ジェイソン・クールのようです
本編 あとがき



※『( ^ω^)百物語のようです2013( ω  )』参加作品です。

4 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/09(金) 23:45:45 ID:oB2iRQPQ0
198X年、13日の金曜日
ニュージャージ州ブレアーズタウン
クリスタルレイク付近キャンプにて
当時、6歳だった少年が溺死した


不慮の事故として発表された訃報だが、実際はそうではない


当時、キャンプ指導員の候補生達が悪ふざけで行った『殺人鬼のコスチューム』を見てパニックを起こし
誤って湖に転落してしまったのだ


私は、コレを『不慮の事故』などで済まそうと思わなかった


『息子』が死んだこの事件を、『不慮の事故』などで片付けたくなかった

5 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/09(金) 23:46:31 ID:oB2iRQPQ0
当然、事故として扱われた事件
若者達の責任は問われなかった
反省の色を見せることも無く、のうのうとキャンプを出て行くその姿を見て


私の中の『何か』が壊れた


頭に響くのは、あの子の可哀相な声


『殺してママ、殺して』


…ああ、ママはお前の為ならなんだってしてやるよ
悪ふざけで人を殺しても許されると言うなら
これも、私の怒りを込めた『悪ふざけ』だ
恨まれる筋合いも、理由も無いだろう?

6 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/09(金) 23:47:20 ID:oB2iRQPQ0



ホッケーマスクを被り、鉈で人を殺したあの日

私は、『バケモノ』になった


.

7 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/09(金) 23:48:04 ID:oB2iRQPQ0



『ジェイソン・クールのようです』


.

8 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/09(金) 23:49:20 ID:oB2iRQPQ0
【Urban Legend】

平たく言えば『都市伝説』
メジャーな例で言えば、『スレンダーマン』や『ブギーマン』など
恐怖を実体化したものが多く挙げられる


さて、ここで一つ、『ある歌姫』の話をしよう


ξ゚听)ξ


60年代を代表する歌姫『ツン・デレート』
当時の合衆国民なら知らない者はいない、超有名歌手だった
その歌唱力も然ることながら、特筆すべきはその容姿
カールを巻いたブロンドヘアーに、挑発的な赤い唇
長い睫と青い瞳に、老若男女誰もが夢中になった

しかし、人気の絶頂期に彼女は何者かに無惨に殺され、23歳という若さでこの世を去った
どの新聞社も、『ツン・デレート』の死と『スキャンダル』を報じた
現場には彼女の『体』だけが残されており、首には乱暴に叩き斬られた痕が残されていたという
『頭』は見つかっておらず、目下捜索中とのこと

同じく、現場で死亡していた『ブーン・ホライゾン』は、彼女の恋人だった
花屋で働く青年で、秘密裏に交際を行っていたらしい
死因は、『顔の皮』を剥がされた事によるショック死
幸せの絶頂であった彼らに襲い掛かった、目を覆いたくなるような惨劇だった


犯人は、今も見つかっていない


この事件を元に、ある【Urban Legend】が広まった
彼女に熱狂した、誰も知らないとあるファンの話

9 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/09(金) 23:50:03 ID:oB2iRQPQ0
(   )



熱狂的なファンである肉屋の『××××』は、彼女に恋をしていた
コンサートがあれば最前列を陣取り、彼女が出演するテレビは何時如何なる時にもチェックし
ベッドの周りには、雑誌や新聞から切り抜いた彼女の写真を沢山貼り付けていた


ξ゚听)ξ「♪」


ある日ツン・デレートは、自信が出演するテレビ番組で『愛しき人へ』と言うラブソングを歌った
それは、自身の愛を受け止めてくれる、『恋人』へ捧げる曲であった


(   )


『××××』は、自分の想いを抑えきれずにはいられない人物だった
そして、少しばかり自分に都合の良い妄想をする人物でもあった


(   )「きっとこれは、私へのラブソングに違いない」


何を思ったか『××××』は、その虚無な愛を受け止めるために、彼女の住所を探し始めた
それはとても楽しい時間だった
彼女に会えたら何をしよう?お茶をして、自分がファンである事を告げ、そして告白しよう
彼女は素敵な女性だ。ファンである僕を、全力で愛するに違いない


(   )


