('A`)人生は選択だ!のようです
第3話



73 名前: ◆tDN4QF.obM[sage] 投稿日:2013/06/09(日) 13:12:34 ID:LNtDV8Xo0
【1】

俺の前に突然現れたかと思うと、意味不明なことを話すデブのオッサン
あまりの意味不明、電波な話につい口が半開きになる、つーかなんで仁王立ちなんだオッサン


( ^ω^)「あーそうそう……君さぁ、そのカード返してくれるかな?」


オッサンは先ほどまでカードを炙っていた灰皿を指さす
おかしい、さっき細かく破いたはずなのにいつの間にかカードが傷一つなく元通りになっている

だが、これで俺に『無難』な日常が戻ってくると分かったので、ほっとして5枚のカードを返す


( ^ω^)「……」


何故かオッサンはカードを受け取っても何も言わない、それどころか顔はだんだんと青ざめていくようだ


(;^ω^)「……君さ、もしかして……体験した?」

('A`)「何を?」

(;^ω^)「ほら、アレだよ、……『世界が変わる感覚』ってやつ?」

('A`)「あー、うん二回ほど」

(;゚ω゚)「なっ!」

74 名前: ◆tDN4QF.obM[sage] 投稿日:2013/06/09(日) 13:13:15 ID:LNtDV8Xo0


「なんだってえええぇぇ!!?」


∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵



        ('A`)人生は選択だ!のようです 第3話



∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵

75 名前: ◆tDN4QF.obM[sage] 投稿日:2013/06/09(日) 13:13:55 ID:LNtDV8Xo0
【2】

( ;ω;)

(;'A`)


なんか大声を出したかと思うと、めそめそと泣き出すオッサン
とりあえず気まずいのでさっき工場長から貰った缶コーヒーをオッサンの前に差し出す

オッサンは泣き声で「ありがとう」というと、缶を開けて一気に飲み干す


( ^ω^)「……ふぅ、落ち着いたお」

( ^ω^)「紹介が遅れたお、僕は『神様』の使いをやってる『天使』、ブーンだお」


落ち着いたかと思うと、再び電波な話を始めるオッサン、もといブーン
驚いた、『天使』ってもっと可愛い女の子がやってるもんだと思っていたがこんなオッサンもなれるんだな

俺の名前を聞かれたのでドクオであること、ここの近くにある工場で勤めていることなどを自己紹介する


( ^ω^)「ふむ、僕の事や神様の事は後で話すとして……今ドクオが置かれている状況について話すお」


ブーンは目を伏せてから軽い深呼吸をして、俺に満面の笑みで向き直る


( ^ω^)「おめでとう! ドクオ くんは しゅじんこうに レベルアップした! ▼」

('A`)「……」

(;^ω^)「ちょ、ちょっと、無言で灰皿をもって振りかぶろうとするのは危ない!」

76 名前: ◆tDN4QF.obM[sage] 投稿日:2013/06/09(日) 13:14:57 ID:LNtDV8Xo0

('A`)「……で?俺が主人公になったとはどういうことだよオイ」ブン

( ゚ω゚)「そのままの意味だお、って振りかぶった!!」


ブーンは間一髪俺の攻撃を避けると、落ち着いてと言わんばかりのジェスチャーをする
ぶん殴っても何も変わらないだろうし灰皿を手元に置き、とりあえずブーンの説明を聞くことにする


(;^ω^)「はぁ、全く気性が荒いおドクオさんは……」

( ^ω^)「いいかお?もともとこのカードは死後の罪人同士を戦わせる、
      天界で一番白熱するカードバトル『ソーサク血戦』のカードなんだお」

('A`)「おいそれじゃ天界、つか天国ってそんな物騒なのかよ」

( ^ω^)「いつまでもほのぼのしていられるほど天界も阿呆じゃないお、下手すりゃ地獄より血気盛んだし」


昨日や今日の件で早々天国には行けないんじゃないかと思っていたが、話を聞いたら死ぬのが怖くなってきた
ため息をついているうちにブーンは話を続ける

77 名前: ◆tDN4QF.obM[sage] 投稿日:2013/06/09(日) 13:16:18 ID:LNtDV8Xo0

( ^ω^)「本来これは血気盛んな『罪人』に使用して、
      攻守ともに敢えて『手段』を制限することで戦略性を上げる役割を果たしているんだお」

( ^ω^)「当然、戦うためには動かなきゃいけない……
      血戦の組み合わせ次第では万引き犯VS万引き犯ていう動かない典型的な組み合わせだってよくあるお」

