■2012年芸術の秋ラノベ祭りのようです
└(・∀ ・)と兄弟のようです
└後編 五
- 414 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/24(土) 23:03:55.33 ID:O5cxbXo50
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闇がワカッテマスに向かい、同時に兄者が駆ける。
どんな生き物にも弱点はある。
精霊も死ぬときは死ぬ。
( <●><●>) 「呆れてしまいますよ」
闇を避け、剣を光で防ぐ。
( <●><●>) 「無駄なんですよ。全部。
計画を知ったあなた方、というか、その子に関わったあなた方を生かしておく予定はありませんし、
その子はこれから私のために実験体になってもらわねばなりません」
( ´_ゝ`)「だから、そんなことはさせないってんだよ!」
( <●><●>) 「どうやって止めるのですか?
私にはあなた方の行動が見えています。
防御は精霊使いが、少しの攻撃ならば私が己の能力で予知し、避けることができます」
攻撃が当たらなければ死ぬことはない。
先ほどから攻撃を受けているのは流石兄弟だけだ。
何度も地に伏しているため、彼らの服は泥で汚れている。
- 418 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/24(土) 23:06:50.94 ID:O5cxbXo50
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( <●><●>) 「命乞いでもしてみます?
無駄ですけど、やってみてもいいですよ」
(´<_` )「それで、またんきを見逃すのか?」
( <●><●>) 「いいえ」
(´<_` )「なら、しねぇよ!」
弟者が物理攻撃に出る。
予想外の行動ではあるが、先を見通すことのできるワカッテマスに奇襲は意味をなさない。
兄者よりもトロい攻撃をあっさりと避けて、顔面に拳を入れる。
(∩<_` )「ってー」
呻きながらも立ち上がる。
黙って寝転んでいては殺してくれと言っているようなものだ。
( <●><●>) 「対策なんてうてないでしょうに。
奇襲も、遠距離攻撃も、私に届く前にわかるのですから」
( ´_ゝ`)「だからって、諦められるわけねーだろ!」
- 419 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/24(土) 23:10:19.09 ID:O5cxbXo50
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弟者の仇とばかりに短刀で突き刺す動作をする。
しかし、ワカッテマスには届かない。
( <●><●>) 「それも駄目。これも駄目。あれも駄目。
まぁ、よくも向かってこれますね」
(;・∀ ・)「あにじゃ……。おとじゃ……」
( <●><●>) 「あなたのために、皆さん、一生懸命ですねぇ」
か細い声を出したまたんきに、ワカッテマスは微笑みかける。
その目が笑っていないのは言うまでもない。
(#'A`)「コッチミンナ」
ドクオが二人の間に立ちはだかり、追い払う仕草をする。
ワカッテマスは怒った様子もなく、肩をすくめる。
彼にとって、ドクオのような小さな精霊は、眼中にもないのだろう。
ブーンはまたんきの傍で彼を撫でている。
少しでも気が楽になればいい。
- 420 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/24(土) 23:13:20.41 ID:O5cxbXo50
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ワカッテマスを攻撃しながら、時折フィンレクトを狙ってみる。
そちらを攻略する術も同時に探しているのだ。
フィンレクトを倒すことができれば、戦力は格段に落ちるはずだ。
(´<_`;)「ちっ」
四人の中で、最初に膝をついたのは弟者だった。
体力のない弟者が、魔法だけでなく体術も使って戦っているのだ。
普段から考えれば、むしろよく動いている方だといえる。
( ´_ゝ`)「弟者! 休むなら下がれ!」
(´<_`;)「大丈夫だ!」
動くことができないのならばと、弟者は再び詠唱を始める。
詠唱をするだけのものとはいえ、日に数十回も使えば精神的な疲れが出る。
弟者を苦しめているのは、動かぬ体だけではない。
( <●><●>) 「はいはい。あなた方はよく頑張っています。
神に変わって、私が花丸をあげましょう」
- 423 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/24(土) 23:17:02.60 ID:O5cxbXo50
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( ´_ゝ`)「馬鹿にしやがって……」
兄者は低い声を出す。
どうにか突破するために頭を働かせる。
集中する。これは殺しあいだ。
己のモノを守るために、相手を殺さなくてはならない。
愛用のククリを握り、歯を食いしばる。
(´<_` )「闇の精霊、ドクオと契約せし我が命ず。
木々の影よ、そこに接する影よ、
奴の動きを封じよ!」
ワカッテマスの影が蠢き、彼の足を捕らえる。
周囲が木々の影で溢れているからこそ使える魔法だ。
いくら未来が見えているとはいえ、己の影から湧き出る攻撃には対処できまい。
( ´_ゝ`)「ナイス弟者!」
ククリを握って走る。
狙うは一つ。心臓だ。
魔法を発動したばかりの弟者も兄者に倣う。
手持ちの短剣は落としてしまったままなので、一撃顔面に拳を入れるつもりだ。
- 424 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/24(土) 23:21:22.02 ID:O5cxbXo50
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( <●><●>) 「……少々、鬱陶しいですね」
彼の足元から光が溢れる。
それは影を消し去り、ワカッテマスを自由の身にした。
不愉快そうな彼は、またんきの傍にいるドクオを睨む。
