バレンタイン('、`*川川 ゚ -゚)ストレンジアのようです
前編 後編



57 名前:同志名無しさん[] 投稿日:2013/02/15(金) 00:02:03 ID:a2a6xrN.0

                                                   − 7

ぬるり、とした感触が、妙に敏感に感じられる。
さっきまではあれほど鈍かった感覚が、元通りに戻っていた。

川 ゚ -゚)「ふふ、っ」

呆然とした私の顔を見て。
彼女はまた、今度は薄い唇を、私の唇に押し付けた。

('、`;川「っ!」

私は慌てて身体を引く。
違う。確かに私は、彼女に憧れていた。彼女のようになれたらいいと思っていた。

けれど、これは違う。
例え夢の中でだって、こんなことがしたかったんじゃない。

私は、彼女を押し退けようとする。

('、`;川「や、やめ、っ――」

両手は、動かなかった。

('、`;川「――え……?」

59 名前:同志名無しさん[] 投稿日:2013/02/15(金) 00:04:26 ID:a2a6xrN.0
もっと力を入れて、腕を引く。
肘と手首の辺りで、ぎしぎし、と不快な音が鳴る。

何かが、私の腕に絡み付いて拘束している。

腕だけではなかった。
両足の足首も、同じ。

('、`;川「なに……なんなの、これっ」

ぬるぬるとした感触。
何度引っ張ってもそれは固いゴムのように弾力のある感触を返す。

川 ゚ -゚)「待っていた。君がここへ来るのを、ずっと」

口元を拭って、彼女は続ける。
ゆっくりと……両腕を、複雑な模様で埋め尽くされた石の寝台に付いて、身体を起こす。

川 ゚ -゚)「私には、君が必要なんだ」

彼女が何を言っているのか、全く理解できない。
怖い。私の憧れていた彼女が、奇妙なことを言い出すのが。

('、`;川「や、やめてよっ!」

言いながら、目を閉じて念じる。

これは夢だ。夢だから、覚めればいい。
けれど私の心を読んだように、彼女はゆるゆると首を振った。

60 名前:同志名無しさん[] 投稿日:2013/02/15(金) 00:05:46 ID:a2a6xrN.0
川 ゚ -゚)「君にはできないさ。
     大丈夫だ、誰の邪魔も入らない」

('、`;川「何でよっ。こんなの、夢じゃない。
      あなたなんて、私の夢の中だけの――」

私はきっとベッドの上でうなされているだけ。
だから、気を強く持てば。

そう思った矢先に。
彼女はまた、私の唇を、唇で塞いだ。

( 、 *川「ん、ぐッ……?」

目の前が、視界が彼女の整った顔で覆われる。
端正なその顔が、今は怖い。

そして。

ぷち、ぷち、と。
胸元で音がする。

( 、 ;川「ん、んんッ!」

彼女が、私にキスをしながら、パジャマのボタンを外しているのだと分かる。
腕も、足も動かない私にはそれを止めることができない。けれど必死で、身をよじる。

62 名前:同志名無しさん[] 投稿日:2013/02/15(金) 00:07:22 ID:a2a6xrN.0
すると。

川 - )「ふ――」

口の中に……口の中の奥にまで。
生温かい、柔らかいものが、一気にずるりと差し込まれる。

( 、 ;川「ふ、んぐ、ッ!!」

思わず、えずく。

(;、;*川「んくっ……げほっ!」

むせる私に構わずパジャマのボタンを外し終えると。
彼女は私のブラを、そのままたくし上げた。

夜の暗がりの中、私の裸の胸が晒された。

( 、 ;川「あ、やぁっ……!」

その私の胸元に、何かが伸びて来たのが見えた。
それは手首から腕を伝い、上腕を伝い、ぬめぬめとした嫌らしい感触を肌に残して、
私の両方の胸の膨らみにまとわりついた。

(;、;*川「ひッ――!?」

黒く、ところどころがごつごつと盛り上がった、濡れたツタのようなもの。
それが粘り着く液体を分泌しながら、私の身体を這い上がってくる。

64 名前:同志名無しさん[] 投稿日:2013/02/15(金) 00:08:13 ID:a2a6xrN.0
はっきりと、その感触が分かる。

ナメクジや、イカやタコのような、粘膜に覆われた生き物の身体そのものだ。
そんな気色悪いものが上半身を這い回る感触に、両腕に鳥肌が立つ。

川 ゚ -゚)「大丈夫だ。怖がることはない」

優しい声。薄い笑い。
それはもう、私には嫌悪の対象でしかない。

川 ゚ -゚)「ただ……やはり、そのままでは駄目だな。
     君の身体は、汚い」

(;、;*川「な、何よっ。何が汚いのよっ!」

ずるずると、気色悪いものが身体を這い回る。
これの方が、よほど汚いに決まっている。
吐き気に耐えながら、私は叫ぶように言い返す。

川 ゚ -゚)「身体を綺麗にしないと、そうしないと――」

みしみし、と、両手首、両足首に力が加わる。
同時に、私の胸に絡んだそれにも同じように。

(;、;*川「うっ、ぐ、ッ!」

川 ゚ -゚)「――君を、"花嫁"に迎えることはできないんだ」

(;、;*川「……え……!?」

65 名前:同志名無しさん[] 投稿日:2013/02/15(金) 00:09:33 ID:a2a6xrN.0
一瞬、何を言われたのか理解できなかった。
けれど、聞き間違いではない。

急に。

粘液で濡れた、細長い「それ」が、私の両胸を……胸の先端を、ずるりっ、と、撫で上げた。
ぐちゅり、と不快な音が立つ。

( 、 *川「ひ、ぐッ!」

くすぐったいような、痛いような、痒いような感覚が走る。
一度だけではない。何度も、執拗に、それが胸全体を擦る。

( 、 ;川「う、あっ!」

その奇妙な触腕が持ち上がる度、粘液が糸を引いて垂れ下がった。
大きな軟体動物に抱え込まれたようだった。
人間の体温と同じくらいにそれが温かいのが、一層不快に感じられた。

……これは、夢だ。
   だとするなら、私は、こんなことを望んでいたのだろうか?
   こんな非常識な行為を、彼女に求めていたのだろうか?

違うはずだ。
けれど……

分からない。
不快な感触が思考を妨げて、まともに考えることができない。

66 名前:同志名無しさん[] 投稿日:2013/02/15(金) 00:10:17 ID:a2a6xrN.0
パジャマの内側を、足首から、太股の方へ。
上半身に絡むのと同じ感触が、這い上がってくるのが分かった。

( 、 ;川「ひ、っ!!」

本能的に恐怖を感じる。
這い上がってくるそれらがどこに向かっているのか、分かったからだった。

( 、 ;川「やだっ、嫌あ……っ!!」

抵抗も、空しい。
それは私の両脚の付け根に、ショーツの布地にまで辿り付くと……その中に、潜り込んだ。

(///*川「あ、あぁ……っ……!!」

胸を這い回られるよりももっと鋭く、敏感な感覚。

下着を押し上げて、それが私のその部分を、自分以外の誰も触ったことのない場所を這った。
そこ……性器の周囲ばかりではなく、その後ろの……お尻の方にまで、同じように。

怖い。
怖い!

