2012年芸術の秋ラノベ祭りのようです
川 ゚ -゚)全力メガホンガールのようです



857 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/21(水) 22:59:52 ID:.TVOY41k0

 とある日本という国の、とある県の、とあるド田舎に
 空に浮かぶ月だろうが道端に転がる石ころだろうが、とりあえず無機物と対話できるようになるメガホンがあったそうな。



川 ゚ -゚)全力メガホンガールのようです





858 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/21(水) 23:00:39 ID:.TVOY41k0

川 ゚ -゚)『おいーす』

( ^ω^)「おいすー」

(´・ω・`)「やあ、久し振りだね」


川゚-゚川『で、私がそのメガホンの持ち主、麗しき女子高生クーだ』

( ^ω^)「どっち向いて喋ってんだお」

(´・ω・`)「違う顔になってるよ。戻して戻して」

川 ゚ -゚)+『む。すまん』

859 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/21(水) 23:01:39 ID:.TVOY41k0

川 ゚ -゚)『とりあえず、だ。このクソピザ( ^ω^)←がお月さんで、
     このホモ臭漂う眉毛面(´・ω・`)←がお雲さんだ。頭に叩き込んでくれ、諸君』

( ^ω^)「すげえ説明口調! ていうかクソピザって……」

川 ゚ -゚)『仕方ないだろう、会話文や地の文にさり気なく説明を盛り込むなんてこの作者にできると思うか?
     あとお前クソピザだろ現に、丸いし』

( ^ω^)「いや、そりゃ僕月だし、丸いけど」

(´・ω・`)「…お月さんはまだしもお雲さんなんて言葉聞いたことないんだけど」

川 ゚ -゚)『この作者の語彙が』

(;^ω^)「やめて! メタネタは続くと途端につまらなくなるからやめて!」

860 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/21(水) 23:02:27 ID:.TVOY41k0

(´・ω・`)「ところで、何か僕らに言いたいことがあるんじゃないかい? クー」

川 ゚ -゚)『おお、なんでわかったんだ?』

(´・ω・`)「君がメガホンを手にしてから何年の付き合いだと思ってるの」

( ^ω^)「だおだお」

川 ゚ -゚)『ん……実はな』


川 ゚ -゚)『好きな人ができたんだ』
(´・ω・`)
( ^ω^)


( ^ω^)「え、マジ?」

861 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/21(水) 23:03:32 ID:.TVOY41k0

川 ゚ -゚)『何だその反応は』

( ^ω^)「いや……だって……」

(´・ω・`)「学校一のアイドル、野球部のモララー君を0.5秒でフッたクーが好きな人とか……」

川 ゚ -゚)『私には何故あんな奴が人気なのか理解できん』

(´・ω・`)「フッた理由なんだっけ?」

川 ゚ -゚)『爽やかさが鼻につく』

( ^ω^)「爽やかさが人気の理由なんじゃ……」

川 ゚ -゚)『人の好みは色々だからな』

862 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/21(水) 23:04:54 ID:.TVOY41k0

(´・ω・`)「で、好きな人ってどんな人なんだい?」

川 ゚ -゚)「おお、写真持ってきたんだ。かっこいいぞ」

川 ゚ -゚)ノ【('A`)】

( ^ω^)「……。かっこよくは……ないおね……」

川 ゚ -゚)『人の好みは色々だからな』

(´・ω・`)「本当にね。告白はもうしたの?」

川 ゚ -゚)「ラブレター渡したぞ」

( ^ω^)「おお、流石素直クール。なんて書いたんだお?」

川 ゚ -゚)『「わわわわわわたししししととと付き合ってててててくだささあああああ付き合え愚図めがッッ!!」』

(;^ω^)「なんで手紙でテンパるんだお!最後やけくそだろそれ!」

(´・ω・`)「素直でもクールでもないしね。で、結果は?」

川 ゚ -゚)『その場で捨てられた』

( ^ω^)「ああ、完全に悪戯だと思われてる系だおねそれ」

川 ゚ -゚)『きっと照れてるんだ!』

( ^ω^)「なんだおそのポジティブシンキング。現実見ようお」

863 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/21(水) 23:05:42 ID:.TVOY41k0

川 ゚ -゚)『で、今日来たのは、明日渡すラブレターをお前らに添削してほしいからなんだ』

(´・ω・`)「ん? また渡すのかい?」

川 ゚ -゚)『当然だ。一回だめだったくらいで諦めてたまるか』

( ^ω^)「心意気はいいけど……どんな文章書いたんだお?」

川 ゚ -゚)『「別にあんたなんか好きじゃないんだからねっ! 付き合ってくれても嬉しくなんかないんだからねっ!」』

( ^ω^)「なんでツンデレ風……あんたクールだろ」

川 ゚ -゚)『いや、あいつオタクっぽいし、こういうの好きかなって』

(´・ω・`)「オタクが全員ツンデレ好きだなんてとんだ誤解だよ」

864 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/21(水) 23:06:54 ID:.TVOY41k0

