■2012年芸術の秋ラノベ祭りのようです
└夜診ロマネスク病棟のようです
- 1 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/20(火) 22:22:28 ID:/KCj37jY0
―――府立なおるよ病院 小児病棟
('(゚∀゚∩「院長のなおるよだよ!兄者君元気かなっ!」
( ´_ゝ`)「退院したい」
Σ('(゚∀゚;∩「お待ちなすって!?」
( ‘∀‘)「だめよー兄者君。帰れるのは今週末の予定なんだから、ね?」
( ´_ゝ`)、「先週も看護婦さんそう言った」
川 ` ゥ´)「金曜日にまた具合悪くなっちゃったんだから仕方無いッピャ。
予定は未定だッピャよ」
( ‘∀‘)「もうちょっとの我慢よ。
ほら、この前弟君が持ってきてくれた、ブーンちゃんが一緒だから寂しくないでしょ?」
そう言って、兄者の頭上、ベッド脇に立つガートル台(点滴スタンド)を指差す。
T字型になったその両端の片側には、ふくよかなぬいぐるみが一体。
反対側の点滴バックと同じように吊り下げられていて
室内の彼らを見下ろし愛嬌のある笑みを浮かべていた。
( ^ω^)
川 ` ゥ´)「ほらほら、いつまでもそんながっかりした顔しないッピャ!
ブーンに笑われちゃうッピャよ〜」
('(゚∀゚∩「大丈夫だよ!
経過は順調、体調も問題無し。今週末にはきっと退院できるよ!」
('(゚∀゚∩「その為にも、今日の分のお薬ちゃんと飲むんだよ!」
( ‘∀‘)「はい、お水。これ飲んで元気になって、早く帰ろうね」
( ´_ゝ`)、「……」
- 2 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/20(火) 22:25:05 ID:/KCj37jY0
- ('(゚∀゚;∩「兄者君元気が無いみたいだよ。困ったよ!」
( ‘∀‘)「兄者君の家は大家族ですから、1人で寂しいんですわ。きっと」
('(゚∀゚;∩「う〜ん、でも大部屋に移すわけにもいかないよ……」
川 ` ゥ´)「今は容態が落ち着いてるけど、初日は救急で運ばれたんだから
1人部屋なのは仕方ないッピャ」
( ‘∀‘)「ご両親も共働きで、なかなかお見舞いに来れないみたいですし……」
('(゚∀゚∩「よーし、こんな時こそ我がなおるよ病院が誇る、キャピキャピナースさん達の出番だよ!
いっぱいお話して元気づけてあげてよ!」
( ‘∀‘)b川 ` ゥ´)b「「任せて下さい(ッピャ)!」」
- 3 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/20(火) 22:26:05 ID:/KCj37jY0
- …………………………………………
………………………………
…………………..
『まもなく消灯時間です。お部屋にもどり、電気・テレビなどを消して静かにお休み下さい』
各病室に、消灯を告げるアナウンスが流れる。
賑やかだった小児病棟は夜を迎え、入院中の子供達は眠りに就き静かに明日を待つ。
( -_ゝ-)
薄桃色のカーテンによって、月の明かりさえ遮られた暗い室内。
部屋にただ1人、ベッドで就寝する兄者の頭上を
宵の闇に紛れて、パタパタと飛び回る小さな黒い影があった。
- 5 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/20(火) 22:27:05 ID:/KCj37jY0
- ( ∵)パタパタ ( ∴)パタパタ
……蝙蝠だろうか?
いや、それはおよそ、通常の生物とは言い難い形容をしている。
小さな角の突き出た真ん丸な体に、ぽつぽつと開いた穴が3つ。
胴と思われるその背中から生える、一対の翼手目形状の羽。
一頭身のデフォルメ蝙蝠とでも言えば良いのだろうか。
何処となく不気味な容姿をしたそれが、ミニサイズのナースキャップを頭にちょこんと乗せて
規則的な動きでぐるぐると旋回していた。
( ∵)ゴエエエエ( ∴)
( -_ゝ-)
よくよく耳を澄ましてみると、その謎の生き物達は先程からずっと
聞いていると不安になるような、気味悪い鳴き声を発し続けている。
( ∵)ゴエエエエ( ∴)
夜の帳の下りた静かな室内には
同じトーンで繰り返される、鳴き声とも奇声ともつかぬそれが不気味に響くのみだった。
―――が、次の瞬間
- 6 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/20(火) 22:28:06 ID:/KCj37jY0
- バァーン!!
从 ゚∀从ゝ「Good evening!!小悪魔ナースのハインちゃんでぇっす!!」
深夜の静寂をぶち壊し、突如大きな音を立てて勢いよく開け放たれた扉。
そこに、何故か敬礼ポーズをキめて立っている真夜中の乱入者。
頭には謎の丸い生き物と同じマークがついたナースキャップ。
その下で怪しく光る、特徴的な瞳と髪の色は血のように鮮やかなワインレッドだ。
その背には、闇に紛れて目立ち難いが
まるで悪魔のような一対の黒い翼が覗いているではないか。
さらに冷蔵庫でも一刀両断できそうな巨大メスを背負って現れた、珍妙自称ナース。
―――途端、何もしていないにも関わらず一気に明るくなる室内。
怪しい光に照らされた空間内に物の輪郭が浮かび上がった。
- 7 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/20(火) 22:28:50 ID:/KCj37jY0
- 从 ゚∀从「回診のお時間でーす☆
よーし、今すぐ正座してそこに直れ!!」
ハインと名乗るこの女性が、正規の看護婦なのかどうかは甚だ怪しいところではある。
……が、いずれにせよ真夜中の病院内でこれだけの大声を出し、かつ目立つ行動を取れば
すぐさま夜勤の看護婦や医師、警備員が駆けつけてきて
問答無用で取り押さえられ強制退室と相成りそうなものだ。
だが不思議と、誰の足音も、安眠を妨害された他の患者からの苦情も聞こえてはこない。
( -_ゝ-)
从 ゚∀从「おいおい起きてんだろ!ヘイ兄者!wake up!寝たフリすんな!」
( ∵)ゴエエ( ∴)ゴエ、ゴエ
旋回することを止め、ハインの両肩にそれぞれちょこんと羽を下ろした謎の生物達も
やはり奇妙な鳴き声で、その言葉に同意したようだった。
- 8 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/20(火) 22:29:34 ID:/KCj37jY0
- 从 ゚∀从「へっへー残念、こいつらにはとっくにお見通しみたいだな。
無駄な抵抗はよせ、こっちゃちょっと眼球運動見りゃ一発で分かんだぞ!
見なくてもわかるけど!」
真夜中の乱入者から勢いよく捲くし立て起きるよう促されるも
それでも兄者は一向に目を覚まさない。
从 ゚∀从「おいおい、お前そんなんじゃ将来
通勤途中の電車内で死にかけ老人乗りこんで来た瞬間
狸寝入りかましてやり過ごすような駄目リーマンになっちまうぜ?それでいいのか!?」
( -_ゝ-)「………」
从 ゚∀从「ちっ、とことんシカトかます気だなこいつ……」
从 ゚∀从「仕方ねぇ、こうなりゃ最終手段だ。いけビコーズ、ゼアフォー!
