( ^ω^)剣と魔法と大五郎のようです

二十八話

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705 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/03/22(日) 17:57:10 ID:AYo.aGOM0

 アニジャは翼をさらに大きく広げた。
 体から発せられる光がさらに強まり、全身をめぐる魔力もより昂ってゆく。
 肌に感じる魔力の痺れが、先ほどまでとは比にならない。

o川*゚ー゚)o 「出し惜しみはやめるんだ?」

( ´_ゝ`) 「貴様もそうした方が良い」

o川*^ー^)o 「私はいつでも一生懸命だもの」

( ´_ゝ`) 「……」

 アニジャが剣を天に掲げる。
 空に未だ分厚く広がっていた雲に魔力が行き渡り、全体がアニジャと同じ青い光を帯びた。

( ´_ゝ`) 「“―――四元の一。生を抱き、死を洗う水霊界の軍勢に告ぐ”」

 鈍色の雲はまるで群れた大蛇の如く、煮えたぎる溶岩の如く、重苦しい音と共に蠢き始める。
 妨害を図ろうとした途端に、オトジャの狙撃を受け足を停められた。
 間に合わない。ならばせめてと、黒剣の純度を上げ、体を包む防御膜をより強力なものに張り替える。

( ´_ゝ`) 「“―――淀みなき勝利を我が手に納めろ”」

 雲の至る所から無数、陽光の漏れの如き鮮烈な光の柱が地面に立った。
 その一つ一つの中を雲から現れた何かが降りて来る。

706 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/03/22(日) 17:58:42 ID:AYo.aGOM0

( ´_ゝ`) 「“――――――― 千兵騎行のウンディーネ”」

 それは、水でできていた。
 アニジャと同じ青く輝く魔力に満ち、人の形を取っている。
 ただの水の人形では無い。剣を、槍を、鎚を、弓を、旗を持った水の精霊兵。

 数は裕に百を超えている。
 キュートの想像が、悪くも的中しているのならば、これら一体一体が今のアニジャと同等の戦力を持つ。

( ´_ゝ`) 「全軍、かかれ」

 旗を持つ唯一の一体が号令を掛けたと同時に、全ての精霊たちがキュートを強襲する。
 闇雲に群れて向かってくるのではない。
 弓を持つ者たちが矢を放ちキュートを牽制。
 その間に剣兵、槍兵が陣を組んで四方から迫る。

 統率の取れた動き。
 一体ずつでも相当厄介であるのに、これでは。

o川*゚ ,゚)o 「あらら……」

 水刃がキュートに振り下ろされる。
 魂を持たぬ水の人形にあるまじき憎悪と殺意。

 キュートの体が、左の肩口から縦に割れる。
 鮮血が吹き出し体が二つに分かれた。
 防御魔法など、嗤えるほどに意味が無い。

 しかし、想定内だ。想像以上の威力ではあったが、受けたのはあくまでわざと。
 斬りつけ来た水の精の背後に回り込む形で、キュートの身体は再生。
 同時に、炎熱を付加した黒刃で、十字に切り裂く。

 切り裂かれた水の精は爆発的に気化。消滅する。

708 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/03/22(日) 18:06:02 ID:AYo.aGOM0


 が、この一体を相手にした隙に、背中から胸へ水の矢が貫通した。
 振り返ろうして、同時に水の鎚で脇腹を払われる。
 吹き飛ばされればそれでもよかったが、高速かつ高密度の鎚の先端は、その場でキュートの体を抉り砕いた。

 飛散する自分の血肉を見ながら、キュートは手を翳す。
 既に、別の精霊兵が目の前だ。
 そいつを炎熱の魔法で吹き飛ばすも、その水蒸気の煙を抜けてさらに別の精霊が迫ってくる。

 体を再生しながら、応じるが、振るおうとした剣が手ごと宙を舞った。
 遠距離からの槍の投擲を受けたのだ。
 威力が高すぎて、刺さるのでは無く触れた部分が弾け散る。

 正面から来ていた精霊兵の槍が、喉を穿つ。
 口の中に血が満ちた。
 槍はそのまま横に滑り、キュートの頭を胴から切り落とす。

 分かれた胴と頭の両方に、直近の精霊兵たちが一切の無駄なく武器を叩き付ける。
 頭部はメイスにて粉砕。
 胴は数多もの矢と槍を受けて血と肉の飛沫となる。

 意識が途切れる寸前に、頭を砕かれる確かな感触があった。
 脳震盪のあの不快感が光の如き鮮明さで、繋がっていないはずの四肢までをも震わせる。

 精霊兵から距離を取り空の中心に再生したキュートの頬を、汗が伝う。
 いくらなんでも殺され過ぎだ。痛みの記憶があまりに短時間に積み重なったせいで、精神が参りかけている。

709 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/03/22(日) 18:07:24 ID:AYo.aGOM0

