこと信じてる。だから、だから、お願い」
(#;;;-;)「モララー……消えないで……。わたしが、わたしがモララーのこと、信じるから……」
(;-∀-)「……ありがとう、でぃ。でもね、でぃはもう人間じゃないんだ」
(;-∀-)「でぃがどれだけ信じてくれても『人間からの信仰』にはならないんだ」
(#;;;-;)(わたしじゃ……モララーを助けられない……)
残酷な事実が重くのし掛かる。涙が後から後から流れていった。
両親が死んだときでさえ、堪えられた涙が今は止めることができない。
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142 名前: ◆MiP3CC60hw[] 投稿日:2017/08/26(土) 23:12:33 ID:.Uw5vVOg0
-
(;-∀-)「でぃ、もっと近くに来て……」
(#;;;-;)「……!」
(;-∀-)っ「手、繋いでいてくれる?」
(#;;;-;)
(#∩;;-∩)
(#゚;;-゚)っ「うん!」
そうだ、モナーさんに「支えになってあげてほしい」と言われたんだ。
泣いてちゃ駄目だ。
わたしが、モララーを支えるんだ。
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143 名前: ◆MiP3CC60hw[] 投稿日:2017/08/26(土) 23:13:11 ID:.Uw5vVOg0
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拝殿の扉を閉め、賽銭箱の前に立つ。
俺は槍を構え、素振りをする。準備は万端だ。
(*゚ー゚)「……ねえ」
(,,゚Д゚)「なんだ?」
(*゚ー゚)「拝殿よりも、鳥居の前で待っていた方がいいんじゃない?」
(,,゚Д゚)「いや、ここでいいだろう」
(*゚ー゚)「でも、鳥居から壊される可能性だって……」
(,,゚Д゚)「鳥居は石段の近くにあるからな。鳥居を壊してしまうと、石段が通れなくなるかもしれない。
奴らだって逃げ道が無くなるのは困るだろうよ」
(*゚ー゚)「……なるほど」
(,,゚Д゚)「まあ、絶対とは言い切れないがな。でも、村人たちからすれば拝殿や本殿を狙いたいところじゃねぇかな」
(*゚ー゚)「それもそうね」
(,,゚Д゚)「ま、想定外の事態が起きても俺らなら大丈夫だ。俺らは強いから」
(,,゚Д゚)「だからそんなに不安になるな。大丈夫、モララーは絶対助かるから」
(*゚ー゚)「……うん」
(*゚ー゚)(いざって時にすごく頼りになるのよね、ギコくんは)
(*゚ー゚)(……そういうところが好きなのよ)
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144 名前: ◆MiP3CC60hw[] 投稿日:2017/08/26(土) 23:14:08 ID:.Uw5vVOg0
-
(,,゚Д゚)「……来たな」
複数の足音がこちらへと向かっている。一際殺気立っている足音が先頭に聞こえた。
俺は槍を構え直し、しぃは拳を握りしめた。
先頭の村人が石段を登りきった。後ろに続いていた村人も続々と到着する。
(#^ω^)「……なんだお、お前らは」
(,,゚Д゚)「何をしに来た」
(#^ω^)「質問してるのはこっちだお!」
(,,゚Д゚)「答えろ」
(#^ω^)「……こんな神社、取り壊してやるんだお!」
(,,゚Д゚)「何故だ」
(#^ω^)「神なんていないからだお! 皆を騙すこの神社が存在し続けるわけにはいかないお!」
(,,゚Д゚)「どうして、神がいないと言い切れる?」
(#^ω^)「ツンを救ってくれなかったからだお! 毎日毎日、祈りに来てたのに……!」
(,,゚Д゚)「……もういい。黙れ」
(*゚ー゚)「どうする? 気絶でもさせる?」
(,,゚Д゚)「いや、危害は加えるな。しぃがやると死人が出かねないし」
(*゚ー゚)「当然手加減はするわよ」
(,,゚Д゚)「人間は殴るな。ただ、武器は破壊してやれ」
(*゚ー゚)「分かったわ」
村人たちが武器を構え、こちらへと駆けてくる。
しぃと背中を預け合う。
敵を見据え、牽制のために槍を突き出した。後ろのしぃが拳を握ったのが分かった。
突き出してくる武器を槍でいなし、破壊していく。
(,,゚Д゚)(壊させるものか)
大事な友達なんだ。絶対に奪わせてなんかやらない。
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145 名前: ◆MiP3CC60hw[] 投稿日:2017/08/26(土) 23:14:50 ID:.Uw5vVOg0
-
/ ,' 3「……始まったか」
拝殿の前から、武器のかち合う音が聞こえてくる。
目を凝らすと、槍を持った軽装の甲冑を着た男と、十二単を着た綺麗な女が村人と戦っている。
/ ,' 3(なんだ、あいつらは……?)