( <●><●>) 「闇などという、汚らわしい存在が私に触れる。
そのような所業が許されるとでも?」
小さく呟き、ドクオから離れる。
その後を兄者と弟者が追う。
兄者は転がっているダーツを広い上げ、ワカッテマスの背に投げつける。
それは光の壁で防がれてしまったが、本命はククリだ。
壁のないところに入りこみ、刃をワカッテマスの身に当てようとする。
( <●><●>) 「おっと」
避けられたが、そこには弟者の魔法がある。
ワカッテマスは不安定な態勢から、兄者の頭を掴み、無理矢理に体を捻る。
- 427 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/24(土) 23:24:55.66 ID:O5cxbXo50
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(´<_` )「外したかっ!」
( ´_ゝ`)「首持っていかれるかと思った」
すぐさま身を引いた兄者は首をさすり、ワカッテマスを見る。
( <●><●>) 「……このくらいでいいでしょうか」
( ´_ゝ`)「何がだ」
ワカッテマスが手を上げる。
それを目視したフィンレクトは、ゆらりと顔の向きを変えた。
(´<_` )「おい」
弟者の目がフィンレクトをはっきりと映している。
感情のない瞳が向けられているのは、離れたドラゴンの方向だ。
流石兄弟は思ったよりも彼らから離れてしまっていた。
( <●><●>) 「邪魔なんですよ」
誘いこまれてしまっていた。
- 429 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/24(土) 23:28:10.25 ID:O5cxbXo50
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(‘_L’)「光の精霊、ワカッテマスと契約せし我が命ず。
収束する光よ、圧縮する光よ。
一閃となれ」
(´<_`;)「逃げろ!」
弟者が叫ぶ。
同時に兄者が駆ける。
全速力、足の力を限界まで使う。
(;´_ゝ`)「ドラゴン! ブーン! ドクオ! またんき!」
届かない。
手も、足も、意味をなさない。
- 431 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/24(土) 23:31:57.24 ID:O5cxbXo50
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(;^ω^)「うわっ!」
ドラゴンが体を動かし、ビームを避ける。
彼の背に乗っているまたんきと、その頭を撫でていたブーンは同じように避けることができた。
しかし、またんきの前で浮遊していたドクオは反応が遅れた。
(;・∀ ・)「ドクオ!」
またんきが手を伸ばす。
しかし、ドクオはその手を振り払った。
(・∀ ・)「――な、んで」
呆然と呟く。
('A`)「マタンキ……」
ドクオには見えていた。
ビームがもう避けようのないところまできていたのが。
もしも、またんきがドクオを掴めば、彼の手もビームで焼かれることとなっただろう。
('∀`)「マケルナヨ」
- 435 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/24(土) 23:35:01.26 ID:O5cxbXo50
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蒸発するような音がした。
それだけだった。
(・∀ ・)「ど、くお……?」
そこにはなにもなかった。
何かいた証すら残らなかった。
- 440 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/24(土) 23:39:01.16 ID:O5cxbXo50
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( ^ω^)「どくお……。
なんで……だお。
どくお……?」
ブーンも呆然としている。
生まれたときから一緒だった。
流石兄弟とは違うが、双子のようなものだった。
( ;ω;)「なんでだおおおおおお!」
慟哭。
消失してしまった片割れを求めて泣き叫ぶが、返事はない。
(・∀ ・)「……」
またんきも言葉を発せずにいた。
負けるなよ。と、いうのが最期の言葉だったが、何に負けてはいけないのだろうか。
(・∀ ・)
ドラゴンに触れる。
心配そうな顔をしていた。
ワカッテマスに負けてはいけないのだろうか。
世間に負けてはいけないのだろうか。
己の心に負けてはいけないのだろうか。
- 442 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/24(土) 23:42:58.47 ID:O5cxbXo50
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(・∀ ・)「ぜんぶ、なのかなー」
答えはわからない。
答えを教わろうと、視線を彷徨わせるが、ドクオはいない。
彼の声は聞こえない。
ドラゴンは顔をまたんきにこすりつける。
慰めのつもりだ。
(・∀ ・)
けれど、反応は返ってこない。
ブーンの泣き声だけが聞こえる。
- 445 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/24(土) 23:46:05.08 ID:O5cxbXo50
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( ´_ゝ`)「――ドクオ」
(´<_` )「てめぇら……」
流石兄弟が歪んだ顔でワカッテマスとフィンレクトを睨む。
今にも泣きそうな顔だ。
しかし、今は泣いてもしかたがない。
歯を食いしばって耐える。
( <●><●>) 「だって、邪魔だったんです。
闇なんて、汚らわしい」
( #´_ゝ`)「てめぇに、ドクオの何がわかる!」
兄者がククリを片手に向かう。
( #´_ゝ`)「臆病で! ネガティブで!」
ワカッテマスが剣を避ける。
光の壁は現れない。
( #´_ゝ`)「体力もなくて、力もない!」
ワカッテマスが近くに落ちていた短剣を拾う。
( #´_ゝ`)「でも!