( ´_ゝ`) 「不死身とはつまり、無尽に殺されるということだ」

o川*;゚ー゚)o 「……そうね」

( ´_ゝ`) 「常人ならば一度で済むその苦しみ、何十回でも、何百でも、何千でも味あわせる」

 距離を取った、と言っても一呼吸の余裕すらも与えられはしない。
 精霊兵たちはすぐ隊列を組み、超音速の進撃を開始。
 青い光の尾を引いて迫るその箒星の如き光景は、この最中ですら美しいと思えた。

o川*; ー )o 「ホント、おっかないの育てちゃったし」

 先頭の精霊兵の槍が、キュートの腹へ。
 これを、すり抜けながら首を落とす。
 流れで、次に迫っていた一体の剣を受け、流し、回り込んで背を斬る。

 ここで、頭を飛来した槍に吹き飛ばされる。
 すぐに再生したが、その時点で精霊兵の軍勢はキュートを取り囲み、得物の切っ先は目前だ

o川*;゚ー゚)o 「敵に回しちゃったかなァ!」

 咄嗟に魔法で空間跳躍(テレポート)する。
 できれば使いたくなかった魔法だ。
 アニジャはこの魔法を知っている。故に、対策はされている。

710 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/03/22(日) 18:09:23 ID:AYo.aGOM0

 現れたその瞬間、キュートは周囲の確認などしている暇も無く腹に槍を受けた。
 空間跳躍が読まれたのだ。
 周囲に精霊兵を殺した際に散った魔力の残滓が濃く残り、
 それがチャフとなって跳躍先が制限され、レーダーとなって跳躍先を把握される。
 
 いっそのこと超長距離跳躍でやり過ごしてしまってもいいのだが、
 折角のイベントをスキップするというのはあまりにもったいないし、
 何より、大事な材料等が詰まった砦を置いてゆくことはできない。

 これは、兄弟を舐め腐って、貴重な物を移動しておかなかったキュートのミス。
 舌をちろっと出して笑顔でごまかしてみるけれど、油断した過去の自分を赦す気にはなれない。

 小ボケ一発かます間にも視界は青の精霊兵に埋め尽くされる。
 反射的に炎熱系の魔法を広範囲に放射してしまった。
 精霊兵たちは、赤い波動を受けてもほとんど揺るがない。

 魔法の威力が足りていないのだ。
 人間相手であれば骨も残さず焼き尽くす魔法ではあるが、相手が悪い。
 キュートとほぼ同格まで昇華されている精霊兵たちは、この程度ではぬるま湯にしかならない。

 精霊兵を倒すには、最低でも黒剣クラスの魔法が要る。
 そして、それらの魔法は、キュートであっても秒以上の展開を要してしまうのだ。

 再び体を死で塗りつぶされながら、キュートは笑った。
 困ったし、面倒だし、正直ちょっとイライラしてきたけど、だけれど。

o川* ー )o

 お行儀悪い、と自戒しながら唇に舌を這わせた。
 仕方ないのだ。サスガ兄弟と言う激流は、キュートにこべりついていた終りの見えない退屈を、確かに灌ぎ落としているのだから。

711 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/03/22(日) 18:13:05 ID:AYo.aGOM0

 空間跳躍と同じく、再生する位置も読まれている。
 だから、キュートは再生と同時に空間跳躍。
 ばれて反撃を受けるのを覚悟で、精霊兵の支配者であるアニジャを直接狙う。

 やはり、アニジャは即座に反応した。
 水の剣で現れたばかりのキュートを真一文字に薙ぎ払う。
 キュートはこれを黒剣にて受け止め、押し返す。

 予想通り精霊兵たちは術者本人が射線に入る攻撃を渋った。
 迫ってはいるが、投擲攻撃は無いだろう。
 その上精霊兵を管理するためアニジャは若干鈍く、墜すならば今が好機だ。

 アニジャに乱撃を打ちこもうとした途端、無数の閃光魔法が放たれた。
 弟の援護だ。キュートの口の端が吊り上がる。
 本当に、お兄ちゃんが危うくなるとつい手を出しちゃうのよね、あなたは。

 黒剣に注意を集中させていたアニジャの腹を蹴り、突き飛ばす。
 束の間、一人になったキュートはもう目前まで迫る閃光魔法の全てを見切った。

 射角に黒剣を合わせ、滑らせるように、流すように、誘うように、軌道を曲げる。
 これを閃光と同じ速さで、同じ回数。
 本来の目標を逸れた魔法の閃光は、迫っていた精霊兵たちを数体ずつ貫いて消滅した。

(´<_`; ) (嫌な読み方をする。それに……)

( ´_ゝ`) (さっきまで剣で防ぐので一杯だったあの魔法を流して、しかも目標に当てたか)

(´<_`; ) (この期に及んで、まだ“しろ”があるって言うのか)

712 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/03/22(日) 18:15:13 ID:AYo.aGOM0

 この兄弟の予測を超えた「防御」は戸惑いとともに大きな時間をキュートに与えた。
 閃光魔法によって直近の精霊兵を屠ったことで、これまでよりもはるかに余裕がある。
 キュートは新たな魔法を展開。

