2012年芸術の秋ラノベ祭りのようです
( ^ω^)時計の国とラノベ祭のようです
  その1
    サムネ有り サムネ無し



3 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/21(水) 18:53:53 ID:ksyKNxfAO

 寂しがりの魔法使いが、ある日、魔法の国を飛び出していってしまいました。

 しかし、よその国に行こうにも、魔法使いは世界中の嫌われ者。
 ひっそり森の中で暮らすことにしました。

 けれどもこの魔法使いは寂しがりでしたので、やがて孤独に耐えきれなくなり、
 人を招くため、森の西側に大きな建物を作りました。

 はてさて、どうしたら人が来てくれるでしょうか。
 温かい飲み物を飲みながら、魔法使いは考えます。



 黒い飲み物(コーヒーというそうです)にミルクを入れると、黒は茶色へ変わりました。
 ミルクを入れれば入れるほど、茶色は柔らかな色へ。
 それを見つめ、思いました。

('、`*川(絵の具みたい)

 魔法使いは絵を集めるのが大好きでした。
 とりあえず、たくさんの絵画を建物の中に飾ってみます。

 そうすると、まるで美術館のようになりましたから、
 魔法使いは展覧会を開くことにいたしました。
 これなら人が来てくれます。

4 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/21(水) 18:55:59 ID:ksyKNxfAO

 しかし美術館と呼ぶには、絵が足りません。
 魔法使いは自分で絵を描き、それを飾っていきました。

('、`*川「これならきっと、たくさんの人が楽しんでくれる。
     そうだ、お茶とお菓子も用意しないと」

 そうして魔法使いは、自分が魔法使いであることを隠し、美術館を開きました。

 一日目は、屋敷の中がいっぱいになるくらいのお客様が来てくれました。
 お茶とお菓子を振る舞い、魔法使いはにこにことお客様を眺めます。


「何だ、気持ち悪い絵だなあ」
「このお茶、紫色だ。捨ててしまおう」
「お菓子も真っ青。食べたくないわ」


 絵もお茶もお菓子も、魔法の国では普通のものでしたが、
 この国の人々には合いませんでした。

5 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/21(水) 18:57:24 ID:ksyKNxfAO


 二日目、三日目、一週間、一月。
 日に日にお客様は減っていき、やがて、誰も美術館に来なくなりました。

('ー`*川「明日は来てくれるかなあ。もっと美味しいお菓子を用意しておこう」

 にこにこ、魔法使いはお客様を待ち続けます。
 みんなに気持ち悪がられているなんて、これっぽっちも知りませんでした。



    「明日は来てくれるかなあ。明日は──」



# # #

6 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/21(水) 18:58:40 ID:ksyKNxfAO


 この世はあまりにも虚しい。


('A`)「……縄は、これで大丈夫だな」

 街の外れの、今や人の出入りがないビルの中。
 そこで、彼はぽつりと呟いた。

('A`)「うっし。……吊るか」

 椅子の上に立ち、目の前にぶら下がっている、縄の輪を見つめる。
 これに首を引っ掛けて椅子を蹴り倒せば、それで終わる。
 後は惨めに揺れるだけ。

 縄を見たまま、ぼうっと、過去の記憶を巡らせる。

 関わってきた人々の顔。
 住んでいた家。
 成功したこと。失敗したこと。

('A`)

 脳内で繰り広げられていた映像が崩れる。
 風景が歪み、境界線が曖昧になり、空は欠け、色が失せていく。
 大して仲も良くなかった人間の顔が崩れて、黒目が液体になって流れ落ちた。



8 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/21(水) 19:00:30 ID:ksyKNxfAO

 身震いする。

('A`)(早く死のう)

 別に、死なねばならぬ程の事態に追い詰められたわけでもない。

 ただ彼は、人より陰気な性格をしていた。
 ちょっとしたことで気が滅入ってしまう。

 仕事が無くなったのも、家賃が払えないために家を追い出されたのも、
 その気になれば、いくらでも挽回出来ることだった。
 しかし彼は、いつものネガティブさを存分に発揮して、あっさり死を決意したのであった。

 帽子を深く被り、視界を狭める。
 一度深呼吸をし、彼は縄を掴むと首元へ輪を掛けた。
 椅子を蹴る。

 喉を襲う圧迫感。
 苦しいのか苦しくないのかは分からなかった。
 頭の中で思考が駆け回っていたような気がするし、何も思い浮かんでいなかったような気もする。

 何も分からない。
 ただ、生暖かい感触が頬をなぞっていったので、涙が出たのだということは感覚的に悟っていた。

9 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/21(水) 19:01:59 ID:ksyKNxfAO

(;A;)(ああ──)