優しくて、男気があって、勇気があって、慎重に考えてくれる……。
そんな奴だったんだ!」
- 448 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/24(土) 23:49:55.50 ID:O5cxbXo50
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ククリがワカッテマスの体をわずかに切る。
フィンレクトは何をしているのだと、彼が視線を向けた。
(´<_`# )「殺す! 殺す! てめぇを、殺す!」
弟者はフィンレクトに何度も攻撃をしかけていた。
拳を振るい、蹴り上げる。
そして合間に魔法を使う。
闇魔法を使うことは、もう二度とない。
(‘_L’)「光の精霊――」
(´<_`# )「させねぇ!」
肘をフィンレクトの顔面に入れる。
その代わり、彼が持っていたナイフが腹に刺さった。
(゚<_゚ # )「殺す! 何があっても、てめぇだけは!」
- 450 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/24(土) 23:53:11.26 ID:O5cxbXo50
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( #´_ゝ`)「うちの弟はこえーぞ?
怒らせるもんじゃない」
( <●><●>) 「そのようです、ね!」
腹を刺されても、弟者は痛みを訴えなかった。
興奮状態から脳内麻薬でも出ているのだろう。
あまり長時間、相手をしたくはない。
( #´_ゝ`)「お得意の予知はどうした!」
( <●><●>) 「この結末ですか?
それは変わりません、よ!
私の精霊使いが魔法を使わずともわかります」
( #´_ゝ`)「そうかよ!」
光の壁をあてにすることをやめたワカッテマスは、己の予知のみを使い、兄者の攻撃を避ける。
おかげで油断がなくなり、刃先が彼の体に掠ることはなくなった。
- 454 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/24(土) 23:57:08.58 ID:O5cxbXo50
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(゚<_゚ # )「殺す!」
弟者が跳躍し、フィンレクトの頭を掴む。
そのまま膝を叩き込んだ。
衝撃は大きいが、黙って倒れるわけにはいかない。
手にしていたナイフを弟者の太ももに突き刺し、フィンレクトはその場に倒れた。
(゚<_゚ # )「雷の精霊、電気王と契約せし我が命ず。
走る稲妻よ、駆け巡る信号よ、
この者の体を潰せ!」
弟者はフィンレクトの胸に手を押し付ける。
瞬間、倒れていた彼の体が激しく動く。
跳ねるように地面をのたうち回るが、弟者は手を離さない。
(゚<_゚ # )「死ね。死ね。死ね。潰えろ」
まともに動かぬ手で、フィンレクトはナイフを弟者の腹に再び突き刺す。
血があふれ、辺りに鮮血が飛び散るが、弟者の目はただ一点。
フィンレクトだけを映している。
- 455 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/25(日) 00:01:01.21 ID:AaWc7ilq0
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フィンレクトの体が止まる。
もう息をしていない。
弟者は死体の上に覆い被さるように倒れた。
腹からは血が出ている。
複数回刺されたそこは、同じだけの傷が刻まれた。
(´<_ )「やっべ……。
血、出しすぎ……」
今になって痛みが走る。
相打ち覚悟で突っ込んだかいがあるというものだが、どうせならば生きていたい。
弟者は腹を抑え、足に力を入れる。
足も痛い。動くことが辛い。
それでも動く。
精霊使いは倒した。
後は、あの精霊だけだ。
- 458 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/25(日) 00:04:23.54 ID:AaWc7ilq0
-
( <●><●>) 「……えげつないことをしますね。あなたの弟は」
どこぞの死刑道具のような魔法だ。
ただ電流を流しただけとはいえ、非道とも言える行為だ。
思いついたとしても、普通は実行しない。
( ´_ゝ`)「だろ?
自慢の弟だ」
兄者が笑う。
しかし、弟者の腹や足から血が出ていたのは気なる。
( ´_ゝ`)「……もう、何も失わない」
重い言葉を零し、兄者はドラゴンの方へ顔を向ける。
精霊使いが死んだことで、ワカッテマス自身も積極的に攻撃をしかけてくるようになった。
あまり時間を取ることはできない。
兄者は軽く地面を蹴り、弟者の方へ近づく。
死体に覆い被さっていたはずの彼も、震える足で立ち上がり、こちらに来ようとしていた。
- 462 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/25(日) 00:07:12.32 ID:AaWc7ilq0
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( ´_ゝ`)「ドラゴン! 飛べ!
コイツさえ殺れば、空察だっていつも通りだ!」
またんきを心配していたドラゴンが羽根を広げる。
口で器用にまたんきの服を掴むと、背中に放りなげる。
(・∀ ・)
呆然としているまたんきは反応を返さない。
黙って背中で揺られている。
(´<_ )「あにじゃ……」
弟者はフィンレクトから奪ったらしいナイフを手にしている。
腹からは血が流れ、彼が歩いたところまで赤くなっていた。
( ´_ゝ`)「弟者、お前もドラゴンに乗れ」
(´<_ )「なに、言ってんだ。
オレも殺る。あいつを、殺す」
ナイフが強く握られる。
- 465 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/25(日) 00:10:43.00 ID:AaWc7ilq0
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( <●><●>) 「逃がすとでも?」
ワカッテマスが迫り来る。
もはやあのビームは出せないだろうけれど、彼自身の強さも中々のものだ。
深い傷を負った弟者では、相手にもならない。
(´<_ )「ほら、殺るぞ、あにじゃ。
あいつは絶対に、殺す。殺す」
上手く思考もできていない。
そんな弟を、戦いの場に置いておく兄など存在しない。
(´<_ )「雷の、せいれい、でんき王と、けいやく、せし――。
ゴホッ。ウッ……」
弟者が血を吐く。
詠唱もできない。体術もできない。
それでも弟者はワカッテマスを睨んでいる。
あるのは殺意だけだ。
戦略も、力も何もない。
- 467 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/25(日) 00:13:44.65 ID:AaWc7ilq0
-
ワカッテマスが走る。
兄者は彼を止めるため、前へ躍り出た。
( ´_ゝ`)「弟者! お前は邪魔だ!
