2012年芸術の秋ラノベ祭りのようです
暴れん坊小娘侍及び割と普通の同心のようです



3 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/11/25(日) 00:42:55 ID:z.roAXZA0
( ФωФ)「秀流よ。刀とは何の為にあると思う?」

lw´‐ _‐ノv「分かんねでござる」

( ФωФ)「即答て。何でもいいから答えてみよ、ホント何でもいいから」

lw´‐ _‐ノv「そういう面倒くさいのはちょっと……じゃー、えーと」

lw´‐ _‐ノv「侍の腰飾り?」

(;ФωФ)「け、結構皮肉路線できたな……そう間違ってはいないが」

( ФωФ)「戦の無き世となってから随分と経つ。この平穏をいつまで続けられるかは分からんが、確かに今は無用の長物だ。
       あるいは、刀の持ち主そのものも」

lw´‐ _‐ノv「政やってる侍の大将がそのようなこと申しちゃってよろしいのでござるか?」

4 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/11/25(日) 00:44:04 ID:z.roAXZA0


( ФωФ)「はっはっは、今の俺は只の素浪人よ。それにこんな話、城の中では口が裂けてもせん」

lw´‐ _‐ノv「父上さあ、いい加減城から抜けだして愚痴りにくるの止めた方がいいよ。
       何、何なの? また目安のアレで叩かれたの?」

( Фω;)「ははは……いや、お忍びで城下とか見まわってるのがチクられちゃって」

lw´‐ _‐ノv「だから懲りろってそういうの、いい年なんだから」

( ФωФ)「ふははは、俺から一本も取れぬ小娘風情が小賢しいことを言いよるわ。ふははは」

lw´‐ _‐ノv「何この人年端もいかぬオナゴ相手に得意げになってんの……怖いわー侍怖いわー」

lw´‐ _‐ノv「で、さっきの答えは結局なんですか?」

( ФωФ)「んん? そんなもの、己で見つけねば意味が無いであろう。
       俺の答えを聞いたところで、お前の答えになるまいよ……何より、俺も模索の最中。
       腰飾りに化けぬよう、ゆめゆめ自問を忘れぬことだ。お前もいずれ刀を持つというのなら、な」



lw´‐ _‐ノv「つまりよく分かんねってこと?」

( ФωФ)「まあそんなとこ」

5 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/11/25(日) 00:45:31 ID:z.roAXZA0


暴れん坊小娘侍
及び
割と普通の同心のようです

6 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/11/25(日) 00:47:39 ID:z.roAXZA0


残暑の名残も薄れてきた秋の昼下がり。
穏やかな陽の光はほのかな眠気を呼び起こしてくる。行き交う町人の足取りも普段より緩やかに思えた。

奴がどこに居るのか見当はついていた。もとより居場所はそう多くはない。
街道から少し外れた小さな茶屋、その軒先に立つ。
『甘味処 ほらいぞん』と書かれた暖簾がのんきになびいていた。



ζ(゚ー゚*ζ「いらっしゃいませー…あ、和仮名様!」

( ><)「おう、おでれ。元気そうだな」

ζ(゚ー゚*ζ「おかげ様で。何か食べます?」

( ><)「じゃあ、わらび餅」

ζ(゚ー゚*ζ「はーい。わらび餅一つー」



店の奥に引っ込んでいく娘から目を離す。目的は彼女ではない。
自分の目の前、長椅子で一心不乱に握り飯をむさぼっている娘へと目を向ける。
こういう時のこいつは、何を言おうが返事はないだろう。しばらく待つことにした。


lw´‐ _‐ノv「もぐもぐもぐもぐもぐもぐぐもぐぐぐももも」

7 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/11/25(日) 00:48:57 ID:z.roAXZA0





娘を眺める。何の変哲もない……とは、お世辞にも言いがたい女だ。
伸ばしたままの髪に、桃色の派手な着物を纏い、しかも足を腿まで晒した奇怪ないでたち。腰には刀も提げている。
見てくれは悪くはないのだろうが、やや粗雑な所作が印象を損ねていた。
ついでに、何故か今日は素足だった。