 瞬く間に完成させ、手に持った黒剣を天に掲げる。

o川*゚ ,゚)o 「“魔導の四拾弐――――”」

 天井を覆っていた雲が、周囲に散り消滅した。
 そこに現れたのは、青空では無く、天球を赤に染める巨大な魔法陣。
 激しい明滅を皮切りに、陣の中心が扉の如く開き、そこから―――

o川*゚ ,゚)o 「“――――終焉の一睨み”」

 魔とも、神ともつかぬ巨大な「目」が表れた。
 音が聞こえそうなほど生々しく周囲を見渡すその瞳孔が、泡の如き光の乱反射を湛える。

(´<_`; ) 「防御ぉぉぉおおお!!!!!」

 姿を消したままのオトジャが叫んだ。
 瞳の中の光が爆ぜたのと、アニジャが周囲の精霊兵を変形させシェルター化したのはほぼ同時だった。


 無数の、本当に数え切れぬほどの炎熱の炸裂が山を埋め尽くした。

 水の蒸発する音すらない。風すらも枯れる。
 名の通り、終焉以外を望めぬ絶対的な殲滅の煌めきが、乱れ世界を喰らい尽くす。

713 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/03/22(日) 18:16:38 ID:AYo.aGOM0
 
 分に満たぬ時間で、魔法の発動は終わりに至った。

 閃光と炸裂の奔流が止んでなお、山は紅く滾り、空が揺らめくほどの熱を残している。
 生命は何一つとして残ってはいない。

 そう、生命は。

(  _ゝ`) 「……無事か」

(´<_  ) 「精霊化していなければ、完全に終わりだったな」

 兄弟は、この時すでに生命の枠を逸脱している。
 双方共に体の大半が揮発し消滅していたが、すぐに再生を開始。
 周囲の環境が炎優位に変わってしまったため少々手間取るが、大した時間にはならない。

o川*゚ー゚)o 「はー――……すっきりした」

 掃除を終えた、というような軽い満足感を言葉に含ませ、キュートは腰に手を当てた。
 相変わらず裸体にローブを羽織っただけの姿。
 魔法によって保護され、浮遊する旧ジュウシマツ砦の頂上の一辺に腰掛け下を覗きこんでいる。

o川*゚ー゚)o 「さてしばしの足止めには成功してるみたいだし」

( ´_ゝ`) 「オトジャ、雨を」

(´<_` ) 「もう招いているが、少しかかりそうだ」

o川*゚ー゚)o 「あの子たちをきちんと倒すのには、ただの魔法じゃもうだめね」

714 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/03/22(日) 18:17:52 ID:AYo.aGOM0

 弱弱しいが、ぽつぽつと雨が降り始めた。
 空の雲は異常な速さで濃く大きくなり、伴って雨粒も膨らんでゆく。
 地面に触れたと同時に蒸発してしまう。周囲は湯気に包まれた。

( ´_ゝ`) 「ウンディーネたちは、まだいける」

(´<_` ) 「こっち今ので少し乱れてる。調整の為に追加で三分くれ」

( ´_ゝ`) 「……何とかするさ」

 アニジャは先ほどの水の精霊の魔法の残滓をかき集める。
 魔女によって消し去られたようには見えるが、それぞれが超高位の魔法体。
 全てとも、半分ともいかないが、二割程度ならば新たに注ぐ雨水を用いて復活が可能だ。

( ´_ゝ`) 「“行け”」

 蒸気が渦となり、雨を巻き込みながら魔女へ突進してゆく。
 辿り着く前に人の形に変化。
 さらに馬にまたがる騎兵の体を成して、槍を構えキュートに突進する。

 数は百足らず。先ほどと比べると心もとないがその分強化されている。
 確かに、これまで通りの対処をしたならば、数の減り具合ほど楽にはならないだろう。

 だから。

o川*゚ー゚)o 「“魔導の九拾――――――神喰らい”」

 特別な魔法でおもてなしだ。

715 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/03/22(日) 18:19:41 ID:AYo.aGOM0

 黒剣にさらに漆黒の霧が沸き立ち、絡まりついた。。
 深淵の魔物が唸りを上げたかのような、低く、不穏な響き。
 先ほどの爆熱の魔法とは異なり、実に穏やかな発動であるにも関わらず。

(´<_`; ) 「あれは、まさか」

( ´_ゝ`) 「……」

 死を克服した者共すらをも震え上がらせる、恐怖の塊。
 どうやら、生易しい魔法でないことくらいは知っているようだ。

o川*゚ー゚)o 「一応、説明はした方が良いのかな?」

 突進してきた精霊兵の体を雑に薙ぐ。
 剣から伸びた黒の魔力が精霊兵を切り裂き、蒸気すらも残さず消滅させた。

 返す刃。
 これまた自分で嗤う程雑な大ぶりだが、剣から零れた魔力の余波が精霊兵を消し去った。
 青い水の尖兵たちは、最早キュートに近づくことすら叶わない。

( ´_ゝ`) 「……」

o川*゚ー゚)o 「この『世界』を味方に付けようとしたところでさぁ〜」

 アニジャが更なる魔法式の追加を始めた。
 残っていた精霊兵たちが強化されてゆくのが分かる。
 無駄なのに。

 舌が口の中でのたうつ。
 この意味を成さない足掻きですら、キュートには愛おしくてたまらないのだ。

716 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/03/22(日) 18:22:45 ID:AYo.aGOM0

o川*^ー^)o 「それごとぶっ壊せばいいだけなんだよね☆」


 姿を消しているオトジャはとりあえず後回し。
 まずは前衛役のアニジャを倒す。

 キュートが手首のスナップで釣竿の先に括った糸と重石を薙げるように、剣を振るう。
 飛翔したのはJ字の針でなく、漆黒の魔力。
 一体を貫き消し去ったのに合わせ、手首を返し、次の対象へ。