寝ぼすけボーイもこれで一発、必笑くすぐり攻撃だ!!」
(ヘ∵)ヘ イーッ! (ヘ∴)ヘ イーッ!
_,
( -_ゝ-)「………」
_,
( ´_ゝ`)「……うるさいなぁ」
渋々といった様子でようやく目を開ける兄者。
ゆっくり起き上がると、心底嫌そうに顔をしかめながら
纏いついてくる二匹の変な生き物を軽く手を振って退けた。
( ∵)ギエエエエ( ∴)ゴアアアア
- 9 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/20(火) 22:31:08 ID:/KCj37jY0
- 从 ゚∀从「ふふん、それでよし。
さぁてとぉ、寝たフリ患者もすっきりお目覚めみてぇだし?
こっからは楽しい楽しい診察のお時間だぜ」
やっとこちらの呼びかけに反応を示した少年を前に悪い笑みを浮かべると
どこからかカルテを取り出し、ペンをかまえるハイン。
从 ゚∀从「さて、何か報告はあるかな、ビコーズ、ゼアフォー?」
( ∵)ゴエエエエイ( ∴)トエエエエイ
从 ゚∀从「ふーむふむ……なるほどなるほど」
兄者の顔から滲み出ている、無言の抗議をスルーしつつ
理解不能な謎生物達の鳴き声に耳を傾け、真面目な顔でペンを走らせる。
……が、
ヽ从#゚∀从ノ バァーン!
何の前触れも無くそのカルテを宙へと放り投げた。
- 10 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/20(火) 22:31:51 ID:/KCj37jY0
- 从#゚∀从「やいやいやい兄者てめぇ!!
今聞いたぞ。昼間、退院したいとかぬかしてたそうだな!?ああん!?」
( ´_ゝ`)「だってこの病院、夜になると変な悪魔出るし……」
从 ゚∀从「うっせうっせ!変とか言うな!悪魔出る病院で悪いか!?
そんな病院がこの広い世の中に一つくらいあってもいいんじゃないでしょうか!?
これからの時代、もっと個々の個性を尊重すべきなんじゃないでしょーか!!」
( ´_ゝ`)「いや、場所的に考えてアウトだと思う」
きっぱりと切り捨てる兄者。一息吐いてベッド脇に腰を降ろすハイン。
ついでに長い足を大胆に組みながら、やれやれといった調子で首を振った。
从 ゚∀从「ったくよぉ。こんな小悪魔ギャルなピチピチナース様が
毎晩律儀にこうして出向いて、優しく相手してやってるってーのに
なにをどうして出て行きたいなんて思うのかねぇ」
ビシッ!
やたら良い効果音を響かせて、自らに親指を突き立てる小悪魔ギャルなナース様。
从 ゚∀从「大胆に開いた胸元、ミニスカナース服、背から覗くキュートな悪魔羽!」
从 ゚∀从「これだけのストライクポイントfull装備なハインちゃんを前にすりゃ
健全な世の男共はたちまち垂涎ノックアウトってもんだぜ!?」
( ´_ゝ`)「逆にあざとすぎて萎えるわー……」
- 11 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/20(火) 22:32:35 ID:/KCj37jY0
- 从 ゚∀从=3「へっ、相変わらず可愛くねーガキだな。
ま、この魅力が分からねーってこたぁ所詮まだ下の毛も生え揃ってないおこちゃまか」
( ´_ゝ`)「これから生えるんですー。
大体、背負ってる得物が物騒すぎて大幅減点マイナス100点」
从 ゚∀从「ああ、このメスか?ハインちゃん特別オーダーメイドの特注品だぜ。いいだろ?
切れ味抜群、まな板だってズバズバ切れる優れものよ。どんなハード手術もばっちりさ!」
( ´_ゝ`)「しゃもじは耳掻きにならぬっていうことわざ知ってる?
そんなの逆に使い辛いだろjk……」
呆れ気味につっこんだあと、小声で付け足す兄者。
( ´_ゝ`)「大体、悪魔になんか治療してほしくないよ。
どうせ、退院引き延ばしになったのだって……」
だがそんな呟きも、得意げな顔で愛刀を自慢するハインちゃんの耳には入っていないようだ。
从 ゚∀从「聞きたいかハインちゃんの武勇伝?
いいだろう、これは慢性肩こり症のケルベロスを手術した時の話だがな……」
- 12 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/20(火) 22:33:24 ID:/KCj37jY0
- ( ´_ゝ`)「……」
シーツからそっと体を滑らせ
ベッド下にあるうさぎのもこもこスリッパに着陸する。
右腕に刺さっている留置針に注意しつつ
カテーテルで繋がっている、点滴バッグの吊り下げられたガートル台を押して
開いたままの扉の向こうへそっと滑らせた。
从 ゚∀从「あん時の俺のメス捌きっていったら
そりゃあもう院長も感銘のあまり3mは跳躍する勢いでな」
( ∵)カチョイー( ∴)サイコー
从 ゚∀从「おう、褒めろ褒めろもっと褒めろ!
どうだ?こんな、執刀もバリバリこなす秀才ナースなハイン様が君臨する病院に入院できたんだ。
兄者、てめぇ相当なラッキーボーイだ……ぜ?」
从 ゚∀从
Σ从;゚∀从「て、いねぇ!!」ガーン
ようやく気づいた時には、既に兄者の姿は無く。
微かな体温を残した布団の中はもぬけの殻だった。
( ∵)イネエエエ( ∴)ヤベエエエ
从;゚∀从「ビコーズ、ゼアフォー探せ!院長にバレたらマズい!」
( ∵)ギョイイイイ( ∴)
- 13 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/20(火) 22:34:23 ID:/KCj37jY0
もこもこうさぎのスリッパでぺたぺた足音を立てて、真夜中の病院内を1人歩く。
夜の小児病棟は、子供達の賑やかな声が溢れていた昼間の雰囲気とは一転して
深海のような底気味悪い闇に包まれていた。
……いや、変わったことは照明の有無だけではない。
まず第一に。今や病院内全体を満たしている、魔性をも孕むその異様な空気こそが
ほんの少し視界を巡らせただけで嫌でも気づかされてしまう、決定的な違和感の正体だった。
- 14 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/20(火) 22:35:31 ID:/KCj37jY0
- 不思議なことに、巡回中のナースの姿はおろか
用足しに起きる入院患者の足音さえ、一切聞こえてはこない。
それどころか時折、人の気配のその代わりに
恐ろしい獣を彷彿させる低い唸り声のようなものや
何者かが床を這いずるようなぞっとする不快音が、何処からともなく聞こえてくるのだ。
さらに、長い長い廊下に存在するいくつもの扉。その奥で蠢く影。
ウジュルウジュル m(::::::゚゚゚:::::゚゚゚)m ((<●>:::<●>::::: <●>)) ウゴウゴ
目と思わしき多数の光をぎらつかせた、得体の知れない異形のナニカが
曇り硝子越しにこちらを覗き込む様子が時折視界の端に入ってくる。
そして此処病院施設において、常に清楚な白を基調としている筈の壁や天井が
今や不可思議な色彩を発し、絶え間なく変化しているように見えるのは
決して消灯のせいだけではないだろう。
よくよく目を凝らして見れば、天井や通路の隅には
所々ぐにゃりと空間が歪み、別の次元が覗いている箇所さえある気がする。