( ><)「何で裸足?」

lw´‐ _‐ノv「体に良いらしい」

(;><)「……そうか」


娘は指についた米粒を舐めとると、こちらを見上げて小さくつぶやく。本人がそう言うのなら、まあそうなのだろう。
続けて、いやに機敏に手を上げてみせた。


lw´‐ _‐ノvゞ「あいーす、広宇人の旦那。どったの」

( ><)「某がお前に会う理由など、限られているだろうよ」

lw´‐ _‐ノv「そだね。また岡っ引の真似事かしら」

( ><)「そうだと言ったら?」

lw´‐ _‐ノv「慎んでお断りさせて頂きたく存じます」

( ><)(どうせ暇なくせに)

8 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/11/25(日) 00:50:08 ID:z.roAXZA0


( ><)「……握り飯」

lw´‐ _‐ノv「え」

( ><)「普段より少なかったな、握り飯。しかも小さかった」

lw´‐ _‐ノv「ふふ、よく見てるの。好いた者のことがそんなに気になるか」

( ><)「どうせ蓄えが尽き始めているのだろ? それなりに報酬は出す。悪い話ではないぞ」

lw´‐ _‐ノv「ごく自然に無視された」

旦~ζ(゚ー゚*ζ「は〜い、おまちどっ」

( ><)旦~「おう」


ゆっくりと長椅子に腰を下ろす。具合よく、おでれがわらび餅を運んできた。
盆に備えられた茶をすすり、餅をかじる。餡とわらびの品の良い甘味が鼻口を抜けていく。
通行人を眺めながら、世間話のように話を切り出した。


( ><)「――妖怪二口女の噂、聞いたことはないか」

9 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/11/25(日) 00:52:03 ID:z.roAXZA0

lw´‐ _‐ノv「えっ旦那妖怪とか信じてんの、その年で」

( ><)「……」

ζ(゚ー゚*ζ「あーわたし知ってます! ごしっぷ瓦版に載ってました!」

ζ(゚ー゚*ζ「女の格好をしてて、頭の後ろに口があるんですよね! あと髪が蛇みたいにうねうねしてるって!」

lw´‐ _‐ノv「何で?」

ζ(゚ー゚*ζ「え」

lw´‐ _‐ノv「蛇はまあ良いとして、何で後ろにも口あんの。前にあるのに意味なくね?」

( ><)(蛇は良いんだ)

ζ(゚ー゚;ζ「そ、そんなこと言われてもウチ妖怪じゃないし…ぽんでらいおんやし…」

10 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/11/25(日) 00:53:18 ID:z.roAXZA0


( ><)「ゴホン、続けても?」

lw´‐ _‐ノv「あ、デレっち追加。米団子とりあえず十本、旦那持ちで」

ζ(゚ー゚*ζ「あいあいさ〜」

( ><)「……このところ、立て続けに殺しが起きてな」

lw´‐ _‐ノv「あら」

( ><)「既に三人やられた。身元を割り出すのに手間取ったが、先日ようやく手がかりを得られた」

lw´‐ _‐ノv「手間取ったって、顔見て分からなかったの?」

( ><)「ああ、どいつもどこが顔だかよく分からんようなザマだったのでな。
      しかし三人目が米切手を握りこんでいて、その筋でおおよその目星はついた」


米切手とは、蔵屋敷から発行されている米の手形だ。
商人や侍の間ではこれ自体を取引に用いることも少なくない。

11 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/11/25(日) 00:55:12 ID:z.roAXZA0