食いしばった歯の間から、嗚咽が漏れる。
悲鳴を上げないよう我慢するけれど、涙がぼろぼろとこぼれた。

67 名前:同志名無しさん[] 投稿日:2013/02/15(金) 00:11:34 ID:a2a6xrN.0
(;、;*川「うっ、ひっ……ぐっ……!」

川 ゚ -゚)「大丈夫だ。怖がらなくてもいい。
     君は、何も心配しなくていい」

彼女は、優しく言う。
奇妙な服を着て、長い髪を広げ、私の額を撫でる。

なぜ、こんなことをするの? 私を、どうするつもり?
言いたいことが次から次へと浮かぶ、けれど、それは口に出す前に塞がれた。

彼女が、私の身体に残った、パジャマの下履きに手を掛ける。
そのまま、下着ごと、一気に膝までずり下ろした。

(///*川「ひ、あッ!!」

露わになった自分の下半身。それを見て、私は悲鳴を上げる。
私の下半身は……見られたたくないその部分には、黒い、長い、ナメクジのような物体が
びっしりと張り付いて、一斉に、不規則に蠢いていた。

彼女の手が、そこに伸びる。

(///*川「やだ、っ、止めてっ。お願いだから!」l

そこで初めて、彼女は僅かに困ったような顔をする。

川 ゚ -゚)「それは困る。これは、どうしても必要なんだ」

68 名前:同志名無しさん[] 投稿日:2013/02/15(金) 00:12:21 ID:a2a6xrN.0
ぐちゃぐちゃと音を立てて蠕動する群の中に、彼女の白い手が差し入れられる。
彼女の指は……それをかき分けて、私の身体に、直接触れた。

(///*川「あぅっ……あ、っ!」

粘液でどろどろになったその部分を、柔らかい箇所をかき分けて、固いものが触れる。
それが……彼女の指が、私のそこを、こね回した。

(///*川「ひっ、やッ、はぁっ……!」

私は、自分で、そういう目的でそこを触ったことが、殆どない。
それがとても惨めな、みっともないことのような気がして嫌だった。
なのに。

川 ゚ ー゚)「可愛いな。
     君は、やはり私が見込んだ通りだ」

彼女は、笑う。笑って、私の顔を見つめる。
そして私のそこを、複雑な、肉の襞になった場所を何度も弄ぶ。
私は歯を食いしばって、首を左右に振ることしかできない。

ぬるり。
得体の知れない粘液で濡れそぼった彼女の指の先端が、入り口に滑り込んだ。

(///*川「ひ、はッ!?」

胸を這い回っていた、細い「それ」が、両胸の乳首を絡め取って、締め上げた。
身体の中心にまで届くような鈍い衝撃で、一瞬呼吸が止まる。
周囲をくるりと締められて潰れた乳首が、倍ぐらいの長さに伸びたように見えた。

69 名前:同志名無しさん[] 投稿日:2013/02/15(金) 00:13:13 ID:a2a6xrN.0
(///*川「き、ッ――――!!」

両脚の付け根で、肉の割れ目に埋もれていた、小さいけれど一番敏感な部分が。
何かに噛みつかれ、吸い出されるような陰圧が、一気に掛けられた。
その周囲を固い、白い彼女の指が、揉みほぐすように愛撫する。

現実なのか夢なのかさえ定かでない、どこか知れない場所。
四肢を拘束されていて、得体の知れないモノが全身を這い回っている。
憧れていたと思った女性が、私の身体を辱めている。

異常だ。
全てが、狂っている。
それなのに。

(///*川「う、うぅ、あッ、ああッ、あ……あああ――――!!」

太股に、ぎゅう、と力が入り、一気に弛緩する。
同時に内股がぶるぶると震えて……そして一気に、全身の力が弛んだ。
それと同時に、生温かい液体が太股に広がるのが分かる。

(///*川「……あ、うっ……ああぁ……」

ぴしゃぴしゃと、横たわる石の寝台に水が落ちる音。
私が……失禁してしまった、音だ。

恥ずかしいのを通り越して、惨めで情けなくて、私は死にたくなる。
夢でも現実でも関係ない、こんな場所から早く、逃げ出したいと願う。

70 名前:同志名無しさん[] 投稿日:2013/02/15(金) 00:14:34 ID:a2a6xrN.0
( 、 *川「う……あ、っ……」

何も見たくない。見られたくない。
両目をぎゅうと瞑って、首を振る。

……早く覚めて。
   これは夢だ。夢だ。夢だから、早く……!

願いは叶わなかった。
私の世界のはずの夢の中で、私は無力だった。

71 名前:同志名無しさん[] 投稿日:2013/02/15(金) 00:15:21 ID:a2a6xrN.0
両腕を拘束している「何か」が、私の上体を、ぐい、と強い力で引き起こす。

(;、;*川「ひい、っ!!」

同時に同じものが両方の太股とふくらはぎを束ねて幾重にも巻き付き、締め上げた。
そのまま、左右にぐい、と広げられる。

(;、;*川「やっ……や、やだっ、嫌っ!」

酷い格好だった。
私は、両脇を抱えられたまま和式便器にしゃがんで用を足すような姿勢をさせられていた。

そうしている間も、全身を這い回るものの動きは止まらない。
不自然な姿勢を強要されながら私は、乳首を、股間の敏感な場所を、刺激され続けていた。

川  ー )「ふふっ。ふふ……くくくっ」

目の前でひざを突いている、彼女。
笑う。愉しそうに。じゃれ合う小動物を見るような、愛おしさすら感じる視線をして。
笑いながら自分自身の衣服の裾をたくし上げ、そして、脱ぎ捨てた。

(;、;*川「あ……!」

暗闇の中に真っ白い肌が、それ自身が光っているように、ぼうっ、と浮かび上がる。
精巧な人形のような、美しい、汚れ一つない肉体を私に誇示するように。

私は呆然と、その身体を見る。
整った膨らみの両胸の間、ちょうど心臓に当たる部分を。

72 名前:同志名無しさん[] 投稿日:2013/02/15(金) 00:16:20 ID:a2a6xrN.0
……長さ20センチほどの傷が縦一直線に走り、肉がぎざぎざに盛り上がる。
   彼女の身体に唯一残っている傷は、あの「夢」の中で私が受けたのと全く同じ箇所だ。

川 ゚ -゚)「さあ、おいで。
     もう少しだ。もう、あと少し――」

その言葉に応えるように。
私の全身が、ずりり、と引きずられる。

そして、暗闇に広がったその長い、長い髪。
その先を追い、初めて私は……私の全身を拘束し、戒めている「もの」の正体を知った。

風は僅かにしか吹いていないのに、広がった彼女の黒髪。
いや……それを「髪」と呼んでいいのだろうか。

彼女の「髪」は、背中の中程あたりを起点に複雑に絡まり、寄り集まり、自然に束ねられ、
そして何本もの様々な太さの束になったそれが先端に向かうにつれゴムのような質感に
変わり、男性器に似た先端から半透明の粘液を吐き出し、四方八方に伸びてうねった。

(;、;*川「い、嫌っ、嫌あぁ!!」

私は叫ぶ。
叫んで、どうにかして逃げようと身体を揺らす。

(;、;*川「何でよっ。夢なのにっ、こんなの、っ。
      やだっ、嫌だよっ!」

川 ゚ ー゚)「夢だというなら、覚めればいい。
      ただそれだけで、逃げられる……ふふっ」

73 名前:同志名無しさん[] 投稿日:2013/02/15(金) 00:17:23 ID:a2a6xrN.0
できるはずがない。
そんな確信に満ちた彼女の言葉。

私の目の前で膝立ちになる彼女の、その背中で「髪」が。
うねうねと、石の寝台を這い、私の足首を上り始める。
同時にまた全身を這い回る同じものが、ざわざわと動きを激しくして全身を愛撫する。

