2012年芸術の秋ラノベ祭りのようです
(・∀ ・)と兄弟のようです
  後編 三



166 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/24(土) 16:46:31.74 ID:O5cxbXo50
   
(´<_` )「気分を入れ替えて、シベリアに向かうとするか」

弟者は深呼吸を一つしてから言った。
少しでもまたんきを励ましてやりたいと思う心に偽りはない。

('A`)「サムクナルナ」

精霊といえども、極寒のシベリアは寒い。
最北の島、シベリアに向かうときは彼らも上着を羽織るのが常だ。

( ´_ゝ`)「弟者ー。オレの上着とってー」

(´<_` )「はいはいっと」

一番後ろに乗っている弟者が、全員分の上着を取り出す。
その中にはまたんきの分もしっかりと入っている。

(・∀ ・)「そんなにさむいのかー」

ワカッテマスのことを忘れるべく、またんきはこれから向かう場所について考える。

( ^ω^)「さむいってなもんじゃないお。
      いつもどおりのふくじゃ、こおってしまうお」

(・∀ ・)「へー?」

よくわかっていないらしい。

169 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/24(土) 16:49:32.76 ID:O5cxbXo50
( ´_ゝ`)「シベリアは年中雪が降っているような土地だ。
      暮らしにくくはあるが、灯南と違って、
      寒さに耐性のある植物なら育つから、そこそこ人もいる」

('A`)「ユキガ、ホントウニ、スゴインダヨ……」

(・∀ ・)「ゆきかー。たのしみだぞー」

(´<_` )「国内最大の図書館も見所だぞ」

(;・∀ ・)「と、としょかんか……」

弟者がまたんきを精霊使いにするため、みっちり勉強をさせると言っていたところだ。
図書館という場所には興味があるが、誰もが恐ろしいと口をそろえる弟者のスパルタは恐ろしい。
魔法を学びたい気持ちと同等の割合で逃げたい気持ちがあふれる。

( ^ω^)「しべりあは、みずぞくせいのちほうだから、またんきもまほうがつかえるかもしれないお」

ニュー速では失敗していたが、水属性の方が得意なのだとしたら、
シベリアで魔法を使ってみるのもいいだろう。
上手くいけば精霊使いになるためのスパルタかたも逃れられる。

(・∀ ・)「そうだな! そうする!」

かすかな希望に縋る。

(´<_` )「図書館は明後日くらいになるだろうしな。
      せいぜい足掻け」

弟者の笑い声は、またんきからしてみれば、まるで地獄の門が開くような恐ろしさだった。

170 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/24(土) 16:52:59.59 ID:O5cxbXo50
   
(・∀ ・)「そんなにとおいのかー」

たどり着けないほうが幸せなのかもしれない。
そんな思いを隠して尋ねる。

( ´_ゝ`)「いや、図書館自体は島の中心部より南にあるから、そう遠くないんだが……」

(;・∀ ・)「なら、すぐついちゃうんじゃないのかー?」

一瞬の希望が消えるのを感じた。
冷汗を流すまたんきを見て、弟者は少し笑う。

(´<_` )「ま、すぐにわかるさ」

またんきは首を傾げた。
地理に関して詳しくはないが、ドラゴンの飛ぶスピードは速いはずだ。

( ^ω^)「ま、かくごしておいたほうがいいお」

('A`)「タエロ。ソレダケシカ、イエナイ」

不穏な言葉を発する二人。
またんきの疑問はますます深くなる。

しかし、疑問の答えを、彼はすぐに知ることとなった。

172 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/24(土) 16:55:37.90 ID:O5cxbXo50
   
(; ∀  )「さむむむむむむむ……!」

本島から延びる橋の上を飛び、シベリアに入る。
しばらくは、本島とそう変わらない風景だった。

緑があって、空は薄く雲がかかっていて。
そんな風景が、あるとき一転した。

( ^ω^)「だいじょうぶかお?」

('A`)「アイカワラズ、フブイテルナー」

シベリアに入って小一時間。
またんきはさっそく、吹雪という名の洗礼を受けたのだ。

横から吹きつけてくる雪は、もはや凶器でしかない。
暖かい格好をしているはずなのに、手先が冷える。
またんきよりも寒さに弱いと思われる流石兄弟が平然としているのは、一重に覚悟と慣れなのかもしれない。

(; ∀  )「あばばばば……」

175 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/24(土) 16:58:44.56 ID:O5cxbXo50
   
吹きつける吹雪に、ドラゴンは地上へ降りる。
吹雪の中での飛行が危険だという理由もあるが、それ以上いドラゴンの身が心配であるがゆえの判断だ。

元々、彼は寒さに弱いらしく、見るからに弱っている。
無理をさせるくらいならば、シベリアなどこなくてもよかった。
またんきは切実に思う。自分の身も心配だった。

( ´_ゝ`)「大丈夫だって。すぐに慣れる」

(; ∀  )「何も見えないんだぞー」

(´<_` )「目を開けるコツがあるんだよ」

またんきは流石兄弟に手を引かれながら歩いている。
近くに町があるらしいが、吹雪で一歩前さえ危ういような状態だ。
何故、流石兄弟が自信満々に進んでいるのかわからない。

どうにか開けた目で隣を見ると、ドラゴンが目を細めて歩いている。
いつもは気力に溢れている金の瞳が、悲しそうに見えた。

(; ∀  )「どらごーん。おれら、ここで死ぬかもしれないなー」

吹雪く音で何も聞こえないが、ドラゴンのことだから喉で返事をしてくれたに違いない。
そう自分に言い聞かせ、またんきは一歩ずつ進む。

176 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/24(土) 17:01:36.83 ID:O5cxbXo50
   
( ^ω^)「ほら、またんき、ゆきがいっぱいだお」

(; ∀  )「ちっともきれいじゃないぞー」

( ´_ゝ`)「これだけあれば、綺麗なもんでも憎くなるな」

まったくもってその通りだ。
これが、空からハラハラと落ちる程度ならば幻想的だっただろう。

しかし、現実を見てみれば、暴力的なまでの数と勢いだ。
美しさなど遠くに投げ捨てている。
これならば、まだ宋咲の雷の方が綺麗だ。

(´<_` )「シベリアの町は、いい人が多いから、もう少し頑張れ」

(; ∀  )「そうなのか?」

('A`)「ナカマイシキガ、ツヨインダ」

自然の脅威の中で生きていると、人と人との結びつきは強くなる。
荒れている灯南やニュー速から遠い位置にあることも、優しさの秘訣かもしれない。
何にせよ、シベリアの町は雪と違って暖かいらしい。

そんな励ましに背中を押され、またんきは足を進めていく。
雪に足がはまる感覚も、こんなときでなければ楽しかったはずだ。

181 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/24(土) 17:09:19.81 ID:O5cxbXo50
   