( ^ω^)「だから、『身の回りで波風を立たせる』。
      ……血戦中ならヤジが飛ばされるとか、酷いと親を殺したという嘘の記憶が盛られることだってあるお」

( ^ω^)「ドクオは世界が変わったその二回ともに、何かあったんじゃないかお?」


たしかに世界が変わるその前に、俺はトラブルに巻き込まれていた
おそらく人生で経験することがないであろうトラブルや、あっても何もしそうにないことなんかも


( ^ω^)「よくある典型的な主人公は、『普段なら見過ごす、ありえない』トラブルに巻き込まれる。
      ……そのカードには、そんな効果があるんだお」

( ^ω^)「そのカードを、『罪人』でもない、ましてや僕たち天界の人間でもない『人間』が使ったら」

(;'A`)「……今まで過ごしてきたような日常が、『平凡』な毎日が送れなくなるのか……」ハァ

( ^ω^)「……」


正直この話は心に堪えるものがある
俺はテーブルに手をついてうなだれる、もう静かには暮らせないんだな

ブーンはそんな俺の様子を黙って見ていた

78 名前: ◆tDN4QF.obM[sage] 投稿日:2013/06/09(日) 13:17:35 ID:LNtDV8Xo0

そういえば、と俺は顔を上げてなぜカードが返せないのかブーンに問いただす
ブーンは何か気付いたような顔をすると、「そのことなんだけど」と再び話し出した


(;^ω^)「どうやら僕より上の存在……『神様』が、そのカードを使っちゃったみたいなんだお」


ブーンの話によると、プリントされたカードの柄で『天使』が使ったか『神様』が使ったか分かるらしい
『天使』が選んだ罪人には『青いチェック柄』に、『神様』が選んだ罪人には『赤いチェック柄』に変化するようだ


( ^ω^)「本人は『自分で選んでる』と錯覚する時もあるみたいだけど、
      実際は僕たち『天使』や『神様』がその『手段』を選んで行動させる……その『選択』は絶対だお」

( ^ω^)「そして一度使用したら、その人が『ソーサク血戦』で優勝するか……死ぬまで『手段』の選択を迫られる」


ビロードと謝罪したあの時、俺が『説得』を選べなかったのはそのためか
しかしどんな神様が俺にその選択を選ばせたのかをブーンに質問すると、彼は困った顔をする


  _,
(;^ω^)「どんな神様が、と言われても……神様と言っても多種多様な神様がいるんだお?
      その内の一人がたまたまカードを拾ったドクオを見つけて、面白そうだと使ったとしか……」


なるほど、その神様は『面白そうだ』という安直な理由で使ったのか、実にクソッタレな神様だ
多分どこかで見ているんだろうが、今目の前に顔を出して来たらぶん殴ってやりたい

79 名前: ◆tDN4QF.obM[sage] 投稿日:2013/06/09(日) 13:18:53 ID:LNtDV8Xo0

( ^ω^)「もしその『選択』ばかりの人生から逃れたいのなら、一つだけ方法があるお」

('A`)「『ソーサク血戦で優勝する』……だろ」

(;^ω^)「お……そうだお」


さっきブーンが言っていた言葉の中に入っていたからすんなりと答えてやる
正直死にたいと思うことは多々あるが、自殺する気はさらさら無いので死ぬのは論外だ


('A`)「でもそのソーサク血戦って戦わなきゃいけないんだろ?……人なんか殺せないぞ俺」

( ^ω^)「戦いはするけど自らの手で殺すことはないお?
      いろんな戦う方法があって、それで相手を負けさせることが重要なんだから」


ブーンによると、対戦相手次第では頭脳戦だったりただの鬼ごっこになることもあるらしい
その中でもいちばん盛り上がるのが戦闘のようだ

さらに罪が軽い等、不利であればあるほど自分でその対戦方法を選ぶことが出来る事が多く、
現世を生きている『人間』、つまり俺が大会に参加すればほぼ全試合の対戦方法を選べるという

