■2012年芸術の秋ラノベ祭りのようです
└( ^ω^)時計の国とラノベ祭のようです
└その5
└サムネ有り サムネ無し
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230 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/13(木) 17:44:01 ID:TW803YTwO
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意外にも、2日目は何事もなく終わった。
予定より2時間は早い午後7時に、終了のアナウンスが流れる。
いくつかの出店は片付けを始め、またいくつかの店は「夜の部」の準備を始める。
夜の部──要するに酒盛りだ。広場で酒と料理が振る舞われる。
('A`)「ショボンのとこも酒出すんだよな」
( ^ω^)「今日こそは飲みに行ってやるお……。
魔法とか知るかお、存分に楽しんでやるお」
('A`)「はいブーンちゃんはお酒飲んじゃ駄目よーねんねしようねー」
(#^ω^)「中身は25歳だお!」
('A`)「体は5歳だろ。──何だかんだ、一昨日から大して寝てねえんだから休め。
俺らは夜間の見回りは任されてねえし」
ドクオに抱えられ、ブーンは不服そうに頬を膨らませた。
途中、ドクオが菓子店の売り子に「お父さん、お一ついかがですか」なんて声をかけられて
へこんでいたので、いくらか溜飲が下がった。
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231 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/13(木) 17:46:05 ID:TW803YTwO
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時計塔に戻り、各自の報告と明日以降の予定の確認をし、
夜の業務がない者は解散となった。
結局、例の「脅迫状」の差出人も最終的な目的も、何も分からないからには
こちらも如何ともしがたい。
ただの手伝いでしかないブーン達は、ほとんど通常通りの予定に沿うしかなかった。
ζ(゚ー゚*ζ「──ただいまー、ショボン君のところから色々買ってきたよー」
川 ゚ -゚)「む」
( ^ω^)「帰ってきたかお」
マンションの20階、「ツンちゃんのお悩み相談室」。
ドアを開ける音とデレの明るい声に、クールが立ち上がり
小走りで玄関へと向かっていった。
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232 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/13(木) 17:47:32 ID:TW803YTwO
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川 ゚ -゚)「おかえり、デレ。何買ってきた?」
ζ(゚ー゚*ζ「唐揚げとー、お漬物とー、何だっけ、ご飯丸めてタレ塗って焼いたやつ……」
川*゚ -゚)「焼きおにぎりか。ニューソク料理は美味いものが多くて好きだ」
ζ(゚ー゚*ζ「とりあえずこれで晩御飯にしよっか」
デレとクールがきゃっきゃと話している声を聞きながら、
リビングの床に寝そべるブーンは溜め息をついた。
腹が減ったので、何でもいいから早く持ってきていただきたい。
川 ゚ -゚)「ん? 君は……」
ζ(゚ー゚*ζ「ブーン君にお礼したいんだって。マンションの前にいたから連れてきたの」
*(‘‘)*「こんばんは……」
(*^ω^)「──ヘリカルちゃん!?」
可愛らしい声に、がばと身を起こす。
ブーンは喜色満面で玄関へ走った。
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233 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/13(木) 17:48:27 ID:TW803YTwO
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*(‘‘)*「あ、お兄さん」
玄関に、ヘリカルと、彼女に少し似た大人の女性が立っていた。
女性はヘリカルの母だという。
娘がお世話になって、と頭を下げられた。
ζ(゚ー゚*ζ「昨日、迷子になってたっていう……」
川 ゚ -゚)「ああ、ツンから聞いたな。あの子か」
夜明け、すぐに迷子センターの職員に預けたのだ。
どうやら無事に母親と会えたらしい。
(*^ω^)「どうなったか心配してたんだおー、良かった良かった」
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234 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/13(木) 17:51:29 ID:TW803YTwO
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*(‘‘)*「あの、えっと、ありがとうございました!」
(*^ω^)「いやいや、僕は何も」
ぺこりと頭を下げるヘリカルに、ブーンの顔がだらしなく緩んでいく。
ヘリカルの両手を握って上下に振り、それでは足りなくて軽く抱き締めた。
今はブーンの方が年下のようになってしまっているので、
端から見れば子供同士の戯れのようである。
川 ゚ -゚)(今日のブーンが幼児で良かったな……)
ζ(゚ー゚;ζ(大人の姿だったら、色々危険だったね……)
ヘリカルの母親が、クールに箱を手渡した。
今回の祭限定で販売されている菓子の詰め合わせらしく、デレがいやに喜んでいた。
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235 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/13(木) 17:53:24 ID:TW803YTwO
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*(‘‘)*「あの、もう一人のお兄さんにもお礼言いたいです。お姉さんにも渡したいものがあるし……」
(*^ω^)「ドクオとツンかお?」
ζ(゚、゚*ζ「あれ、そういえば2人は?」
川 ゚ -゚)「ドクオは風呂、ツンは書斎で手紙を書いている」
( ^ω^)「手紙って……今この状況じゃ、郵便もてんやわんやじゃないかお」
川 ゚ -゚)「優先して届けてもらえる伝手があるから問題ない」
仕事の依頼は手紙でしか受けないツン。
同様に、彼女からの連絡方法も手紙が多い。
もちろん急いでいるときは携帯電話などの通信機器も用いるが、そうでなければ大抵手紙だ。
手紙というものが好きなのだろう。
筆不精のブーンには理解できない。
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236 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/13(木) 17:55:30 ID:TW803YTwO
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ζ(゚、゚*ζ「お給料の値上げ交渉の手紙だろうねえ」
( ^ω^)「ちゃっかりしてるお……」
川 ゚ -゚)「ともかく、書き終わるまでは部屋から出ないと思うぞ」
*(‘‘)*「そうですか……」
(*^ω^)「僕から伝えておくお」
*(*‘‘)*「お願いしますっ」
(*^ω^)(かわいー……頭下げる度にぴょこぴょこ跳ねるツインテかわいー……)
*(‘‘)*「これ、お姉さんに渡しておいてください!