昼間はごく平凡な明るい病院だった筈の此の場所は、最早完全に別世界と化していた。
(( ´_ゝ`) ペタペタペタ
……が、兄者はそんな周囲の異変など気にもとめず、まっすぐ悠々と進んでいく。
どうやら子供ながらあまり物怖じしない性格のようだ。
加えて、入院して2週目の夜から消灯時間になる度この状態では、流石にもう慣れたもの。
- 16 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/20(火) 22:37:16 ID:/KCj37jY0
- ( ´_ゝ`)「あーあ」
病院内を支配する異変を他所に、1人、場違いな溜息を漏らす兄者。
不思議なことに、夜の小児病棟の真の姿を知っているのは自分だけのようだった。
入院している他の子供達や、病院スタッフ達はまったく気づいている様子が無い。
出来ることなら、喋るボーリング球二匹を従えた珍妙ナースが毎夜病室に突撃してきたり
昼間から暗転、諸星大二郎の漫画のような不条理世界に姿を変えてしまうような
こんな奇怪な場所からは今すぐにも出て行きたいのだが。
( ´_ゝ`)「……悪魔がいる病院だから退院したい、なんて言ったって母者も父者も信じてくれないもんな」
気づいているのが自分だけである以上、大人に言っても信じてもらえる筈が無い。
あまりしつこく訴えた場合、今度は頭の病院に入院させられてしまう可能性だってある。
それに、院長であるなおるよや看護婦達が
日々親身になって接し、手を尽くしてくれていることを知っていた。
この病院自体には何の不満も無いのだ。昼の間に限って言えば。
- 17 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/20(火) 22:39:11 ID:/KCj37jY0
- ( ´_ゝ`)(……)
出て行きたい理由としては、当然他にもある。
入院してもう1ヶ月近くになるのだ。単純に、家に帰りたい。学校に行って友達と遊びたい。
それでも帰れないのは、自分の体のせいだと分かっていながらも
自分ではどうすることも出来ないもどかしさと、誰にぶつけることも出来ない苛立ち。
そして、独りきりの部屋でフとした瞬間に襲いくる孤独と疎外感。
それらは時に耐え難い重みを伴って、無力でちっぽけな自身を飲み込む。
その上不吉極まりないことに、よりにもよって悪魔の襲来ときたものだ。
混ざりに混ざり合った不安は行き場も無く、つい、最もぶつけやすいものに憤りをぶつけてしまう。
( ´_ゝ`)「……退院延期になったのだって、あいつらのせいに決まってるんだ。
ハインと、あともう1人、いかにも悪魔って感じで不健康そうなヒョロガリの」
「誰がヒョロガリだ、誰が」
不満そうに呟く兄者の独り言に、突如別の男の声が重なった。
Σ(;´_ゝ`)「わっ」
それと同時に、背後の闇から出現した手が兄者の両肩を掴む。
('A`)「めっけた」
くたびれた白衣を着て眼鏡をかけた、痩せぎすの男が
何時の間にか後ろに立っていた。
- 18 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/20(火) 22:40:17 ID:/KCj37jY0
- ('A`)「ブラックリスト患者がうろちょろ歩き回るんじゃねぇよ。
絶対安静外出厳禁はい1人部屋逆戻り」
暗然たる表情でぶっきらぼうにそう言う男の背には、先程のハイン同様黒い翼が生えていた。
('A`)「やっぱハインなんかに任せたのが失敗だったな。ほら部屋に戻るぞ」
骨張った手で掴んだ肩に力を込め、元来た道を戻るよう促すヒョロガリの男。
('A`)「何度も言ってるだろが。
此処は昼間の病院とは違う、人間のガキがうろついて無事でいれる場所じゃねーんだ」
('A`)「魔性の瘴気に中てられてキチったり、異空間の歪に落っこって二度と帰れなくなっても知らねーぞ」
( ´_ゝ`)「やだ……なにこの人いい歳して厨二病……?」
('A`;)「うっさいわ。ちょっとは子供らしくビビれよ。
いーから部屋に戻った戻った、Dr.ドクオ様直々の診察時間だ。
あんまり駄々こねると痛い注射もつけちまうぞ」
- 19 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/20(火) 22:42:32 ID:/KCj37jY0
- ( ´_ゝ`)「ふん。ドクターとか言って、どうせちゃんとした医師免許とか持ってないんだろ?悪魔だし」
(゚A゚)「むむむむ無免許医ちゃうわ!!どこぞのツギハギ男と一緒にすんな!!」
( ´_ゝ`)「?なにそれ」
('A`)「神の手を持つ男を知らんのか……これだから現代っこは」
( ´_ゝ`)「えい」
ブツブツ不平を漏らし始めたエセ医者の隙を見て
若干の勢いをつけ、丁度真後ろに位置する男の脛に点滴スタンドを直撃させた。
ガツン☆
(゚A゚)「おぎゃー!!」
骨と鉄がぶつかる小気味良い音が響く。それに続く汚い悲鳴も。
(゚A゚;)「ぐぬぬぬこんっこん糞ガキャぁあ!!」
病床の身とは思えない身のこなしで、掴まれた手をすり抜けると
白目を剥く男を置いて兄者はそのまま廊下を走り去っていった。
( ´_ゝ`)「悪魔なんかに診てほしくないよーだ!」
('A`;)「って、わーっ待て!そっちは院長室……!!」
痛みに悶えつつ伸ばしたドクオの手が、遠ざかる後ろ姿を虚しく空振りした。
- 20 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/20(火) 22:44:15 ID:/KCj37jY0
+ + + + + + + + + + + +
先程までとは一転し、眩しいほどの白に天地を覆われた空間。
すっかり魔性の巣窟と化した現在の病院内において
この一室だけは唯一、清潔感溢れる神々しいまでの純白に四方を囲まれていた。
そして、広大で目の眩むその場所に、まるで巨大図書館のように聳え立つ無数の棚。
その外装はやはり混じり気の無い白で全てが統一されていて、一瞬眩暈を覚えそうになる。
迷路のように配置された各々の棚を覗き込んでみると
透きとおる硝子窓の向こうには、所狭しと薬の瓶が納められているのが分かる。
その一つ一つに貼られたラベルには、人の言語なのかどうかも怪しい解読不能な文字が綴られ
どの棚のどの段にも、几帳面な配置で隅々まで陳列されていた。
床にはそんな薬瓶があちこちに転がり、そのいくつかは蓋が外れ中身が零れ出て
様々な種類の錠剤やカプセル剤が散らばっている。
そしてその中心に、兄者は座っていた。
右手に傾けた茶色い瓶がざらざらと錠剤を降り注ぐ様を、無感情に眺めている。
「ここにいたであるか」
- 21 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/20(火) 22:45:38 ID:/KCj37jY0
∧_∧
( ФωФ)「駄目であろう兄者。包帯や薬をおもちゃにしては」
いつの間に室内にいたのだろう。
立ち並ぶ巨大な薬品棚の暗がりから、ゆっくりと姿を現したのは
首にネクタイを巻いて、何故か人語を話す一匹の黒猫だった。
(*´_ゝ`)「ぬこにゃん!」バッ!