どうにかこうにかで、やっと町にたどりついた頃には日が暮れていた。
一切の光がなくなったときは、ここで死ぬのだとまたんきは本気で覚悟した。

( ^ω^)「しべりあは、たいようがしずむのがはやいんだお」

(・∀ ・)「何でだ?」

(;^ω^)「そ、それは……」

(´<_` )「図書館にいったら、そういうことの調べ方も教えてやるからな」

現在、五人は宿屋にいる。
日が暮れた後にやってきた五人に対し、宿屋の主人は暖かく出迎えてくれた。
寒かっただろうと声をかけてくれ、暖かいスープも振舞ってもたらった。
さらに、寒さに震えるドラゴンを壊れかけとはいえ、屋根のある場所にいれてくれたのだ。

今まで町の中にドラゴンを入れなかった流石兄弟だが、シベリアでは少し違うらしい。
ドラゴンも今頃は寒さから少し逃れられているだろう。

またんきはほっと一息つく。
自分の身も心配だったが、弱っているドラゴンもずっと心配だった。

189 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/24(土) 17:26:24.57 ID:O5cxbXo50
   
( ´_ゝ`)「な? シベリアの人は優しいだろ?」

(・∀ ・)「どらごんを見てもおどろかないんだなー」

('A`)「ココノヒトタチハ、アマリホカノバショヲ、シラナイカラナ」

( ^ω^)「ふしぎなものがあっても、ほかにはあるんだろう。で、すませちゃうんだお」

(;・∀ ・)「それはそれですごいなー」

ドラゴンのような存在を、他にもいるんじゃない? ではすまされないだろう。普通ならば。
今までも地方特有のあれこれは目にしてきたつもりだが、ここにきて、また一つ驚かされることになるとは思っていなかった。

(´<_` )「明日は、雪も少しはマシになるといいな」

窓を覗きながら言う。
外は未だに吹雪いており、白い雪が斜めに降っている。

(・∀ ・)「晴れたときのもみたいぞー」

('A`)「ソレハ、レア」

192 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/24(土) 17:29:18.57 ID:O5cxbXo50
   
シベリアは滅多に晴れない。
大抵は雪。時々曇り。年に数度といっても過言ではない回数の晴れ。
それがこの地方だ。

( ´_ゝ`)「しかし、ずいぶん遠くまでこれただろ?」

ベッドに腰かけ、またんきに問いかける。
思い起こせば、最南端であるニュー速から最北端であるシベリアまできたのだ。
ドラゴンがいたとはいえ、ずいぶん遠くまで来ることができた。

( ^ω^)「これで、ひととおりまわるおね」

(・∀ ・)「……うん。
     たくさん、すごいものがあったぞ」

何もないように思えた灯南にも、
何でもあるような的芽にも、
発展途上の宋咲にも、
そして、寒いシベリアにも。

地下で暮らしていた頃では、想像もできなかったようなものがたくさんあった。
それに触れ合えることが、どれほど素晴らしいことか。そして、幸せなことか。

(*・∀ ・)「あにじゃ、おとじゃ、ありがとう」

('A`)「オレラハー?」

( ^ω^)「きもちはわかるが、くうきよめお」

194 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/24(土) 17:32:59.32 ID:O5cxbXo50
  
五人は和気藹々とした雰囲気で言葉を交わしあう。
外の寒さを感じさせない室内は、夜を過ごすのにもってこいだ。

(・∀ ・)「そと、すごいおとだなー」

( ^ω^)「でもさむくないお」

(´<_` )「壁の構造が、他の地方とは違うんだよ。
      確か、窓やら扉やらも違ってたはずだ」

( ´_ゝ`)「玄関は二重になってるしな」

(・∀ ・)「あれはそういうことだったのか!」

('A`)「ジモトノ、チエニハ、アタマガサガル」

室内にいると、外の寒さを忘れる。
そうなれば、吹雪の憎さも少しはマシになるというものだ。

( ´_ゝ`)「明日は吹雪かないらしいぞ」

(・∀ ・)「そうなのかー」

(´<_` )「少しくらいなら遊ぶ時間も取るか」

( *^ω^)「やったおー」

195 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/24(土) 17:35:35.50 ID:O5cxbXo50
   
その朝は実に心地良い目覚めだった。

芳しい香りと、宿屋の主人の声で目が覚める。
丁度いい時間帯に、サービスで朝食を作ってくれたのだ。

またんきがテーブルにつくと、ニュー速で食べた魚料理よりも美味しい魚料理が出てきた。

(・∀ ・)「うまいぞー!」

( ´_ゝ`)「この辺りは魚介類の宝庫だからな」

(´<_` )「美味いし栄養もあるし。
      寒さを押してくる価値はある」

食堂の窓から外を覗けば、吹雪はやみ、緩やかな雪が降っているだけだ。
昨日の雪は憎ささえ感じたが、ふわりふわりと舞い降りてくる雪は羨望すら持てる。
またんきは食事を終わらせると、いの一番に外へ出た。

( ´_ゝ`)「子供は元気だねー」

続いて宿を出ると、降ってくる雪を捕まえようとしているまたんきの姿がある。
寒いだろうに上着も着ていない。

(´<_` )「こら。ちゃんと上着を着ろ」

弟者が上着を持って行くと、始めて寒さに気がついたようで慌てて袖を通す。

196 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/24(土) 17:38:31.08 ID:O5cxbXo50
   
( ^ω^)「ゆきは、こうしてあそぶんだおー!」

ブーンは雪の上に倒れ、手足をばたつかせる。
少しの間そうして、起き上がれば、ブーン自身とは少し違う跡が残る。
雪天使というのだが、そんな名称まで彼は知らない。

(・∀ ・)「なるほどー!」

さっそくまたんきも真似する。
雪の中に自身の体が埋まる感覚も少し楽しい。
冷たいばかりだと思っていた雪も、こうしてみるとわずかな暖かさがあるように思える。

('A`)「ユキアソビッツッタラ、ユキダルマダロ」

雪天使をしている横で、ドクオは小さな雪玉を作り、ミニサイズの雪だるまを作っている。

(・∀ ・)「ゆきだるまー」

次の標的は雪だるまになったらしい。
またんきは楽しそうに雪玉を作る。

199 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/24(土) 17:41:34.23 ID:O5cxbXo50
   
( ´_ゝ`)「まだまだ青いな」

(´<_` )「しかたないさ。あいつらも子供……」

( ´_ゝ`)「大人の雪遊びは」

(´<_` )「やはりこれだよな」

二人は全員が入れる大きさのかまくらを作っていた。
真っ白なかまくらは、見た目は冷たいが中に入れば暖かい。
ここに火鉢でも置けば、最高だ。

(・∀ ・)「おー?! 何だこれー!」

( ´_ゝ`)「かまくらだ。さっ。中へどーぞ」

(・∀ ・)「あったかいぞー! 何でだー?」

(´<_` )「本当はドラゴンも入るサイズにしたかったんだが……」

( ´_ゝ`)「流石のオレらでも大変だ」

かまくらに入った五人を、ドラゴンが見つめている。
こうして遊ぶことも滅多にないので、共にいるだけでも嬉しいのかもしれない。

200 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/24(土) 17:44:53.00 ID:O5cxbXo50
   