『シタラバニアの夜』の、三番です」
ヘリカルが、可愛らしいメモ紙を差し出してきた。
幼い字で歌詞が書かれている。
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237 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/13(木) 17:58:04 ID:TW803YTwO
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ζ(゚、゚*ζ「シタラバニアの夜?」
( ^ω^)「ニューソクの童謡だお」
*(‘‘)*「ヘリカル、二番までしか知らなかったですけど
お母さんから三番もあるって教えてもらって……。
せっかくだから、お姉さんにも教えてあげようと思ったです」
(*^ω^)「ありがとうおヘリカルちゃん、君はいい子だお。
もうお母さんと離れちゃ駄目だお?」
*(*‘‘)*「はいっ!」
──ヘリカルと母親は、何度も礼を言ってから去っていった。
元からソウサクに何日か滞在する予定だったらしく、ホテルの部屋をとっているそうだ。
ブーンはメモ紙に頬擦りをして、ヘリカルの温もりを求めた。
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238 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/13(木) 17:59:34 ID:TW803YTwO
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ξ>⊿<)ξ「あーっ、疲れたー!」
川 ゚ -゚)「お、ツン。終わったか」
少しして、ツンが書斎から現れた。
右手がインクで汚れてしまっている。
腰に手を当て背中を伸ばす仕草が、見た目にそぐわず親父臭い。
ξ゚ー゚)ξ「うん。さあて、シャワー浴びよっと」
(*^ω^)「じゃあ僕も一緒に」
ξ;*゚⊿゚)ξ「馬鹿か! ……馬鹿か!!」
( ^ω^)+「お互い小さい体じゃお風呂に入るのも大変だお?
効率を考えて、背中の流しっこをするべきだお」
川 ゚ -゚)「ならば私がブーンの背中を流してやろうか」
( ^ω^)「あ、いいです」
ζ(゚、゚;ζ「っていうか、今はドクオさんがお風呂使ってるから……」
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239 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/13(木) 18:00:31 ID:TW803YTwO
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ξ;゚⊿゚)ξ「えー? あいつ、またうちのお風呂入ってんの?
すぐ下の階に行きゃあいつの部屋あるのに」
川 ゚ -゚)「私が入った直後の風呂に入りたいんだろう」
( ^ω^)「うわあ、ほんとあいつ気持ち悪いお」
川 ゚ -゚)「お前が言えた義理じゃないと思うんだが……。
それに私だって本当はツンとデレの後に入りたかった」
ξ゚⊿゚)ξ「あんた達まとめて気持ち悪いわ」
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240 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/13(木) 18:01:40 ID:TW803YTwO
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('A`)「──っっっおぶしっ!!」
盛大にくしゃみを一つ。
浴室の壁に反響して、わんわんと余韻が漂う。
クールが噂してるのかな、なんて考えてにやつき、ドクオは頭の上にタオルを乗せた。
湯船の湯に肩まで浸かる。
('A`)「あー……クー様が入った後のお湯あったかいよお……」
残念なことに、彼は正気である。本気でもある。
クールの名残を感じ取ろうとするかのように、お湯を掬って顔へかけた。
(*'∀`)「さ、100数えたら出るかー」
いーち、にーい、さーん。
陽気な声で数えていく。
65、まで来たところで──
≡川д川 ニュッ ('∀`*)
女が、正面の壁から飛び出してきた。
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241 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/13(木) 18:03:29 ID:TW803YTwO
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長い髪。白い服。
その姿は、記憶に新しい。
川д川「見ィ付けt……」
昨夜の女だった。
にたりと笑って、何かを言いかける。
壁から体の半分を生やした女は、ぽかんとした様子でドクオを見つめた。
ドクオもまた呆然と見つめ返す。
彼も混乱していたのだろう。
頭の中では依然として数をかぞえていた。
当初の目的である、100へ到達する。
それと同時に、両者は動いた。
女は顔を赤らめ、ドクオは体を揺らし。
川;*д川「ひえっ」
(;゚A゚)「でっ」
(;゚A゚)「出たぁあああああ!!!!!」
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242 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/13(木) 18:04:13 ID:TW803YTwO
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ξ*゚⊿゚)ξ「唐揚げ美味しい!」
(*^ω^)「はあー、口一杯に頬張る幼女ツンちゃんマジ天使」
ζ(゚ー゚*ζ「お茶淹れてきたよー」
川*゚ -゚)「ありがとう。……この焼きおにぎり美味いな。甘じょっぱさが丁度いい比率だし焦げ目も香ばしい」
リビングでは、ブーン達が夕飯を口にしていた。
今日も疲れたねえ、昨日よりはマシだけど、明日も無事に終わればいいね、などと語り合いながら。
鶏肉を揚げたニューソク料理に舌鼓を打っていたツンは、
ブーンが大事そうにメモ紙を握っているのに気付いたようで、それは何かと訊ねてきた。
( ^ω^)「ああ、『手紙』だお。ヘリカルちゃんから、君に」
ξ゚⊿゚)ξ「手紙?」
ヘリカルから聞いた旨をそのままツンに話し、紙を手渡す。
食事の手を止めたツンは、さっと文字に目を通した。
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243 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/13(木) 18:05:12 ID:TW803YTwO
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ζ(゚、゚*ζ「童謡ってどんなの?」
( ^ω^)「ええと……シタラバニアの夜は恐い恐い。
もしも人間が出歩けば、おばけに見付かり食べられる」
( ^ω^)「シタラバニアの夜は恐い恐い。生き物以外の世界では、人間なんて食べられる……」
続く三番は、メモ紙の中。
ツンが歌うように読み上げる。
ξ゚⊿゚)ξ「シタラバニアの夜は恐い恐い。食べられなかった人間も、
やがてはおばけへ変えられる──」
川 ゚ -゚)「何だそれ、食われるかおばけになるかしかないのか。詰んでるな」
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244 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/13(木) 18:06:21 ID:TW803YTwO
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( ^ω^)「おばけに変えられる……」
ブーンは、ショボンから教わった「おばけ」の特徴を思い出してみた。
おばけというのは広義の表現であって、細かく分類していけば多種多様なものなのだそうだ。
だが、大半のニューソク人が「おばけ」と聞いて思い浮かべる、
代表的と言ってもいい姿があるらしい。
いわく、白くてふわふわひらひらした感じ。
( ^ω^)(……)
( ^ω^)(全然怖くねえ)
寧ろちょっと可愛い。
こんなものを怖がるなんて、ニューソク人も変わってるな──と、
やや冷めた顔をしながらブーンは漬物を齧った。
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245 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/13(木) 18:10:03 ID:TW803YTwO