∧_∧
Σ(;ФωФ)「フギャー!?」
人語を話す猫に臆すことなく、その姿を確認するや否や嬉しそうに飛び掛り抱きつく兄者。
どうやら、男の子ながらピンクのうさぎスリッパを愛用しているところから見ても
もこもこふわふわした可愛いものには目が無いらしい。
腕の中でじたばたと抵抗する猫の方はかなり迷惑そうではあるが。
- 22 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/20(火) 22:49:04 ID:/KCj37jY0
- ∧_∧
(;ФωФ)「ぬこにゃんではぬあぁい!!何度言えば分かる!?
我輩は悪魔・杉浦ロマネスク!誇り高きバール・ゼブルの末裔である!」
( ´_ゝ`)「どっからどう見てもぬこじゃん……うおーモフモフさせろー」
∧_∧
(;ФωФ)「フギー!やめるである!!
我輩、これでもこの病院の院長であるぞ!」
必死にもがき、なんとか兄者の手から脱出するロマネスク。
床に散らばる薬品を器用に避け、軽やかに地面へと着地した。
ほっと胸を撫で下ろし、乱れた体毛を舐めて毛づくろい。
その姿は、兄者が言うようにどこからどう見てもただの黒猫である。
ネクタイを締めて人語を話すことを除けば。
( ´_ゝ`)「嘘だー。ここの院長、なおるよ先生じゃん」
∧_∧
( ФωФ)「フッフッフ、昼の間はそういう事になっておる」
∧_∧
( ФωФ)「だがしかし!
愚かな人間達は知る由も無いが、夜の病棟は我ら魔族のものなのである!恐れいったか!」
( ´_ゝ`)「でもそれって悪魔総ぐるみで勝手に人の病院乗っ取ってるってだけなんじゃ……」
∧_∧
(;ФωФ)「断じて違あああう!歴とした契約に基づいたものなのである!」
( ´_ゝ`)「怪しいなぁ」
∧_∧
(;ФωФ)=3「まったく、疑り深い子である」
- 24 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/20(火) 22:50:40 ID:/KCj37jY0
- ∧_∧
( ФωФ)「それよりも、今日は薬を持ってきたのであるぞ」
そう言ってロマネスクは、傍らに置いていた白い薬袋を口に銜え、ひょいと持ち上げた。
今まで嫌というほど見てきた馴染み深いそれを見て、兄者が顔を曇らせる。
( ´_ゝ`)「えー、もう薬やだよ。なおるよ先生からもいっぱい貰ってるもん」
∧_∧
( ФωФ)「いや、これは兄者の薬ではない」
( ´_ゝ`)「?」
∧_∧
( ФωФ)「そやつに服薬させるのである」
(;´_ゝ`)「……は??」
ひょいと持ち上げられた肉球つきの手は、疑問符を浮かべる兄者を通り越し、その頭上―--
背後に立てられた点滴スタンド。
そのT字型の端末に吊り下げられた、布製の物体を指していた。
( ^ω^)
(;´_ゝ`)「……ブーンのこと?」
∧_∧
( ФωФ)「うむ」
黒ネクタイと口に銜えたままの袋を揺らして、さも当然という調子で頷くロマネスク。
- 25 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/20(火) 22:52:51 ID:/KCj37jY0
- ……ぬいぐるみに薬を飲ませる??
何を言ってるんだこのモフモフ生命体は……。
_,
(;´_ゝ`) ←っていう顔
∧_∧
( ФωФ)「その人形は悪い人形である」
Σ(;´_ゝ`)「なっ」
∧_∧
( ФωФ)「仮の”容れ物”に身を隠していた為に魔力の根底を探るのに時間がかかったが
昨晩、やっと特定が出来たのである」
(;´_ゝ`)「?いれもの?魔力……?」
何を言っているのかはよく分からない。
そもそも、わけが分からない事だらけのこの病院において
いちいち理解しようと努力すること自体、随分前に諦めていた。
……が、夜の訪れと共に湧いてくる得体の知れない者達のなかで
今のところ(見た目の可愛さから)唯一好感を持っている、目の前の猫の言うこととはいえど
自分にとって大事な贈り物を、悪いように言われるのだけは嫌だった。
- 26 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/20(火) 22:53:45 ID:/KCj37jY0
- (;´_ゝ`)「……っこれ、弟者がくれたんだぞ!悪いわけ、ないだろ!」
∧_∧
( ФωФ)「うにゃっ」シュバッ!
Σ(;´_ゝ`)
動揺する兄者を尻目に、体を撓らせ高く跳躍すると
一瞬のうちに鉄の棒を飛び越え、地面へと降り立つロマネスク。
再び兄者の正面を向いた時、その口にはブーン人形が銜えられていた。
(;´_ゝ`)「あ」
∧_∧
( ФωФ)「これには、兄者の命を狙う悪い魔物が潜んでいるのだ。
治療する必要があるである」
(;´_ゝ`)「なに言って……返せよ、ぬこにゃん!」
∧_∧
( ФωФ)「安心しろ、”治療”が済んだらすぐ人形は返す。
それまでは我輩が預かるのである」
- 27 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/20(火) 22:55:02 ID:/KCj37jY0
- そう言って、ブーン人形を銜えたまま兄者に背を向けるロマネスク。
遠ざかるその後ろ姿が、数歩歩いたところで霞み、部屋の白に消えて――
(;´_ゝ`)「……だめ!俺のブーンに変なことするなー!!」
パコーン!
