■2012年芸術の秋ラノベ祭りのようです
└( ´_ゝ`)双子は竜騎手のようです(´<_` )
└第一話
- 1 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/19(月) 21:40:20 ID:nlKlatLE0
空の白に意味があるなら。
それを飛び立つ理由にしよう。
空の青に意味があるなら。
それを愛する理由にしよう。
空の赤に意味があるなら。
それを戦う理由にしよう。
空の黒に意味があるなら。
それを生きる理由にしよう。
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- 2 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/11/19(月) 21:41:08 ID:nlKlatLE0
( ´_ゝ`)双子は竜騎手のようです(´<_` )
第一話: 竜に乗る
.
- 3 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/11/19(月) 21:42:27 ID:nlKlatLE0
空気の痺れる音がした。
心臓が鼓動を増し、耳が、目が、肌が、脳みそが研ぎ澄まされて行く。
空気と体の境目が溶けて無くなり自分が風になったような錯覚すら覚えた。
( ;´_ゝ`)「……」
鼻の高い青年が身を屈め必死で手綱にしがみついた。
軽減されているはずの空気抵抗は、防壁魔法の容量を越えて彼の身体を嬲る。
(´<_` )「兄者、これ以上の速度は危険だ」
言葉を素直に解釈すれば弟。
手綱を握る青年の後ろにそっくりな顔立ちの青年がしがみついている。
兄の方が旅人のような格好なのに対し、弟の方は仰々しい神官服を身に付けていた。
兄の名がアニジャ。弟の名がオトジャという。
二人が居るのは、普段人の生活する地上からはるか上空。
雲一つ無い青天を真っ二つに切り裂いて翔けてゆく。
無論、人間がそのまま空を飛んでいるわけでは無い。
- 4 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/19(月) 21:43:21 ID:nlKlatLE0
( ;´_ゝ`)「リュウジャ、もう少し頑張ってくれ」
アニジャが手綱から手を離し、自分が跨るその首を撫でた。
飛竜。
その名のとおりに巨大な翼を持ち天を駆ける空の王者だ。
重鈍な見てくれに反し、風の如く空を翔る姿に人々は目を奪われる。
首を撫でられた飛竜、リュウジャは嘶きを一つ、さらに速度を増した。
青年達は張り付くように背中にしがみ付く。
( ;´_ゝ`)「オトジャ、敵は?」
(´<_` )「ブーン!」
オトジャが叫びを上げるとリュウジャの下方から、小人のようなものが飛び上がってきた。
白いモチを練り、雑に人を模ったような頭でっかちな造形。
背中には虫のような透明の羽を持っており、両手を広げて飛行している。
( ^ω^)「距離およそ200。ステルスのせいで詳しい位置は不明だお。付かず離れず一定で追跡されてるおね」
(´<_` )「だそうだ」
( ;´_ゝ`)「厄介この上ないな……」
- 5 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/19(月) 21:44:54 ID:nlKlatLE0
比較的余裕のあるオトジャが後ろを振り返る。
一見したところでは何の姿も見えないが、目を凝らすと僅かに景色の歪むところがあった。
擬態魔法によって姿を消している敵の飛竜だ。ついてきているのはまず間違いない。
(´<_` )「このまま逃げ続けてもジリ貧だ。反撃に出よう」
( ;´_ゝ`)「奇遇だな。俺も同じこと考えてたよ」
アニジャは手綱を左に引いた。
リュウジャは速度をやや緩め、左へと進路を変える。
( ;´_ゝ`)「ドクオ!ここいらにデカイ川があったよな」
(;'A`) 「……データ参照」
オトジャの神官服の胸元から、これまた小人のようなものが這い出した。
ブーンとは異なり身体は紫色。
団子を二つ重ね楊枝を刺して手足にしたような見てくれだが、背中にはやはり羽が生えている。
(;'A`) 「北西約2km。ジューシマツ川」
(´<_` )「どうする気だ?」
( ;´_ゝ`)「まあ俺に任せろ」
- 6 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/19(月) 21:46:17 ID:nlKlatLE0
アニジャは手綱を捌き、リュウジャを件の川へと向かわせた。
敵はその間もピッタリと後ろをついてきている。
恐らくは姿を消して、アニジャ達の消耗を待っているのだ。
やや卑怯な印象を受けるが、竜の特性を活かした堅実な作戦。
同じ竜騎手として尊敬すべき狡猾さだ。
だが。
( ;´_ゝ`)「ああいう手合いをぶちのめすのは、ひどく爽快だ」
(´<_` )「流石だな兄者。全面的に同意する」
川の上空に達するとリュウジャはさらに方向転換。
その流れに沿うように飛行する。
アニジャの予想通り敵も後方をついてきた。
こちらの目論みが分っていないのか。
それとも見抜いた上で、あえて乗ってきているのか。
( ;´_ゝ`)「調整頼んだ」
(´<_` )「任せろ」
リュウジャが急激に高度を落とした。
オトジャは魔法を使い急激な気圧の変化から自分達の生命機能を守る。
- 7 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/19(月) 21:47:54 ID:nlKlatLE0
オトジャもブーンも、アニジャの考えは一応理解していた。
風圧で水を巻き上げ手チャフとし、敵の擬態とステルスを破ろうというのだ。
しかしこれはとても基本的な方法で、相手も読んでいる可能性が高い。
敵が相変わらずの距離を保ちながら追尾していることを確認し、グングンと高度を下げていく。
(´<_` )(どうする気だ?)