 こうして一人と二つのラブレター添削は始まりました。


川 ゚ -゚)『「好きだ。付き合ってくんろ」』

( ^ω^)「訛ってる訛ってる」


川 ゚ -゚)『「付き合って結婚して子供作って一緒の墓入ろうぜ!」』

(´・ω・`)「ノリの割に言ってることが重すぎる」


川 ゚ -゚)『「好きだアアアア――zz______ッッ!!」』

(;^ω^)「暑苦しい!」


(´・ω・`)「普通に「好きです、付き合ってください」じゃだめなの?」

川 ゚ -゚)『そんな面白味もクソもないようなもんはラブレターじゃねえ』

( ^ω^)「ラブレターに面白味とかクソとか求める方が間違ってるお」

川 ゚ -゚)『貰った人が嬉しいって思うラブレターが私の目指す物なんだ』

( ^ω^)「あんた今まで自分が書いたラブレター貰って嬉しいと思えるのか」

865 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/21(水) 23:07:49 ID:.TVOY41k0

 毎晩毎晩、飽きもせず月と雲と会話するクー。

「今日も捨てられた」「もう諦めたら?」「嫌だ!諦めないぞ!ぷん!」「ぷんってなんだお……」

 そんな会話が続くこと何十回何百回。



川 ゚ -゚)『明日ここにくるよう呼び出した』

(´・ω・`)「もしかして、直接告白するのかい?」

川 ゚ -゚)『ああ。正直心臓バックバクだ』

( ^ω^)「あんな粘着質かつ病的なラブレター送り続けておいて今更バックバク(笑)」

川 ゚ -゚)『私がゴムゴムの実の能力者だったらなぁ。宇宙まで腕伸ばしてお前を殴れたのになぁ』

866 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/21(水) 23:08:55 ID:.TVOY41k0

 「じゃあ、明日またくるから」、とクーは言い残してその場を去りました。
 残された月と雲はしばらく黙って、そして唐突に口を開きました。口ないけど。


(´・ω・`)「うまくいくと思うかい?」

( ^ω^)「さあ。うまくいけばいいとは思うけど」

(´・ω・`)「僕もそう思うよ。でも」

( ^ω^)「明日全部わかるんだお。だから今は、やめようお」

(´・ω・`)「……。そうだね」


 どこか悲しそうな声を最後に、会話は終わりました。

867 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/21(水) 23:10:43 ID:.TVOY41k0

 次の日。

 いつものように空に佇む月と雲の元に、見慣れない人間が現れました。



('A` )=( 'A`)キョロキョロ


( ^ω^)「(挙動不審でキメエ……)あれかお」

(´・ω・`)「あれだろうね」


 アンパンを数十回殴ったような顔をした男、ドクオはその場に座り込みました。
 薄汚れた学生服を見に纏い、時折ちらちらと辺りに視線を配らせます。


(´・ω・`)「……クー、来ないね」

( ^ω^)「何やってるんだおあいつ……」

868 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/21(水) 23:11:59 ID:.TVOY41k0

 ドクオが座り込んで数十分経ちました。
 ちらちらと辺りを見る回数が徐々に減ってきていたドクオは、唐突に立ち上がります。


(;´・ω・`)「あ、やばい、帰っちゃう」

(;^ω^)「あーもー! 何やってんだお一体……」


月が痺れを切らしたように大声を上げたその時です。



『ドクオオオオオオオオオッッ――――z______ッッッ!!!』

869 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/21(水) 23:13:13 ID:.TVOY41k0

 先程までの静寂とは真逆の喧しい怒声が響き渡りました。
 月も雲もドクオも驚いて肩をびくつかせます。一部肩ないけど。


川 ゚Д゚)『好きだッッ! 好きなんだあああああああッッッ!!』


 顔を歪めて、クールのクの字すら捨て去ったクーが、メガホンを手に叫

んでいました。
 左脇には引っ越し作業に使えそうなダンボールが抱えられています。


(´・ω・`)「なんというド直球な」


 呆気にとられたように雲が言ったと同時に、クーは脇に抱えていたダンボールの中身を思い切りぶちまけました。

870 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/21(水) 23:15:01 ID:.TVOY41k0

 何も知らない人から見れば、それは多分吹雪のように見えたでしょう。

 ダンボールの中身は桃色の便せんでした。
 それがクーが書き続けてきたラブレターであることは、毎日添削させられていた月と雲にはすぐにわかりました。


 何十枚どころか百枚に近い量のラブレターが、呆気にとられたままのドクオに降り注ぎます。

 そのほとんどは、彼の体をすり抜けたのですが。


('∀`)


