ジャンクション集のようです
('A`)われら衆生にあらず、のようです



42 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/06/22(土) 22:51:54 ID:AsUrEwlQ0







  【('A`)われら衆生にあらず、のようです】







....

43 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/06/22(土) 22:52:35 ID:AsUrEwlQ0
 
中学に入学して2週間が過ぎた。

自分でも驚くぐらい何事も無く時間が過ぎていって、
制服の硬さと渡り廊下からの景色だけが
小学校との違いを感じさせていた。

授業も進研ゼミの漫画で煽られまくった割には大したこともなく、
(ちゃんと全員が写し終えるまで黒板を消すのを待ってくれるし)
給食のメニューも小学校時代と同じだし、何より……。



('A`)(誰とも喋らずに過ごすってのも、小学校時代と同じだし……)

ぺちゃくちゃという喧騒の中でコンソメスープをすするエアポケットのような
自分の姿も、以前と何一つ変わっていなかった。

44 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/06/22(土) 22:53:20 ID:AsUrEwlQ0
 
('A`)(あ……このスープ、コーン入ってる……
   やだなぁ、なんでしょっぱいスープに甘いコーンを入れるんだろう?
   パイン入り酢豚を嫌う人は多いのに、みんなコーンには寛大だな……)

中学に入ればきっと環境が変わって、友だちも増えるし
みんなで授業サボって河川敷でゴロゴロするぞーなんて幻想はやはり幻想で、
環境が変わっても自分が変わらなきゃ現状のままだってことを痛感した。

('A`)(小学校の時はこっそり残してたけど……中学生だし
    完食した方がいいのかな……あぁ、憂鬱だな、
    きっとこの先グリンピースとかも待ち構えてるだろうし)

スプーンの先でコーンを突っつくなんて、乙女みたいな行動してみても
誰も「かーわいいー」とは言ってくれないし、「きもーい」とも思ってくれない。
だって、誰も注目しちゃいないもの。僕に。

45 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/06/22(土) 22:54:04 ID:AsUrEwlQ0
 
何も、自分を変えるための努力を全くする気がなかったわけじゃない。
このままズルズルとシングルで流されてると、修学旅行の夜を
一人で過ごすかもしれないと思ったし、それはヤバイと焦った。

('A`)(めっちゃウケる自己紹介とかも考えてたのにな)

だけど、いざクラス初めての顔合わせで、自分の番になり
皆の前に出た瞬間、緊張が一気に口から水分を奪った。
僕は、凡庸なあいさつを口内ベロベロになりながら言うしかなかった。


('A`)(前からずっと暖めてた、あの自己紹介さえ言えればこんなことには……)

その自己紹介も、『どうも福山雅治です!レグザ!なんてな!』という内容だったので、
むしろ言わなかったほうが良かったかもしれない。

46 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/06/22(土) 22:55:09 ID:AsUrEwlQ0

キーンコーンカーンコーン

('A`)(この鐘の音ってどっかの教会かなんかの鐘の音だったよな……)

時間は過ぎて放課後になった。
僕は部活に入っていないので、まっすぐ帰宅することにした。

いや、正確に言えば部活に入っていた。そして今は辞めてしまっている。
入学当時、部活を決めあぐねていた僕は、とりあえず文芸部に籍をおいた。
小説や絵をつらつら書けていればいいと思ったからだ。

('A`)(ところがどっこい……人と人が集まって何かをするって行為に、
    運動部も文化部も、向き不向きも関係ないってことだよね……)

やはりぶち当たるのは人付き合いの壁だ。

同じ部室にいる以上、そばに人がいて、人がいる以上、
何かしらのコミュニケーションをとらなくてはいけないわけで、
そんな状況で創作できるはずもなく、いたたまれなくなりすぐに退部した。

47 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/06/22(土) 22:56:02 ID:AsUrEwlQ0
 
何が悲しいかって、退部を誰も引き止めなかったことだ。
そりゃ、形式上「本当にいいの?」と顧問は聞くけれど、
それもあくまで形式上のものであって、本人意思が0.0001%でも絡めばそっちに傾く。

結果、マックの60秒キャンペーンもびっくりのスピード対応であれよあれよと、
半ば追い出されるようにして僕は帰宅部になった。

('A`)(居てもいなくてもいい奴だとは自分でもじゅうじゅう思ってたし!
    僕が心配してるのは、そんなことじゃなくて、入学したての生徒を
    ホイホイ退部させちゃって先生の立場が悪くならないかってことだし!)