オトジャがアニジャの考えを読もうとする間にも、リュウジャの足が川面に触れた。
高速飛行の抵抗で、水切り石のように跳ねを繰り返しながら高い水しぶきを上げる。
これで相手が水煙にの範囲に居ればステルスが弱まるのだが。
( ^ω^)「……相手は水の範囲外。距離相変わらず200前後」
( ;´_ゝ`)「この状況……俺がアイツの立場なら……」
声をかけようとしたその瞬間、兄者が大きく手綱を引いた。
羽ばたき一つ、空気を破裂させリュウジャの体がほぼ垂直に急上昇。
オトジャは突然のことに振り落とされそうになりながらも鞍にしがみ付き、同時に保護の魔法を張り替えた。
( ;´_ゝ`)「そこだ!」
号令と共にリュウジャが口から火球を放った。
それはやや上方に向かって直進。
中空で閃光を放つと、爆音と共に熱風を撒き散らす。
- 9 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/19(月) 21:49:35 ID:nlKlatLE0
( ^ω^)「……乱れを感知、1時の方向だお!」
( ;´_ゝ`)「よし、行け!」
ブーンの探知した方向へ、リュウジャは羽ばたいた。
僅かに見える光の揺らぎは、先ほどまでに無い慌てぶりで回避。
急転換はそのまま擬態魔法の不安定を招き、はっきりとは行かないまでも位置の把握に成功する。
( ´_ゝ`)「今だ!」
再びの火球攻撃。
相変わらず回避されたが、相手の位置は逃していない。
回避させた一瞬の時間で、両者の差がいくらか縮む。
近づけば近づくほど擬態は見破りやすい。
アニジャはそのまま敵への砲撃を命じ、イニシアチブを確保する。
( ^ω^)「距離80!これなら逃がさないお!」
ついにブーンの探知が敵の具体的な位置を捉えた。
単純な速度ならば相手方の竜よりもリュウジャが僅かに上。
そう簡単に逃がすことは無い。
- 11 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/19(月) 21:51:03 ID:nlKlatLE0
( ;^Д^) 「くっそおおお!せっかく上手く行ってたのによお!」
相手の騎手の怒り交じりの声が響いた。
逃げに回っていた相手が、反転しアニジャ達へ向かって火球を放つ。
これをひらりと回避。攻撃魔法の残滓で位置を特定し、リュウジャは相手に高速で接近した。
( ´_ゝ`)「見つけたそ、プギャー!」
( ;^Д^) 「だー!もう!こうなりゃ自棄だ!」
敵目前でリュウジャはブレーキ。
その慣性を利用して体を横に回転し、長い尾を鞭のように叩きつける。
ここまでの接近を許した相手は擬態を諦め、防御魔法を発動。
半透明の魔法の盾が尾を受け止める。
その向こうに見えるのは、今まで姿を隠していたカメレオンのような飛竜。
( ;^Д^) 「やったれぇ!メメメオン」
敵の騎手、プギャーはやけくそで接近戦に応じた。
アニジャも完全な座位から鞍を膝で挟んだ半立ちの姿勢へと移行する。
( ;^Д^) 「おおおおお!!」
擬態の追跡を破った時点で勝敗は決していた。
この後約二分の交戦の末、アニジャ達は勝利と共に地に降り立つこととなる。
** ** **
- 12 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/19(月) 21:53:32 ID:nlKlatLE0
( #^Д^) 「杉浦すら苦戦させた俺達の最強戦法がやぶられるとは!!」
どんっ、とプギャーがテーブルに杯を叩き付けた。
中身のビールが揺れ、いくらか零れて薄く泡を立てる。
(・∀ ・;) 「そりゃおめえ、あんだけ一辺倒な戦い方してれば対策練られるのは当然だろ。バカか」
隣の席でそれを宥めているのか罵っているのかよく分らない男は、彼の相方であるまたんき。
懐から自分のハンカチを取り出し、プギャーの零したビールを拭う。
竜騎手と助手の関係は夫婦に似ていると言った者が居たらしいが、彼らを見ているとあながち間違ってはいないようだ。
( *´_ゝ`)「んっふっふ、あんなショボイ戦法で俺に勝とうなんざ百年早い」
プギャーの向かいで機嫌で杯を呷るアニジャ。
椅子に寄りかかり踏ん反りかえる勢いだ。
アルコールのせいもあって鼻と頬が赤くなっている。
( #^Д^) 「うるせえ!てめえかなり苦戦してただろうが!」
(´<_` )「確かにプギャーの言うとおりだ。相手の戦法も竜の性能差も分った上であそこまで持ち込まれたら負けたようなもんだぞ」
(・∀ ・) 「まあなあ。同期相手に俺達のパターンがあそこまで通用したの久しぶりだったわ」
( ;´_ゝ`)「な、なんだよみんなして!いいだろ勝ったんだから!」