そんな体で何ができる。死にたいだけなら、別のところで死ね!」
(´<_ )「あに、じゃ……?」
( ´_ゝ`)「早くいけ! こいつはオレに任せろ!」
( <●><●>) 「あなた一人で何ができるんです?」
( ´_ゝ`)「お前の精霊使いだって、弟者一人に殺られてただろーが!」
( <●><●>) 「あんなクソ人間、どうでもいいですよ。
私が完璧になれば、精霊使いなんて皆殺しです」
( ´_ゝ`)「おー。怖いねぇ。
ますます、お前を生かしてはおけねぇな」
兄者が不敵に笑い、ワカッテマスを睨みつける。
- 470 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/25(日) 00:16:24.04 ID:AaWc7ilq0
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( ;ω;)「おとじゃ! どらごんにのるお!」
ドラゴンが困ったような顔をしている。
弟者を回収したい気持ちはあるようだが、弟者本人にその意思がないと、途中で飛び降りられでもしたら危ない。
ブーンは涙を流し、小さな手を伸ばしている。
(・∀ ・)
それでもまたんきは呆然としていた。
表情は笑みのままで、それでも感情はどこにもない。
(´<_ )「あにじゃ」
( #´_ゝ`)「早く行け! 馬鹿!
邪魔なんだよ! 魔法も、物理攻撃も、何もできないだろうが!」
弟者は腹を抑えながら兄者とワカッテマスの戦いを見つめる。
視界がぼやけ、彼らの動きを追うことすらできない。
(´<_ )「――はあく、した」
- 472 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/25(日) 00:19:19.29 ID:AaWc7ilq0
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頷いた弟者は、ドラゴンの背に飛びのる。
その際に血が飛び散ったが、その程度で騒いでいる場合ではない。
( ;ω;)「おとじゃ! しんじゃだめだお!」
(´<_ )「しなん……たぶん……」
ぐったりとドラゴンに体を預ける。
流れる血の量からして、すぐにでも病院に駆け込まなければ危ないだろう。
( ´_ゝ`)「――――」
その様子を地上から見ていた兄者も、気が気ではない。
しかし、目の前の男に集中しなければ、こちらも死んでしまう。
( <●><●>) 「安心してください。
すぐに、全員が同じところへ逝きますよ。
あの子は実験をしてからなので、少し遅れて、ですけど」
( ´_ゝ`)「黙れ」
( <●><●>) 「未来は変わりません」
( ´_ゝ`)「黙れと言った」
- 473 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/25(日) 00:22:29.60 ID:AaWc7ilq0
-
兄者はククリを持つ。
( <●><●>) 「どうやって私に勝つつもりなんです?」
( ´_ゝ`)「その口を閉じろ」
地を駆け、ワカッテマスの隙を狙う。
だが、攻撃の来る場所やタイミングのわかる彼に、その攻撃は通用しない。
木の上から攻撃をしても、複数の攻撃を同時にしても、結果は同じだ。
一人で攻撃しているのだから、全方位からの攻撃は不可能。
当然、隙は生まれる。
ワカッテマスはその隙間を縫って、攻撃を避ける。
( <●><●>) 「あなたも、中々やり手ですけどね」
ワカッテマスの攻撃を兄者は寸前のところで避ける。
これは彼の経験と身体能力の賜物だ。
未来を見るワカッテマスに隙をつかれないためにも、兄者は攻撃の手を緩めない。
能力から考えても、無駄な動きがどうしてもできてしまうことを考えても、不利なのは兄者だ。
最小限の動きをできるワカッテマスとは差が開く一方だ。
- 475 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/25(日) 00:25:41.47 ID:AaWc7ilq0
-
( ´_ゝ`)「オレは、兄なんだよ」
ククリを持つ力が強くなる。
( ´_ゝ`)「だから、守ってやらなくちゃいけない」
唇を噛みしめ、血が出たが気にしない。
その痛みは罰だ。
( ´_ゝ`)「なのに、守れなかった。
……今度は、守りきる」
兄者が走る。
目はしっかりとワカッテマスを捉えている。
( <●><●>) 「無理ですよ」
ククリの攻撃を避け、兄者の太ももを蹴る。
疲れで兄者の動きが鈍り始めていた。
- 477 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/25(日) 00:28:41.39 ID:AaWc7ilq0
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痺れる足を叱咤し、兄者は走る。
ワカッテマスの死角から攻撃をする。
未来が見えるといっても、動きに体がついていかなければいい。
もしくは、見えていても、どうにもならない攻撃をすればい。
兄者は少しでも避けづらいところから攻撃を繰り出す。
泥に足を取られ、無様に転ぶこともあった。
それでもすぐに立ち上がり、ワカッテマスと対峙する。
( <●><●>) 「泥だらけですね」
( ´_ゝ`)「それがどうした」
ワカッテマスの懐にもぐりこむ。