妙な二人組だが、的確に村人が持つ武器を落とし、破壊している。
/ ,' 3(……とんだ邪魔が入ったようだな)
舌打ちし、歩みを進める。
拝殿は内藤たちに任せて、儂は本殿を破壊するよう決めていた。
拝殿前の二人組に気づかれないよう、本殿へと向かっていく。
ようやくペニサスの仇を討てる。悲願を達成する時が来たのだ。
/ ,' 3(待っていろ、ペニサス)
/ ,' 3(お前を騙した神を、この儂が殺してやる)
-
146 名前: ◆MiP3CC60hw[] 投稿日:2017/08/26(土) 23:15:26 ID:.Uw5vVOg0
-
(;-_L-)「……」
異常な事態が起こっている。
村人が一丸となって、神社を取り壊そうと躍起になっている。
首謀者は、村長の荒巻。昨日、妻を亡くした内藤も中心で動いているらしい。
神社を取り壊すなんて、そんな罰当たりなことはしたくない。それに、自分はモララー様のことを信じている。
だからと言って、村人たちを止める勇気もない。
(;-_L-)人「モララー様……でぃ殿……」
ただ、歪な祠の前で祈り続けることしかできない。
-
147 名前: ◆MiP3CC60hw[] 投稿日:2017/08/26(土) 23:16:43 ID:.Uw5vVOg0
-
外から足音が聞こえる。
一瞬、モナーが戻ってきたのかと考えて、すぐに首を振った。
足音に殺気が宿っている。それも、強烈な殺気が。
(;#゚;;-゚)「モララー……だ、誰かが外に……」
(;-∀-)「……どうやらそうみたい」
(;#゚;;-゚)「だ……誰だろ……モナーさんかな……」
(;-∀-)「……」
でぃが僕の手を強く握りしめた。足音の主がモナーではないことはでぃも分かっているだろう。それでもモナーの名を口に出したのは、そうであってほしいという希望でしかない。
本当はもう、分かっている。僕もでぃも。
本殿の前に誰がいるのかなど。
/ ,' 3「……」
-
148 名前: ◆MiP3CC60hw[] 投稿日:2017/08/26(土) 23:18:00 ID:.Uw5vVOg0
-
/ ,' 3「……ようやく、ようやくこの時が来た」
/ ,' 3「散々、騙し続けてくれたな。存在もしないくせに、ずっと」
/ ,' 3「なあ、どんな気持ちだ? モララー様。貴様を恨み続けた儂の手で逝く気持ちは?」
/ ,' 3「儂は今、とても清々しい気分だ。長年の悲願をようやく果たせる」
ハンマーを握った右手を振り上げる。標的はもちろん、目の前の忌々しき本殿だ。
/ ,' 3「もう、終わりにしよう」
⊂(#;;;-;)っ「ダメ!!!」
.
-
149 名前: ◆MiP3CC60hw[] 投稿日:2017/08/26(土) 23:19:15 ID:.Uw5vVOg0
-
(;・∀・)「で、でぃ!?」
でぃの手が離れたと思ったその瞬間、でぃは本殿を飛び出した。
一瞬のことでまったく反応ができなかった。
(;・∀・)(まずい……このままじゃ、でぃは……!)
