('A`)夏の日とGANG OF FOURのようです

中編

51 名前: ◆sVJSKQRVSQ[sage] 投稿日:2015/09/08(火) 23:19:07 ID:J6Rkj0cE0
………
……

1週間はあっという間に過ぎていった。
ドクオが弾いて、弾いて、そして間違ってはペニサスにシバかれる。
そんな毎日だった。

今まで、『他のバンドはどうなのだろう、あと残りは何日だろう』といったことばかりが頭に浮かんでいたがそれも無くなった。
そんな事を考える暇があったら練習に回した方が良いことに気が付いたからだ。

('、`#川「てめーまたリズムズレてんだよぉ!!」

(;'A`)「スァーセン、スァーセン」

そして夏休みが終わり、学校が始まる。
練習時間は夏休みよりも確実に減り、そしてハッキリと学園祭が見えてくる季節になった。
しかし僕らは未だに続く暑さのように、夏の勢いを引き継いだまま日々練習に没頭していた。

52 名前: ◆sVJSKQRVSQ[sage] 投稿日:2015/09/08(火) 23:19:49 ID:J6Rkj0cE0
(,,゚Д゚)「はい、そんじゃこれ」

そんなある日の練習後、ドクオたちはファミレスへやってきていた。
各々注文を終え、全員がドリンクを各々入れて席に着くと、ギコが白紙のルーズリーフを1枚テーブルの上に出した。

(,,-Д゚)「いつもの奴決めておこうと思うんだ。そろそろ提出することになるだろうし」

('、`*川「もうそんな時期かぁ」

川 ゚ -゚)「早いな、あっという間だった」

(;'A`)「えーっと……これは」

(,,゚Д゚)「あぁ、ドクオは初めてか。そんな難しいもんじゃないよ」

('、`*川「メンバー・バンド名・SE・何曲演奏するのか・曲ごとの演出のお願いetcとかを指定の用紙に書き込んで、学祭担当に出さなきゃいけないのよ」

川 ゚ -゚)「アンプの位置とかは弄らないから、機材とか立ち位置とかまでは指定出来ないけどな」

53 名前: ◆sVJSKQRVSQ[sage] 投稿日:2015/09/08(火) 23:20:32 ID:J6Rkj0cE0
('A`)「なるほど……」

( ^ω^)「常識だお」

('、`*川「てめーも知らなかっただろうが」

(;゚ω゚)「グフッ」
ペニサスの右アッパーがブーンの柔らかいお腹にめり込むのがドクオからも見えた。

川 ゚ -゚)「それじゃあザッと決めるか」

(,,゚Д゚)「うん、とりあえず責任者のところはドクオにしておくから」

(;'A`)「え゛っ」

思わず、口に含んでいたコーラを吹きだしかける。
その姿を見てペニサスがギャハハとドクオを指さして笑った。

54 名前: ◆sVJSKQRVSQ[sage] 投稿日:2015/09/08(火) 23:21:16 ID:J6Rkj0cE0
('、`*川「何その声wwwww」

(,,^Д^)「ったりめーだろドクオ、お前が俺らを巻き込んだんだからさ」

川 ゚ ー゚)「そうだな、君がやるのが一番しっくりくる」

( ^ω^)「おっおっ、そうだおそうだお」

('、`*川「お前回復速いな」

( ^ω^)+「ふっ」

(;'A`)「……マジっすか」

('、`*川「リーダーDOKUO、良い響きジャン」
そう言ってププッと吹きだしたペニサス。ドクオは恥ずかしいやら混乱するやらで、頭の中が真っ白だった。

55 名前: ◆sVJSKQRVSQ[sage] 投稿日:2015/09/08(火) 23:21:59 ID:J6Rkj0cE0
(,,゚Д゚)「書類の書き方とかは教えてやるから。提出は俺がまとめてやっておくからさ」

川 ゚ -゚)「名前だけの責任者だから安心しなよ、ドクオ」

('、`*川「そーそー。責任者がなんかやらされるのはやらかした時くらいだね」

(;'A`)「そ……それなら……」

('、`*川「よーし、お姉さん豚の臓物と炊き立てご飯ばらまいちゃうぞ〜」

( ^ω^)「おいやめろ」

(,,゚Д゚)「よーっしゃ、じゃあツメていこうぜー。とりあえずバンド名、これだな」

('、`*川「初っ端から一番難しいのぶっこんできたわね」

川 ゚ -゚)「カッコつけすぎると中二病ぽくなり、ふざけすぎると寒くなる」

(,,゚Д゚)「あー、ペニサスのバンドなんて……」

('、`*川「おいやめろ」

56 名前: ◆sVJSKQRVSQ[sage] 投稿日:2015/09/08(火) 23:22:50 ID:J6Rkj0cE0
川 ゚ -゚)「去年の『†Blood Vampire†』とかいうバンド名を見たときは正直吹いた」