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ξ゚⊿゚)ξ「ご飯食べながら本読んだら汚れるよ」
川 ゚ -゚)「ん。すまん。気になることがあって」
ζ(゚、゚*ζ「何の本?」
咎める声で我に返った。
注意されたのはブーンではなくクール。
彼女はテーブルの上に厚手の本を置いていた。
川 ゚ -゚)「各国の画家の絵を紹介してる画集だ。昔のから最近のまで、とにかく多い。
ドクオが歯車から見付けたという絵に見覚えがあったから調べてみた。
──そしたら、ドンピシャだ。同じものがあったぞ」
ζ(゚ー゚*ζ「ほんと!?」
ξ゚⊿゚)ξ「どれ? ──……あれ、でもこれって……」
ツンとデレが覗き込む。
ブーンも加わろうと腰を上げ──
直後轟いた絶叫に驚き、持ち上げた腰を落とした。
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246 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/13(木) 18:11:48 ID:TW803YTwO
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(;゚A゚)「出たぁあああああ!!!!! 出た!! 出た!! わああああ!!」
ζ(゚ー゚;ζ「ぎゃあああっ!!?」
全裸のドクオが風呂場から飛び出してきたのだ。
全身びしょ濡れのままリビングに駆け込んでくるものだから、
床に水が落ち、それで自ら足を滑らせ転倒している。
ξ;゚⊿゚)ξ「服! 服!」
ζ(>、<;ζ「きゃー! きゃー!!」
(;゚A゚)「ブーン! 出た! 出たんだよぉお!!」
(;^ω^)「落ち着くんだドクオ、今は君が出してはいけないものを出してるお」
川 ゚ -゚)「見苦しいからしまってくれ」
(;'A`)「あ、ああ、ごめんなさいクー様! ええっと、とりあえずこの布巻いとくか」
ζ(;、;*ζ「私の上着ー!!」
腰にデレの服を巻き付け、ドクオが一段落つく。
ブーンが詳しく話を聞こうとした──瞬間。
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247 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/13(木) 18:16:03 ID:TW803YTwO
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部屋の電気が消えた。
ぴちゃぴちゃ、水の滴る音が響く。
きし、と床を踏む音が近付いてくる。
川д川
ゆらり。女がリビングの入り口に立った。
濡れ鼠になっていて、服や肌から滴る水が床を打つ。
ドクオが悲鳴をあげる。
ブーンは細い目を見開き、咄嗟にドクオの後ろに隠れた。
ζ(゚、゚;ζ「え? 誰?」
ξ;゚⊿゚)ξ「──昨日の……! 消えたんじゃなかったの!?」
川 ゚ -゚)「ブーンを追っていたという『おばけ』か。
夜になったから出てきたようだな」
さすがクール、理解が早い。
ブーンとドクオの前に立ち、食事に使っていたフォークを構える──が。
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248 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/13(木) 18:18:32 ID:TW803YTwO
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川;゚ -゚)「んっ……!?」
(;'A`)「クー様!?」
そのままの体勢で、クールが唸った。
体を小刻みに揺らすが、腕や足はその場に留まっている。
川;゚ -゚)「……動かん」
(;'A`)「なっ、……──! お、俺もだ! 体が……!」
続けてドクオ、ツン、デレも同様に。
金縛り、というのを聞いたことがある。
おばけが人の体の自由を奪うとか何とか。
川∀川「ふ……ふふ、ふふ……」
女が笑っている。
ブーンは身じろぎした。動く。
じりじりと後退りをすると、ツンがそれに気付いたのか口を開いた。
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249 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/13(木) 18:19:32 ID:TW803YTwO
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ξ;゚⊿゚)ξ「……ブーン! 逃げて! 昨日の通りなら、あいつの目的はあんただけの筈だわ!」
言われなくてもそうするつもりである。
ブーンが頷──こうとした、そのとき。
(;'A`)「いや……! あいつは俺の入浴シーンを覗きに来た……!
もはや狙いはブーンだけではないのかもしれん!!」
川д川
ドクオが深刻な声で言い、女のにたにた笑いが消えた。
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250 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/13(木) 18:20:28 ID:TW803YTwO
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ξ;゚⊿゚)ξ「え?」
川;゚ -゚)「そういえばドクオは風呂から飛び出してきたんだったな……
あの女が現れたからか!」
ζ(゚、゚;ζ「や、ブーン君に会いに来たつもりだったけど間違えたんじゃ……」
(;'A`)「風呂場に現れたとき、あいつは濡れちゃいなかった……!
なのに今は全身ずぶ濡れ……。間違いねえ!
俺の残り香を求めて頭から湯船に突っ込んだんだ!」
川;゚ -゚)「こ……この変態め……!!」
川−川
女は唇を噛み締め、硬直している。
違う、と一言落としたが、ドクオとクールは聞く耳を持たない。
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251 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/13(木) 18:22:35 ID:TW803YTwO
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(;'A`)「一糸纏わぬ俺の裸体を楽しみやがってぇえ……!」
ζ(゚、゚;ζ「びっくりして湯船に落ちただけじゃないの……?」
川;゚ -゚)「痴女か! 痴女だな!!」
ξ;゚⊿゚)ξ「あんたがそれ言うの?」
(;'A`)「くそっ、俺達を動けなくさせてどうするつもりだ!」
川;゚ -゚)「まさか……まさか、動けないのをいいことに……!!
阿婆擦れドスケベめ!!」
川−川
こういう辺り、ドクオとクールはお似合いな気もするのだが。
冷静な頭でブーンは思考を横に逸らす。
('A`)「へーんーたい! へーんーたい! へい!」
川 ゚ -゚)「風ッ呂マッニア! 風ッ呂マッニア!!」
段々2人が調子に乗ってきた。
頭上で高らかに両手を打ち鳴らし、女へ暴言を浴びせていく。
──って。
金縛りはどこ行った。
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253 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/13(木) 18:25:12 ID:TW803YTwO
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ξ;゚⊿゚)ξ「……あれ? 動く……」
ζ(゚、゚;ζ「あ、ほんとだ」
川−川
('A`)「男に飢えたケダモノめ!!」
川 ゚ -゚)「そんなに男が欲しいか? それじゃ飽きたらず私までも標的にしたわけか? その意気は認めるぞ?」
女は、ぐすりと鼻を啜って目元を手の甲で擦った。
心が折れたようだ。それで金縛りが解けたのだろう。
そろり、女が顔を上げる。
手で擦ったせいかぐしゃぐしゃになった前髪の間から、涙に濡れた目が見えた。
その目が真っ直ぐブーンに向けられている。
助けを求めている。
ブーンは真面目くさった顔で、頷いた。
( ^ω^)「大丈夫、変態阿婆擦れドスケベ風呂マニアでも、きっと受け入れてくれる人はいるお」
人はこれを、「とどめ」と言う。
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254 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/13(木) 18:28:16 ID:TW803YTwO