- 13 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/19(月) 21:54:37 ID:nlKlatLE0
彼らが酒を酌み交わしているのはネル国の首都、ヴィップの片隅にある小さな飲み屋『高岡屋』。
酒も料理も種類は少ないが、味が良いため贔屓にしている。
店を切り盛りする母娘が美人でそれが目当て、という理由も全く無いわけでは無いが。
(´<_` )「大体兄者はな……」
( ;´_ゝ`)「やめて!せっかく勝ったのに説教で濁さないで!」
从'ー'从 「おまたせしました〜季節のミックスピザで〜す」
始まりかけたオトジャの説教を遮ったのは、この店の看板娘のワタナベだった。
顔好し、性格好し、ボンとなってキュッとなってボンッと決める素敵なボディライン。さらに過去の男性経験は0。
間違って飲み屋の娘に生まれてしまっただけの天使である。
少々ドジなところもあるが、そこがまたいいのだと一部の常連客は語って止まない。
从'ー'从「皆さん、今日は訓練だったんですか〜?」
( *´_ゝ`)「そうそう!それで俺がこのチキン野郎に勝ったの!」
( #^Д^) 「言わせておけば!てめえなんて竜の性能に頼りきってるだけのへっぽこ騎手じゃねえか!」
从'ー'从 「わたしよくわからないけど〜頑張る男の人って、勝ち負け関係なく憧れちゃうな〜〜」
( *´_ゝ`)「そ、そう?」
( ^Д^)+ 「竜騎手候補の俺達がカッコいいのは当然。惚れても無理は無い」
- 15 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/19(月) 21:56:23 ID:nlKlatLE0
从'ー'从 「それじゃ〜ごゆっくりどうぞ〜」
( *´_ゝ`)( *^Д^) 「「は〜い」」
(・∀ ・;) 「あーあぁ、ふにゃふにゃだな。怖ろしい女だよ、ほんとに」
(´<_` )「単にこの二人が馬鹿なんだろ」
(・∀ ・;) 「認めたくないもんだねえ。自分の相方が馬鹿だという事実」
(´<_` )「またんきはまだいい。俺なんかこの赤点野郎が相方でさらに兄だぞ。しかも遺伝子がほぼ同じだ」
(・∀ ・;) 「ご愁傷様。双子でどうしてここまで違うかねえ」
上機嫌でピザを食す兄者とタカラに呆れながら、オトジャはビールを呷った。
訓練の際に身に付けていた神官服は着替えて鞄にしまっている。
今はアニジャと同じような庶民の服を身に付けていた。
傍から見れば、一卵性の双子であるこの兄弟の区別は殆どつかないだろう。
(・∀ ・) 「そういや、お前らどうすんのネ竜祭」
(´<_` )「あー。締め切りそろそろだったな」
- 16 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/19(月) 21:57:47 ID:nlKlatLE0
オトジャは少々悩むような顔を見せ、杯を傾ける。
彼は既にビールを6杯程飲んでいるが、少々顔色が変わっただけで酔っている様子は無かった。
(´<_` )「騎手がこれだからな。出てもただの恥さらしになりかねん」
( *´_ゝ`)「出るに決まってるだろ。竜騎手なら当然だ」
竜騎手とはその名のとおり竜に跨り操る術を持つ者たちのことだ。
国の認定を受けた一部の者たちだけが名乗ることを許される特別な称号。
彼ら四人は、養成所に通う竜騎手の見習いである。
(・∀ ・) 「まあ、俺らみたいな不良もんは、ネ竜祭で活躍するしかねえもんな」
竜騎手になるには現職の正竜騎手の推薦を受けた上で、専門機関の認定が必要。
認定に必要な条件は明示されていないが、能力が低いものが選ばれた前例は無い
故に、養成所で成績の良くないものは推薦すらしてもらえないのが現状だ。
(´<_` )「俺は一人で推薦もらってるから、わざわざ出なくてもいいんだがな」
( ;´_ゝ`)「待ってよオトジャ。それじゃ俺がダメじゃん!」
(´<_` )「自業自得だ。落第して反省しろ」
- 17 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/19(月) 21:58:37 ID:nlKlatLE0
そんな赤点常習の候補生達が大勝負を仕掛けるのが、年に一度の祭典。
国中から人が訪れる国内最大規模の祭り、ネ竜祭だ。
様々な催しが開かれ、砂漠の街であるヴィップも普段とは違う潤いを見せる。
中でも最も人気のイベントが竜騎手候補生達による、竜騎武闘。
養成所での訓練課程を修了する最終年の訓練生達がギャラリーの前で竜に跨り勝負するのだ。
この竜騎武闘でよい成績を残せば、高い確率で昇格の推薦を得ることが出来る。