 意識が切れそうになった──その瞬間だった。

 急に圧迫感が消えた。
 体が持ち上がる。
 わけが分からぬまま、後方に体を引かれて。

 ずるり、帽子が外れ、視界が開けた。

(;A;)「……え?」


川 ゚ -゚)「犬を探しに来てみれば、とんでもないものを拾ってしまったな」


 事態を理解するのに、1分は掛かっただろうか。

 立て直されたのであろう椅子の上で、彼は、見知らぬ女性に横抱きにされていた。
 自殺は失敗したのだ。




10 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/21(水) 19:04:37 ID:ksyKNxfAO

(;A;)「あ、あう、」

川 ゚ -゚)「まったく……私が来ていなければどうなっていたか」

      「クー! わんこ捕まえたお!」

川 ゚ -゚)「そうか、今行く!」

 別の部屋から男の声がした。
 女性は声に答えて慎重に椅子を下りる。
 そっと彼を床に座らせて、息をついた。

川 ゚ -゚)「何があったかは知らんが、悩みでもあるなら、死ぬより先に相談してみたらどうだ」

(;A;)「相談……」

川 ゚ -゚)「ああ」

 彼女の口元が、ゆるりと動く。

川 ゚ー゚)「我ら、『ツンちゃんのお悩み相談室』。是非とも御利用くださいませ」


 さて。
 彼は前述したように、ちょっとしたことで気が滅入ってしまう人間である。

 それでいて──ちょっとしたことですぐに元気を取り戻す人間でもあった。

11 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/21(水) 19:05:23 ID:ksyKNxfAO

(;A;)

 一度はモノクロになった世界が、まるで、天才画家に着色されたかのように色を取り戻す。

(;∀;)

 彼は思う。

 「こんなに綺麗な人は初めて見た!」。
 「人生まだまだ捨てたもんじゃねえや!」。
 「世界って何て素晴らしいんだ!」。

川 ゚ー゚)「分かったか?」

(;∀;)「はい!!」

 こうして彼は死ぬのをやめた。
 もはや笑い話である。





# # #

12 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/21(水) 19:06:16 ID:ksyKNxfAO





 今日も世界には4つの国があって。

 今日も4つの国は世界を共有する。





( ^ω^)時計の国とラノベ祭のようです


.

14 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/21(水) 19:08:30 ID:ksyKNxfAO

( ^ω^)「──んがっ」

 ブーンは目を覚まし、しばし、身じろぎせずに辺りを確認した。
 暗い。
 鉄の匂い。

 息苦しい。
 体のあちこちが痛い。
 重い。

 状況を理解し、ブーンは顔の上に乗っているガラクタをどかした。
 がらがらがしゃがしゃ、けたたましい音をたてながらガラクタが落ちていく。

 ようやく視界が開けた。
 晴天。太陽はてっぺんに。

( ^ω^)「ドクオ」

 ひょこりと上半身を起こす。
 左下の方で、少年が「おう」と声をあげた。
 少年の手には、おもちゃのような、奇妙なものがあった。

('A`)「起きたか」

( ^ω^)「君は良くない。本当に良くない」



15 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/21(水) 19:10:48 ID:ksyKNxfAO

('A`)「いやあ、ブーン君がゴミ山で気持ち良さそうに昼寝してるもんだからねえ、
    人がいくら声をかけても起きないもんだからねえ、
    こりゃあブーン君ったらもうゴミと一体化したんだなあと思ったもんだからねえ、
    ならいっそゴミに埋もれさせてあげようと、こう、ね」

 手に持った「奇妙なもの」──筒に手足を付けたような──を顔の前で動かしながら、
 少年は嫌みたらしい声色で言った。

 彼はドクオという。ブーンよりも10歳上、35歳だ。
 今は2人とも10代半ばほどの姿になっているが。
 詳しくは後程。

( ^ω^)「それは何だお。その、小さなドラム缶みたいな」

('∀`)「よくぞ訊いてくれました! ドクオお手製、『歯車王』!
    お前が起きるのを待つ間、そこら辺のガラクタで作ってみた」

|::━◎┥

( ^ω^)「相変わらず器用でいらっしゃって……」

('∀`)「はっはー。
    ……ま、この年齢の手は、ちと未熟だからな。本来の力の8割しか出せねえや」

 ブーンはゴミの山から飛び下りて、服を払った。
 すっかり汚れてしまった。座ったままのドクオを睨む。

17 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/21(水) 19:12:44 ID:ksyKNxfAO