 軽い手首のみの動作で、魔力は鞭のように暴れまわり、キュートに迫っていた精霊兵たちを消去する。
 
 その流れを維持したまま、黒い舌は兄者へ。
 途中オトジャの放つ横やりの閃光魔法が黒の魔力を捉えたが、問題は無い。
 消え去ったのはオトジャの魔法の方だ。

( ´_ゝ`) 「ッ!」

 アニジャは高速の機動でこれを躱す。
 のみならず、オトジャと合わせて防御魔法を何重にも張り巡らせた。

 が、数十に至る防御のための魔法を一切無視し、キュートの魔法はアニジャの脇腹を浅く薙ぐ。

(  _ゝ ) 「―――ッ!!」

 未だ経験の無かった、あらゆる不快を詰め込んだような感触に、アニジャは意識を失いかけた。
 宙に留まることが出来ず、ぐらりと、あたまから地面へ落ちてゆく。
 傷からは、青い魔法の粒子が勢いよく吹き出し、軌跡となった。

717 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/03/22(日) 18:23:30 ID:AYo.aGOM0

o川*゚ー゚)o 「驚いた?びっくりした?」

( ´_ゝ ) 「……」

 地面に衝突する寸前で意識を取戻し、何とか着地するアニジャ。
 傷を手で押さえるが、一向に修復される気配が無い。
 むしろ、逆に少しずつ広がってすらいる。

o川*゚ー゚)o 「私はね、『不死殺し』って、呼んでるの、この魔法」

( ´_ゝ ) 「……」

o川*゚ー゚)o 「世界の法則における対象の存在そのものを破壊しちゃうの。そうすると、いくら不死身の再生力でも、ほら、そのとーり」

( ´_ゝ ) 「……なるほどな」

o川*゚ ,゚)o 「本当は使いたくなかったのよ?これは負荷が大きすぎる」

( ´_ゝ ) 「……」

o川*゚ ,゚)o 「だから、大人しく負けを認めてくれるとありがたいんだよね。あなたたちを完全に消し去りたくもないし」

( ´_ゝ ) 「一つ、聞きたい」

o川*゚ー゚)o 「いいよ」

( ´_ゝ ) 「この『不死殺し』、貴様にも通じるのか?」

o川*゚ ,゚)o 「まあ、理論上は?私以外に使える人なんてもういないし、自殺以外ではありえないけど……」

718 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/03/22(日) 18:25:06 ID:AYo.aGOM0

(  _ゝ ) 「……そうか」

 アニジャは崩れるように地面に倒れた。
 魔力の流出に比例して、背なの翼の明滅も弱々しくなってゆく

(  _ゝ ) 「……それは、よかったよ」

o川*゚ ,゚)o 「?」

 キュートは、背後に不気味な魔法の気配を感じ取る。
 振り返った視線の先には、先ほど受けたのと同じ閃光の魔法。

 兄の窮地に、またもや弟が援護に出た。
 自身の感じた予感を裏切り、その程度の認識で済ませてしまったため、つい雑な防御を取った。
 黒剣と同じ、高純度の魔力で生成した盾を二枚。

 これで十分でしょうと、ため息すら吐きそうになったその胸を、

o川*   )o 「――ッ?!」

 盾を射抜き現れた閃光が、深々と貫いた。

719 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/03/22(日) 18:26:24 ID:AYo.aGOM0

 魔法は背まで貫通し、キュートの身体は大きく仰け反った。
 口から呻きより先に血が零れる。
 見上げた空に飛んでいるのは、貫かれた胸が噴き出す血流か。

 自身で受けるのは初めてだが、間違いない。
 規模は小さいが「不死殺し」の役を負った攻撃だ。

(  _ゝ ) 「……これすら通じなかったら、どうしようかと思っていたところだったんだ」

o川* ー )o 「……っあー―――………一体、いくつ奥の手、あるんだか……」

 キュートは起き上がる。
 胸の傷は、これまでよりもゆっくりと、しかし確実に塞がってゆく。

 不死殺しが効かなかったわけでは無い。
 単にキュートの方が法則に対する干渉力が高いため相殺され効力が減衰していただけだ。

(´<_` ) 「一撃で、とはいかんか」

o川* ー゚)o 「水はともかく、そのほかの部分では、譲れないからね」

 キュートの視線の先、今度は明確に姿を現したオトジャが居た。
 空中に屈み込み、杖の頭を脇に抱え、石突をキュートに向け。
 顔を杖に寄せ、狙いを定めている。

 石突が輝き、再び閃光の魔法が、正確には閃光の魔法に偽造した不死殺しが放たれる。
 魔女たるキュートの力は、いくら魔法によって身体を昇華しているサスガ兄弟とは言っても敵う者では無い。
 不意打ちであっても、数発ならば耐えられるだろう。