歴代の優勝者達が軒並み正竜騎手になっているため、ここに希望を託すものは多い。
(´<_` )「そっちはどうするんだ?」
(・∀ ・) 「出るよ、お前と違って俺は個人成績もパッとしねえから一人で推薦獲得なんて無理だし」
( *^Д^) 「安心しろまたんき!俺がパパッと優勝して推薦もぎ取ってやんよ!」
( *´_ゝ`)「プッフゥー。無理ですー。優勝は俺達だもんねー!」
(´<_` )「……互いに、苦労するな」
(・∀ ・) 「全くだ。飲もうぜ。今日はこいつらのおごらせよう」
( ;^Д^)( ;´_ゝ`)「「!!??」」
** ** **
- 18 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/19(月) 22:00:29 ID:nlKlatLE0
- _
( ゚∀゚) 「……よって、本日は実質訓練として竜を駆ることが出来る最終日になる。
各々今後について思うこともあるだろうが、気を引き締めてかかるように」
翌日、二日酔いの頭を抱えながらアニジャ達は養成所に出席した。
同期の候補生達が枡状に並び、教官のありがたいお言葉を授かっている真っ最中である。
教官の話はいつもどおり長く退屈で、欠伸と共に朝食に食べたヨーグルトが酸味を増して戻ってきそうだ。
(´<_` )「ほら、兄者。いくぞ」
しばし心を無にして耐えているとオトジャに腕を引かれた。
話は終わっていたらしく、周囲は皆飛行前の準備へ向かっている。
二人もそれに倣い、自分達の竜の居る厩舎へと足を運んだ。
(ヽ´_ゝ`)「元気にしてたか、リュウジャ」
厩舎に着くなり、アニジャは竜の顎を撫でた。
竜種らしい厳つさ中にも幼竜の可愛らしさを残した顔で嬉しそうにグルグルと喉を鳴らす。
アニジャとオトジャの竜、リュウジャ。
火竜を先祖に持つ小型の飛竜で、赤い鱗が特徴的。
敏捷性を活かした格闘戦から火炎魔法による中距離援護もこなすことが出来る。
まだ若いため最高時速も魔法の能力も未熟ではあるが優秀な竜と判断して問題ない。
- 19 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/19(月) 22:02:07 ID:nlKlatLE0
(ヽ´_ゝ`)「さてと……」
ひとしきりリュウジャのご機嫌を確認し終えると、アニジャは倉庫から騎乗用の用具を運び出した。
普段から使っているそれを素早くリュウジャの首から背に渡ってくくりつける。
体調不良とは言え手馴れたものだ。
(´<_` )「アニジャ、終わったらちょっとこっちに来い」
(ヽ´_ゝ`)「ほいほーい」
一通りの準備を追え、オトジャの下へ。
オトジャは騎乗時用の神官服に着替えを終えており、こちらも準備は万端。
(´<_` )『リカバー』
オトジャが掌をアニジャに向け、魔法を唱えた。
体調不良、主に毒物による内臓の疾患に効果を発揮するタイプのものだ。
魔法の淡い光がアニジャの身体を包み、頭痛と胃もたれを消し去ってゆく。
( ;´_ゝ`)「えっ何?何かオトジャが妙に優しくて怖い。普段は二日酔いでも問答無用で乗せられるのに」
(´<_` )「……もしかして、教官の話聞いてなかったのか?」
( ´_ゝ`)「うん」
(´<_` )「死ね」
( 。´_ゝ`)
- 20 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/19(月) 22:03:24 ID:nlKlatLE0
( ;´_ゝ`)「酷い!なんだよ、優しいのか辛辣なのかハッキリしてくれよ!」
(´<_` )「……」
オトジャは額に手を当て重苦しいため息を吐いた。
眉間の皺を人差し指でぐりぐりと解し、腰に手を当てる。
(´<_` )「今日の模擬戦の相手、杉浦だ」
( ´_ゝ`)「!」
(´<_` )「勝てるかどうかは置いといて、二日酔いで戦っていい相手じゃ無い」
杉浦ロマネスク。
候補生という立場ながら研修と称して既に一線の任務をこなしている竜騎手界のホープだ。
アニジャたちとは同期であるが、その実力は次元が違う。
数ヶ月前対戦した際は手も足も出せず惨敗。
竜騎手を諦めようかと思い悩むほど自信を砕かれた。
さながら今日はそのリベンジのチャンスと言ったところか。
(´<_` )「大丈夫か?」
( ´_ゝ`)「……大丈夫だ。行こう」
- 21 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/19(月) 22:06:36 ID:nlKlatLE0
教官の号令に従い竜を引いて訓練場へ。
順番を待ちリュウジャの首に跨り離陸する。
(´<_` )「ブーン、ドクオ。出て来い」