五人はかまくらを堪能した後、ドラゴンを交えた雪合戦を始める。
とはいっても、ドクオやブーンは満足に雪玉を投げれず、ドラゴンに至っては雪玉すら作れない。
そのため、雪合戦というよりは雪のかけあいだ。

(´<_`;)「くっ……!
     やはり兄者とドラゴンが同じ陣営にいるのは卑怯だ……!」

(;・∀ ・)「ひきょーものー!」

( ´_ゝ`)「ふはは! 何を言っているかわからんなあ!」

(;^ω^)「ぎゃー!」

('A`)「アレ。オレッテイラナイ?」

白い雪が当たりに散らばる。
動きの速い兄者と、力のあるドラゴンが相手では、いくら弟者といえども策を練ることさえできない。
しかも、彼の仲間は幼いまたんきと、速さはあるが力はないブーンだ。

(´<_`;)「こうなったら魔法だ!
      水の精霊、荒巻と契約せし――」

(;´_ゝ`)「もっとずるいだろー!」

兄者の声がこだました。

201 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/24(土) 17:47:34.65 ID:O5cxbXo50
   
楽しげに遊ぶ彼らを、町の人間は暖かい目で見ている。
時には地元の子供が混ざり、大人数で雪のかけあいをすることもあった。
子供につられてやってきた母親達は、五人とドラゴンにも暖かいココアを振舞ってくれる。

(・∀ ・)「みんなやさしいなー」

またんきが素直にそう言うと、子供も大人もこぞって彼を撫でる。
人が集まれば暖かくなるので、この地方の者からしてみれば、みんなで撫でるというのは、最大限のお礼なのかもしれない。

寒さや吹雪は厳しいが、永住するならばシベリアかもしれない。
そんなことまでまたんきは思った。

( ´_ゝ`)「幸せいっぱいのところ悪いが、そろそろ行くぞ」

(・∀ ・)「えー」

(´<_` )「明日はまた吹雪くらしいからな。
      今の内に次の町へ行かないと」

(・へ ・)「むー」

わざわざ自分で口角を下げて不満を表す。
そんなことをせずとも、他の四人はまたんきを見ただけで機嫌の良し悪しがわかるのだが。

204 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/24(土) 17:50:39.86 ID:O5cxbXo50
   
一緒に遊んでいた子供達に別れを告げ、またんきはドラゴンの背に乗る。
吹雪いていない空は存外快適で、寒さは残っているが震えるほどではない。
昨日とは違って余裕があるので、またんきは空から地上を見る楽しみを堪能する。

ある意味では、ニュー速の空から見た風景とよく似ていた。
どこまでも一色で続き、時折に別の色が見える。
退屈なようで、魅入ってしまうところがある風景だ。

(・∀ ・)「まっしろだなー」

( ´_ゝ`)「年中雪が積もってるからな」

('A`)「コノアタリノユキハ、トケルコトガナイ」

(・∀ ・)「へー。とけたところも、見てみたいなー」

( ^ω^)「だおね」

雪の下に何があるのかは誰も知らない。
美しい緑があるのか、荒れた大地があるのか。
もしかすると、静かに息を失った者がいるかもしれない。

何があるのかわからないからこそ、雪は美しい。
素晴らしいものしか想像できないまたんきではあるが、心はどこか不安定な雪に惹かれているのだろう。

205 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/24(土) 17:53:42.91 ID:O5cxbXo50
   
(´<_` )「溶けた雪もいいが、何をいってもシベリアは雪祭りだ」

(・∀ ・)「おー。きいたことあるぞー」

吹雪の頻度が下がる季節に行われる祭りだ。
普段は大人しく家にいることが多いシベリアの住民が、こぞって外へでる珍しい時期でもある。
またんきは、以前四人の口から聞いたことを思い出す。

('A`)「ミンナガ、ユキデイロイロ、ツクルンダ」

(・∀ ・)「いろいろか」

( ^ω^)「そうだお。
      けものだったり、たてものだったりで、げいじゅつさくひんなんだお」

( ´_ゝ`)「綺麗にライトアップもされるし、次に来る時はその時期を狙うか」

(*・∀ ・)「やったー! たのしみだぞー!」

また一つ、外の楽しみを知る。
未来への楽しみが増える。

またんきは笑みを浮かべていた。

210 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/24(土) 18:00:11.27 ID:O5cxbXo50
   
また暗くなった頃に宿屋についた。
次の日も外で遊ぶことをまたんきは考えていたのだが、弟者が言ったように、その日は吹雪だった。
シベリア育ちではない五人は勿論のこと、地元民である宿屋の主人でさえも外には行かない。
こういたことが頻繁にあるため、シベリアでは食料が大量に買いこまれているらしい。

(・∀ ・)「しべりあもたいへんだなー」

(´<_` )「どこの地方でも、それなりの大変さはあるものだ」

( ´_ゝ`)「辛いことがない場所なんてないぞ」

(・∀ ・)「だなー」

かろうじて的芽では不便を感じなかったが、あの場所はあの場所で苦労があるのだろう。
主に金銭的な苦労が。

('A`)「アシタハ、フブキモヤムッテサ」

(´<_` )「そうか。なら、お楽しみの図書館に着けるな。またんき」

(;・∀ ・)「うー」

結局、今日までまたんきは魔法を使うことができなかった。
宿屋に迷惑をかける危険を押してまで練習をしたというのに、何とも残念な結果だ。

216 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/24(土) 18:06:07.55 ID:O5cxbXo50
   
( ´_ゝ`)「そうと決まったら、またんきは先に寝ておけ。
      明日は辛いぞー」

(;・∀ ・)「やーめーろー」

不安を煽るような言葉を吐く兄者を、またんきはポカポカ殴る。
ニヤニヤしている時の兄者は意地悪だ。

( ^ω^)「あにじゃはねないのかお?」

( ´_ゝ`)「オレも明日に向けて英気を養うさ。な? 弟者」

(´<_` )「ん?
      ……あぁ、そうだな。そうするとしよう」

二人の間に妙な間があった。
何か、視線だけで伝えるような。そして、それを確かに受け取ったような。そんな間だ。

彼らが目だけで会話をするのは今に始まったことではないが、こうして五人だけのときにそれが発揮されるのは稀だ。
言いにくいことなのか、何か意地悪なことをするつもりなのか。
どちらにしても、悪い予感しかしない。

217 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/24(土) 18:09:36.01 ID:O5cxbXo50
   
( ^ω^)「……おとじゃ?」

(´<_` )「どうした? ブーン」

('A`)「ニヤケテルゾ」

弟者は口元を抑える。
ニヤけてしまっている自覚はあった。
普段はポーカーフェイスを決めているが、身内同士の中で無理に演じる必要はない。

(´< ` )「何でもないさ」

口を隠したまま言う。
怪しい。またんきの目から見ても、精霊二人の目から見ても怪しい。
兄者も笑っているところが、なお怪しい。

('A`)「……ワカッタゾ」

考え込んでいたドクオが答えを見つけたらしい。
目を細めて、二人を責め立てるような視線を向ける。
その目にブーンも合点がいったらしい。

未だにわかっていないのはまたんきだけだ。

219 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/24(土) 18:12:39.74 ID:O5cxbXo50
   