( ><)「米問屋の富木屋、怪しいのはここだな。仏は皆、ここに奉公に出た経験があるようだ」

lw´‐ _‐ノv「あ、何か聞いたことある」

ζ(゚ー゚;ζ「富木屋って知らない方がおかしいと思うんですけど……はい、米団子です」

lw´‐ _‐ノv「ありあり。んで……、それと、妖怪に……んぐ、何の関わりが?」

( ><)「食ってから話せ。簡単な話だ、富木屋の屋敷にその『妖怪』がいると踏んでいる」

lw´‐ _‐ノv「妖怪をお縄にするのか」

( ><)「ああ。手伝ってくれ」

lw´‐ _‐ノv「いやそんな無茶な」

( ><)「お前も妖怪とそう変わらんぞ、某からしてみれば」

lw´‐ _‐ノv「ええー……」

12 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/11/25(日) 00:56:56 ID:z.roAXZA0


lw´‐ _‐ノv「まあいいや、手は貸すよ。じゃ、本音もよろしく」

( ><)「……」


一度、周囲を見回す。
背後で働いているおでれにも聞こえぬ声音で、小さく囁いた。


(;><)「富木屋はこの辺でも最有力の商人です……世話になってる旗本やらも多いし。
      乗り込んで取り調べたら間違いでした、じゃマズいんです。
      しかも殺しの実行犯は妖怪でなくとも、相当な気狂いだし」

lw´‐ _‐ノv「ああ、やる気ないのね皆」

(;><)「他の同心や岡っ引きとかはぶっちゃけ分からずじまいだったで放置したい感満載なんですよ」

lw´‐ _‐ノv「でも君はやるんだね」

( ><)「全く手がかりが無いんなら某だって見過ごしたいんですけど。
      でも美光殿から怪しい情報が入ったってんで、渋澤奉行がやる気になって……」

lw´‐ _‐ノv「ははあ」

(;><)「そうなりゃやるしかないでしょう? うっかり引き受けちゃったし、ここまで調べるの大変だったし。
      仏さん見てからしばらく何も食えなくなった恨みもあるし」

lwつ‐ _‐ノvつ「いいよね、君のそういうところ。じゃあ行こうか」

( ><)「それは良いがその手は何だ」

lwつ‐ _‐ノvつ「おんぶして。今私裸足だから」

( ><)「お前の懐で膨らんでるそれは小判か何かか?」

lw´‐ _‐ノv「バレてた。本当ちゃんと見てるのね、助平さん」


草鞋を取り出す小娘を脇目に、ゆっくりと席を立つ。
勘定はまとめて盆の上に置いておいた。

13 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/11/25(日) 00:58:26 ID:z.roAXZA0


( ><)「邪魔したな」

ζ(゚ー゚*ζ「お待ちください、和仮名様。父から……、ほんの少しですが」

( ><)「ああ。毎度のことながら、かたじけない」

ζ(゚ー゚*ζ「いえ、お身体に気をつけてくださいね」


小さな包みを受け取る。
額面通りとは言えない重みが伝わってきたが、素直に受け取っておく。


( ><)(金を払いながら金を貰うってのも、間抜けな話なんです)


付届け。身も蓋もないことを言ってしまえば袖の下だ。
昔は抵抗もあったが、受け取るのも礼儀だと同僚に説教されてからは断らないようにしている。
向こうとしても懇意にしている同心がいれば有事に安心出来るのだろうし、こちらも純粋に有り難い。
捕物には何かと金がかかるのだ。


lw´‐ 3‐ノv「ブーブー! 旦那ばっかりずーるーいー」

ζ(゚ー゚*ζ「素直様はお手当を頂くのでしょう。しっかり働いて下さいまし」

( ><)「はは……」

14 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/11/25(日) 00:59:22 ID:z.roAXZA0

◆  ◆  ◆  ◆

( ^Д^)「そうですか……彼らがそのようなことになっていたとは。残念でなりません」


数刻後には、素直と連れ立って富木屋の屋敷に上がり込んでいた。
抵抗されるかと思ったが、案外すんなりと通してくれた。
しかし、さすがに有力者だけあって立派な屋敷だ。自分の屋敷よりも広い。下手をすると与力の屋敷よりも。