∧_∧
(;×ω×)「うにゃー!?」
背を向けて油断していたロマネスクに、兄者が投げつけたスリッパがクリーンヒット。
怯んだロマネスクから素早くブーンを奪い返すと、片手でしっかりと抱きかかえ
もう片方の手でガートル台を押しつつ急いで部屋を飛び出した。
∧_∧
(;ФωФ)「あっ、こら!待つのである兄者!!」
片方だけのうさぎスリッパがペタペタいう音と、キャスターが床を滑る静かな音が
闇へと続く廊下に寂しく響いて、次第に遠ざかっていった。
- 28 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/20(火) 22:55:51 ID:/KCj37jY0
- …………………………………………
………………………………
…………………
彡⌒ミ
( ´_ゝ`)「良かったな兄者。
急に運動するとまた発作が出るかもしれないからって
先生が車椅子を貸してくれたよ」
@@@
@#_、_@
( ノ`)「じゃあ、私らは先生とお話してくるから、兄者のこと頼んだよ弟者。
しばらく病院の庭で散歩でもしておいで」
しばらく歩いて、日当たりの良い木陰までくると
子供用の軽い車椅子を押していた手を止めて
弟者は持ってきていた茶色い紙袋を取り出した。
(´<_` )「兄者ほら。
入院中寂しくないようにって、いいもの持ってきたんだよ」
( ´_ゝ`)「?」
- 31 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/20(火) 22:56:40 ID:/KCj37jY0
- 座っている兄者にもよく見えるよう、前へ回って紙袋に手を入れる。
そこから顔を覗かせたのは、一体の愛嬌あるぬいぐるみだった。
( ^ω^)
( ´_ゝ`)「あ……ブーンだ!」
(´<_` )「兄者が喜ぶと思って、お小遣いで買ったんだ」
にこやかな笑みを浮かべるそれは
今子供達の間で流行っている、人気のキャラクターのぬいぐるみだった。
弟者から手渡されたぬいぐるみを両手で抱えあげ、嬉しそうに目を輝かせる兄者。
(*´_ゝ`)「ありがと弟者!」
(´<_` )「いつも傍に置いてあげてよ。ブーンは寂しがりやだからな」
(*´_ゝ`)「わかった!」
(*´_ゝ`)つ<´ω^ )ムニニ-
「あはは、むにむにだー」
- 32 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/20(火) 22:57:54 ID:/KCj37jY0
- ( ‘∀‘)「あら兄者君、ご機嫌ね」
( ´_ゝ`)「あ、看護婦さん!見て、見て!」
(´<_` )
(::<_,`:::)
( ‘∀‘)「あら!かわいいお人形さんね〜。どうしたの?」
(*´_ゝ`)「弟者がくれたんだ!」
…………………
………………………………
…………………………………………
- 34 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/20(火) 22:58:48 ID:/KCj37jY0
そうだ。
寂しくないようにって、弟者がくれたんだ。
それが悪いぬいぐるみなわけないじゃないか。
大体、そっちの方こそ悪魔のくせに……
( -_ゝ-)
( ‘∀‘)「……うん。兄者君よく眠ってるわ」
懐中電灯でそっとベッドを照らして、看護婦が兄者の顔を覗き込む。
( ‘∀‘)「なにか物音が聞こえた気がしたけど……気のせいだったみたいね」
少しだけ乱れたシーツと布団を優しく直し
再度、点滴液の残量と部屋の様子を確認して、病室を後にした。
- 36 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/20(火) 23:00:07 ID:/KCj37jY0
「……どうするんスか、院長。これ以上時間をかけるとまずいんじゃ」
「マジーヨ」「ヤベーヨ」
「うむ。魔力の発生源を特定するのに時間がかかってしまったであるからな。
むざむざ奴を逃がしてしまったのは迂闊であった」
「大体、あのガキはドクオの担当じゃねーか」
「だから焦ってんだろ。
そもそも、お前があそこで目を離さなきゃだな……」
「うるせーな、人に患者押し付ける方が悪いんですー!」
「押し付けてなんかいねーよ。
ちょっと遅れるから、逃げないように見張っとけって言っただけだろ。
それをお前が勝手に……」
- 38 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/20(火) 23:01:15 ID:/KCj37jY0
- 「ええい、喧嘩なぞしておる場合ではないわ!
確かにドクオの言うとおり、そろそろ奴も本格的に動き始める頃であろう。
これ以上手をこまねくわけにはいかんである」
「で?」
「やむをえん。
些か強行手段ではあるが、明晩、”治療”に踏み込むである。良いな皆」
「了解ッス」
「「ギョイイイイ」」
「オーケー任せな。
たく、昼間は手が出せねーってのがもどかしいぜ」
- 39 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/20(火) 23:02:42 ID:/KCj37jY0
l从・∀・ノ!リ人「おっきいあにじゃ、いつおうちに帰ってこれるのじゃ?」
白いベッドに両肘を乗せて、お見舞いに来てくれた小さな妹が兄者に尋ねた。
( ´_ゝ`)「日曜日には帰れるってさ」
l从・∀・ノ!リ人「いもじゃ、おっきいあにじゃがはやく帰ってこれますようにって
毎日鶴さん折ってお願いしてるのじゃ!千羽つくるのじゃ!」
(*´_ゝ`)「ありがとな妹者〜。
弟者も、妹者つれてきてくれてありがとう」
(´<_` )「うん。母者や父者は仕事が忙しくて、今日も来れないみたいだしな」
l从・∀・ノ!リ人「……あ!ブーンなのじゃ!」
枕元に座らせていたぬいぐるみに気付いた妹者が、小さな手を伸ばす。
兄者はブーン人形を抱きかかえ、そっと手渡してあげた。
l从・∀・*ノ!リ人「かわいいのじゃ!」
( ´_ゝ`)「弟者がくれたんだよ。家に帰ったら妹者にも遊ばせてあげるからな」
l从・∀・*ノ!リ人「わーい!」
- 41 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/20(火) 23:03:44 ID:/KCj37jY0
- (´<_` )「……」
( ´_ゝ`)「?弟者?」
(´<_`;)「……あ、いや……」
(´<_`;)「……それ、俺があげたんだよ、な?」
( ´_ゝ`)「なに言ってるんだよ、この前お見舞いに来てくれた時にくれたじゃんか」
(´<_`;)「あ、ああ、うん。……そうだよな」
( ´_ゝ`)「弟者?大丈夫か?」
(´<_`;)(……確かに兄者の為に、貯めてたお小遣い使って買ったのは覚えてるんだけど……
なんか、渡した時の記憶が曖昧なんだよな……)
( ´_ゝ`)「?」
( ^ω`>⊂l从・∀・*ノ!リ人「むにむになのじゃー」
- 42 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/20(火) 23:05:30 ID:/KCj37jY0
- …………………………………………
(´<_` )「……あれ、もうこんな時間か」
(´<_` )「そろそろ暗くなるし、帰ろっか。妹者」
l从・∀・ノ!リ人「うん!」
( ´_ゝ`)「俺も早く帰りたいなー」
l从・∀・ノ!リ人「いもじゃもはやく帰ってきてほしいのじゃ!」
( ´_ゝ`)「うん……。今度こそ大丈夫って、なおるよ先生言ってたけど……」
( ´_ゝ`)「でも、また延びたりしたら……いやだ、な」
( ´_ゝ`)
……じわり。
心臓の辺りに生じた、一点の染みのようなちょっとした違和感。
- 43 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/20(火) 23:06:45 ID:/KCj37jY0
- ( ´_ゝ`)「……」…コホッ
それが
l从・∀・ノ!リ人
(;´_ゝ`)、…ケホ…ゲホッ!
(´<_`;)「!兄者?」
じわりじわりと大きくなって。
(; _ゝ)「…〜ッ!!」
l从・∀・;ノ!リ人「おっきいあにじゃ?」
(; _ゝ)、ゲホッ!ゲホッ!