( ^ω^)「で、僕に何ぞ用でもあるのかお?」

('A`)「おうよ。ツンに、ブーン呼んでこいって言われてな。
    やっと見付けたかと思えば、お前はすやすやと──」

( ^ω^)「ああはいはい、分かりましたお」

 「歯車王」とやらを爪先で小突いてからブーンは歩き出した。
 後ろでドクオが嫌味を言うのが聞こえたが、無視する。

 歩きながら左へ視線をやった。
 遠目に、建物が密集しているのが見える。

 その中でひときわ目立つ建造物があった。
 時計塔だ。

 てっぺんの時計部分は正面を向いている。
 12時を指した瞬間、鐘が鳴った。

( ^ω^)「相変わらず大きいおー。さすが『時計の国』……」

 しばらく立ち止まったまま時計塔を眺め、秒針が一周した頃、再び足を前へ出した。



# # #

18 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/21(水) 19:14:46 ID:ksyKNxfAO


( ^ω^)「はあい、ツンちゃん──何だ、今日は年増かお」

ξ#゚听)ξ「やって来て早々失礼な奴ね。
      10代のどこが年増なわけ?」

( ^ω^)「11歳以上は年増だお」

 「ツンちゃんのお悩み相談室」。
 高層マンションの20階に、この部屋はある。

 ここは、ブーンの目の前で仁王立ちしている少女──ツンの職場兼、住まいだ。
 居間や応接室、寝室に書斎、ツンの私室に加えて、同居人達の部屋が2つほど。
 ブーンが住む家より、よっぽど部屋数が多い。

ξ゚听)ξ「ほら、来なさい」

 ツンがブーンの頬を引っ張る。
 そのまま歩き出すので、ブーンは転ばぬように気を付けながら続いた。

 玄関から廊下に靴を履いたまま上がり、応接間に入る。
 ツンの仕事は主にこの部屋で行われていた。
 仕事と言っても、要は何でも屋で、客の悩みを解決するだけである。

19 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/21(水) 19:16:05 ID:ksyKNxfAO

ζ(゚ー゚*ζ「ブーン君、こんにちは」

( ^ω^)「やあデレ……ああ、デレも今日は年増……」

 応接間には既に人がいた。
 ソファに座り、お茶を飲んでいる少女。
 ツンやブーンと同じ年頃に見える。

 彼女はデレ。
 相談室の職員にしてツンの姉、同居人その1である。

 デレは腰を上げると、食器が収まっている戸棚へ歩いていった。
 ブーンにもお茶を入れてくれようとしたのだろう。
 ブーンは赤いソファに腰掛け、デレに声をかけた。

( ^ω^)「お腹が空いたお」

ζ(゚ー゚*ζ「あ、じゃあ、ご飯持ってこようか? ちょっと時間かかるけど」

( ^ω^)「ぜひ」

21 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/21(水) 19:18:36 ID:ksyKNxfAO

ξ;--)ξ「図々しいったらないわね」

 ツンに後ろから頭を叩かれた。
 文句を言おうと振り返り、ふと気付く。

( ^ω^)「君達、今日はお揃いの服だね」

ξ゚ー゚)ξ「あ、分かった?
      制服よ。『ニューソク』では、10代の子達が学校に行くときに着るんですって」

( ^ω^)「10代ねえ……君達、20代だろうがお」

ζ(゚ー゚*ζ「今日の体は10代だもの」

 ツンとデレは、ピンク色の上着に赤いスカートという出で立ちだった。
 東の国「ニューソク」からわざわざ取り寄せたのだという。
 よく見れば、靴までお揃いだ。



22 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/21(水) 19:20:06 ID:ksyKNxfAO

ξ*゚听)ξ「色々種類があって、これはブレザー。
      他にもセーラー服っていうのがあってね……次にまた10代の姿になったら着るわ」

( ^ω^)「今度は制服にハマったのかお。この間はドレスにハマっていたけれど」

 ツン達から視線を外し、ブーンは室内をぐるりと見渡した。
 こざっぱりした部屋だ。
 応接用のソファ、テーブル、戸棚にティーセット。

 隅の机にはツン達の写真がいくつか飾られている。
 写っている彼女達の年齢はどれもばらばらだが、それらは全て、ごく最近撮られたものである。

 向かいのソファにツンが座った。
 デレがブーンとツンの前にティーカップを置いてから、部屋を出ていく。

( ^ω^)「で、何の用だお」

 こうしてツンに呼び出されるのは、いつものことだ。
 ブーンは定職に就いていないので「お悩み相談」の手伝いをちょくちょくやらされる。

23 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/21(水) 19:21:29 ID:ksyKNxfAO

ξ゚听)ξ「そろそろ、お祭りがあるでしょ」

( ^ω^)「ラノベ祭?」

ξ゚听)ξ「それ」

 ツンはどこからか取り出した地図をテーブルの上に広げた。

 世界地図。
 中央に大陸が一つ。
 大陸の真ん中に巨大な森があり、それを囲むような形で4つの国が隣接している。

 東の国は「ニューソク」、南が「ヴィップ」、
 西は「ソウサク」。
 そして、北の国には「シタラバニア」と記されていた。

 シタラバニアは国境にまで森が食い込んでおり、
 他の国に比べると、国土が非常に小さかった。

 ツンが、西の国「ソウサク」を指差す。
 今ブーン達が住んでいる国こそが、このソウサクだ。

24 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/21(水) 19:23:16 ID:ksyKNxfAO