80 名前: ◆tDN4QF.obM[sage] 投稿日:2013/06/09(日) 13:19:45 ID:LNtDV8Xo0

( ^ω^)「で、どうするおドクオ君?損はないと思うけどねー」


ブーンがニコニコ笑いながら俺にどうするのか聞いてくる。
ほぼ全試合を簡単な対戦方式にすれば、罪人相手でも優勝することだって可能だ。


('A`)「でも、俺マンドクセぇの嫌いなんだよな……このカード持っててもマンドクセぇけど」ハァ

( ^ω^)「お、でも君を選んだ『神様』は参加するかどうか『選択』してほしそうだお?」

('A`)「……あれ?」


気付くと世界がモノクロになっている。つーかなんでその世界で普通に喋ってるんだ
ブーン曰く「天界の人間にはこの世界は関係ないお」、らしい。

ブーンが手元に寄せていた俺のカードと手渡してきたので見てみると、



 【参加】 【参戦】 【検討】 【不参戦】 【不参加】



(;'A`)「……同じ意味のあるやつが2つあるように見えるんだけど」

( ^ω^)「事実上参加するか?しないか?それとも時間がいるか?の3択だおね」

81 名前: ◆tDN4QF.obM[sage] 投稿日:2013/06/09(日) 13:20:48 ID:LNtDV8Xo0

('A`)「……まぁどちらにせよ、俺には選べないんだ」


いや、結局手を伸ばして引き抜くのは俺になるんだが細かいことはどうでもいいさ。

姿も名前も知らない『神様』がどう答えを出してくるかは知らないが、


('A`)「とりあえずこの5つから、選んで行きますかー」


to be >>83

83 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/06/09(日) 13:23:00 ID:xxQbaxF.0
不参戦

90 名前: ◆tDN4QF.obM[sage] 投稿日:2013/06/10(月) 02:28:43 ID:rH.F8I/I0
【3】>>不参戦

('A`)「……」

(;^ω^)「……」


世界が元に戻っていく
俺が手を伸ばした先、それは『不参戦』のカードだった

ブーンはただ俺の選択したカードを見つめ、そして俺へと視線を合わせる
目を合わせてから、俺は少しだけ笑顔を見せる


('∀`)「……大丈夫だよブーンさん、俺は正直な気持ちで選んだんだ……
    それにこのカードは何が選ばれるか分からない、優勝なんて出来っこないんだ」

(;^ω^)「で、でも……」

('A`)「カードを勝手に使ったことは謝るよ……でもこんな平々凡々な日々を歩んできた
    俺に刺激的な毎日が送られるようになって、俺はとても感謝しているんだ」