彼女の居場所を突き止めた彼は
借金してまで買った高級なスーツで身を包み
薔薇の花束を抱え
彼女を『モノ』にしようと意気揚々と足を運んだ

10 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/09(金) 23:50:45 ID:oB2iRQPQ0
だが、そこで見たものは


ξ*^竸)ξ(^ω^* )


楽しそうに笑いあう彼女と、『別の男』


(   )


(   )「嗚呼」


やめろ、やめてくれ
その美しい声を、眩しい笑顔を
他の男に向けないでくれ


(   )


『××××』は、自分の想いを抑えきれずにはいられない人物だった―――

11 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/09(金) 23:52:33 ID:oB2iRQPQ0
(   )


気がつくと


ξ^竸)ξ「」


彼の腕の中には、『笑顔のまま』の彼女が納まっていた
傍らには、『何か汚いモノ』が、二つ転がっていた


(   )「嗚呼」


美しい、美しいよ
そのブロンドヘアも、挑発的な唇も
長い睫に、青い瞳も…


(   )「手に入れた、彼女を手に入れた」


彼女を胸に抱きしめる
『余計なもの』を斬り落とした彼女は、とても抱き易かった


(   )「そして」


もう一つ、彼はある物を手にした


ゝ ω )


彼女が愛した、男の顔
剥がす時に、ぎゃあぎゃあと喚きながら暴れられた為、所々破れてしまってはいるが、それは後で縫えばいいだろう

13 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/09(金) 23:53:27 ID:oB2iRQPQ0
(   )「これで」


『××××』は、鉄の臭いがして湿っているそれを、自らの顔に貼り付けた


(ゝ^ω^)「君の望む『僕』になれた」




彼は、彼女を脇に抱え、その場を後にした
曇天の空からは、ポツリポツリと雨が降り、そして土砂振りとなった


その場には『汚いモノ』が二つ、寄り添いあうように転がっていた




その日から、『××××』の姿を見たものはいない

14 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/09(金) 23:54:28 ID:oB2iRQPQ0
そして最後に、彼女の最後の曲『愛しき人へ』を真夜中に聴くと、『××××』に殺されるという話を付けたし、終わりとしている


この【Urban Legend】は瞬く間に広まり、国中の『愛しき人へ』のレコードが廃棄された


僅かに残ったレコードは、一般人の知らないところで『オカルトグッズ』として高値で取引されるようになった



これはあくまで都市伝説

ただの噂話、ただの創作と呼ばれる存在

だが、『事実じゃあない』とは言い切れない



火の無い所に煙は立たないように

『怪異がいて、Urban Legendが成り立つ』

そういう場合もあるのだ

16 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/09(金) 23:56:00 ID:oB2iRQPQ0
ほら、現に



(キ ω )



化けの皮を被った『××××』は


他の男の為に歌われたラブソングを


殺しに歩いているのだから

17 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/09(金) 23:56:42 ID:oB2iRQPQ0



case.1

『愛と憎しみのレザーフェイス』

.

18 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/09(金) 23:58:17 ID:oB2iRQPQ0
199X年
イリノイ州『ハドンフィールド』


(´・ω・`)「…」


その日は、酷い大雨だった
いつもなら仕事終わりに来る連中も、こんな天気では外を出歩くのも面倒だったようで
しょぼくれた眉毛のマスターの今日一日の仕事は、終始グラスを磨くだけであった


(´・ω・`)「ま、こんな日もあるよね」


閉店時間には少し早かったが、看板を下げようと
マスターはエプロンをカウンターに置き、扉へと向かった


(´・ω・`)「…」


ふと、足を止めた
掛け流しラジオからとある曲が流れてきたのだ


(;´・ω・`)「『愛しきの人へ』、か。不吉だなぁ」


子供だましの【Urban Legend】なんぞ信じるような歳ではないが
こんな人のいない不吉な夜には、どうしても不気味に思えてしまう


(´・ω・`)「さっさと酒でも飲んで寝ようかな」


再び足を進め、扉を開けた

19 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/09(金) 23:59:00 ID:oB2iRQPQ0
(;´・ω・`)「うっわ…こりゃ酷いや」