(///*川「ああぁ、嫌、いや、いや、やだっ、いやああぁぁ……!」

膝が震える。けれど脇から腕を抱えられて崩れ落ちることもできない。
私は目をいっぱいに開き、両脚の間から、真下から首をもたげるその黒い触手を見る。

はっきりとは見たことがない男性器のように、その先端がぱくりと開く。

そこから白く濁った液体をとろとろと流れ出させながら。
一杯に開かれて粘液を擦り付けられる、私のそこに。
本来なら男性を受け入れるための神聖な場所に……

私の、そこに……ずるり、と、進入した。

74 名前:同志名無しさん[] 投稿日:2013/02/15(金) 00:18:26 ID:a2a6xrN.0
( 、 ;川「……あ」

その一瞬、私が感じたのは、軽い衝撃のような感覚だけだった。
身体の内側に軽い引っかかりを感じて、そして、それがすぐに外側からの圧力で押し
のけられたような。

(;、;*川「あ、あ――」

徐々に実感する。

夢の中で。
なのに、ではない。

夢でも、現実でも同じだ。
私にとっては、同じ。

私は……

……今、初めて、自分が犯されているのだと実感した。

(;、;*川「あ、ああああぁぁ、あ……あ……!」

濁った液体を吐き出しながら、それは上下に動いて私の身体を出入りする。
所々にある、節か吸盤か何かのような出っ張りが、入り口の部分の肉を押し開く。
その度に体内に流し込まれた粘液が掻き出されて落ちた。

何かが、私の中で壊れてしまったと思った。

どうにか保っていた自分の精神がぽっきりと折れてしまって、叫ぶことも、抵抗する
ことも、夢なら覚めてほしいとそう願うことも、忘れてしまった。

75 名前:同志名無しさん[] 投稿日:2013/02/15(金) 00:19:12 ID:a2a6xrN.0
……夢。

……夢だ。
   その、はず。

……どちらでも、同じだ。
   同じ……私の衝撃は、同じ。

目の前が暗くなる。

もやがかかったような頭の中に、ぐちゅぐちゅ、ぐちゃぐちゃと、私の身体に進入する、
そしてその周囲の肉を揉みほぐす彼女の「一部」が立てる卑猥な音が響く。

(///*川「ああ……んあッ、あ、はぁ、っ!」

乳首を摘ままれる。
胸の奥の芯まで響くような感覚。不規則にこね回され、それが何度も、何度も続く。
上半身はがっちりと掴まれ、もう動けない。

強く突き上げられ、腰が浮く。
その瞬間、襞を覆う肉の花弁の形をしたそこを、ざらり、と擦り上げられる。
その刺激に腰を引くと、その瞬間にまたあそこを突き上げられる。

ろくに動くことすらできないのに、もがいた瞬間に責められる。
それを繰り返されて、私の腰はぶるぶると痙攣した。

(///*川「やぁぁ……やだ、やめ、てっ。
      お願い、おね、がいっ、やあぁ……!」

76 名前:同志名無しさん[] 投稿日:2013/02/15(金) 00:20:13 ID:a2a6xrN.0
……見ている。

彼女は、あの初めて会った日のような無表情で。
小首を傾げて、私をじっと見ている。奇妙な、深い、深海のような青い目で。

見られたくない。
彼女が何者でも、こんな姿を見られたくない。

(///*川「おねがいっ、たすッ、助けてっ。
      やだ、こんなのいやぁ……やだよぉ……いやあ、っ……!」

やがて彼女は、頷く。
乏しい表情、少し見ただけではそれとは分からないような満足の表情で。

川 ゚ -゚)「綺麗だ」

突拍子もなく。
また彼女は、その「綺麗」という言葉を口に出した。

……綺麗? どこが?

全身をべたつく粘液で汚されて、取り返しの付かないぐらい汚されてしまった。
そのどこが綺麗だと言えるの?

(///*川「なんでッ、どこ、っ、が……っあッ!」

私の頭をそっと撫でる。
場違いな仕草に、むしろ吐き気がこみ上げた。

78 名前:同志名無しさん[] 投稿日:2013/02/15(金) 00:21:55 ID:a2a6xrN.0
川 ゚ -゚)「いい子だ。
     だが、もっと、綺麗にしないと――」

がくがくと揺れる、私の肩に片手をかける。
彼女の白い手の甲。その上を彼女自身の「髪」は……愛おしげに、優しく這う。

背中から、また私のあそこを犯し続けているのと同じ触手が、伸びる。
それを握り、彼女はそれを私の股間に運ぶ。

川 ゚ -゚)「――身体の内側の汚れまで、全部」

呼吸をするようにぱくぱくと開き、のたうち、粘液を吐き出す先端。
彼女は、それを私の「そこ」にではなく……後ろに、お尻の穴の入り口に当てた。

そこ、は……!

(///*川「ひ、ひぃっ……や、やあああぁぁっ!!」

そんなところに、入るはずがない。
嫌だ、おかしい、彼女は狂ってる。絶対に、嫌だ……!

ぬめり、と。
生温かい感触が、太いものがそこに、排泄するための場所に押し当てられる。
私は歯を食いしばり、首を激しく左右に振り、腰を前後に動かして逃げようとする。

けれど、その抵抗も空しく。

その出口が力任せに押し開かれ。
めりめりと押し開くようにして、そこに、あそこに挿入されているのと同じモノが……
一気に、ずるりっ……と、侵入した。

79 名前:同志名無しさん[] 投稿日:2013/02/15(金) 00:22:27 ID:a2a6xrN.0
(///*川「あ、がッ――――!!」

普段は使わない場所が、逆に外側から入り込まれる。
吐き気がするような違和感。
額に脂汗が浮かぶのが分かる。

(///*川「ひ、ひッ、あ、嫌あああぁっ!
      抜い、っ、抜いてっ! や、やだあああっ!!」

ずるずる、ずるずると入り込んでくるそれが、内臓を擦りながら奥へ、進んでいく
感覚がはっきりと分かる。強い排泄感がこみ上げて、それが続く。

お腹の中に、熱いものが注ぎ込まれていく。
こぽこぽと音を立てて、直腸の中に熱い、粘つく液体がどんどん溜まっていく様子
さえ分かるような気がする。

(///*川「あうっ、ううぁッ、あああああああぁっ!!」

怖い。気持ち悪い。
私はただ叫ぶ。

身体に二本の、黒く伸びた男性器のような物体を突き込まれて、身体の内側まで
犯される。膣の中に、直腸の中にまで、どろどろと液体を流し込まれている。
急にお腹が張ってくるのが、はっきりと分かる。

(///*川「ぎッ、ああぁ、ぐっ、あ……や、ああああぁ……!」

80 名前:同志名無しさん[] 投稿日:2013/02/15(金) 00:23:07 ID:a2a6xrN.0
液体を吐き出す二本の触手が、あそこと肛門に交互に出入りする。

一気に長い距離を引きずり出されると内臓がめくれあがるような感覚が走って、
いきんだ訳でもないのに注ぎ込まれた液体がこぼれる。けれどまた貫かれ、こぼした
よりも大量に、同じ粘液を吐き出される。