ξ゚听)ξ「今年のラノベ祭は、うちの国でやるじゃない」

( ^ω^)「そうだおね。国王様も張り切っていらっしゃる」

 ラノベ祭とは、年に一度、ソウサク、ヴィップ、ニューソクの3ヵ国が合同で行う大きな祭である。
 具体的な目的はなく、ただ国民同士で一緒に騒いで仲良くやりましょう、というものだ。

 開催地となる国は毎年違う。
 去年はヴィップ、一昨年はニューソク、その前はヴィップ、さらにその前はニューソク、そのまた前がソウサク。
 ヴィップやニューソクに比べると、ソウサクで開かれる頻度は低い。

 そのため、5年ぶりに主催に選ばれたということで、ソウサク全体が熱気に包まれていた。

ξ゚听)ξ「5年ぶりってことで、かなり力を入れると思うのよ。
      来場者の数も前年より増える見込みだわ。
      それはいいことなんだけど、ただ、そうなると──」

( ^ω^)「警備面での不安が生じる」

ξ゚听)ξ「その通り」

 ツンはブレザーとやらのポケットから、一枚の紙を出した。
 その紙に書かれたデータを読み上げる。

26 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/21(水) 19:25:55 ID:ksyKNxfAO

ξ゚听)ξ「去年、ラノベ祭の最中に行方不明になったソウサク人は3人。一昨年は2人。一昨昨年も2人……。
      ──全員、『反時計症』を患ってたらしいわ。
      十中八九、人攫いの仕業ね」

( ^ω^)「そりゃあ恐ろしい話で」

ξ゚听)ξ「このままだと、今年は更に被害者が増えると思うの。
      反時計症の人間はかなり高値で取引されるからね、
      今年の祭は、そういう輩にとってはチャンスだわ」

( ^ω^)「健康で可愛い女の子を買うってのは分かるけど……反時計症ねえ」

ξ゚听)ξ「他国の人間には珍しいのよ」


 ──反時計症。

 この国特有の風土病のようなものだ。
 国民の3分の1が患っていると聞く。

27 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/21(水) 19:27:13 ID:ksyKNxfAO

 簡単に言うなれば、「日によって年齢が変わってしまう」という症状である。
 たとえば実年齢は20歳の人が、昨日は15歳の姿になり、今日は5歳になり、明日は10歳になるような。

 実年齢より上の姿にはならない。
 変わるのは体だけで、記憶などはそのまま。
 まるで体の時間だけが巻き戻るかのよう。だから、反時計。

 病気と言うよりかは、「そういう体質の人間がたまに生まれる」というのが大体の国民の認識であった。

( ^ω^)「じゃあツンも気を付けないと」

ξ゚听)ξ「あんたもね」

 何を隠そう、ブーンとツンも反時計症を患っている。
 今日は互いに10代の姿になっているが、彼らの実年齢は25歳。
 昨日の内藤は10歳かそこらだった。

 先のデレは本当は27歳だし、ドクオは35歳だ。

 それと──


川 ゚ -゚)「おいツン、お前ノーパンでブーンの相手してるのか」


 ──いきなり下着姿で部屋に飛び込んできた、この女だって、反時計症患者である。

28 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/21(水) 19:29:02 ID:ksyKNxfAO

ξ;゚听)ξ「ちょっ」

( ^ω^)「こんにちは、クー」

川 ゚ -゚)「やあ、ブーン」

 青い下着を身につけ、左手でパンツを振り回している女。
 クール。彼女の名前だが、ほとんどの者は「クー」と呼ぶ。
 ツンの同居人その2。



 ブーンはクールをまじまじと眺めてから、ツンに顔を向けた。

( ^ω^)「僕が来るまで何してたんだお。何っていうか、ナニっていうか」

ξ;///)ξ「いやっ、クーが一緒にお風呂に入ろうって言ってきただけなの!!
      私は朝にシャワー浴びたから入らないって言ったのに、クーが無理矢理脱がしてきてっ、」

川 ゚ -゚)「生憎、パンツを下ろしたところでブーンが来たんだよ。
     君が来るといつもツンは私を放り出してしまう。悲しいな」

 ぺしゃり、ツンの顔面にパンツが投げつけられる。
 ツンは慌ててソファの裏に回り、ごそごそと、恐らくパンツを穿き直した。

 ブーンには興味をそそられない光景なので、再びクールへ振り返る。

30 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/21(水) 19:32:11 ID:ksyKNxfAO

