2012年芸術の秋ラノベ祭りのようです
(・∀ ・)と兄弟のようです
  前編 六



593 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/11/18(日) 13:24:05.25 ID:EHpwtljV0
   
(・∀ ・)「うおー! すげー!」

翌朝、灯南に向けて盗むものを盗んだ流石兄弟は、ドラゴンと合流して海を渡っていた。

( ^ω^)「そうだお? そうだお?」

興奮しているまたんきに、ブーンは何度も同意の言葉を返す。
滑空するドラゴンの下には、どこまでも続いているような海がある。
本島と灯南地方の島の間にある狭い海だが、湖も見たことがないまたんきからすれば、広大に見えた。

( ´_ゝ`)「晴れてよかったな」

(´<_` )「雨でも降ったら出発が遅れるからな」

下が地面ならば、多少の悪天候は我慢でどうにかなる。
しかし、海上の雨は少々問題がある。
何か起こったときの対処法が難しいことと、荒れた海そのものが危ないからだ。

(・∀ ・)「あおいなー。
     そらとそっくりだ!」

(´<_` )「海の青は、空の色を反射してるんだ」

(・∀ ・)「そうなのかー」

見事なまでの棒読みだ。

596 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/11/18(日) 13:27:39.95 ID:EHpwtljV0
   
(・∀ ・)「あっ! 何かいたぞ!」

('A`)「サカナダナ」

(・∀ ・)「あれがさかなか!」

昨夜の食事を思い出してまたんきの腹が鳴る。

( ´_ゝ`)「食事は灯南についてからだな。
      海辺で魚でも取るか」

兄者も海を見ながら呟く。
盗みだけでなく、漁もそれなりに上手いのだ。

(・∀ ・)「おー。また何かいるぞー」

( ^ω^)「あれは……ふねだお」

海上を行く船があった。
上空からではわかりにくいが、大きい船のようだ。

599 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/11/18(日) 13:30:56.47 ID:EHpwtljV0
   
( ´_ゝ`)「あー。ありゃ、奴隷船だな」

なんて事もないように兄者が答える。

(;^ω^)「あにじゃ……」

またんきは元奴隷だ。
彼としては奴隷というよりも、実験体であった思いの方が強いだろうけれど、
それでも多少の気を使ってやってもいいはずだ。

(´<_` )「思ったら即だろ。兄者は」

咎める言葉を持たない弟者も同罪といったところか。
彼も海上にある奴隷船を目に映す。

(´<_` )「奴隷探しにでも行くんだろうな。
      ご苦労なことだよ。本当に」

その声は呆れているようにも、馬鹿にしているようにも聞こえた。
奴隷制度に関して、流石兄弟はどちらもそれほど熱い反対を述べない。
それがこの国の摂理であると受け入れているし、おおよそ自分達には関係のない話だからだ。

(・∀ ・)「どれいにされるのか」

またんきの声は硬い。

602 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/11/18(日) 13:33:33.67 ID:EHpwtljV0
     
('A`)「ソウダナ。ヒナンデ、ツカマエラレタヤツハ、アノミナトマチニ、ツレテコラレル」

檻の中に入れられ、奴隷市場で売られる。
ドクオの言葉に、またんきはハッとする。

(・∀ ・)「あのおりには、どれいがいたのかー」

('A`)「ソウダ」

(;^ω^)「どくおも!」

またんきは顔をうつむける俯ける。
あの時は何とも思わなかったが、すぐ傍に奴隷がいたのだと思うと、恐ろしくなった。
また、あの場所に戻ってしまうような。そんな悪寒が体を駆ける。

(´<_` )「気にするな。
      お前は奴隷じゃない」

( ´_ゝ`)「盗るのは好きだが、盗られるのは趣味じゃないしな」

(・∀ ・)「……わかってるぞー」

顔を上げ、心を強く持つ。
表情は変わらない。
だが、彼らならば瞳を見ただけで心の奥底まで見てしまうのだろうと思った。
不安定な心を見せたくはない。

603 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/11/18(日) 13:36:34.13 ID:EHpwtljV0
    
海の上を飛ぶこと数時間。そろそろ日が下がり始めようとしている頃に、彼らは灯南の端に着いた。
ニュー速の港町から見る海と、灯南から見る海はまったく違う。
またんきは空から見る海とも違う風景にまた揺れる海面を凝視する。

( ´_ゝ`)「じゃあちょっと人数分取ってくるわ」

(´<_` )「火は任せろー」バリバリ

(;´_ゝ`)「やめて!
      というか、バリバリって何!?」

魚を取りに行く足を止めて振り返る。

(´<_` )「早く行けよ」

(;´_ゝ`)「えっ。ナニソレ怖い……」

そんなことを言いながらも、兄者は再び海へ足を向ける。
そのまま焼くつもりなので、あまりにも大きな魚は向かないだろうと思いながら、腰の短剣を抜く。
使い慣れたククリを海水につけるつもりはない。