川 ゚ -゚)「すごく恰好もV系ぽかったのにやってる曲が青春パンクで更に吹いた」

('、`*川「なんかクーちゃんが言うと迫真感があるわあ」

(,,゚Д゚)「真顔で直球ディスするスタイル嫌いじゃないぜ」

('、`*川「そんじゃリーダーさん、まず第一案どーぞ」

(;'A`)「えっ、えっとそうっすね……」

ドクオは正直、何も考えていなかった。バンド名なんて誰かが勝手に考えてくれるもんだと思っていた。
キョロキョロと周りを見回し、何か使えそうなネタは無いか探す。

そんなとき、柔らかく光る天井の照明が目に入った。

57 名前: ◆sVJSKQRVSQ[sage] 投稿日:2015/09/08(火) 23:23:50 ID:J6Rkj0cE0
('A`)「お……」

('、`*川「お?」

('A`)「『Orange Lamp』……とか」

('、`*川「オレンジ色のランプ、ねぇ。程よく回避してる感じで私は嫌いじゃないけど」

(,,゚Д゚)「いいんじゃねーの? リーダー発案だし」

川 ゚ -゚)「うむ、私も悪くないと思う」

( ^ω^)「同じく異議なしですお」

(;'A`)「えっ、めっちゃ適当なんすけど……いいんすか?」

('、`*川「いいのいいの。そんな痛くなけりゃ何でもいいんだから」

(,,-Д゚)「The Dokuosとかでもかまわんぜ?」

(;'A`)「それは勘弁してください!」

川 ゚ ー゚)「ふふっ、私は悪くないと思うけどな。The Dokuos」

( ^ω^)「僕としてはザ・ドックンズとかでも……」

https://www.youtube.com/watch?v=amlxiha38xs

(,,゚Д゚)「んじゃあ、とりあえずバンド名は『Orange Lamp』で決定な。残りもちゃちゃっと決めちゃおうぜ」

58 名前: ◆sVJSKQRVSQ[sage] 投稿日:2015/09/08(火) 23:24:33 ID:J6Rkj0cE0
結局、他の部分もダラダラと話し合って、結果ファミレスには5時間ほど居座ってしまった。
なんだかんだと、細かい部分が決まっていくにつれて、どんどんと学祭に出演できるんだという嬉しさと緊張がドクオの中で膨らんでいるのが自分の中でも分かる。
バンドがバラバラになった時からは考えられない進歩と、楽しさにドクオは満たされていた。

会計の時に、入り口近くにあったガチャガチャをブーンが回していた。

(;゚ω゚)「こ、これは……幻の松坂牛・特Aロースフィギュア! シークレットだお!」

どうやらとんでもないレアモノが当たったらしく、小躍りしながら自分の支払いをしていた。

(*^ω^)「こりゃー最高にラッキーだお、運を使い果たしたかもしれないお」

うきうきでスキップするたびにブーンのお腹のお肉が少し揺れるのが、ペニサスのツボにはまったらしい。
彼を見ながら指さしながらゲラゲラと大笑いしていた。

59 名前: ◆sVJSKQRVSQ[sage] 投稿日:2015/09/08(火) 23:25:16 ID:J6Rkj0cE0
(,,゚Д゚)「そんじゃ、また明日な」

('、`*川「あー疲れた、身体バッキバキよ」

ギコ、ペニサス、ブーンとは途中で別れ、ドクオはクーと一緒に帰路についていた。
ここ最近、ドクオはクーと帰ることが多くなっていた。
それは方向が一緒だと言う、ただそれだけの理由だったが。

('A`)「何かいよいよって感じですね」

川 ゚ -゚)「学園祭、か。私も毎年これくらいの時期になるとドキドキしてたよ」

('A`)「ドキドキですか」

川 ゚ -゚)「ああ。『これだけしか練習していないのに失敗しないだろうか』『客を冷めさせたらどうしよう』とか」

川 ゚ -゚)「マイナスの方向にしか考えが向かなかった。結局杞憂で終わるんだが」

61 名前: ◆sVJSKQRVSQ[sage] 投稿日:2015/09/08(火) 23:26:00 ID:J6Rkj0cE0
肩を並べて歩いているドクオの方にクーが顔を向ける。
クーの顔はなんだか嬉しそうで、あまり見たことが無いような笑顔を浮かべていた。

川 ゚ ー゚)「でもな、今年は凄くワクワクしてるんだ」

川 ゚ ー゚)「こんな素敵なメンバーで、練習も全力でやってきた成果が出せるのかと思うとね」

川 ゚ ー゚)「ペニサス、ギコ、ブーン、そして私と君。期間は短いけど最高に『楽しんでいる』時間だ」

川 ゚ ー゚)「こんなバンドに誘ってくれた君にお礼を言いたいよ」

(;'A`)「いやいや、俺はただバラバラになって途方に暮れていた所を先輩方に救ってもらっただけなんで……」

川 ゚ -゚)「それでも君はバンドをやる事を自分の意思で選んだじゃないか」

川 ゚ -゚)「あの屋上で君が『やります』と言わなければ、今日も私は音楽準備室で一人むなしくドラムを叩いていたかもしれない」

川 ゚ ー゚)「だから君に言わせてもらいたいのさ、ありがとうって」

62 名前: ◆sVJSKQRVSQ[sage] 投稿日:2015/09/08(火) 23:26:53 ID:J6Rkj0cE0
そう言って立ち止まり、ドクオの方へ手を差し出すクー。
ドクオは少しだけ躊躇して、手の汗をゴシゴシと拭きとって差し出された手を握り返す。
相変わらずクーの手は柔らかくて、細くて、そしてほんのり暖かかった。

ドクオはクーの顔を見つめる。
少し落ちるのが早くなってきたオレンジ色の夕日が、彼女の白い肌を照らし柔らかな光になっている。
そして微笑みとも言えるような優しい笑顔を浮かべながら、見つめてきたドクオの顔を同じく見つめていた。

なんだかずっと眺めていたい。目を逸らす事も、話すこともしたくない。
ドクオは、ただただこのままで居たかった。
クーも、何も言わずただただドクオの顔を見つめていた。

川*゚ -゚)「あ、あの」

(*'A`)「は、はい」

川 ゚ -゚)「……そろそろ手を離してもらえるかい?」

(;'A`)「あ゛っ」

慌ててパッと手を離すドクオ。

63 名前: ◆sVJSKQRVSQ[sage] 投稿日:2015/09/08(火) 23:27:35 ID:J6Rkj0cE0
川 ゚ -゚)「あんまりジッと見られていると、照れるな」

