- 29 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/17(土) 01:04:53 ID:adaBwzoE0
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キュートは、ネーノに助けてもらった時のことを、熱心に話してくれたよ。
o川*- -)o「あの日、ネーノくんは、キューちゃんを起こしてくれて。
ぽんぽんって砂とかはらってくれて。それから、カバンを拾ってくれたの」
o川*゚ー゚)o「キューちゃん、足をケガしちゃったんだけど。
ネーノくんが水道に連れてってくれて、ケガしたところをキレイにしてくれたの。
キューちゃん泣いちゃったんだけど、ネーノくんはキューちゃんの手を引いてね、保健室に連れてってくれたんだー」
o川*゚д゚)o「それでね、最後にね。
もう大丈夫だからって、キューちゃんの頭を撫でてくれたの。」
――私は頷きながらそれを聞き、最後に大きく頷いた。
どうやらこれが、私の「どうしてネーノ少年を好きに?」と、いう問いの答えなのだろう。
ありがちなのかもしれないが、甘えん坊のキュートらしい実に可愛らしいきっかけだ。
川 ゚ -゚)「いい話じゃないか」
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- 30 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/17(土) 01:06:27 ID:adaBwzoE0
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o川*゚ー゚)o「でも、キューちゃんはね、なんなのこいつーって思ったの」
訂正。可愛らしいというのは、私の贔屓目だったらしい。
まぁ、キュートだって普通の女の子だ。そう思うことだってあるだろう。
川 ゚ -゚)「恩人にひどい言い草だな」
o川;゚ー゚)o「だって、キューちゃんの知ってる男の子はそんなことなんてしないんだもん」
キュートは弁解する様に、両手を振った。
私の視線を避けるように、斜め横を見やりながらキュートはぼそぼそと話をする。
o川;゚ぺ)o「だって、男子ってバカだし、うるさいしー。すぐふざけるし。
宿題やってこなかったり、汗臭くて汚いんだよー」
川 ゚ -゚)「気持ちはわからなくもないが、ネーノ少年だってその条件に該当するのではないか」
o川*゚д゚)o「ちがうもーん。ネーノくんはかっこいいんですぅー」
なんとも、年頃の少女らしいことじゃないか。
恋は盲目とはいうが、ここまで言い切られてしまうとなんとも微笑ましい。
その時の私はつい笑ってしまって、キュートに怒られたのを覚えている。
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- 31 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/17(土) 01:07:16 ID:adaBwzoE0
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o川#゚ぺ)o「もー、ネーノくんはかっこいいのにぃ」
川 ゚ -゚)「そうか、ネーノ少年はかっこいいのか」
o川*゚ー゚)o「うんっ!」
えへへと声を上げて、キュートは笑う。赤く染まった頬は、まるでりんごのようだ。
o川;゚ー゚)o「で、でも好きになっちゃだめだよ!
ネーノくんはキューちゃんのなんだからぁっ!」
川 ゚ -゚)「はいはい。わかったわかった。
ネーノ少年を取る気はないから安心しろ」
私がそう言うと、眉をひそめ泣きそうになっていたキュートはほっと息を吐いた。
キュートはよく表情が変わる。常々表情が変わらないといわれる私には、まるで正反対だ。
川 ゚ -゚)「それで、肝心の彼の反応はどうだったんだ?」
o川;゚ー゚)o「むーぅ、それなんだけどぉ……」
キュートはしばし、口ごもる。
私が話を促すとしばらく黙った末に、ようやく続きを話し始めた。
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- 32 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/17(土) 01:08:06 ID:adaBwzoE0
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(; `ー´)「それ、オレ?」
o川 ゚ペ)o「むー、覚えてないの?」
キュートには衝撃的だった、ネーノとの出会い。
しかし、ネーノは驚くことにそれをまったく覚えていなかった。
(; `ー´)「転んで……転……うーん、保健室に誰かを連れてったような気は……する。
でも、あれ素直だった?」
o川;゚ペ)o「そうだよ! もう大丈夫なんじゃねーの、って言った」
(; `〜´)「うわっ、確かにそれオレ言いそうじゃねーの」
ネーノ少年はしばらく口をモゴモゴさせた後に、大きく息を吐いた。
参ったと困ったを半分ずつ混ぜあわせたような表情だったと、キュートは語る。
そして、ネーノ少年はその表情のまま、笑ってみせた。
くしゃっとくずれた、キュートの好きな表情。キュートはその瞬間、息が止まるかと思ったのだという。
(; `ー´)「えーと、怪我はもう平気?」
.