('A`)(はぁあ、いいもんいいもん。どうせ中学の部活なんかで
    僕の才能を発揮できるだなんて思っちゃいないもん。)

僕みたいな根暗でコミュニケーション不全な子供には
定番なあるあるネタだが、こういう子に限って自分には隠れた才能があり、
他人より優れているんだと思い込みたがる。

48 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/06/22(土) 22:57:01 ID:AsUrEwlQ0
 
地味で目立たないことによるコンプレックスや
話題の中心になれないことに対するみじめさが積もり積もって
そんな突拍子もない妄想として現れてしまう。

('A`)(最年少芥川賞とか取っちゃったらどうしよう……うふふ)

百回生まれ変わっても取れるはずもないのに、取る自信が何故か湧いてくる。

なにかしらの形で才能を発揮させ、なにかしらの賞を貰い、
普段は自分を見向きもしないクラスメートたちの前で表彰され
「まさかあいつがあんなすごい奴だったとは!」と思われたい欲求が渦巻いている。

('A`)(そのためにも、まずは前哨戦として小説コンクールで入賞しなくちゃ!)

49 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/06/22(土) 22:58:20 ID:AsUrEwlQ0
 
その前哨戦として選んだコンクールとは、とある文学雑誌が主催の
小規模な小説コンクールであり、僕は数カ月前に初めてそれに原稿を送った。

('A`)(たしか、一時選考の結果が今日発売の雑誌で分かるはずだけど)

"たしか〜〜はず"なんて構文を使っているが、
実はバッチリ日にちを覚えているし、今日という日が気になって気になって
ゲロを吐きそうなぐらいだったのだ。

作家として鮮烈デビューを飾りクラスメートを見返すためのワンステップ、
それが今回の入賞だと考えていた僕にとって、今日の選考結果は
まさに自分を支える柱が折れるか折れないかの分かれ道だった。

('A`)(僕の文学理論を文壇に叩きつけてやるんだ!)

これは建前で、心の奥底はあくまで劣等感への復讐に燃えている。
こんなくだらない復讐に使われるコンクールも不憫である。

50 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/06/22(土) 23:00:09 ID:AsUrEwlQ0
 
僕は下校途中も、そのコンクールの結果をずっと気にかけていた。
落選して「やっぱりね」と涙目になるにしろ、万が一入賞するにしても、
とにかく早く確認してスッキリしてしまいたかった。

('A`)(近所の本屋で確認したいけど……学校じゃ寄り道禁止って規則だしなぁ……
    たいして売れてる本屋でもないし、見つかる可能性は少ないだろうけど……
    もしも見つかっちゃったら)

変なところで真面目さを失いたくなかった僕は、規則を破ることに
戦々恐々していた。それは良心がとがめるからとかいう理由じゃなく、
自分が悪事を犯せば、悪人を笑えなくなるからである。

あと、単純に先生にバレて怒られるのも怖かった。

('A`)(生まれてから今まで、3桁ぐらい怒られてるはずだけど、
    やっぱり怒られるのは怖い……)

51 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/06/22(土) 23:01:43 ID:AsUrEwlQ0
 
('A`)(悪人は、怒られることに慣れてるから悪人になるのかな?
   これから先、何度怒られても、怒られることに慣れる自信ないなぁ……
   ちょっと大声出されるだけでもう無理)