(;'A`)「スンマセン、スンマセン」

川 ゚ ー゚)「ふふっ、いいさ」

そう言ってまた帰り道を歩き始めたクーとドクオ。
別れるまでの帰り道は、ずっとバンドの話で終わってしまった。

クーと別れ1人になった時、モヤモヤと先ほどから抱えていた自分の中の気持ちを考えてみた。

『なるほど、これは恋だな』
その結論に至るには数秒とかからなかった。
それと同時に、この気持ちは自分の中に封印しよう。そう決めたのだった。

『バンド内での恋愛は崩壊を招く』
とても短い前のバンドでの、ほろ苦い経験を生かそう。
そう思った。というより、自分にそう言い聞かせた。

https://www.youtube.com/watch?v=1EY0Y3rveZo

64 名前: ◆sVJSKQRVSQ[sage] 投稿日:2015/09/08(火) 23:28:17 ID:J6Rkj0cE0
………
……


('、`*川「〜♪」

この日、ペニサスは朝から上機嫌だった。
テレビの占いは1位、化粧も髪も一発で決まった。
朝食は最近お気に入りのベーカリーショップで買った大好きなデニッシュだったし、加えてちょっと奮発して買った紅茶の茶葉が最高に美味しかった。

なにより嬉しいのは、最近の愛機であったムスタングベースが調整から帰ってきた事だった。
本体のダイヤルを回した時のガリが酷くなっていたのでそこの修理と、ついでにピックアップの改造の依頼を馴染の店にお願いしていたのが仕上がってきたのだ。

/ ,' 3「忙しいから時間がかかるよ」

とか言ってた店主のジジイ(愛称)だったが、なんだかんだで1週間で仕上げてくれた。
これを今から部室に置いているデカいアンプでテストできるワクワクで、歩調もやけに軽くなっていた。
もちろんバンドのベースはブーンだから自分がメインで使う事は無いのだが、それでも新しくなっている機材を弄ると言うのは嬉しいものだ。

思わずいつもよりも早い時間に部室に向かっている。
午後の練習は、学校に着くまでの高く昇った日差しが非常に不快で嫌いなのだが、今日は全く気にならなかった。

65 名前: ◆sVJSKQRVSQ[sage] 投稿日:2015/09/08(火) 23:29:04 ID:J6Rkj0cE0
そんなペニサスがルンルン気分で部室に向かう階段を上がっていると、上の階から荒げた声と乱暴にドアを閉める音が聞こえてきた。

('、`*川「(ケンカかよ〜どこか分かんねえけど、くわばらくわばら)」

軽音楽部の部室がある階は『文化系エリア』と呼ばれるほど、他の文化系の部活動の部室が集中している階だ。

そんな文化系の部でも別に喧嘩は珍しいものでは無い。
特にこのシーズンだと、熱心な部活は学園祭で活動発表を行う所が多い。
そんな部が方向性や展示方法などで熱い議論から口論に発展し、最終的には喧嘩になるのだ。

これまでに見たことがあるのは電車愛好会の喧嘩だった。

「なんでだよ! ○○をメインにすべきだろ!」

「アホか貴様は!! ××の車両をだな!!」

とかいった具合で言い争いの喧嘩をしているのを見た記憶がある。

('、`*川「(ケンカするほど、こだわるものなのねぇ)」
と、思いつつ遠巻きに眺めていた。
こだわりがある事は悪くない事だし、それが原因で喧嘩をするのもよく分かる事だった。

66 名前: ◆sVJSKQRVSQ[sage] 投稿日:2015/09/08(火) 23:29:57 ID:J6Rkj0cE0
多分、傍から見たら「どれも同じ電車だろ」で終わる話なのだろう。
しかしそれを言ってしまえば、どの音楽をやるか言い争う軽音楽部も「どれも同じ音楽だろ」で終わらされてしまう。

その人にとってのこだわりは『絶対に譲れないモノ』でもあるのだ。
だから、ちょっと色や形が違うだけで言い争う、電車愛好会の気持ちもよく分かる。

('、`*川「(でも、そのこだわりを捨てて妥協するっていうのも大人なのよね〜)」

('、`*川「(ま、私は大人になれそうな気配はないけど)」

そう思いつつ階段を昇っていると、荒々しく階段を踏み鳴らしながら喧嘩の主であろう人物がペニサスの隣を過ぎ去っていった。

('、`*川「(あらあら、お怒りですこと)」

('、`*川「(ま、今の私は何されても怒らない自信あるけどね。なんたって今日はハッピーだし♪)」

そう言って歩調軽く部室への廊下を歩く。
スキップをしてみたら、昨日のブーンのお腹を思い出してニヤニヤしてしまった。

67 名前: ◆sVJSKQRVSQ[sage] 投稿日:2015/09/08(火) 23:30:37 ID:J6Rkj0cE0
('、`*川「おっはよー♪」

そう言って勢いよく部室のドアを開ける。

川 ゚ -゚) (,,゚Д゚) ('A`) ( ^ω^)

部室の中にいる何時ものメンバーがペニサスの方を向いた。
いつも来るのが遅いペニサスにとっては慣れた光景だった。

しかし少し妙だった。
いつもより早い時間に来たのになんでこんなに揃っているのだろう。

(;^ω^)

あっ、とペニサスは気が付いてしまった。
ブーンの右手が、包帯でグルグル巻きにされていて、それが肩から吊るされていた。

https://www.youtube.com/watch?v=D90AOhojK3M

68 名前: ◆sVJSKQRVSQ[sage] 投稿日:2015/09/08(火) 23:31:19 ID:J6Rkj0cE0
('、`*川「……どうしたの?」