突如、苦しそうに体を折り咳き込み始めた兄者。
咄嗟に口に当てた手には、少量の血液が付着していた。
(´<_`;)「大変だ、血が……!ナースコール!!」
- 44 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/20(火) 23:07:57 ID:/KCj37jY0
川;` ゥ´) 「―――バイタル低下!危険な状態です!」
('(゚∀゚;∩「すぐ集中治療室へ運んで!」
(;‘∀‘)「はい!」
緊迫した空気の中、複数の慌しい足音が白い廊下を走る。
数人のスタッフの手によって速やかに運び込まれていく担架。
鉄の扉が閉められると同時、治療室のランプが赤く光を発した。
('(゚∀゚;∩「ここにきて容態が急変するなんて……!」
治療室前の暗い廊下に置かれた長椅子には、弟者と妹者が不安に身を寄せ合って座っていた。
l从;д;ノ!リ人「うあぁん、おっきいあにじゃあぁ」
(´<_`;)「大丈夫だから、妹者。もうすぐ母者達も来るから、な」
大丈夫、と言葉をかけるが、本当は自分だって怖い。
目の前で血を吐いた兄。
先程受けたショックと動揺は、収まるどころか嫌な痛みを伴って
速まる心臓の音に重なり続けている。
担架に乗せられて運ばれていった、苦しそうな兄者の顔が頭から離れなくて
いくら考えないようにしても、嫌な予想ばかりが胸中を渦巻き黒く侵食していた。
だが、隣で泣きじゃくる幼い妹をこれ以上怯えさせるわけにはいかないのだ。
手に伝わる震えを押し殺し、小さなその背を撫でながら、ぼんやりと灯る赤いランプを見つめる。
(´<_`;)「……兄者……」
- 46 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/20(火) 23:11:36 ID:/KCj37jY0
―――消灯時間は疾うに過ぎて、静寂と暗闇に包まれた一人部屋。
誰もいなくなったその部屋は、揺れるカーテンの隙間から差し込む月の光に照らされていた。
白い輝きを受けて、闇の中で仄かに浮かび上がる室内と、純白のベッド。
そして
( ^ω^)
その枕元にぽつんと残されたぬいぐるみが
無感情な笑みを顔に貼り付けて暗闇の中で笑っていた。
表情を変えぬそのぬいぐるみは、沈黙のまま持ち主の帰りをじっと待ち続ける。
―――と、思いきや。
- 47 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/20(火) 23:12:52 ID:/KCj37jY0
( ^ω^)) …スッ
布と綿の詰め物でのみ構成されている筈のその体は
月の光を浴びながら、なんと、突如ゆらりと立ち上がったではないか。
( ^ω^)「……」
(( ^ω^) ポテ ポテ
闇夜に動き出したぬいぐるみは、そのまま頼りない動作でベッドを降り床へと着地すると
出入り口である扉を目指して歩を進めていく。
かの鼻が伸びる木製人形のように、不思議な力が働いて命を授かりでもしたのだろうか?
童話のような展開に、思わずそう疑いたくもなる。
ようやくブーン人形が辿りついた先、ゆっくりと独りでに開くドア。
不気味な薄明かりに輪郭を浮かび上がらせた人形は、躊躇うことなくそのドアをくぐり―――
从 ゚∀从「おーっと、逃がさねぇぜ」
そのまま、人形が病室からの脱出を実現することは叶わなかった。
開いたドアのその前には、腕を組み、不敵な笑みでこちらを見下ろすハインが立っていたからだ。
- 48 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/20(火) 23:15:00 ID:/KCj37jY0
- ( ^ω^)「……」
从 ゚∀从「ようやく尻尾を出したな。雑魚の癖に手こずらせやがって」
愛用の巨大なメスを構え、無駄の無い動きで振り下ろしたその切っ先を
依然間の抜けた笑顔を貼り付けこちらを見上げる、ぬいぐるみの額に鋭く突きつけるハイン。
从 ゚∀从「……病気がちな兄者の命を狙ってた低級悪魔が
弟の方にとり憑いて人形に潜り込み、まんまと病院内に潜入。
一番力の強まる満月の夜を待って、入院中に魂をいただく算段だったってわけだな」
( ^ω^)「……」
从 ゚∀从「へっ、だんまりかよ。まあいいや」
ニヤリ。口角を吊り上げる。
从 ゚∀从「これより、ハインちゃん式オペを開始する。覚悟しやがれ!」
( ^ω^)
黙ってハインの言葉を聞いていたブーン人形。
だが、
ヒュンッ!
小さなその姿は、突きつけられたメスの先から忽然として掻き消えた。
ハインの後方に目を向けると、異界と化した病院内の彼方へと飛び去る一つの影がある。
先程まで頼りなく佇んでいた人形は、突如重力という枷から解き放たれ
地面から数m離れた空中を、猛スピードで “飛翔”していた。
先程からつくづく常識外れな行動を起こす人形である。
- 49 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/20(火) 23:15:59 ID:/KCj37jY0
- 从 ゚∀从「―――逃がさねぇって言っただろ?」
しかし、対象に逃げられたハインは依然、自信に満ちた笑みを崩さない。
从 ゚∀从「いけ、ビコーズ、ゼアフォー!」
三( ∵) 三( ∴) シュババッ!!
ハインの指示で一陣の黒い風となったビコーズとゼアフォーが、一瞬でブーン人形の前に回りこんだ。
一瞬にして追いつき、二匹の作り出す風の輪が対象を取り囲む形となる。
三( ∵) 三( ∴) ヒュンヒュン
ブーン人形の周りを高速で旋回飛行し始める二匹。すると―――
(;^ω^)「!?」
二匹の旋回によって描かれた円に沿って、突如空中に
ファンタジーでよく見る魔方陣のようなものが浮かび上がってきた。
魔方陣の丁度中心に位置する形となったブーン人形。
陣がはっきりと姿を現した時、飛行を続けていたその体は
まるで見えない壁に遮られ衝突したかのように急激なブレーキを掛けられ停止し
魔方陣上の空中において、完全に動きを封じられることとなる。
( ∵)マスイ( ∴)カンリョー
(;^ω^)「ッ!!」
- 50 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/20(火) 23:16:41 ID:/KCj37jY0
- そして
从 ゚∀从「―――喰らいやがれ」
すかさず後方から大きく跳躍したハインが一直線にメスを振りかざした。
一閃!
从 ゚∀从「切開!!」
―――ズバズバズバッ!!
(;゚/ /ω゚)「ギャアアアアアァアアァ!!!」
- 51 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/20(火) 23:18:51 ID:/KCj37jY0
- ハインの振り下ろした巨大メスの一太刀によって、無残にも切り刻まれるブーン人形。
魔方陣の解除に伴い、バラバラになった各パーツは浮力を失い落下する。
零れ出た詰め物が廊下に飛び散った。
(;゚/ /ω゚)「ぐううううッ!!!」
切り裂かれたその身は、ただの布と綿で出来たぬいぐるみに過ぎない。
だがしかし、苦しそうな呻き声から察するに
中の”モノ”にも相当なダメージを負わせることが出来たようだ。
(;^/ /ω^)「ち……畜生……!あと少しで上手くいったのにお……!!」
最早ここまでか。
手や足を切り離され、胴だけになった人形の体を引き摺り、苦々しげな声を漏らした。
ハインがヒールの音を響かせて歩み寄ってくる。
(;^/ /ω^)「……だが!
