( ^ω^)は人を殺した猫のようです


1 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/06/19(水) 20:59:27 ID:EovxaxHM0

友達のネズミがぼくに言う

('A`)「お前あのばかでかい人間を倒したんだろう? すげえなあ」

近所のおばさん達がぼくを見て話している

从'ー'从「見て…あのにゃんこって確か…」
('、`*川「ああ、あの子のお家で飼っていた… 可哀想にね」

あまり好きではない犬がぼくを慰める
  _
( ゚∀゚)「んな落ち込んでじゃねえよ…調子狂うだろう」

男の子みたいな女の子がぼくを撫でる

从 ゚∀从「お前アイツの飼ってたねこだろ…?
     アイツ…もう居ないんだ……居ないんだよ…」

( ^ω^)
ああ、知ってるよ。知ってるとも。
                 だってぼくが 殺したのだから

4 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/06/19(水) 21:01:52 ID:EovxaxHM0







( ^ω^)は人を殺した猫のようです

5 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/06/19(水) 21:02:49 ID:EovxaxHM0

ぼくは小道を今日も歩く。  あの子を迎えに行くために。


いくら夕方とはいえアスファルトで肉球が焼けるし、日差しがつよい。

長い毛並のぼくには少々きつい道のりだ。

6 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/06/19(水) 21:03:43 ID:EovxaxHM0
ξ*゚听)ξ「あーっ!! ぶーんじゃないっ!!!!今日も迎えに来てくれたの?」

大きな道路を挟んだ向こう側で手を振る巻き毛の可愛らしい女の子。

あれこそがぼくの飼い主である。
まだ真新しい傷一つ無い赤いランドセルに光が反射してまぶしい。

7 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/06/19(水) 21:04:58 ID:EovxaxHM0

ぼくは早く撫でてもらいたくって急かす様に鳴いた。


( ^ω^)「なおう なおう」


ξ*゚听)ξ「はいはいー! 今行くよーっ!!」

靴ひもを直していたあの子がこちらへ向かって走ってくる。

8 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/06/19(水) 21:06:09 ID:EovxaxHM0


ちょっとまてよ、




あれ、しんごうってヤツは赤だとだめじゃなかったっけ


だめ、だめだよ、 来たら、行けないんだよ

9 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/06/19(水) 21:07:38 ID:EovxaxHM0



ξ゚听)ξ「あ ぇ」


ごしゃり、と 音がして、



  あの子がくるまに  食べられた

10 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/06/19(水) 21:08:24 ID:EovxaxHM0



くるまはあの子の欠片を引きずって行く。

途端にひろがるあの子のにおい。
いつもぼくを撫でていた嗅ぎ慣れたにおい。

しんごうの赤とは別の赤がぼくのところに飛び散ってきた。

誰かの叫び声がぼくの耳を引き裂く。

すぐにあの子の周りに人が集まって来る。

11 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/06/19(水) 21:09:04 ID:EovxaxHM0
なんだか四角いものをあの子に向けている。
笑っている奴もいるし。泣いてるやつも、なにか吐き出してるやつもいる。

誰でもいい、早くあの子を起こしてあげて。
どうやら一人じゃ起き上がれないみたいだから
ぼくじゃああの子を起き上がらせてあげられないんだよ。


すぐに白くて大きなくるまが来てあの子を連れ去ろうとする。

からからの付いたベットの様なものから曲がりくねったあの子の腕が見えた。

12 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/06/19(水) 21:10:09 ID:EovxaxHM0

( ^ω^)「なあ なあおう」

やめて、連れて行かないで。
まだぼくは撫でてもらえてないんだよ。


そんなぼくを無視して
あっという間に車は嫌な音を出しながらどこかへ消えて行ってしまった。

13 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/06/19(水) 21:11:34 ID:EovxaxHM0





ああ、ああ、


本当は、知っていた。


あの子がもう動かないこと。
二度とぼくのことを撫でられないことも。

14 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/06/19(水) 21:12:22 ID:EovxaxHM0