玉砕覚悟の攻撃かと、ワカッテマスは目を細めた。
( <●><●>) 「無様です」
兄者のククリを避ける。少しだけ体に触れたが、ワカッテマスは短剣で兄者の腕を切った。
両断はできなかったが、それなりに深い傷だ。
鮮血が手を伝って地面へ落ちる。
( ´_ゝ`)「まだ、だ……」
兄者は再び地面を蹴る。
- 478 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/25(日) 00:31:45.75 ID:AaWc7ilq0
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弟者の攻撃を彷彿とさせる動きだったが、兄者のしていることは無意味だ。
ワカッテマスは嘲笑する。
兄者が彼につける傷よりも、ワカッテマスが兄者に与える傷の方が大きい。
これでは、兄者が死ぬだけだ。
( <●><●>) 「あなたは馬鹿ですね」
(メ´_ゝ`)「馬鹿でいいさ」
ワカッテマスの肌が少しだけ裂ける。
赤い血がわずかに滲んだが、兄者の腹からはそれ以上の血が溢れた。
(メ´_ゝ`)「最後に勝つのはオレだから」
( <●><●>) 「何を根拠に」
ワカッテマスはため息をつく。
彼に疲れた様子はない。
- 480 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/25(日) 00:34:15.62 ID:AaWc7ilq0
-
(メ´_ゝ`)「お前は死んだら負けだろ?」
( <●><●>) 「当然です。
死、以外の負けなどありません」
(メ´_ゝ`)「オレはな、あいつらを殺されたら負けなんだよ」
兄者は口角を上げる。
血と泥に汚れた男の笑みとは思えないほど、それは勝ち誇っていた。
(;<●><●>) 「何を……」
(メ´_ゝ`)「わかるんだろ?
未来が、さ」
笑って、空を見上げる。
思いを馳せるのは、逃げていった者達のことだ。
(;<●><●>) 「何だ! 何だ! お前は、次に何をする!」
ワカッテマスが怯えた声を上げる。
体は震え、必死に体を叩いている。
- 485 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/25(日) 00:37:15.11 ID:AaWc7ilq0
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兄者は視線を、対峙している男へ戻す。
怯えている顔は愉快だ。
ざまあみろ。と、思う。
(メ´_ゝ`)「ジョルジュ。
お前の言っていたことは本当だったよ」
ライターを取り出す。
使ったことはないが、使い方は知っている。
兄者は火をつけた。
- 488 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/25(日) 00:40:24.86 ID:AaWc7ilq0
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(;< >< >) 「あ、あああ……ああぁぁぁああああ!」
途端に、火が走り、ワカッテマスに巻きついた。
一度ついた炎は簡単には消えない。
身の焼ける匂いがする。
- 490 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/25(日) 00:43:24.64 ID:AaWc7ilq0
-
(メ´_ゝ`)「念のため、この辺りの木にも巻きつけて、逃げられないようにしたんだが……。
必要なかったようだな」
兄者は火の海の中にいた。
周囲の木は燃え、目の前には狂ったように踊っている男がいる。
(;< >< >) 「たす……たすけ……っ……あぁぁぁあああ!」
(メ´_ゝ`)「燃えろ燃えろ。
いやー。備えあれば憂いなし。
スッておいてよかった」
兄者はその場に座り込み、懐から糸を出す。
それは極細で、目をこらさなければわからない。
体に絡みついてもわからない。
そしてよく燃える。
- 496 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/25(日) 00:46:33.36 ID:AaWc7ilq0
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(メ´_ゝ`)「お前と心中だ。
オレも、もう、動けない」
兄者は上半身を起こしておくのも辛くなって、その場に倒れこむ。
泥が背中についたが、もはやどうでもいい。
これから燃えて、骨だけになるのだ。
外側の汚れなど放っておけばいい。
(メ´_ゝ`)「楽しかったなー」
短い一生だった。
けれど、充実はしていた。
いつでも隣には弟者がいて、
ドラゴンがいるようになって、
ブーンとドクオがやってきて、
またんきを仲間にした。
様々な場所を回った。
遊んだ。
生きてきた。
(メ´_ゝ`)「うん。中々、いい人生だった」
笑って死ねる。
それは幸福だ。
- 499 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/25(日) 00:49:35.64 ID:AaWc7ilq0
- _
( ゚∀゚)「兄者」
(メ´_ゝ`)「よう。どうしたんだ」
ワカッテマスの悲鳴が消えた頃、見知った声が聞こえた。