(;-∀-)「……ッ」
本殿の外へ出ようとするも、体が重く動かない。
信仰を多く失ったこの身では、幼い生贄を助けるための力すらない。
(;-∀-)「クソッ……!」
拳を握り、床を叩きつける。それすら弱々しい。
動かない体に歯ぎしりをすることしかできなかった。
-
150 名前: ◆MiP3CC60hw[] 投稿日:2017/08/26(土) 23:20:28 ID:.Uw5vVOg0
-
/; ,' 3「……でぃ!?」
⊂(#;;;-;)っ「ダメ!! モララーのこと、虐めないで!!」
⊂(#;;;-;)っ「モララーは、優しい神様なの!! わたしなんかを助けてくれるくらい!!」
⊂(#;;;-;)っ「だから、だから……! モララーは、消えちゃダメなの!!」
/; ,' 3「……驚いたな、まさかフィレンクトの言う通り、でぃが化けて出るとは……」
/ ,' 3「……でぃ、まるで本当にモララーがいるかのような口ぶりだな?」
⊂(#;;;-;)っ「いるんだよ! モララーは……モララー様は本当にいるの!!」
/ ,' 3「……」
/ ,' 3「……貴様、モララーに助けられたと言ったな?」
(;#;;;-;)「言った!! モララーは、わたしのことを助けてくれ……!?」
でぃが喋り終わるよりも早く、でぃの細い喉に手を掛ける。力を込めると、でぃの細い体が持ち上がった。
(;# ;;- )「かっ……はっ……」
/ 3「……忌々しい」
/ 3「何故、お前が助けられたのだ」
/ 3「神が本当に存在するのなら、何故……」
/# 3「何故、貴様があいつを差し置いて救われるんだ!?」
.
-
151 名前: ◆MiP3CC60hw[] 投稿日:2017/08/26(土) 23:22:00 ID:.Uw5vVOg0
-
(;# ;;- )「うぅ……くっ……」
荒巻のゴツゴツした手が、わたしの喉を握りつぶす。
息が、息ができない。荒巻の手を解こうと必死で爪を立てる。しかし、荒巻の手はビクともしない。
恐怖、痛み、息苦しさがせめぎ合い、視界がぼやけていく。
(# ;;- )(……ああ、守れなかった)
体から全ての力が抜けていく。わたしの体を支えているのは、首を握る荒巻の手だけだ。
(# ;;- )(ごめんね、モララー)
心の中で呟き、目を閉じる。
意識が、意識が途切れて──
( ∀ )「汚い手で、でぃに触るな」
.
-
152 名前: ◆MiP3CC60hw[] 投稿日:2017/08/26(土) 23:23:11 ID:.Uw5vVOg0
-
フッ、と首の圧迫が消えた。
支えを失い、倒れる体を抱き寄せられる。目を開くとそこには見慣れた着物。目線を上げると見慣れた綺麗な顔。
モララーが、本殿を背に荒巻と対峙している。
その顔は、まるでお祭りで食べたかき氷のように、冷たい。
/; ,' 3「お、お主……何者だ!? ……ま、まさか……」
( ∀ )「そのまさかだよ」
モララーは右手に握った刀を、荒巻の喉元に向けた。
( ∀ )「僕が、モララーだ」
.
-
153 名前: ◆MiP3CC60hw[] 投稿日:2017/08/26(土) 23:25:15 ID:.Uw5vVOg0
-
(;#゚;;-゚)「けほっ……モララー、体は大丈夫なの……?」
( ∀ )「大丈夫。でぃ、下がってて」
/; ,' 3(本当に、こいつが……?)
突きつけられた刀。刀身は鋭く光を反射し、鈍く輝く。
モララーの御神体は刀だったはず。つまり、これがその刀なのか。
/; ,' 3「実在……したのか……」
力が抜け、地面に座り込む。うなだれ、勢いを失った儂を見て、モララーは刀を鞘に収めた。
でぃがホッと息をつく音が聞こえる。視線は地面に落としたまま、ポツリと呟く。
/ 3「何故だ……何故貴様は救われたんだ」
(;#゚;;-゚)「……」
/ 3「貴様は死んだ。だというのに、神に救われた」
( ・∀・)「……何が言いたい」
/ 3「神様が……モララー様が存在するのなら……」
/ 3「なぜ、なぜ、ペニサスのことを救ってはくれなかったんだ……!」
.