('A`)「マタンキ、ウミニオチルナヨ」

(・∀ ・)「わかってるぞー」

605 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/11/18(日) 13:40:05.23 ID:EHpwtljV0
   
外に出たことがないまたんきだ。
泳げないだろうことはわかりきっている。

(´<_` )「おーい。お前らすることないなら、焚き火用の枝を探してくれよ」

(・∀ ・)「えだがいるのかー?」

葉一枚で焚き火を作ることができる弟者だ。
わざわざ枝が必要だとは思えない。
海から目を離して弟者に近づく。

(´<_` )「せっかくいい感じの枝が転がってるんだ。
      使えるものは使うさ」

灯南は荒れ果てた荒野の地方だ。
枯れ木や折れた枝がそこいらに転がっている。

('A`)「サカナヲサスエダモイルシナ」

ドクオはふわふわと飛んで枝を一本持ち上げる。
彼の体から見れば枝一本も大きい。
どうにか持ち上げているが、ふらふらしている。

(・∀ ・)「てつだうぞー」

607 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/11/18(日) 13:43:58.43 ID:EHpwtljV0
   
またんきはドクオが持っていた枝を受け取り、近くに落ちている枝をまた拾う。
両手一杯に拾うと、それを弟者へ手渡す。

(´<_` )「ありがとう」

(・∀ ・)「おう」

弟者の隣に座る。
護身用のナイフを取り出した弟者は、受け取った枝を少し削る。
そこに魚を刺すつもりだ。

(・∀ ・)「おもってたより、草も木もあるんだな」

('A`)「ソウミエルダロ?」

ドクオの言葉はネガティブだが、またんきの目に映る周囲は、緑も多い。
木の数は少ないが、全くないわけではない。
不毛の土地だと聞いていただけに、この風景は意外だった。

610 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/11/18(日) 13:46:31.54 ID:EHpwtljV0
(´<_` )「その辺りに生えてる草は全部、荒氏だ」

(・∀ ・)「ぜんぶか?」

( ^ω^)「ぜんぶだお」

またんきは再び周囲を見渡す。
言われてみれば、生えている草はどれも同じ形をしている。

(´<_` )「この土地は栄養も雨も少ない。
      普通の草じゃ枯れてしまうんだ」

二本、三本と、鋭い枝を作り上げていく。
四本目の製作に取りかかりながら、この土地の説明を加える。

(´<_` )「その上、荒氏は他の植物の栄養まで奪うからな。
      乾燥や栄養不足にも強い植物や作物も、ヤツラに侵食されてお終いだ」

悪循環が繰りかえされている土地だ。
樹木ならば侵食される確率は下がるが、それでも弱いものは淘汰される。
およそ人が住むのに適しているとはいえない場所だ。

614 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/11/18(日) 13:49:39.99 ID:EHpwtljV0
  

(・∀ ・)「あらしって、つえー」

('A`)「ココニウマレタヤツラハ、ネコソギ、ヤキハライタイダロウヨ」

(´<_` )「違いない」

風が吹けば、荒氏が揺れる。
さわさわとした音は爽快感があるようにも思えるが、背景にあるものを考えれば暗くなる。

( ´_ゝ`)「とったどー」

毛についた海水を振り払いながら兄者がやってくる。
海で取ったらしい魚を手に持っている。

(´<_` )「お疲れ様」

( ´_ゝ`)「毛がまたパサパサになる」

(´<_` )「今度、念入りにリンスしろ」

( ´_ゝ`)「そうするわ」

( ^ω^)「するのかお……」

616 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/11/18(日) 13:52:50.74 ID:EHpwtljV0
兄者は自分が取った魚を枝に刺していく。
その合間に弟者が焚き火を作る。

( ´_ゝ`)「早く乾かねぇかなぁ」

魚が焼けるのを待ちながら自前の毛も乾かす。
いつまでも濡れているのは気持ちが悪い。

(・∀ ・)「おれがひでかわかしてやるよ!」

手を出して唸り声を上げる。
しかし、そこから火が出ることはなかった。
どれほど力を込めても、結果は昨日と同じだ。

(・∀ ・)「もー!」

( ´_ゝ`)「はいはい。気持ちだけ受け取っておくよ」

(・へ ・)「むー」

また兄者がまたんきの口角を下げる。

( ^ω^)「やっぱり、かってがちがうのかお?」

(´<_` )「わからんなぁ。
      半分人間だから、習得に時間がかかるだけかもしれん」

618 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/11/18(日) 13:56:14.37 ID:EHpwtljV0
その後、無事に焼けた魚と、町で買ったパンを食べる。
夕焼けを眺めながら食べる食事は美味しいかった。
ニュー速から海一つ渡ったとはい、距離としてはあまり離れていないはずの灯南だが、
日が沈んだ後の寒気は向こうの地方ほどなかった。