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時が凍ったように、沈黙が生まれる。
女の目から一層激しく涙が溢れた。
川;д;川「わああああああん!!」
女はクール、ドクオ、ブーンの横を走り、
窓をすり抜けると、夜の町へ消えた。
いちいち窓やドアを開ける必要がないのは便利そうだな、と少し思う。
ξ;゚⊿゚)ξ「……あんた、今のわざとでしょ」
( ^ω^)「うん……どうやら彼女、意外と普通の人のようだね。
いや、『人』ではないだろうけど」
ζ(゚ー゚;ζ(可哀想)
川 ゚ -゚)「痴女が逃げたぞ! 追え!」
('A`)「引っ捕らえろ!!」
もはや2人はテンションがおかしくなっているらしかった。
ドクオが脱衣所で服を着直し、クールと共に玄関から外へ飛び出していく。
放置しておくわけにもいくまい。
何より「おばけ」が出たということは、また昨夜のような変事が起きている可能性がある。
残された3人も、すぐにドクオ達の後を追った。
# # #
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255 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/13(木) 18:29:36 ID:TW803YTwO
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果たして、異変は起きていた。
(;,゚Д゚)「あ、おい! 『ヒーロー』、これ何とかならねえか!?」
広場にいたギコが、ブーン達を見付けるなり駆け寄ってきた。
ヒーローはドクオのことだろう。
('A`)「何だこの騒ぎ……」
広場内は恐慌に陥っていた。
──得体の知れぬ生き物が、あちこちにいるのだ。
生き物、というか、化け物。
人間の死体が腐ったようなものや、いくつもの動物を混ぜ合わせたようなモンスターが
そこら中を行き来している。
普通の姿をした人間の反応は、それらから逃げ回ったり、
逆に心配そうに話し掛けたりと様々。
モンスターが人を襲っている、という様子ではなかった。
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256 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/13(木) 18:30:52 ID:TW803YTwO
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(;,゚Д゚)「それがよ……」
ギコが広場の中心へ目を遣る。
ステージの上で、1人の女が右往左往していた。
从;゚∀从「あ、あのー! 皆さん落ち着いて! 今すぐ直しますから!」
白衣の女──たしか、ハインリッヒといったか。
ハインリッヒの手には、昼間見た赤い機械があった。
('A`)「ありゃあ……」
( ^ω^)「ユトリ社の新作ゲームだおね。
たしか、『探検者』と『モンスター』に分かれてプレイする……」
(;,゚Д゚)「ああ、それが……」
(*´_ゝ`)∬*´_ゝ`)「説明しよう!!」
(;^ω^)「うわっ」
(*'A`)「姉者さん!」
出し抜けに知り合いが2人、話に加わってきた。
流石一座の長男長女、兄者と姉者だ。
2人とも酒臭い。酒盛りに参加していたのだろう。
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257 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/13(木) 18:32:21 ID:TW803YTwO
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(*´_ゝ`)「酒盛りの余興として、あのゲームのデモプレイをすることになって
俺と姉者も立候補したんだがー」
∬*´_ゝ`)「とつぜん機械が暴走して、そこらの人間が化け物みたいな見た目に。
近くにいた私達が無事だったから、多分ランダムで餌食になったのねえ」
兄者と姉者は笑いながら互いの酒瓶を打ち鳴らし、らっぱ飲みした。
酔いすぎだし飲みすぎだ。
姉者のファンだというドクオは、浮かれつつも彼らの話を真剣に聞いていたようで
なるほどと何度も頷いた。
('A`)「そういや、ホログラムで化け物になりきるオマケ機能があったな」
ξ;゚⊿゚)ξ「ホログラム?」
ζ(゚、゚*ζ「ってことは、本当にモンスターになってるわけじゃないんだね」
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258 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/13(木) 18:34:38 ID:TW803YTwO
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(*´_ゝ`)「ああ……俺の推理が正しければ、あの機械が直れば騒ぎも治まる」
∬*´_ゝ`)「兄者やばいわあ、名探偵名探偵」
( <●><●>)「それは推理ではなく、誰もが分かっている事実です」ブニョン
ξ;゚д゚)ξ「うひゃあああっ!!?」
ずるり、黒い「何か」が兄者の肩に乗っかった。
ぶよぶよした、固めのゼリーみたいな。
そのゼリーには見慣れたギョロ目が付いていた。
(;^ω^)「ワカッテマスさんかお……?」
( <●><●>)「そうですよ。ギコさんと一緒に酒盛り会場の警備をしていたら、こんなことに」ブヨヨ
ξ;゚д゚)ξ「目がいっぱい付いてるぅううう!!」
(*´_ゝ`)「これアレだ、ヴィップ国に伝わる『スライム』ってモンスターだなwwwww」
∬*´_ゝ`)「見た目はゼリーなのに触ると普通に人の形してるwwwwwwwwww」
( <●><●>)「所詮ホログラムですからね。
あなた方にどう見えてるかは分かりませんが、私は今、兄者さんの肩に手を乗せてるだけです」ブニニン
ξ;゚⊿゚)ξ「ゼリーがまとわりついてるようにしか見えない……」
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259 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/13(木) 18:36:50 ID:TW803YTwO
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川 ゚ -゚)「とにかく、あの機械が直るのを大人しく待てばいいんだろう」
(;,゚Д゚)「そうなんだが──どうも、上手くいってないみたいなんだ。
あんた、機械いじり得意だろ。手伝ってきてくれないか。
俺はこの場から人を出さないようにしなきゃいけねえ。モンスター状態で町中歩かれちゃ厄介だ」
手伝ってこい、とは、また簡単に言ってくれる。
ドクオの背を叩き、ギコは広場を出ようとする化け物のもとへ駆けていった。
ζ(゚、゚;ζ「あっ……私、手伝ってくる」
それをデレが追いかける。
が、途中で戻ってくると、ポケットから出した紙をブーンの手に握らせた。
何かの役に立ちそうだったら使って、と告げ、今度こそギコの方へ走っていく。
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260 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/13(木) 18:38:43 ID:TW803YTwO
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( <●><●>)「……ブーンさん、それ──」グニ…
(;><)「あーっ! そのギョロ目はワカッテマス君ですね! やっと見付けたんです!」
ああ、また新たに声をかけてくる者が。
若い男が駆け寄ってくる。
彼を見たワカッテマスの全身が、動揺するように震えた。ぐにゃぐにゃゆらゆら。
ぱっと見、こわい。
(;<●><●>)「ビロード!? 何故ここに!」ブニ!
(;><)「ぽぽちゃんが『庶煩』の焼きおにぎり食べたいって言うから……
ってウゲエーッ! ギョロ目がいっぱいで普通に恐い! どれが本物の目ですか!?」
ビロード。ドジな男で、よく物を失くしたり壊したりするため、
しょっちゅう「ツンちゃんのお悩み相談室」に依頼をしてくる、お得意様である。
彼には身重の妻がいる筈だが、その人はここに見当たらない。
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262 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/13(木) 18:39:56 ID:TW803YTwO
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(;<●><●>)「ぽぽちゃんは!?」ブニョニョン!?