どうにか目を向けてみると、やはりジョルジュがいる。
手を上げる力も残っていないので、適当に声をかけてみた。
_
( ゚∀゚)「……死ぬのか」
(メ´_ゝ`)「そうだな。
でも、あいつを倒したら、追われないらしいし、それで、いいや」
ジョルジュは火属性の精霊だ。
この火の海の中にいたとしても生き残るだろう。
兄者は目を細める。ジョルジュがわざわざ看取りにきてくれたとは思えない。
情に厚い男ではあるが、決別を交わしたのだから。
_
( ゚∀゚)「悪い」
(メ´_ゝ`)「謝んなって」
そうだ。と、兄者は己の手を開く。
(メ´_ゝ`)「これ、もう手が動かねーから、自分で取ってくれ。
オレの切り札。お前に、やるよ」
兄者の腹の上にはライターがある。
- 500 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/25(日) 00:52:39.14 ID:AaWc7ilq0
- _
( ゚∀゚)「……お前から物を貰うなんて始めてだよ。
コレ、そんなに役立ったのか」
(メ´_ゝ`)「ああ」
_
( ゚∀゚)「そうか」
二人は沈黙する。
そうしている間にも火は着々と兄者に近づいていた。
_
( ゚∀゚)「オレが、もっと早く来ていれば、お前は死ななかった」
ジョルジュは兄者の体を目に映す。
何処も彼処も血と泥だらけだ。
動脈がやられているのが一目見ればわかる。
もう助からない。
目だってもう見えてはいないのだろう。
(メ´_ゝ`)「ん……。そうだな」
_
( ゚∀゚)「そこは、そうでもない。とか言っとけ」
(メ´_ゝ`)「言ったら、お前は満足するか?」
_
( ゚∀゚)「しねぇ」
(メ´_ゝ`)「んじゃ、どっちでもいいだろ」
- 502 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/25(日) 00:55:39.07 ID:AaWc7ilq0
-
(メ´_ゝ`)「そうだ」
か細い声だ。
もう死ぬのだろう。
ジョルジュはその最期を見届けるまで、この場を去るつもりはない。
贖罪の意識と、友人としての想いが交じり合う。
_
( ゚∀゚)「ん?」
(メ´_ゝ`)「おまえ、わるいと、おもってんだろ?」
_
( ゚∀゚)「まぁな」
(メ´_ゝ`)「なら、弟達のこと、たのむわ」
_
( ゚∀゚)「弟達?」
兄者の弟は一人だ。
実は他にもいたというのだろうか。
ジョルジュが首を傾げ、兄者は笑う。
- 503 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/25(日) 00:58:22.05 ID:AaWc7ilq0
-
(メ´_ゝ`)「弟者と、ブーンと、ドラゴンと、またんき。
みんな、おれの、かわいい弟だ」
一人、守れなかったけど。と、力のない声が聞こえる。
_
( ゚∀゚)「――そうだな。
みんな、お前の弟だな」
(メ´_ゝ`)「かわいいだろ?」
_
( ゚∀゚)「そこは、ノーコメント」
(メ´_ゝ`)「あっ。てめぇ」
兄者は笑う。
何も心配などしていないようだ。
死ぬことへの恐怖もない。
(メ´_ゝ`)「じゃあ、よろしく」
_
( ゚∀゚)「任せろ」
- 505 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/25(日) 01:01:32.41 ID:AaWc7ilq0
-
木が燃える。
火が音を立てる。
その中で、耳族が一人、息を引き取った。
_
( ∀ )
それを看取ったのは、一人の精霊だ。
彼は涙を流す権利さえ持たず、一つのライターと、ククリだけを手に、その場を去った。
遺体を持ち帰ることはできなかった。
残された言葉を守るため、遺体よりも気にかけるべきものがあった。
- 509 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/25(日) 01:04:33.47 ID:AaWc7ilq0
-
ジョルジュが二つの品を持って飛行船へ戻ったとき、そこには託された四人の弟達がいた。
逃走中のドラゴンを発見し、ギコが甲板へ誘導したらしい。
(´・ω・`)「弟者が一番危なかったです。
こんな大怪我、始めてだって、船医も騒いでましたよ」
弟者は顔を青くした船医に治療されていた。
出血が酷かったらしいが、そこは血気盛んな船員の血を拝借したようだ。
今はどうにか持ち直したらしく、ベッドで眠っている。
ブーンは泣き疲れて眠っており、またんきは呆然としたままだ。
流石にこの状態の面々に真実を伝えることはできない。
_
( ゚∀゚)「もう国がコイツらを追うことはないらしいぞ」
(,,゚Д゚)「それは、兄者が?」
_
( ゚∀゚)「あぁ」
(,,-Д-)「そうですか」
兄者に会ったはずなのに、隣に兄者の姿はない。
それだけでギコは全てを察した。
- 512 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/25(日) 01:07:17.63 ID:AaWc7ilq0
-
弟者が目覚めたのは、保護されてから数日が経ってからだった。
(´<_` )「兄者は?」
開口一番の台詞がこれだ。
あの場に兄者を一人置いてきたことが余程、気になっていたのだろう。
(,,゚Д゚)「こっちへ来い」
弟者が目覚めたと聞いたギコは、すぐに弟者の部屋に飛び込み、手を引いた。