ぶちゅっ、ぐちゅっ、と。
リズミカルに、前と後ろで交互に、液体が跳ね飛ぶ音がする。

ふいに、その二本の動きが遅くなり、そして止まった。

(///*川「あ、ぐッ……くっ……?」

動きは止まるが、それは止まっていない。
二本のそれは、止まらずに私の体内にあの、白く濁った液体を吐き出し続けていた。

じきに、お腹が……ぱんぱんに張って、ぐるる、と音を立て始める。

……身体の内側の、汚れまで……

(///*川「っあ、あ……、っ、き、ひッ!!」

身体の中でそれが大きく一度脈打つ。
彼女が言っていたことがなんなのか、理解する。
ぼやける視界の中で、彼女のむしろ優しげな笑顔を見る。

81 名前:同志名無しさん[] 投稿日:2013/02/15(金) 00:23:54 ID:a2a6xrN.0
川 ゚ -゚)「ふ、ふっ」

(///*川「…………っ!」

私は必死で腰に力を入れ、耐える。
締め付けると既に身体に入っているそれらが膣と腸の入り口に密着し、腰が砕ける
ような感覚に全身ががくがくと震える。

嫌、だ。
それは嫌、絶対に嫌だ。

(///*川「ふっ……くっ……あ、はぁっ――!!」

犬の「チンチン」のような格好をしたまま。
私は汗を流して、必死にその黒い、でこぼことしたモノをくわえ込もうとする。
少しでも耐えようと。

急に。
締め付けるそれが一気に膨らみ、びゅるびゅると、今までにないほど大量に、あの
汚らしい粘液を吐く。

(///*川「あ、ぐっっ!!!」

同時に、二本ともが外側に向かって……私の身体から、抜け落ちようとする。

(///*川「あ、あああぁっ!」

粘液が潤滑剤の代わりになり、どれだけ力を入れても、それを止めることができない。
少しずつ、少しずつ……それが、少しずつ、動き出す。

82 名前:同志名無しさん[] 投稿日:2013/02/15(金) 00:24:50 ID:a2a6xrN.0
(///*川「や、だ、だめぇっ、だめ、ダメ、ダメッっ……!!」

ずりゅっ、と。
身体に数十センチものホースを押し込まれて、それを一気に引き抜かれるような。
お尻とあそこの肉がめくれあがって、内側が身体の外にはみ出てしまうような。

そんな感覚を残して、一気に、引き抜かれた。

(///*川「がッ…………っ!?」

腰から下がなくなってしまったような痺れ。
自分の身体は、もう言うことを聞かない。

(;、;*川「やだ、いや……いやぁ、嫌、嫌、嫌、いやああぁぁっ!!」

力の入らないあそこから、どばっと液体が噴き出す。
姿勢を固定されて、目を逸らすこともできない。

自分のあそこが生き物のように開いて、そこから放尿するときのように勢い良く、
粘度の高い液体が太股の内側に、肉の陰唇に糸を引きながら飛び散る。

それでもどうにか、お尻には力を入れて、堪えようとする。
内股が、つれるほど痙攣する。
お尻の穴が、ひくひく、と動いているを感じる。

(;、;*川「やだっ、やだああぁ……やめて、っ、やめてよ……!!」

目の前のクーさん……そう私が呼んでいた「何か」は、静かに私を見ている。
なぜ泣くのか、抗議するのか、それすら理解する気がない、そんな醒めた目。

83 名前:同志名無しさん[] 投稿日:2013/02/15(金) 00:26:06 ID:a2a6xrN.0
(;、;*川「ぎっ……ふっ……ふっ……、っ……!」

肩で大きく息をして、括約筋に思い切り力を入れる。
むせそうになりながら、それでも何とか、耐える。

この後どうするかなんて、考えられない。
ただ、出すのは嫌だ。見られたくない、その一心で。

なのに。

川 ー )「……」

彼女は笑って。薄く笑って、片手を私の方に置いたまま、また手を下す。
下を向いて、脚を開かされた私の股間に、今度は何も握られていない手を下ろす。

そして手の指を乱暴に、私の肛門に突き込んだ。

(///*川「がっ、あはぁッ!!」

その中に溜まったものを掻き出すように。
指を曲げ、ぐりぐりと回転させて、入り口の肉をほじくる。

指を曲げて、伸ばして挿入し。
中ほどまで引き抜いてまた一気に押し込む。
微笑みを顔に張り付けたまま、私の顔を胸元から見上げて。

川 ー )「ほら、頑張れ。もう少しだ」

(;、;*川「やっ、あッ、がッ……あ、ひいいいっ!!」

84 名前:同志名無しさん[] 投稿日:2013/02/15(金) 00:27:06 ID:a2a6xrN.0
必死で堪え、その指を締め付ける。
締め付けたせいで腸の内壁が擦れ、腰が砕けかけて力が抜ける。
それでも、出してしまうのは嫌だ。

だから、悲鳴を上げ、涎を流しながらお尻の穴に力を込める。
彼女はそれに構わず……それどころか、私が力を入れているのを知って、余計に
力を入れ、指をずぼずぼと抜き差しする。

その手は動かしたまま、さらに身体を起こして。
私の口を咥えこむように、大きく開いた口で塞いだ。

(;、;*川「ン、むっ、ぐううッ、うぅぅっッ!!」

舌が私の口腔に入り込む。
ぬらりとした感触が私の舌を絡め取り、唾液を絡ませて暴れる。

空いた反対側の手は、私の胸に。
黒い、濡れた肉の「髪」の上から、私の胸をくびりだすように掴む。
ざわめく感触が、胸全体に密着する。

(;、;*川「んんんんっ、ふッ、ふあぁっ!」

全身を嬲られる。
筋肉が強制的にほぐされ、力が籠められなくなっていく。

川 ー )「ふ――はは、ッ」

腰を小刻みに上下させ、上ずった声を上げる私を彼女は嘲笑して。
下から上へ。指を私のそこに埋めたまま、思い切り突き上げた。
そして、一気に引き抜いた。

85 名前:同志名無しさん[] 投稿日:2013/02/15(金) 00:27:49 ID:a2a6xrN.0
(;、;*川「はあッ――――!?」

力を入れることも忘れて、大きく、肺の中の空気を一気に吐き出す。
瞬間、もう出口のすぐそばにまで溜まっていた粘液の塊が、ごぽっ、と溢れ出す。

もう……できない。我慢できない。
これ以上、力が入らない……耐えられ、ない。

そう悟った瞬間。
……お腹の力が、一気に緩んだ。

(;、;*川「あぁ、やっ、やあああああぁぁっ――――……!」

もう、止められなかった。
私は、涙と涎を垂れ流しながら、彼女の顔を見たまま。

大きく一度、身体全体が震える。
それから……ぽっかりと開いたお尻の穴から、それが……一気に、噴出した。

(;、;*川「ぁぁああああああああぁ――っ!!
      ひッ、やああぁっ、見ないでっ、いやッ、見ないでッ、いやあ――――ッ!!!」

止まらない。
びちゃびちゃ、ぼたぼたと音を立てて、直腸に注ぎ込まれた液体が止まらずに流れ出る。
それは固い石の台の上に広がっていき、私の足の裏と足首までもを濡らした。

86 名前:同志名無しさん[] 投稿日:2013/02/15(金) 00:28:51 ID:a2a6xrN.0
(;、;*川「いや、嫌だよ、こんなのって、いやあ……っ……!」

全身で唯一自由に動く首を振って、私は泣き叫ぶ。

見られたくなかった。
こんな姿を、誰にも見られたくなかった。

この肉のツタのような触手にあそこを犯されても、心の底にはまだ、自分が残っていた。
まだ彼女に反論して、抵抗する意志があった。
けれど、それも、もう、粉々に砕けてしまった。

色々な気持ちが詰まっていた胸の中が、急に空っぽになってしまったような気がした。

(;、;*川「ううっっ、ひぐっ。
      ふ、ぐッ……あああ、い、や……」

腰が大きく一度、上下する。
最後に身体の中に残っていた粘つく液体の固まりが、びちゃり、と下に落ちた。

手足の拘束が緩む。
私はそのまま前に、土下座をしたまま崩れ落ちるような姿勢で石の寝台に倒れた。

(;、;*川「はっ……、はあぁっ……あ、あ……っ……」

体力はもうこれっぽっちも残っていない。
私は石の表面一面に刻まれた奇怪な文様に頬を押し付け、ただ肩で息をする。

87 名前:同志名無しさん[] 投稿日:2013/02/15(金) 00:29:33 ID:a2a6xrN.0
後ろにつきだした姿勢になった、私のお尻に。
脚を開いたせいで無防備なその前の箇所に。
間髪を入れずにそれがまた、突き込まれた。