オトジャの呼びかけに応えるように空中に二つの光の玉が出現。
それが優しく爆ぜると、中にいた羽の生えた小人が露になる。
(´<_` )「調子はどうだ?」
( ^ω^)「ボチボチだお」
('A`) 「俺はボッチだお」
(´<_` )「OK、いつもどおりだな。今日も頼むぞ」
彼らは妖精だ。索敵やデータ通信で竜騎手をサポートするのが役目で、アニジャたちにはこの二人が充てられている。
白色の、にやけた顔をしている方がブーン。
紫色でなんかへちゃむくれな顔をしているのがドクオである。
_
( ゚∀゚) 「では第三陣、指定の訓練空域へ散れ」
リュウジャはは教官の指示を受け、養成所の上空から西へ向かって飛び立った。
後ろにはもう一頭、黒い鱗を纏った飛竜が騎手を乗せて付いてきている。
- 22 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/19(月) 22:08:40 ID:nlKlatLE0
('A`) 「対戦相手データ受信。『騎手:杉浦ロマネスク』。『騎助手:亜麻井デレ』。『騎竜:ボルトール』」
(´<_` )「最近の戦績は?」
('A`) 「……模擬戦勝数12/12。任務成功率92.3%」
( ´_ゝ`)「ん?その失敗した任務の情報は分るか?」
('A`) 「……ヴィップ発シベリア行き貴重品の配達。何らかのトラブルで一旦引き返し、後日無事に完了」
(´<_` )「特に攻略に役立ちそうな情報は無いな」
( ´_ゝ`)「そんな隙を見せる奴でもないってことだな。そろそろ着くぞ」
今回の模擬戦空域は、国の外れ、イタツー共和国との国境付近に広がる砂漠地帯。
近郊に集落の類が無いため範囲設定が最も広くなっている。
機動力が売りのリュウジャにとっては相性のいい場所だ。
空域に到着すると旋回を一つ。
リュウジャに滞空を命じ、後ろをついてきたロマネスクの竜、ボルトールと向かい合う。
( ФωФ)「……」
ζ(゚ー゚*ζ「……」
僅かだが、ボルトールの背中に騎手達の顔が見えた。
アニジャは緊張を押し込めるように唾を飲み下す。
- 23 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/19(月) 22:09:44 ID:nlKlatLE0
,(・)(・), 「あいあーい。ベッキーだよー。間違えたー。シャーミン教官だよー」
対峙する二竜の間に一匹の妖精が現われた。
瓢箪の括れを奪い手足を生やしたフォルムをしている。
ふざけた奴だが、彼は立派な養成所の教官だ。
,(・)(・), 「ルールはいつもどおり。騎手または騎助手が落竜すれば負けだよー」
,(・)(・), 「さらに教官が続行危険と判断した場合も、判定により勝敗を言い渡すよー。おk?」
( ´_ゝ`)「おk」
( ФωФ)「問題無いである」
,(・)(・), 「各々、特殊な状況を想定しての要望があれば、ルールに組み込むけど……無いみたいだねー」
ボルトールが低い唸り声を上げた。
闘争心満々。それをロマネスクが手で撫でて宥める。
一方のリュウジャも火炎交じりの鼻息を噴いて迎え撃つ気満々だ。
,(・)(・), 「では、教官離脱から1分後。合図と共に戦闘開始だよー」
シャーミンは光の玉に戻り、上空へ飛び立ってゆく。
それを見送る暇も無く、リュウジャとボルトールは空気を叩いた。
強烈な破裂音と共に両者の距離が一気に開く。
- 24 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/19(月) 22:11:33 ID:nlKlatLE0
リュウジャは身を捻り、距離を開けたままボルトールの追跡に入った。
飛行の速度だけで言えば、リュウジャの方が上だ。
得意な状況に持ち込むには付かず離れず後ろを取らなければならない。
ボルトールはパワフルな竜だ。
黒い体躯は飛竜としては巨大で、それを支える翼も同様。
長く鋭い一本角に加えて、先が金槌のように膨らんでいる頑強な尾を持つ。
あれで殴られれば華奢なリュウジャなどひとたまりも無い。
接近戦はなるべく避け、背後を取りつつ火球攻撃。
上手く相手を揺さぶり騎手及び騎助手の落竜を狙う。
それが今回考えられる基本の方針だ。
( ´_ゝ`)「……よし、上手く後ろにつけた」
(´<_` )「あっさりしすぎている。罠には気をつけろ」
( ´_ゝ`)「ああ、いざという時の防御は頼んだ」
アニジャ達はボルトールの後方、絶好の位置につけた。
近すぎず、遠すぎず、いざ相手が急旋回して攻撃に転じても対処できる。
前を行く黒竜は赤い鬣をなびかせ、空中を蛇行。
振りきられぬようしつこく食い下がる。
,(・)(・), (ほんじゃまー、開始!)