( ><)「いずれもこの屋敷で働いていた者。彼らに何か共通点はありませぬか」


富木屋は少し考え込む素振りを見せ、庭の方に視線を向ける。


( ^Д^)「はて。どうでしょう、特に思い当たる節は無いですな。うちに奉公に来ていたのは昔の話ですので」

( ><)「こちらの調べでは、三人とも今は主に大阪で働いていたとあります」

( ^Д^)「ああ……向こうは本場ですから。
      成り上がろうと目論んで、何か恨みを買ってしまったのでしょうか」

lw´‐ _‐ノv「成り上がろうとしてたっていうか成り上がってたんじゃないんかい実際」

( ^Д^)「……」

15 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/11/25(日) 01:00:56 ID:z.roAXZA0


( ><)「彼らと貴公が接触しているのは分かっている。
      何があったにせよ、この屋敷は調べさせてもらうが、よろしいか?」

( ^Д^)「これは困りましたな……後ろ暗いところの無い商人など、そうそう居るものではありませんよ」


富木屋の目つきが変わった。
気を払っていても見落とすような些細な差異だ。
だが、だからこそ分かりやすい。
こいつは黒だ。


lw´‐ _‐ノv「いや何人ゴロツキ雇ってんのよ。
       こそこそしてるけど、相当いるよねこの屋敷。やだ、アナタの後ろ暗すぎ……?」

( ><)(そうやって急に頭数を揃えようとするから、隠密が紛れ込むんです。
      しかし美光殿は鼻が良いよなー、いつか某もそうなれるのかな)

( ^Д^)「……ふむ」

( ><)「先に言っておきますが、既に奉行所に話はついている。
      いくら積まれても懐柔は出来ませぬ故」

( ^Д^)「そうですか。それは残念だ」

16 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/11/25(日) 01:02:20 ID:z.roAXZA0

いよいよ雲行きが怪しくなってきた。
立ち上がろうと腰を浮かしかけた瞬間、


lw´‐ _‐ノv「――避けろ!」
(;><)「あいだっ!?」


いきなり横合いから蹴り飛ばされた。
畳の上を転がり受け身を取る。顔を上げると、背後の襖(ふすま)から刀が突き出ているのが見えた。
一瞬前に自分が居た場所だ。


lw#´‐ _‐ノv「オラァ!」


素直が襖を回し蹴りで勢い良く吹っ飛ばす。
襖は刀を持っていた男を巻き込み、隣部屋の向こうまで転がっていった。
隣部屋には武器を持った男達。実に分かりやすい。


('A`)('A`)('A`)('A`)('A(#)「「「「「ヘッヘッヘッヘ」」」」」

17 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/11/25(日) 01:03:52 ID:z.roAXZA0


lw´‐ _‐ノv「何か酷いな、色んな意味で」

( ><)(五人か……庭の方からも来ている。素直は問題無いんでしょうけど)

( ><)「某らを始末する気か? 殺せたところで、最早誤魔化しはきかんぞ」

( ^Д^)「さて、それはどうでしょうな。サンピンが思う程には、自分の立場は高くない」

( ><)(んなこた分かってます)


十手でこの人数は捌けない。ゆっくりと刃挽刀――捕物に用いる刃の無い刀を抜く。
おそらく、この中にはまだ『妖怪』はいないのだろう。
想像以上に大捕物になりそうだ。
警戒させない為にほとんど武装してこなかったが、失敗だったかもしれない。


( ><)「素直。いつもの様に頼むぞ」

lw´‐ _‐ノv「あいよ」


素直は手ぶらのまま、ゆらりと男達の居る部屋に踏み込んでいく。
好機と見て男二人が跳びかかるが……


('∀`)('∀`)「馬鹿め! 死n」

.;
('A(#)
    「「げふぁあああ!!??」」
                   (##)A`);:.,

18 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/11/25(日) 01:05:32 ID:z.roAXZA0

あっという間に二人とも吹き飛ばされていた。
二人目の顎を殴ったのは見えたが、一人目辺りは何があったのかすら分からない。
くずおれた男の横っ面を蹴り飛ばして昏倒させながら、素直は小さく首をひねる。


lw´‐ _‐ノv「あと三人?」

( ^Д^)「な――」

(;><)(大丈夫そうです。良かった呼んどいて)