少し昔、知り合いのねこがくるまに食べられて
動かなくなったのを見たことがあったっけ。

そのときもあんな風に赤が広がって、足がひとつどこかへ行ってしまっていた。

15 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/06/19(水) 21:13:32 ID:EovxaxHM0



じゃあ、あの子をそんな風にしたのは誰だ。

16 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/06/19(水) 21:14:22 ID:EovxaxHM0



あの子を動けなくしてしまった憎むべき相手は誰だ。

17 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/06/19(水) 21:15:28 ID:EovxaxHM0


ああ、ああ、 それこそぼくは知っている。

18 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/06/19(水) 21:16:15 ID:EovxaxHM0



(^ω^)


 この、 ぼ く だ 。
ぼく 自身 なのだ。

19 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/06/19(水) 21:17:44 ID:EovxaxHM0

ぼくはその場所から走り出した。  いや、逃げ出した。

とにかくあの子のにおいから逃げ出したくて、

走る走る。

だけどにおいはぼくの毛に染みついてしまったようで
ぼくは毛を噛みちぎりたくなった。

走る走る。

20 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/06/19(水) 21:18:46 ID:EovxaxHM0
においの所為であの子が後ろからついて来ている気がして、
何度も後ろを振り返った。

走る、とにかく走る。

あの子の声が頭のなかでなんどもなんども再生される。
煩わしいとさえ感じる程に。

走る走る。

走る走る走る。

( ω )

21 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/06/19(水) 21:19:54 ID:EovxaxHM0



散々回り道をしてぼくの、あの子の家へ着いた時にはもうお日様はどこかへ
行ってしまった。


星が、ぼくをばかにしているような気がした
笑っているような気もした

そういえばあの子が言っていた。

人は動かなくなると星になってしまうのだと。

22 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/06/19(水) 21:20:46 ID:EovxaxHM0

じゃああの子は今ぼくの上に居るのだろう


こんな無様なぼくを、あざ笑っているのだろうか。


どうしようもなくなった無様なぼくは、ぼくしか知らない入り口から
蒸し暑い家の中へ入り込んだ。

23 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/06/19(水) 21:21:49 ID:EovxaxHM0
入った瞬間、叫び声が耳に飛び込んでくる。

先程まで気になってしょうがなかった蝉達の鳴き声すらかき消される。


あの子のおかあさんの声だ。

なんだかとても怒っている様な声で、あの子のおとうさんに喋っている。
おとうさんも怖い顔でなにか言い返している。

24 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/06/19(水) 21:22:34 ID:EovxaxHM0

ぼくはなんだか怖くなってまた、逃げ出した。

25 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/06/19(水) 21:23:35 ID:EovxaxHM0

ぼくは二階へ上がりあの子の部屋のドアの隙間からするりと入り込んだ。

あの子のにおいが全身を包み込む。
途端になんだか気持ちが悪くなってくる。

あの子を殺してしまった罪悪感というやつからだろうか。

26 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/06/19(水) 21:24:46 ID:EovxaxHM0

(; ω )「ふみぬう」
ぼくは急いでこの部屋からベットを運びだし、風がよく吹き抜ける廊下で早く眠りたい。


だけれどぼくの体より少し大きめのベットは重くて、
息が荒くなる度あの子がぼくの体の中に入り込む。

27 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/06/19(水) 21:25:51 ID:EovxaxHM0

そしてぼくの中で囁き続ける。


お前の所為だ、と

お前があの時呼ばなければ良かったのに、と

ずうっと囁き続けるのだ。

28 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/06/19(水) 21:26:39 ID:EovxaxHM0


なんだか目の前がぼやけ始める。

29 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/06/19(水) 21:27:23 ID:EovxaxHM0


( ;ω^)


なおう なおう

30 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/06/19(水) 21:28:49 ID:EovxaxHM0

不幸を呼んでしまった白猫は鳴く。

 なおうなおう

不幸を引き起こしてしまった白猫は泣くのだ。

31 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/06/19(水) 21:29:59 ID:EovxaxHM0





なあおううぅ なあなあ なおう

32 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/06/19(水) 21:31:23 ID:EovxaxHM0
―――――
――――――――
―――――――――――――
―――――――――――――――――( ω ) なおう
―――――――――――――
――――――――
―――――――――――――――――――――――――――――
――――――――
―――――
――

33 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/06/19(水) 21:32:58 ID:EovxaxHM0

( ^ω^)

あれからどれ位時間がたったのだろう…?

