2012年芸術の秋ラノベ祭りのようです
(・∀ ・)と兄弟のようです
  後編 二



76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/24(土) 13:52:34.38 ID:O5cxbXo50
   
兄者の言葉は本当だった。
雷に怯えるブーンと一緒のベッドで眠り、朝に目覚めたまたんきはそう思った。
うるさいくらいだった雨音が消えていることに気づき、彼はすぐさま窓の外を見た。

雨上がりの世界は、太陽の光に照らされて輝いていた。
美しい世界の中で見る棒の建物は、奇妙さを増している。

(・∀ ・)「おー」

感嘆の声をあげる。
さらによく見てみれば、その建物に登っている者が複数いた。

彼らは同じような棒を持ち、建物を組み建てていく。
その様子は非常に興味深く、いつまでも見ていたいような気がした。

(・∀ ・)「ほら! あれ!」

朝食を食べたまたんきは、すぐさま四人に建設途中の建物を見せた。
耳族や人間が各々の仕事をこなし、一つの建築物に取りかかっている。

( ´_ゝ`)「おー。新築の匂いがするな」

(・∀ ・)「いいにおいだー」

雨の匂いに混じって、木の匂いがする。
その匂いを胸いっぱいに吸い込むと、心が晴れやかになる。

77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/24(土) 13:55:19.28 ID:O5cxbXo50
    
( ^ω^)「……」

(・∀ ・)「ブーン?」

ブーンは無言だった。
新築の匂いにも、建物にも興味がないようだ。
もう雷は鳴っていないというのに、様子がおかしい。

('A`)「マタンキ、アノヒトタチノ、クビヲミテミナ」

(・∀ ・)「くび?」

ドクオに言われ、またんきは働いている者の首を見る。
露出しているはずの首には、何かが巻きついていた。
黒く、わずかな光沢がある。
またんきはそれを知っている。

(・∀ ・)「――あ」

思い出す。
それは、かつてまたんきもつけていた物だ。
正確には、つけられていた物。

思わず自身の首に触れてしまう。
もうそこには何もない。

78 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/24(土) 13:58:17.62 ID:O5cxbXo50
   
(・∀ ・)「くびわだ」

首輪は奴隷の証だ。
またんきが心を躍らせながら見ていたものは、奴隷が作ったものと、彼ら自身だった。

よく見てみれば、彼らの顔色は悪い。
無茶な働かされかたをしているのだろう。
目は虚ろで、淡々と与えられた仕事をこなしているだけのようだ。

(´<_` )「フォックスみたいな奴の方が珍しいんだよ」

弟者が告げる。

(´<_` )「大抵の奴隷は、ああやって働かされる。もしくは、お子様には話せないようなことをする。
      わざと傷つけて殺す奴はそうそういない」

(・∀ ・)「……つらそうだ」

( ´_ゝ`)「昨日の雨で、足場はそうとう悪いだろうからな」

疲れも溜まっているのだろう。
直接的な殺されかたはしないかもしれないが、結果としてはそう変わらないのかもしれない。
見る限り、ここでも奴隷は働くことのできるゴミとして見られているようだ。

79 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/24(土) 14:01:34.44 ID:O5cxbXo50
   
どうするべきなのだろうか。
助けたいとは思うが、彼らを救う術が思いつかない。
しかし、ただ見ているだけというのも、昨日得たばかりの決心を覆してしまうような気がする。

( ^ω^)「あせらなくてもいいんだお」

またんきの肩に乗って、ブーンが言う。
子供であるまたんきは、どうしてもできることが限られてくる。
彼自身がまだ世間を知らないというのも、弱点の一つだ。

(´<_` )「まずは色々経験して、できるようになってからだな」

( ´_ゝ`)「自分が困ってるときに、他人を助けようとしても、上手くいかないぞ」

まだ一人で生きていくこともできないまたんきが、すぐに人を助けられるはずがない。
無理に何かをしなければと思い、胸を痛めるくらいならば、未来のために力をつくす方が有意義だ。

(・∀ ・)「わかるけど……」

('A`)「マズハ、マホウデモオボエタラ、ドウダ?」

(・∀ ・)「うー」

ドクオの言葉に呻き声をあげた。

80 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/24(土) 14:04:31.24 ID:O5cxbXo50
    
毎日かかさず練習をしているのだが、またんきが魔法を使えたことは一度もない。
火が駄目なら、水ではどうだ。と、試したこともあるが、結果は変わらない。
またんきも魔法を使いたいという思いが強いので、現状には満足していなのだ。