寒いことは寒いのだが、またんきやブーン達ならば寒さをまったくといっていい程感じないくらいだ。
耳族である流石兄弟も、薄布を一枚被るだけで寒さを防ぐことができる。

(・∀ ・)「ぜんぜんちがうんだなー」

またんきは言った。
別の地方に行くとはいっても、高々隣の地方。と、
侮っていたのだが、そうでもないらしいことがわかる。
一つ移動すれば、空気の感じかたから、夜の過ごしかたまで変わってくる。

(´<_` )「北上していくと、また寒くなるけどな」

(・∀ ・)「そうなのか」

寒さに耐性のあるまたんきとしては、北上することに恐れはない。
むしろ、次は今いる地方とどう違うのかという点に興味がわく。

(・∀ ・)「まとめはどんなばしょなんだー?」

( ´_ゝ`)「おっ。気が早いな。
      また海を越えるときにでも話してやるさ。弟者が」

(´<_`;)「またそのパターンか!」

弟者が叫ぶ。

620 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/11/18(日) 13:59:48.15 ID:EHpwtljV0
    
( ´_ゝ`)「何だ。自分の知識に自信がないのか?
      いいんだぞ。お前はオレよりもずっと優秀な頭脳を持ってる。自信を持て」

(´<_` )「そりゃどうも。
      だが、あいにく、オレもその事は自覚してるよ」

('A`)「アニジャハ、セイレイトケイヤク、デキナイモンナー」

(;´_ゝ`)「あっ。そういうこと言う?」

精霊と契約するには、ある程度の知識が必要だ。
陣を描き、呪文を唱え、契約を結ぶ。
誰にでもなれるわけではない。

(´<_` )「どうせ兄者も説明するだろうに」

( ´_ゝ`)「基本的にはお前がしろよ」

気分屋の兄者は、気が向かなければ教えない。
それならば、真面目で知識を有する弟者に任せるほうが良いに決まっている。

(・∀ ・)「おれはどっちでもいいぞー」

(´<_` )「流石兄弟、二人で教えますよっと」

( ^ω^)「ぶーんたちもいるお!」

623 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/11/18(日) 14:02:51.62 ID:EHpwtljV0
    
そうして、寒くない夜を越え、ドラゴンはまた飛ぶ。
盗みこんだ食料を食べながら灯南を回っていく。

どこも彼処も荒れており、同じ荒氏が生えているだけ。
生き物の姿は殆どない。いたとして、小さなネズミのような生物がいるだけだ。
不毛の土地だと言われているのにも納得がいく。

沈む夕日は美しく、昇る朝日は輝いている。
風になびく荒氏の音は心地良いのに、生きることは難しい。
またんきは数度の夜をどこか虚しい気持ちで過ごした。

(・∀ ・)「あそこみたいだ」

ポツリと呟く。

( ^ω^)「あそこ?」

(・∀ ・)「おれがいたとこ」

誰もいなくて、生き物がいる気配すらない。
ただ静かで、美しさだけが整えられているような牢獄。
絶望と静けさで彩られている灯南にはピッタリのイメージだ。

( ´_ゝ`)「一度くらい誰かに会うかと思ったんだがな」

(´<_` )「近頃は、昔よりも住む間隔を広げてるらしいからな」

624 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/11/18(日) 14:05:55.63 ID:EHpwtljV0
   
( ´_ゝ`)「本当に悪循環が過ぎる土地だ。
      奴隷制度に反対する奴や、この土地で一生を終えなければいけないことに同情してくれる奴だって存在するのに、
      生きている奴を見つけられなきゃどうにもできない」

(´<_` )「かといって、集落を作れば、集落ごと奴隷にされる、か」

荒氏のことといい、救出の術のことといい、不幸な土地だ。
逃げ出そうにも、海を越えるための船を作る材料すらここにはない。
灯南へくる船といえば奴隷船で、一度入れば後は落ちるだけ。

( ´_ゝ`)「しかし、ここにも飽きた。
      明日、海辺まで飛んで、明後日には的芽に行こう」

(・∀ ・)「つぎのばしょか!」

またんきが嬉しそうに飛び上がる。
好奇心旺盛な彼は、日に日に瞳の輝きを増している。

('A`)「マトメハヒロイゾ」

(・∀ ・)「うみよりか?」

( ^ω^)「ざんねんながら、うみのほうがひろいお」

(・∀ ・)「なーんだ」

626 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/11/18(日) 14:08:29.61 ID:EHpwtljV0
少し落胆しつつ、またんきは毎夜恒例になっている魔法の練習をする。
一度も魔法が使えたことはない。
不満を口にし、兄者に口角を下げられて眠る。
それが日常になっていた。


