■2012年芸術の秋ラノベ祭りのようです
└psychedelic trance world.ようです。
- 149 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/11/18(日) 03:01:54 ID:rim4tmgY0
- 奇妙な夢を見た。
サイケデリックともいえる模様と色彩の中に
一人佇む、モノクロの男性。
それは一度だけでなく。
何度も、何度も。
いつしか私は。
彼に出会うためだけに、眠るようになった。
psychedelic trance world.ようです。
- 150 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/11/18(日) 03:02:56 ID:rim4tmgY0
目を閉じる。
深く、深く。
水中に潜り込むように。
それだけで私は。
彼に出会えた。
(゚、゚トソン「こんばんは」
('A`)「また来たのかい」
(゚、゚トソン「ええ、見てのとおり」
彼は相変わらず、そこにいた。
- 151 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/11/18(日) 03:03:46 ID:rim4tmgY0
- ('A`)「何度も来ちゃいけないよって言わなかったっけ」
(゚、゚トソン「来てはいけない理由を聞いてないので」
('A`)「言ったところで、納得はしないだろう?」
(゚、゚トソン「ええ、よくお分かりですね」
('A`)「君のことだからね」
意味深長な言葉を呟き、彼は目を閉じた。
(゚、゚トソン「……」
( -A-)「……」
沈黙が流れる。
でも、嫌いじゃない。
10分、20分。
静寂だけが場にあった。
- 152 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/11/18(日) 03:05:02 ID:rim4tmgY0
- (゚、゚トソン「……」
( -A-)「……今日は」
(゚、゚トソン「え?」
('A`)「今日は、なにがあったんだい?」
彼が目を開いた。
(゚、゚トソン「今日は……特に何も」
('A`)「本当に?」
(゚、゚トソン「ええ、本当です」
('A`)「そうか」
そう言って。彼はまた目を閉じた。
(゚、゚トソン「何か」
( -A-)「うん?」
(゚、゚トソン「何か理由が無ければ、来てはいけませんか?」
( -A-)「理由が無くとも、来てはもらいたくないけれどね」
(゚、゚トソン「そうですか」
- 153 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/11/18(日) 03:06:10 ID:rim4tmgY0
- (゚、゚トソン「実はですね」
('A-)「うん?」
(゚、゚トソン「お恥ずかしい話なんですが」
(゚、゚トソン「長くお付き合いしていた方に、振られてしまいまして」
('A`)「それは……」
(゚、゚トソン「何年も、それこそ結婚だって考えていたんですよ、お互い」
('A`)「……」
(゚、゚トソン「けれど、駄目でした」
(゚、゚トソン「私が悪いんでしょうね」
(゚、゚トソン「彼、言ってました。最近の私はおかしいって」
(゚、゚トソン「目の前にあるものに意識が向いてない」
(゚、゚トソン「君が夢中なものは、別のところにあるんじゃないかって」
('A`)「それで、君はなんて?」
(゚、゚トソン「そうなんでしょうね、としか」
(゚、゚トソン「事実、そうとしか言えませんし」
- 154 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/11/18(日) 03:07:11 ID:rim4tmgY0
- ('A`)「もう一度、言うよ」
('A`)「君は、もうここに来ないほうがいい」
(゚、゚トソン「来たくなくても、来ちゃうんですよ」
(゚、゚トソン「最も、来たくないなんてことは無いんですけれど」
('A`)「君は……!」
(゚、゚トソン「そろそろじゃないですかね」
(゚、゚トソン「また来ます」
('A`)「もう来ないでくれ」
彼は、他にも何か言いたげだった。
けれど。
(゚、゚トソン「では」
ここで、私は夢から覚めた。
また、憂鬱な一日が始まる。
- 155 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/11/18(日) 03:08:08 ID:rim4tmgY0
- 起床。
身支度を整え、出勤。
上司からのセクハラを受けつつ仕事をこなす。
昼、休憩。
昼食を取り、午後をどうやって乗り切るか
ため息をつく。
仕事に戻れば、またセクハラの山。
そして、深夜に退勤。
変わらない、変われない。
同じような日々。
上司が変われば。
転職をすれば。
退職をすれば。
でも、それは。
どれだけ先の話?
上司が変わる?
このなんでもない時期に?
転職をする?
職を探す時間はどこに?
退職をする?
辞めてどうやって生きていく?
私には、わからない。
- 157 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/11/18(日) 03:09:07 ID:rim4tmgY0
- (゚、゚トソン「こんばんは」
( -A-)「……もう来るなって、言ったよな」
(゚、゚トソン「来てしまったものは仕方が無いです」
( -A-)「君は、いつもそうだ」
(゚、゚トソン「はい?」
(#'A`)「分かっているだろう!」
(#'A`)「これが甘えだって!ただの逃避だって!」
急に、彼が吠えた。
(゚、゚;トソン「ひっ……」
(#'A`)「夢の中の幻に、振られた男を映して!」
(#'A`)「あの頃できなかった、そんな後悔を!」
(#'A`)「僕に押し付けて!」
彼の言葉が、胸に突き刺さる。
(#'A`)「君はいつから!そんな……!そんな!」
- 158 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/11/18(日) 03:10:10 ID:rim4tmgY0
- でも。
けれど。
だけど。
(゚、゚トソン「弱くなった、ですか?」
これは私の夢なのだ。
('A`)「……分かっているじゃないか」
(゚、゚トソン「私のことですもの」
('A`)「だったら、なんで」
(-、-トソン「……じゃあ」
視界が歪み、目頭が熱い。
涙が止まらない。
(;、;トソン「どうすればよかったんですか、私は!」
(;、;トソン「情けなくて!悔しくて!恥ずかしくて!」
(;、;トソン「貴方に……伝えることも、できなくて!」
(;、;トソン「私は……!私は……!」
- 159 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/11/18(日) 03:11:25 ID:rim4tmgY0
- 私のすすり泣く声だけが聞こえる。
彼はまだ、そこにいるのだろうか。
(;、;トソン「助けてよ……ドクオ……」
( -A-)「手遅れだ」
分かってる。
( -A-)「もっと早く……現実の僕に言うべきだったんだ」
( -A-)「こんな、薬に頼った夢で言うことじゃなかった」
分かってます。
('A`)「けど、その苦しみは」
('A`)「じきに、なくなるんだ」
('A`)「トソン、君はもう」
知っています、私のことですから。
('A`)「現実には戻れない」
- 160 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/11/18(日) 03:12:08 ID:rim4tmgY0
- (゚、-。トソン「そう、ですね」
処方された薬を、ありったけ飲んできたのだ。
絶対に一錠ずつ飲むようにと、念を押された薬を。
('A`)「僕ともお別れだな」
(゚、゚トソン「はい」
(゚、゚トソン「幻とは言え、ドクオが最後を看てくれるんですね」
('A`)「ああ」
(゚、゚トソン「じゃあ、1つ。お願いがあります」
('A`)「いいよ」
(゚、゚トソン「聞かないんですか?」
('A`)「トソンのことだからね。分かるよ」
('A`)「ほら、おいで」
そういって、両手を開いたドクオに私は飛び込んだ。
(゚、゚トソン「また会えるといいですね」
('A`)「生まれ変わりってのがあればな」
(゚、゚トソン「ドクオはこういうところが無粋です」
私は、最後に笑えていた。
それだけで、よかったのだと思う。
終わり。
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