どんなに怒られても怒られることに慣れないその理由は、
僕自身が「怒られる=嫌われる」だと思い込んでいるからだ。

普通、人は怒られると反省する。反省して学び、怒られることをしなくなる。
だが僕は反省しない。反省しないから何回も怒られる。
何回も怒ると、怒る方も最初こそ親切心で怒っていたのがさすがに本気で僕を嫌ってくる。

反省しないくせに嫌われることには敏感だから、
怒られるとは嫌われることなんだと直結して考えてしまい、
いつまでも怒られることに慣れない。要するに、怒られ下手なのだ。


('A`)(でも結果は見たいし本屋寄ろっーと)

こうやって、怒られ下手なのに規則は結局破ってしまう。

52 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/06/22(土) 23:03:50 ID:AsUrEwlQ0
 
下校ルートを変更してまで本屋の前に来たくせに、
僕は数分間尻込みしていた。

('A`)(もし本屋にいるところを誰かに見つかってチクられたらどうしよう……)ウイーン

('A`)(いやいやいや、でも僕が本屋にいることを知ってるってことは
   そいつも本屋にいるってことだよね?同罪だよね……?
   だからチクられる心配は無いのかな……)ウイーン

('A`)(でも、死なばもろともみたいな感じで自分を犠牲にしてでも
    僕の規則違反をチクる人だっているかもしれない……
    それに外からだって入店する瞬間見られたら終わりだし……)ウイーン

こうやって自動ドアの前をうろうろするもんだから、
ドアが開いたり閉まったりで落ち着かず、そのせいで店員から白い目で
見られつつあることに気付いた僕は、覚悟を決めてサッと入店した。

53 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/06/22(土) 23:07:07 ID:AsUrEwlQ0
 
('A`)(さーて、目的の雑誌は……あった)

今日発売ということでその文芸雑誌は平積みされており、
比較的早い段階で発見することは出来た。

('A`)(載ってなくて当たり前……載ってなくて当たり前……
   載っててラッキー……載ってなくて当たり前……))

落選時のショックを低減させるための呪文を呟きながら、
震える指で僕はページをめくる。

('A`)(第○回△賞コンクール……第一次選考通過者……)

指で紙面をなぞりつつ、一人ずつペンネームを確認していく。
この段階で僕はもう学校の規則がどうとか気になってはいなかった。

54 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/06/22(土) 23:09:37 ID:AsUrEwlQ0
 
('A`)(欝田ドク実……欝田ドク実……、一段目には無い、
    二段目にも……無い)

欝田ドク実は、僕のペンネームだ。
本名の"欝田ドクオ"を女性風にモジっている。
本名から遠ざからずかつ茶目っ気のある名前を、と必死で考えた結果がコレだ。

本名から遠すぎると僕の作品だと分かりにくいし、
女性風の名前だと、いざ僕が男性だってバレた時に話題になる。
もうデビューした後のことを考えているんだから、浮かれっぷりがハンパではない。

だが、肝心のコンクールの結果はというと。

('A`)(無い……無い……どこにも……僕の)

欝田ドク実の名は、紙面のどこを見ても印刷されておらず、
あれほど「落ちて当たり前」と念じていたにもかかわらず
いざ落選した時のショックは、予想よりはるかにデカかった。

55 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/06/22(土) 23:10:33 ID:AsUrEwlQ0
 
('A`)(わ……分かってたし!は、初めて送ったコンクールなんだから
   通らなくて当たり前だし!むしろ通ったほうがキチガイだし!
   オリンピックが参加することに意義があるなら、
   コンクールだって原稿を送ることに意義があるんだし!
   むしろこれからだし!これをバネにすればいいんだし!
   全然こたえてないよ!もう平気!ちょっとの挫折が、
   人を大きくするんだもんね!!)