(・∀ ・)「あ、何だ、あれ!」

ドラゴンの背中の上、またんきが声を上げた。
鳥か何かいたのだろうと、弟者がまたんきの指をたどる。

(´<_` )「……お、誰かいるぞ」

( ´_ゝ`)「ん? おお、ようやく生きてる奴に会えたか。
      ドラゴン、降りてくれ!」

兄者の声にドラゴンが答え、ピンクの体が上空から地上へと舞い降りる。
下にいた者達は驚き、逃げようとしているが、灯南に住んでいるような者がドラゴンから逃げられるはずがない。

(・∀ ・)「あうのか?」

( ´_ゝ`)「せっかくだからな。その地方に住む人間と交流するってのも、中々勉強になるぞ?」

勉強になるとは言っているが、兄者の目的は違うのだろう。
出会って数日ではあるが、またんきも兄者の性格を把握し始めていた。
彼は人のためには行動しない。あくまでも自分が楽しむことと、自分の利益が優先される。

兄者が会うというのだから、それ相応の楽しみが彼の中には存在しているのだろう。

628 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/11/18(日) 14:12:01.33 ID:EHpwtljV0
    
(;`ハ´)「お前達、奴隷商人アルか!」

地上にいたのは、一人の耳族と一人の人間だ。
耳族の男は、人間の女の子を庇うように前へ出る。

( ´_ゝ`)「おー。耳族の男が、その年齢になるまでここにいられるとは……。
      お前は運がいいんだな」

悪役めいた口調でいい、口角を上げる。
どこからどう見ても、奴隷をとりに来た者にしか見えない。

||;‘‐‘||レ「「シナ兄……」

女の子はシナ兄と呼んだ耳族の服を握る。
奴隷になることへの恐怖と、慕っている兄と離れ離れにされるのではないかという不安がそうさせる。
常人ならば、見ているだけで胸を痛めるような光景だ。

(;^ω^)「ぼくたちはどれいしょうにんじゃないお!」

兄者が植え付けた誤解を解くため、ブーンが前へ出る。
奴隷商人だと思っていた男の後ろから現れた、朗らかな精霊に灯南の二人は毒気を抜かれたような顔をした。

629 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/11/18(日) 14:15:33.13 ID:EHpwtljV0
    
( ^ω^)「ぼくたちは、たびのとちゅうなんだお」

('A`)「ヒナンデハジメテ、ヒトヲミタカラ、ハナソウト、オモッタダケダ」

二人の精霊が説得を計るが、灯南の二人は疑いの目を辞めない。
奴隷商人が毎日出入りしているような地方で住んでいるのだから、それも仕方ないだろう。

(;`ハ´)「我らは貴様らと話すことなどないアル」

(´<_` )「どっちだよ」

(;`ハ´)「ないヨ」

( ´_ゝ`)「いやいや、そう言わずに」

笑みを浮かべて、灯南の男に一歩近づく。
またんきはドラゴンの近くでその様子を眺めていた。

||‘‐‘||レ「近づかないで!」

響いたのは、女の子の声だ。

631 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/11/18(日) 14:18:35.98 ID:EHpwtljV0
   
||;‘‐‘||レ「あたし達が何をしたっていうの!?
      この地で、ただ、ただ生きてるだけなのに……」

女の子の声は震えている。
生まれてこの方、安心して外を歩いたこともないのだ。

||;‐;||レ「奴隷なんて……嫌よ……。
     あたし、荒氏しか食べれなくてもいい……。だから、だから……」

涙を流し、その場に崩れ落ちる。
慌てて男が彼女の傍に寄りそう。いざとなれば、彼女を抱えて逃げるのだろう。

(・∀ ・)「あらしって、食べれるのか?」

(´<_` )「食べれんことはない。
      が、ただの雑草だ。栄養は殆どないし、不味い」

近づいてきたまたんきの問いに答える。
弟者の言葉に、またんきは周囲を見る。
そこいらに生えている荒氏は、確かに美味そうには見えない。

(・∀ ・)「まずいのに食べるのか」

('A`)「ソレシカ、タベラレナインダ」

635 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/11/18(日) 14:27:13.07 ID:EHpwtljV0
      
ネズミはいれども、姿を見ることは殆どない。
当然、主食は肉よりも草に偏る。
作物のできない灯南で、荒氏を食べるのは必然的なことだった。

( `ハ´)「……我が奴隷になるアル。
     だから、この娘は見逃せヨ」

||;‐;||レ「嫌! シナ兄がいなくなったら、あたし……生きていけないよ!」

女の子は男に縋る。
人間の彼女はまだ小さい。確かに、何らかの庇護がなければ生きていけないだろう。

( ´_ゝ`)「落ち着けって。
      オレ達は本当に奴隷商人じゃない」

( `ハ´)「……じゃあ、なんで灯南なんぞにきたアルか。
     旅をしているとはいっても、灯南に見るものはないヨ」

(´<_` )「国を知る勉強のため。と、いったところだ」

不信感は抜けていないようだが、奴隷商人にしては毛並みが悪いと判断され、多少ではあるが警戒を緩めてもらう。
男にしがみついている女の子は、未だに嗚咽をもらしていた。