(;^ω^)「朝、階段からコケて、腕を角に打ち付けて折りましたお」

('、`*川「……何で?」

(;^ω^)「えー……松坂牛・特Aロースのフィギュアを眺めながらスキップしてたら、踏み外しまして」

('、`*川「……」

(;^ω^)「あれって脂身まで忠実に再現してて……つるっと滑りやすくて……」

(;^ω^)「落としかけて、つい慌てて取ろうとしたら……」

('、`*川「ねえ、ブーン」

(;^ω^)「はい」

('、`*川「あんたバカ?」

(;^ω^)「返す言葉もございません」

ペニサスはその場に頭を抱えてへたり込んでしまった。
あまりの状況の展開と、バカバカしさに脳みそが理解を拒否してしまったからかもしれない。
とにかく何も考えたくなかった。

69 名前: ◆sVJSKQRVSQ[sage] 投稿日:2015/09/08(火) 23:32:03 ID:J6Rkj0cE0
(,,゚Д゚)「と、いう訳でOrange Lamp緊急会議を始めまーす」

本来なら楽器の音が響いているはずの部室に、5人が円座していた。
それもこれも、全てブーンがやらかしたせいである。

('、`*川「この馬鹿が腕を折りました。以上!」

( ^ω^)「申し訳ねえ」

('、`#川「てめえこの時期にそんなことしておいてその態度はねえだろオラァァァン!?」

(;^ω^)「大変申し訳ございませんでした、痛恨の極みでございます」

('、`*川「ホントお前いきなりやらかしてくれるよな……前のバンドの時もそうだし……」

(;^ω^)「今回の一件においては何も言い返せません」

(;'A`)「まさか霜降り肉のフィギュアを引いて骨を折るなんて思いもしなかった」

(,,-Д゚)「まぁ……やらかしちゃったことはしょうがない」

70 名前: ◆sVJSKQRVSQ[sage] 投稿日:2015/09/08(火) 23:32:46 ID:J6Rkj0cE0
川 ゚ -゚)「でも、どうする? ベース抜きで行くのか?」

(;゚Д゚)「まさか。そんな事するなら大人しく辞退した方がいい」

('、`*川「……しゃーねーな、私がやるわ」

(;゚Д゚)「それも無茶苦茶だよ、だってもう文化祭まで2週間あるかないかだぜ」

('、`*川「ブーンに教えようと思って、ある程度ザックリは覚えてるし」

('、`*川「細かいニュアンスとかアレンジ入れれば何とかなるはず」

(;^ω^)「おっ……」

71 名前: ◆sVJSKQRVSQ[sage] 投稿日:2015/09/08(火) 23:33:38 ID:J6Rkj0cE0
川 ゚ -゚)「良くそんな時間があったな?」

('、`*川「歌詞覚えて歌うだけだと飽きるから、暇つぶしがてらね」

(;'A`)「本当に大丈夫ですか?」

('、`*川「へーきよ、へーき」

('、`*川「今日、丁度ベースも持ってきてるのよね……何なんだろう」

('ー`;川「私今日ついてるかもしれないわね、色々と」

ペニサスは苦笑いを浮かべながら、足元に置いていたケースからベースを取り出した。

取り出したベースのネックの部分に楽器屋のジジイの文字で、調整内容と余白に付け加えるように

『良い一日を。せっかく調整したのだからコケないように』

とジジイの文字で書かれたメモ紙が挟まっていた。

それを見た彼女は、アハハと声を出して笑ったのだった。

72 名前: ◆sVJSKQRVSQ[sage] 投稿日:2015/09/08(火) 23:34:21 ID:J6Rkj0cE0
………
……


ブーン事変(ペニサスが勝手に名付けたのだが)翌日。
今日、部室の割り当てが無いドクオのバンドは音楽準備室で練習をすることになっていた。

('A`)「おざまーっす」

そんな音楽準備室のドアを開けた瞬間目に飛び込んできたのは、
椅子に座ってこちらを見てニヤついているペニサス。
そしておそらくこの部屋の隅に転がっていたのであろう、ボロいアコースティックギターを構えて鼻眼鏡をかけさせられているギコだった。

ドクオが入ってくるのを確認するや否や、ギコがポロンポロンと曲を弾きはじめた。

73 名前: ◆sVJSKQRVSQ[sage] 投稿日:2015/09/08(火) 23:35:02 ID:J6Rkj0cE0
https://www.youtube.com/watch?v=tsXkp9FVzgg

('、`*川「お前をボーカルに♪ する前に♪ 言っておきたい♪ 事がある♪」

(;'A`)「え?」

('、`*川「かなり厳しい♪ 話もするが♪ 私の本音を♪ 聞いておけ♪」

('、`*川「ギターをトチって♪ 間違ってはいけない♪」

('、`*川「私よりうまく♪ 歌ってもいけない♪」

('、`*川「とりあえずうまく歌え♪ いつものど飴なめてろ♪」

('、`*川「出来ないと言っても♪ やらせるからな♪」

('、`*川「わあすれてぇ〜♪ くれるなぁ〜♪」

74 名前: ◆sVJSKQRVSQ[sage] 投稿日:2015/09/08(火) 23:35:45 ID:J6Rkj0cE0
(;@Д@)「あ、ヤベッ、ミスった」