夕方から降り始めた雨は未だ止むことなく、勢いを弱めることなく降り続いていた
仕事前に見たテレビによれば、ここ数十年では最も多い降水量だそうだ


(;´・ω・`)「さっさと閉めて帰ろう」


扉に掛けていた『Open』の看板をひっくり返し『Close』にした


(´・ω・`)「…ん?」


顔を上げると


(   )


土砂振りの雨の中、傘も差さずに立ち尽くす男が見えた


(´・ω・`)「…」


自然のブラインドが邪魔をして、その顔を見ることは出来ないが
うっすらと見えるシルエットから、かなりの大男だとわかった
そして、こっちを見ている事も

21 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/09(金) 23:59:42 ID:oB2iRQPQ0
『愛しき人へ』の【Urban Legend】
くだらない与太話の不安を思い出す


(;´・ω・`)「…」


マスターはすぐさま扉を閉め、鍵を掛けた


(;´・ω・`)「まったく、客は来ないし不審者はうろつく。嫌な夜だよ」


ブツブツと文句を言い、件の曲を垂れ流すラジオを消した
いつもは陽気な笑い声が響くこの酒場に、不気味な沈黙が生まれた


(;´・ω・`)「…」

(;´・ω・`)「あーもう!!本当に嫌な」


マスターの言葉は、扉を叩く音で遮られた
いや、叩くと言うよりは


『砕く』、だった

22 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/10(土) 00:00:54 ID:0I6LYgHI0
(;´・ω・`)「ヒッ!!」


まるでホラー・ムービーの『シャイニング』のように、扉には『斧』が突き刺さっていた
そしてすぐに引き抜かれ、もう一撃が叩き込まれる
さらに、二度、三度と
堅固とはいえない扉は、板チョコレートのように頼りなく見えた


(;´・ω・`)「な!!」


マスターは、ここで選択を迫られる
『戦う』か『逃げる』か


彼には、強盗に襲われた経験がある
その強盗は銃社会のアメリカでは珍しく『万能包丁』で襲い掛かってきた
カウンターの下に『マスターキー』があることも知らずに


(;´・ω・`)「さっきのクソ野郎か!!」


一度撃退したものに、二度も遅れを取るはずも無いと
マスターはカウンターへと向かった
扉は既に半壊している
これも、ある意味『マスターキー』だろう


(;´・ω・`)「ベイビー、久しぶりの出番だ…」


取り出したのは水平二連式のソードオフ・ショットガン
銃身を切り詰めたそれを、扉の前に向ける


(;´・ω・`)「そこのケツ穴野郎!!三秒くれてやる!!ミンチになりたくなけりゃさっさと消えろ!!」

23 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/10(土) 00:02:01 ID:0I6LYgHI0
帰ってきた返答は
乱暴に『ノック』して壊されたの蝶番の音だった


(;´・ω・`)「ああ、そうかよ!!」


悪漢の姿を見ることなく、ショットガンを放つ
僅かに原型を留めていた扉を、完全に粉々にした


(;´・ω・`)「どうだクソッタレ…」


(;´・ω・`)「あ…?」


玄関の向こうには

銃で撃たれて『死体』になっている強盗の姿は無く

それどころか、『斧』も『生きている強盗』の姿も見当たらなかった


まるで、最初から『何もなかったかのように』


(;´・ω・`)「嘘だろ…」


一歩後ずさったその瞬間


酒場の灯りが、落とされた

24 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/10(土) 00:02:45 ID:0I6LYgHI0
「うお…な…」

「なんだってんだチクショウ!!」


立て続けに起こる恐怖に、マスターの声は上ずった
膝は笑い、小便が漏れた


「クッソ…」

「き…来やがれクソ野郎が!!ぶっ殺してやる!!」


ガタガタと震える銃を、しっかりと扉へと向ける


「…」

「ファック!!!」



雷が、光った




(キ^ω^)



一瞬のフラッシュで浮かび上がった、青白いその姿が


マスターが見た見た最後の風景だった

26 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/10(土) 00:04:33 ID:0I6LYgHI0
再び雷が光った時



「」



マスターだったものは、頭の中身をカウンターにぶちまけていた

27 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/10(土) 00:05:20 ID:0I6LYgHI0
『上出来よ、ブーン』