638 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/11/18(日) 14:30:35.79 ID:EHpwtljV0
     
( ´_ゝ`)「耳族と人間のペアか。兄弟ではないんだろ?」

( `ハ´)「当然ネ。
     我とこの子は同じ時期に生まれたヨ」

(・∀ ・)「それにしては大きさがぜんぜんちがうぞー」

(´<_` )「耳族だからな。成長が早いんだ」

男は女の子の背を撫でる。
同時期に生まれたとしても、物心つくころには男のほうが大きかったので、彼女は男を「兄」として呼ぶ。

( `ハ´)「我が大きくなったら、この子と一緒に放り出されたアル」

我が子を奴隷の道から逃がすための行為だ。
彼もそのことはわかっているが、幼い人間の女の子を捨てた親を許すことはできない。
撫でる手にも力が入る。

||‘‐‘||レ「シナ兄……?」

( `ハ´)「すまんアル。大丈夫アルヨ」

640 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/11/18(日) 14:33:50.71 ID:EHpwtljV0
       
( `ハ´)「そういえば、この子以外と話すのは久しぶりアル」

零された言葉は重い。
奴隷商人から逃げるため、この地方の者は接触を避ける。
年頃になれば伴侶を探して移動するが、孤独な死を選ぶ者も多いという。

果たして、奴隷となって死ぬ人生と、飢えと孤独に抱かれたまま死ぬ人生。どちらがマシなのだろうか。
それを選ぶのは現地の者だとしても、恐ろしい選択肢しかないことに違いはない。

(・∀ ・)「かわいそうだなー」

現状をどうにかする術を彼らは持たない。
またんきはそれを知っている。
かつて、地下にいた自分がそうであったように、努力や気合では解決できないことがある。

あの地獄から流石兄弟が救い出してくれたのは、単に運が良かっただけだ。
幼いまたんきには、自分が灯南の二人を助けるという発想はないし、
ただの貧民である二人を流石兄弟が救い出すとも思えない。

故に、同情の言葉を零すしかなかった。

642 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/11/18(日) 14:36:36.34 ID:EHpwtljV0
    
||#‘‐‘||レ「何よ! あんたに、何がわかるのよ!
      同情なんて! 何の役にもたたないんだから!」

女の子が立ち上がり、またんきの方へ向かう。
驚いたまたんきが慌てて後ろに下がるが、彼女の方がわずかに早い。

||#‘‐‘||レ「せめて、シベリアか、ニュー速に生まれていれば!
      こんな……こんなっ……!」

本島であるニュー速ならば、地方を移動することができた。
シベリアは灯南と同じく、海に浮かぶ島だが、本島と繋がっている橋がある。
このVIP国で、灯南だけが完全に隔離されているのだ。

(・∀ ・)「うわっ! 何するんだよー!」

||#‘‐‘||レ「あんたみたいな奴に、わかるもんか!」

(´<_` )「歴史を紐解けば、元は荒れた土地に生まれた奴が、
      本島へ奉公に出てたってだけの話なのにな」

( ´_ゝ`)「気づけば奉公人は奴隷へと変わり、
      荒れていただけの土地は奴隷畑になったってか」

叩かれているまたんきを横目に言う。
仮にもまたんきは男で、精霊だ。ガリガリの人間、それも女の子にやられることはないだろう。

647 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/11/18(日) 14:39:35.10 ID:EHpwtljV0
       

( `ハ´)「歴史なんてどうでもいいアル。
     我らは今を生きることに精一杯ネ」

彼の体は細い。
生きることすら難しいことがそこに表現されている。

('A`)「ソレデモ、シニタクナイノカ」

絶望に抱かれたままならば、いっそのこと死んでしまえばいい。
そうすれば、今の苦しみからは解放される。
闇の精霊であるドクオは、本人に自覚がないにせよ、他者を追い詰めることがある。

( `ハ´)「……確かに、死んでしまった方が、マシかもしれないヨ」

男は顔を俯ける。
慌ててブーンがフォローするが、絶望している者に光の言葉は届きにくい。
彼はひたすらに落ち込むばかりだ。

(´<_` )「近いうちにこの地から生き物はいなくなるかもな」

奴隷として連れて行かれる人数が多い。
統計を取ることはできないが、年々人口は減っているはずだ。
いずれ、どれだけの奴隷商人がやってきたところで、人一人見つけられなくなる。