 ただし、受け続ければ何がどう転ぶかは分からない。

720 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/03/22(日) 18:27:44 ID:AYo.aGOM0

 扱うキュートにとっても「不死殺し」は制御しきれる魔法では無いのだ。
 どんな影響がどこでどう出るか、気軽に実験できるものでもないためロクに把握していない。

 迫る魔法に、キュートは剣を振るう。
 黒い魔力が靡き、完全に相殺した。

(´<_` ) 「容易くは無いか」

o川*゚ー゚)o 「……けっこう本格的に危なくなってきたわね」

 剣を振るい、黒の魔力を飛ばす。
 狙いはオトジャの右足。
 片足を刎ねるだけでも、十二分に魔法の精度を下げられる。

(´<_` ) 「……ッ!」

o川*゚ ,゚)o 「……さすがねぇ」

 キュートの不死殺しは届かない。
 オトジャも、キュートと同じく不死殺しによって相殺したのだ。
 ただし、威力の差により、オトジャは僅かにダメージを受けている。
 
 相殺されるのを覚悟で狙い続ければ、いつかは直撃するはずではあるが。

721 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/03/22(日) 18:29:01 ID:AYo.aGOM0

o川*゚ー゚)o (……一度軽く頭吹き飛ばして、それからかな)

 できうる限り不死殺しの無駄打ちは避けたい。
 だから一度物理的に追い込んで、頭部または心臓を破壊。
 再生までの時間を用いて、死なない程度に体をばらす。

 オトジャが再び不死殺しの閃光を放つ。
 相殺。即接近。
 逃げようと背を向けた時点で不死殺しで穿つ。

 しかし、予想に反してオトジャは動かない。
 不死殺しと異なる魔法式を組んでいるようだが、一対一のこの状況でキュートより先んじることなどあり得ない。
 キュートは剣を握りなおす。

 別の魔法を組んでいる最中の今ならば、不死殺しで一気に殺せる。

o川*゚ ,゚)o 「?!」

 剣を振ろうとした瞬間に青い光が走り、斬られた手が宙に舞った。
 視線の先には剣を構えたアニジャの姿。

 また、笑顔になってしまう。
 ただし今回は多分に苦み混じりだ。
 まさか、あの状態でまだ挑んで来るなんて。

722 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/03/22(日) 18:30:48 ID:AYo.aGOM0

( ´_ゝ ) 「させん」

o川*゚ ,゚)o 「もー!」

 既に手負いのアニジャを先に戦闘不能にしようと意識が逸れる。
 一撃程度ならば受けても平気と言う驕り。
 その驕りに先ほども漬け込まれたことを、キュートは失念していた。

 なめて、油断したその時間。
 オトジャの目が、光る。

(´<_` ) 「“―――手足を削ぐ”」

o川*゚ ,゚)o 「?!」

 青い魔力の矢が、キュートの肩口に刺さった。
 不死殺しですらない小さな魔法だ。すぐに再生できる。
 
 はずだったのに。

o川*゚ ,゚)o 「えっ?」

 魔法の矢が魔法陣に形状を変え、体に張り付いた。
 その明滅に合わせて、キュートの内部をめぐる魔力の流れが急激に鈍る。
 これは、攻撃の魔法ですらない。

 封印魔法だ。
 名の通り、対象の力を抑え込むための魔法。

 上の上程度の効力ではあるが、魔力の塊であるキュートには下手な攻撃魔法よりも効果が大きい。
 現に魔力の供給が鈍って、黒剣に纏わせていた不死殺しの制御が怪しくなる

 この状態で不死殺しのコントロールは安全でない。
 すぐさま解いたため自傷することは無かったが、対抗手段も失われた。
 封印を喰らってしまったこと自体が、大きすぎる失敗だ。

723 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/03/22(日) 18:32:46 ID:AYo.aGOM0

 それでも、封印と分かっていれば対応を変えればいい。
 失敗はすぐに取り返す。
 キュートは一旦アニジャからも距離を取り、封印の解除に力を入れようとした。

 その首を、アニジャが斬る。
 既に腹部の大半が崩れ去った彼であったが、弟の間に割って入った速さを忘れるべきでなかった。
 アニジャは、この状態でもキュートに追いつけたのだ。

 首を刎ねられ、ほんのわずかな時間途切れた意識の隙を縫って更なる封印魔法が追加された。
 益々力を抑制される。
 再生自体は、何とか出来たが。

o川*゚ ,゚)o 「こんのっ!」

( ´_ゝ`) 「効くだろ、こういうシンプルな封印ってさ」

o川*゚ ,゚)o 「生意ッ……き!」

 三段階目の追加。
 この時点からアニジャも封印の追加に参加した。
 倍速で追加される様々な封印式。

 既に力を抑制されていることも災いとなって、解除が追いつかない。

724 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/03/22(日) 18:33:46 ID:AYo.aGOM0

(´<_` ) 「“―――天恵を祓い”」

( ´_ゝ`) 「“―――怪異に奉じ”」

 二人の組み上げる魔法式がこれまでのものと変わった。
 そう気づいた時には既にキュートの魔力はそこらの上級魔法使い程度まで抑え込まれている。
 これ以上は、そうそう封印できない下限の域。