けれど、どうしても魔法を使うことができない。
またんき自身にはどうすることもできないことの一つだ。

(´<_` )「一度、視点を変えてみるか」

弟者は顎に手をあてて、言葉をもらす。
彼を信頼しているまたんきは目を輝かせた。
何か現状が変わるのではないかという期待だ。

(・∀ ・)「どうするんだー?」

(´<_` )「精霊として、ではなくて、人間として、魔法を使ってみたらどうだ?」

('A`)「ナルホド」

( ^ω^)「いいかんがえかもしれなお!」

(・∀ ・)「……どういうことだ?」

精霊二人はわかっているようだが、またんきには意味が理解できない。
兄者もよくわかっていないのか、無言を貫いている。

81 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/24(土) 14:07:26.89 ID:O5cxbXo50
   
(´<_` )「つまり、精霊使いになってみたらどうだ?」

わかりやすく、誰にでもわかる言葉を使う。
すると、またんきは目を見開いた。

(・∀ ・)「できるのか?!」

(´<_` )「どうせ、次に行くのはシベリアだ。
      あそこでじっくり教えてやるよ」

精霊使いになるには知識が必要だ。
口頭で教えたところで、どこまでまたんきが理解できるのかわからない。
それなりの状況が必要だ。
弟者は口角を上げ、悪魔のような笑みを浮かべた。

( ´_ゝ`)「またんき、覚悟しとけよ」

(・∀ ・)「え? 何がだ?」

('A`)「オトジャハ、スパルタダゾ」

(・∀ ・)「え?」

( ^ω^)「あにじゃのたいりょくづくりよりきびしいお」

(・∀ ・)「え?」

84 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/24(土) 14:10:23.43 ID:O5cxbXo50
    
最近は、兄者に盗賊としての訓練も受けている。
その中にある体力づくりが、またんきには中々辛い。
耳族にあわせて作られているであろうメニューに、またんきも参戦させられるのだ。
辛くないはずがない。

それよりも、弟者との勉強は辛いのだという。
どのような地獄が待っているのか、予想もつかない。
ただ、悪寒がまたんきの背筋を走った。

(´<_`* )「いやー。シベリアが楽しみになってきたな!」

(;・∀ ・)「……しべりあがこわいんだぞー」

( ´_ゝ`)「じゃあ、次の町まではゆっくり歩いていくか」

怯えるまたんきのために、兄者が提案する。
ドラゴンに乗れば、あっという間に宋咲を抜けることができてしまうので、歩くことで時間を稼ぐ。

( ^ω^)「そうさくはしぜんもいっぱいあるし、どらごんといっしょにあるけるし、
      ぼくはさんせいだお!」

('A`)「ワルクナイ」

弟者を除いた全員が賛成の声を上げた。

85 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/24(土) 14:13:43.62 ID:O5cxbXo50
   
かくして、一行は徒歩で次の町を目指すことになった。
徐々に開発が進んでいっている宋咲では、町と町の間にあまり距離がない。
子供連れだとしても二日とかからない距離だ。

(・∀ ・)「おー。じめんが、ぐちゃぐちゃだぞー」

水溜りやぬかるみを蹴り上げながら歩く。
泥が前方に飛ばされ、草木を汚す。
それらの二の舞を避けるべく、他の四人はまたんきの後ろを歩いていた。

( ^ω^)「こうして、どらごんとあるくのもたのしいお」

ブーンの言葉にドラゴンが喉を鳴らす。
大きな彼の足跡が地面についていた。

( ´_ゝ`)「この辺りを歩く奴なんていないしな。
      気兼ねなく歩けるってもんだ」

(´<_` )「適当なおやつもあるしな」

(・∀ ・)「おやつ?」

前方を歩いていたまたんきが立ち止まり、振り返る。

95 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/24(土) 14:37:16.56 ID:O5cxbXo50
   
(´<_` )「ほら、その辺りの木に実がなってるだろ?」

(・∀ ・)「この赤いのかー?」

(´<_` )「そう。それは食べられるんだ。甘いぞ」

(・∀ ・)「へー!」

さっそくまたんきが手を伸ばす。

(・∀ ・)「……」

しかし、あと少しのところで手が届かない。
背伸びをしても、ジャンプをしてみても、届かないものは届かない。

('A`)「ウーン」

ドクオが手助けに向かったが、非力な彼では木の実をもぎ取ることができない。
力いっぱい羽ばたいても、実がわずかに揺れるだけだ。
非力な二人組はじっと実を見つめるばかり。

96 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/24(土) 14:40:53.48 ID:O5cxbXo50
    