650 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/11/18(日) 14:42:31.18 ID:EHpwtljV0
     
( ^ω^)「そういうのはよくないお!」

優しいブーンは叫ぶ。
なくなっていい命はなく、誰もが幸福である権利を有しているのだから、
ここで必死に生きている者を貶していいはずがない。絶望に追いやる必要などない。

( ´_ゝ`)「あんたは、生きたいんだろ?
      あの少女と」

またんきを叩きながら、また涙を流している少女を指差す。
泣いている彼女をどうしてよいのか、またんきにはわからないらしく、助けを求める瞳をこちらに向けていた。

( `ハ´)「……あの子は人間ヨ。
     我よりも長く生きる。我が死んだ後、あの子はどうなるネ」

まぶたを閉じて言葉を零す。
見えぬ瞳は、慈愛と不安に満ちているのだろおう。

||;‐;||レ「シナ兄、どこか行くの?」

うなだれている男を心配して、女の子が駆け寄る。
自分も泣いているというのに、他人を心配できる子だ。

( `ハ´)「大丈夫ヨ。大丈夫……」

( ´_ゝ`)「根拠のないことを言ってやるな」

653 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/11/18(日) 14:45:49.38 ID:EHpwtljV0
     
きっぱりとした口調で言い捨てる。

( #^ω^)「あにじゃ!」

ブーンの怒鳴り声もどこ吹く風。
兄者は互いを支えあう二人を見る。

( ´_ゝ`)「大丈夫なもんか。こんな不毛の土地。
      奴隷になるか、飢えて死ぬかだ」

(#`ハ´)「なら……お前が助けてくれるとでも、いうアルか!?」

細い手が兄者の胸倉を掴む。
誰の目から見ても殴りあいをすれば男が負ける。

(´<_` )「さあな。でも、黙ったままで助けてもらえるほど、
      自分達を特別だと――思ってないだろうな?」

弟者が男を兄者から引き剥がす。
軽い体は簡単に剥がれ、地面に落ちる。

(・∀ ・)「あにじゃ? おとじゃ?」

二人の様子に、またんきも戸惑いの声を出す。
他者に対して冷たいところのある二人だが、これほどまではっきりとした冷たさは始めてだった。

656 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/11/18(日) 14:48:43.36 ID:EHpwtljV0
     
( ´_ゝ`)「あの子、またんきはオレ達が盗んだ。
      お前達からしてみれば救ったとも言えるかもしれん。
      だが、またんきは特別だった。だから、救われた」

(´<_` )「お前達はどうだ? 特別か?」

長身の二人が並び、男と女の子を見下ろす。
その姿は奴隷商人以上の非道さを思わせる。

男は二人を見上げながら唇を噛んだ。
特別なところなど何一つない。この灯南ではよく見る人間と耳族だ。
救われる理由がない。

( #^ω^)「ふたりとも! ぼくもおこるお!」

(;'A`)「モウオコッテルッテ」

怒りをあらわにしているブーンをドクオが宥める。
ドクオやブーンは、冷たい兄弟を何度も見てきた。
平然と他者を殺す姿も、這う浮浪者を見捨てる姿も。

けれど、こうしてわざわざ相手の心を逆撫でするような行為は始めてだ。
基本的にいえば、流石兄弟は相手の生きかたを尊重する。
彼らもまた、自由に生きる者が好きなのだ。

661 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/11/18(日) 14:51:47.47 ID:EHpwtljV0
     
(  ハ )「……けて、くれ……」

(´<_` )「何?」

弟者が屈む。
顔を男に近づける。

( `ハ´)「助けてくれアル!」

男が弟者の腕を掴む。
相手を見る瞳には強い意思があった。
何をされても腕は離さない。助けてもらうまでは、意地でも縋りつく。そんな目だ。

||‘‐‘||レ「シナ兄?」

( `ハ´)「助けてくれ! こんな生活はもう嫌ネ!
     二人は無理だというなら、この子だけでも、本島へ連れて行くだけでもしてくれアル!」

||;‘‐‘||レ「嫌だ。嫌だよ! シナ兄!」

女の子が男の手を掴む。
必死に首を横に振り、一人は嫌だと何度も告げる。

( ´_ゝ`)「一緒に助かりたくないのか」

( `ハ´)「できるならば! 我と、この子を!」

663 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/11/18(日) 14:53:26.87 ID:EHpwtljV0
         

( ´_ゝ`)「そうか。だが、残念ながら、オレ達の移動手段であるドラゴンは定員オーバーだ」

(;`ハ´)「なっ……」

助ける気など毛頭なかったというのか。
男は悔しげな顔をする。隣にいる女の子は眉を吊り上げ、兄者を睨みつける。

( ´_ゝ`)「――だが、代わりにコレをやろう」

取り出したのは、小さな袋だ。
安っぽい袋の中には、何かが入っているらしい。

( `ハ´)「これは……?」

受け取った男が袋を開ける。
中には、小さな種がいくつも入っていた。

||‘‐‘||レ「種……」

(・∀ ・)「たね?」

( ^ω^)「しょくぶつのあかちゃんだお」

666 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/11/18(日) 14:55:40.35 ID:EHpwtljV0
      