まだ腹が痛んだが、今は言うことを聞いておくべきだろうと従う。
彼としては、ジョルジュの裏切りやら何やらがまだ解決していなかったので、
飛行船に乗っている者への不信感は切れていなかった。
(,,゚Д゚)「ここだ」
ギコはとある部屋に弟者を案内した。
(´<_` )「ここにいるんですか?」
(,,゚Д゚)「……」
黙って扉を開ける。
- 514 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/25(日) 01:10:11.19 ID:AaWc7ilq0
-
( ^ω^)「おとじゃ!」
(´<_` )「お、ブーン」
ブーンが弟者の胸に飛びこむ。腹が痛んだが、黙っておくことにした。
見れば、奥の方にまたんきがいた。
(・∀ ・)「……おとじゃ」
彼は光のない目で弟者に近づく。
不安定な表情だ。
的芽以降は、子供のような笑みを浮かべていたのが嘘のようだ。
(´<_` )「オレが寝ている間に何があったんだ?」
力のない手で弟者の服を掴んでいるまたんきを撫でる。
( ^ω^)「……ぼくらは、あのあと、ひこうせんのひとたちにたすけられたんだお」
(´<_` )「それは何となくわかっていたが、何でまた」
飛行船の実質的な隊長であったジョルジュが流石兄弟達を切ったのだ。
当然、他の船員達もそうするだろうし、それが当然だと思っていた。
助けられる理由がわからない。
- 515 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/25(日) 01:14:05.69 ID:AaWc7ilq0
-
ギコにでも聞こうかと顔を扉の方へ向けるが、そこに彼の姿はない。
何もしないと信用されているのか、まだ怪我の癒えていない弟者では何もできないと判断されたのか。
( ^ω^)「よく、わからないお。
でも、みんな、いつもどおりやさしかったお」
貴重な食料だろうに、毎日ブーンとまたんき、ドラゴンの分まで用意してくれていたらしい。
何不自由なく、むしろ手厚い治療を受けたという。
( ^ω^)「もう、くににおわれるしんぱいもなくなったって、いってたお」
(´<_` )「そうか。じゃあ、兄者が殺ったんだな」
少し安堵の表情を浮かべる。
光がわずかに見えた気がした。
(´<_` )「で、兄者は?」
( ^ω^)「……ここでみたことは、いちどもないお」
ブーンも兄者については何も聞かされていなかったらしい。
眉をひそめた弟者は、服を掴んでいたまたんきの肩が揺れていることに気づいた。
(・∀ ・)「……あにじゃ」
( ^ω^)「またんきは、ずっとそのちょうしなんだお」
感情を失ったように呆然とし、話したと思えば兄者やドクオ、弟者やブーン、ドラゴンの名を呼ぶだけ。
まるで廃人になってしまったかのようだ。
- 519 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/25(日) 01:19:46.51 ID:AaWc7ilq0
-
(,,゚Д゚)「こちらです」
_
( ゚∀゚)「おはよう。弟者」
ギコに連れられて、ジョルジュがやってきた。
弟者はどう反応すればいいのか迷い、結局軽い会釈をした。
_
( ゚∀゚)「お前が起きたらな、話そうと思ってた。
ドラゴンがいないのは残念だが、お前達を外に出すのはまだ駄目だって船医が言うもんでな」
頬を掻き、ジョルジュは視線を下に向ける。
煙草が欲しいと切実に思う。だが、そんなもので誤魔化してはいけない。
覚悟はしてきたつもりだったが、いざとなると言葉が出ない。
(´<_` )「兄者は……」
弟者が縋るような声を出す。
どこかに隔離されているような状態でもいい。
生きてくれているのならば。
ジョルジュは拳を握る。
_
( ゚∀゚)「兄者は、死んだ」
- 521 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/25(日) 01:22:12.95 ID:AaWc7ilq0
-
(´<_` )「……嘘だ」
_
( ゚∀゚)「これは、形見代わりだ」
抜き身のククリを渡す。
見覚えのあるそれは、間違いなく兄者の物だ。
( <_ )「……嘘だ。嘘だ。嘘だ!」
弟者はククリを落とし、床に膝をつく。
頭を掻き毟り、頭を下げる。
( ;ω;)「あ、あにじゃ、やっぱり……」
ブーンにも予想できていたことだ。
弟者が考えていなかったはずがない。
それでも、必死に打ち消し、幸せを信じていた。
( <_ )「嘘だ! 嘘だ!
兄者が、兄者が死んだ?」
床にシミがつく。
弟者の頬から涙が伝っている。
( <_ )「だって、兄者は言ったんだ!
死ぬときは一緒だって!
オレ達は、双子だからっ……!」
- 524 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/25(日) 01:25:04.13 ID:AaWc7ilq0
-
嗚咽が交じり始める。
実の兄が死んだのだ。
それも、一緒に逃げていれば助かったかもしれない。と、いう状況で。
人目も憚らず涙を流すのは、おかしなことではない。
( <_ )「あにじゃ……。あにじゃ、あにじゃ!」
床につくシミが段々と大きくなる。
(・∀ ・)「……あにじゃ、いないのか?」
弟者の背中に、またんきの小さな手が乗る。
( <_ )「またんき……」
(・∀ ・)「あにじゃ、いないのか?