- 33 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/17(土) 01:08:59 ID:adaBwzoE0
-
ネーノの言葉は、かなり今さらだった。
ずっと同じ教室ですごしてきたキュートを相手に、ネーノは真面目くさった様子で問いかける。
その間抜けだけれども真剣な表情に、ドキドキしていたキュートは思わず笑い出してしまう。
o川*^ー^)o「それなら、もう平気だよぉ〜」
(; `ー´)「それなら、よかったんじゃねーの。
あ、オレ。素直にすごく失礼なこととか言ってなかった?」
o川*^ー^)o「ううん、ダイジョーブ」
ネーノは、ホッとした様子で息をつく。
その口元には笑みが戻ってきていて、それを見たキュートは「ネーノくんのこと好きだなぁ」、って――改めて思ったのだそうだ。
だから、キュートは好きとは言えなかった代わりに告げた。
o川*゚ー゚)o「あの時ね、根野くんが助けてくれてすごくうれしかったの。
根野くんがいなかったら、キューちゃんは多分ずっとあそこで泣いてたと思うから」
( `ー´)「……」
o川*^ワ^)o「ありがとう」
(*`ー´)「――どういたしまして、じゃねーの」
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- 34 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/17(土) 01:11:00 ID:adaBwzoE0
-
雨は止む気配を見せない。
雨は弱まるどころか、むしろ強くなるばかりだ。
( `ー´)「よしっ」
o川*゚ー゚)o「……?」
空を見上げていたネーノはやがて、小さく息を呟いた。
出口から背を向けると、教室へと続く廊下に向けて小走りに進みはじめる。
o川*゚−゚)o「……帰っちゃうの?」
(; `ー´)「いや、そうじゃなくて――あ、やば」
慌てたのか、動いた拍子にネーノの袖のボタンが、下駄箱の金具に引っかかった。
ネーノは顔を赤くして、焦りの声を上げながら腕を引っ張るが、なかなか上手くいかない。
(#`ー´)「ちっくしょー、外れないんじゃねーの」
何度も腕を引っ張り、それで何とか引っかかっていた袖は外れる。
しかし、その拍子に制服の袖を飾っていてたボタンが取れてしまった。
.