(;^ω^)「……それが君の、本心かお……
      本当の君の心は、どう思ってるんだお……!」

('A`)「残念ながらこれが本心だよ、ブーンさん
    『天使』はそんな簡単なことも分からないのか?なら一度『人間』になってみたらどうだ?」

91 名前: ◆tDN4QF.obM[sage] 投稿日:2013/06/10(月) 02:29:25 ID:rH.F8I/I0

俺は素直に思っていることをブーンに伝える
ブーンの表情がその言葉を聞くたびに曇っていくのが俺みたいなものでもよく分かった

やがてブーンは立ち上がったかと思うと、哀しい目をして俺を見る


( ^ω^)「……今日は帰らせてもらうお、気が変わることがあったらまた来るお」

('A`)「気なんて変わらないから早く帰れよマンドクセ」ハァ


見送りはしなかった、ただ黙って帰るブーンの後姿を見ることしかできなかった


('A`)「……ゴメン、ブーンさん」


玄関のドアが閉まるか閉まらないか、それくらいの時に聞こえないようにブーンに謝る
扉が閉まった後には、途方に暮れた俺と遠くで響く電車の走る音しか聞こえなかった

92 名前: ◆tDN4QF.obM[sage] 投稿日:2013/06/10(月) 02:30:06 ID:rH.F8I/I0

('A`)「……」


布団も敷かずに仰向けになり天井を見つめている俺は、ふと物思いにふけっていた

『本当の俺の本心』はどこにあるのだろう

子どもの頃はなんにでもなれると思っていた
大人になるにつれて夢を現実に押しつぶされることが多くなり、気づけば『無難』な生き方を望んでいた


『本当の俺の本心』はどこにあるのだろう
俺はもう一度考える

こんなカードでいとも簡単に本心が作り出されるという現実に落ち込んでいるが、
そもそも俺にはそのカードの意思を捻じ曲げてまで叶えたい思いや出来事があっただろうか


('A`)「……このカードの『意思』を捻じ曲げたその先には、俺の本心が待ってるんだろうか……」

93 名前: ◆tDN4QF.obM[sage] 投稿日:2013/06/10(月) 02:30:47 ID:rH.F8I/I0





( A )「……」

94 名前: ◆tDN4QF.obM[sage] 投稿日:2013/06/10(月) 02:31:27 ID:rH.F8I/I0
【4】

「今日をもって、会社を辞めるだぁ!?」


翌日、俺は工場長の前に立ち、辞表を提出していた。

工場長は驚きを隠せない様子で辞表と俺の顔を交互に見ながら、明らかに動揺した声で答える。


('A`)「はい、ビロードには適当な人材を充てておいてください」

「ンなこと言ってもお前、昨日の今日で辞めるとはどういう風の吹き、ま、わし……だ……」


世界がモノクロに変わり、工場長と俺だけが色づく。
手元には、5枚のカードが文字を浮かばせて輝いている。




 【謝罪】 【無視】 【弁明】 【虚言】 【抗弁】




('A`)「……>>98」

98 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/06/10(月) 08:17:32 ID:wd6uWs9g0
抗弁

99 名前: ◆tDN4QF.obM[sage] 投稿日:2013/06/10(月) 12:29:15 ID:rH.F8I/I0
>>抗弁

('A`)「……うんざりなんですよ」

「なんだと?」

('A`)「ビロードの件についても、俺はあんたを止めるためにやったんだ
    もう工場長に振り回されるのはゴメンなんですよ」

('A`)「それとバイトに弁償させるのはどうかと思いますよ?その気になれば訴えることもできますし」


次々と会社に対して文句が浮かび上がり、それを次々と口にする
言葉に出すたびに会社への不満が溜まり、本当にこの会社が嫌な会社だったような、
ではなく、嫌な会社だと再認識させられる


「……もう、いい!!その顔二度と見せるなよ!!
 辞めるからにはこの工場の事は外に出たら何も話すな!分かったか!?」

('A`)「はい分かりました、今までありがとうございました」


一礼をしてから、工場長がいる部屋を後にする
……工場長、俺はこのカードで迷惑を掛けたくないから辞めるんだ

工場のみんな……元気でやれよ


(;゚∀゚)「……ドクオ……お前どうしちまったんだ……?」

100 名前: ◆tDN4QF.obM[sage] 投稿日:2013/06/10(月) 12:29:55 ID:rH.F8I/I0

家に帰ってから俺はテーブルにカードを広げ、一人呟く


('A`)「……俺には心から『自分で変えたい』と思ったことがなかった」

('A`)「めんどくさいだけだし、何より『平凡』に生きたかったからな」

(#'A`)「なぁ、顔を見せないクソッタレな『神様』よぉ」

(#'A゚)「もうめんどくさいなんて俺は言わねぇ!俺はいつかテメェの『選択』を捻じ曲げてやる!」

(#'A゚)「誰かに選ばれる人生なんかまっぴらごめんだ!俺は俺の選ぶ人生にしてやる!」


俺がカードに向かって叫ぶと、カードは俺を馬鹿にするように選択が浮かび上がる




 【無理】 【無謀】 【無意味】 【不可能】 【無駄】




(#'A゚)「……っ!!」

「この……クソカードがああああああああああ!!!!」



第3話 「抗えない選択と足掻こうとする男」 続く



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