シャーミンの声が直接脳に届いたその瞬間、ボルトールが動いた。
- 25 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/19(月) 22:13:18 ID:nlKlatLE0
( ;´_ゝ`)「ッ!」
アニジャの、リュウジャの反応は僅かに遅れた。
ボルトールはそれまでの滑らかな飛行から一転、力強い羽ばたきによって稲妻のような鋭い方向転換を見せる。
速い。
手綱を左右に引き、必死に追いすがる。
単純な速度であれば巻かれることは無いはずなのに、とアニジャは奥歯をかみ締めた。
(´<_` )「アニジャ落ち着け!あの動きは撹乱だ!」
( ;´_ゝ`)「分ってる!」
動きを予測し牽制の火球を放つ。
ボルトールはそれを尾のハンマーで打ち砕いた。
爆炎が撒き散らされたが、透明の防壁が騎手を包み込み有効打には至らない。
( ФωФ)「ふむう。相変わらずこの程度か?流石兄弟」
ζ(゚ー゚*ζ「防壁安定。慣性コントロール整いました」
( ФωФ)「では、こちらからも仕掛けさせてもらおう」
( ∵) ゴェェ
背後のリュウジャの位置を妖精のナビで把握。
ロマネスクはほんの一瞬、手綱を緩めた。
- 26 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/19(月) 22:15:36 ID:nlKlatLE0
( ;´_ゝ`)「!?」
高速の攻防の最中、突然ボルトールが垂直に降下した。
下方へ飛んだなどという生易しいものではない。
それまでの慣性を完全に殺した直角下降。
翼を畳み、飛行魔法の発動すらも無く錐揉み回転しながら高度を下げてゆく。
地面はまだ遠いが、墜落してもおかしくないほどの勢いだ。
アニジャ達はそれを焦って追うが、あまりに急な角度に遅れを取り、やや離された。
ほんの僅かに伸びた間合い。
しかし、相手を考えれば十分すぎるほど危険な距離だった。
ボルトールが落ちながらも頭を上方へ切り返した。
その深紅の相貌が、リュウジャを真正面から捉える。
アニジャの背筋から、体温が消えた。
( ФωФ)「逝け」
爆ぜるように開かれた黒い翼。
その漆黒の巨躯が、青い光を帯びる。
痛烈な閃光と轟音を侍らせ、ボルトールが羽ばたいた。
空気に波紋が走るほどの衝撃がその巨躯を真上に。
余波を受けた地面の砂が抉れて巻き上がる。
その速さ正に雷光の如く。
アニジャの脳が発した信号が手に届くよりも早く、ボルトールは目の前に迫る。
- 27 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/19(月) 22:17:13 ID:nlKlatLE0
空気を切り裂く轟音。
指示を待たず、自らの判断でリュウジャは間一髪で回避行動を取った。
完全に無傷とはいかないが、オトジャの張った防壁のお陰で飛行は続行できる。
アニジャはリュウジャの無事を確認して手綱を引いた。
落下のまま飛び続け、地面に激突する寸前で転換し砂上の低空飛行に移る。
ボルトールが巻き上げた分も相まって周囲は砂埃に包まれ敵の姿は確認できない。
( ;´_ゝ`)「ブーン、敵は?」
( ^ω^)「砂埃がノイズになって良く分らんお。ただ、追ってこないで旋回しているっぽいお」
(;'A`) 「左翼部損傷。敏捷性やや低下」
( ;´_ゝ`)「クッソ、あんなことまで出来るのかよ」
(´<_` )「損傷部を治療する。時間を稼げ」
緩やかな左回りの軌道を描き、リュウジャは砂の煙幕を張り続ける。
その間にオトジャは魔法で傷の治療を始めた。
ブーン、ドクオは共にロマネスク方の動きに探りを入れる。
( ^ω^)「!高出力の魔法反応。来るお!」
( ;´_ゝ`)「リュウジャ頼むぞ!」
砂埃を切り裂き、稲妻が地面を弾いた。
手綱に従い右へ避けたリュウジャはそのまま上昇を始める。
- 28 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/19(月) 22:18:18 ID:nlKlatLE0
( ФωФ)「出てきたであるか。あのまま地を這っていれば、雷撃で楽に沈めたものを」
( ∵) ゴェ
( ФωФ)「うむ。亜麻井、少々手荒に行くぞ」
ζ(゚ー゚*ζ「お任せください!」
大きな螺旋を描きながら高度を上げるリュウジャに向かい、ボルトールは一直線に突撃。
再び稲妻を纏い、リュウジャを打ち砕かんと速度を増した。
風鳴りの音が数段高いものに変わる。
リュウジャもそれに応じて速度を上げた。
翼を一杯に広げ、飛行魔法を全開に発動し真正面から立ち向かう。
自棄になったわけではない。いくらかの策があってのことだ。
( ;´_ゝ`)「今だ!」
火球を二発、ボルトールへ向かって放つ。
それが目隠しになる間に、オトジャが防壁魔法を限界まで分厚く強化した。
そして。
( ФωФ)「!」
( ;´_ゝ`)「ッ!」
- 29 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/19(月) 22:19:08 ID:nlKlatLE0
火球に怯まず突撃した黒い角が、炎ごと何か硬いものを貫いた。
この手ごたえは障壁だ。
慣性を味方につけたボルトールにとって、助手程度が作った防壁など紙くず同然。
いとも簡単に破壊する。
問題は、その向こうに標的の姿が無かったということ。
