( ´_ゝ`)時間を司るようです(´<_` )
第1話「始」



2 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/02(土) 16:38:29 ID:tbKo1Qf20
 
 

 
 
すべてはもう、ずっと前から始まってた、なんて。

3 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/02(土) 16:40:05 ID:tbKo1Qf20
 
二人で過ごすには大きすぎる一軒家の、二階に弟者の部屋はある。階段を登ってすぐの、茶色い木の温かみがある扉。

それの向こう側に真っ赤な景色があるなんて、いったい誰が想像したのだろう。

( ´_ゝ`)「……弟、者……?」

返事なんてありはしなかった。

ただ、部屋の中央に転がった乾いた血溜りの中に、弟者のネックレスがあるというだけで。

兄者は膝から崩れ落ちた。

4 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/02(土) 16:42:55 ID:tbKo1Qf20
 
 
 
『――続いて、次のニュースをお伝えします。本日より首相が――』
 
( ´_ゝ`)「……クソッタレ」
 
兄者はそう言うとテレビの電源を落とした。
 
弟者が血まみれの部屋とネックレスを残して消えた日から一週間。
行方不明となった兄弟の弟の情報を求める報道など、少なくなっていくのが当然だった。
 
初日なんかはもう酷かった。家の外にマスコミと野次馬が集結し、買い物にも行けずカーテンを全て閉めて外界から自分を遮断した。
 
マスゴミめ、と毒づいた自分は悪くない、と兄者は思う。

5 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/02(土) 16:44:56 ID:tbKo1Qf20
( ´_ゝ`)(しかし、まあ……減ったな)

数えるのも嫌になるくらいだった人の量も、今では片手で足りるくらいだろう。家の前にはいるが、無言で去れば追いかけるのをやめるくらいになった。

( ´_ゝ`)「弟者……」

6 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/02(土) 16:46:29 ID:tbKo1Qf20
部屋に広がっていた血が弟のものだとすれば、あれは致死量だ。
部屋の中心から、壁にまで飛び散った血飛沫の跡。そして割れた窓ガラス。
 
いくら階が違うとはいえ、全く気が付かなかった自分を殴りたい。
兄者は後悔に拳を握り、それをソファに叩き付けるとクッションを抱え込んで横になった。
 
夕飯を作っていない。ああ、二人分作る癖がどうしても抜けない。
もう、帰ってこないかもしれないのに。

広すぎる部屋に、弟の骨壺を置いた風景を想像するのが怖くて。
兄者は思考に蓋をするように眠りについた。

7 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/02(土) 16:48:42 ID:tbKo1Qf20
 
 
 
 
 
( ・∀・)「や、こんばんは」

( ´_ゝ`)「……は?」

目の前に、胡散臭い笑みを貼りつけた男がいた。

( ・∀・)「不法侵入してしまってすまないね。でも、まあ緊急事態だから許してくれないかな」

( ´_ゝ`)「……誰だ、あんた」

( ・∀・)「僕はモララー、モララーだよ。ねえ」

8 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/02(土) 16:50:58 ID:tbKo1Qf20
 
( ・∀・)「あんたの弟、救う方法があるって言ったら、信じる?」

( ;´_ゝ`)「――え、」
(    )「おや、先を越されてた」

瞠目する兄者の後ろから、また別の声が落ちてきた。
唐突なそれに驚いて振り返った先には、

(´・ω・`)「君、死んでくれないかなあ」

真っ黒な、銃口があった。

9 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/02(土) 16:53:31 ID:tbKo1Qf20
( ;´_ゝ`)「――ッ!」

衝撃を覚悟して目を瞑った。が、衝撃は襲ってこず、代わりに鼓膜が破れそうな破裂音と体に浮遊感が走った。
閉じていた瞳を開ければ、兄者は床に尻餅をついていた。自分が座っていたソファを挟んで相対するモララーと男の姿がある。
モララーの肩からは血が流れていた。

( ;´_ゝ`)「……あんた、」

( ・∀・)「舌噛まないで、よッ!」

10 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/02(土) 16:55:40 ID:tbKo1Qf20
モララーは言うと兄者の手を掴んで引っ張り起こし、リビングから廊下に出る扉に突き飛ばした。
元から開いていた扉の向こうにまた倒れ込むと、その背を支えられた。

( ,,゚Д゚)「出るぞ、モララー!」

兄者を支えた青年が、鋭い声で叫ぶ。
モララーは男の短銃を持つ腕を蹴り上げると、兄者と青年の方へ駆けてくる。
 
 
 
男が落とした短銃を拾い上げた時、もうその家には男以外の人物は存在しなかった。

(´・ω・`)「……ちっ」

男は舌打ちすると、ソファを蹴った。

13 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/02(土) 17:04:48 ID:tbKo1Qf20
 
 
 
 
( ・∀・)「追ってはこなかったみたいだね」
 
( ,,゚Д゚)「元から本気じゃなかったんだろうな。連れて行けそうなら連れていく、みたいな感じだろ」
 
( ;´_ゝ`)「ッ、あんたら……」
 
兄者はまったく状況が掴めていなかった。
 
モララーが男の方からこちらの方へと走ってきた瞬間だ。
後ろの青年が持っていた「何か」から、青い光が突然漏れ出して、自分達を覆い始めた。
そして気が付けば知らない場所にいた。モララーはギリギリ間に合ったというところだ。
 
( ・∀・)「ああ、ごめんね。こいつはギコっていうんだ」
 
( ;´_ゝ`)「そうじゃなくて!」

14 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/02(土) 17:09:41 ID:tbKo1Qf20
窓からは真っ青な空が見える、どころではなく。むしろ下に雲と、そのまた下に小さくなった自分の街が見えている。
僅かに伝わる振動も加えれば、ここは――

( ・∀・)「ああ、ここ? 飛空艇の中だけど」

( ;´_ゝ`)「エスパーか!?」

( ・∀・)「いや、なんか言いたいこと顔に書いてあるから」

( ;´_ゝ`)「うそン!?」

( ,,゚Д゚)「いやそうじゃねえだろ」

15 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/02(土) 17:16:49 ID:tbKo1Qf20
そうだった、と兄者はギコの声で我に返る。

弟を救う方法。
襲ってきた男。
家の中にいたはずなのに、こうして一瞬で飛空艇の中にいること。

( ´_ゝ`)「あんた達、一体――」

( ・∀・)「……僕はモララー。こっちはギコ。で、君は流石兄者で合ってるね?」

なんで俺の名前、と聞き返したがったが、なんとなく聞くのは気が引けた。

モララーとギコが互いに視線を交わした後――頷くなり、兄者の前に跪いた。

16 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/02(土) 17:22:29 ID:tbKo1Qf20
( ´_ゝ`)「!? 何して――」
 
 
 
( ・∀・)「流石兄者殿。僕らの主人、過去を司る者よ」
 
 
 
言われていることが、理解できなかった。
 
 
 
( ,,゚Д゚)「我らはあなたをお守りする為に参上致しました」
 
 
 
 
 
第1話「始」・終



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