( ´_ゝ`)「ほい」

二人に代わり、兄者が実を取る。
またんきに一つ。ブーンとドクオに一つ。自分と弟者に一つずつ。ドラゴンの口にも一つ。
計五つの実がもぎ取られた。

(・∀ ・)「いただきまーす」

受け取った実にさっそく齧り付く。
硬さはあるものの、歯は簡単に果肉に食い込む。
果汁が垂れ、口の中を甘くする。

( ^ω^)「あまくておいしいお。しぜんのめぐみだお」

二人で一つの実を食べながら言う。
ドクオの方は無心で果肉を口にしていた。

(´<_` )「野生でこれだけの甘さがある実は珍しいんだぞ」

弟者も実を齧りながら話す。
彼の一口は、またんきのそれよりもずっと大きい。

(・∀ ・)「へー」

またんきは自分が持っている実と弟者の持っている実を見比べながら、気のない返事をする。

97 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/24(土) 14:43:30.16 ID:O5cxbXo50
    
(´<_` )「作物なんかだと、より甘くなるように交配されてるからな」

(・∀ ・)「がったいさせて、いいものをつくるんだなー?」

(´<_` )「そういうことだ」

弟者はまたんきの頭を撫でる。
彼も兄者と同じく、褒めて伸ばす方針を持っているようだ。

('A`)「ウマカッタ」

( ^ω^)「どくお! しょくごのうんどうだお! きょうそうするお!」

(;'A`)「エッ」

( ^ω^)「ごーるは、あのきだお。
      あの、ぴんくのはながさいてるき」

('A`)「アノキカ」

( ^ω^)「じゃあ、いちについてーよーい――」

(;'A`)「イヤ、イマノハ、リョウカイノイミジャナクテ……」

( ^ω^)「どーん!」

ブーンが勢いよく飛び出す。
一瞬迷ったが、ドクオもゴールを目指す。

98 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/24(土) 14:47:00.44 ID:O5cxbXo50
   
(・∀ ・)「おれもはしるぞー!」

( ´_ゝ`)「おー。いけいけー」

またんきも駆け出した。
彼の後押しをしたのは兄者だったが、ブーンに勝てないことはわかっていての行動だ。
兄者と同等の速さを持つブーンに勝つのは、並大抵のことでは叶わない。

それをよく知っている弟者は苦笑いだ。
隣にいるドラゴンに目を向ければ、彼も同じような感情を持っているような気がした。

(´<_` )「……体力作りの一環てことで」

ドラゴンはゆっくりと目蓋を閉じた。
彼なりの頷きだ。

( ´_ゝ`)「なら、お前も走るか?」

(´<_` )「冗談。
      むしろ、兄者の方が走りたいんじゃないのか」

( ´_ゝ`)「いや、こうして後ろからあいつらを見てるのも楽しいもんだとな」

(´<_` )「それには同意しよう」

弟者は微笑んだ。
騒ぐ三人の声が少し遠い。

99 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/24(土) 14:50:25.08 ID:O5cxbXo50
   
彼らがゴールとしていた木の下にまで行くと、ブーンが嬉しそうに飛び回っていた。
ドクオは地面に膝をつき、またんきは木にもたれている。

(・∀ ・)「おそいぞー」

( ´_ゝ`)「歳なもんで」

( ^ω^)「なにいってるんだお。
      それより、ぼく、いっとうしょうだったんだお!」

(・∀ ・)「おれはにとうしょー!」

(´<_` )「ドクオ……。またんきより先に出たのに負けたのか……」

(; A )

言葉にならぬほどショックだったらしい。
ドクオも自分の身体能力の低さは知っているが、まさかまたんきに抜かされるとは思っていなかった。
その辺りの能力を求められていないとはいえ、悔しいものは悔しい。

幸い、魔法に関する能力とは違い、身体能力はある程度、努力で覆せるものだ。
これからはまたんきと一緒になって、兄者の特別メニューを受けようと決心する。

おそらく、この決心は小一時間と経たずに瓦解するだろう。

101 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/24(土) 14:53:26.58 ID:O5cxbXo50
   

( ´_ゝ`)「すっかりドロドロになったな」

(;・∀ ・)「ごめんなさい……」

( ^ω^)「そのくらい、あらえばいいお」

果実を食べ、昼食に柔らかいパンと肉を食べたまたんきは、すっかり落ち着いていた。
そうなれば、先ほどまでの遊びで汚れてしまった靴にも意識が向く。

(´<_` )「そうそう。何なら、まだ泥蹴りしてもいいぞ」

(;・∀ ・)「もうしないぞー」

泥蹴りをしていると、周囲に誰もいないことにも気づいた。
ドラゴンも汚れたくないので、先ほどまでは後ろにいた。
大人しくすることで、ようやく周りに全員が集まってくれる。

遊ぶのも楽しいが、一人っきりで遊ぶのは味気ない。
楽しげにしてくれている仲間が必要だ。
外に出ることで、知ることができたそれを手放したくはない。

104 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/24(土) 14:56:30.63 ID:O5cxbXo50
   