- 35 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/17(土) 01:13:00 ID:adaBwzoE0
-
――カツンと、音をたててボタンが落ちる。
ネーノはそれに、一瞬だけ「ヤバイ」という顔をしたが拾おうとはせずに、そのまま廊下へ向かって走りだした。
(; `Д´)「素直ーっ、ちょっとそこで待っててー!!!」
o川;゚ー゚)o「え、……うん」
ネーノはそのまま、キュートをおいて走り去っていく。
彼の有無を言わさぬその行動に、キュートはしばらく呆然としていたが、やがて我に返る。
キュートは慌てて落ちたボタンを拾おうとしたが、その時にはもうボタンは見えなくなっていた。
o川;゚ー゚)o「あ、あった」
しばらく探した末、キュートは靴箱の下に入り込んでしまっているボタンを見つけた。
しかし、彼女の手では届きそうにない。試行錯誤してみたけれども、どうしても届かなくてキュートは途方にくれた。
どうやって取ろうと彼女が頭を悩ませていると、大きな足音が聞こえてきた。
……誰だろうと顔を上げると、それはさっき走り去っていったネーノの姿だった。
( `ー´)「これ職員室のやつ。明日、先生に返せばいいから」
o川;゚ー゚)o「え、え?」
戻って来たネーノは、開口一番そう言った。
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- 36 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/17(土) 01:14:51 ID:adaBwzoE0
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ネーノの手には透明なビニールのそっけない傘が一本。
それをキュートに向けて差し出すと、ネーノはいたずらっ子のように笑った。
(*`ー´)「傘、これで帰ればいいから」
o川;゚ー゚)o「え、でも。これ一本しかない」
(*`ー´)「いいのいいの!」
いいことをしているというのに、彼に鼻にかけないような態度はない。
むしろ心底嬉しそうに、ネーノは笑っていたそうだ。
その姿は、キュートが転んで泣いていた時とまったく同じ姿だった。
( `ワ´)「じゃあな!」
キュートの返事も聞かないままに傘を押し付けると、ネーノは雨の中に踊り出た。
降りしきる雨が、少年のまだ真新しい制服を濡らしていく。
それを気にする様子もなく、少年は鞄を頭の上にかかげ雨の中を走り去っていく。
最後に一度ふりかえると、ネーノは大きく手を降った。
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- 37 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/17(土) 01:15:55 ID:adaBwzoE0
-
少年の姿が、遠くへと消えていく。
校門をくぐり、道路へ飛び出し、その先へ――。
o川;゚ー゚)o「……行っちゃった」
そして、ネーノ少年の姿は完全に雨の中に消えた。
どれだけ目を凝らしても、少年の姿はもう、見えない。
o川*゚−゚)o「……かさ、一本しかなかった」
雨は強い。ネーノはちゃんと家に帰れるのだろうか……
キュートはネーノの去った後を、眺め続けていた。
ずっと、見つめ続けていた。
――雨はまだ、ざぁざぁと降り続けている。
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- 38 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/17(土) 01:16:40 ID:adaBwzoE0
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- 39 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/17(土) 01:18:06 ID:adaBwzoE0
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o川///)o「キューちゃんの話ここまで! はずかしいからもうオシマイ!」
川 ゚ -゚)「照れるな照れるな。いい話だったじゃないか」
o川/〜/)o「ぅぅ、汗べたべただよぉぉ」
キュートはひと通り話し終えると、両手でパタパタと風をおこしながら、「うぅ」と声を上げた。
真っ赤な顔のまま辺りを気まずそうに見渡すと、彼女は視線を雑誌へと向ける。
o川*゚〜゚)o「もー、カラマロスじゃまー!
キューちゃん、これ読んでるんだからどいてー!!!」
川 ゚ -゚).。oO(どうみても、読んでなかっただろう)
嫌がる猫を無理やり捕まえて抱いていたのはキュートなのに、随分と身勝手な話ではある。
まぁ、気づいていたとしても相手は猫だ。キュートのやることは何も変わらなかっただろうがな。
(# ・ω・) フゥゥゥ
o川#゚ー゚)o ムキー
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- 40 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/17(土) 01:19:02 ID:adaBwzoE0
-
川 ゚ -゚)「まあ、いいじゃないか。
大佐だって、私やキュートの相手で疲れたのだろう」
o川*゚ー゚)o「タイサって誰?」
川 ゚ -゚)σ( ・ω・) ニャー
私はキュートがさっきからぞんざいに扱っていた、猫を指さしてやった。
ちょっと太めの猫は、起こっていたのが嘘のように毛づくろいを始めている。
o川*゚ぺ)o「キューちゃんのカラマロスに変な名前つけないでー」
川*゚ -゚)「では間をとって、佐々木カラマロス大佐というのはどうだろう?」
o川;>д<)o「佐々木さんってダレー!!!」
川*゚ -゚)「はっはっはー」
そこから先は、恋愛の話は特にしなかったな。
くだらない話をしあって、私の5月の連休は終わった。
.