それこそ妖怪じみた力量だ。
富木屋の顔色が変わる様を見るのは痛快だったが、いつまでも眺めていられない。
懐から草鞋を取り出し、庭へとかけ出す。庭には男が四人ほど集まっていた。


(#'A`)「うらぁ!」

( ><)「ちっ」


庭で待ち受けていた男が大上段で切りかかってきた。慌てずに一歩引いて間合いを外す。
空を切った刀めがけて、思い切り刃挽刀を叩きつける。
鉄がかち合う衝撃に耐えられず、男が刀を取り落とした。それを踏みつけ、距離を詰める。

19 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/11/25(日) 01:06:36 ID:z.roAXZA0


( ><)「はあっ!」

(;'A`)「うがッ――ぁああああ!!」


無手となり躊躇した隙に、向こう脛に刀を叩き込んだ。骨が砕ける鈍い手応えが伝わってくる。
その場に倒れた男からはすぐさま視線を外し、背後に回り込んだ男へと向けた。


('A`)「死ねや!」


男は真っ直ぐ刀を突き出してきた。速い。避ける余裕が無い。
辛うじて刀で心臓への狙いは防いだ。
しかし勢いを殺しきれず、脇腹に浅く突き刺さる。


('∀`)「へへ」

( ><)(ぐっ……!)


後ろに引きたい衝動をこらえ、身体を捻って切っ先を腹から外す。
着込んでいた鎖帷子のおかげで、どうにか深手にはなっていない。
刀の間合いの更に内側へ、倒れこむように踏み込んでいく。

20 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/11/25(日) 01:09:03 ID:z.roAXZA0


('A`)「なっ」


刀をその場で手放し、腰から十手を引き抜き、腰だめに構える。
そのまま全体重を乗せ、鳩尾に突き刺した。


('A);,.「おぁうッ ……ぐぇっ…ッ」

(;><)(ようやく二人……か!)


時間をかけ過ぎた。この瞬間、致命的な一撃が飛んできてもおかしくない。
瞬時に腰を落として視野を広げ、次撃に備える。
が。


('A`) (#)A)


( ><) ?

21 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/11/25(日) 01:10:23 ID:z.roAXZA0


('A`)b (#)A)


( ><)「……美光殿?」

 ('A`)
  ||
\( ∵)/ カポッ

( ><)「助太刀して頂けるとは、かたじけない……助かりました」

( ∵)

( ><)「あ、腹は大事無いです。浅いんで」

( ∵)ゞ


ミ シュバッ


( ><)(かっけえ……)

(;><)(じゃなかった、早く素直と合流しないと)


男達を当身で失神させ、急いで屋敷内へと向かう。

22 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/11/25(日) 01:12:17 ID:z.roAXZA0

素直は案の定無傷だった。そして素手のままだった。
屋敷奥から加勢があったのか、倒れた男達は五人以上いるように見えたが。


lw´‐ _‐ノv「こいつで最後、かな」


素直は泡を吹いている男をその場にボトリと取り落とし、小さく呟く。
今更驚くことは無いが、そろそろ自信を喪失しそうだ。


( ><)「片付いたか」

lw´‐ _‐ノv「うん。ってあれ旦那大丈夫お腹怪我してない? そんな向こう沢山いた?」

( ><)「ああ……まあその、大丈夫だから……」


(;^Д^)「ぐ、ぐぐ……」

(;^Д^)「ふ、ふ。ふは、ははははは……wwww」

lw´‐ _‐ノv「何だどうした。錯乱したのか」

(;^Д^)「もう……終わりだ、てめえらは……!
      大人しくやられときゃ、あんな奴を見ずに済んだのになwwwwwww」

(;><)「…………」

(;^Д^)「既に手は回してある。来るぞ、バケモノが!!」


富木屋が叫んだと同時、屋敷奥の大きな襖が勢い良くはじけ飛ぶ。
粉塵の向こうに巨大な影が揺らめいていた。


lw´‐ _‐ノv「こいつは……」

23 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/11/25(日) 01:13:36 ID:z.roAXZA0