僕はその時、今世紀最大に泣きそうな顔をしていたし、
もう二度とコンクールに参加する気はなくなっていた。

折れやすい僕の心は、一回の落選で古い洗濯バサミ並に
ボロボロに壊れ、小説への興味は一気に萎んでいったのだ。

雑誌を持つ手は震え、冷たい汗が脇を流れていく。

56 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/06/22(土) 23:12:49 ID:AsUrEwlQ0

雑誌を置いて店を出るきにもなれずに、じっとそのまま立ち尽くす。

('A`)(こんな情けない姿、誰にも見せたくない……)

と思った瞬間にかぎって、不幸は訪れる。

('A`)(あーあ、そりゃ僕だって落ちるとは思ってたよ、思ってたけどさ、
    こんなに現実を突きつけることないじゃん、
    何段階かオブラートに包むことも出来ないわけ?)トントン

('A`)(中学生がこれだけの原稿を送っちゃったわけだよ?
   その辺のことも考慮して、手心加えようなんて気もないのかな?
   "荒削りだが光るものがある、今後に期待"とか言ってくれないの?)トントン

そこでようやく、僕は肩の違和感に気付く。

('A`)(さっきから……肩をトントン指で叩かれてるけど……もしや)

57 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/06/22(土) 23:14:23 ID:AsUrEwlQ0
 
(;'A`)彡 ソーッ

乱れる息を整えつつ、恐る恐る後ろを振り向くと、そこには。

( ^ω^)「ドクオだよね?何読んでるんだお?」

(;'A`)「な、内藤……くん」

まんじゅうのような丸顔に無邪気な笑みをたたえた、
同じクラスの内藤ホライゾンが立っていた。

(;'A`)(み、み、見られたーっ!よりによって同じクラスの!
    全然話したこと無いのに何でこんな時だけ話しかけてくるのーっ!?
    涙目なところも見られたん!?いやああああああ!)

気が動転し、パニックになった僕は雑誌を小脇に抱えて
その場所から走りだした。

(;^ω^)「ドクオ!?」

58 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/06/22(土) 23:16:09 ID:AsUrEwlQ0

本屋内をわずかに駆けた所で、呼吸を整える間もなく、
急に何者かに肩を掴まれた。

(;'A`)「はぅっ!?」

またまた驚いて、掴んだ人物をよく見ると
緑色のエプロンに名札を提げた男性が、上から僕を睨みつけていた。
この本屋の店員だ。

( ゚∀゚)「君、その雑誌どうするつもりだったの?」

('A`)「え……?あ……」

どうやらこの店員はなにか勘違いをしているみたいだ。
この時、しっかりとハキハキ身の潔白を証明出来れば、
すぐに開放されただろうが、そんな勇気があれば友だちも作れるわけで。

59 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/06/22(土) 23:17:10 ID:AsUrEwlQ0
 
( ゚∀゚)「いやー、ずっと怪しいと思ってたんだよ。
    入り口でウロウロしてるし、変に緊張した態度だし、
    ありゃーやるなって思ってたんだよな。
    だからずっと君のこと見張ってたんだよ。
    中学生?学ラン着てるし、そうだよね。ブレザーじゃないってことは、
    VIP中か?」

('A`)「ぁ……ゎぅぃ、ぇヶ」

店員は間髪入れずに喋り続け、完全に自分のペースに持ち込んでいる。
僕はどうすることも出来ず、ただ唇を半開きにして
「あ」とか「う」とかの母音をこぼすしかなかった。

( ゚∀゚)「とりあえず、他のお客さんの邪魔になるから、
     事務所来てくれる?学生証とか持ってたら、
     それも見せてもらうよ」

学校。家、親、将来、警察。
いろいろなキーワードが浮かびつづけ、頭の容量を圧迫する。

60 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/06/22(土) 23:17:56 ID:AsUrEwlQ0

盗むつもりなんか毛頭なかった。
だけど、僕の行動は確かに疑われてもおかしくないものだった。
それがわかっているから、僕は強気に出ることも出来なかった。

じわじわと熱くなる目頭に、涙が溜まっていく。

( ゚∀゚)「ほら、早くこっち来いって」

('A;)「……ぁい」

店員さんだって、僕が怪しいから引っ張っただけで、
悪意があるわけじゃない、仕事だからやっているんだ。
そう思うと、どうしようもなかった。

どうしようもない自分が、これまた情けなかった。

61 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/06/22(土) 23:20:25 ID:AsUrEwlQ0