男の頭の中で、美しい声が反響する


(キ^ω^)「…」


男は、『ウウウ』と低く唸り、腰にぶら下げた『干物』を愛おしそうに撫でた
黒ずみ、酷く窪んでいるそれには、美しい『ブロンドヘアー』がぶら下がっていた


『ああ…次はあっちから聞こえてくるわ…』

『殺して、ブーン。私の唯一の過ちを』


殺戮は終わらない
次の獲物を見つけ、『レザーフェイス』は動きだした

28 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/10(土) 00:06:03 ID:0I6LYgHI0
『万が一』と言う言葉は、大抵は『ありえない事が起きる』時に使われるものだろう

ここでの『万』は、『大衆』を意味する

ラジオを持っている人間を万、ラジオを賭けていた人間を千、『愛しき人へ』を聴いていた人間を百

そして、運悪く彼…いや、『彼女』に選ばれた人間を、一


これは、ラジオの万が一


続いて、『テレビ』の万が一


番組の放送を終えた局が、通販のCMを流している
年代別のヒットソングを揃えたオムニバスのCDセットだ


その中のひとつに、『愛しの人へ』が入っていた

29 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/10(土) 00:06:47 ID:0I6LYgHI0
(-、-トソン「…」


子どもを寝かしつけた母親が、水周りの片づけを終え
ふと油断をし、机に突っ伏して眠ってしまった


(-、-トソン「…」


まどろみのなかで聞こえる音楽
心地よいメロディと歌声に、頭の中がとろけてしまいそうだった


(-、-トソン「…」


キシリ、と
床が鳴った


(゚、-トソン「…」


ほんの僅かな音だったが、眠りと覚醒の間を彷徨っていた彼女を起すには充分な音量だった
再び、キシリと床が鳴る


(゚、-トソン「ビロード?トイレですか?」


小学校に上がっても甘えん坊な一人息子かと思った


う、゚トソン「…ビロード?」


返事は無い
キシリと床が鳴る


(゚、゚;トソン「…」


キッチンから覗く薄暗い廊下
いつもはなんとも思わないその場所が、酷く恐ろしいものに見える

30 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/10(土) 00:07:28 ID:0I6LYgHI0
「…」



(゚、゚トソン「…」



(゚、゚;トソン「…ビロード?」




(キ^ω^)「…」



(゚、゚;トソン「…」



廊下から現れたのは、『顔の皮』を被った大男
薄汚れた衣類には、赤い液体が付着しており、腰には『干からびた頭』
そして、手には刃渡り20センチはあろう肉斬り包丁
予期しない来訪者に、彼女の体は強張り、喉は空気を締め出した

31 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/10(土) 00:08:12 ID:0I6LYgHI0
(キ^ω^)「…」


(゚、゚;トソン「ヒッ!!」


大男はゆっくりと近づいてくる


(゚、゚;トソン「あ、ああ…そうか、夢か…」

(゚ー゚;トソン「あ、ありえないですもんね。こんなホラームービーのような怪物…」


眠っていたという行動から、都合の良い解釈をする


(゚ー゚;トソン「し、しかし迫力のある夢ですね。まるで本m


(キ^ω^)「…」


振り落とした包丁が、机を粉砕する


( 、 ;トソン「あぐっ!!」


その衝撃で、戸棚に激突する
頭上からクッキーの型抜きが振ってきた


( 、 ;トソン「痛…」


『痛い』
知りたくなかったその感覚が、今の風景が現実だと思い知らされる


(キ^ω^)「…」


ホラームービーならば、不気味なBGMの一つでも流れていただろう
だが場違いにも、そこで流れていたのは甘い甘い『ラブソング』だった

32 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/10(土) 00:09:14 ID:0I6LYgHI0
「いや…来ないで…」


恐怖と衝撃で足腰は立たない
叫ぼうにも、息が吸えない


(キ^ω^)「…」


青白いマスクの男は、彼女の髪を掴み
頭上まで持ち上げた


「ああああああああああああああああ!!!!!」


痛みで擦れた叫びが挙がる


(キ^ω^)「…」


男は、じっくりと観察するように二度、三度、首を傾げた後


(キ^ω^)「…」


包丁を、振りかざし
首へと叩き付けた

33 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/10(土) 00:09:55 ID:0I6LYgHI0
「ゴッ」