-
154 名前: ◆MiP3CC60hw[] 投稿日:2017/08/26(土) 23:26:03 ID:.Uw5vVOg0
-
(;・∀・)「……ペニサス」
(;#゚;;-゚)「……知ってるの?」
(;・∀・)「……覚えてる。何十年か前に、毎日来てた人だ」
/#,' 3「覚えているのなら、知っているだろう! ペニサスは体が弱くて、病を患っていたことを!」
(;・∀・)「……ああ」
/#,' 3「それでも……、それでも、毎日貴様のところに祈りに行っていた!」
/# 3「救いを求めて、毎日、毎日、毎日……! それなのにペニサスは死んだ!!」
/ 3「……ペニサスは、貴様のことを信じていたはずだ。
なのに、貴様はペニサスを裏切った」
(;・∀・)「……荒巻」
/ 3「それ以来、神などいないと思っていた。なのに、貴様は、神は存在した」
/ 3「なぜ、貴様はペニサスを見殺しにしたんだ」
(;・∀・)「荒巻!」
/ 3「信じる者は救われるのではないのか」
(#・∀・)「荒巻! 聞け!」
/ 3「……」
-
155 名前: ◆MiP3CC60hw[] 投稿日:2017/08/26(土) 23:26:57 ID:.Uw5vVOg0
-
( ・∀・)「『信じる者は救われる』」
/ 3「……虚言を」
( ・∀・)「いいから聞け。お前はこの言葉の意味を誤解している」
/ 3「何が誤解だ。屁理屈など聞きたくない」
(#゚;;-゚)「……荒巻さん」
/ 3「……なんだ」
(#゚;;-゚)「モララーの話、ちゃんと聞いてあげてください。きっと、本当に誤解です」
/ ,' 3「……」
( ・∀・)「いいか、神に人間の生死を司る力などない」
( ・∀・)「厳密に言えば殺すことなら不可能ではない。だけど、死ぬ人間を生かすことは不可能だ」
/ ,' 3「……殺すことが可能なら、貴様がペニサスを殺したのではないか」
( ・∀・)「僕はそんなことしない」
/ ,' 3「……どうだか」
(#゚;;-゚)「モララーは絶対に殺したりなんかしません」
/ ,' 3「なんだ、神に毒されたか? でぃ」
(#゚;;-゚)「モララーは人間に干渉しないっていうこだわりがある」
(#゚;;-゚)「それは、モララーが優しいから。人間には人間の世界があるから自分が出しゃばるべきではないって」
/ ,' 3「……」
(#゚;;-゚)「モララーはすごく優しいの。付き合いが長い他の神様たちだってそう言ってる」
(#゚;;-゚)「だから、モララーのことを信じてください」
/ ,' 3「……」
-
156 名前: ◆MiP3CC60hw[] 投稿日:2017/08/26(土) 23:27:37 ID:.Uw5vVOg0
-
( ・∀・)「とにかく、ペニサスの死は僕でも止めようはなかった」
( ・∀・)「『信じる者は救われる』っていうのは、『命が救われる』という意味ではないんだ」
/ ,' 3「……」
( ・∀・)「ペニサスが毎日何を祈っていたのか知っているか?」
/ ,' 3「……自身の病気の回復ではないのか」
( ・∀・)「『旦那が、これからも健康に生きられますように』」
/ ,' 3「……!」
( ・∀・)「毎日毎日、ここに足を運んでは、同じことを祈っていたよ」
/ 3「……ペニサス……」
( ・∀・)「ペニサスは、お前の健康を祈りに来ることが、心の支えになっていた。
もっとも、一番の支えはお前の存在だったのだろうけど」
/ 3「……」
( ・∀・)「『信じる者は救われる』っていうのはね」
( ・∀・)「信じることで、心が救われるって意味なんだよ」
.
-
157 名前: ◆MiP3CC60hw[] 投稿日:2017/08/26(土) 23:28:18 ID:.Uw5vVOg0
-
( ・∀・)「なあ、荒巻。ペニサスは本当に救われなかったのかな」
/ 3「……もういい」
/ 3「もういい、もういいんだ。もう、分かった……」
.