( ゚∀゚)「何やってんの?早く来ないとお客の邪魔になるって
     さっきから何べんも言ってるでしょ?」フイッ

店員は力強く僕の腕を引っ張るが、素直に従って事務所に行けば
泥沼にはまってしまいそうで、かと言って逃げる気にもなれず、
その場に突っ立っていると、店員の語気はどんどん強く、苛ついたものになる。

(;A`)ハフッ、ハァ

この先の状況が全く見えてこず、どんどん感情が沈む一方であったその時。
この絶望的状況を打破する声が、僕達に向かって聞こえてきた。

(;^ω^)「ちょと、ちょっと待って下さいお!」

( ゚∀゚)「あ?」

('A`)「な、内藤くん……」


内藤くんだ。

62 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/06/22(土) 23:21:27 ID:AsUrEwlQ0
 
彼は、逃げた僕を追いかけた先でこの状況を発見したようで、
驚いた表情のまま店員との間に割って入った。

(;^ω^)「ドクオ……、えと、この人がどうかしたんですかお?」

( ゚∀゚)「どうかしたもなにも、この雑誌を盗ろうとしてたみたいだから……
     何?この子の同級生?」

(;^ω^)「そうですけど」

('A;)「……」

その時の僕は、内藤くんへの申し訳ない気持ちでいっぱいになっていた。
僕に関わったあまりに、こんな面倒くさいことに巻き込んでしまった。
幻滅され、嫌われたであろうと思うと、僕は自分が疫病神かなにかに思えてきた。

63 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/06/22(土) 23:22:07 ID:AsUrEwlQ0

だけど内藤くんは、その言葉を鵜呑みにすること無く、
僕の無実を信じて、店員に抗った。

(;^ω^)「ま、万引きなんてドクオがする筈がないですお!」

( ゚∀゚)「そりゃあ、君もクラスメートを疑いたくないだろうけど
     現に、怪しい動きをしてたわけだし」

(;^ω^)「もう、怪しい動きってだけで、決めつけるのは早いでしょうに!」

( ゚∀゚)「雑誌を持ったまま急に走りだしたしねぇ」

(;^ω^)「それは、僕が急に話しかけたもんで、びっくりしただけですお!」

( ^ω^)「ねっ、ドクオ!?」

確かに……僕が突然走りだしたのは、内藤くんと会い動揺したからであることに
間違いはないわけで、僕も紛れも無い真実のことに同意することは出来る。

('A;)「……ぅん」コクッ

内藤くんのナイスアシストに心で感謝しつつ、僕は精一杯頷いた。

64 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/06/22(土) 23:23:21 ID:AsUrEwlQ0

その後も内藤くんは、1つずつ僕に確認を取りながら、
僕の無実を証明してくれ、最終的に僕は店員にしぶしぶと許されて、
無罪放免となった。

( ゚∀゚)「今日は、彼に免じて君の無実を信じるよ。
    だけど、疑われるような行動はするんじゃないよ」

('A`)「は、はい」

( ゚∀゚)「じゃあ、今日はもう帰っていいから」

(*^ω^)「良かったお、ドクオ!」

その瞬間、僕の心から湧き出る喜びを、思い切り噛み締めた。
今まで止まっていた血の流れが、一気に全身を駆け巡っていくようだった。

本当に、本当に、僕はもう二度と家には帰れないかと思っていたのだ。
一生を犯罪者の烙印を押されて過ごすかとまで思っていたのだ。
それを……この、内藤くんが。

65 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/06/22(土) 23:24:37 ID:AsUrEwlQ0

本屋から離れて、僕たちは夕暮れの住宅街を並んで歩いていた。
内藤くんはぷりぷりと怒りながらも、僕の歩くペースに合わせて歩いてくれた。

(#^ω^)「まったく、それにしてもあれぐらいでドクオを
      万引き犯だと疑うなんて、酷い店員だお!
      あんな本屋、二度と行かない方がいいお?」