('A`)「デモ、タダアルクダケジャ、タイクツジャナイカ?」

(・∀ ・)「うーん。ちょっとだけなー」

(´<_` )「なら、適当に薬草について説明してやろう」

辺りに生えている雑草のような草を指差して弟者は一つ一つ丁寧に説明を始める。
傷に効く草や、腹痛に効く草。
灯南とは違って様々な種類の草が生えていた。

(・∀ ・)「いっぱいだなー」

( ´_ゝ`)「雨が多いと、植物も育ちやすいんだよ」

( ^ω^)「またんきもそだつおー」

(・∀ ・)「おーきくなるぞ!」

('A`)「チイサクテモイイゾー」

大きくなれば、精霊としての力が強くなる。
ドクオとしては、いっそのこと、幼い姿のままでいてくれても構わない。

(´<_`;)「おまっ……。
     自分が一番小さいからって」

(;'A`)「ウルセェ」

(・∀ ・)「あにじゃやおとじゃくらいおーきくなるぞー!」

105 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/24(土) 14:59:38.69 ID:O5cxbXo50
    
楽しい時間は過ぎるのも早い。
あっというまに日が沈む。

(・∀ ・)「きょうはのじゅくかー」

ドラゴンと共に歩くというのは新鮮だった。
途中で、歩くドラゴンに乗ったが、空を飛んでいるときとは違う揺れは面白いものがあった。
彼を踏み台に、普段ならば届かない位置にある木の実を取ったりもした。
始めて自分でもいだ実が、非常に不味かったことだけが悔やまれる。

そんな自然に溢れた一日を過ごした。
恒例となっている魔法の練習は、やはり成果を見せず、
兄者との訓練は相変わらず疲れがたまる。

早く寝てしまおうと思うのだが、はたと気づく。

(・∀ ・)「……ここで?」

地面はぬかるんでいる。
テントを張っても、地味に水分が染み込んでくるだろう。
そもそも、木の根が邪魔でテントが張れない。

何をどうすれば、こんな場所で休むことができるというのだろうか。
またんきは呆然と立ちつくす。

106 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/24(土) 15:02:25.51 ID:O5cxbXo50
   
(´<_` )「旅をしていたらな、泥の中で眠ることもある」

('A`)「ネーヨ」

( ^ω^)「さらっとうそつくんじゃねーお」

一瞬、信じかけたが、二人のおかげで弟者の言葉が嘘だとわかる。
しかし、結局どのようにするのかはわからないままだ。
またんきは兄者に聞こうと彼の姿を探す。

( ´_ゝ`)「ばーん!」

(・∀ ・)そ「うわ!」

唐突に視界の中に入ってきた兄者は、またんきにシートを見せる。

(・∀ ・)「あ、それ……」

( ´_ゝ`)「そう。この前も使ったビニールシート」

(・∀ ・)「それをしくのか!」

( ´_ゝ`)「ご名答!」

107 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/24(土) 15:06:05.55 ID:O5cxbXo50
    
ビニールシートの上にテントを張れば、水分の心配はほとんどしなくてもいい。
残る問題は、どこにそれらを使うかというところだ。
そのことをまたんきが口にすると、兄者は胸を張った。

( ´_ゝ`)「オレには頼りになる弟がいるからな」

(・∀ ・)「おとじゃか?」

( ´_ゝ`)「そう」

見れば、弟者はまだマシな地面を探していた。
あまり木の根がなく、盛り上がりや陥没の少ない開けた場所。

(´<_` )「このくらいなら、もう少し平らにすれば大丈夫だろ?」

( ´_ゝ`)「あぁ」

弟者は不安気に頭をかく。

(´<_` )「灯南から遠いからな……。
      上手くいく保障はないぞ」

( ^ω^)「がんばれおー!」

('A`)「オウエンシテル」

116 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/24(土) 15:41:18.63 ID:O5cxbXo50
   
周りの声援に後押しされ、弟者が口を開く。

(´<_` )「土の精霊、ゼアフォーと契約せし我が命ず。
      世界を支える土よ、自然を育む地面よ。
      この場を平らにせよ」

ズズッと、地面が音をたてた。
またんきは、弟者が土の魔法を使ったことはわかっているが、それ以外のことはなにもわからない。

(・∀ ・)「おー」

だが、わずかに動く土に驚きを隠すことをしなかった。。

('A`)「ホントウニ、チョットダナ」

(´<_`;)「遠いんだからしかたないだろ」

魔法を使う前と、使った後ではわずかな変化が見られる。
しかし、それは本当にわずかで、少し無理をすればテントが張れる。と、いうレベルにしかなっていない。

( ^ω^)「でも、おとじゃのまほうがなかったら、てんとがはれなかったお!
      ありがとうだお!」

( ´_ゝ`)「そうそう。ついでにテントも張ってくれたら嬉しいなー」

(´<_` )「宋咲なら雷かー。
      雷の精霊、電気王と――」

( ´_ゝ`)「勿論、兄であるオレが張らせていただきますけどね!」

118 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/24(土) 15:45:40.67 ID:O5cxbXo50
    