(´<_` ) 「“―――真を欺き”」

( ´_ゝ`) 「“―――偽に殉じ”」

 しかし、サスガ兄弟は手を緩めず魔法式をくみ上げていく。
 神格化により大概の魔法を一瞬で扱うことが出来るはずの彼らが、こうまで時間をかける術。

(´<_` ) 「“―――森羅を畏れ”」

( ´_ゝ`) 「“―――万象を封ず”」

o川*゚ ,゚)o 「むぅ〜!!」

 既にかけられた十いくつの封印魔法を、九つまで打ち消したところでキュートは封印の解除を諦めた。
 ここまで外せば調子がいまいちでないなあ、程度だ。
 不死殺しなどと欲張らなければ、攻撃は可能。

 せめて二人の術組みを停める。いくら不死化しているとはいえ、一度体を消し飛ばせば魔法式は失敗に終わる
 現状放てる最も強力な火炎の魔法を二つ発動。
 これなら精霊化した兄弟にも届く。キュートは焦りを堪え、火炎の殺意を放つ。

 が。

 それすらもが僅かに、遅い。

725 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/03/22(日) 18:34:46 ID:AYo.aGOM0
 
 
 
 
 
 
 
  
                「「“流石流特殊封神術”」」
 
 
 


               「「“―――壊式を得る”!!!」」
 
 
 
.

726 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/03/22(日) 18:36:17 ID:AYo.aGOM0

 ずんっ、と体を揺るがす振動。
 頭の中に電流のようなノイズが走り、キュートの目の前が青に埋め尽くされた。

 空や海、または宝石の色とは異なる、無機質で均一な、青。
 瞬きをしても、いつもの暗転が起こらない。
 「何が」と口走ったが、その言葉すらも聞こえない。

 魔法を使おうとする。
 いつもなら当たり前にある、魔法が発動した際の僅かな反応が無い。
 魔力の流れすら、感じられない。

 それどころか、今の自分が立っているのか、座っているのか、それとも倒れているのかも分からない。
 呼吸は出来ているのか。
 心臓は動いているのか。

 そこでキュートは気づく。
 この青き暗転は視覚にのみ起きているのではない。
 脳の全てが、キュートの持つすべての能が、停止させられている。

 思わず笑ってしまう。出ているかも分からない声を、必死に出したつもりになる。
 そうでもしないと、気が狂いそうだ。 
 無で埋め尽くされたキュートの意識の中、はっきりと存在を感じられるものがある。

 これが「恐怖」。
 久しく覚えたことの無い、懐かしさすらある芯の震え。

 キュートは知覚する。
 自分は死ぬ。殺される。
 それだけの準備が、今この時、間違いなく整えられている。

  ―――  ―――  ―――

728 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/03/22(日) 18:42:20 ID:AYo.aGOM0

 サスガ=アニジャは、自分の手を見た。
 骨ばった長い指。分厚くなった掌の皮。
 そして、骨に添うように張り巡らされている青い魔力の根。
 そこから供給される魔力と魔法式が、肉を透き通った青に輝かせている。

 同様の状態が全身に及んでいる。
 背中には周囲から収集変換した魔力を一時的にプールするための、似合わぬ翼まで生えている。
 傍からの見た目は、世ほど奇天烈なものだろう。

 魔女はこの魔法を「神格化」と呼んだ。
 アニジャとその弟オトジャは、この魔法を「精霊化」と呼んでいた。
 言葉が異なるだけで、ニュアンスは近い。
 一言にしてしまえば、人間を越えた能力を手にする為の魔法だ。

 身体能力は勿論、魔法能力も大きく補強される。
 水属性の上級程度の魔法ならば、発動後のイメージを頭に浮かべるだけで使えるほどだ。
 それは魔女と同じ領域であり、魔女を倒すには辿り着かなければならない頂だった。

 この魔法の為に費やしたものは多い。
 収集したタリズマンはほとんどこの魔法の準備に使った。
 発動した今、魔法の負荷に耐え兼ね、ただの灰と化している。

 体にも相当な負荷がかかっているだろう。
 上質な大地のタリズマンを粉末化して生成した顔料を用いて特殊な刺青を体に刻むことで軽減している。
 してはいるが、あくまで僅かな効果だ。

 あと十分と経たず、精霊化の維持は解けるだろう。
 そして解けた時にどれだけの副作用が襲い掛かるか、予想は付いていない。

729 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/03/22(日) 18:43:08 ID:AYo.aGOM0

 これもまた、途方もない過程が必要であった。
 発動に必要な魔法式のパーツを他の魔法や攻撃に偽造し、魔女に打ち込み、潜伏させ。
 「精霊化」によって飛躍的に向上した魔法能力により、「魔法式を自動で組み上げる魔法」を数個発動し。
 それらを統括し、さらに仕上げるための膨大な魔法式を、二人がかりで完成させた。

 そうしてやっと、魔女の魔法を完全に封じることに成功した。
 ここまでしないと封じられないその能力に改めて慄いてもいる。
 一時的に魔女を抑えるために用いた魔法でさえ、上級の魔法使いならば完封できるクラスのものだったのだ。