包丁は首の中ほどで止まった
頚椎は断裂され、逆方向から飛び出している
ズッ、ズッ、と包丁を引き抜くと
切断面から血液が勢い良く飛び出し、男の体を塗らした


(キ^ω^)「…」


男は満足しなかったのか
既に絶命しているそれを、キッチン台に乗せ


(キ^ω^)「…」


今度こそ完全に、首を切断した

34 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/10(土) 00:10:36 ID:0I6LYgHI0
『上出来よ、ブーン』


再び男の頭の中で、美しい声が反響する


『でも、まだ残っているわ』


廊下から、ガタンと物音がした


(キ^ω^)「!!」


『あの歌を聴いた奴は、誰だろうと一人残さず殺しなさい』


『それが例え、小便臭いガキでもね』


(キ^ω^)「…」


男は、死体の服で包丁の血を拭い
床に転がった頭を蹴り飛ばして、『次の標的』がいる二階へと向かった

35 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/10(土) 00:11:42 ID:0I6LYgHI0
―――――
―――



(;><)「…」


小学生に上がったばかりのビロードは、真夜中には付き添ってもらわないとトイレに行けない臆病な子どもだった
いつも母親に『いい加減一人でも行けるようになりなさい』と呆れられるが


風でゆれるカーテンが
半開きのクローゼットから除く暗闇が
気温の変化で鳴る屋根が
いつまでも終わらなそうにみえる薄暗い廊下が


臆病者の想像力を掻き立て、すくんでしまうのであった


(;><)「ママ…」


両親の寝室に足を踏み入れるが、人の気配は無い
父親は急患の診察に出て行ったため、ベッドには誰も横たわっていなかった


(;><)「…」


階下から、微かに聞こえるテレビの音


(;><)「きっと一階なんです」


壁伝いにゆっくりと歩きながら、ビロードは階段を目指した

36 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/10(土) 00:12:28 ID:0I6LYgHI0
階段を半ばまで進んだあたりで、突如破壊音が家中に響き渡った


(;><)そ「!?」


音の大きさに腰が抜け、階段に座り込んでしまう


(;><)「マ…」



親の助けを呼ぼうと、口を開いたその瞬間


『誰か』が、ビロードの口を塞いだ

37 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/10(土) 00:13:10 ID:0I6LYgHI0
(;><)そ「ンンンンンンンンン!!!!!!」


くぐもった悲鳴をあげ、手足をバタつかせる
突然のショックから、我慢していたモノを漏らしてしまった
その時、キッチンからは『何かを斬る音』が聞こえていた


「シィー…」


『誰か』が、ビロードの耳元で沈黙を促す
さらりとした『髪』が、彼の頬を撫でた


(;><)「…」


髪がビロードの鼻先を擽った時、彼は大人しくなった
彼の言葉を借りるならば、『誰か』からは、何故か『お母さん』の匂いがしたからである


「…」


『誰か』は口を塞いでいた手を、目元へと移動させた
そして片手で彼を抱き上げると、二階への階段を登っていった




キッチンからは、重たいモノが床を転がった音が聞こえた

38 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/10(土) 00:13:51 ID:0I6LYgHI0
(キ^ω^)「…」


臭いがする
キッチンから漂う血の臭いだけじゃない
階段の半ばが何かの液体で濡れている
恐らく、それが発生源


そして、この家には『まだ人』がいるということ


(キ^ω^)「…」


『誰一人、見逃さないようにね…』


(キ^ω^)「…」


二階に上がり
手前の部屋の扉をゆっくりと開けた


(キ^ω^)「…」


ダブルベッドの上
シーツに包まった誰かが、寝息を立てていた


(キ^ω^)「…」


包丁を立て、静かに近づく
寝息の主を、一撃で葬り去るために

39 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/10(土) 00:14:32 ID:0I6LYgHI0
まっさらなシーツに、長い黒髪が流れている
細い体だ。恐らくは女だろう


(キ^ω^)「…」


『さ、やってしまいなさい』


包丁を両手で構える
切っ先が天井を削った


(キ^ω^)「…」


(キ^ω^)「…」


ベッドを砕かんばかりの勢いで、振り落とした




聞こえたのは
肉を斬る音でも
骨を砕く音でも
ベッドを砕く音でも無く



『金属音』だった

40 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/10(土) 00:15:13 ID:0I6LYgHI0
(キ^ω^)「…」