- 45 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/17(土) 22:08:32 ID:adaBwzoE0
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川 - )「――と、まぁ。ここまでがいわゆる前置きというやつだな」
べたりとした蒸し暑い空気が横たわる暗い空間。
その中で、クーの声だけが凛と響き渡る。
('A`)「随分と長い、前置きだったな」
ξ )ξ「いいじゃない。甘酸っぱくって、こういうの好きだわ」
( )「甘ったるくて、僕はあまり好きじゃないからな」
部屋の中の空気が少しだけ緩み、口々に誰かが話し始める。
途中で聞こえた女の声は――、きっとツンだな。
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- 46 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/17(土) 22:09:23 ID:adaBwzoE0
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( )「つらいお〜、リアルが充実してるお〜」
( )「まあまあ、ブーンも落ち着いて」
微笑ましい恋愛にはろくに縁がなかったらしいブーンが嘆く。
わかる。わかるぞ、ブーン。その言葉には一言一句同意する。
畜生、カップルなんてすべて爆発すればいいんだ。
( ゚д゚ )「……おまじないの話が出てこないようだが」
川 - )「それについては、これから話す」
ξ )ξ「なんか、あまり先が聞きたくないような気がするけど……仕方ないわよね。
続きを聞かせてくれる、クー?」
川 - )「ああ」
少し間が空き、液体を傾ける音が響いた。
おそらく飲み物で口を湿らせているのだろう。
暗闇の中で聞く水の音とかすかな吐息はなんだか妙に淫らな気がして、俺はごくりと息を呑んだ。
川 - )「失礼した。では、続きを話そうか……」
.
- 47 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/17(土) 22:11:15 ID:adaBwzoE0
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--------------
――そんなほほえましいやりも取りもあったそうだが、二人の仲は一向に進まなかった。
私はちょくちょくキュートと連絡を取り合っていたつもりだが、ネーノ少年に関する話はそれから一切聞かなかった。
彼女の恋愛――おそらくは初恋に関する顛末に、私は興味があったから、はっきりと覚えている。
キュートはネーノとの話を、私にしようとはしなかった。
いや違うな。誰にも話そうとはしなかった。
私は何が起こっていたのか、一切知らなかった。
……だから、ここから話すのは全て、後になって聞いた話だ。
.
- 48 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/17(土) 22:12:30 ID:adaBwzoE0
-
あの雨の日以来、キュートはろくにネーノに話しかけることが出来なかった……そうだ。
教室で目があうことが合っても、それっきり。
o川*゚ー゚)o「……」
( `ー´)「…?」
o川;゚ー゚)o「……」
彼女自身は何度か話そうとしたのだそうだが、彼の顔を見るのが精一杯で、どうしても上手く行かなかった。
ネーノは男子だったから教室の中では話しかけづらかったし、面倒見のいい彼の周りはいつでも誰かがいた。
それに、彼女は例の人見知りもどきがあったから、たとえネーノが一人だとしてもなかなか話すことが出来なかった。
( `―´)「……」
(#;;;゚∀゚)「よぉーぅ! ネーノちゃんどうした?
オレ? オレは、ちょー元気ってやつ! すげーだろ!」
(; `ー´)「え、ああ。よかったんじゃねーの」
( ´_ゝ`)「お前はいつも大袈裟なんだよ」
(#;;;゚∀゚)「オオゲサ? ナニソレ、食えんの?」
.