(;><)「おうちで待ってるんです……。
早く帰ってぽぽちゃんの無事を確かめたいんですけど、警備の人達に止められて……。
ワカッテマス君なら何とか出来ないかって探してたんです!」
(;<●><●>)「彼女の傍についていてあげなさいと、あれほど……。
……分かりました、あなたは異変がないようですし、通してもらうように話をつけましょう。
行きますよ」ブッニン
(*><)「ありがとうございます! さすがワカッテマス君なんです!」
ワカッテマスは、何か言いたげにブーンの握る紙を見遣ったが
ビロードの方を優先させたらしく、ぶよぶよ揺れながら去っていった。
モンスターまみれの広場の中、すぐに見えなくなる。
-
263 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/13(木) 18:41:50 ID:TW803YTwO
-
(*´_ゝ`)「おう、行ってしまわれた」
∬*´_ゝ`)「そろそろ、この騒ぎにも飽きてきたわね……。
早く何とかしてちょうだいね」
(*'∀`)「はい! 後でサインしてください!!」
∬*´_ゝ`)「これ解決出来たらね」
(*'∀`)「っしゃあ!! 行ってきます!」
ξ;゚⊿゚)ξ「待って、私も行く!」
川 ゚ -゚)「む!」
ドクオは既に、「おばけ」のことは忘れたようだ。
ツンを連れ、人混みを掻き分けるようにしてステージへ向かう。
それに付いていこうかブーンが迷っていると、
頻りに辺りを見渡していたクールが、一点に視線を定めた。
ブーンを抱え上げる。
川 ゚ -゚)「いたぞブーン!」
( ^ω^)「何が?」
川 ゚ -゚)「変態おばけだ! あっちに逃げた、追うぞ!」
# # #
-
264 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/13(木) 18:44:24 ID:TW803YTwO
-
从;゚∀从「──こ、壊すのは嫌だ! 嫌だ!!」
ステージに上がり、ドクオが自己紹介と共に手助けを申し出たところ。
予想外にも、ハインリッヒは必死の抵抗を見せた。
ドクオは直すと言っているのだが、彼女はどうしてだか、それを「壊す」と認識しているらしいのだ。
(;'A`)「壊すんじゃなくてだな、分解してエラーの原因を──」
从;゚∀从「壊さずにバラすなんて無理なんだよ!
細かい部品が複雑に絡んでるし……」
ξ;゚⊿゚)ξ「じゃあいっそ、それは壊す覚悟で」
从;゚∀从「駄目だ駄目だ駄目だあ!!
……実はこれ試作品で……世の中にこれ一個しかないんだ……。
本格的な製造は来月から……」
-
265 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/13(木) 18:45:33 ID:TW803YTwO
-
('A`)「それ壊したら、ホログラムは解除出来なくなるのか?」
从;゚∀从「いや、完全に壊れりゃ解除されるだろうけど」
ξ;゚⊿゚)ξ「ならもう、それには犠牲になってもらって」
从;>∀从「駄目だぁああ!!」
ゲーム機を抱きかかえ、ハインリッヒが蹲る。
ドクオとツンは顔を見合わせた。
この現状を前にして、何故そこまで渋るのだ。
ξ゚⊿゚)ξ「そんなに嫌がるからには、何か理由があるんでしょうね」
何度も首を縦に振るハインリッヒ。
やがて彼女は顔を上げ、愛おしそうにゲーム機を撫でて、言った。
从 ゚∀从「……私、ガラケー派なんだ」
ξ;゚д゚)ξ(;'A`)「は?」
だから何だ、と言うよりほかない。
-
266 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/13(木) 18:47:34 ID:TW803YTwO
-
从 ゚∀从「携帯はガラケーの方が好きなんだ」
('A`)「……ヴィップ国の奴がガラケー派とは珍しいな。
ニューソクならともかく、ヴィップじゃガラケーは色々不便なとこがあるんじゃないか?」
とりあえず、話を聞いてみる。
ツンはこういった方向には詳しくないようで、
口を噤んでドクオとハインリッヒの会話を眺めた。
从 ゚∀从「祖父ちゃんがニューソク人でな、ガラケー使ってて。
私が小さかった頃、初めてガラケーを触らせてもらって……感動したんだ。
こんなに小さいのに、色んな使い道があってさ」
('A`)「まあ……俺も生で見たことはないが、一時期のガラケーは大小問わず機能がぶち込まれてたらしいな」
从 ゚∀从「私が機械やゲームに興味持ったのは、あのときのガラケーが切っ掛けだった。
……私の原点なんだ……」
从 ゚∀从「初めて買った自分の携帯は当然ガラケーだ。
壊れるまで何年も何年も大事に使い続けた……」
-
267 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/13(木) 18:48:32 ID:TW803YTwO
-
从 ゚∀从「……その携帯が、これだ」
言って、ハインリッヒはゲーム機を顔の前へ掲げた。
よく見てみると、表面に小さな傷が付いていたり、塗装が一部薄くなっていたりして、
たしかに真新しさは感じられなかった。
('A`)「なるほど、自分の携帯をゲーム機に作り替えたのか」
从 ゚∀从「そうだよ……中身ごっそり入れ換えて、ゲームとして使えるように改造して、
やっと成功したのが3ヵ月前……」
从 ;∀从「──そんな思い出たっぷりのゲーム、壊して堪るかぁああ!!」
鬼、悪魔、と罵られる。
ドクオは頬を掻き、困り顔でツンを一瞥した。
ξ゚⊿゚)ξ「……ていうか、こんな状況になってる時点でもう『壊れてる』んじゃ……」
从 ;∀从「ち、違うもん! ちょっと調子悪いだけだもん!!」
('A`)「いいから貸せって、このままにもしておけねえだろ」
从 ;∀从「やだー!!」
(;'A`)「……」
ξ;゚⊿゚)ξ「……」
──どうしろと。
# # #
-
268 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/13(木) 18:49:31 ID:TW803YTwO
-
広場の片隅。
騒動に巻き込まれたのか、店主のいない酒売り場。
川 ^ -^)「見ぃいー付ーけたあー」
川;д川 ビクッ
( ^ω^)「お前の方がおばけみたいだお、クー」
そこに、「おばけ」は隠れていた。
クールが売り場の台を越え、女の前に降り立つ。
抱えられたままだったブーンが、ようやく下ろされた。
女はびくびくと震えていたが、逃げはしなかった。
完全にクールに怯えている。
-