( ;´_ゝ`)「貰ったぁ!」
赤竜は、すぐ後ろに居た。
火球で目眩ましのあと防壁の塊をそのまま衝突させ、本体は相手の後ろへ。
回避したことを悟られないために防壁をデコイにしたのだ。
尾の反撃がギリギリで届かない絶妙な間合い。
ロマネスクは即座に気を建て直し、手綱を右に。
機敏な反応でボルトールはそちらへ回避行動を取った。
至近距離で放たれた火炎は、耳障りな音を立てて翼のすぐ横を過ぎてゆく。
- 30 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/19(月) 22:20:30 ID:nlKlatLE0
アニジャはボルトールの動きに必死で喰らいついた。
危険を冒してたどり着いたこの好機をやすやすと逃すわけにはいかない。
指示を出し、リュウジャは口を開き火球を放つ。
( ФωФ)「ふむ。少しはマシになったと見える。だが」
ボルトールは放たれてすぐの火球を尻尾で弾いた。
爆発の余波が、放ったリュウジャ自身に襲い掛かる。
( ;´_ゝ`)「しまっ」
( ФωФ)「格闘による決め手の無いその竜で距離を詰めたのは愚かとしか言えんである」
一瞬。本当に少し爆発に気を取られたその僅かな時間にボルトールが反転した。
アニジャが反射的にブレーキをかけてしまったため、半端な間合いが開いてしまっている。
- 31 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/19(月) 22:21:34 ID:nlKlatLE0
( ;´_ゝ`)「クソッ」
(´<_`; )「ダメだアニジャ!真正面じゃ……!」
滞空し、悠々をこちらを見下すボルトールに、リュウジャが火球を三つ連発する。
生身の人間程度ならば楽に消し炭にできるそれは、敵の放電によって破壊され一つも本体には届かない。
今度は自分の番だといわんばかりに、ボルトールが動いた。
炎の残滓を突きぬけ、前足の爪を振りかぶる。
(´<_`; )「くっ!」
オトジャは瞬時に防壁を強化したが、金斬り音と共に容易く切り裂かれてしまう。
この僅かな隙にリュウジャは格闘戦の間合いを離脱。
距離を取るため太陽の方角へ向かって一目散に逃げた。
( ФωФ)「どうやら、もう手はないようであるな」
ζ(゚ー゚*ζ「やりますか?」
( ФωФ)「うむ」
豪快な羽音を一つ、ボルトールは高度を上げてゆく。
- 32 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/19(月) 22:22:44 ID:nlKlatLE0
( ;´_ゝ`)「どうする?何ならあの竜に通用する?」
アニジャは高速で脳みそを回転させる。
格闘戦ではそもそも勝負にならない。
火球も直撃してくれれば騎手を鞍から弾き落とすくらいは出来るはずだが、望みは薄い。
虚しいことに、アニジャたちが勝っているのはスピードと騎助手の魔法能力位のものだ。
( ^ω^)「5時の方向に高い魔力の反応、ヤバイのが来るお!」
(´<_`; )「アニジャ!」
( ;´_ゝ`)「クソ!どうやって勝てって言うんだよ!」
振り返ると、遠く大空の中心に黒い点が見えた。
ボルトールだ。
常識で考えれば、たとえ魔法であっても攻撃が届く距離では無い。が。
(;'A`) 「……!多分距離を取っても無駄」
( ;´_ゝ`)「どういう意味だ?」
(;'A`) 「今ボルトールが使おうとしているのは、理論上、射程が今の間合いの倍以上ある」
( ;´_ゝ`)「?!」(´<_`; )
- 33 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/19(月) 22:23:53 ID:nlKlatLE0
( ∵) ゴェェ
( ФωФ)「うむ。向こうもこちらの狙いが分ったようであるな。中々優秀な妖精をつれているらしい」
ζ(゚ー゚*ζ「やめますか?」
( ФωФ)「構わん。どうせ避けられはせん」
ボルトールの身体は、遠目には分らないほど僅かに輝きを帯びていた。
光は波のような線を作り角へ集中していく。
黒い体の中、角だけが力強い光を湛えていた。
( ФωФ)「ビコーズ。替われ」
( ∵) ゴェ
.::( ∵)::. グググ
.::(( ∴)゙:: グルン
( ∴) ゼァッ
( ФωФ)「ゼアフォー、敵竜の回避先を予測。データをボルトールに送信しろ」
( ∴) ゼァッ
- 34 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/19(月) 22:25:36 ID:nlKlatLE0
(;'A`) 「簡単に言うと、凄いビームを放つつもりだ。サポートの妖精次第じゃ、地平線の向こうからでも精密に狙撃できる」
(´<_`; )「かわせる物なのか?」
(;'A`) 「使い手の能力に左右されるから、こればっかりは撃たれて見ないと分らない」
( ;´_ゝ`)「……突撃しよう」
(´<_`; )「……」
正気か?と尋ねたい気持をオトジャは精一杯抑えた。
決しておかしな判断ではない。
至近距離であればあるほど、遠距離魔法は回避が易くなる。
何より、強力な魔法を放つ前の隙は、恰好のねらい目だ。
手綱捌きと、踵の合図でリュウジャはボルトールに向かって直進した。
限界まで速度を上げ、瞬く間に距離を詰める。
( ФωФ)「ここで恐れず詰めてくるか」