24 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/11/25(日) 01:15:35 ID:z.roAXZA0

ミ(A ミセ*;ー;)リ

(;><)「……い、異人?」


西洋の物と思われる着物。長く伸びた金色の髪。そしてその髪に絡みつく男。
異形と言えば異形だが……


( ><)「こいつが、妖怪の正体……?」

lw´‐ _‐ノv「やっぱ後ろに口無いんじゃん。それはいいとして、旦那」

( ><)「え」

lw´‐ _‐ノv「伏せてた方がいいかも」


女が頭を振り、男を畳の上に落とす。男の身体から、瞬く間に鮮血が溢れだしていく。
絡みついていたのではなく――突き刺さっていた!


ミセ*;ー;)リ『ああああああああああああ!! また殺したああああああああ!!!!』

ミセ*;ー;)リ『愛していたのに!! 愛してくれていたのに!!
       こんなあたしをおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!』


(;><)「何だ!? 何て言っ」


ミセ*゚ー( ><)『貴方はあたしを愛してくれる?』

25 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/11/25(日) 01:17:28 ID:z.roAXZA0


(><;)「うぉおお!?」


全身が総毛立つ。振り向き様に刀を薙ぎ払うが、手応えはない。
女は天井近くまで飛び上がり、こちらに剣山のような髪を振り回していた。
刀を構えたが、即座に弾かれる。
やられる――


lw#´‐ _‐ノv「素直流奥義畳返し!!」

(;><)「ぅおわっ!?」


いきなり足場にしていた畳がひっくり返された。
女の髪がバスバスバス、と尋常ではない音を立てて畳に突き刺さっていく。


lw#´‐ _‐ノv「シャラァアアアア!!」


一瞬生まれた隙をつき、素直が飛び込む。
飛来する残りの髪を体捌きだけでかわし、顔面を思い切り蹴り飛ばした。
畳と共に、女は放物線を描いて庭へと飛んでいく。

26 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/11/25(日) 01:18:53 ID:z.roAXZA0


ミセ*#)ー;)リ『うわあああああああ!! 痛い痛い痛いぃいいいああああええええぇいあああああ』

ミセ*#)ー;)リ『何でこんなに不幸なの!! 嫌だよ!! 幸せになりたいよおおおおおオオオオオオ!!
       髪ごと愛してよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!
       あたしは悪くないよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお』

(;><)「言葉が通じないようだが、おそらく通じたところで分かりはせんだろうな」

lw´‐ _‐ノv「せやな」


自らの髪に絡まるように、庭でのたうち回る女。
呪術か妖術か。何にせよあの鋼鉄のような髪を武器にしているようだ。
あれを振り回す様が二口女を連想させたのだろう。
あんな物をまともに受けては、原型を留めぬほどに破壊されるのも頷ける。


( ><)「どこからあの女を連れてきたのか知らんが、奴に殺しをさせていた訳か。
      大したタマだな、富木屋。貴様も同罪だぞ」

( Д(ミ)

( ><)「……」

27 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/11/25(日) 01:19:48 ID:z.roAXZA0

(;><)「え、ちょ、おい!? しっかりするんです!!」


いつの間にやら巻き添えを食らっていたらしい。
大の字で転がっている富木屋に駆け寄って容態を確かめるが、見たところ命に別状は無さそうだった。
か細い声で富木屋が囁く。


( Д(ミ)「ふ、ふふ……そりゃあ、分からんだろうさ。お前ら侍のような……人間には。俺の気持ちは」

( ><)

( ><)(何言ってんだこいつ……)