269 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/13(木) 18:50:48 ID:TW803YTwO
-
川 ゚ -゚)「よう、痴女。こんなところに逃げてどうしようっていうんだ?」
川;д川「う、ううう……」
( ^ω^)「クー。お前、好みの女の子いじめて楽しんでるだけだろうお」
川 ゚ -゚)「バレたか」
嘆息し、ブーンは小さい拳でクールの頭を叩いた。
クールはこの女に対して怒りや憎しみを持っているわけではない。
からかい、少し追い詰めて、その反応を楽しんでいるだけだ。
川 ゚ -゚)「すまんすまん、話で聞いていたより普通の子だったから、つい」
( ^ω^)「まあ、たしかに昨日ほど恐くはないお」
川;д川 ビクビク
-
270 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/13(木) 18:52:12 ID:TW803YTwO
-
( ^ω^)「……お嬢さん、ちょっと僕とお話ししないかお?」
女は震えるばかりで答えない。
さて、どうしたものか。
困り果てたブーンは、ふと、デレから渡された紙のことを思い出した。
広げてみる。
( ^ω^)「──お」
今朝、ドクオに見せてもらった例の「絵」と同じだった。
ワカッテマスが受け取るとか言っていたが、結局渡されなかったらしい。
絵を眺めていると、女が反応を見せた。
描かれている男性を凝視している。
( ^ω^)「この絵、右側が変に白いおね」
川 ゚ -゚)「ああ、そこには本来、女性が描かれているんだ」
( ^ω^)「女の人が?」
ならば何故、それが消えているのか──
ブーンが首を傾げると、クールは一瞬だけ得意気に笑んだ。
-
271 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/13(木) 18:53:41 ID:TW803YTwO
-
川 ゚ -゚)「そりゃそうだろう、女はこっちにいるんだから」
クールが目の前で震える女を指差す。
そういうものか、とブーンが呟く。
そういうものなんだろ、とクールが返した。
川 ゚ -゚)「画集に載ってたこの絵には、彼女にそっくりな女が描かれていたぞ」
( ^ω^)「なるほど」
つまり、この女は絵の中から飛び出してきた存在であるわけだ。
有り得ない、とは思わない。
そういう段階はとうに過ぎているだろう。
何より彼女は、絵の男性に、明らかに興味を示している。
-
272 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/13(木) 18:56:47 ID:TW803YTwO
-
川 ゚ -゚)「『幸せになるようです』──この絵のタイトルだ」
( ^ω^)「幸せに……」
川 ゚ -゚)「作者はニューソクの絵本作家でな。
ただの一枚絵にも、何かしらの物語を詰め込むのが好きだったらしい。
この絵も例外ではない」
川 ゚ -゚)「夜にしか活動出来ない『おばけ』──この絵の女だな、
彼女は、夜明けにおばけの世界へ帰りそびれてしまい、
困っていたところを人間の男に助けられる。
昼でも真っ暗な森の中へ連れていってもらったんだ」
川 ゚ -゚)「まあ、惚れるな。当然のように」
( ^ω^)「ラブストーリーだお」
ブーン達の前にいる女は、クールの話を聞き顔を上げた。
思いがけない場所で馴染みのあるものに触れたような──そんな表情。
川 ゚ -゚)「何やかんやあって2人は結ばれ、『おばけ』は人間となり、幸せになる……というわけだ」
( ^ω^)「何故おばけが人間になれるんだお」
川 ゚ -゚)「言ったろ、作者は絵本作家だ。愛さえあれば大概どうにでもなるもんさ」
ブーンは頷きながら絵を下ろした。
はっとしたように、女がブーンの右手を握った。
ひどく冷たい。
-
273 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/13(木) 18:58:37 ID:TW803YTwO
-
川д川「……私のこと、好き……?」
昨夜と同じ質問。
声からは困惑が感じ取れた。
昨夜、この問い掛けに素直に答えたらとんでもないことになったのだった。
それをふまえて。
ブーンは、真剣な面持ちと声音で答えた。
( ^ω^)「だから僕、10歳以上は興味ないって」
川 ゚ -゚)「お前のブレないところ結構好きだぞ」
やはりそこは、どうしても譲れなかった。
-
274 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/13(木) 19:01:21 ID:TW803YTwO
-
川д川
( ^ω^)
川д川「……ころす……」
そしてやっぱり、こうなった。
女の手に力が篭る。
ブーンの右手が軋んだ。
川#д川「殺す! 殺す! 殺す!!」
クールが動く。が、ブーンは左手でクールを制した。
それからすぐに、先の絵を女に突きつける。
力が一瞬和らいだ隙に、彼女の手から自身の右手を抜き取った。
( ^ω^)「おばけさん、よく見るお。
この絵からは君がいなくなってるお。そりゃそうだおね、君は今ここにいるんだから」
川#д川「……」
( ^ω^)「でも、男の人は絵の中に残ったまま。これも当然だお。
彼は彼であって、僕ではないんだから」
そりゃあ多少は似ているけれど、と付け足す。
再び、女の空気に戸惑いが混じった。
-
275 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/13(木) 19:02:32 ID:TW803YTwO
-
( ^ω^)「君のことを愛して、幸せにしてくれるのは、僕ではないお。
この絵の中にいる、彼なんだお」
女の目が、絵とブーンを行き来する。
往復するごとに、敵意は弱まっていった。
彼女は少々強引で怒りやすいところがあるが、それ以外は、普通の乙女なのだ。
川д川「……」
( ^ω^)「どうして絵の中から出てきてしまったのかは分からないけど、
君がここにいるのは間違いなんだお。
このままここにいても、僕が君を好きになることはないし、幸せにもしてあげられない」
完全に大人しくなったと判断したようで、クールが警戒を解いた。
女の視線は、絵に固定されて、止まった。
-
276 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/13(木) 19:03:36 ID:TW803YTwO
-
( ^ω^)「──元の場所にお戻り。そしたら、きっと幸せになれるお」
それが最後。
瞬きした直後には、もう、目の前に誰もいなかった。
.