- 49 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/17(土) 22:14:27 ID:adaBwzoE0
-
――結局、ネーノと会話らしい会話を交わしたのは、あの雨の日が最後だった。
o川*゚−゚)o フゥ
ネーノ少年の姿をじっと眺めるだけの日々が、それからしばらく続いたそうだ。
なんだかんだ言いながら、友だちの宿題を手伝いをする姿。
ぼんやりとプールを眺めている姿。
たまたま近くを通りかかったら、ノートに味噌汁、ご飯、サンマの塩焼き、肉じゃがなんてメモがしてあったとか。
(*`ー´)
ネーノの姿を見て、新しい発見をしたり、好きだなぁって思ったり、溜息をついたり。
そんな日々がずっと続いていた。
だけど、眺めているだけなのは寂しくて、またあの雨の日のように話したくて。
――要はキュートは、焦ってしまったのだ。
ネーノ少年との距離が近づいたと思えば、また話せなくなってしまって。
このまま一緒に話したことも忘れ去られてしまったらと思うと、居ても立っても居られなくなってしまった。
しかし、キュートにはネーノと話す勇気がない。
.
- 50 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/17(土) 22:16:19 ID:adaBwzoE0
-
だから、なのだろう――。
从 ゚ー゚V「ねぇ、すっごくよく効くおまじないがあるんだって」
人il.゚ ヮ゚ノ人「うそー」
从 ゚ー゚V「ほんとだって、効きすぎてヤバイんだって」
人il.゚ ヮ゚ノ人「みる、みるー」
o川*゚ー゚)o「……おまじない」
――彼女は、恋のおまじないなんてものに頼ることにしたのだ。
.
- 51 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/17(土) 22:18:09 ID:adaBwzoE0
-
超自然的な不思議な力にあこがれるというのは、よくあることだろう。
子供はお化けのでる話が大好きだし、ホラーやオカルトなんてものは巷に溢れかえっている。
中学生といえば、もっとも多感な時期だ。怪しげな話に傾倒したって何の不思議もない。
こういうのを、厨二病とでもいうのか?
……違う? ああ、そうか。すまない。私の勘違いだった、忘れてくれ。
――とにかく、おまじないという言葉に惹かれた彼女は、噂をしていた二人組に話しかけた。
o川*゚ー゚)o「ねーねー、そのおまじない教えてー」
从 ゚ー゚V「おまじない? 知りたいの?」
人il.゚ ヮ゚ノ人「じゃあ、教えてあげるー」
彼女たちはおまじないについて、快く教えてくれたそうだ。
.
- 52 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/17(土) 22:19:07 ID:adaBwzoE0
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家に帰ると、キュートはさっそく父親のパソコンの電源を入れた。
起動するまでしばらく待ち、キーボードで学校で教えてもらった通りに文字を打ち込んでいく。
そして、表示されたホームページの群れの中から、キュートは目的のページを見つけ出した。
o川*゚ー゚)o「あった」
白い背景のこれ以上無いくらいそっけない、ホームページ。
隅にsadako.Yと小さく書かれている他は、サイトについての情報は何もない。
飾り付けも何もないページには、おまじないの種類とその方法だけが無数にあげられていた。
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- 53 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/17(土) 22:23:27 ID:adaBwzoE0
-
o川;゚ー゚)o「……すごい、いっぱい」
富を手にするためのおまじない、不運に見舞われた時のためのおまじない、幸運を呼び込むおまじない。
恋敵をなくすためのおまじない――なんてものもあった。
o川*゚ワ゚)o「あ、あった」
そして、キュートは並んだおまじないの中からそれを見つけ出した。
『彼を自分のものにするおまじない』
キュートはごくりと息を呑むと、マウスを動かしクリックする。
ほとんど待つこともなく、画面はおまじないの詳細を記述したページに切り替わる。
必要なもの。手順。注意しなければいけないこと。
o川*゚ー゚)o「……」
キュートは画面を真剣に見つめた。
必要な材料を集めるのは、とても大変そうだ。
しかし、それさえ用意できれば、あとは自分でも何とかできそうだとキュートは判断した。
.