あの子の命もあと少し、もうこんな容れ物は必要ないお」
( ^/ /ω^)「力は満ち満ちている……!こうなったら、直接魂をいただくとするお!」
―――苦渋の呻きが、昂然とした色を含んだそれへと変化した。次の瞬間
※:::::/ω^) ズ ゾ ゾゾゾゾ
バラバラに切り刻まれたブーン人形。その切断面から
綿やビーズの詰め物と共に、靄のようなナニカが湧き出てきた。
- 52 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/20(火) 23:19:55 ID:/KCj37jY0
- 底知れぬ闇の色をしたそれは、布の隙間からぞわりと広がると
その向きを変えて、集中治療室がある方向へと狙いを定める。
不定形な霧状の体に、2つの赤い目が光った。
「させるかよ」
※゚※:゚:::: :::『!』
ドス黒い靄が解き放たれたその先に、暗然たる声が響く。
闇から現れたドクオが、素早くぬいぐるみを掴みその上で手を走らせた。
('A`)「縫合!」
目にも負えない速さで動く、ドクオの手に一本の針が光った。
※゚※:゚:::: :: /ω^)『……ッ!!』 ズズズズズ……
(;^/※゚::: :/ω^)「な……」 ズズズズ
(;^/:::/ω^)「なんだお!!?」 ズ ズ ズ
素早く縫い合わされていく布と布の狭間に、離脱しようとしていた黒い靄が吸い寄せられていく。
ドクオの縫合によって、瞬く間に人形が元の形を取り戻したその瞬間
全身に刻まれたツギハギが淡く光を発し、その体を包んだ。
そして。
- 54 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/20(火) 23:20:35 ID:/KCj37jY0
- ('A`)「“結・紮”!!」
(;^メω^)「―――うおおおぉ!!?で、出れねぇおおおお!!!」
縫合が終わると同時、外部に広がっていた黒い靄は完全に元のぬいぐるみに収束されていた。
再び五体満足とはなったものの
わけが分からないといった困惑の悲鳴をあげるブーン人形。
('A`)「Dr.ドクオ様特製の糸でがっちり縫いつけてやったぜ。
これでお前はその容れ物から出る事はできねぇ」
从 ゚∀从「もうちょっと綺麗に縫えよなドクオ。大事な人形がこのザマじゃ兄者が泣くぜ」
('A`)「その大事な人形バラバラに切り刻んだ奴よりは幾分罪が軽いだろうよ。
―――院長、あとは頼みます!」
∧_∧
( ФωФ)「任せろ!」
- 55 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/20(火) 23:21:55 ID:/KCj37jY0
- 暗闇で、ぎらりと光る金色の瞳。
首に巻いたネクタイを颯爽となびかせ、闇の中から軽やかに躍り出た一匹の黒猫の口には
一般的な薬局で手渡されるような、白い薬袋が銜えられていた。
∧_∧
( ФωФ)「院長ターックル!!」
(;゚メω゚)「ふごぉ!?」
パニックに陥り身動きできないブーン人形の上に有無を言わせず着地。
抵抗する人形を、その四肢でがっしりと押さえ込む。
そのまま、軽い動作で袋から錠剤を取り出すと
肉球つきの手で無理矢理その口部分へとつっこんだ。
(;゚メω゚)「な、なにするおおおお!!フゴフガオゴッ」
もちろん人形に摂食機能などは備わっていないのだが。
それでも錠剤状の薬は次々と、布でできたその体に吸収されていく。
∧_∧
( ФωФ)「ふふん。
悪魔更正治療の専門、我がロマネスク病棟に来たのが貴様の運の尽きであったな!」
得意気にドヤ顔をかますロマネスク院長だが、ハイン達に比べそのアクションは一番地味である。
- 56 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/20(火) 23:22:36 ID:/KCj37jY0
- ∧_∧
( ФωФ)「―――治療完了である!!」
再び静寂が訪れた真夜中の病院内。
高らかに勝利宣言したロマネスクのその足元、静かに転がるブーン人形。
( ^メω^)
ツギハギだらけの人形と化したそれは、最早動くことも喋ることもなかった。
- 57 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/20(火) 23:23:33 ID:/KCj37jY0
―――集中治療室―――
ピッ… … ピッ… … ピッ… … …
('(゚∀゚;∩「〜〜〜〜〜〜!」
(;‘∀‘)「〜〜〜〜〜〜!」
(; _ゝ)
… ピッ… … … ピッ… …
- 58 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/20(火) 23:24:16 ID:/KCj37jY0
ピ … … …
… … …
「―――しっかりしろよな兄者。お前、あんなに家に帰りたがってたじゃねーか」
.
- 59 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/20(火) 23:25:33 ID:/KCj37jY0
「おら、外で弟と妹がお前のこと心配して待ってるぞ。
早く行って安心させてやれよ。
―――お兄ちゃんだろ。
(; _ゝ)
………
………うる… …さ いな……
………わかってるよ。
- 60 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/20(火) 23:26:16 ID:/KCj37jY0
- ピッ… ピッ…
…ピッ …ピッ …ピッ …ピッ …ピッ
川;` ゥ´)「……!脈拍、正常値に戻りました!」
('(゚∀゚;∩「よし、投薬を続けてよ!」
(;‘∀‘)「はい!!」
(;-_ゝ-)「………」
('(゚∀゚;∩「しっかりするんだよ、兄者君……!!」
- 61 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/20(火) 23:27:05 ID:/KCj37jY0
- + + + + + + + + + + + +
「「「退院おめでとうー!」」」
待ちに待った日曜日。
晴天の下、病院の外に停められた車の前に兄者を中心とした皆が集まっていた。
既に点滴も外され、車椅子も必要無い。
一時は危うい状態になった容態も、一度持ち直すとその後順調に回復して
無事、兼ねてからの退院予定日であった今日を迎えることが出来た。
兄者の回復を最も喜んでいたうちの1人である院長のなおるよは
出迎えに出てくることは出来なかったが、心からのお礼を言って別れの挨拶をすましてきた。
( ‘∀‘)「しばらくは無理しちゃだめよ兄者君。一時はほんとに危なかったんだからね」
川゚` ゥ´)「ほんとだッピャ。元気になって良かったッピャ。
先生の言いつけちゃんと守って、お薬もちゃんと飲むんだッピャよ」
(*´_ゝ`)「うん!看護婦さん達ありがとう」
母者も父者も休みをとって、兄者を迎えにきてくれた。
父者の運転する車に乗って、みんなで懐かしの我が家へ帰宅だ。
@@@
@#_、_@
( ノ`)「ほんとに、よかったね兄者。帰ったらお祝いだよ!」
(*´_ゝ`)「うんっ」
嬉しそうに顔を綻ばせる兄者。
その胸には、ツギハギだらけになったブーン人形が大事そうに抱きしめられている。
- 62 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/20(火) 23:27:56 ID:/KCj37jY0
- ( ^メω^)「もう悪いことなんてしないよ!」
Σ(´<_`;)「!!?」
( ´_ゝ`)「?どうした?弟者」
(´<_`;)「い、今、このぬいぐるみ喋らなかったか!?」
( ´_ゝ`)
l从・∀・ノ!リ人
@@@
@#_、_@
( ノ`)
( ‘∀‘)
川;` ゥ´)
( ^メω^)
(´<_`;)「そんな目で見ないで!!」