-
277 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/13(木) 19:05:09 ID:TW803YTwO
-
ブーンとクールが視線を合わせる。
ブーンが絵を自分の方へ引っくり返すと、
2人は自然と並んで、絵を見下ろした。
川 ゚ -゚)「うん。画集に載ってた通りになった」
絵には、2人の男女が描かれている。
頬を染める女。
にこやかに手を振る男。
題名通り、これから彼らに幸福が訪れそうな、温かい絵だった。
# # #
-
278 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/13(木) 19:08:19 ID:TW803YTwO
-
从 ;∀从「絶対やだあ、絶対壊させてやんねえからな……」
ハインリッヒはまだ粘っていた。
ドクオとツンがどれだけ説得しても、全く効果がない。
ξ゚⊿゚)ξ「このままじゃ騒ぎが大きくなってくだけだわ……」
ドクオの腹の底で、苛立ちが湧く。
早く何とかしないと、姉者からサインをもらえないではないか。とか。
息を吐き出し、ハインリッヒの肩を叩いた。
('A`)「……あんた、ゲームとガラケー、どっちが大事なんだ」
ぴくんとハインリッヒの肩が揺れた。
涙と鼻水で汚れた顔を持ち上げ、ドクオを見る。
从 ;∀从「どっちって……」
-
279 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/13(木) 19:09:45 ID:TW803YTwO
-
('A`)「ガラケーそのものが好きだってんなら、携帯会社に勤めりゃいい。
でもゲーム会社に入って、自分の大事な携帯いじくり回してでもゲーム作ったってことは、
そっちだってかなり好きなんだろ?」
从 ;∀从「あ、当たり前だろっ! でなきゃ何年も開発に命かけねえよ!」
('A`)「その大好きなゲームが今、人様に迷惑かけてんだ。
早く何とかしねえと、せっかく作った新作ゲームだってお蔵入りになっちまうぞ」
从 ;∀从「……」
これはだいぶ効いたようだ。
ハインリッヒの抵抗が収まり、でも、とか、だって、とかいう弱々しい言葉のみが落ちるようになった。
それでもまだ決心がつかぬらしく、ゲーム機を抱き締めたまま
涙の滲む瞳でドクオ達を睨みつけてくる。
-
280 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/13(木) 19:12:03 ID:TW803YTwO
-
──どれほどの間、そうしていたか。
突然、ハインリッヒの表情が緩んだ。
視線の先にツンがいる。
从 ;∀从「……あんた、昼に第5保育園にいたな」
ξ;゚⊿゚)ξ「えっ、わ、私? たしかにいたけど……」
反時計症。
ぽつりと呟いたハインリッヒは、逡巡の後、言った。
从 ;∀从「……反時計症について色々教えてくれるなら、ゲーム、渡す」
ξ;゚⊿゚)ξ「え?」
从 ;∀从「次回作のために反時計症を調べたいんだが、患者には直接訊きづらい……。
──あんたらが教えてくれるなら、代わりに、私も……このゲーム機、あんたらに渡す」
ドクオはツンを見下ろした。
ツンもドクオを見上げる。
互いに、同じ顔をしていただろう。
「それぐらいのことでいいのか」、と。
-
281 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/13(木) 19:13:10 ID:TW803YTwO
-
ツンはハインリッヒの片手をとり、ぎゅっと両手で握った。
ξ゚⊿゚)ξ「もちろん協力するわ。このドクオも反時計症だし、
何だって訊いてちょうだい。私達も何だって答えるから」
从 ;∀从
途端。
从 ゚∀从
ハインリッヒの目から涙が引っ込み、
从*゚∀从
薄暗いなかでも分かるほど顔色が明るくなり、
从*^∀从
実に嬉しそうな笑みへと表情が変わった。
-
282 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/13(木) 19:14:38 ID:TW803YTwO
-
从*゚∀从「やった! やった! 約束な! はい好きにしていいぞ!」
(;'A`)「えっ!? お、おう!?」
ξ;゚⊿゚)ξ「きゃっ」
ハインリッヒはゲーム機をドクオに投げつけると
ツンを抱え、ステージ上をくるくる回り始めた。
ドクオもツンも、唖然とするしかなかった。
从*^∀从「うっひひひ! 何か急に新しい構想が浮かんできたぞ!!
やべえよ絶対面白いゲームになる!!」クルクル
ξ;゙⊿゙)ξ「ま、まわる、め、まわる、」
-
283 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/13(木) 19:16:54 ID:TW803YTwO
-
(;'A`)「お、おい……いいのか、ゲーム機バラして」
从*^∀从「粉々にするんじゃないなら、好きにしろってば!
やっぱ過去の思い出にしがみついてねえで、前を向かねえとな!
開発に何年も注ぎ込んだんだ、ゲームが世に出なくなるよか、よっぽどマシさ!」
ドクオは脱力した。
何だそれは、必死に説得した20分間を返せと叫びたかった。
なんなら放り投げて家に帰って寝たかった。
が、ここまで来て放るわけにもいかない。
ハインリッヒから工具を借りて、まずはゲーム機を引っくり返し、
開けられる場所を探した。
下部のカバーが簡単に外せそうだった。
ドクオは話でしか知らないが、「ガラケー」は大体ここにバッテリーがあるという。
ただ、これは既に携帯電話からゲーム機へと変わってしまっている。
中にあるのはバッテリーではなく、ゲームに必要な部品ばかりだろう。
-
284 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/13(木) 19:18:09 ID:TW803YTwO
-
慎重にカバーを外す。
さあここからが本番だ──と意気込んだドクオ、だったが。
(;'A`)「あ?」
予想外の光景があった。
(;'A`)「また、紙だ……」
一瞬、カバーが二重になっているのかと思った。
違う。
折り畳まれた紙が、ぽんと置かれていたのだ。
-
285 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/13(木) 19:20:45 ID:TW803YTwO
-
昨夜、時計塔の機械室でのことが脳裏を過ぎる。
あのときも時計の内部に紙──絵──が挟まっていて。
それが、時計の動きを邪魔していた。
ゲーム機から紙を取り出す。
ぱっと見、各部品に異常はない。
ドクオはカバーを閉め直した。
ハインリッヒを呼び、ゲーム機を手渡す。
いくつかボタンを押したかと思えば、彼女がわっと声をあげた。
从*゚∀从「──おお! 動く! 直った! すげえなあんた!!」
ひとしきりはしゃいだハインリッヒは、マイクを握ると
ゲーム機が直った旨を伝え、1人ずつホログラムを解除していった。
広場に歓声が広がる。
ほとんどの人は、ドクオの手柄であるとは知らないだろう。
いや、手柄と呼べるかすら怪しい。
ドクオがやったことは、開けて、取って、閉めただけだ。
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286 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/13(木) 19:24:26 ID:TW803YTwO
-
ξ;-⊿゚)ξ「──早かったのね」
ハインリッヒの回転で目を回したらしきツンが、ふらつきながらドクオのもとへ来て、言った。
ドクオは今あったことを丸ごと隠さず話し、回収した紙を見せた。
ツンが紙を広げる。
ξ゚⊿゚)ξ「……絵だわ」
('A`)「やっぱりか」
紙には、得体の知れぬ生き物と、少女の姿があった。
4つの耳と角の生えた頭、全てを拒絶するように顔を手で覆う、何者か。
その生き物に果実を差し出す少女。
どこか寂しげな絵。
ξ;゚⊿゚)ξ「『嘘のバケモノ』……」
ツンが目を丸くする。
彼女の発言は、ドクオには理解が及ばない。
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287 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/13(木) 19:28:18 ID:TW803YTwO
-
('A`)「何だそれ?」
ξ゚⊿゚)ξ「絵のタイトル。クーが見てた画集に載ってた。
あんたが昨日取った絵があるでしょ、あれの隣のページでこの絵が紹介されてたの」
ξ゚⊿゚)ξ「突如化け物になってしまった人間と、
目が見えないがために、彼を普通の人間と思い優しく接する少女の絵──」
('A`)「……聞き覚えあんな、その話」
ξ゚⊿゚)ξ「ええ……何年か前に流石一座が演じた話よ。
あれを描いた絵なの」
ξ゚⊿゚)ξ「だから、『化け物』のモデルは兄者で、少女は妹者ちゃん。
舞台の人気も相俟って、かなり売れたのよね、この絵」
-
288 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/13(木) 19:29:24 ID:TW803YTwO
-
唸り、ドクオは頭を掻いた。
「突如化け物に」。
今回の騒ぎとほぼ一緒だ。
ホログラムという「偽物」ではあるが、多くの人がいきなり化け物の姿に変えられてしまった。
昨夜と今夜。
どちらも、事件に「絵」が関わっている。
もしかしたら。
明日もまた、何かが。
騒ぎが収束していく広場を見遣り、ツンとドクオは眉根を寄せた。
# # #
-
289 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/13(木) 19:31:38 ID:TW803YTwO
-
( <●><●>)「……」
手を見下ろし、ワカッテマスは元通りになったのを確認した。
広場にいる人々も、次々に人間の姿へ戻っていく。
ステージ上ではハインリッヒが何度も頭を下げていた。
携帯電話が鳴る。ビロードからだった。
『無事に帰れたんです、ぽぽちゃんも特に何もなかったみたいでした!