('A`)「て、店員さんもあれが仕事だし……それに、僕が悪かったのも、
   事実なんだし……」

(;^ω^)「ドクオは優しすぎるお、確かにそれもいいんだけど、
      もうちょっと開き直ってもいいんだお?」

('A`)「う、うん……それより、ありがとう。本当にありがとう……
   僕、僕、もうあれ、本当にだめかと思って……
   内藤くんがいなきゃ……」

内藤くんのサポートがない場合のルートの未来を想像すると、
恐ろしさと、今の状況の安心とが代わりばんこに去来し、
また涙が自然に湧き出してきた。

66 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/06/22(土) 23:25:21 ID:AsUrEwlQ0
 
( ^ω^)「泣くなおドクオー、ドクオは悪いことしてないんだお?
      はい、これで涙とハナ拭くお!」

内藤くんは制服のポケットから、ポケモンの柄が印刷されたタオルハンカチを
取り出して、僕に渡した。
僕はそれを有難く拝借し、鼻水以外の液体を拭った。

('A`)「でも……どうして、僕が無実って信じてくれたの?」

( ^ω^)「ドクオは万引きなんか出来ないってわかってたもの」

('A`)「……僕が臆病だから?」

( ^ω^)「いや、ドクオが優しいからだお。
      学校でも、こっそりゴミを拾ってゴミ箱に入れてたり、
      みんなが通るまでドアを開けてくれてたり……僕はそれを知ってたんだお」

('A`)「……」

それは、僕の親切心からじゃなく、あくまで皆に好かれようとしての、
あるいはバチが当たることを恐れての行動だったので、
内藤くんが褒めてくれても、素直に喜べなかった。騙してるような気にさえなった。

67 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/06/22(土) 23:26:46 ID:AsUrEwlQ0
 
(;^ω^)「いつかドクオに声をかけようと思ってて、
      今日本屋で見かけたから話しかけたんだけど……
      それでドクオが疑われてしまって本当にゴメンだお!」

心から申し訳ない表情に顔を歪ませて、内藤くんは僕に手を合わせた。

('A`)「な、内藤くんは全然悪くないってば……」

( ^ω^)「その内藤くんってのもなかなかむず痒いお、
      ブーンって呼んでくれないかお?」

('A`)「ブーン……?」

( ^ω^)「小学校からの僕のあだ名だお、なんでこう呼ばれるようになったかは
      ぶっちゃけあんまり思い出せないんだけど……
      自分でも気に入ってるんだお、このブーンってのが!」

( ^ω^)「あ、豚みたいだからブーンって訳じゃないお!?たぶん!」

('A`)「……フッw」

68 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/06/22(土) 23:27:49 ID:AsUrEwlQ0

('A`)「ブーン……くん」

( ^ω^)「ブーンにくんは要らないお、ブーンでいいお?
      言いにくいなら無理しないでいいけど」

('A`)「……ブーン、今日のことは、内緒にしてくれる?」

( ^ω^)「万引き疑われたことかお?確かにドクオにとっては
      イヤな出来事だろうし、あんまり聞きたくないおね。
      もちろん内緒にするお!」

('A`)「イヤ、それじゃなくて……」

( ^ω^)「ん?そうじゃないって?」


('A`)「その、本屋に寄り道したことを、黙ってて欲しいんだ……」

69 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/06/22(土) 23:28:55 ID:AsUrEwlQ0

( ^ω^)「……プッ、くく!」

(*^ω^)「なんだお、そっちかお!」

ブーンは、我慢できないといった感じで、大声で笑いながら
僕の背中を痛いくらいにバンバンと叩いた。

(*^ω^)「やっぱりドクオ、最高だお」

('A`)「……へへ」


何が最高なのかはまったく理解できなかったけど、
あんまり悪い気はしなかった。ただただ、ブーンの優しさが
身にしみた、一日だった。

70 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/06/23(日) 01:45:06 ID:JePmjNLw0
いきなりどうした?



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