 手紙の吹雪がようやくやんだ時、ドクオは笑顔を浮かべていました。
 とても嬉しそうで、けれどどこか寂しさも滲んだ、そんな笑顔です。

 ドクオは足元に落ちた便せんを愛おしそうに撫で、真っ直ぐクーの方を見て、口を開きました。


 『ありがとう』


 唇の動きだけでそう言って、ドクオの姿は輪郭が溶けるように消えました。

871 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/21(水) 23:15:52 ID:.TVOY41k0

川 ゚ -゚)『交通事故だったんだ』


 小さく呟きながら、クーが手紙を一枚拾い上げます。
 中を見ると、『あいらびゅーん』とふざけた文章が躍っていました。


川 ゚ -゚)『トラックの前に飛び出した猫を助けようとしたんだと。
     しかも猫はさっさと逃げて、あいつ一人だけ轢かれる形になったんだ。アホだろ』


 クーは何度も手紙を書いて、その度にドクオに持って行きました。
 その度に指が手紙をすり抜けて、彼は悲しそうな顔をするのです。


川 ゚ -゚)『けどな、私がアホなラブレターを持って行けば、あいつは笑ってくれるんだ』


 やたら熱血だったり、ツンデレ風だったり、電波入ってたり、レパートリー豊富なラブレターを見る度に、ドクオは笑っていました。
 けれどその笑顔にはどこか悲しさが混じっていて。


川 - )『なあ、ドクオは――最後に「ありがとう」って言ってくれたよな? これって両想いってことでいいんだよな?』

872 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/21(水) 23:16:32 ID:.TVOY41k0

( ^ω^)「きっと、そうだお」


 肩を震わせるクーを見つめながら、月は優しく答えました。


川 - )『はは、じゃああの世に行ったらめでたくカップルだな。毎日デートするぞ、遊園地とか、ピクニックとか』

(´・ω・`)「ドクオ君アクティブな方じゃなさそうだったし、疲れちゃいそうだね」

川 - )『そうか……なら、たまにはお家デートもするか……』


川 ゚ -゚)『DVD観賞するのも、悪くないしな』



 顔を上げたクーは、いつものように無表情でした。

873 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/21(水) 23:17:30 ID:.TVOY41k0

川 ゚ -゚)『ところで、私とドクオが同じように天国に行けなきゃデートできないわけだが』

( ^ω^)「天国に決まってるお」

(´・ω・`)「クーはちょっと変だけど悪い人ではないもんね」

川 ゚ -゚)『当たり前だろう。私が心配したのはドクオが地獄に落ちないかということだ』

( ^ω^)「そっちかよ」

川 ゚ -゚)『いやしかし、添削だの告白だの、付き合わせてしまってすまなかったな』

(´・ω・`)「すまないなんて言うなよ。君と僕らの仲じゃないか」

( ^ω^)「おっおっ、終わりよければすべてよしだお」

874 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/21(水) 23:18:28 ID:.TVOY41k0

川 ゚ -゚)『……お前らは、最高の友達だよ』

(´・ω・`)「なんだよ、急に。照れるなぁ」

川 ゚ -゚)『なあ、あのさ、また会えるよな?』

( ^ω^)「あったりまえだのクラッカーだお」

川 ゚ ー゚)『そっか、そうだよな』




 ありがとう、と呟いたクーの手からメガホンが滑り落ちます。

 それが地面に落ちた時にはもう既に、クーの姿はありませんでした。

875 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/21(水) 23:19:35 ID:.TVOY41k0

(´・ω・`)「自殺者は天国に行けないっていうじゃない」


 雲がもどかしそうに、地面に転がり落ちたメガホンを見つめます。
 僕にゴムゴムの実の能力があれば、とでも言いたげな表情です。


(´・ω・`)「でもね、僕はそれを信じてないんだ。
      自殺だろうとなんだろうと、懸命に生きた人は皆天国に行けると思ってる」

( ^ω^)「僕も同じ考えだお」


 月もまたメガホンを見つめていました。
 ただ一つ雲と違うのは、その視線がメガホンそのものではなく、数分前までそれを握っていた少女に向けられていたことです。


(´・ω・`)「だからきっと、クーは天国でドクオ君と再会してるよね」

( ^ω^)「あったりまえだのクラッカー、だお」


 先程と同じ台詞を呟いて、月はそっと天国に思いを馳せました。
 願わくは彼と彼女が幸せに暮らせていたら。と、月は地上人々がそうするように、空で燦然と輝く自分に願いをかけたのでした。


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