ワカッテマス君、ありがとうございました!』
( <●><●>)「なら良かったです。……祭の間は、あまり不用意に出歩かない方がいいと思います。
あなたも今朝の号外を見たでしょう、変わらず祭が続行されるとはいっても──
何者かが、何かしらの企みをしているようですし」
『でも、ワカッテマス君が警備してくれてるんだから、きっと大丈夫なんです!』
(;<●><●>)「あのねえビロード──」
『ワカッテマス君がいるってだけで、僕もぽぽちゃんも、安心出来るんですよ』
( <●><●>)「、……」
-
290 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/13(木) 19:34:47 ID:TW803YTwO
-
『あ、でも頑張りすぎるのも駄目ですよ。
それじゃあワカッテマス君、おやすみなさい』
おやすみなさいと返すと、通話が切れた。
ワカッテマスは携帯電話をポケットにしまい、振り返る。
胸中に渦巻くのは、焦り、苛立ち、──罪悪感。
(;<●><●>)「……くそっ!」
言い慣れない、乱暴な呟きを漏らす。
(;<●><●>)「昨日といい今日といい──『予定』と大分違うじゃありませんか。
誰がこんな騒ぎにしろと言ったんです!
本来の目的から外れてしまってるじゃないか、……畜生!」
どこへともつかぬ悪態を小声でつき、広場の中を進む。
ステージの上、ツンが絵を見下ろしているのに気付き、ワカッテマスは舌打ちした。
# # #
-
291 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/13(木) 19:36:50 ID:TW803YTwO
-
(,,゚Д゚)「おお、今日もあいつが何とかしたか。良かった良かった」
ホログラムが解除されていく人々と、ステージ上のドクオ達を眺め
ギコは満足そうに頷いた。
何が直接の原因だったかは知らないが、昨日に引き続き、無事に解決したようだ。
ζ(゚ー゚;ζ「良かったあ……。あ、私、ツンちゃん達のとこ行ってきます」
(,,゚Д゚)「おう」
デレが小走りで戻っていく。
酔っ払いとぶつかっているのを見て、ギコは呆れ気味に笑った。
──さすがに、今夜の酒盛りはもう終了だろう。
あと少しで見回りを交代する時間だったので、自分も一杯引っ掛けたかったのだが。
致し方あるまい。
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292 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/13(木) 19:38:18 ID:TW803YTwO
-
怪我人が出なかったか確かめるため、人混みの中を進んでいく。
屋台の並びが途切れたところの、ごみ捨て場。
そこに若い女性が倒れていた。
(;,゚Д゚)「あ……おい! あんた、大丈夫か!?」
(;* ー )「う……ん……」
女性の肩が、かたかたと震えている。
薄着一枚。これでは、ひどく寒かろう。
ギコは上着を脱ぎ、彼女に着せてやった。
いくらか暖まったのか、ほう、と息をつく。
(;* ー )「すみません……着の身着のままで病院から抜け出したもので、
寒さと空腹にやられてしまって……」
(;,゚Д゚)「病院? あんた病人か? 何だってこんなとこに──」
女性が身を起こす。
そこで初めて、ギコは彼女の顔をはっきり視認した。
-
293 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/13(木) 19:40:01 ID:TW803YTwO
-
(,,゚Д゚)(……天使……)
もちろん比喩である。
その瞬間のギコの目に映った彼女は、儚くて美しくて──
つまりは天使と見紛うほどには、彼の好みのタイプだった。
(;*゚ー゚)「あ……あのっ、女の子を見ませんでしたか!?
傷だらけの子……!」
女性がギコの手を握り、詰め寄る。
近い。天使が近い。
手のひらの柔らかさと温かさ、顔にかかる吐息にばかり意識が行って、彼女の声はあまり耳に入らなかった。
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294 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/13(木) 19:40:53 ID:TW803YTwO
-
(;*゚ー゚)「私と同じ病院にいたんですけど、昨夜の騒ぎのときにいなくなっちゃって──
その子を探すために病院を抜けてきたんです!
でぃちゃんっていう子、知りませんか!?」
# # #
-
295 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/13(木) 19:43:08 ID:TW803YTwO
-
シナーは目を覚ました。
真っ暗な倉庫の中、携帯電話のライトがちかちか光っている。
不在着信の知らせ。
履歴を見ると、ニダーから何度か電話があった。
かけ直す。
3コールで相手が出た。
( `ハ´)「遅い」
『3コールで文句言われるニダ!?
あと何回かけても電話出なかった奴に言われたくないニダ!』
( `ハ´)「何の用アル」
『や、広場が騒ぎになってたからシナーは大丈夫かと──だいぶ前に治まったみたいだけど。
そういえば、寝床は見付けたニカ?』
( `ハ´)「いいとこを見付けたアルヨ」
『それは良か──』
実のある話は期待できそうにない。
通話を切った。
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296 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/03/13(木) 19:45:54 ID:TW803YTwO
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ふと、でぃのことを思い出した。
ランプを手繰り寄せ、スイッチを入れる。
彼女が繋がれている柱へ、僅かに光が届いた。
(#゚;;-゚)、
( `ハ´)「……あー……」
大きくなっていた。
十代半ばか、そこら辺。
携帯電話で時間を確認すると、日付が変わって数分経っていた。
毛布を被っている。どことなく照れ臭そうだ。
そういえばセーター一枚しか身につけていなかったな、と思い返し、シナーは溜め息をついた。
夜が明けたら、何か適当な服を買ってこなければ。
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