- 54 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/17(土) 22:25:13 ID:adaBwzoE0
-
┌───────────────────────────────────────────────────────┐
│ │
│ 彼を貴女のものにするおまじない │
│  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ │
│ │
│彼の髪。もしくは、彼が毎日身に着けているものを準備してください。 │
│髪のほうが効果が高いです。片方だけでも構いませんが、両方用意できればより効果は高まります。 │
│ │
│白い紙に、想い人の名前を書いてください。 │
│ │
│手縫いで人形(マスコットのようなものでかまいません)を作ります。 │
│人形の中には、事前に用意しておいた白い紙と、彼の髪。もしくは彼の身に着けているものを、忘れずに入れてください。.. │
│ │
│人形が完成したら、彼の名前を唱えましょう。これで人形が、彼と貴女をつないでくれます。 │
│ │
│これらの手順は絶対に人に見られたり、話たりしてはいけません。 │
│ ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ │
│肌身離さず人形を持ち歩きましょう。誰にも見つかったり話したりしないまま1ヶ月持ち続けて入れれば、彼は貴女のものです。.. │
│ │
│ │
│ │
.
.
- 55 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/17(土) 22:28:04 ID:adaBwzoE0
-
彼女はおまじないを試してみることにした。
ネーノの髪を手に入れることは大変だったから、キュートは彼の身に着けているものを手に入れることにした。
最初に思いついたのは、あの雨の日ネーノが落とした制服のボタン。
拾いそびれたまま放置されていたそれは、まだ昇降口の片隅に落ちていた。
o川*゚ー゚)o「あったー!」
キュートは靴箱の下にボタンを見つけると、教室から長いものさしを持ち出した。
そして、床に這いつくばり体を汚しながらも、なんとかそれを手に入れた。
o川*゚д゚)o「やった」
他の道具の準備も順調に終え、家に帰ったらおまじないをしようと決心したその日。
キュートは思わぬ幸運に恵まれた。
o川;゚ー゚)o「あー、もー。どうしてやっちゃったかなぁ」
キュートはその日、忘れ物をして一人教室に戻った。
大学ではもう違うが、学校には必ず体育の授業があるだろう?
キュートの学校では男子は教室で、女子は空き教室で着替えるんだ。
.
- 56 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/17(土) 22:31:27 ID:adaBwzoE0
-
それはちょうど体育の授業中だった。
だから、誰も居ない教室の中には男子が残した制服やらタオルやらが置き去りにされていた。
もちろん、そこにはネーノの制服だってある。
o川*゚−゚)o「……」
教室には誰もいない。
授業中だから、廊下を歩いている者だっていない。
キュートが何をしたかは、もう考えるまでもないだろう?
o川 − )o「……」
ネーノ少年の机に近づき、制服の上着を調べる。
制服を広げるまでもなく、目的のものはあっさりとみつかったよ。
髪の毛。
制服の上着に残されていた、彼の髪の毛だ。
手に入れるのは不可能だと思われたそれは、拍子抜けするほどにあっさりと彼女の手に入った。
.
- 57 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/17(土) 22:34:13 ID:adaBwzoE0
-
そこから先は、簡単だった。
彼女はおまじないの手順通りに、すべての準備を完了させたよ。
人形を作るのだけは大変だったそうだが、それでもなんとかキュートは人形を完成させた。
o川;゚ワ゚)o「できたっ!」
ネーノに似せた、マスコット人形。
その体の中には白い綿と、おまじないのために必要な道具たちが詰め込まれている。
縫い目がところどころ荒い不恰好な作りだったが、それなりに上手く出来たらしい。
ややつり上がった細い目と、にこにこした口元は彼にとても似ていたそうだ。
o川*- -)o「根野 ネーノくんと、両思いになれますように」
そして、彼女は彼の名前を唱え、お祈りをした。
両思いになれますようにと、彼女は心の底から真剣にお願いした。
o川*^ー^)o「ネーノくん、だいすき」
そして、作った人形を誰にも見つからないように彼女は持ち歩きづつけた。
o川*゚ー゚)o「叶うといいなぁ、おまじない」
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