( ^ω^)「クー、今日は20歳くらいかお?」

川 ゚ -゚)「そうだな。実年齢と大差ない」

 クールは20歳で、この「お悩み相談室」の中では最年少ということになる。
 だが、誰よりも仕事は出来る。

 以前、ブーンと一緒に迷い犬の捜索に駆り出されたときは逸早く犬の逃走先を特定したし、
 そこで自殺しようとしていたドクオを発見し、助けた。
 そのままドクオを職員として連れ帰ったほどの仕事ぶりである。

 これで女好きでなければ、どこに出しても恥ずかしくない人間なのだが。

( ^ω^)「君達が10歳以下の姿でべたべたしてるのは、見てて楽しいんだけどね。
       その姿だと非生産極まるお」

川 ゚ -゚)「小さい女の子にしか興味を持てない君には言われたくないな」

ξ;*///)ξ「とにかく!!」

( ^ω^)「あ、穿き終わったかお」

川 ゚ -゚)「穿き終わったな」

ξ;*///)ξ「来週のラノベ祭!! 私達も会場で不審者の出入りを監視することになったから、
      あんたも手伝って!」

31 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/21(水) 19:33:07 ID:ksyKNxfAO

 ソファの背もたれを飛び越えたツンが、そのままソファの上に立ち、
 ブーンへと手紙を突きつけた。

 白地に銀糸の装飾。
 国王直々に送られてくる手紙だ。

 今どき手紙など滅多に見かけないが、
 ツンが「まずは手紙をもらわないことには話を聞く気もしない」という妙なポリシーを持っているので仕方がない。

( ^ω^)「お金は?」

ξ;*゚听)ξ「は、払うわよ。規模が規模だからね、上からの報酬もかなりのものよ」

 ならば断る理由はない。
 ブーンは満足げに笑って、頷いた。



# # #

33 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/21(水) 19:36:16 ID:ksyKNxfAO


ミセ*゚ー゚)リ 〜♪

 ミセリは、絵の具のチューブを手に取った。
 赤い絵の具をパレットに乗せて、筆で水を含ませる。
 絵描きをやっているだけあって、その動きは流れるようだった。



ミセ*゚ー゚)リ「もうちょっとかなあ」

 完成間近の絵を見下ろし、微笑む。
 まだまだ描きたい絵はたくさんある。早く次の絵にも取り掛かりたい。

 ──今年のラノベ祭のテーマは「絵」。
 世界中の画家達に、多くの仕事が与えられている。
 ミセリもその一人であった。

ミセ*^ー^)リ「ふふ……みんな、見てくれるかな」



# # #

34 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/21(水) 19:38:25 ID:ksyKNxfAO


 熱で、ぼうっとしていた。
 普段からぼうっとしてはいるのだが、その日は特別ふわふわしていた。

川 ゚ 々゚)「んーんーふ……」

 祭までには治るだろうか。
 こんなタイミングで風邪を引くなんて、ついてない。
 せっかく今年の祭にはミセリの絵が出展されるのに。

 額に貼ったシートに触れる。
 ニューソク国から買った、解熱効果のある「薬」だそうだ。
 貼ったばかりはひんやりして気持ち良かったが、もう、ぬるくなってしまった。

 しかし、貼り替えるためだけに母や召し使いを呼び付けるのは面倒臭い。
 握ったままのクレヨンを床に擦り付ける。

 将来は画家になりたい。
 ミセリという画家のように、綺麗な絵を描きたい。

 ミセリの絵は、赤色が綺麗なのだ。

 たとえば彼女が描く、夕焼けの絵。
 目の前に出されて、何の色が使われているかと問われれば、「赤色」と一言で答えられる。
 それでもその実、彼女の絵には何色もの「赤色」がある。

 複雑なものが単純な美しさを生み出す奇跡。
 その色が、目を、心を引き付けて止まない。

35 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/21(水) 19:39:32 ID:ksyKNxfAO

川*゚ 々゚)「ふふふー」

 どうしてあんなに綺麗なのか、ずっと考えていた。
 最近、やっと気付いた。

 彼女の赤は、血に似ている。

川*^ 々^)

 赤いクレヨンを転がす。
 壁にぶら下げている人形達の中から目についたものを取り、
 ぐしゃぐしゃに塗りたくられた赤色の上に、人形を置いた。
 さらに人形に電車の模型を乗せる。

川 ゚ 々゚)「……ちがうなあ」

 ああ、駄目だ。
 これは、ただの赤色だ。
 血の色ではない。

 後ろの本棚に向き直る。
 ここに収まっている本には、血が映った写真や絵がたくさん載っている。
 参考にして描き直そう。

36 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/21(水) 19:41:44 ID:ksyKNxfAO