ミセ*;ー;)リ『ああ、でも、大丈夫よね……きっと誰でもやり直せる。いつだって朝日は素敵だもの。
       止まない雨はないもの、だからあたしも報われる。そう、美しいものは気高いから!!』

lw´‐ _‐ノv「何かそろそろ立ち直りそうだぞ」

( ><)「やれるか?」

lw´‐ _‐ノv「決めるなら速攻が良い。刀抜いたらいける」

( ><)「分かった、行ってこい。後は任せろ」

lw´‐ _‐ノv「ん。有り難う」

28 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/11/25(日) 01:21:37 ID:z.roAXZA0


素直は裸足のまま庭に降り立つと、おもむろに腰をひねり、深く落とした。
居合の構えだ。初手で決めるつもりらしい。


ミセ*゚ー゚)リ『あなたもそう……きっと不幸なのね。だけどほら、あたしを見て。こんなに頑張ってるのに。
     おかしいでしょう? 何でかしら。皆死んでいく……悲しいよね、こんなことって。今でも耐えてるの。
     いつかきっと彼が笑ってくれる。何で? 何故? 何の為?』


lw´‐ _‐ノv「果たして刀は何の為にあるのか」


ミセ#゚ー゚)リ『あ。ああ、ああああ、やっぱりあなたもそうなんだ。あたしを笑うんだ! 
      全部嘘なんだ!! 陰で嗤ってるんだ!!
      いいよ、貴方がその気ならさ、本気で――』



lw´‐ _‐ノv                    リ(゚ー゚#セミ



リ(゚ー゚#セミ        ザッ           lw´‐ _‐ノv



リ(゚ー゚#セミ                     lw´‐ _‐ノv

29 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/11/25(日) 01:22:32 ID:z.roAXZA0


( ><)「…………」



リ(゚ー゚*セミ                     lw´‐ _‐ノv


,:;(゚ー゚*);:, バラバラバラ             lw´‐ _‐ノv



lw´  _ ノv「ま、散髪の為でもいいんじゃないかな。たまには」

(*゚ー゚)『あ ああ……あ』


決まった。全く、ほんの少しも見えなかったが。
目に映るのは結果だけだ。
金色の髪は根こそぎ切り落とされ、残った女はまるで別AAのようになってしまった。
呆けたように動かない女に背後から近づき、そのまま組み伏せる。
拍子抜けするほどすんなりと縄で縛ることに成功した。

30 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/11/25(日) 01:24:41 ID:z.roAXZA0


(*゚ー゚)『……残酷なのね』

( ><)「抵抗はせんことだ。って言っても分からんか」

( ><)「素直!」

lw´  _ ノv「旦那ごめん、ちょっと……これ」


素直へと駆け寄り、抜き身の刀を受け取る。柄を持つ手がカタカタと震えていた。
崩れ落ちるようにその場にへたり込む。


( ><)「無理そうか」

lw´  _ ノv「少し、待ってて」


普段からは想像もつかない声だ。
病……と呼んでいいのかは分からないが、自分の抜く刀が怖くてたまらないのだという。
藁屑よろしく粉々になった髪と畳を見れば、気持ちは分からなくもない。
強すぎるのだ、この娘は。素直自身、御しきれていない。

31 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/11/25(日) 01:26:57 ID:z.roAXZA0


( ><)「幾らでも待つさ。捕物は終わった、お前のおかげだ」

lw´  _ ノv「…………」


至る所にゴロツキの転がった屋敷。
思い出したようにぶり返してきた脇腹の痛みに顔をしかめる。
これからまた大仕事だ。一度、深呼吸する。更に腹が痛くなった。



lw´  _ ノv「いつになったら、腰飾りでなくなるのやら」


素直の呟きが聞こえたが、聞こえない振りをしておいた。

32 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/11/25(日) 01:28:23 ID:z.roAXZA0

◆  ◆  ◆  ◆


( ><)「富木屋は脅されていたらしい。奉公時代の情報を餌に強請りを受けていたというが……
      どこまでが本当なのだろうな。
      仏が残していた手記を信じるなら、商談を持ちかけようとしていたようなのだが」

lw´‐ _‐ノv「今となっては分かりませんわ、死人に口無し」

( ><)「……そうだな」


数日後。粗方の経緯は取り調べで判明した。
女の方は予測通り、密航者だった。一体どういう経路でここまで入り込んだのか。
今も裏で調査中らしいが、これ以上は自分が割り込む余地のない話だろう。