( ´_ゝ`)( ^メω^))「ボクブーン!ボクトケイヤクシテ マホウショウネンニナッテオ!」
(´<_`;)「やめろ!!」
- 63 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/20(火) 23:29:16 ID:/KCj37jY0
- ニャー
( ‘∀‘)「あら?」
l从・∀・ノ!リ人「あ!ぬこさんなのじゃー!」
談笑するみんなの中、看護婦の背後から姿を現した小さな影。
∧_∧
( ФωФ) ニャア
―――それは、どこか見覚えのある一匹の黒猫だった。
( ´_ゝ`)「あ……」
l从・∀・*ノ!リ人「かわいいのじゃ!」
( ‘∀‘)「病院の庭に住み着いてる猫さんなの。ロマネスクっていう名前なのよ」
兄者の方へゆったりと歩み寄るロマネスク。
その口には、片方だけのスリッパが銜えられていた。
- 64 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/20(火) 23:29:58 ID:/KCj37jY0
- 川 ` ゥ´)「あれ?それ、いつだったか兄者君が片方無くしちゃったうさちゃんスリッパじゃないかッピャ」
( ‘∀‘)「あらほんと。もしかして、見つけてきてくれたの?ロマ」
∧_∧
( ФωФ) ミー
一声鳴いて、兄者の足元に擦り寄る。
( ‘∀‘)「うふふ、良かったわね兄者君。
ロマも、『退院おめでとう』だって」
( ´_ゝ`)「……ありがと、ぬこにゃん」
屈んでそのスリッパを受け取り、頭を撫でてやると
手の下で目を細め、ゴロゴロと喉を鳴らした。
- 65 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/20(火) 23:30:44 ID:/KCj37jY0
- 彡⌒ミ
( ´_ゝ`)「じゃあ行くよー」
l从・∀・ノ!リ人「おうちにむかって出発進行!なのじゃ!」
( ‘∀‘)「元気でね!」
川 ` ゥ´)「お大事にッピャ」
車に乗り込み、看護婦達とその腕に抱きかかえられたロマネスクにさよならをする。
発進して数メートル進んだところで、兄者は車の座席を僅かに移動し
見送る看護婦達とは反対の方向に向けて手を振った。
(´<_` )「?誰に手を振ってるんだ?兄者」
不思議に思った弟者が窓の外を覗き見るも
兄者が手を振る先にそれらしい人物は見当たらない。
それでも手を振る兄者の顔には、どこか満足そうな笑みが浮かんでいた。
从 ゚∀从ノシ「「もう来んなよー」」('A`)ノシ
( ∵)ノシ ヨー ( ∴)ノシ yo!
日曜の午後、眩しい青空の下
白い建物は遠ざかり、次第に見えなくなっていった。
- 66 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/20(火) 23:32:18 ID:/KCj37jY0
(。><)「うあーん、帰りたいんですううう」
―――日の暮れた小児病棟。
幅広い年齢層の子供達が入院しているこの建物で
多くの病室が並ぶ、その中のとある一室。
部屋に一つだけのベッドと、その上で泣きじゃくる小さな子供。
そして、その傍らに付き添う一人の医師の姿があった。
(。><)「こんなとこもうヤなんです、ママぁー」
( ´_ゝ`)「はいはい泣かない泣かない。苦いお薬ほど体に良いんだぞ?」
.
- 67 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/20(火) 23:33:00 ID:/KCj37jY0
- (。><)「そうじゃないんです先生!この病院、夜になったらオバケが出るんです!」
Σ( ´_ゝ`)「な、なんだってー!?」
(。><)「オバケの病院なんです、先生も呪われちゃうんです!」
( ´_ゝ`)「呪われちゃうの!?
いや、いやいやいや先生はオバケとかそんな非科学的なもの全然怖くないんだけどな?
そうだ、夜勤のナースさん達が怖がってストライキ起こすかもしれないだろ?」
( ´_ゝ`)「ここの院長実は胃痛持ちなんだよ。そんな話他の人にしちゃいけないぞ」
(。><)「でも怖いんです!退院したいんですう」
( ´_ゝ`)「怖いと思うからオバケも怖く見えるんだよ。気にしない気にしない」
事も無げにそう言うと、不安そうに怯える少年にそっと布団を掛けてやる。
( ´_ゝ`)「ほら、もうすぐ消灯時間だ。いいか?
今夜はオバケのことなんか考えないで、ぐっすり眠るんだぞ」
(。><)「無理なんですううう」
( ´_ゝ`)「大丈夫だよ、いい子だからおやすみ。また明日、な」
- 68 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/20(火) 23:34:01 ID:/KCj37jY0
『まもなく消灯時間です。お部屋にもどり、電気・テレビなどを消して静かにお休み下さい』
「……良いな皆。
今晩いよいよ、あの子にとり憑く悪魔の”治療”にとりかかるのである」
「たく、診断までにまた時間がかかっちまったぜ」
「まさか親が持ってきた京都土産のこけしに憑いてたとはなぁ」
「へっ。こけしだろーとなんだろーと、ハインちゃんのメスにかかれば一太刀よ!」
「こけしって縫えるかなぁ……」
「ムリジャネ?」「ムリダロ」
「各々、昨夜決めたとおりの作戦でいくのであるぞ。よいな」
- 69 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/20(火) 23:34:41 ID:/KCj37jY0
- 「で?院長。あのガキが逃げたらどうすんだよ?」
「抜かりは無い。
親しい担当医の言うことならば、素直に聞いてくれる筈である」
∧_∧
( ФωФ)「ということで、足止め役は頼んだぞ。
―――Dr.流石」
「はいはい」
( ´_ゝ`)「任せて下さいよ、院長」
- 70 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/20(火) 23:35:49 ID:/KCj37jY0
- 从 ゚∀从「ヒャッハー腕が鳴るぜ!
ヘマすんなよ兄者!ヘマしたらその場でフルボッコだ!!」
('A`)「医大出たてのひよっこドクターに格の違いをとくと拝ませてやらぁ。
完膚無きまでにプライドへし折ってやるぜ」
( ´_ゝ`)「就任したての新人相手に厳しすぎるだろこの職場……」
( ∵)ヤキソバパン( ∴)カッテコイヤー
( ^メω^)「ブーンもお手伝いするお!」
( ´_ゝ`)「ブーンはいいよ。喋るツギハギ人形とか出てきたらマジトラウマなるから」
( ´メω`)「おーん……」
从 ゚∀从「喋る化け猫見てなんも動じなかったガキがどの神経で言ってんだか……」
( ´_ゝ`)「ぬこにゃんはいいんだよ可愛いんだから!!」
∧_∧
(;ФωФ)「フギー!失敬な!失敬な!!」
( ^メω^)「ブーンだって可愛いお!」
( ´_ゝ`)「お前のブームは俺が子供の頃にとっくに去ったんだよ」
( ;メω;)「おーん!!」
- 71 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/20(火) 23:36:45 ID:/KCj37jY0
- ('A`)「さてと。院長、どうやらホシが動き出したようですよ」
从 ゚∀从「オーケイ、ショータイムの始まりだ!」
( ∵)「wkwk」( ∴)「tktk」
( ´_ゝ`)「荒治療には違いないな」
( ^メω^)「ブーンも手伝うおー!」
∧_∧
( ФωФ)「うむ、では行くぞ皆の者―――
治療開始である!」
( ´_ゝ`)( ^メω^)从 ゚∀从『任せな!!』('A`)(∵ )(∴ )
∧_∧
( ФωФ)夜診ロマネスク病棟のようです( ´_ゝ`) 了.
● 支援イラスト 同スレ>>88より
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