ζ(゚ー゚*ζ「中止しますか?」
( ФωФ)「構わん。間に合わんとしても魔法を発動しながらでも戦える」
ロマネスクの言葉に賛同するようなボルトールの咆哮。
魔法の光を角に集めながらも、前傾姿勢を取りリュウジャを迎え撃つ。
- 35 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/19(月) 22:27:07 ID:nlKlatLE0
( ;´_ゝ`)「ドクオ、どこを狙うべきだ?」
(;'A`) 「前面は恐らく、魔法の余波を防ぐため強固な防壁を準備しているはず。その分周囲の防壁は薄いと思われ」
( ;´_ゝ`)「回り込んで、後ろから火球をぶち込むか」
(´<_`; )「同じ手が通用するか?」
( ;´_ゝ`)「やるしか無い。頼むぞリュウジャ!」
答えるように、ぶるんと尻尾が振るわれた。
トップスピードのまま二竜は間合いを狭めてゆく。
ボルトールの魔法は既にいつでも放てる状態になっていた。
しかし、絶好のタイミングを見計らい、まだ撃たない。
ロマネスクは、無意識に口の端を持ち上げる。
( ФωФ)「あらゆる攻撃を想定するである、ゼアフォー、ボルトール。一撃たりともまともに食らってはならぬ」
距離があっという間に縮まり、交差の時。
リュウジャは一切速度を緩めない。
それを向かえ撃つべくボルトールは起立の姿勢で前足を振り上げた。
残響。
砕かれた魔力の欠片が光を反射して周囲を舞う。
- 36 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/19(月) 22:28:26 ID:nlKlatLE0
ボルトールの爪は寸前で身をかわしたリュウジャの防壁のみを切り裂いた。
無傷でやり過ごしたリュウジャは急ブレーキと共に反転。
やや落ちかけながらも火炎弾をロマネスクに向かって放つ。
振り向き様の前足で攻撃を弾いたボルトールは、そのまま角をリュウジャに向けた。
慌てて周囲を旋回するように飛行し、アニジャはその射線を外れる。
( ФωФ)(これ以上粘られると、飛行魔法に回す魔力が心もとなくなるであるな……)
ロマネスクは決めた。次で倒す。
余裕が無いわけでは無いが、実戦を想定した場合今回は少々遊びすぎた。
どうにも、彼らを相手にするとらしくない癖が出てしまう。
( ;´_ゝ`)(ボルトールは燃費のいい竜じゃない。これだけ魔法を使わせたなら、後は逃げれば勝てるんじゃないか?)
( ;´_ゝ`)(いや、ダメだ、そんな考えじゃ背中を向けた瞬間に撃ち抜かれる)
アニジャは魔法を警戒し、速度に緩急を付け上下左右にブレながらチャンスを窺う。
リュウジャは多少ダメージこそあれ、きちんと性能を発揮できている。
魔力の残りも十分。対してボルトールはそれなりに消耗しているはずだ。
ロマネスクが次で決めにかかって来る可能性は高い。
これはピンチではあるが、チャンスでもありうる。
- 37 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/19(月) 22:30:01 ID:nlKlatLE0
膠着した状態から、先に変化を見せたのはアニジャ。
くるりとリュウジャが身を回転させ、やや蛇行を交えながらボルトールに対峙する。
これはアニジャなりの誘いだった。
今ボルトールが構えている魔法は、決め技ゆえに消費も大きい。
上手くかわせればこちらの勝機はぐんと増える。
無論ロマネスクもそれぐらいは分っているため絶対に無駄撃ちはしてこない。
だからこその、誘いだ。
もし撃たれても回避できるよう、撃たれなくとも攻撃に出れるよう、フラフラと飛びながら敵の動きに集中する。
( ФωФ)「……」
( ;´_ゝ`)「……」
そして、ついに両者十分の間合い。
リーチで劣るリュウジャでも、機動力を活かせば先手を取れる。
互いに手を出さなず沈黙。
リュウジャの羽音だけが静かに鳴り響く。
( ФωФ)「……ッ!」
( ;´_ゝ`)「!」
先に仕掛けたのは、ロマネスクとボルトール。
- 38 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/19(月) 22:32:07 ID:nlKlatLE0
羽ばたきを一つ打ってからの、爪。
右の前足を斜めに切り下ろす。
リュウジャは翼で勢いをつけ、身体を反りこれをギリギリでかわす。
背に乗っているアニジャたちが落ちそうな角度だが、必死でしがみついて堪えた。
爪をやり過ごして見えたのはボルトールの背中、鞍にしがみつくロマネスクとデレの姿。
( #´_ゝ`)「いっけえええええええ!!」
全身の体重を乗せて、リュウジャは翼と一体化した前足を振り下ろす。
しかし、その渾身の一振りは、ロマネスクどころか彼らを覆う薄い障壁にすら届かない。
爪を叩き付けた勢いで身体を回転させたボルトールがそのまま尻尾を振り回したのだ。
近い間合いのため先端のハンマーこそ当たらなかったが、腰でのタックルを受けたような形でリュウジャは突き飛ばされる。
意識が飛びかけた。
黒竜の角が、何よりまぶしく輝く。
リュウジャは何とか飛行を再開したが、回避を取れる程の安定は戻っていない。
( ФωФ)「やれ」
放たれた閃光は、いとも容易くリュウジャを飲み込んでいった。
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