('A`)「サケヲ、ノミニイクツモリダロ」

(・∀ ・)「さけ?」

( ´_ゝ`)「ま、そういうことだ。
      いいだろ? せっかくのシベリアだ」

またんきの疑問を無視して会話が進んでいく。
どうやら、二人はまたんき達を放って酒を飲みに行くつもりだったらしい。

(・∀ ・)「なー。さけって?」

(´<_` )「大人が飲む、最高にハッピーなもんさ」

(・∀ ・)「……おれは?」

( ´_ゝ`)「残念だ。実に、実に残念だ!
      この国の法律で、未成年は酒を飲んではいけないと!
      そう決められていなければ!」

悲劇を演じる舞台上のように兄者は嘆きを口にした。
しかし、いくら何でも白々しすぎる演技だ。

法律を言い出せば、盗みをするなどもってのほかであるし、
ニュー速育ちの流石兄弟は幼いころから安酒を飲んでいた。
けれど、悲しいことに、その辺りのことにツッコミを入れることができる人物はいない。

221 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/24(土) 18:15:37.74 ID:O5cxbXo50
    
( #^ω^)「だめだお! ふたりは、さいげんなくのむお!」

ブーンは小さな体をいっぱいに使って二人を止めようとする。
記憶が叫ぶままに行動しているのだ。
かつて、泥酔した兄弟に絡まれたことは未だに忘れていない。

( ´_ゝ`)「……ブーンよ」

真剣な声だ。
悲しげで、真っ直ぐな声が兄者から発せられる。

( ´_ゝ`)「ここはシベリアだ。
      わかるだろ?」

兄者は足に力を入れ、一気に間合いを詰める。
驚きのあまり思考が止まった一瞬の隙をついて、兄者はブーンを縛りあげた。
どこから出したのか、ブーンを拘束したものは毛糸だった。

( ´_ゝ`)「――ここで酒を飲まなけりゃ、男じゃない」

格好良い台詞のようにも思えるが、ただ単に酒が飲みたいだけだ。
寒さ対策にアルコールを摂取するシベリアでは、酒造の技術が高い。
極上の酒が当たり前のように振舞われるのだ。

縛りあげたブーンをベッドに降ろし、兄者は扉を開ける。

(´<_` )「いい子にしてろよ」

兄者に続き、楽しげに笑っている弟者が部屋を出た。

222 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/24(土) 18:18:40.83 ID:O5cxbXo50
部屋から聞こえる怒声を無視して、二人は宿屋に設置されているバーへ足を運ぶ。
ここはシベリアだ。
余程、質の悪い宿屋でもない限り、バーは設置されている。

( *´_ゝ`)「おー。この匂い、久々だなー」

(´<_`* )「シベリアの酒を飲むと、他は飲めないからな!」

( *´_ゝ`)「オレは飲むけどな!」

(´<_` )「流石兄者。どんなものでもいいというその考え。
     実に嘆かわしい考え方だ」

( ´_ゝ`)「おい。急に冷静になるなよ」

カウンター席に二人並んで腰をかける。
吹雪ということもあって、客の殆どはここにきているようだ。

223 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/24(土) 18:21:53.19 ID:O5cxbXo50
   
周囲に倣って、二人はウォッカを注文する。
他の酒も極上なのだが、シベリアといえばウォッカだ。

( ´_ゝ`)「あー。最近、飲んでなかったからなぁ」

(´<_` )「元々、オレ達は毎日飲むほうじゃないだろ」

弟者が苦笑する。
酒を飲むこともあったが、仕事が余程上手くいったときくらいだ。
飲めば楽しいが、二人っきりで飲むとどうしてもパターンが決まってしまっている。
楽しさを重視する彼らとしては、些か物足りないものがあるのだ。

( ´_ゝ`)「……なぁ、弟者」

(´<_` )「ん? どうした兄者。
     おかわりか? 飲め飲め」

( ´_ゝ`)「それは飲むけれど」

一杯を空にした兄者は続けて二杯目を注文した。

225 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/24(土) 18:25:30.92 ID:O5cxbXo50
   
( ´_ゝ`)「お前、またんきの情報をどこで手に入れたかって、聞いてたよな」

(´<_` )「あぁ。何だ。教えてくれるのか?」

弟者はつまみと一緒に、新たに一杯を注文する。
アルコールが回り始めてはいるが、珍しく兄者が真剣な顔をしている。
これを聞かないで、彼の弟は名乗れない。

( ´_ゝ`)「あれは、直接誰かから聞いたとかいうもんじゃない」

兄者は一気に酒を煽る。
そうすることで、口を軽くしようとしているようにも見えた。

( ´_ゝ`)「宋咲で噂になってたんだ。
      人知れず、しかし、はっきりと」

コップの中に入っている氷を鳴らす。
透き通った綺麗な音だ。

( ´_ゝ`)「変なもんばっかりだったよ。
      オレが興味を持って盗みに行ったモノの情報は、ほとんどそれだ」

(´<_` )「ほう。噂か」

宋咲には弟者も行っていたが、気づかなかった。
兄者の耳は地獄耳のようだ。

229 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/24(土) 18:28:46.20 ID:O5cxbXo50
   
( ´_ゝ`)「今、思えば、奇妙だったのかもしれん」

(´<_` )「奇妙?」

弟者は眉をひそめる。

( ´_ゝ`)「どれだけの噂があの町にあったんだ。
      普通は隠されているような話ばかり」

(´<_` )「噂なんてそんなもんだろ」

兄者が心配するなど珍しい。
それは弟者やドクオの役目だ。
真っ直ぐに突き進むことしかできない兄者らしからぬことだ。

( ´_ゝ`)「その噂の中に、一つの名前が上がったんだ」

目を閉じる。
その名前が忘れられない。


( ´_ゝ`)「噂のもとは、ワカッテマスという男だと」

231 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/24(土) 18:31:40.71 ID:O5cxbXo50
(´<_` )「ワカッテマス?」

弟者は首を傾げる。
彼はその名前を知らない。

( ´_ゝ`)「あの、宋咲で会った記録屋の男。
      あいつだ。あいつが、ワカッテマスだ」

(´<_`;)「なっ」

思わず立ち上がる。
あの奇妙な予言をしてくれた男が、またんきの情報を始めに持っていたということになる。
ならば、あの時、またんきのこともわかっていたのかもしれない。

世にも珍しいハーフだと。
それを知った上で、あのおぞましい予言をしたのかもしれない。

弟者の背に冷汗が流れる。
嫌な予感がした。

( ´_ゝ`)「お前には話しておきたかった」

(´<_` )「……あぁ」

233 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/24(土) 18:35:23.49 ID:O5cxbXo50
   
二人はわずかな沈黙の後、互いに顔を見合わせた。
そして微笑む。

( ´_ゝ`)「まぁ、考えてもしかたがない」

(´<_` )「手を打てるわけでもないしな」

心配はある。
それを頭の片隅に置いておく必要はあるだろう。
例え、それが杞憂だとしても。

( ´_ゝ`)「んじゃ、改めて」

(´<_` )「明日の図書館に向けて」


( ´_ゝ`)「カンパーイ」(´<_` )