( ´_ゝ`) 「……」

 手に、「不死殺し」の魔法を生み出す。
 なるべく濃く、強く、より確実に消滅させるために、入念に魔力を込める。

 魔女が健全な状態では相殺されてしまい十分な効果が得られなかった。
 だが、今は別だ。
 魔女は魔法の一切を、意識的なものも無意識的なものも全て使えない。

 不死殺しによって、魔女のあらゆる情報をこの世から消し去る。
 そうすれば、魔女は死より空虚な無となり、復活は不能だ。
 態々危険を冒して正面から何度か殺し確かめたので間違いない。
 魔女本人の口からも聞いている。

 不死殺しで魔女は死ぬ。
 その瞬間が、サスガ兄弟の勝利。

730 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/03/22(日) 18:43:53 ID:AYo.aGOM0

(´<_` ) 「……アニジャ、躊躇うなよ」

( ´_ゝ`) 「……当然だ」

 アニジャの右手に、オトジャの左手に、澄んだ藍色の魔力が迸る。
 激しい明滅と、煩わしい音。
 高出力の魔法は、操作を誤ればアニジャたち本人を消し去りかねない。

( ´_ゝ`) 「“―――神に奉じる”」

(´<_` ) 「“―――磔刑の茨”」

 二人が魔女に向かって跳躍。
 同時に振りかぶり、魔法の発動を全開にする。
 灰色の空が白黒に瞬くほどに強い光を放つ、「不死殺し」。

( ´_ゝ`) 「「“―――魔屠る槍の一投となりて”」」 (´<_` )

 意識の無い魔女の胸に、二人の手刀が突き刺さる。
 鮮血は吹き出す間もなく消滅し、代わりに殺意の魔法が魔女の体に侵攻した。
 白い肌の輪郭が、激しく毛羽立ち、肉が鳴らすとは思えぬ激しい音をまき散らす。

 魔力による抵抗は一切ない。
 不死殺しは、肉体のみならずそれを存在させるための法則の世界にまで浸透した。
 激しい魔力の明滅の中、兄弟は視線を一瞬合わせた。

 不死殺しに、最後の魔法式を追加する。

731 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/03/22(日) 18:46:56 ID:AYo.aGOM0
 
  
 
 
 
     ( #゚_ゝ゚)  「「“―――刻を喰らう”」」  (゚<_゚# )
 
 
 
 
 
 
 

.

732 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/03/22(日) 18:48:17 ID:AYo.aGOM0

 充填された魔力の全てが、白い光と化した。
 視界が一色に染まる。
 魔女の身体は内よりその奔流に飲まれ、影を生むことすらない。



 そして 魔女は。

733 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/03/22(日) 18:49:03 ID:AYo.aGOM0




( ´_ゝ`) 「……」

(´<_` ) 「……」



       ...: ..::.
.   . . ::: :::  



(´<_` ) 「……帰ろう、アニジャ」

( ´_ゝ`) 「……ああ」







  この世界から、消滅した。


二十八話 捕捉

736 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/03/22(日) 18:50:12 ID:AYo.aGOM0

 一旦終了。
 次から捕捉と言うかこの世界観における魔女がなぜ死ななかったか、
 サスガ兄弟の魔法でなぜ消し去ることが出来たかを説明するっす。

 本編中で書かれていることが何となくでも分かれば不要なんだけど、
 原理とか気になっちゃうひとはサラッと読んでみてね。

738 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/03/22(日) 18:51:41 ID:AYo.aGOM0

 ☆前提

 世界は二重に構造となっており、世界の根底を成す「法則の世界」と
 法則の世界によって現象として実行されている「現実の世界」の表裏一体で構成されています。

 (メタ的に言えば、「法則」は「プログラム」、「現実」は「プログラムに従って出力された映像や音」と言った感じ)

 以前の説明にもありますが作中における魔法とは、
 「法則の世界」に直接干渉して法則を一時改変し、「現実の世界」に本来ありえない現象を生み出すことを指します。

739 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/03/22(日) 18:52:21 ID:AYo.aGOM0

 ☆普通の場合   

     現実の世界           法則の世界

                   ┃
      ( ^ω^)      ┃       ( ^ω^)
                   ┃

 「現実」と「法則」は表裏一体。
 現実で起きたことは、法則でもそう書き換えられます。

 例:怪我する

                   ┃
      ( メω^)    ―╂→     ( メω^)
                   ┃

 こうして法則にも、「怪我をした」という情報が同期されます。

 逆に、法則の側に「怪我をした」情報が書き込まれた場合、今度は現実の方に怪我をした状態が反映されます。

                   ┃
      ( メω^)    ←╂─     ( メω^)
                   ┃

 魔女が何度か用いた、相手を問答無用でチョンパしたりする魔法はこれに当たります。

 現実と法則が常に同じ状態。
 これが原則であり、通常のことです。

 ※以降の説明のために回りくどいことを言っていますが、特別なことは言ってません。

740 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/03/22(日) 18:53:03 ID:AYo.aGOM0