少なくとも日差しがぼくに優しくなったことは確かだ。


友達のネズミと
近所のおばさん達と
あまり好きではない犬と
男の子のような女の子に

ありがたく励まされたぼくは、あの日と同じ小道を歩いていた。

34 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/06/19(水) 21:34:01 ID:EovxaxHM0





あの場所へ向かうために。

35 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/06/19(水) 21:36:38 ID:EovxaxHM0




ねえねえ、もういいかな


ぼくはもう疲れてしまったんだよ
寝ても覚めても、あの子がぼくから離れてくれない。
毛はもうとっくに生え変わってしまったのに、おかしいね。
ほら、ほら、ほら、

36 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/06/19(水) 21:37:24 ID:EovxaxHM0
今もぼくの後ろを付いて来ている。

37 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/06/19(水) 21:38:40 ID:EovxaxHM0

ξ;;;;:,,;)ξ

あの日、道路に横たわったときと同じ顔で。
真っ赤になって笑っているのか泣いているのか分からない顔で。

ぼくを見下ろしている。

38 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/06/19(水) 21:40:31 ID:EovxaxHM0


ここを真っすぐ行ってそこを曲がれば、ほら、


――――あの子が死んだ場所

( ^ω^)


あの子のにおいが一層強くなる。

39 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/06/19(水) 21:42:08 ID:EovxaxHM0

ぼくは道路に飛び出して赤黒いしみに背中を擦り付けた。



( ^ω;)「な」

40 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/06/19(水) 21:43:35 ID:EovxaxHM0


( ;ω;)「あ、なああああああああ、ああ、ああああああああああ」

そうしたらあの子のところへ行ける気がして!
あの子に撫でられたような感覚を味わえる様な気がして!!


本当はずっと、ずうっと!! 謝りたかった!!!!

ごめんなさいって、ぼくのせいでごめんなさいって!

41 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/06/19(水) 21:45:12 ID:EovxaxHM0

会いたい会いたい会いたい! あの子に会いたい!!

( ;ω;)「なおうなおう! にゃあにゃああ、なあおう!!」

42 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/06/19(水) 21:47:01 ID:EovxaxHM0






不吉の白猫は死を呼ぶ。
 それは他人の死も、 自らの死も。

43 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/06/19(水) 21:48:06 ID:EovxaxHM0




気がくるった猫は気づかない。


あの子を食べた怪物と同じ怪物が、
折角警笛を鳴らしているのに気付かない、気づけない。

44 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/06/19(水) 21:50:39 ID:EovxaxHM0




( ;ω゚)「なあ、あ」


ごしゃり


白い猫があかく染まる。

45 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/06/19(水) 21:52:22 ID:EovxaxHM0



薄れゆく意識の中で猫はあの子の顔を見た。

もちろん本物のあの子では無い。 幻覚の類だ。

46 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/06/19(水) 21:54:02 ID:EovxaxHM0


ξ*^ー^)ξ


それはもう、とびきりの笑顔だった!

47 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/06/19(水) 21:56:44 ID:EovxaxHM0
猫はそりゃもう喜んだ!!
その場で飛び回りたいほどにね!!







でも、何故か出来なかった。

48 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/06/19(水) 21:59:08 ID:EovxaxHM0

仕方ないから猫はあの子の笑顔に負けない位の笑顔を作った。


(*^ω^)

49 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/06/19(水) 22:02:11 ID:EovxaxHM0







                 な
    な                お 
         お う                  う  !
                                       !



(*^ω^)

50 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/06/19(水) 22:03:20 ID:EovxaxHM0




( ^ω^)は人を殺した猫のようです

51 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/06/19(水) 22:04:05 ID:EovxaxHM0
おわり!



▼ 支援イラスト
( ^ω^)  忘年感想絵会スレ』 スレ>>138より

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