2012年芸術の秋ラノベ祭りのようです
(・∀ ・)と兄弟のようです
  エンディング



544 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/25(日) 01:49:26.64 ID:AaWc7ilq0
    

  _
( ゚∀゚)「あー。煙草が美味い」

船の甲板で煙草を吸う。
手にしているのはライターだ。

(`・ω・´)「ジョルジュさん! サボらないでください!」
 _
(;゚∀゚)「げっ」

突然現れた男に、ジョルジュは声をもらす。
凛々しい眉毛が特徴的な耳族だ。

(`・ω・´)「げっ。って何ですか。げっ。って」
 _
(;゚∀゚)「だって、お前も口うるせーんだもん」

(`・ω・´)「誰と比べてるんですか……」
  _
( ゚∀゚)「前隊長」

(`・ω・´)「あぁ、フサのお父さん……」

男はため息をついた。

546 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/25(日) 01:52:13.22 ID:AaWc7ilq0
   
(`・ω・´)「ギコさんは真面目な人だったのに、どうしたあいつは……」

ミ,,゚Д゚彡「人を親父と比べるなよー。隊長ー」

新たに男が現れる。
やけにフサフサした毛皮を持っている。彼もまた、耳族だ。

ミ,,゚Д゚彡「あー。ジョルジュさん、まだそのライター使ってるんスか?
     オレ、新しいのプレゼントしますよ?」
  _
( ゚∀゚)「いや、いい。
    これは、オレの大切な友人から貰ったもんだからな」

わずかに焼け跡の残っているライターを、手の中でいじる。
これからも、ずっと使っていく予定だ。
刻まれている修理跡がいくら増えようとも、捨てるつもりはない。

(`・ω・´)「それより! お前、罰のトイレ掃除は終わったのか?」

ミ,,゚Д゚彡「うーん。そろそろ終わる」

(`・ω・´)「そろそろ?」

ミ,,゚Д゚彡「やべっ」

(#`・ω・´)「お前……。また他の船員を買収してっ……!」

548 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/25(日) 01:55:12.74 ID:AaWc7ilq0
   
途端にうるさくなった甲板で、ジョルジュは少し前のことを思い出していた。
空は快晴。
場所はニュー速上空。

こんなところでウロウロしていると、奴がやってくることだろう。
以前のことを思い出したのもそのせいに違いない。
ちょうど、灯南に美しい花が咲く季節だ。



     「空の上だからって騒いでんじゃねーよ!
     折角の青空が台無しじゃねーか! どう責任取ってくれんだ!
     このバーカ!」


  _
( ゚∀゚)「おっ。悪餓鬼様がやって来たぞ」

550 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/25(日) 01:58:34.10 ID:AaWc7ilq0
   

(・∀ ・)「誰が悪餓鬼だ。オッサン!」


飛び出してきた声の主は、ピンク色のドラゴンに乗っていた。

金糸の髪が太陽に照らされ、キラキラと輝く。
最大の特徴ともいえる赤と青の目は、野生的に光る。
彼の腰にあるククリは、年代を感じさせるものの、今でも立派にその役目をこなすことがうかがえる。
  _
( ゚∀゚)「お前が悪餓鬼じゃなかったら、誰が悪餓鬼なんだよ。
     近頃、お前の名前が入った手配書がよく届くんだよ」

(・∀ ・)「へっへーん!
     流石盗賊の末っ子、流石またんき様の力! 思い知ったかー!」

(`・ω・´)「捕まえるよ?」

(・∀ ・)「やれるもんならやってみなー」

(;^ω^)「またんき。しゃきんをあまりちょうはつするなお」

(#`・ω・´)「キミは、ボクを怒らせた!」

(;^ω^)「どらごんのうえでけんかしちゃらめええええええ!」

556 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/25(日) 02:03:14.43 ID:AaWc7ilq0
   
またんきは立派に成長した。

ただし、身長はジョルジュよりも低いままで成長が止まっている。
人間としては標準的なものなので、しかたないといえばしかたない。
  _
( ゚∀゚)「お前達は仲いいねー」

シャキンと戯れているまたんきを見ると、心の底から思う。
昔は誰かと喧嘩することなどなかったというのに、半分人間というだけあってまたんきの成長は早い。
ジョルジュは柄にもなくしんみりとした。