(///*川「あ、ぐッ……」

また二本の黒い触手が私の二つの穴に出入りして、粘液をまき散らしながら内臓を犯す。
一回目よりももっと乱暴に、激しく、ふたつの入り口の筋肉を摩擦する。
ぞわぞわと、寒気のような震えが下半身から、全身に広がる。

そしてまた、一気に引き抜かれる。
粘液にまみれた性器と肛門が、じゅぽ、ぶじゅっ、と下劣な音を立てる。

(///*川「う、ふうッ……、はあぁっ……」

股間に大きな穴が二つ空いてしまったようで、力むことすらできない。
先端が穴から抜き出されるのと同時に、また私は粘液を排泄した。

(///*川「はあ、あ…………、ッ」

脱力し、顔を横倒しに石の台にうつぶせに崩れ落ちる。
その先、闇の中に、きらきらと光るものが見えた。

暗がりに慣れていた視界に、それの正体が浮かび上がる。
それは……あの、前に見た光景の中の、あの歪な人影。

(;;:::゚;.:,;゚:):::゚;.:,;゚:)

ちぐはぐな形をした、黒ずんだその人影がいくつも、数えきれないほどに寄り集まり、
繁みのように人垣を作り、私を……私たちの全てを、見ていた。

88 名前:同志名無しさん[] 投稿日:2013/02/15(金) 00:31:02 ID:a2a6xrN.0

                                                   − 8

動けない私の肩を彼女が掴み、起こす。
私の顔を見て、それから仰向けに転がした。

( 、 ;川「ぁ……」

また仰向けに、星空を見る。
全身がぬめる。潮のような、植物の茎を潰した汁のような臭いが充満している。

私を見下ろし、彼女は静かに一度頷く。
そして満足げに、言った。

川 ゚ -゚)「――準備は、整った」

( 、 ;川「じゅん、び……?」

何も考えられない。
指一本動かせずに私は彼女の言葉をおうむ返しに呟く。

周囲の空気が変わった。

沈黙していた、あの怪物たち。
それらが口々に、聞いたことのない言葉で呟きを交わした。

(;;:::゚;.:,;゚:)「……、……」

(;;:::゚;.:,;゚:)「…………!」

89 名前:同志名無しさん[] 投稿日:2013/02/15(金) 00:32:30 ID:a2a6xrN.0
ある者は静かに。
ある者は興奮した様子で。隣に言い、私たちを指さし、空を仰ぐ。
その声は、いつしか歓声めいた興奮を含んだ唸り声に変わる。

(#::゚;.:,;゚:)「……、…………!!」

(#::゚;.:,;゚:)「……!!」

(#::゚;.:,;゚:)「……! ……!」

数えきれないほどの怪物たち。
その声が唱和し、金切声のような吠え声に変わり。
そして、どん……どん、と、地面を踏み鳴らし始める。

しゅうしゅうと叫ぶ、声。
空っぽのお腹の奥に響くような、地鳴りにも聞こえる足踏みの音。
その中で彼女は、陶然と、誇らしげに微笑んだ。

川 ー )「ふふ――っ」

胸いっぱいに大きく息を吸い、そして吐く。
私の膝のあたりにまたがり、大きく開いた両膝を石の台に突く。
彼女の髪……黒い肉の髪が、ざわざわとその周囲で踊っていた。

( 、 ;川「う、あ、あ……」

思考は、果てしなく鈍い。

90 名前:同志名無しさん[] 投稿日:2013/02/15(金) 00:34:23 ID:a2a6xrN.0
私はただ、彼女を見る。

川 ー )「ふふ、ッ」

醜い胸の傷跡を隠しもせず、自分のお腹を両手でそっと押さえる。
何も入っているようには見えないほっそりとしたお腹を、愛しげに撫でる。

彼女の髪が変じた触手。
その中でもひときわ長い二本の触腕が、その手に誘われるように彼女のお腹に伸びた。
それは彼女自身のお腹を二、三度撫で、それからするすると滑り降り……

川* ー )「はああ……っ」

黒く、先端が膨らみ、全体にびっしりと大きな吸盤を張り付けた触腕が。
躊躇いもなく彼女の女性器を押し拡げ、そこにずるずると潜り込んだ。

( 、 ;川「っ、?」

何を、しているの?

川* ー )「く……ふっ……」

めくれあがりピンクの肉の色を露わにした女性器に、自身の「腕」が入り込んでいく。
襞は伸びきって左右に大きく拡がり、その内側まで露わになる。

もどかしげに腰を僅かに揺らす。
その入り口の部分を殊更に私に見せつけるように腰を上げ、はああ、と息を吐いた。

私は何も反応ができない。
その光景を、呆然と見ている。

92 名前:同志名無しさん[] 投稿日:2013/02/15(金) 00:37:46 ID:a2a6xrN.0
自分の女性器に差し入れられた二本の腕が、ずるずると抜き出された。
彼女の身体が大きく一度揺れ、そして断続的にわななく。

川* ー )「ふ、ふ……っく、っ」

その先端が、彼女の身体を出るとき。
彼女の女性器の入り口が大きく伸び、拡がり……そして何か大きな塊が、ずるり、と
引き出された。

( 、 ;川「……!」

彼女の胸の前で二本の触腕が捧げ持つ、その塊。
白い粘液と青紫の液体がその表面を流れ落ち、滴る。

それは黄色みがかった乳白色の、滑らかな半透明の膜で覆われていた。
どくん、どくん、と脈動するように、それ自身が動いている。
その中に、入っているのは。

……私は、それをうまく表現する言葉を知らない。
   敢えて例えるなら……巨大な精子、だった。

眼や口やその他の器官は当然全く存在せず、ただくびれて尖った先端を持っているだけ。
そのできそこないの蛇のような、白い鞘のような物体が。その「袋」一杯に詰まっている。

潰れたバレーボールほどの大きさの嚢の中、長さは20センチを優に超えるだろうそれらが
魚のようにびちびちと跳ねながら、互いに絡み合い、出口を探して、狂ったようにぐるぐると
泳ぎ回っていた。

93 名前:同志名無しさん[] 投稿日:2013/02/15(金) 00:39:06 ID:a2a6xrN.0
( 、 ;川「ひ――――!」

そして、彼女の体内からそれが取り出された瞬間。
周囲の声は、足踏みが、一挙に悲鳴のような叫び声に変わった。

……きいいいいいいいいいいいいぃぃぃぃぃ。
   ひいいいいい、いいいいいぃぃぃぃ――――!!