ドクオも、ないのか?」
声が震えている。
小さな手が震えている。
( <_ )「……あぁ。
もう、いない、死んだんだ」
- 528 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/25(日) 01:28:15.12 ID:AaWc7ilq0
-
(・∀ ・)「あえない、のか……?」
( <_ )「会えない」
(・∀ ・)「りっぱな、とうぞくにしてくれるっていった」
( <_ )「言ったな」
(・∀ ・)「ずっと、いっしょにいてくれるっていった」
( <_ )「そうだったな」
(・∀ ・)「ゆきまつり、みにいくっていった」
( <_ )「そんなこともあったな」
(・∀ ・)「ひなんのはな、みにいこうっていった」
( <_ )「あぁ。
でも、死んだんだ。
兄者も、ドクオも」
(・∀ ・)
- 532 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/25(日) 01:31:28.94 ID:AaWc7ilq0
-
(・∀ ・)
_,
(・∀ ・)
_,
(・Д ・)
_,
(;Д ;)
_,
(;Д ;)「いやだああああああ!
あにじゃも、ドクオも、いなくなったらいやだああああああ!」
- 536 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/25(日) 01:34:20.70 ID:AaWc7ilq0
-
またんきは泣いた。
大声で、喉が裂けそうなくらいに。
_,
(;Д ;)「だって……。
やくそく、やくそくしたんだああああ!」
顔をぐしゃぐしゃにして、大粒の涙で目をいっぱいにする。
飛行船に保護されてからは、ずっと無感情だった少年とは思えない泣きっぷりだ。
(´<_` )「またんき……」
弟者が顔を上げる。
彼の顔も、綺麗とは言い難かった。
かろうじて涙を止めることはできていたが、流した涙の跡は隠せない。
_,
(;Д ;)「おれっ……! はじめて、そと、出て……。
いっぱい、やくそく、して……っ!
これ、からも、ずっと……ずっと……」
たくさんの約束を旅の中でした。
その約束全てが、消えてしまった。
_,
(;Д ;)「何で! 何で! 何で死んじゃったんだああああああああ」
- 539 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/25(日) 01:37:11.78 ID:AaWc7ilq0
-
泣き声が響く中、ジョルジュが口を開く。
_
( ゚∀゚)「……オレはな、お前らの兄貴から頼まれたんだ」
( ;ω;)「あにじゃかお?」
_
( ゚∀゚)「そうだ。お前ら、全員の兄貴からだ」
_,
(;Д ;)「ひっく……。うっ……。
あに、じゃぁ……ドク、オ……」
_
( ゚∀゚)「お前らのことを頼むって。
アイツは、最期までお前達のことだけを考えてたよ」
( <_ )「でも、その兄者は……。兄者はっ……!」
弟者は床を叩く。
それで兄者が帰ってくるわけでもなければ、気持ちが落ち着くわけでもない。
ただ、そうせずにはいられなかった。
- 541 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/25(日) 01:40:28.23 ID:AaWc7ilq0
- _
( -∀-)「お前達は、どうしたい?
何をしたい?」
ジョルジュが尋ねる。
彼は兄者の遺言を全うしなければいけない。
_
( -∀-)「オレを責めてくれても構わない。殴ってくれてもいい。
そうするだけの理由が、権利が、お前達にはある。
でも、お前達のこれからを、少しでも手助けさせてくれ。
兄者の、友の、最期の頼みなんだ」
(´<_` )「あんたっ……!」
弟者がジョルジュの胸倉を掴む。
顔面を殴ろうともう片方の手を強く握った。
それでも彼は目を閉じたままだ。
抵抗はしない。することは許されない。
( ;ω;)「おとじゃ、やめるお!」
(´<_` )「……」
ブーンの言葉に、弟者は握った拳を開く。
ただし、胸倉は掴んだままで、彼を見据える。
怒りとも、悲痛とも言える眼差しだ。
- 542 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/25(日) 01:43:20.80 ID:AaWc7ilq0
-
(´<_` )「――兄者は、あんたを責めることを、望まない」
一呼吸を置いてから、ようやく吐き出す。
手を離し、ジョルジュに背を向けた。
(´<_` )「オレは、兄者のしたことをして生きる。
それが、オレのしたいことだ」
_
( ゚∀゚)「お前は、お前の好きなように生きろ。
それが、兄者の望みだ」
(´<_` )「だから、兄者の意思を抱えて生きるんだ。
今さら、一人で優雅に暮らす気にはなれない」
_
( ゚∀゚)「……いいのか」
(´<_` )「しつこい。
オレの答えは、以前ニュー速で出した。
それ以上は――」
_
( -∀-)「お節介。か……」
弟者は泣きじゃくっているまたんきの隣に膝をつける。
考えてみれば、始めてみるまたんきの本当の泣き顔だ。
- 543 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/25(日) 01:46:36.72 ID:AaWc7ilq0
-
弟者は微笑みを浮かべた。
(´<_` )「一つ、兄者のやりたいことが終わったな」
_,
(;Д ;)「え?」
(´<_` )「元々、国を回るのは、お前を泣かせるためだっただろ?」
_,
(;Д ;)「あ……」
またんきは涙を袖で拭う。
けれど、涙は際限なしにあふれ出る。
(´<_` )「泣け。感情に素直になれ。
それでいいんだ」
泣いているまたんきを抱き締める。
弟者は溢れる涙を、腹の痛みのせいにした。
( <_ 。)「なぁ。またんき。
オレ達と盗賊になろう。
灯南へ花を見に行こう。
雪祭りを見て、オレが死ぬまで、ずっと一緒にいよう。
それで、兄弟みんなで、自由に生きよう」
<<<後編 四 ◆ エンディング>>>
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