('、`#川「おいこらギコぉ! 今からサビだぞサビ! いいとこだったのに!!」

(;@Д@)「しゃーねーだろうよ! 昨日の夜にいきなり覚えて来いって、しかもチューニング狂いまくりのアコギで弾けなんてお前が言うから」

('、`*川「まぁ、いいわ。とりあえず言いたい事言えたし」

(;゚Д゚)っ-@@「いちいちこんな大ボケかまして言う事かあ?」

取った鼻眼鏡をポイッと何処かに投げ捨てるギコ。
急にこんなボケをかまされたドクオは何が何やら、混乱してその場で立ち尽くしていた。

('、`*川「と、いう訳でボーカルはドクオ、お前に任せるから」

(;'A`)「えっ、ちょ、なんで俺に?? てか、ええ?」

75 名前: ◆sVJSKQRVSQ[sage] 投稿日:2015/09/08(火) 23:36:29 ID:J6Rkj0cE0
('、`*川「しゃーねーべ、ベース亡き今、私がガチって覚えるしか無いし、私ベース弾きながらボーカル歌えるほど器用じゃないし」

('、`*川「ていうか昨日練習してて思った。無理」

( ^ω^)「申し訳ねえ」

脇の方に置いてあった椅子に腰かけながらメロンパンを食べていたブーンが、モグモグ口を動かしながら軽く頭を下げる。
この原因となった張本人の癖に、えらく堂々とした態度である。

(;'A`)「僕だってそんな器用じゃないっすよ! ……そうだ、ギコ先輩なら本職じゃないっすか」

(,,゚Д゚)「えー俺ギター弾きたーい、歌うのやだーやだやだー」

(;'A`)「そんな小学生みたいな拒否の仕方しなくても」

川 ゚ ー゚)「私が推薦したんだよドクオ」

先ほどからドラムスローンに腰かけたままこちらを見ていたクーが、混乱しているドクオを見つめながら言い放った。

76 名前: ◆sVJSKQRVSQ[sage] 投稿日:2015/09/08(火) 23:37:11 ID:J6Rkj0cE0
川 ゚ ー゚)「前にこの部屋で『Fell In Love With A Girl』をがむしゃらに弾きながら歌っている君を見てるからね。安心して推薦させてもらった」

確かにいつも適当に曲を弾く時はドクオはギターを弾きながら歌っている。
が、しかしあくまでお遊びのボーカルだ。ドクオは断りを入れようとするが、周りの先輩たちは更に盛り上がっている。

川 ゚ ー゚)「君のバンドで君がリーダーなんだ。大丈夫、誰も文句は言わないさ」

(,,゚Д゚)「そうそう。まぁしゃーないってことよ」

('、`*川「私が譲ってやるのだ光栄におもうがいい、ハッハッハッ」

(,,-Д゚)「……さっきまで『ドクオ大丈夫かな』『負担増えて嫌になったりしないかな』とか言ってた奴がどの口で」

('、`;川「あっ、こら言うな」

( ^ω^)「先輩は優しさの塊ですお」

('、`*川「うるせー殴るぞ」

( ^ω^)「ああ痛い、殴りながら言わないでほしいですお」

77 名前: ◆sVJSKQRVSQ[sage] 投稿日:2015/09/08(火) 23:37:53 ID:J6Rkj0cE0
(;'A`)

これはエライ事になってしまったなとドクオは思った。
まさかブーンが抜けてベースが居なくなるだけでなく、自分がボーカルギターをやる羽目になるとは。

('、`*川「とにかく! 今日から残り2週間……いや、1週間ちょっとか!! 徹底的に鍛えてやるから覚悟しておけ!」

(;'A`)「ええ……」

('、`*川「練習終わったら居残って特訓な! バイト? 休め」

('、`*川「今日から私は鬼軍曹と化す。フハハハ覚悟しろ」

(;'A`)「サーイエッサー!」

('、`*川「問題は場所よねー……」

('、`*川「クーちゃん、準備室って今日でラスト?」

川 ゚ -゚)「うむ。明日からは使わない机とかの置き場所になるから、もう使えない」

学園祭の準備が活性化すると、空き教室などに机などの資材が運ばれて埋まる。
クーが借りている音楽準備室も名ばかりの準備室で死に教室となっているので、ここもまず使われるだろう。

78 名前: ◆sVJSKQRVSQ[sage] 投稿日:2015/09/08(火) 23:38:36 ID:J6Rkj0cE0
('、`;川「うーん、どうしよ……今度こそスタジオ行くかぁ」

(,,゚Д゚)「……屋上」

('、`*川「ん?」

(,,゚Д゚)「屋上で練習したらいいんじゃねーの? あそこいつも誰もいねーし」

('、`*川「おー、それいいね」

川 ゚ ー゚)「まさしく秘密の特訓って感じでいいな」

( ^ω^)「でも屋上だと雨降ったら使えなくないですかお?」

(,,-Д゚)「そのためのこの鍵よ」

ギコは自分の右ポケットから鍵を取り出した。
使われていないのか新しいのか、窓から差し込む光がやけに反射して眩しかった。

79 名前: ◆sVJSKQRVSQ[sage] 投稿日:2015/09/08(火) 23:39:27 ID:J6Rkj0cE0
(,,゚Д゚)「入り口脇に建物あるだろ。あそこは元々去年潰れた天文部の部室だったみたいでさ」

(,,゚Д゚)「倉庫になっちゃってるからゴチャゴチャはしてると思うけどさ」

(,,゚Д゚)「電気も点くし、コンセントもあるからアンプの電気は確保できると思うぞ」

川;゚ -゚)「天文部が潰れたのは知っていたが……」

('、`;川「てか何で鍵持ってんのよ、そんでなんで中知ってんのよ」

(,,゚Д゚)「ん、俺が使ってたから」

(;^ω^)「……ギコ先輩って天文部でしたかお?」

(,,゚Д゚)「はぁ? 俺は1年の時から軽音楽部だっつーの」

(,,-Д゚)「あそこの最後の部長と知り合いでさ、ちょっとお話合いをして鍵と場所を時々譲ってもらってたんだ」

(,,-Д゚)「そん時借りた鍵をちょーっと持ち出して……後は分かるな?」

80 名前: ◆sVJSKQRVSQ[sage] 投稿日:2015/09/08(火) 23:40:12 ID:J6Rkj0cE0
('、`;川「あー、ハイハイ。全部聞いちゃって共犯扱いされたら堪らないから皆まで聞かないでおくわ」