川 ゚ 々゚)「……?」

 ふと。
 一番下の真ん中に、黒い本を見付けた。
 『呪い』と『愛とは』の本に挟まれているそれには、タイトルがない。

 買ってもらった覚えのない本だ。
 具合を悪くしている自分のために、父か誰かが買ってきて、こっそり置いていってくれたのだろうか。

 本を抜き取り、そっと開く。

 すると、もやもや、黒い影のようなものがページの中から現れた。
 それは徐々に人の形になって、


【+  】ゞ゚)「──こんにちは、風邪引きのお嬢さん」

川 ゚ 々゚)「ふあ」

【+  】ゞ゚)「お名前は?」

37 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/21(水) 19:42:24 ID:ksyKNxfAO

 ──熱で、ぼうっとしていた。
 普段からぼうっとしてはいるのだが、その日は特別ふわふわしていた。

 だから、笑って、答えた。


川*^ 々^)「くるう」







 ソウサク国の王家が住まう屋敷の、子供部屋でのことだった。



# # #

38 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/21(水) 19:44:59 ID:ksyKNxfAO


 死ねばいい。
 自分など死ねばいい。
 死ね、死ね。

( ^ν^)「……はあ」

 やっぱり死にたくない。

 ニュッはぐったりと机に伏せて、溜め息をついた。

 世界地図で言えば東、「料理の国」ニューソク。
 国内の首都郊外にある安普請のアパートに、彼は住んでいた。

( ^ν^)「だりい」

 誰へ向けるでもなく呟く。
 参った。

 たしかに金が欲しいとは言った。
 言ったが──

( ^ν^)(……誘拐ってなあ)

 まさか、誘拐に加担する羽目になろうとは。

39 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/21(水) 19:48:33 ID:ksyKNxfAO

 ニュッは机上の紙に手を伸ばした。
 ずりずり、眼前へと引き寄せる。
 今回の計画のメモ。うんざりしながら、改めて読み直す。

 実行は一週間後。
 場所はソウサク国。
 ニューソクとは正反対の、西に位置する国だ。

 誘拐の対象は反時計症のソウサク国民。
 目的は──言うまでもなく、「売買」である。


 ソウサクの人間だけが発症する反時計症。

 感染はしない。
 日によって外見年齢が変化することさえ除けば、普通と変わらぬ健康体。
 つまり、「飼う」上で危惧すべき問題はない。

 反時計症の人間が他国に移住すると
 土地の問題か何なのか、平均して5年ほどで死んでしまうらしいが──
 まあ、結局、飼い主側には危険なことはないわけで。

40 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/21(水) 19:50:02 ID:ksyKNxfAO

( ^ν^)(寿命が縮むおかげで買い替えのサイクルが早いし。
       祭や仕事以外でソウサク民が他国に来ることは稀で、滞在も殆どしない。
       それゆえに国民自体の物珍しさから、需要も高い……)

( ^ν^)(上手くいけば、かなりの大金が手に入る)

 とは、言っても。
 やっぱり躊躇う。

 ニュッは口も性格も悪いが、悪事に手を染めたことはない。
 度胸がないからだ。

(;^ν^)「……ううっ、くそっ」

 メモを握り潰し、ごみ箱に放り投げた。
 真面目に働いていれば良かった。
 そうすれば、生活に困って誘拐を企てるようなこともなかったのに。

 いっそ死ねば良かった。
 いや、やっぱり。それはちょっと。嫌だ。

 ニュッは頭を抱え、無意味に唸り声をあげた。



# # #

41 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/21(水) 19:52:11 ID:ksyKNxfAO


(#´_ゝ`)「だーかーら! 今年は魔法だ、魔法をテーマにするぞ!」

∬#´_ゝ`)「馬ッ鹿、そんなもんテーマにしたらブーイングの嵐になるわよ!
      アクションにしなさい! 前に格闘技をテーマにしたときが一番盛り上がったでしょう!?」

 ソウサク国の、ある家の中。
 テーブルを挟んで向かい合い、口角泡を飛ばす男女が2人。

 男は兄者、女は姉者。姉弟である。
 共に20代半ばをとうに越えているが、兄者の方は反時計症により、いくらか若返っている。

 彼らが何を言い合っているのかというと、
 今度の祭で披露する出し物について。

43 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/21(水) 19:53:45 ID:ksyKNxfAO