-
158 名前: ◆MiP3CC60hw[] 投稿日:2017/08/26(土) 23:29:12 ID:.Uw5vVOg0
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/ 3「お主は……モララー様は、ペニサスを救ってくれていたのだな……」
( ・∀・)「さっきも言ったけどペニサスの一番の支えになっていたのは荒巻、お前だ」
( ・∀・)「ペニサスを救ったのは僕ではなく、お前なんだ。だから……」
( ・∀・)「もう自分を責めるのはやめろ。お前は救われていいんだ」
/ 3「……!」
(;・∀・)「……でぃ、荒巻は救われてもいい?」
(#゚;;-゚)「? なんでわたしに訊くの?」
(;・∀・)「だって、でぃは荒巻に色々と……。さっきだって首絞められたし……」
(#゚;;-゚)「……いいよ」
/ 3「……」
(#゚;;-゚)「荒巻さん、いつもわたしのこと責めてたけど、なんだか自分自身を責めてるように見えてた」
/ 3「でぃ……」
(#゚;;-゚)「ずっと、辛かったんでしょう? もう楽になっていいと思う」
/ 3「すまなかった、でぃ……本当に、申し訳ないことをした……」
(#゚;;-゚)「気にしないでください。
今、モララーや他の神様たちと過ごす時間がすごく楽しいから」
/ 3「モララー様も、申し訳ありませんでした……」
( ・∀・)「いいよ。僕こそ悪かった。こんな事態になるまで何もしなかった」
/; ,' 3「そんな、謝らないでください」
(*#゚;;-゚)「……ね、モララーはすごく優しい神様でしょう?」
/ ,' 3「……ああ、そうだな」
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159 名前: ◆MiP3CC60hw[] 投稿日:2017/08/26(土) 23:30:00 ID:.Uw5vVOg0
-
( ´∀`)「……」
( ´∀`)(本当に、優しすぎるモナ。モララーもでぃも甘いモナ。まったく……)
( ´∀`)(自分にされたこと考えろモナ。許さなくったって構わないくらいのことをされてるのに)
( ´∀`)(……でも、その優しさがいいところモナね)
( ´∀`)「いい神様モナ。モララーも……でぃも」
-
160 名前: ◆MiP3CC60hw[] 投稿日:2017/08/26(土) 23:31:06 ID:.Uw5vVOg0
-
(;*゚−゚)「あーもう! 人数が多いわね! ねぇギコくん、手当たり次第はっ倒していい?」
(;,゚Д゚)「ダメだ! 死人が出る!」
(;*゚−゚)「そうは言っても、ずっと守りに徹してたって埒があかないわ!」
(;,゚Д゚)「それはそうだが……」
/ ,' 3「お前たち」
(;^ω^)「そ、村長!?」
(;*゚−゚)「えっ、村長の荒巻? 見ないなとは思ってたけど……」
(;,゚Д゚)「今、本殿の方から来なかったか!?」
/ 3「すまなかった」ガバッ
(;^ω^)「ちょ、村長!? 何急に土下座して……!?」
/ 3「儂の、身勝手な八つ当たりに付き合わせてしまった。本当に、申し訳ない」
(;^ω^)「村長……神社の取り壊しは……」
/ 3「もうやめよう。そんなことをする必要はない」
(;^ω^)「で、でも……これ以上、騙される人が出ないようにと……」
/ 3「モララー様は、存在した」
(;^ω^)「えっ……?」
/ 3「儂が間違っていたんだ。
頼む、儂の間違いを終わりにさせてくれ。神社の取り壊しをやめて帰ろう」
(;^ω^)「……」
( -ω-)=3
( ^ω^)「顔を上げてくださいお、村長」
/ ,' 3「……」
-
161 名前: ◆MiP3CC60hw[] 投稿日:2017/08/26(土) 23:31:47 ID:.Uw5vVOg0
-
( ^ω^)「……頭に血が上っちゃってましたお。ツンを失った悲しみを、怒りを、モララー様にぶつけちゃってましたお」
( ^ω^)「冷静になってみると、今まで信仰してきた神様に怒りを向けるだなんて、どうかしてましたお」
( ^ω^)「……モララー様に謝って、帰りましょうお」
/ ,' 3「……!」
( ^ω^)「他の皆も、それでいいかお?」
(’e’)「ぶっちゃけ、あの二人が強すぎて心折れてたんで……」
(´・_ゝ・`)「分かる」
<ヽ`∀´>「ほんとそれニダ」
(;^ω^)「……」
(,,*゚Д゚)+
(’e’)「特に女の人が強かった」
(´・_ゝ・`)「分かる」
<ヽ`∀´>「それニダ」
(;,゚Д゚)「えぇ……」
(*゚ー゚) フッ
(;,゚Д゚)「今、鼻で笑ったな!?」
-
162 名前: ◆MiP3CC60hw[] 投稿日:2017/08/26(土) 23:32:51 ID:.Uw5vVOg0
-
(;#゚;;-゚)「解決……したんだよね……?」
( ・∀・)「うん。そうみたい」
(*#;;;-;)「良かった……」
( ・∀・)「ありがとね、でぃ。僕のために頑張ってくれて。首、大丈夫?」
(*#;;;-;)「うん、平気。わたしのこと助けてくれてありがとう。