( `ハ´)「馬鹿アルか。この土地は見ての通り、荒氏が覆い茂っているヨ。
     雨も降らない。栄養もない。何が育つというネ」

袋を握り締める。
種が育つというのならば、こんな苦しい重いをせずにすんだのだ。

(´<_` )「それは、以前オレ達がとある施設から盗んだ物だ」

弟者は立ち上がり、砂を払う。

(´<_` )「その研究者はたいそう善人でな。
      奴隷制度に反対し、灯南の者が普通に生活できるようにと思っていた」

( `ハ´)「……それが、どうかしたアルか」

(´<_` )「どれだけ反対しても奴隷制度はなくならない。
      灯南の者を保護するにも、見つけることができない。
      そこで、研究者は己の本分。すなわち、研究で灯南を救うことにしたんだ」

( ^ω^)「そういえば、ちょっとまえになにかぬすみにいってたお」

('A`)「オレタチハ、ルスバンダッタナ」

669 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/11/18(日) 14:57:38.14 ID:EHpwtljV0
      
(´<_` )「そうして完成したのがその種だ」

( `ハ´)「つまり?」

男は呆然としている。
ただ、手の中にある種が、大切な物のように思えてきた。

(´<_` )「荒氏から養分を吸い取る種。水が少なくとも育つ種。
      灯南専用の、種だ」

||‘‐‘||レ「それじゃあ、これを育てれば」

(´<_` )「食環境が少し整えば、力をつけることもできるだろうな」

( ´_ゝ`)「美味けりゃ出荷もできるかもしれん」

男は手の中にある袋を優しく握る。
小さな種だが、大きな希望だ。

( ^ω^)「おとじゃ、あにじゃ……!」

ブーンは感動の声を出す。
先ほどまでの怒りは消え去っていた。
やはり、彼らはいい耳族だ。

671 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/11/18(日) 15:00:59.54 ID:EHpwtljV0
       
( ´_ゝ`)「ただし!」

兄者が付け加える。

( ´_ゝ`)「成功してるのをオレ達は見たが、あくまでも実験段階だ。
      実際の状況で上手くいく保障はどこにもない」

( `ハ´)「それでも……。希望があれば、それに縋るアル」

( ´_ゝ`)「そうか。なら立派に育ててくれよ?」

(´<_` )「そいつは淡い水色の花を咲かせるんだ。
      この灯南一面に、それが咲いたら綺麗だろうなぁ」

(・∀ ・)「きれいなのか?

( ^ω^)「きっと、きれいだお」

( ´_ゝ`)「オレはその光景を見たくて、拝借してきたんだ。
      あの研究者に任せてたら、いつまで経ってもここに届かないだろうからな」

兄者は灯南の二人に背を向ける。

( ´_ゝ`)「でも、育てるなんてオレには向いてないし、そんな時間も暇もない。
      だから、お前達に任せた。また、来年くるから、しっかり育ててろよ!」

673 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/11/18(日) 15:02:50.54 ID:EHpwtljV0
     
( `ハ´)「やってみるアル」

||‘‐‘||レ「……ありがと」

二人は立ち上がり、弟者達を真っ直ぐに見つめる。
そこには、出会ったときのような陰鬱さは見受けられない。

(・∀ ・)「あのさ」

またんきが女の子に近づく。

(・∀ ・)「楽しみにしてるから」

||‘‐‘||レ「見てなさい。びっくりさせてあげるわ」

(・∀ ・)「できるのかー?」

||#‘‐‘||レ「このっ!」

(・∀ ・)「おまえのはいたくないぞー」

||‘‐‘||レ「じゃあ何で逃げるのよ!」

676 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/11/18(日) 15:04:51.14 ID:EHpwtljV0
    
女の子とじゃれていたまたんきは兄者を追い越し、ドラゴンの足に掴まる。

(・∀ ・)「じゃーな!」

||‘‐‘||レ「来年きなさいよ」

( ´_ゝ`)「来るさ」

(´<_` )「必ず」

( ^ω^)「またおー」

('A`)「ドレイショウニンニ、ツカマルナヨ」

五人はドラゴンの背に乗り、二人に手を振る。
彼らも手を振り返してくれた。

ドラゴンが羽ばたけば、地上はすぐに小さくなる。
それでもまたんきは下を見ていた。
彼らを見つけたときのように、ずっと見つめていた。

679 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/11/18(日) 15:07:09.28 ID:EHpwtljV0
( ´_ゝ`)「そういえば、名前聞くの忘れてたな」