二人のグラスが音をたてる。
暗い顔を引きずっていては、またんきにも心配をかける。
まだ成長途中の彼に、余計な心配は必要ないのだ。

流石兄弟はグラスを傾ける。
その凄まじい飲みっぷりに、周囲の者が彼らを見ていたことなど、知りもしないで。

237 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/24(土) 18:41:16.85 ID:O5cxbXo50
   
盗みに入るわけでもないし、彼らが非常に楽しそうに部屋を出たので、またんきは止めることができなかった。
ただ、それほど美味しい物ならば、いつか飲んでみたいと思う程度だった。
しかし、おかしな匂いを巻きちらしながら帰ってきた二人を見れば、考えは払拭される。


( *´_ゝ`)「まひゃんひー!」

(´<_`* )「まてよー。まきゃんきは、おれとまほうのれんしゅーするんだー」


(・∀ ・)「何だこれ」

思わず真顔になる酷さだ。

( ^ω^)「これがさけのちからだお」

(・∀ ・)「何だこれ」

(;'A`)「マタンキ、キヲタシカニモテ」

(・∀ ・)「何だこれ」

241 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/24(土) 18:44:41.84 ID:O5cxbXo50
    
流石兄弟がまとっていた匂いは、酒の匂いらしい。
キツイ匂いに、またんきは鼻を抑える。

思わず押しのけたくなる程絡まれるが、耳族の力には適わない。
非力だという弟者でさえ、またんきからしてみれば強靭な力を持っている。

本人達は楽しそうだが、巻きこまれている身としてはこれっぽっちも楽しくない。
むしろ不愉快だ。

( ´ω`)「こうなるからいやだったんだお……」

(;'A`)「ヤベ。ツブサレル。ツブ……アッー!」

(・∀ ・)「……ゆめだ。うん。ゆめ。
     おやすみなさい」

(´<_`* )「いっしょに、ゆめみよーぜー!」

(;・∀ ・)「くっせええええええ!」

( *´_ゝ`)「わーい! おれもー!」

(;・∀ ・)「こっちくんなああああああ!」

243 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/24(土) 18:47:55.22 ID:O5cxbXo50
    
( ´_ゝ`)「さて。天気は曇天。目指すは図書館!」

(´<_` )「大丈夫か? お前達」



(  ω )

( A )

( ∀  )


夜に絡まれつくした三人は、気力も何もなかった。
流石兄弟が眠りにつくまで眠れなかった上に、彼らが眠った後は酒気に当てられて気持ちの悪い思いをした。
そのくせに、酔っ払っていた二人は二日酔いもなく元気なものだ。

( ´_ゝ`)「弟者ー。またんき貸してー」

(´<_` )「ほい」

またんきを抱き上げ、強制的にドラゴンの上へ乗せる。
ドクオとブーンは流石兄弟がしっかりと掴み、空の旅へ連衡していく。

245 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/24(土) 18:50:39.03 ID:O5cxbXo50
   
図書館につく頃には、三人ともどうにか気力を取り戻していた。
途中、何度か空の上からゲロを降らせかけたが、寸前のところで止めることに成功してきた。

(・∀ ・)「これが……としょかんかー」

(´<_` )「そう。国最大の図書館。
      シベリア図書館だ」

またんきの眼前に広がっている図書館は広い。
離れたところから全貌を見たオムライス城よりも大きく感じられる。
古びた外観ではあるが、それなりに人は来ているらしい。

('A`)「ダレデモハイレル。ダレデモツカエル」

( ^ω^)「りっちじょうけんは、ちょっとわるいけどおね」

種族など関係ない。
例え、奴隷であったとしても、シベリア図書館の門は開かれる。
知識を求める者には平等である。と、いう信念がそこにはあるのだ。

( ´_ゝ`)「入ろうか。
      オレも入るのは始めてだ」

( ^ω^)「いつもおとじゃだけだったおね」

246 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/24(土) 18:53:43.35 ID:O5cxbXo50
   
五人が図書館の中へ入る。
警備員は立っていたが、特に咎められることはなかった。
流石にドラゴンは外で待機だったが、彼も本には興味がないらしく、平然としている。

(・∀ ・)「本だ。本ばっかりだー!」

(´<_` )「図書館では静かにするものだぞ」

(・∀ ・)「はーい」

図書館の中は、当然といえば当然なのだが、本ばかりだ。
壁一面が本棚になっており、大きなエントランスにもたくさんの本棚がならんでいる。
入ってすぐのところに分類表が書かれており、どこにどのような本があるのかわかるようになっていた。

(´<_` )「オレらは精霊魔法学のところに行くぞ」

またんきの首根っこを掴んで言う。

( ´_ゝ`)「オレは小説でも読んでる」

( ^ω^)「ぼくらもそうするお」

(´<_` )「じゃあ、ことが終わったらそっちに行くわ」

(;・∀ ・)「たーすーけーてー」

助けを求めるまたんきに、三人は合掌した。

247 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/24(土) 18:56:46.17 ID:O5cxbXo50
    
(´<_` )「ちょっとここで座っててくれ」

精霊魔法学が集中している場所に設置されていた椅子に座らせる。
またんきに待っていると言って、用に本を探しに行った弟者の目は、逃げたときの恐ろしさを表していた。

(・∀ ・)「それにしても――」

辺りを見渡す。
周囲の本棚は、それなりの高さだ。
またんきならば踏み台が必要だが、弟者や兄者ならば手を伸ばさずとも届く。
人が本を探しやすいように出来ているのだろう。

整理整頓された本棚には、古い本から新しい本まで、様々な本が入っている。
装丁も一つ一つ違い、それらを見比べるだけで暇つぶしができそうだ。
外の寒さも、図書館では感じず、静かな空間は穏やかな心持にさせてくれた。

(-∀ -)「こーいうのも、いいなぁ」

目を閉じる。
椅子を揺らし、静かな空間を楽しむ。

248 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/24(土) 18:59:36.17 ID:O5cxbXo50
   
足音が聞こえて目を開ける。

(´<_` )「待たせたか?」

(・∀ ・)「まってないぞー」

手にいくつかの本を持った弟者がいた。
わかりやすい本を選んでくれたのだろう。
フルカラーの本ばかりで、字が読めずとも理解しやすい。

(´<_` )「まず、属性の説明からしようか」

一冊の本をめくる。
そこに書かれているのは五属性だ。
弟者はその中でも、火のページと水のページをまたんきに見せた。

(´<_` )「わかるか?
      これが、お前の持つ力だ」

(・∀ ・)「火と、水」

図に目を通し、文章を少しだけ読む。

(´<_` )「読むから聞いておけよ。
      火の属性が持つ力は――」

250 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/24(土) 19:02:50.21 ID:O5cxbXo50
   