何か得体のしれない、原始的な宗教儀式のような熱狂。
だん! だん! と踏み鳴らす足の振動は、心臓の鼓動のように私に伝わる。

その渦の中心で、彼女は……

川 ー )「……さあ」

川 ゚ ー゚)「一つになろう。
     愛しい、私の花嫁」

汗に濡れた髪を額に張り付け笑う、その満面の笑み。
邪気など微塵も感じられない、出産を終えた女性のような、晴れやかにすら思える笑み。

( 、 ;川「う、あ……」

川 ゚ ー゚)「さあ――」

触腕が伸びる。その大きな塊を下へ、私の股間へ。女性器へ、近づける。
私は……動けない。ぼろぼろの身体にはもう指一本動かすほどの力さえ残っていない。

94 名前:同志名無しさん[] 投稿日:2013/02/15(金) 00:40:02 ID:a2a6xrN.0
彼女は、何かをしようとしている。
あれを、私の身体に、胎内に、入れようとしている。

でも……もう、動けない。
何もできない。

……何もかも奪われて、全身を犯されて。
   私にはもう、何も。

川 ー )

微笑む彼女。
私に近づく、その瞳……

('、`;川「っ――!!」

異常に白い白目に、青みがかった血管が浮き出て脈打つ。
紅色に変色した瞳孔は横に細長く伸び、カエルやヤギのそれのように見えた。
息を呑む私の目の前で、瞳の表面を薄い半透明の膜が上下し、瞬く。

そこにはもう、私が憧れた彼女の面影は、何一つ残っていなかった。

(;、;*川「ひ――――」

その、瞼と眼球の隙間から。
細いタコの足のような触手の束が、ずるり……と溢れ出た。

川i!ii,ー゚)

95 名前:同志名無しさん[] 投稿日:2013/02/15(金) 00:41:44 ID:a2a6xrN.0
(;、;*川「嫌あああぁぁっ!!」

湧き上がる恐怖。
本能がそれを遠ざけようと、身体を突き動かす。

どこにこんな力が残っていたのか分からない。
起き上がり様に両手を突き出し、彼女を力一杯突き飛ばした。

川!ii,-゚)「……!」

彼女は、怯む。
気色悪い袋を抱えて守り、背中を丸めて石の寝台に横倒しに倒れた。

(;、;*川「ひ、ひ……っ!」

私も反動で、後ろに倒れ込む。
下半身は腰が抜けてしまったように、言うことを聞かない。

けど。

でも。

96 名前:同志名無しさん[] 投稿日:2013/02/15(金) 00:43:53 ID:a2a6xrN.0



……嫌。

   こんなのは、嫌だ。

   嫌だ。

   嫌……

   嫌だ、嫌、嫌、絶対に――嫌だっ!!

98 名前:同志名無しさん[] 投稿日:2013/02/15(金) 00:49:36 ID:a2a6xrN.0
(;、;*川「ふぐっ、ううううぅっ!!」

言うことを聞かない全身に鞭打って、うつ伏せに転がり、両腕で這う。
全身がぬめぬめとして、石の上でも滑る。
焦れば焦るほど腕は空回りして、私は何度も胸を石に打ちつける。

数十センチも這い進まないうちに、足首が捉えられる。
私の足首がを、ぎりぎりと締め付けられる。

川   )「待て――」

背後から声が降る。その声にさえも、かつての彼女はいない。
何の感情も感じられない平板な、それでいて歪んだ耳障りな声。

川   )「――逃がさない」

(;、;*川「ああぁあああっ!」

石の表面の模様に、爪を立てる。
ぎしぎしと擦れて爪が欠け、指先が血まみれになるのも構わずに、彼女から数センチ
でも離れようとする。

それでも、進めない。
足首を引く力が強くて、少しも動けない。
逆に、後ろに引きずられる。

100 名前:同志名無しさん[] 投稿日:2013/02/15(金) 00:52:30 ID:a2a6xrN.0
川   )「……あと一人で、私は……お前さえいれば、私は」

石の台に溜まった粘液にまた、腕を取られる。
額から石に頭をぶつける。

(;、;*川「ぐ、っ!」

一瞬視界がぼやけ、揺れる。
その中で彼女から逃れようと、片腕で思い切り石の台を押し、今度は横に転がった。

瞬間、太く黒い腕が、石台にびしりと叩き付けられる。

私は無我夢中で逃げる。
乾いた石に指を立て、肘で、膝で這い、転がって。

川   )「私は……私は、お前を……!」

迫る声。
その声に、私は……

(;、;*川「うあっ、あああっ!!」

顔を上げ首をひねる。
黒い触腕を宙に蠢かせて歩み寄る、「彼女」を背後に見る。

(;、;*川「嫌だっ、来ないでよぉっ――――この、化け物おッ!!!」

叫ぶ。

101 名前:同志名無しさん[] 投稿日:2013/02/15(金) 00:54:04 ID:a2a6xrN.0

……一瞬。
   彼女の動きが、がくん、と止まる。
   足首に巻き付いていたものの力が、抜ける。

その彼女の顔を、一瞬だけ見る。

川   )「――――」

今しか、ない。

あられもない自分の姿を顧みる暇もなく、両腕と両膝を石の台に突いて。
全身の力を振り絞ってカエルのように無様に跳び、転がった。

起き上がり手を突こうとした、その先に。
けれど床は……石の寝台は、なかった。

(;、;*川「あ――――ッ!?」

がくん、と体が傾く。
姿勢を大きく崩して、私はそのまま、そこから転げ落ちた。

すぐ目の前に、でこぼこな石畳が目前に迫る。

随分な高さから、私は受け身も取れず横ざまに落ちた。
石畳に叩き付けられ、ごしっ、という音が身体の内側に響く。

102 名前:同志名無しさん[] 投稿日:2013/02/15(金) 00:56:09 ID:a2a6xrN.0
('、`;川「がふ――っ、げほっ!」

咳き込み、仰向けに転がる。

咄嗟に地面に突いた肘がひどく痛む。
太腿の骨の出っ張った肌がすりむけて、闇の中でも赤黒い血が滲むのが見えた。
それでも身体はかばいきれず、地面にぶつけた側頭部にも鈍い痛みを感じる。

……私は、いつの間にか大きな石のベッドの端まで来ていた。
   そしてそこから、落下したのだった。

不思議なことに、この石の台の周囲に溢れていたあの怪物たちの姿はない。
嬌声も足踏みの音もなく、ここはまるで海の底のように静まり返っている。

首だけを起こして、見る。
私が今までいた、石造りの台を。

高さは1メートルほど。
闇の中に浮かぶ石の塊は大きく、端は見えない。

側面には、一面に奇妙な彫り物の装飾がされていた。
レリーフで飾られ、整った立方体の石の台。

それは……何かの祭壇のように見えた。

103 名前:同志名無しさん[] 投稿日:2013/02/15(金) 00:59:23 ID:a2a6xrN.0
('、`;川「……?」

私の頭の脇に、ひときわ大きなレリーフがある。

それは鱗に覆われた、怪物の姿。
その全身からは、大きな吸盤と鱗に包まれた、無数の長い触手を伸ばす。

そしてその足元にかしずく、大勢の小さな人型。
その全身に、同じような鱗が緻密に、びっしりと掘り込まれている。
その人型とのサイズの違いで、中心にいる怪物の大きさが際立って見えた。