(´<_` )「落ち着け2人共。白熱するのはいいが、議論が全然進んでないぞ」

l从・∀・ノ!リ人「うるさいうるさいなのじゃ。ねー、末者」

(´<_` )「うるさいのりゃー」

 兄者の隣の席、冷めた目で2人を宥める少年、弟者。
 兄者より10歳近くも若いのだが、前述の通り兄者が若返っているので、今は双子のように見える。

 その対面で耳を塞ぐような素振りをした少女は、妹者という名前だ。
 それに賛同した3歳ほどの子供は末者。妹者の膝の上に座っている。

 妹者も末者も反時計症患者だが、元から幼いため、実年齢との差は少ない。

(#´_ゝ`)「俺は話し合いを進めたいんだがな。如何せん姉者が話を聞いてくれない」

∬#´_ゝ`)「それはこっちの台詞よ! 大体、」

 @@@
@#_、_@
 (  ノ`)「──あんたたちね、祭まであと一週間なんだよ」

 さらに言い合いを続けようとした2人は、どっしりと威厳に溢れた声を聞き、口を噤んだ。
 恐々、少し離れた場所に座っている大柄な女性を見遣る。

 母者。5人の母親。
 茶を飲みつつ、彼女は兄者と姉者を睨みつけた。

45 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/21(水) 19:56:22 ID:ksyKNxfAO

 @@@
@#_、_@
 (  ノ`)「私にはセンスってものがない。
      だから我ら流石一座の企画や構成は、毎回あんたらに頼ってばかりだ」

(;´_ゝ`)「ま……まあ、そうだけど……」

∬;´_ゝ`)「それは適材適所で……」

 @@@
@#_、_@
 (  ノ`)「母親として情けないのは分かってるが、それでも、
      毎回毎回あんた達が素晴らしい台本を作ってくれる度に、任せて良かったと思えるんだよ」

(;´_ゝ`)「……あ、」

∬;´_ゝ`)「ありがとうございます……」

 @@@
@#_、_@
 (  ノ`)「今回も期待してるからね。
      台本が間に合わず断念、なんてのは勘弁しとくれよ」

 その言葉を最後に、母者は口を閉じた。
 兄者と姉者は顔を見合わせ、ばつが悪そうに視線を逸らす。

 直後、それまで黙っていた中年の男性が苦笑いしながら両手を胸の前で揺らした。
 母者の夫であり兄者達の父親、父者だ。

46 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/21(水) 20:01:32 ID:ksyKNxfAO

 彡⌒ミ
(;´_ゝ`)「とりあえず、2人のやりたいことを順番に話してみてよ。
       時間もないしさ」

 ──彼ら7人は「流石一座」のメンバーである。
 芝居や演芸など、一家での興行活動を生業としている。

 兄者や妹者達が反時計症を発症する2年前までは、
 不定期に各国を巡って公演を行っていた。
 滞在期間が一番長かったのは、ニューソクでの丸一年だったか。

 今は兄者達の体を考えて本拠地をソウサクに固めているが、
 世界的に根強い人気があるため、たまに他国へ数日ほど出張することもある。
 医者いわく、他国に一年以上滞在するのでない限り、特に差し障りはないそうだ。

 なので開催国がどこであれ、ラノベ祭での公演依頼を断った年はない。
 今年も御多分に漏れず。

47 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/21(水) 20:03:54 ID:ksyKNxfAO

 大変名誉なことであるのは、皆、充分に分かっている。
 分かっているが──今年は、祭を一週間後に控えた現在になっても、
 未だ演目が決まってすらいなかった。

 今年の祭のテーマが「絵」なのでメインはそれで決定したが、
 サブテーマに関して、兄者と姉者の意見が対立しているのだ。

 彡⌒ミ
(;´_ゝ`)「はい、まず、姉者の案は?」

∬´_ゝ`)「私は、武器を持った演舞がいいわ。
      巨大なキャンバスの前に、色付きの水が入った風船をたくさん置くの。
      それで、私達がアクションを交えながら風船を割っていって──」

l从・∀・*ノ!リ人「最後に絵が完成するのじゃな! 格好いいのじゃ、妹者それがいい!」

∬*´_ゝ`)「でしょう? 風船の配置や水の量を調節して、
      後は割り方や順番さえ気を付ければ上手くいく筈よ」

48 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/21(水) 20:05:09 ID:ksyKNxfAO

 彡⌒ミ
( ´_ゝ`)「なるほど……。次、兄者はどんな演目にしたい?」

( ´_ゝ`)「俺は魔法をテーマにしたい。
       知ってるか? 魔法使いってな、ほうきで空を飛べるんだ。
       こう、ほうきに跨がるらしい」

(*´_ゝ`)「それを真似て、俺らもほうきに跨がって空を飛ぼう!
       ほうきって筆に似てるよな?
       ほうきの先に絵の具を付けて、でっかいキャンバスに絵を描いていくんだ!」

(*´_ゝ`)「父者は舞台に立ったまま魔法の本を持って、
       あたかも俺達を自在に操縦しているかのように舞う!
       そうだ、へんてこな生き物のぬいぐるみを作って、それも動かそうじゃないか!」