わいわいと騒ぎながらテントを張り、その中で眠る。

中に入ってしまえばいつも通りかと思ったが、それは違う。
宋咲の森は虫の声がよく聞こえる。
風の音や、木々の匂い。心を落ち着かせる自然の恵みだ。

目を閉じれば、まるで自分が自然の一つになったような気持ちになれる。
地下なんぞとはまったく違う。
またんきは幸せな心地だった。

(-∀ -)「何だか、いいなぁ」

( ^ω^)「そうさくはいいところだお?」

(-∀ -)「うん。ぶーんのきもちがわかるぞー」

(´<_` )「お前ら、明日も歩くんだぞ。
      早く寝ろ」

(-∀ -)「はーい」

( ^ω^)「おやすみだおー」

('A`)「オヤスミ」

119 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/24(土) 15:48:27.33 ID:O5cxbXo50
幸せな心地も、一瞬で崩れ去ることがある。

雷の音で目が覚め、テントから一歩出れば濡れネズミとなるほどの雨が降っていた時がそれだ。。
進むにはテントを片付けなければならない。
塗れぬためにはテントの下にあるビニールシートが必要だ。

木々があっても濡れるほどの雨だ。
またんきにはもはや回避のしようがない。

(・∀ ・)「……ずぶぬれだぞー」

( ^ω^)「それはみんなおなじだお」

( ´_ゝ`)「こればっかりは諦めるしかないな」

(・∀ ・)「むー」

('A`)「モンクヲイッテモ、シカタナイコトダ」

(´<_` )「自然のことだからな。
      精々、風邪をひかずにすむことを祈るくらいしかできん」

120 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/24(土) 15:51:28.31 ID:O5cxbXo50
   
その日のうちに町につけたのは幸運だっただろう。
すっかり雨に濡れてしまったまたんきは、宿をとるとすぐに風呂へ向かった。
半分は精霊といえど、流石に寒かったようだ。
ブーンとドクオもそれは同じだったらしく、またんきと一緒になって風呂に入っていた。

(´<_` )「この町はもうしっかり形ができてるな」

( ´_ゝ`)「宋咲の中心になるんだろうな」

建築途中の建物は殆どなく、道もしっかりと舗装されている。
的芽の町と比べても遜色ない作りだ。

(´<_` )「明日、軽く探索して、シベリアに向かうか」

( ´_ゝ`)「そうだな。宋咲も面白いところだが、シベリアも面白い」

(´<_` )「オレはまたんきを図書館に連れて行ってやりたいな」

( ´_ゝ`)「精霊使いにするんだっけか」

(´<_` )「適性があるのかはわからんが……。
      兄者も興味があるだろ?」

( ´_ゝ`)「ある。
      これで、あっさり精霊使いになれるなら、またんきは人間という性質の方が強いということになるな」

またんきは大切だ。
しかし、それと興味とは別の話だったりする。

122 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/24(土) 15:54:48.47 ID:O5cxbXo50
   
再び雨上がりの朝を向かえ、一行は町を探索する。
的芽ほど娯楽施設があるわけではないが、それなりに栄えている町のようだ。
昨夜の雨などものともせず、道は水溜り一つない。

(・∀ ・)「まとめのいえとは、ちょっとかんじがちがうな」

宋咲の建物は奇抜な色をしているものが多い。
新しい試みをしようとする者が多い証拠だ。
それはそれで目を楽しませるのだが、住むとなるとここには住みたくないと思わせる何かがある。

('A`)「ヘンナミセモ、イッパイアルナ」

( ^ω^)「うらないやさん、げてものやさん……」

建物が奇抜ならばとばかりに、中に入っている人も奇抜なようだ。
面白みはあるが、長居していると毒されそうでもあった。

(´<_` )「ふーん。カラクリ屋ねぇ」

( ´_ゝ`)「VIP国では珍しいな」

魔法が主流のVIP国では、カラクリが少ない。
試しに見せてもらったものは、大した作りではなかったが、目新しいことに違いはない。

123 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/24(土) 15:58:06.67 ID:O5cxbXo50
    
