( ^ω^)ナイトウスーツのようです
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57 名前: ◆qvQN8eIyTE[sage] 投稿日:2013/05/30(木) 19:33:06 ID:oRlV1SEE0
十 軍事利用

五十年前でいう韓国と北朝鮮は、今では統合して朝鮮共和国という一つの国家になっている。
さらにいえば、その国家がまとめて中国の実質的な植民地にもなっているんだけど、それはまた別の話。

内藤は朝鮮共和国の港に立って、ナガオ・カーボートを呼び出した。
だいたいシベリアから海を渡って朝鮮共和国までナガオ・カーボートがやってくるには二日ほどの時間がかかったんだけど、その間にもいろいろな事があったさ。

中国からの支配を逃れるために、朝鮮共和国はナイトウスーツを戦争用に特化したかたちで軍事開発をしていた。
そんな中で、ナイトウスーツの開発者である内藤が入国してきたんだ。
朝鮮共和国がどのような接触を内藤に取ろうとするのか、想像に難しくないよね。

(  ω )

今までの出来事を脳内で反芻している内藤のもとに、一枚のカードが風に吹かれてやってきた。
手にとってよく見てみると、それは電子手紙だったよ。

届け先に設定された人物の生体反応が確認できると文字が浮かび上がる機械さ。
第三者が無理に見ようとすると、自然にデータが消されるために、極秘のやりとりをするのに適した道具なんだ。

そして、不思議と内藤に反応してその手紙は文字を浮かべ始めた。

( ;ω;)「オォーッ!」

手紙を読んだ内藤は、大きな涙を流して、嗚咽とも悲鳴とも絶叫ともつかない声で叫んだね。
絶望に絶望を重ねた、どす黒い声だったさ。

58 名前: ◆qvQN8eIyTE[sage] 投稿日:2013/05/30(木) 19:36:04 ID:oRlV1SEE0
手紙にはだいたいこんなことが書いてあった。

ナイトウスーツを軍事利用したい。
開発者にどのようにナイトウスーツに手を加えれば殺傷能力が上がるかを一緒に考えて、そして改造してほしい。
金、家、女、安全。その他諸々は国から褒美として与えられる。

( ;ω;)

内藤には金がある。
家だって、小さなブティックだけどちゃんとある。
女だって、かわいい行き遅れの婚約者がいるし、日本に帰れば安全はある程度保障されている。

だから、褒美なんてどうでもいいし、たったそれだけのものと引き換えに、
自らの発明品をこれ以上害悪なものに染め上げられるはずもなかったんだ。

何より、平然と内藤に人殺しの手伝いをさせようとする朝鮮共和国に腹が立ったし、
見たくもなかったナイトウスーツの汚い面をまじまじと見せつけられて、
内藤はもう、何もかもが嫌になってしまったんだよね。

( ;ω;)

手紙を海へと投げ捨てて、港で内藤はナガオ・カーボートを待つ。
だけど、申し出を反故したうえに、国の秘密を知ってしまった内藤を朝鮮共和国の政府が放っておくわけがなかったよね。

<ヽ`∀´>「ウエハハハ」

殺し屋だって、たった二日間という短い時間の中で何人も送られてきたさ。

( ;ω;)

<ヽ%%∀(#>「アイゴー」

皆が皆、ナイトウスーツの圧倒的な力に返り討ちにあっていたけどね。

59 名前: ◆qvQN8eIyTE[sage] 投稿日:2013/05/30(木) 19:37:19 ID:oRlV1SEE0
<ヽ`∀´>「ウエハハハ」

たまにナイトウスーツを無許可で着てるであろう殺し屋だって襲い掛かってくるんだけど、
内藤と比べると操作技術のレベルが低すぎたんだ。

( ;ω;)

<ヽ%%∀(#>「アイゴー」

一瞬でナイトウスーツごと片付けられていたよ。

内藤の車を乗せたナガオ・カーボートが、気絶している殺し屋が山積みになっている港へと到着した。
内藤は殺し屋たちを一目見て、とても悲しい目をしながらナガオ・カーボートに乗り込んでいったよ。

(  ω )

自分がこれから何をするべきか。
何をすれば、ナイトウスーツを開発した責任が取れるのか。
何も答えが見つからないまま、内藤は静かに日本へ向けてナガオ・カーボートを走らせたんだ。

内藤が変えてしまった世界に背を向けて、内藤は惨めに帰路についた。
私にも想像がつかないほどの悲しみを背負ってね。

60 名前: ◆qvQN8eIyTE[sage] 投稿日:2013/05/30(木) 19:39:53 ID:oRlV1SEE0

(  ω )

運転している最中も、

/ ,' 3

帰国して父親に迎えに来てもらっている最中にも、

ζ(゚ー゚*ζ

婚約者が必死に新生活について話している最中にも、

(  ω )

内藤は考えていたね。
他の事なんか頭に入りやしない。

今の自分にできること。
これからの世界にできること。

でも、まったく考え付かなかった。
今やナイトウスーツは世界中で第一線に立って働いているんだ。
そして、ナイトウスーツが働けば働くほど、被害者の数も増える。

そんな現状を、内藤がたった一人で無かったことにするだなんて、どう考えても無理なんだ。

61 名前: ◆qvQN8eIyTE[sage] 投稿日:2013/05/30(木) 19:41:05 ID:oRlV1SEE0
(  ω )「皆を幸せにする発明なんて、そんなものできるわけないじゃないかお……」

世界を変える。
それほど大きな発明に、何の代償も払わなくていいわけがないよね。

はじめは、ただただ自分の発明を世界が受け入れてくれたことに喜んでいたんだ。
内藤は、長岡への憧れや、純粋に人の役に立ちたい思いから、必死にナイトウスーツの発明に明け暮れていたんだよね。

心から、ナイトウスーツはこの世の中に幸せしかもたらさない発明品だと信じていたよ。

でもさ、木に光をあてたら影ができるだろ?
それも光が強ければ強いほど影の濃さも深くなる。
ナイトウスーツの光は、あまりにも広範囲を強く照らしすぎてしまっていたんだ。

(  ω )「…そうだ!」

( ^ω^)「もしこれがうまく作れれば……」

ならば、その光自体をなくしてしまえば、照らされることもなければ新たな影だって生まれることもない。
人を幸せにすることもなければ、必要以上の不幸を作り出さない発明品を生み出せばいい。

これが、内藤が悩みに悩んでたどり着いた答えさ。

何かを生み出すのではなく、何も生み出させない発明。
現在は変えられないけれど、過去への啓示とすることはできる。
内藤は、人生で最後の、最高の発明をするために必死に取りかかったよ。

私は、ただただそんな彼のそばにいることしかできなかったさ。



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