精霊使いが魔法を使う際には、属性のことをしっかりと理解していなくてはいけない。
間違った知識を持ったままだと、身を滅ぼすことになりかねないのだ。

弟者はまたんきの疑問に根気よく答えてくれる。
他の三人が言っているほど、弟者は厳しくはない。
ただ、別のことを考えていて、彼の言葉に返事をしないと軽く叩かれる。

(´<_` )「属性についてはわかったか?」

(;・∀ ・)「な、何となく……」

(´<_` )「この辺りは、追々テストもするからな」

(;・∀ ・)「てすと?!」

そんな話は聞いていない。
言っていないのだから当然だ。

またんきの苦情を無視して、弟者は次の本を取り出す。
そこにも図が描かれているが、一目見ただけでは理解ができない。
丸や三角、星や四角の図が折り重なっているように見えた。

252 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/24(土) 19:05:44.57 ID:O5cxbXo50
    
(´<_` )「これが契約の陣だ」

(・∀ ・)「これが……」

思わず凝視して思う。

(;・∀ ・)「これって、おれがかくの?」

(´<_` )「当然だな」

(;・∀ ・)「えっー!」

(´<_` )「静かに」

(;・∀ ・)「ぇーっ!」

小さな声で再度叫ぶ。
再び描かれている図を見る。
複雑な図形だ。覚え切れるとは思えない。

(´<_` )「大丈夫だ。一つ一つに意味があるから、そこを理解すれば描ける」

(;・∀ ・)「こんなにたくさんあるのにか!」

(´<_` )「ほら、文句を言ってる暇があるなら覚える」

258 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/24(土) 19:12:45.95 ID:O5cxbXo50
   
弟者の指が図に描かれている物を差す。

(´<_` )「これは、精霊使い。こっちが精霊を示す。
      だから、精霊にかかるこの図形は、精霊の属性によって変わる」

どこからか借りてきたのか、ノートとペンを取り出す。
そして、またんきに文字を見せながら教えていく。

(´<_` )「これは、火」

(・∀ ・)「火」

(´<_` )「これは、土」

(・∀ ・)「土」

知らぬ字を覚えながら、図形を覚える。
属性によって図は変わり、精霊の性別によってもまた変わるのだという。
他にも様々な要素で図形はできていた。
これらを組み合わせなければ契約ができないのだから、兄者が精霊使いになれないのも納得だ。

260 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/24(土) 19:15:57.33 ID:O5cxbXo50
   
(;・∀ ・)「おぼえられないぞー」

(´<_` )「陣に関してはオレのメモを持ってれば、ニュー速に戻っても勉強できるだろ?」

優しいように見えるが、定期的なテストが待ち構えていることを考えると、とてもそうは思えない。
またんきは机の上に伏す。
もう何も見たくない。

(´<_` )「おいおい。まだ序盤だぞ」

(;・∀ ・)「むーりー」

(´<_` )「まったく。
      わかった。後一つだけやって、後はオレがまとめておいてやる」

この言葉も優しさからではない。
図書館にきてからずいぶんと時間が経っている。
閉館時間があるので、最低限のラインを設けただけだ。

(・∀ ・)「さいごか?」

(´<_` )「これが最後だ」

262 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/24(土) 19:19:02.31 ID:O5cxbXo50
   
弟者は全ての本を閉じ、一つにまとめる。
すでに精霊使いとして立派に魔法を使っている彼からすれば、本などなくともまとめるとこができ、
これから話すという事柄に関しても上手く説明できるのだろう。

(´<_` )「精霊と、契約する方法だ」

(・∀ ・)「じんをかいておわりじゃないのか?」

(´<_` )「違う。それだけなら、精霊と戦う必要はないからな」

(・∀ ・)「なるほどー」

言われてみれば確かにそうだ。
またんきは弟者の方に向きなおる。

(´<_` )「契約には、精霊と精霊使い、陣と呪文がいる。
     この呪文に関してはまた今度教えるとして、どのようにそれらを使うのかを教える」

紙にペンを走らせる。
『精霊』という文字から少し間隔を開けて『精霊使い』という文字ができあがった。

265 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/24(土) 19:22:45.00 ID:O5cxbXo50
   
(´<_` )「まず、この二つは絶対だ」

(・∀ ・)「おう」

『精霊』と『精霊使い』の間に、『陣』が足される。

(´<_` )「これが、精霊使いと精霊を結ぶ」

『陣』から線が延び、他の二つを結ぶ。
まるでパイプのようにも見えた。

(´<_` )「そして、呪文」

上部に『呪文』とかかれ、ふき出しが描かれる。
その先端は『精霊使い』にだけではなく『精霊』にも延びていた。

(・∀ ・)「せいれいもじゅもんをつかうのか?」

(´<_` )「そうだ。二人が呪文を使うことで、陣が発動する」

『呪文』から伸びた矢印が『陣』にあたる。

268 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/24(土) 19:25:53.22 ID:O5cxbXo50
   
(・∀ ・)「でも、せいれいは、あまりほかのヤツらとなかよくしないって、いってたぞ」

(´<_` )「そうだ。だから、この呪文は特殊なんだ」

弟者は『精霊』に新たなふき出しを加える。
しかし、その中身は空だ。

(´<_` )「精霊が無言である。それを了承ととる呪文だ」

悪徳にも程がある。
精霊使いは、精霊を気絶させ、強制的に無言状態を作らせているのだ。

(;・∀ ・)「ひっでー!」

(´<_` )「友好的な精霊なら、すっと通ることもあるんだぞ」

例えば、ジョルジュのような精霊ならば、契約もスムーズにいくだろう。
気の良い奴らとはいえ、一応は商売仇なので契約は結んでいないが、ジョルジュほどの力があれば色々と助かるはずだ。

(´<_` )「だから、一先ず契約するならブーンとドクオを勧めるよ」

(・∀ ・)「でも、さっきのせつめいに、光と闇はなかったぞー」

(´<_` )「あー。それは別途で教えるわ。
      あいつらがいた研究所に描いてたヤツだから」

269 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/24(土) 19:28:52.47 ID:O5cxbXo50
   
弟者は本を抱え、元の場所にしまってくると告げた。
またんきは再び待機のお時間だ。
それでも、ようやくの自由時間に息を吐く。

精霊使いとして魔法が使えるようになったとしても、悪徳商法のような手法は避けたい。
それは、彼が望む道とは違うものだ。
あまり意識をしたことはなかったが、ここは半分精霊であることを利用できないものか。
またんきは、ハーフであることを前向きに考えられるようになっていた。

(-∀ -)「んー」

また椅子を揺らす。
考え事をするのには丁度いい揺れだ。

そうしていると、遠くから足音が聞こえてきた。

(・∀ ・)「おと――」

戻ってきた弟者と一緒に、兄者達を探しに行こう。
そう思って目を開けた。

272 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/24(土) 19:31:52.90 ID:O5cxbXo50
   