(´<_` )「耳族の男は、シナ兄と呼ばれてたな」

(・∀ ・)「らいねんきけばいいぞ」

('A`)「ソウダナ」

( ^ω^)「たのしみがふえたお!」

ドラゴンの上で五人は騒ぐ。
その中で、またんきは来年への約束に心を温かくした。

少なくとも、来年はまだ一緒にいる。ささいな約束だが、
兄者達を信用していないわけではないのだが、
口約束の重みを知った。

( ´_ゝ`)「今日はいい気分で飯が喰えそうだ」

(´<_` )「海辺に降りるから、魚も食べれるしな」

( ´_ゝ`)「またオレが海に入るのか……」

( ^ω^)「いやなのかお?」

( ´_ゝ`)「毛がバサバサになるもの」

(・∀ ・)「……もともとだぞ?」

またんきが兄者の毛に触れて言う。

681 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/11/18(日) 15:09:33.80 ID:EHpwtljV0
      
(;´_ゝ`)「そりゃロクに手入れしてないからねーって、
      止めて! 耳族にとって毛並みは大切なんだぞ!」

('A`)「ナラ、チャントテイレシロ」

(´<_` )「ドクオの言うとおりだぞ」

呆れるドクオに重ねて弟者が言う。
海に入っていない彼の毛並みは、良いとは言い難くとも、兄者よりはマシだ。

( ´_ゝ`)「お前も特に何もしてないくせに」

(´<_` )「宿屋に泊まったときはしてるぞ」

(;´_ゝ`)「えっ! 初耳!」

(´<_` )「一々報告しないだろ常考……」

(・∀ ・)「おれもきれいにしてるぞー」

( ^ω^)「またんきはきれいなかみしてるお」

684 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/11/18(日) 15:11:48.76 ID:EHpwtljV0
    
灯南にきたときのように海で取れた魚を食べる。
ただの丸焼きなので、特別美味いわけではない。

(´<_` )「次に来た時は、魚以外のものが灯南にもあるかもな」

魚を食べながら言葉を零した。

( ´_ゝ`)「もしかすると、焚き火に使えるような枯れ木なんてないかもな」

(・∀ ・)「それはこまるなー」

他愛もない話だ。
たった一年でそこまでこの土地が変わると思っていない。
けれど、夢に思いを馳せるのは自由だ。

( ^ω^)「やっぱり、あにじゃたちはやさしいお」

ドクオと一緒に魚を食べながら言う。
冷たいところもある二人だが、助ける術があるのに見殺しにはしない。
多少、厳しいところはあるかもしれないが。

688 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/11/18(日) 15:14:07.67 ID:EHpwtljV0
   
( ´_ゝ`)「不幸なのも、哀れなのもしかたないさ。
      同情はしても、手を差し伸べることはしない」

食べ終わり、魚を刺していた枝を焚き火に入れる。

( ´_ゝ`)「だけどな、不幸か幸福。どっちが良いかって聞かれたら、そりゃ幸福だろうさ」

(´<_` )「自分が不幸のどん底にいるときは、他人の幸福が鬱陶しい。
      でも、オレ達はそうじゃないからな。他人の幸福は見ていて楽しいもんさ」

つまるところ、彼らは自分の楽しみのためにしたことだと言いたいらしい。
照れからきているのか、元来の信条がそうさせているのかはわからないが、
どちらにしても、灯南でただ死を待つばかりだった二人を助けたことに変わりはない。

('A`)「ソウダナ。コウフクハ、イイナ」

(・∀ ・)「あのふたりは、しあわせになるのか?」

( ´_ゝ`)「そりゃ、あいつらしだい。来年のお楽しみ」

(´<_` )「楽しみは後にとっておくもんだ。
      だから、的芽の話も明日だ」

(・∀ ・)「えー! そっちは、かんけいないだろー!」

(´<_` )「関係ありますー。オレはもう寝ますー」

690 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/11/18(日) 15:17:33.39 ID:EHpwtljV0
   
テントに入っていく弟者。またんきはそれを追いかける。
ドクオとブーンはまたんきの肩の上だ。

( ´_ゝ`)「今日はオレが外側かー」

続いて兄者もテントに入る。
灯南から的芽への移動は、ニュー速へ行くよりかは短い。
長い飛行時間にはならないだろうが、首都のある場所へ行くのだ。
準備は万全にしておきたい。

テントに入った五人はすぐに眠りについた。
今日、久々に人と会い、またんきは疲れていた。
他の四人は、今までの旅の中ですぐに眠ることができるように体が変化している。


眠った彼らの夢の中には、水色の花が咲き乱れる地があった。
そこにいる人々は、誰もが笑っている。
いつか現実になるであろう夢だった。



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