それらはまるで……大きさこそ違えど、彼女のようで。
そして私を取り囲んでいた、怪物たちのような。

頭が、ずきずきと痛む。

視野が狭まり、呼吸が浅くなる。

( 、 ;川「あ、う――」

朦朧とする中、手を伸ばして頭に触れる。
ぬるりとした感触が触れる。

……熱い。

104 名前:同志名無しさん[] 投稿日:2013/02/15(金) 01:01:39 ID:a2a6xrN.0

……痛い。
   手足、頭、耳、目のずっと奥が、全身、からだじゅうが痛い。

早く。
逃げないと、彼女が……

瞼が重い。

駄目だ。
早く、起きて逃げないと。

気を失っては駄目だ。
目を覚まして。

身体を起こして。

早く……早く……



……早く……

105 名前:同志名無しさん[] 投稿日:2013/02/15(金) 01:03:08 ID:a2a6xrN.0



……より一層、暗くなっていく視界の中で……



……伸ばした右手が。



……さらさらとした、何かの布地を掴んだ……

106 名前:同志名無しさん[] 投稿日:2013/02/15(金) 01:09:09 ID:a2a6xrN.0

                                                   − 9

……眩しい。

……カーテンの隙間から、日光が私の顔に差す。

('、`*川「……」

横臥したそのままの姿勢で、私は目を開いた。
すぐ目の前に、ベッドの足。
中途半端に伸ばした右腕が、シーツとブランケットをまとめて握っている。

(-、-;川「つ、っ」

全身がぎしぎしと痛む。
呼吸をするのも辛くて、動かないまま何度か、細くゆっくりと深呼吸をする。

見えるものは、見慣れた天井、クリーム色の壁紙。
半開きのカーテン、その向こうの窓の先に見える青白い空。

('、`*川「……あ……」

ここは間違いなく、私の部屋だった。

……夢から覚めたのではなくて、帰って来たのだ、と思う。
   どこかから、ここへ。
   それを実感すると、目の奥が熱くなった。

108 名前:同志名無しさん[] 投稿日:2013/02/15(金) 01:13:00 ID:a2a6xrN.0
(;、;*川「……っ」

帰って、きたんだ。
その感慨を、しばらくの間噛みしめる。

ようやく目を擦り、身体を起こす。
その途端、下半身に嫌な感触があった。

首だけを動かして、パジャマのズボンを見下ろす。

('、`;川「……」

内股の生地が、ぐっしょりと濡れている。
それが失禁のせいでないことは、その感触ですぐに分かった。

('、`;川「うあー……」

何というか、酷い有様だった。
うまく言葉にできないけれど、ひどく惨めな気分になる。

……「夢」だったとするなら。
   あれもまた私の無意識の願望や、抑圧された衝動を表したものだったのだろうか?
   自分がそんなものを望んでいるとは、到底信じられない。

よいしょ、と声を出して身体を起こし、座り直す。
右足首がつれるように少し痛んだが、それも気にする前に収まった。

109 名前:同志名無しさん[] 投稿日:2013/02/15(金) 01:16:23 ID:a2a6xrN.0
('、`*川「うー……さぶっ」

どことなく感じていた不安もあって、わざとらしく独り言を呟く。
部屋は冷えているが、冷気は目覚ましにはちょうどいい。

枕の脇に置いてあった携帯電話を、手を伸ばしストラップを引っ張って取る。
なるべく、脚を動かさないようにして。

二つ折りのそれを開いて、ディスプレイの表示を見た。

……2/16(土)
   7:38

('、`*川「……」

('、`;川「あれっ?」

記憶と、時間軸が一致しない。

私が「昨日」図書館で倒れた時着ていたのは、勿論パジャマではなく普段着だった。
なのに、今着ているものは違う。

では、最後にパジャマを着てベッドに入ったのは?

……そうだ。
   それは当然、その前の日……15日の夜だ。

110 名前:同志名無しさん[] 投稿日:2013/02/15(金) 01:17:54 ID:a2a6xrN.0
('、`*川「そっか。
      そういう、こと」

ようやく、納得する。
混線しかけた記憶が、どうにか一つにまとまりそうだった。

つまり、私が見たあの最初の夢、怪物に心臓を突き刺される「夢」を見てから。
翌朝目覚め、図書館で彼女を追い、そして……彼女から、あそこから逃げ延びるまで。
それが丸ごと全部、ひとつの夢の中の一連の出来事だったのだ。

現実には、何も起こっていなかった……全て、間違いなく夢。
それが結論で、それ以外には何も考えられない。

……そうだ。本当にあるものだけが、事実だ。

('、`;川「つっ!?」

右足首からふくらはぎに。
ちくり、ちくりと痛みが走る。

('、`;川「いたっ、たっ」

右足を抱え、裾を膝まで捲った。

……本当にあるものだけが、事実。
   間違いない。

('、`;川「じゃあ、これは……?」

111 名前:同志名無しさん[] 投稿日:2013/02/15(金) 01:20:18 ID:a2a6xrN.0
右足首から膝下までの周囲をぐるりと回って残る、紐がきつく巻きついたような赤い痕。

幅2センチほどのその痕に重なり、綺麗な円形の鬱血が数えきれないほど。
それはまるで……まるで、大きな頭足類の、触腕と吸盤が吸い付いた痕のような。

……これは、何?



……私には、その答えを出すことはできそうになかった。

112 名前:同志名無しさん[] 投稿日:2013/02/15(金) 01:22:20 ID:a2a6xrN.0
普段よりずっと早く起きて着替えまで済ませた私を、母親はやはり怪訝な目で見る。
いつもの私ならそれに気分を害して、刺々しい顔を返していただろう。
けれど今日は、母親の困ったような顔を見られることが、嬉しかった。

食事を取り、部屋に戻る。

机の上には昨夜のままの状態で、空の紙箱が置かれていた。
椅子に座り、その箱を手に取る。

……彼女は、確かに存在していた。そこまでは間違いないことだ。
   だって、私は彼女から直にこれを受け取ったのだから。

('、`*川「……」

灰色の箱を、手に取る。
私は、迷っていた。

……頭に蘇るのはあの一節だ。
   「夢」で見た、古事記の一節。

(-、-*川「われは『よもつへぐい』しつ。
      しかれども、いとしわがなせのみこと、いりきませることかしこし……」

黄泉の国の食物を食べたイザナミ。
その全身を這い回る蛆虫、陰部と全身を貫く雷。
それがあの恐ろしい夢の、自分自身に被った。

(-、-*川「……」

113 名前:同志名無しさん[] 投稿日:2013/02/15(金) 01:23:25 ID:a2a6xrN.0



……何故だろう。
   確かめないといけないような気がする。
   そうせずに忘れてしまうことは許されない気がする。



……目の前を掠める。
   彼女の、顔。



(-、-*川「……うん」

頷く。

('、`*川「行こう」

自分に言い聞かせるように。
奮い立たせるように、声を発して。

114 名前:同志名無しさん[] 投稿日:2013/02/15(金) 01:25:28 ID:a2a6xrN.0

                                                   − 10

実際のところ、私は彼女に会うことを望んではいない。
顔を見れば、この瞬間も忘れようと努めている「夢」を一気に思い出してしまうだろうから。

('、`*川「……」

図書館の三階への階段を、一歩ずつ踏みしめて上る。
その一歩ごとに動悸が強くなるのを止めることはできなかった。

……三階。
   あの本棚に隠れた先に、私達の席はある。

(-、-*川「っ……」

それでも一度、固く目を瞑り、曲がる。
その先に……

……彼女の姿は、なかった。

代わりに、そこにあったのは。
あの日、「夢」の中の図書館で見た、あの本。

115 名前:同志名無しさん[] 投稿日:2013/02/15(金) 01:27:22 ID:a2a6xrN.0
('、`;川「……」

吐き気がするほどの、強い既視感。
何か計り知れないものをその事典に感じて、私は口を覆う。

その事典の開かれたページには、赤い付箋紙。
黄泉下りのくだりが書かれた、あの時と同じページを指している。

……夢の中で見たはずの、ここにあるはずのない本。

それだけではない。
あの日なかったものが、そこには加えられていた。

その少し先のページに、青い付箋紙。
その先端が控え目に顔を出している。

('、`*川「……これって……」

誘われるように手が伸びた。
そのページを探り当て、開いた。

同じ古事記の、黄泉下りよりも先の章。
その付箋紙が指し示しているのは、スサノオノミコトの章、その挿絵。
後世の画家が描いたヤマタノオロチの絵。それを写した写真だった。