薄いシーツを隔てて


もう一つの『刃物』が切迫していた


肉斬り包丁とは違い、シャープなシルエットをしている


(キ^ω^)「…」


シーツの裂け目から






川(゚∴゚)






『ホッケーマスク』が覗いていた



『バケモノ』は二人いたのだ

42 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/10(土) 00:16:30 ID:0I6LYgHI0
川(゚∴゚)「…」


シーツを押しのけ、男に蹴りを入れる


(キ^ω^)「!?」


二メートル近い大男が仰け反った


(キ^ω^)「…」


男は、腰にぶら下げた首を庇うように壁にもたれ掛かる
信じがたい事だが、このような存在になって初めて蹴りを入れられたのだ


川(゚∴゚)「…」


男は、ベッドから降りたホッケーマスクを観察する
服装は薄汚れたジャケットにジーンズといった男性らしい格好だが、胸の膨らみが『女』だと主張していた
ホッケーマスク、長い黒髪
手には、『マチェット』が握られていた

44 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/10(土) 00:17:13 ID:0I6LYgHI0
(キ^ω^)「…」


一見、無表情な男であったが
ほんの少しだけ驚いていた
激しい抵抗にはなんども遭遇したが、このように静かに待ち伏せされたことは無かった


つまり、『自分がここに来る事に気が付いていた』


彼女は


川(゚∴゚)


自分を『狩りに来た』のだ


(キ^ω^)「…」


男は、ここで選択を迫られる
『戦う』か『逃げるか』

彼にはこのような経験が無い
先ほど殺した女のように、その前のマスターのように
『恐怖し、慌てふためく人間』だけを殺してきたのだ

彼は怯えた
すぐ傍の窓から逃げようと身構えた


『ダメよ』


その行動を、『彼女』は許さなかった

45 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/10(土) 00:17:54 ID:0I6LYgHI0
(キ^ω^)「…」


『誰だろうと殺しなさい』

『殺されようと殺しなさい』

『あの曲を聴いた人間を、一人残らず殺しなさい』


(キ^ω^)「…」


ブルブルと震える右手の包丁を、目の前の女に向けた


川(゚∴゚)「…」


対し、女はマチェットを翻す
刀身は赤黒く汚れていたが、刃は鋼色に研ぎ澄まされていた

46 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/10(土) 00:18:34 ID:0I6LYgHI0
『殺しなさい、ブーン』


彼女の声が頭に響く


『殺して、ママ』


息子の声が頭に響く





(キ^ω^)「…」




川(゚∴゚)「…」

47 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/10(土) 00:19:17 ID:0I6LYgHI0




『『殺せ!!!!』』




同じ言葉が反響したその瞬間


二体の『バケモノ』は同時に動いた

48 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/10(土) 00:20:12 ID:0I6LYgHI0
(キ^ω^)「オ゙ッ!!」


女の胴体を狙い包丁を横なぎに振るう


川(゚∴゚)「…」


前転で回避し、すれ違いざまに男のわき腹に一刀を入れた


(キ^ω^)「ヴヴッ…」


服と肉が斬れるが、血は流れない
人外であることを指し示していた


(キ^ω^)「ガァ!!」


振り向きざまに一閃
的外れなその一撃は、クローゼットを粉砕した


川(゚∴゚)「っ…」


その破片が、女の肩に突き刺さった


(キ^ω^)「オ゙オ゙ッ!!」


隙を突き、左手で女の首を掴み壁に叩きつけた


川(゚∴゚)「…カ…」


手からマチェットが離れ、床を踊る
万力のような力が首を圧迫し
骨がミシリと音を立てた

49 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/10(土) 00:21:07 ID:0I6LYgHI0
(キ^ω^)「…」


右手の包丁を振り上げる
狙いは脳天


川(゚∴゚)「…」


男は一つ見落としていた
女の武器は、『一つ』では無かった
右手で男の手首を掴みながら、左手で
『脚に巻いていたナイフ』を抜き取り


川(゚∴゚)「ッ!!」


男の目に突き立てた


(キメω゚ )「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!!!!!」


首から手を離し顔を抑え床を転がり、苦痛の悲鳴を上げる


川(゚∴゚)「カフッ…」


マスクの隙間から粘液が零れる
それを袖で拭い、マチェットを拾い上げた

50 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/10(土) 00:22:10 ID:0I6LYgHI0
(キメω゚ )「オ゙ッ!!オ゙ッ!!」