( ^ω^)「あにじゃー。おとじゃー。
      おもしろそうなのみつけたおー」

( ´_ゝ`)「この町に面白そうじゃなさそうなモノがあるのか?」

そう言いつつも、兄者はブーンの後を追う。
彼が指差す方向には、一見、何の変哲もない家があった。
この町にしてはシンプルなデザインで、白を基調にし、余計な装飾や色を一切使っていない。

シンプルを極めた壁にかけられている看板は、これまたシンプルなものだ。
簡潔な文字。

『記録屋』

それだけがかかげられていた。

( ^ω^)「おもしろそうだお?」

('A`)「キロクヤ。ッテ、ナンダヨ」

(・∀ ・)「きになるー」

言葉こそ異なれど、三人は興味を隠すことなくその店を見ていた。

132 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/24(土) 16:06:30.01 ID:O5cxbXo50
   
弟者も興味深げに『記録屋』なるものを眺めている。
名前だけ見れば、何かを記録しているのだろう。
だが、スコアがあるわけでもないのに、記録はできない。

あの建物の中にいる人物は、何を記録しているのだろうか。
日々のことを記録しているだけならば、それは個人の日記でしかない。
ああして、看板を構える程度のものではあるはずだ。

(´<_` )「確かに気になるな」

建物を見ながら呟く。
真っ白な壁は美しいが、どこか儚げだ。

( ´_ゝ`)「入るか!」

観察している弟者を無視して、兄者は足を踏み出す。
変な店だったら。などとは考えない。
法外な金をとられたら。という心配など欠片もしない。

兄者は興味の赴くままに扉を開けた。
せめてノックくらいはしろ。と、苦々しげに言ったのは弟者だった。

135 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/24(土) 16:09:26.97 ID:O5cxbXo50
   




( <●><●>) 「――いらっしゃいませ。
        兄者さん、弟者さん、ブーンさん、ドクオさん、またんきさん」

静かな空間。
本棚しかないような、現実感のない部屋だ。

そこに男はいた。
床に座り込み、羽根ペンを使い本に何かを記していた。
顔は五人に向けられているが、手は止まっていない。
サラサラと、何かを記し続けている。

不思議な雰囲気の男だった。
彼の周りだけ、雰囲気が違う。
静かで、どこか張り詰めている。
清廉な空気とでもいうのだろうか。

男は精霊なのだろう。
耳もなく、髪もないとなればすぐにわかる。
それにしても、彼の持つ空気は独特だ。

羽根は見えないが、ジョルジュのように服の下にあるのかもしれない。
何の属性を持っているのかはわからないが、宋咲にいるのだから、雷とだろうと弟者はあたりをつけた。

138 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/24(土) 16:12:39.34 ID:O5cxbXo50
   
( ´_ゝ`)「何で、オレ達の名前を?」

兄者が疑問を口にする。
先ほど、男は間違いなく五人の名前を呼んだ。
無論、全員が彼とは初対面だ。

( <●><●>) 「あなた方が来るのは、わかってました」

男の手が止まる。
部屋は一気に静寂に抱かれる。

誰も口をきかない。
主である男が口を開くまで、言葉を発することが許されていないようだ
それでいて、重苦しいわけではない。
自然と、口を閉ざすことができていた。

( <●><●>) 「私は記録屋。
        過去に起こった出来事と、これから起こる出来事を記しています」

再び彼の手が動く。
彼の言葉を信じるのならば、本に記されているのは、過去か未来かのどちらかなのだろう。
またんきは無意識のうちに弟者の服を掴んでいた。

清らかさは時として、他者に恐怖を与える。
男は相手を怯えさせているなど考えもしていないようで、五人から目を離して手元の本を見る。

142 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/24(土) 16:15:29.87 ID:O5cxbXo50
   
( <●><●>) 「信じるかどうかはあなた方しだいですがね」

冷たさすら感じる口調だ。
すっかり怯えてしまっているまたんきは、さらに強く弟者の服を掴んだ。

対して、弟者は部屋にある本棚を見る。
少々の威圧や静寂に怯える彼ではない。

本棚は、歴史書と、宗教本が三分の一を占めていた。
残りはわずかな空きと、男が持っている物と同じ本が入っている。

(´<_` )「そこの本棚には、過去も未来も記されているのか?」

よく見れば、大量にある本には年代が張られている。
ずいぶん古い時代からあるようだ。

( <●><●>) 「いいえ。未来を知るのは、一握りの人でいいのです。
        そこにあるのは、この世界の過去だけです」

(´<_` )「個人的な過去は?」

( <●><●>) 「それはプライバシーの侵害にあたるでしょう」

弟者は呆れたように息を吐いた。
この男、『記録屋』などと偉そうなことを言ってはいるが、実際のところはただの歴史をまとめているだけだ。
建物の雰囲気に圧倒されれば、彼の言うことを信じてしまいそうになるのは上手い作りだと思う。