(・∀ ・)「火の精霊、またんきと契約せし我が命ず。
     赤々と燃えろ。奴を取り囲め。
     奴を捕らえよ」

(;`・ω・´)「危ないだろ!」

(・∀ ・)「へっへーん!
     ゼロ距離契約の魔法、思い知ったか!」

精霊であり、精霊使いでもあるまたんきの魔法は強力だった。

559 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/25(日) 02:06:24.29 ID:AaWc7ilq0
  _
( ゚∀゚)「相変わらず、すげーな」

( ^ω^)「おとじゃが、ぜろきょりけいやくのこうせいを、
      くににおくってくれてなかったらとおもうと……」

またんきの力は強力だ。
本来ならば、その力を研究するために、新たな敵が現れてもおかしくはなかった。
  _
( ゚∀゚)「牽制代わりに、魔法が契約によって増幅される仕組みをまとめて提出したんだもんなぁ。
    頭がいいのは知ってたが、あそこまでとは」

弟の為にやるべきことをやってから死ぬ。
生前のショボンが、あの兄弟はブラコンだ、と言っただけのことはある。

( ^ω^)「もうすぐ、せいしきにうりだされるんだお?」
  _
( ゚∀゚)「あぁ。そう聞いてる。国に仕えてる精霊には配布されるらしい」

( ^ω^)「いいおねー」
  _
( ゚∀゚)「またまたー。
    どうせ、盗るんだろ?」

(;^ω^)「そ、それは、わからないお」
  _
( ゚∀゚)「兄者と弟者だったら、間違いなく盗りに行ってただろうな」

563 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/25(日) 02:09:39.17 ID:AaWc7ilq0
   
( ^ω^)「……もう、あれから、なんねんになるかお」

ドラゴンの上で死闘を繰り広げているまたんきとシャキンを眺めながら零す。
精霊にも、懐かしむ気持ちは存在するのだ。
  _
( ゚∀゚)「さてな。精霊の感覚はあてにならんよ」

( ^ω^)「だおね」
  _
( ゚∀゚)「しっかし……弟者が死んだときは、どうなるかと思ったが、
    意外や、意外。しっかりやってるじゃねーの」

兄者が死んだときを思えば、ジョルジュの心配は当然だったのかもしれない。
けれど、あの時とは状況がまったく違っている。

( ^ω^)「おとじゃは、じゅみょうだったお」
  _
( ゚∀゚)「あぁ、しっかり生きたな」

( ^ω^)「それに、ぼくもどらごんもいるお」
  _
( ゚∀゚)「そうだな。
    お前も、立派な兄貴だもんな」

( *^ω^)「そうだお。ぼくも、あにきなんだお」

564 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/25(日) 02:12:13.16 ID:AaWc7ilq0
   

弟者が死んだ。
ショボンも、ギコも死んだ。
耳族は総じて寿命が短い。

それでも、彼らは人生を謳歌した。
誰かの為に生きるのも、結局は巡り巡って自分のためだった。

自分のために生きて、笑って死んだ。

  _
( ゚∀゚)「おーい。またんき。
    次はどこに行くんだー?」

(`・ω・´)「どうせ、灯南ですよ」

(・∀ ・)「どうせって何だよー」

ミ,,゚Д゚彡「お前、あの花が好きだもんなぁ」

ドラゴンの上で取っ組み合いをしていた二人が甲板に降りる。
戦場の土台となってしまっていたドラゴンも一息ついた。

(*・∀ ・)「だって、黄緑色の茎に、水色の花が咲くんだ。
     んでもって、実は紫色なんだ」


またんきは笑う。
当たり前のように、頬を赤くし、目を細めて口を開けて、どこにでもいる人間のように笑う。

567 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/25(日) 02:14:10.17 ID:AaWc7ilq0
    
(`・ω・´)「はいはい。んで、その次はシベリアの雪祭りに行くんだろ?
      もー。お前はいつもそのコースだな」

(・∀ ・)「いや、今回は灯南に行く前に、行くところがあるんだぞー」

ミ,,゚Д゚彡「え? どこに行くんだ?」

またんきは口角を上げる。
その笑い方は、どこぞの長男とよく似ていた。






(・∀ ・)「弟をな、ちょっと掻っ攫いに!」



                    (・∀ ・)と兄弟のようです 完



支援イラスト 専用スレ2>>591より


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