(,,^Д^)「ハハハ、まぁ使ってくれよ。確か俺のアンプも置きっぱになってるはずだ」

(;'A`)「先輩、ありがとうございます」

(,,゚Д゚)「あ、でも万が一見つかった時には自己責任でよろしく」

(;'A`)「ハハハ……」

(,,゚Д゚)「本来は俺が手伝えれば一番いいんだけどな……自分のバンドもあるから」

(,,-Д゚)「ま、これで許してくれや」

ギコは持っていた鍵をドクオに向けてポーンと放り投げた。
スポッと言う効果音が付きそうなくらいピッタリドクオの手に収まったのを見て、ギコはハハハとまた笑った。

81 名前: ◆sVJSKQRVSQ[sage] 投稿日:2015/09/08(火) 23:40:54 ID:J6Rkj0cE0
………
……


('、`*川「ぶっちゃけた話、こればっかりは回数を重ねるしか無い」

ペニサスの頬から汗がつぅっと流れ落ちるのが見えた。
屋上入り口脇のこの小部屋は風通しがあの準備室よりさらに悪い。窓が無いので風通しもクソもあったモノではないが。
部屋の中には気持ち程度の小さな扇風機があるくらいだ。
加えてまともに使われていない事もあって埃が喉に張り付く。

('、`*川「ボーカル兼楽器弾きになるための道のりは3行程」

('、`*川「1、曲を弾けるようになる 2、歌えるようになる 3、弾きながら歌う ……以上!」

(;'A`)「さらっと難しい事を簡単そうに言いますね」

('、`;川「あったりめーだろ、簡単だったら私がやってるわ」

82 名前: ◆sVJSKQRVSQ[sage] 投稿日:2015/09/08(火) 23:42:23 ID:J6Rkj0cE0
('、`*川「まぁでもドクオはさ、遊びとはいえちょこちょこ歌いながら弾いてたわけだし、慣れちゃえば案外簡単に行けると思うのよ」

('、`*川「一番難しいのは『弾きながら歌う』とこだってギコも言ってたしね」

('、`*川「それが既に他の曲とはいえ出来るあんたならどうにかなるはずなのよ」

('A`)「なるほど」

('、`*川「私見てるくらいしか出来ないけど、ちゃんと聞いてあんたにアドバイスくらいは出来るはずだから」

('、`*川「とりあえず、やってみよう」

('A`)「……はい」

この埃と打ちっぱなしの壁から伝わる熱で室温がだだ上がりな、最悪の環境で特訓が始まった。
しかしその勢いも2時間も経たずに途切れてしまう。
あまりにもこの部屋の中の空気が淀みすぎて、ドクオの喉が先にやられてしまったからだ。

83 名前: ◆sVJSKQRVSQ[sage] 投稿日:2015/09/08(火) 23:43:06 ID:J6Rkj0cE0
(;゚A゚)「ゲフッゲフッ」

('、`;川「だ……大丈夫か? ゴホッ」

部屋から飛び出し、もたれるように屋上の手すりでグッタリしているドクオの背中をさするペニサス。
そのペニサスもゲホゲホと咳き込みながら自分の喉をさすっていた。

('、`;川「水飲む?」

ペニサスは自ら口をつけたペットボトルをドクオへ差し出す。
彼は特に躊躇する事も無くそれを受け取ると、グイッと一気に飲み干した。

('、`;川「……落ち着いた?」

(;'A`)「ええ、何とか」

その言葉を聞いてふうと安心したように息を吐き出したペニサスは、おもむろにドクオの隣に並び彼と同じように柵に寄りかかる。

84 名前: ◆sVJSKQRVSQ[sage] 投稿日:2015/09/08(火) 23:43:47 ID:J6Rkj0cE0
('、`*川「もうすっかり秋じゃん」

屋上に強く吹き付ける風は、夏のようなジメッとした暑さが無くスッキリしていた。
共に運ばれてくる匂いも草木の青臭さが限りなく薄くなり、どんどんと枯れたような冷たい風が身体を包んでいた。

('、`*川「そろそろ1ヶ月経つわね、」

('A`)「……そーっすね」

あの、屋上での電撃結成からもう1ヶ月も経つと言うのだ。
ドクオは時の流れる早さに少し、不思議な感覚を覚えてしまう。

('A`)「……先輩」

('、`*川「ん? 何?」

('A`)「どうして先輩は俺とバンドやってくれたんですか?」

85 名前: ◆sVJSKQRVSQ[sage] 投稿日:2015/09/08(火) 23:44:33 ID:J6Rkj0cE0
彼女、ペニサスは比較的不真面目な人間だ。
ひいき目に見ても真面目でない事は、彼女を知っている人間の9割は理解している。
そんな彼女が唯一真面目に取り組んでいたのがバンドであり、音楽である事も同じ割合位の人間が知っている事だろう。

だからこそ不思議だったのだ。
彼女の前のバンドがいくら人数が揃わず、練習が上手くいってないからと言って、こちらにこんなに力を入れているのは何故だろうと。

('、`*川「んー……」

('、`*川「いやね、お前らのバンドが壊れたタイミング位でうちのバンドもほぼ解散状態になったんだよ」

(;'A`)「えっ!?」

('、`;川「あれー? ゴメン言ってなかったっけ」

(;'A`)「初耳っす」

('、`*川「ドクオとさ、部室で『Shoot you down』やったあの日にさ、まぁ喧嘩別れしちゃって」

('ー`;川「『最後くらい真面目にやりたい』って言ったらめっちゃ喧嘩になっちゃってさ」

86 名前: ◆sVJSKQRVSQ[sage] 投稿日:2015/09/08(火) 23:45:16 ID:J6Rkj0cE0
(1∀1)『今まで真面目になんてやってこなかった奴がそんなこと言う?』