144 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/24(土) 16:18:28.23 ID:O5cxbXo50
   
(´<_` )「ちなみに、これは触れても?」

( <●><●>) 「どうぞ。見てもらうために書いていますので」

弟者は適当な本を取り、またんきに見せる。

(・∀ ・)「何だこれー」

( ^ω^)「れきしだお。
      これは……まだ、らうんじとせんそうしてないころおね」

本の中身は、文章だけではなく、図解も入れられている。
そこにらに売っている歴史書よりもずっと読みやすく、わかりやすい。

胡散臭い男ではあるが、まとめるという点に関しては素晴らしい才能を持っているようだ。
これが出版されれば、多くの者が歴史に興味を持つに違いない。
あまり歴史に興味のなかった流石兄弟も、ここにある歴史書ならば、過去を学んでもいいと思える程だった。

(・∀ ・)「よくわからんけど、すごいぞー」

またんきはいくつかの字が読めない。
そのため、歴史を全て知ることはできないが、図を見ているだけでも、この国の過去がおおよそつかめる。
先ほどまでの恐怖心も忘れ、すっかり本にのめり込んでいる。

148 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/24(土) 16:21:38.23 ID:O5cxbXo50
   
( ´_ゝ`)「あんたすごいな」

兄者は本を片手に、素直な気持ちを口にする。
褒められているのだが、男は手元の本を見たまま、素っ気なく返す。

( <●><●>) 「私は見ているものを書いているだけです」

男は周囲に人がいないかのように振舞う。
しかし、声をかけられれば言葉を返しているので、意図的に無視しているわけではないようだ。

(・∀ ・)「なぁ!」

沈黙したままの男に、本を持ちながらまたんきは声をかけた。
一瞬、男はペンをとめ、またんきを見た。
すぐに視線は本に戻ったが、一応話しは聞くつもりらしい。

(・∀ ・)「まとめに、でっかいかべがあるんだ。
     あれはどうやって、できたんだ?」

(´<_` )「したらば海に面したところにある壁か」

本で調べようともしたらしいが、いつできたのかがわからなければ探しようがない。
歴史の本を書いている張本人であれば、すべてを知っている違いない。と、いうのがまたんきの考えだ。
それはあながち間違いではない。

149 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/24(土) 16:24:25.03 ID:O5cxbXo50
  

( <●><●>) 「あれは、一八四年前に作られました。
        発案者は当時の王、エクストです。
        建築に携わったのは奴隷が五百人、精霊使いが二百人、普通労働者が六百人。
        三年と一〇八日をかけて建てられました。
        ミルフィーユ構造と呼ばれ、レンガとレンガの間に粘着式の粘土を挟みこんでいます。
        それを精霊使いが高温の炎で焼くと、人の力ではどうにもできないほどの硬さを持ちます。
        ちなみに、建てられた理由としては、当時の反奴隷制度派が、的芽から船を出し、
        灯南の者を的芽に連れてきていたため、それを防ぐ目的とされています。
        灯南からやってくる者を防ぐため。と、いうのは後につけられたデマです」


つらつらと言葉が溢れ出る。
これを何も見ないで、かつ、ペンを動かす手は止めないで言っている。
またんきだけではなく、全員が驚いたとしてもしかたのないことだ。

( <●><●>) 「必要であれば、奴隷、精霊使い、普通労働者の代表名も教えますが」

(・∀ ・)「……いや、それはいいや。
     ありがとう」

ほぼ無意識で言葉だけを返す。
それ程に、男が発した言葉の羅列は凄まじかった。

流石にそこまでの興味はない。
作った技術と理由がハッキリしただけで満足だ。
またんきは思いもよらぬ量の知識を与えられ、未だに夢見心地だ。

154 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/24(土) 16:27:37.70 ID:O5cxbXo50
   
放心している子供を放って、弟者はまた本棚に目を移す。
綺麗にわけられている本は、それだけで目を幸せにさせる。

(´<_` )「あれ。この本……」

本棚を端から見ていた弟者はあることに気がついた。
最後の本と、ペンを走らせている男を何度も見比べる。

( ´_ゝ`)「どうした?」

眉をひそめている弟者に気づき、兄者が近寄る。
弟者は最も新しいと思われる本を手にしていた。

(´<_` )「最後の本、昨日のことが書かれてる」

( ´_ゝ`)「え?」

兄者も男を見る。
特に何があったわけでもない昨日のことが書かれていることも気持ち悪いが、
昨日までの歴史を書きとめてあるとするならば、あの男は何を書いているのだろうか。
ペンの音が何か、恐ろしい音に感じられ始めた。