モララーは人間に干渉しないって決めてるのに……それに、体、辛かったはずなのに……」
( ・∀・)「……それなんだけどさ」
(#;;;-;)「えっ?」
( ・∀・)「でぃを助けるとき、重かった体が急に軽くなったんだ。それまで辛かったのが嘘みたいに」
(#;;;-;)「なんで……」
( ・∀・)「きっと、でぃを助けたいって気持ちが体を軽くしたんだと思う」
(*#;;;-;)「モララー……!」
( ´∀`)「はいざんねーん!!」
( ・∀・)
(#;;;-;)
(;・∀・)「モ、モナー!?」
( ´∀`)「モナモナモナ」
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163 名前: ◆MiP3CC60hw[] 投稿日:2017/08/26(土) 23:33:47 ID:.Uw5vVOg0
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(;・∀・)「なんだよ、残念って!」
(;#゚;;-゚)「ていうか、モナーさん今までどこにいたんですか?」
( ´∀`)「言ったモナよ、柱を守るのはでぃたち。そして柱を直すのはモナがやるって」
( ´∀`)「モナは別の村に行って、モララーを布教してきたモナ」
(;・∀・)「……は?」
( ´∀`)「モナの芝里合村とか、それ以外の村の人にも。
新しい信者を作るのが一番手っ取り早いかなって。これから村の外からの参拝者が増えるモナよ」
(;#゚;;-゚)「そ、そんなのアリなんですか……?」
(;・∀・)「お前の人脈と手腕どうなってんだよ……」
( ´∀`)「モナはすごい神様だから」
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164 名前: ◆MiP3CC60hw[] 投稿日:2017/08/26(土) 23:34:42 ID:.Uw5vVOg0
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(;・∀・)「で、それがどう関係するんだよ。でぃを助けたときに体が軽くなったことと」
( ´∀`)「体が軽くなったのは、モナの布教で信仰が増えたからモナ」
(;・∀・)「……なんかこう、気持ち的なアレじゃなくて?」
( ´∀`)「気持ち的なアレじゃないモナ」
(;・∀・)「えぇー……すっげぇ台無しじゃん……」
( ´∀`)+「きっと、でぃを助けたいって気持ちが体を軽くしたんだと思う」キリッ
(;*・∀・)「やめろ!!!!」
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165 名前: ◆MiP3CC60hw[] 投稿日:2017/08/26(土) 23:35:27 ID:.Uw5vVOg0
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(#゚;;-゚)「……あ、そういえば……」
( ・∀・)「ん?」
(#゚;;-゚)「荒巻さんが言ってたの。『フィレンクトの言う通り、でぃが化けて出た』とかって……」
(;・∀・)「化けて出た……って、もしかして祭りの時にフィレンクトに見られてたってこと!?」
(#゚;;-゚)「そうとしか思えないよね……」
(;・∀・)「えー……幽霊のでぃが見えたってことは、フィレンクト霊感あったのか……」
( ´∀`)「でぃちゃんは幽霊じゃないモナよ?」
( ・∀・)
(#゚;;-゚)
(;・∀・)「……えっ?」
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166 名前: ◆MiP3CC60hw[] 投稿日:2017/08/26(土) 23:36:13 ID:.Uw5vVOg0
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( ´∀`)「見抜けないとは、モララーはまだまだモナね」
(;・∀・)「じゃあ、でぃはなんなんだよ!?」
( ´∀`)「人神モナ」
(;#゚;;-゚)「人神って……モナーさんと同じ?」
( ´∀`)「そうモナ」
(;・∀・)「お前……気づいてたならなんで言わなかったんだよ」
( ´∀`)「だって訊かれなかったし……」
(;・∀・)「主体性ゼロかよ……」
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167 名前: ◆MiP3CC60hw[] 投稿日:2017/08/26(土) 23:37:00 ID:.Uw5vVOg0
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( ´∀`)「お祭りの時に姿を見られたのは、多分無意識で人間干渉モードを使っちゃったんだと思うモナ
人神になりたての頃って力の制御が難しいから」
(;#゚;;-゚)「え……全然気づかなかった……」
( ´∀`)「人神は二種類あるって言ったの覚えてるモナ?