(´<_` )「ぬいぐるみを動かすのはヴィップの技術を借りれば何とかなるが、
       どうやって空を飛ぶんだ?」

(*´_ゝ`)「そりゃ、末者の力を使って」

 兄者が嬉々とした顔で末者を見る。
 末者は「たぶん出来る」と頷いた。

 流石一座の面々が持つ身体能力の高さは、生半可なものではない。
 しかし末者に限っては、どこか逸脱していた。

49 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/21(水) 20:06:51 ID:ksyKNxfAO

 手を触れることなく物を浮遊させたり、自身も浮かぶことが出来たり。
 それは魔法に似ていて、しかし魔法とは違う。

 魔法使いはゼロの状態から物を生み出すことが出来るが、
 末者は既に存在しているものにしか干渉出来ない。
 そういう、魔法に似て非なる力を、南のヴィップ国は「超能力」と呼んでいる。

 末者のように超能力を持つ者は、極々稀に生まれてくるらしい。
 科学の国ヴィップの研究で、超能力は遺伝子の突然変異が原因の──
 一種の、「身体障害」だと判明している。

 世の中の超能力者の大多数は、自分の力を隠したがる。
 魔法に似ているということで、世間からは侮蔑の対象とされているからだ。
 人買いすら、超能力者を扱うのを嫌がる。

 流石一座も末者の力を世間に隠してはいるが、しかしその実、舞台では大いに活用していた。
 からくりも無しに物を自由に動かせるなんて、彼らのような職業には打って付けだ。金もかからないし。
 末者も、幼さゆえに舞台に上がれない分、裏から完璧なサポートを見せてくれる。

50 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/21(水) 20:08:04 ID:ksyKNxfAO

(*´_ゝ`)「これなら成功する!」

 彡⌒ミ
( ´_ゝ`)「うーん……。……うん、とりあえず今の段階で票を取ろう。
       姉者の案がいい人ー」

∬´_ゝ`)「はーい」

l从・∀・*ノ!リ人「はい!」

 @@@
@#_、_@
 (  ノ`)∩ スッ

 彡⌒ミ
( ´_ゝ`)「兄者の案の方がいい人」

(*´_ゝ`)「はいはい」

(´<_` )「はい」

 彡⌒ミ
( ´_ゝ`)∩「……男女で分かれたね」



51 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/21(水) 20:10:05 ID:ksyKNxfAO

l从・ε・ノ!リ人「ぶーぶーぶー。末者はー?」

(´<_` )「どっちも楽しそうなのりゃ……」

(*´_ゝ`)「おお……前までは俺の意見など一刀両断していた末者が!」

(´<_` )「前は完全に末者にナメられてたよな、兄者。
       今も多少ナメられてるが」

 末者は頭がいいので、赤ん坊の時分に家族のランク付けを(正確に)行った結果、
 最下位になった兄者を馬鹿にする傾向があった。今はちゃんと仲良くやっている。
 ちなみにランク1位は当然のごとく母者だった。

 彡⌒ミ
(;´_ゝ`)「多数決は無理か……。
       魔法、いいと思うんだけどなあ」

∬´_ゝ`)「……そりゃ、私だって面白そうだとは思うわよ」

 ぽつりと呟いた姉者。
 皆、意外そうな目を向けた。
 先程まで兄者の案を真っ向から否定していたのだから、無理もあるまい。

 姉者は、兄者の後ろの壁に貼ってある大きな世界地図を見た。
 これまで公演を行ってきた土地に印がついている。
 その中で、北の国シタラバニアにだけ、一つも印がない。

52 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/21(水) 20:11:12 ID:ksyKNxfAO

∬´_ゝ`)「でも『魔法』って、この世のタブーなのよ。
      魔法使いなんて世界中の嫌われ者だわ。
      そんなものをテーマにしたら、どうなるか分からないじゃない」

 @@@
@#_、_@
 (  ノ`)「……祭を台無しにしかねないしねえ」

∬;´_ゝ`)「そう! そうなのよ!
      5年ぶりにソウサクで祭が行われるからみんな張り切ってるっていうのに、
      それを台無しにしてしまったら、私達、国民に顔向け出来ないわ」

( ´_ゝ`)「敢えてタブーに触れることも、ときには必要じゃないか、姉者」

∬;´_ゝ`)「それを、このラノベ祭っていう大きな舞台で実行する必要はどこにあるのよ!」

(#´_ゝ`)「姉者は慎重すぎる! 有無を言わさぬ演出で盛り上げれば──」

(´<_` )「また口喧嘩に逆戻りか」

l从-∀-ノ!リ人「話が進まないのう……」

(´<_` )「進まないのー」

 父者は額に手を押し当て、深々と溜め息をついた。



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その2>>>

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