('、`*川「……?」

それが指す真意を測りかねて、何度もその周辺の文を見返す。

116 名前:同志名無しさん[] 投稿日:2013/02/15(金) 01:30:02 ID:a2a6xrN.0

"彼ノ目ハ赤加賀智ノゴトク、身一ツ八頭八尾有リ。
 マタ其ノ身ニ蘿チ檜、椙ト生ヒ、其ノ長ハタニ八谷岐八尾度ル。
 其ノ腹ヲ見レバ、フツクニ常ニ血ニ爛レタリ。"……



……スサノオノミコトは、出雲の国、鳥髪という地に降り立つ。
   そこで、老夫婦と一人の娘に出会う。
   老夫婦は、涙ながらに語るのだった。

年に一度、ヤマタノオロチという名の巨大な怪物がやってきて娘を食べてしまう。
八人いた姉妹は一年に一人ずつ食われてしまい、今はもう末娘のクシナダヒメ
しか生き残っていないのだという。

その怪物は、目はホオズキのよう、八つの頭と八つの尾を持っている。
全身に苔、檜や杉が生え、身の丈は八つの谷と八つの丘にわたるほど長い。
そしてその腹は、常に血で赤くただれている。

結局、スサノオノミコトは老夫婦の願いに応え、そのヤマタノオロチを退治する。
そしてその尾から一振りの剣を見付け、それを「草那芸之大刀」……草薙剣と
してアマテラスに献上する。

('、`*川「あ――」

八つの頭に、八つの尾を持つ巨体の蛇――

似ている。

117 名前:同志名無しさん[] 投稿日:2013/02/15(金) 01:32:12 ID:a2a6xrN.0
あの……祭壇の側面に刻まれていた、怪物のレリーフ。
鱗に覆われた触手を持ち、人間よりもはるかに大きな身体をした。

もしも、タコの頭足類の触手にびっしりと鱗が生えていたら。
それは、蛇のようには見えないだろうか。
巨大なそれがうねる様は、幾つもの頭と尾を備えた蛇の怪物に見えはしないだろうか?

いくつもの頭と尾。鱗に覆われた、巨大な怪物。
一年に一度生贄を取り、そして最後にただ一人が残される……。

……あと一人で、私は……
   お前さえいれば、私は。

彼女の言葉が否応なしに思い出される。
胸に刻まれた赤い傷口を見せた、あの。

('、`*川「あと、ひとり――」

口に出してみる。

下らない想像だとは思う。

だが、もしもヤマタノオロチが……それが八人目の娘を食い殺したなら。
その時、一体何が起こるというのだろう。

いや。きっと、食い殺すのではない。

怪物が求めるのは、純潔を守った若い女性だけ。
その目的は……きっと、純潔を奪うため。

118 名前:同志名無しさん[] 投稿日:2013/02/15(金) 01:33:11 ID:a2a6xrN.0
('、`;川「っ……」

あの白い蛇のような、袋に包まれた束を思い出してしまい、胸が悪くなる。
思わず下腹に手を当てた。

人間ではなかった彼女から貰った、チョコレート。
イザナギの身体を這う蛆虫。うねる何か。

陰部を貫く、雷……うねうねと蛇行して進む、白い、何か。
八柱の神。八人の娘の生贄、その最後の一人。

それを求める、蛇の怪物。

('、`;川「……」

震え始めた手で、次のページを捲った。
途端に、一枚の写真に付された「蛇」の漢字が目に飛び込む。

「蛇行剣」。
そう、写真のキャプションは解説している。

スサノオがヤマタノオロチの身体から取り出した剣は、この形状をしていたという
説があるのだという。そしてそれは、異国で原始宗教の儀式に用いられた「クリス」
という名前の短剣に、よく似ているのだと。

刀身が蛇行し波打った、ゆらめく炎に似た刀身。
それは紛れもなく、あの祭壇の上で自分の胸に突きたてられた、あの。

119 名前:同志名無しさん[] 投稿日:2013/02/15(金) 01:35:14 ID:a2a6xrN.0
('、`;川「私、知らなかった。
      こんなの……見たこと、なかった……」

全身に力が入らない。
私は、本を、ばたん、と閉じて突っ伏した。

静まり返った館内で、私はまるで神話の世界に迷い込んでしまったようだった。
足元が裂けて床に飲み込まれ、どこまでも落ちて行ってしまいそうだった。

(-、-;川「……」

これは、何なのだろう。
私はまだ、夢を見ているのだろうか?

……幾つもの頭を持つ蛇の神話。
   日本書紀には、このヤマタノオロチの話とよく似た物語がある。
   草薙剣を携えたヤマトタケルノミコトに殺された、その怪物の名は……

( 、 *川「……」

いや。
もう、いい。

……もう、終わりにしよう。

120 名前:同志名無しさん[] 投稿日:2013/02/15(金) 01:37:34 ID:a2a6xrN.0
そっと、立ち上がる。
本の背表紙を見下ろす。

('、`*川「……」

(-、-*川「でも――」

最後にひとつだけ、疑問が。
ぽつりと浮かぶ。

(-、-*川「でも、どうして。
      どうして、私にこれを見せたの?」

残されたその本に向かって、私は語りかける。
そんなことをしても、何の得にもならないはずなのに。

私が今思い当たる理由は、ひとつだけだ。
最も自然で、同時に最も突拍子のない理由。

('、`*川「――知って、ほしかった?」

121 名前:同志名無しさん[] 投稿日:2013/02/15(金) 01:41:45 ID:a2a6xrN.0
そう。

「彼女」が実在していたとして。

……彼女の服を着て、彼女の傷痕と同じ心臓に致命傷を受ける夢。
   あれが、彼女の身に起こったことだったとしたら。

彼女は……彼女の外見をした誰かは、初めて私と会った時にはもう、生きた人間ではなく。
代わりにその身体に巣食っていた「何か」が、彼女の身体を操っていたのではないか。

それでも彼女は、私に何かを伝えたかったのではないか。
怪物としてではなく、彼女自身として。

それが……私が殺される最初の夢。
そして、この図書館の事典だったのではないか。

根拠はない。
けれど……

122 名前:同志名無しさん[] 投稿日:2013/02/15(金) 01:42:32 ID:a2a6xrN.0

……忘れてしまいたい、忌まわしい「夢」の記憶の中に。
   ひとつだけ、どうしても頭に残って離れない彼女の表情。

(;、;*川『嫌だっ、来ないでよぉっ――――この、化け物おッ!!!』

彼女に追われ、そう叫んだ私。
動きを止めた彼女。






その顔は……酷く寂しげな、今にも泣き出しそうな顔をしていたように、私には見えたから。

123 名前:同志名無しさん[] 投稿日:2013/02/15(金) 01:43:51 ID:a2a6xrN.0



一週間ほどで、足首の痕は消えた。
それからさらに数週間経って、ようやく悪夢にうなされることもなくなった頃。

私は、彼女の夢を見た。

125 名前:同志名無しさん[] 投稿日:2013/02/15(金) 01:46:45 ID:a2a6xrN.0



……夢の中で、彼女は寂しげに笑っていた。
   美しい、初めて会った時のままの姿で。

   彼女は波打ち際に座っていた。
   そこに座って、満ちていく海の遥か先をいつまでも見ていた。

   やがて日が沈み、月が隠れ。
   星が巡り、海と空が黒く溶け合う、果てしなく長い夜の闇が明けた、その後。

   そこに、彼女の姿はなかった。



……それが、私が最後に見た彼女の姿だ。

126 名前:同志名無しさん[] 投稿日:2013/02/15(金) 01:47:46 ID:a2a6xrN.0



……今でも私は、図書館に通っている。
   けれど、あの席に座ることは、もう二度とないだろう。

127 名前:同志名無しさん[] 投稿日:2013/02/15(金) 01:49:20 ID:a2a6xrN.0








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