(・∀ ・)「じゃ?」

( †)「ちょっと、来てもらおうか」

目線の先には見知らぬ鎧。
一瞬過去を振り返れば、足音は一つではなかったし、何やら重い音がしていたような気がする。
何故、弟者がそこにいると思ったのだろうか。

(;・∀ ・)「や、やめろよ!」

鎧が手を伸ばしてくる。
慌てて椅子から降りて距離を取ろうとするが、後ろは別の鎧がいた。
逃げ場がない。

( †)「無駄な抵抗はするな」

(;・∀ ・)「やだやだ! はなせ! ばか!」

無茶苦茶に暴れ、鎧を蹴るが彼はびくともしない。
中に入っているのが人間なのか、耳族なのか、はたまた精霊なのかはわからないが、
またんき程度の力ではどうにもならないのは事実だ。

273 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/24(土) 19:34:41.67 ID:O5cxbXo50
   
(´<_` )「またんき!」

(;・∀ ・)「おとじゃ!」

騒ぎを聞きつけたらしい弟者が本棚の上から現れる。

(´<_`# )「何のつもりか知らないが、うちのモノに手を出すなんざ、いい度胸だな」

少し目を離した間の騒動に、弟者は舌打ちをする。
油断していたことに言い訳はできない。

(´<_`# )「水の精霊、荒巻と契約せし我が命ず。
      凍てつく水よ、荒々しい水よ。
      水の圧力を見せつけよ!」

途端、彼らの頭上に水の塊が出現する。
すぐさま退避しようとするが、鎧の彼らよりも水が動く方が速い。

(; †)「うおおおお!」

水の圧力に、またんきの前方にいた鎧達は倒れる。
呆気にとられている後方の鎧を横目に、弟者はまたんきを抱きかかえた。

(´<_` )「逃げるぞ!」

276 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/24(土) 19:37:42.52 ID:O5cxbXo50
   
本棚の上を跳躍し、移動する。
司書の叫び声が聞こえたが、おそらくはその者への危害ではなく、本の損傷に対する悲鳴だろう。

(´<_` )「兄者! 逃げるぞ!」

図書館の隅々にまで聞こえるように叫ぶ。
兄者の方も騒ぎには気づいていたはずだ。
この声を聞けばすぐにやってくるだろう。

(;・∀ ・)「あいつら……何なんだ」

弟者は真っ直ぐに図書館の出口へ向かう。
先ほどと同じような鎧を着ている奴がいるが、上手くステップを踏んで避ける。
重い鎧を着ている奴らに比べれば、弟者の方が速い。

(´<_` )「あの鎧には見覚えがある。
      高等騎士の鎧だ」

(;・∀ ・)「こーとー?」

(´<_` )「つまり、国で一番偉くて強い警察だ」

277 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/24(土) 19:40:44.19 ID:O5cxbXo50
    
( ´_ゝ`)「弟者! 進め!」

(´<_` )「言われずとも!」

駆けてきた兄者は、前にいた鎧を蹴り飛ばす。
関節部分にナイフを差し込み、中にいる誰かを刺す。
悲鳴が響き、図書館内はさらなるざわめきが起こった。

(;^ω^)「けがはしてないかお?」

(・∀ ・)「だいじょうぶだぞー」

またんきは抱きかかえられたままだ。
走らせるよりも、その方が速く動ける。

('A`)「シカシ、コンナトコロニ、コウトウキシガクルナンテ……」

ブーンに捕まっていたドクオが眉間にしわを寄せる。
どうやら、こういった事態はそうそうあるものではないらしい。

(´<_` )「ドラゴン! 離陸準備!」

図書館の出口が見え、弟者は叫ぶ。

283 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/24(土) 19:47:35.56 ID:O5cxbXo50
   
弟者が外へ出ると、ドラゴンは既にわずかに浮遊していた。
足の力を目一杯つかい、弟者は彼の背中に飛び移る。

(・∀ ・)「あにじゃは?!」

(´<_` )「もう来る!」

そうしている間にもドラゴンは上昇していく。
中途半端な高さを保つのは難しい。しかし、兄者を放ってはいけない。
弟者は下を見つめている。

( ^ω^)「きたお!」

ブーンの言葉に、目を凝らすと、図書館から出てきたばかりの兄者がいた。
兄者はドラゴンの姿を確認すると、図書館の壁を蹴りあげ、わずかではあるが垂直に駆ける。
そして限界間際に跳躍した。

( ´_ゝ`)「弟者!」

(´<_` )「こい!」

弟者が手を伸ばす。
その手を兄者はしっかりと掴んだ。

284 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/24(土) 19:50:49.61 ID:O5cxbXo50
   
無事に五人全員を乗せたドラゴンは一気に上空へ飛び上がる。
重力がかかり、またんきは頭がくらくらしたが、あの鎧の集団から逃げ切れるのならば我慢できた。

( ´_ゝ`)「ここまでくれば大丈夫だろ」

高く飛びあがり、ようやく兄者も一息つく。
雪はぱらついているが、吹雪いていなくて本当に良かった。

(´<_` )「それにしても、図書館に高等騎士が来るなんてな」

(・∀ ・)「それは、おかしなことなのか?」

先ほどからの疑問をようやく投げかけることができた。

( ^ω^)「おかしな。と、いうより、めずらしいんだお」

( ´_ゝ`)「高等騎士は、そもそも滅多に動くことがない。
      テロだとか、兵器が暴走したとか。そういうときにしか普通は動かない」

(´<_` )「図書館は平等を謳ってるから、犯罪者が入っていたとしても、大人しく閉館を待つことが多いしな」

考えれば考えるほどおかしなことだった。
数々の盗みを働いたとはいえ、流石兄弟はテロリストではない。
国を揺るがすようなモノに手をつけた記憶はなかったし、それならばもっと大々的に指名手配されているはずだ。

287 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/24(土) 19:53:58.07 ID:O5cxbXo50
   
( ´_ゝ`)「名残惜しくはあるが、さっさとニュー速へ行こう。
      あそこは身を隠すところが山のようにある」

兄者の口調に焦りが見える。
今までにも、自分達を捕らえようとしている者を相手にしたことはあったが、
あのような精鋭部隊を相手にするのは始めてだ。
むしろ、ただの盗賊に高等騎士はオーバーキルだ。

有事に出てくるだけに、どのような武力を持っているのかは計り知れない。
奴らに捕まればただではすまないだろう。
正式に死刑を執行されるか、何らかの理由をつけて殺されるか。
結果としては同じようなものだ。

(・∀ ・)「さむいところから、きゅうにあついところにいくんだな」

('A`)「ソウナルナ。カラダヲコワサナイヨウニナ」

(´<_` )「いや、直線距離で戻ったとしても、そこそこかかるぞ。
      それまで宿屋は使えないから、むしろそこを心配しろ」

( ^ω^)「のじゅくふぃーばー……」

( ´_ゝ`)「嬉しくないフィーバーだな」

289 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/24(土) 19:56:42.18 ID:O5cxbXo50
   