(2∀2)『冗談もいい加減にしとけって。こっちだって色々あんだよ』

(3∀3)『女とか?』

(2∀2)『うっせ殺すぞ』

ゲラゲラゲラ……
ゲラゲラ……
ゲラ……

('、`*川「私の組んだバンドのメンツってさぁ、まぁ、私と一緒であんまり真面目じゃなくて」

('、`*川「……なんつーか『これでいいんじゃね??』みたいな妥協の塊で出来てたバンドだったんだ」

('、`*川「だから、最後に妥協無しで行こうぜって話したら……まぁ私のせいもあるけど、こうなっちゃって」

87 名前: ◆sVJSKQRVSQ[sage] 投稿日:2015/09/08(火) 23:46:10 ID:J6Rkj0cE0
('、`*川「そんなときにさ、お前のバンドが別れてさ、そんで茶化してた私の目の前で『バンドやりたいです』なんて真面目な顔して言っててさ」

('、`*川「その時思ったんだよね。なんつーかこの機会逃したらもう二度と頑張れなくなるんじゃないかって。そんな気がして」

('ー`*川「……だから、全部私の自分勝手な都合なの。ゴメンな、ドクオ」

('A`)「? 何を謝る必要があるんです?」

('ー`;川「だってさ、私がバンドぶっ壊れたからお前に便乗してるだけなんだよ? やってることは過程が違えどツンと一緒さ」

('A`)「だって先輩は真面目にやってるじゃないですか。僕にだってこんな熱心に教えてくれてるし」

('A`)「しかもタイミングが丁度良かったと言え、バンドやりたいって言う僕のワガママに付き合ってくれて」

('A`)「色々やってくれる先輩に感謝ことすれど怒りなんて絶対にしませんよ」

88 名前: ◆sVJSKQRVSQ[sage] 投稿日:2015/09/08(火) 23:46:56 ID:J6Rkj0cE0
('、`*川「……ドクオは優しいなぁ」

(;'A`)「結果で言えばこっちが振り回してるようなもんですからね」

(,,゚Д゚)「ういーっす」

いつの間にやらやってきていたギコが校庭を柵越しに眺めながら話していた彼らの背中を叩く。
2人はほぼ同時にギコの方へ振り返る。

('、`;川「おめえ……とんでもないとこ紹介してくれたな」

(,,゚Д゚)「だって最終手段だもん」

(;'A`)「埃まみれで使えたもんじゃ無かったですよ」

(;゚Д゚)「あ、ごめん、換気しろって言うの忘れてたな」

('、`*川「おかげで喉ガビッガビだよ」

89 名前: ◆sVJSKQRVSQ[sage] 投稿日:2015/09/08(火) 23:47:39 ID:J6Rkj0cE0
(,,-Д゚)「ゴメンゴメン、2人にジュースでも奢るわ。先行って選んでおいてくれよ」

('、`*川「やったぜ」

そう言って意気揚々と出口へ向かっていくペニサスの後に続いてドクオが歩き出そうとした瞬間、ポンとまたギコに肩を叩かれた。

(,,゚Д゚)「……あんまり気にすんなよ? 迷惑かけてるとかどうだとかさ」

('A`)「……聞いてたんですね?」

(,,-Д゚)「聞いたんじゃない、聞こえたのさ。後ろにいたらな」

(,,゚Д゚)「みーんな、ここまで付き合ってくれてるって事は、みんな楽しんでやってるって事なんだ」

(,,゚Д゚)「だから、一々聞くのも野暮ってもんだぜ」

90 名前: ◆sVJSKQRVSQ[sage] 投稿日:2015/09/08(火) 23:48:22 ID:J6Rkj0cE0
(;'A`)「……すいません」

(;゚Д゚)「いやっ、謝るとこじゃねーよ! ……そこはお前のいいとこでもあるんだからさ」

(,,゚Д゚)「ほら、ジュース買いに行くぞ」

('A`)「あの、先輩」

(;゚Д゚)「あん? 早く行かねーとペニサスキレちまうぞ」

('A`)「先輩は、なんで掛け持ちしてまで僕のバンドに……?」

(,,゚Д゚)「……そりゃーお前」

(,,-Д゚)「向こうで弾けないギターを弾きたいだけさ」

https://www.youtube.com/watch?v=geJthfw049k

91 名前: ◆sVJSKQRVSQ[sage] 投稿日:2015/09/08(火) 23:49:03 ID:J6Rkj0cE0
………
……


(,,゚Д゚)「ういーっす」

ある日の放課後、部室に少し遅れてやってきたギコが片手に持った用紙をヒラヒラと振りながら入ってきた。

(,,゚Д゚)「今年の演奏場所とかがようやく決まったとさ」

('、`*川「えーやっと? 今年遅くない?」
中々チューニングが上手くいかないようで、さっきからペニサスはヘッドに付けたチューナーとずっとにらめっこ状態だった。

(,,゚Д゚)「なんかOBのお笑い芸人が学祭当日にイベントするって、急遽決まったらしくてさ」

川 ゚ -゚)「なんだそれ。こっちの都合はお構いなしだな」
クーもさっきからチューニングに苦戦している。何回もスネアを鳴らしては張り具合を調整している。

('、`*川「有名人なんてそんなもんよ。名前しらないけどね、そのOB」

( ^ω^)「あ、でもこの前ローカル番組に出てたお」

3枚目のメロンパンの皮に口をつけたブーンの口の端から欠片がポロポロ落ちる。
片手で食べるのも最早慣れっこのようだ。

93 名前: ◆sVJSKQRVSQ[sage] 投稿日:2015/09/08(火) 23:49:44 ID:J6Rkj0cE0
(,,゚Д゚)「でも今年の演奏場所は最高だぜ?」