団子をほうばり、残った串を手の上でもてあそぶ。
かすかな眠気を感じた。陰気な話題とは裏腹に、空は雲一つ無い快晴だ。


lw´‐ _‐ノv「嫉妬してたのかな」

( ><)「は?」

lw´‐ _‐ノv「その三人、結構成功してたんでしょ。悔しかったんじゃないかな」

( ><)「……それで殺すのか?」

lw´‐ _‐ノv「知らんがな、私商人じゃないですしおすし」

( ><)「某はお前に逆立ちしても剣の腕では勝てんが、だからといって殺意はわかんぞ。
      まあ悔しいけどな。心から悔しいけど」

lw´‐ _‐ノv「ふうむ……」

33 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/11/25(日) 01:29:26 ID:z.roAXZA0


lw´‐ _‐ノv「旦那は大阪の米会所、行ったことある?」

( ><)「ない」

lw´‐ _‐ノv「昔父上に連れて行ってもらったことがある。賑やかな所だったよ。
       あそこで毎日毎日、想像もつかないような量の米が取引されてるんだって」

( ><)「米相場というやつだな」

lw´‐ _‐ノv「ここにあるのは幼子だ。経済と言う名の。この穏やかな世に育まれ、凄まじい早さで育っていく。
       いずれはこの地全てを担うに違いないが、生み出す気流が激しすぎてな。俺は翻弄されてばかりだ……
       とか何とか言ってたかなあ父上。懐かしい」

( ><)「富木屋はそれに臆したと?」

lw´‐ _‐ノv「子が育つのは止められん、立ち上がる前に足でも切り落とさん限りはな。
       親に出来るのは、せいぜいあれやこれやと口うるさく指図して、まともに育ってくれるのを祈ることだけだ」

( ><)「それも父の言葉か。寺子屋にでも勤めていたのか」

lw´‐ _‐ノv「いや、将軍だけど」

( ><)「……前もそんな冗談言ってなかったか?
      あのな、某もこんな身だが、それなりに侍としての矜持はあるのだ。滅多なことは言ってくれるな」

lw´‐ _‐ノv「嘘ぴょん。ただの浪人だったよ」

( ><)(まったく、どこまでが冗談でどこまでが本気なんだか分からないんです)

34 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/11/25(日) 01:30:44 ID:z.roAXZA0


( ><)「そういえば奴が言っていたな。侍には、俺の気持ちは分からんと」

lw´‐ _‐ノv「武士は質素倹約が基本ですからな」

( ><)「お前思い切り破ってるだろうが」


言わずもがな、商いのことは分からない。
その苦労も理解はしているつもりだが、想像の域を出ない。
奴らが育っていく子供だというなら、自分たちは隠居間近の老人……といったところか?
浮世の真綿に包まれて、侍は凄まじい早さで腐っていく。それは止めようもない――


( ><)

( ><)「素直」

lw´‐ _‐ノv「あい」

( ><)「いつか、機会があれば。案内してくれませんか、米会所を」

lw´‐ _‐ノv「別にそれは良いけど。……って、え、あれ? それって旅行?
       旦那と? 私の? 二人で?」

35 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/11/25(日) 01:32:21 ID:z.roAXZA0


( ><)「まあ、他に連れ立って行くような奴はいないですね」

lw´‐ _‐ノv「……い、いいよー? 米会所と言わず大阪全部案内しちゃるよおー?」

( ><)「慌てずともいいんです、機会があればの話だから」

lw;‐ _‐ノv「べっ、別に慌ててなんかいねーやい! べらんめいばーろい!!」

( ><)「ははは……」


物思いにふけったところで、今日やるべきことはすぐには変わらない。
休憩を終えたらまた見廻りだ。



( ><)「さて、行くか。
      せめて貰ってる分くらいは、しっかり働かないとな」







支援イラスト 同スレ>>40より


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