('A`)「ショクリョウモ、フアンダナ」

( ´_ゝ`)「そうなったら、弟者を置いてオレがひとっ走りする」

極力、別行動は避けたい。
しかし、盗みに行くというときに団体行動をしてもしかたがない。
普通に買い物をすることさえ難しいような状況だ。

まさかまたんき達を置いていくわけにはいかない。
そうなれば、最も盗みの能力に長けている兄者が行くのは当然だ。

反論できる要素がないので、誰もが黙る。
またんきは不安気な顔をしていたが、兄者は笑う。

( ´_ゝ`)「ちゃんと帰ってくるさ。
      お前を、立派な盗賊にしないといけないしな」

(・∀ ・)「うん……。
     やくそくだからな! っつーか、
     ほんとうは、ひとりでぬすみにいくのも、だめなんだぞー!」

( ´_ゝ`)「緊急事態ってやつだ、少しは大目に見てくれ」

(・∀ ・)「しかたないなー」

またんきの顔から不安の色が少し消える。

291 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/24(土) 20:00:57.80 ID:O5cxbXo50
   
(´<_` )「ドラゴン、悪いができるだけ急いでくれよ」

ドラゴンは一度吼えで羽根を動かす。
できることならば、宋咲の半分は抜けたい。
雷雨の多い宋咲で足止めを食らうと厄介だ。

(・∀ ・)「がんばれー」

またんきもドラゴンの鱗を撫でて応援する。
スピードが出ると寒さが増したが、文句を言っている場合ではない。

後少しでシベリアを抜けられる。
そんなとき、ドクオが口を開いた。

('A`)「ダレカ、イルゾ……!」

全員が固唾を呑んでドクオが差す方向を見る。

確かに人影が見える。
空にいるということは、精霊だろう。
高等騎士には精霊がいる。と、も聞いているので油断はできない。

弟者はまたんきの頭を下げさせる。
何らかの攻撃が放たれた場合、頭を上げていては危険だ。

292 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/24(土) 20:03:59.26 ID:O5cxbXo50
    

  _
( ゚∀゚)「よぉ。流石兄弟には久しぶり。
    ブーンとドクオ、またんきには先日ぶり」



そこにいたのはジョルジュだった。
羽根が出せる服を着て、空を飛んでいる。
流石兄弟も彼の羽根を見るのは始めてだった。

薄黄色をした半透明の羽根が四枚ある。
それらが動き、彼を空に留めていた。

( ´_ゝ`)「ジョルジュ?」

兄者の声は戸惑いの色をしている。

ジョルジュが羽根を出していること、
このタイミングで空にいること、
彼が空察であること。
それらの条件を考えれば、事態はよろしくない。

しかし、兄者や弟者が知っているジョルジュは、情に厚く、優しい男だ。
今までも何だかんだと見逃されてきた。
それだけに、警戒しにくい。

293 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/24(土) 20:07:01.95 ID:O5cxbXo50
   
ジョルジュは煙草に火をつける。
ゆったりとした雰囲気は、いつもと同じだ。
それが、逆に不安を呼ぶ。

(´<_` )「ジョルジュさん……。
      オレ達、急いでるんです」

弟者が告げる。
少しでもシベリアから離れたい。
だが、ジョルジュを無視して行くことはできない。

味方ならば助けが期待できる。
敵ならば後ろから攻撃されかねない。

どちらにせよ、ハッキリさせなくてはならない。
  _
( ゚∀゚)「――あぁ、そうだろうな」

煙草の煙が吐き出される。
灰色のそれは、風に揺られ、空気中に霧散する。

ジョルジュは「そうだろうな」と、言った。
わかっているのだ。今、五人がどのような状態に陥っているのか。
知った上で、彼らの前に立ちふさがっている。

295 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/24(土) 20:10:45.45 ID:O5cxbXo50
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( ゚∀゚)「国からよー。命令がきたんだ」

煙草を吸い、目を伏せる。
その声は平坦だが、目の奥には憂いでもあったのかもしれない。
  _
( -∀-)「流石兄弟を捕まえろってな。
     でも、それは、まあ、よくあることだ。
     お前らだって犯罪者なんだからな」

じりじりと短くなる煙草。
それが、何かを終える合図になるような気がしてならない。
  _
( -∀-)「だけど、今回は本気なんだ。
     高等騎士を派遣するって。その分じゃ、お前らはもう会ったんだろ?
     オレ達空察は、その支援に回れって」

五人は口を開くことができない。
最後まで彼の言葉を聞きたかった。
良き友人であった、彼の言葉を。
  _
( -∀-)「そんなもん、逆らえねぇだろ?
     逆らったら、空察なんて潰される。
     あの船にいる奴ら全員が、路頭に迷う」

何かを決心したように、ジョルジュは目を開けた。
そこには強い意思の色しかない。

299 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/24(土) 20:20:15.33 ID:O5cxbXo50
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( ゚∀゚)「ギコには教えていない。
     知ってるのは、オレとショボンだけだ。
     オレとしては、このまま内密に進めたいと思う」

優しいギコは、きっと流石兄弟を捕まえられない。
捕まえられたとしても、罪悪感に苦しめられてしまう。
ならば、汚れしごとは創始者である自分が負うべきなのだ。
  _
( ゚∀゚)「なーに。空察は「空に逃げたら」支援しろ。って言われてるだけだ。
     お前らが地上を走ってくれれば問題ない。
     何も、問題は起きないんだ」

( ´_ゝ`)「……一先ずは、見逃してくれるんですね」
  _
( ゚∀゚)「オレだって、悪いと思ってるんだよ」

流石兄弟は好きだ。ブーンも、ドクオも、まだよくは知らぬがまたんきも好きだ。
けれど、ジョルジュには責任がある。そして、何よりも守りたい奴らがいる。
天秤にかけることはできない。
  _
( ゚∀゚)「――餞別だ。くれてやる」

ジョルジュが何かを投げる。
綺麗な線を描いて、何かは兄者の手中に収まった。

302 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/24(土) 20:23:44.96 ID:O5cxbXo50
   
( ´_ゝ`)「……煙草を吸う奴なんて、うちにはいないぞ」
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( ゚∀゚)「餞別なんてそんなもんだ。
     ありがたく受け取っておけ。何かの時に役立つさ。
     オレの方は気にするな。火くらいは自分で出せる」

渡されたのは、ジョルジュのライターだった。
火属性である彼は、煙草の火くらいならば己でつけることができる。
それでもライターを持っていたのは、少しでも人間や耳族に近づきたいという思いからだった。

彼はその願いを捨てたのだ。
他でもない、耳族の友人を見捨てる代償にした。

(´<_` )「ドラゴン、降りてくれ」

無理に突っ切るという手段もあった。
しかし、国がそこまで本気だというのならば、わざわざ空察の連中を巻き込みたくない。
それに、例えニュー速まで逃げ切れたとしても、その後の安全など保障されていない。
被害者は少ないに越したことはない。

自分達が中心の彼らとしても、空察の連中が苦しむのは嫌だった。
気の良い連中で、何度も会ったことのある、大切な者達だった。
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( -∀-)「弟者、ごめんな」

(´<_` )「――いえ」

305 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/24(土) 20:26:46.31 ID:O5cxbXo50
           




        「助けが必要なら言えよ。
         限りはあるが手を貸す」



  そんな言葉、別に信じてはいなかった。




          



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