 ☆「魔女」や「精霊化」等による不死者の場合。

 基本的には同じく、二つの世界は同期した状態にあります。
 ただし、怪我等の望ましくない状況が起きた場合に少々異なります。


     現実の世界           法則の世界

                   ┃
      ( メ_ゝ`)    ―╂→     ( メ_ゝ`)
                   ┃

 一旦はこうして怪我をした情報が共有されるのですが……

                   ┃
      ( メ_ゝ`)      ┃       ( ´_ゝ`) キュピーン
                   ┃

 法則の世界の方に、怪我をしてない状況の情報を上書きします。
 すると……

                   ┃
      ( ´_ゝ`)    ←╂―     ( ´_ゝ`)
                   ┃

 法則の世界に従い、現実の怪我も治ります。
 治療魔法のように代謝を促進し再生させているわけでは無いので、
 痕や後遺症、部分的な老化現象なども一切起きません。
 魔女たちはこれがオートで行われるので、たとえ頭が吹き飛んで意識が途切れても元に戻ります。

741 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/03/22(日) 18:54:13 ID:AYo.aGOM0

 ☆「不死殺し」とは。

 上記のような不死者の場合、法則の世界に健常な状態の記録がある限り死にません。

 そこで考えられたのが「法則内の情報そのものを消す」というもの。
 これが作中における「不死殺し」です。

 現在の情報のみならず、過去に遡って該当者の存在を消去するので、
 過去の情報を引き出しての上書きも出来なくなります。
 故に、該当者は事実上蘇生不能となり、消え去ります。

 特定の状態を別個に保存している場合でも、本体が消し去られてしまえば自動復活は起きません。
 魔法には魔力が必須となりますが、本体が完全削除された場合、魔力も全て消えてしまうので魔法が発動しないのです。

 なので流石兄弟はまず、封神術で完全に魔法を使えなくし、余計な予防策を練られないうちに

 ☆法則の世界における「過去の情報」について。

 動植物に限らず、世界に存在する物は、過去の状態の情報を一定期間保存されています。
 その期間は、人の価値観で表すと約49日です。
 故に、たとえ不死殺しを用いなくとも、死んでから49日経過すれば、過去の情報の上書きによる再生は不能になります。

 故に、たとえ魔女であっても49日以前の状態を再現することはできません。
 ※個別に保存している限りはこの限りではありません。

742 名前:名も無きAAのようです[v川*^ー^)v] 投稿日:2015/03/22(日) 18:57:28 ID:AYo.aGOM0

 
 
 
 
 
 
                  「なー―――〜〜んてね☆」
 
 
 
 
.

746 名前:名も無きAAのようです[v川*^ー^)v] 投稿日:2015/03/22(日) 18:58:08 ID:AYo.aGOM0

( ´_ゝ`) 「!」

 その明るい声は、まるで当然のように響き渡った。
 振り返ったと同時に、アニジャの右腕が宙を舞う。
 それを目で追うと、オトジャの左腕も同じように撥ね飛ばされるのが見えた。

( # _ゝ`) 「なんで……ッ!」

(´<_ ; ) 「……バカな、完全に……」

( # _ゝ`) 「なんで居るんだよ………!」

 飛ばされた腕の付け根を抑え歯を食いしばったまま、アニジャは呻くように吠えた。
 喰らったのは不死殺し。精霊化を解いてはいなかったが、再生は始まらない。
 体を形成している青い水の魔力が、勢いよく吹き出している。


o川*^ー^)o


( # _ゝ゚) 「キュート!」

 音も無く、予備動作も無く放たれた不死殺しの黒い閃光が、アニジャの足を吹き飛ばす。
 オトジャが反撃の魔法を放とうとするも、それより先に脇腹がこの世から消滅した。

747 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/03/22(日) 18:59:30 ID:AYo.aGOM0

o川*゚Д゚)o 「……あ、あー―――……うん……」

o川*゚ー゚)o 「……えーっと、うん。状況は、分かった」

(´<_`; )

o川*゚ー゚)o 「まずは二人とも、良く、ここまで出来たわね」

( #´_ゝ`) 「この……」

o川*゚ー゚)o 「ここまで私を追い込んだのは、神様以来よ。そこは純粋に賞賛するわ」

 ごく自然に、何事も無かったかのように立つ、キュート。
 相変わらず服を着ず、全身の素肌を晒したままであるが、先に負わせたはずの不死殺しの傷すらも無い。
 美しいと称さずにいられないその体には、一切の傷も、穢れも、見られなかった。

 キュートは穏やかな笑みで目を伏せ、胸に手を当てる。

川*‐ ,‐) 「本当に、死んでしまうかと思った。怖くて、こわくて、仕方なかった」
   ぅ

川*‐ ,‐) 「生きたくて、死にたくなくて、仕方なかった」
   ぅ

( #゚_ゝ)、 「がはっ……」

川*^ー^) 「……だから、ありがとう、二人とも。“私を殺してくれて”」
   ぅ

 魔女は笑う。
 その背後に沸き立ったのは、これまでとは比にならぬ、死の魔力だった。

748 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/03/22(日) 19:01:29 ID:AYo.aGOM0

 ☆なぜ魔女は復活できたのか。

 現時点で明確な理由は不明です。

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