手にしていた本を戻し、弟者は男の方を向く。
絶妙な角度で書かれているため、彼が何を書いているかはわからない。
ペンが動き、文字が書かれていることだけがわかる。

155 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/24(土) 16:30:37.96 ID:O5cxbXo50
   
(´<_` )「……それは、何を書いているんですか?」

( <●><●>) 「未来ですよ」

躊躇いなど欠片も見せぬ即答だ。
次の言葉を告げることさえ忘れてしまうほど、彼の口調は強かった。

( <●><●>) 「あなた方には見せられませんがね」

男は何かを綴る。
それが未来だとしても、まったく別のことだとしても、薄ら寒いことに変わりはない。
彼には、間違いなく自分達とは違うものが見えている。

ここを出よう。
弟者は目線で兄者に伝える。
同じことを思っていたのか、兄者もすぐに頷いた。
本棚を眺めている三人に声をかけ、すぐにでも出ようとする。


( <●><●>) 「――そうだ。
        一つだけ、あなた方へ贈り物を」


ただ声を発せられただけのはずなのに、流石兄弟は背筋が粟立った。

159 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/24(土) 16:34:03.59 ID:O5cxbXo50
   
男は本を閉じた。
大きな目が五人を映す。

( <●><●>) 「私は、神の使い、時の精霊ですから。
        神の名において慈悲を与えてあげましょう」

流石兄弟だけではなく、全員に悪寒が走る。
男の目は本気だった。

彼が何を思っているのかは知らないが、時の精霊など聞いたことがない。
世界に唯一の属性であることも考えられるが、それにしても「神」という言葉がどこか不穏だ。
流石兄弟もブーンもドクオもまたんきも、誰一人として「神」など信じていない。
ましてや、目の前にいる男は「神」を妄信していることが肌で感じられるほどだ。
信じられない上に、気持ちが悪い。

男の中にある「神」が恐ろしいことを告げれば、彼はそれを実行するのだろう。
不安定で、それでいて狂気的な瞳をしている。

閉じた本を床に置き、男は立ち上がる。
座っているときは意識していなかったが、彼はずいぶんと大きい。
長身の流石兄弟よりも、少し背が高い。

属性が時であったにせよ、別の何かであるにせよ、精霊としての力はかなり強いだろう。
小さなドクオなどその姿に圧倒されている。

161 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/24(土) 16:37:30.81 ID:O5cxbXo50
   
( <●><●>) 「あなた方は、近いうちに全員死にます」

空気が凍る。
笑い飛ばすことができないほど、その言葉は真実味があった。
何なら、その言葉だけで心臓は動きを止めそうなほどに。

( <●><●>) 「ですから、今のうちに、したいことをしておきなさい」

特に。と、男は一人を指差す。

( <●><●>) 「あなたは、ね」





(;・∀ ・)


指の先にいたのはまたんきだった。


   

163 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/24(土) 16:40:39.84 ID:O5cxbXo50
   
( ´_ゝ`)「出るぞ」

沈黙の中、兄者の声が反響した。

兄者はまたんきの背を無理矢理に押す。
ショックを受けたのか、呆然としているまたんきは押されるがままに外へ出た。
兄者は扉を抑え、その間に弟者とブーン達が外へ。

最後に兄者が扉をくぐる。
その前に、彼は顔だけ後ろに少し向けた。

( ´_ゝ`)「……あんた、ワカッテマスか」

( <●><●>) 「そうですよ。
        流石兄者さん」

( ´_ゝ`)「…………」

ワカッテマスの表情はわからない。
ただ、兄者の名を呼んだときの声は、楽しげに歪んでいた。

165 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/24(土) 16:43:33.93 ID:O5cxbXo50
   
(・∀ ・)「おれ、死ぬのかー?」

('A`)「シヌカモナ」

(´<_` )「ドクオ。今はそういう冗談は止めろ」

( ´_ゝ`)「そうだぞ。またんきはピュアなんだからな!」

五人はすぐに町を出た。
これ以上、ワカッテマスがいる町にいたくなかった。
ほとんど逃げるようにドラゴンのもとへ戻る。
日向でまどろんでいたドラゴンを目にしたときの安心は、言葉では言い表せない。

( ^ω^)「しなないお。
      あんなの、うそっぱちだお」

(´<_` )「あの部屋の雰囲気にのまれたが、本当なわけがないだろ」

落ち込んでいるまたんきを励ます。
つい最近、外に出てきて生きる楽しさを学び始めたばかりの彼にとって、死というものはひどく恐ろしい。
不安気に揺れる瞳を見ると、ワカッテマスが許せなくなった。

弟者は眉間にしわを寄せ、歯を鳴らした。
言って良いことと、悪いことというのが、この世にはある。



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