錯乱した男はむやみに包丁を振り回す
ベッドの脚が折れ、壁に穴が空いた


川(゚∴゚)「…」


(キメω゚ )「ヴーッ!!ヴーッ!!」



川(゚∴゚)「…」


女は片足を上げ、男の手を踏み抜く
床と骨が粉砕され、折れた枯れ枝のように皮膚を突き破っていた
すっぽ抜けた包丁がドアに突き刺さった


(キメω゚ )「オ゙オ゙オ゙オ゙オ゙オ゙オ゙オ゙オ゙オ゙!!!!」


川(゚∴゚)「…」


怨念の篭った目が女を見上げる
皮の仮面から、唯一見ることができる男の表情


川(゚∴゚)「…」


女はマチェットを両手で握り締め
男の頭に向かって


川(゚∴゚)「ッ!!!!」


『突き立てた』

51 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/10(土) 00:22:52 ID:0I6LYgHI0
(キメω )「あ゙……」


男は痙攣を繰り返した後
静かに息を引き取った



川(゚∴゚)「…」


マチェットを引き抜き、男の右目からナイフを抜き取る
鉈を二、三度振り、汚れを払って腰の鞘に収めた



(キメω )



しばらく、息絶えた男を見下ろした後



踵を返し、扉へと向かった

52 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/10(土) 00:24:09 ID:0I6LYgHI0





(キメω )





(キメω゚ )




.

53 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/10(土) 00:24:51 ID:0I6LYgHI0
男は生きていた
油断し、背を向けた女を仕留めるまで
『あの曲』を聴いた人間を一人残らず駆逐するまで
彼に『永遠の眠り』は訪れない


頭の中では


『殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺こここここここここここここここここkkkkkkkk
kkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkk』


彼女の命令が何度も何度も、壊れたステレオのように繰り返されていた


(キメω゚ )


巨体に見合わないほど静かな動作で立ち上がると
彼女の首をへし折ろうと、片手をつき伸ばした

54 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/10(土) 00:25:38 ID:0I6LYgHI0
川(゚∴゚)


(キメω゚ )「…」



女は、扉から包丁を引き抜き



川(゚∴゚)「…」



振り向きざまに投げつけた
狙いは、男の顔でも心臓でもなく
腰の『干首』だった


回転する包丁の刃は、その乾いた顔に突き刺さり
いとも容易く、両断した

55 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/10(土) 00:26:56 ID:0I6LYgHI0




(キメω )「」





瞬間、男の中から

『世界』が失われた



膝を着き、倒れこむ
今度こそ完全に男は動かなくなり
真っ二つに割れた首は、今だに美しいブロンドの髪を残し、風に吹かれる砂埃のように掻き消えた

56 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/10(土) 00:27:37 ID:0I6LYgHI0



川(゚∴゚)「…」



その夜
一つの【Urban Legend】の狂気が終わった

58 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/10(土) 00:28:23 ID:0I6LYgHI0
翌日、三人が無惨な死体で発見された事件が大陸中を駆け巡った
被害者は『ショボン・ローマックス』と『トソン・マイヤーズ』
それと、身元不明の男性が一名

身元不明の死体の衣類から検出された血液から、『ショボン・ローマックス』及び『トソン・マイヤーズ』は彼に殺害されたものと判明
マイヤーズ宅の寝室で死亡していた彼も、頭部の損傷を見るに『別の人物』に殺害されたものと思われる

運よく生き残った『ビロード・マイヤーズ』くんによれば



『ホッケーマスクを被った女の人が助けてくれた』



と、証言している


警察は、その人物を殺人の容疑で指名手配し、現在も目下捜索中とのこと

59 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/10(土) 00:29:15 ID:0I6LYgHI0
川(゚∴゚)「…」



彼女はバケモノ
殺さずにはいられない
標的は、息子を殺した『全てのバケモノ』


頭の中で響くのは、あの子の可哀相な声


『殺してママ、殺して』






『悪ふざけ』はまだまだ終わらない――――

60 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/08/10(土) 00:29:55 ID:0I6LYgHI0
ジェイソン・クールのようです



次の【Urban Legend】へ続く



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