('、`*川「え、なに? いつものホールじゃないの?」

(,,゚Д゚)「そこをそのOBに貸し出すんだと。だから俺たちの演奏場所は……」

('A`)「ちゃーっす」

ギコが場所をペニサスに伝えようとした瞬間、ドクオが部室へと入ってきた。
思わぬタイミングで入ってきたドクオを、思わずペニサスがじっと見つめる。

(;'A`)「……あれ? 何か入ってきちゃまずかったすか?」

('、`*川「……うんにゃ、全然大丈夫。ただ、タイミングが常に悪くて最低だなぁと……」

(;'A`)「詫びてるのか貶してるのかどっちかにしてくださいよ」

94 名前: ◆sVJSKQRVSQ[sage] 投稿日:2015/09/08(火) 23:50:37 ID:J6Rkj0cE0
( ^ω^)「おっおっ、乙だお」

(,,゚Д゚)「今日やけに来るの遅かったな。どうしたんだ?」

('A`)「え、ギコさん行ってないんですか? 開催委員会にバンド毎責任者集合って言われてたじゃないですか」

(;゚Д゚)「あ! ……今日だったか出演順番決めの日」

(;'A`)「あ、あれ順番決めなんですか? 何かいきなりクジ弾かされたからサッと引いちゃいましたよ」

(;゚Д゚)「やべーなー、委員会の奴からチラシ貰って満足しちゃってたわ」

('、`*川「で、何番引いたのよドクオ」
ようやくチューニングが上手くいったペニサスは、チューナーを外そうとヘッドへと手を伸ばした。

('A`)「えーっと……5番ですね」

95 名前: ◆sVJSKQRVSQ[sage] 投稿日:2015/09/08(火) 23:51:27 ID:J6Rkj0cE0
その数字を聞いた瞬間、ペニサスは外したチューナーを手からぽろっと床に落とした。
カツーンと乾いた軽い音を響かせながら床を滑る。

('、`*川「……なあギコ……今年の出演バンドって何組だっけ」

(,,-Д゚)「俺のバンド、Orange Lamp、ツンwithジョルジュバンド、2年生バンド、そんで一般生徒の有志バンドだな」

川 ゚ -゚)「……うちのバンドは大トリってことか」

(゚A゚)「えっ?」

( ^ω^)「おっ?」

('、`*川「……で? ギコ、今年の場所と時間は?」

(,,-Д゚)「書類によると『今回バンド演奏の開催場所を校舎2階ホールから、体育館へと変更する。時間帯を最終日16時より……』」

('、`*川「ようするに、バンド演奏が学園祭の全プログラムのラストのラスト。最後は校長のあいさつで閉めるだろうから……実質全校生徒の前での演奏ね」

96 名前: ◆sVJSKQRVSQ[sage] 投稿日:2015/09/08(火) 23:52:38 ID:J6Rkj0cE0
((((((゚A゚))))))

('、`*川「前言撤回。ドクオお前やっぱ持ってるわ。最高だわ」

(,,゚Д゚)「ラストのラストか……いい思い出になりそうだな」

川 ゚ ー゚)「本当、いい最後の飾り方だな。ドクオに感謝しなければ」

(*^ω^)「おっおっ、最前で応援するお」

笑顔で和気あいあいと話すブーンと先輩たちの傍らで、ドクオは頭の中が真っ白になって固まっていた。

(゚A゚)「(俺が、ボーカル、大トリ、全校生徒、体育館)」

(;゚A゚)「(そこで、歌、歌う?)」

('、`*川「もしも〜し、ドクオさん生きてますか〜」

ドクオの目の前でひらひらと手を振るペニサス。ドクオは瞬きすら忘れたように目をかっぴらいて突っ立っている。

98 名前: ◆sVJSKQRVSQ[sage] 投稿日:2015/09/08(火) 23:53:21 ID:J6Rkj0cE0
(,,゚Д゚)「いやーでも、すげえよドクオ。本当にマンガみたいだ」

川 ゚ -゚)「人生で1度でも経験できるかってレベルだな今回のは」

(;^ω^)「……あれ? 僕すげー勿体ない事をしてしまったのでは」

('、`*川「感謝感謝。南無南無」

そう言ってペニサスがドクオに向かって拝むと、ドクオがプルプルと震えだす。
痙攣というよりは、遅れてきた武者震いのような感じだった。

((((;゚A゚))))「おっおっおっ」

('、`*川「お?」

(;^ω^)「あれ? 僕? あれ?」

(;゚A゚)「お、俺、練習しないと! 練習しましょ!先輩!!」

99 名前: ◆sVJSKQRVSQ[sage] 投稿日:2015/09/08(火) 23:54:04 ID:J6Rkj0cE0
('、`*川「おーそうだな! 恥かけねえもんな大トリリーダー!」

そう言ってニヤニヤしながらベースを構えるペニサス。

川 ゚ ー゚)「うむ。リーダーには頑張ってもらわないと」

同じく、ドラムスティックを持って構えるクー。

(;゚Д゚)「えーっと、とりあえず俺クジ引いてきていいかな?」

そして入口に手をかけた状態で許可を貰うのをギコが待っていたのだった。

https://www.youtube.com/watch?v=penvn9VL32Y

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