生前の功績を称えられて祀られるのと、祟りを恐れて祀られるのと」
(;#゚;;-゚)「はい、覚えてます」
( ´∀`)「でぃちゃんは後者モナね。スイカ割りしたときに見た祠にでぃちゃんは祀られてるモナ」
(;#゚;;-゚)「えっ」
(;・∀・)「じゃあ、でぃがあの祠を気に入っていたのって……」
( ´∀`)「自分の家ってのは落ち着くものモナ」
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168 名前: ◆MiP3CC60hw[] 投稿日:2017/08/26(土) 23:37:42 ID:.Uw5vVOg0
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(;#゚;;-゚)「でも、誰がわたしを祀ったんだろう……」
( ・∀・)「……フィレンクトじゃないかな」
(#゚;;-゚)「フィレンクトさんが?」
( ・∀・)「でぃを生贄として僕に捧げるっていうのは、荒巻以外にフィレンクトしか知らなかったはずだから。
性格的にも納得できるし……」
(#゚;;-゚)「そっか……フィレンクトさんが……」
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169 名前: ◆MiP3CC60hw[] 投稿日:2017/08/26(土) 23:39:15 ID:.Uw5vVOg0
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( ´∀`)「いやー、モララーとでぃでダブル神様モナね」
(;・∀・)「驚いたよ……」
(;#゚;;-゚)「前にボケで自分のこと神様って言ったけど、本当にわたしも神様だったなんて……」
( ´∀`)「なんなら、祠を本殿の近くにでも移動させたらどうモナ?」
( ・∀・)「あ、それいいね」
( ´∀`)「おにロリダブル神様!って感じで売ってくといいモナ」
(;・∀・)「やだなその手口……」
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170 名前: ◆MiP3CC60hw[] 投稿日:2017/08/26(土) 23:40:43 ID:.Uw5vVOg0
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(*゚ー゚)ノ「モララー、でぃちゃーん!」
(,,゚Д゚)ノ「おーい!」
( ・∀・)「あっ、ギコとしぃ」
(,,゚Д゚)「解決したことだし、モナーの神社でゲーム大会でもしようぜ!」
( ´∀`)「ちょっと待って、モナの許可もなしにそんな」
(*゚ー゚)「モナーさんの神社まで競争よ!」
( ´∀`)「ちょっと、ねぇ」
三(*゚ー゚)「よーいドン!」ダッ
三(,,゚Д゚)「最下位だった奴は見学だぞ!」ダッ
三(;´∀`)「あーもう! 仕方ないモナね!」ダッ
( ・∀・)「まったく、あいつらは……」
(*#゚;;-゚)「ね、モララー、わたしたちも行こう?」
( ・∀・)「そうだね。モナーなら多分抜かせるぞ。ジジイだから」
( ・∀・)っ「さ、行こうか」
(*#゚;;-゚)
(*#^;;-^)っ「うん!」
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171 名前: ◆MiP3CC60hw[] 投稿日:2017/08/26(土) 23:41:16 ID:.Uw5vVOg0
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( ・∀・)神様と(#゚;;-゚)生贄のようです
了
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