2012年芸術の秋ラノベ祭りのようです
( ´_ゝ`)君の道、僕らの世界、のようです(´<_` )



2 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/25(日) 22:32:49 ID:QXb7/AYI0


いつしか、空をじっと見るようになった。
いつしか、広いこの場所で翼を広げるようになった。
見ていたし、知っていたし、分かっていたんだ。

それでもお互い、きっと分かっていないふりをして。
ここまできた。


.

3 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/25(日) 22:33:33 ID:QXb7/AYI0
( ´_ゝ`)「風が気持ちいいなー」

水色の毛並みをした青年がぽつりと呟いた。
フードの上からひょこりと顔を出す三角の耳が、風に揺れる。
その声に呼応して、隣で大人しく寝ていた赤色の飛竜は一つ、唸り声を上げた。


煉瓦造りの塔の上。
眼下に広がるのは町並み。
砂漠の真ん中に、貿易拠点として栄えるソウサク国。



彼は明日、国を支える王となる。

4 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/25(日) 22:34:17 ID:QXb7/AYI0




( ´_ゝ`)君の道、僕らの世界、のようです(´<_` )



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5 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/25(日) 22:35:15 ID:QXb7/AYI0
⊂二二二(;^ω^)二⊃「おっおー!」

小さな白い妖精が、城の回廊を一直線に飛んでいく。
両手を広げて飛ぶ彼の大きさは、それでも手のひらサイズだ。
背中には2枚の黄色がかった、向こうが透けて見えるほどの薄い羽がついている。
かなりのスピードで、妖精はとある部屋に向かっていた。

回廊を抜け、本殿とは別の建物に辿り着く。
円柱状の大きな外見に、この辺りでは珍しい石造りの様相。
所々に金の装飾が成されたそれは、この国が現在豊かである事を物語っていた。

(;^ω^)「おーん!!」

白い妖精が急ブレーキをかける。
羽をめ一杯に横に広げると、空気の抵抗を受け、小さな身体は一気に減速した。
妖精は重厚な扉の前でぴたりと止まり、声を張り上げる。

(;ノ^ω^)ノ「ぅおおおぉとぉぉおおじゃぁぁああ!!!」

小さな身体に似つかわしくない大声だ。
身体を折り曲げながら必死に叫ぶ。

すると、一枚の巨大な石で作られた扉が内側から開けられた。

6 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/25(日) 22:36:07 ID:QXb7/AYI0
(´<_` )「ブーン?」


薄い黄緑の毛並みに、三角の耳。
着ているのは紫がかったフード、金の装飾が施されたローブ。
すぐに上質なものだと分かるそれをゆったりと着こなし。
分厚い革張りの書籍を持ちながら、細い目のスッとした鼻筋の青年が、顔を覗かせた。

('A`)「何だよ何だよ、騒々しいな」

青年の肩からひょこりと現れたのは、濃い紫色の妖精だ。
ブーンと呼ばれた白い妖精とは違い、4枚の羽を生やしている。
こちらも手のひらサイズではあるが、若干ブーンよりも小さいようだ。

(;^ω^)「弟者、ドクオ!探して欲しいんだお、探してくれお!!」

弟者、というのは、黄緑の毛並みの青年の事だ。
ドクオは紫色の妖精の名前である。

困ったように眉根を寄せて、ブーンは弟者の周りをくるくると飛び回る。

(´<_` )「…何をだ?」

嫌な予感しかせず、弟者は細い目を更に細めてブーンに問うた。
こういう時の嫌な予感は大抵当たってしまうもので。


(;^ω^)「兄者が、いなくなっちゃったんだおー!!」


少ない休憩の時間をこうして壊された弟者は、盛大に溜息をついた。

7 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/25(日) 22:37:50 ID:QXb7/AYI0
街はお祭り状態だ。
国の王が変わる儀式を明日に控え、各国から華やかな贈り物が届き、儀式に参列する国の重役達がやってくる。
彼らをもてなす為に、町の中央に軒を連ねる高級な宿は人で溢れ、その周辺には出店や屋台が所狭しと出展している。
住人はそれを目当てに街へ出て、既に飲めや歌えやのどんちゃん騒ぎである。

街の中央に伸びる大通りには、国を守る屈強な騎士が1週間ほど前から配置されていた。
煉瓦造りのその道を、何本もの王国旗が彩っている。

新王が乗る煌びやかな車を引くのは、美しい羽を持つ2頭の白い竜。
それを守るように、騎士たちは竜に跨る。
数十mにも及ぶその荘厳なパレードを一目見ようと、既に道には場所取りをする者までいた。


賑やかに盛り上がる眼下の町並みを見ながら、水色の毛並みの青年は、小さく息を吐く。

( ´_ゝ`)「なあ、ベル」

青年が名を呼ぶと、隣にいる竜が、身体の脇に丸めていた長い首を持ち上げた。
淡い赤の鱗に金色の目。
ベルはまだ若いメスの竜だ。

( ´_ゝ`)「気持ちいいなあ。空、真っ青だし」

そう言った青年の頬に、ベルは顔を寄せて目を伏せた。

8 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/25(日) 22:39:20 ID:QXb7/AYI0
人に慣れず、性格も荒い火属性の飛竜である。
飛竜が人の傍にいると言う話は、何処を探しても聞いたことが無い。
彼女のような竜が青年の傍にいるのには理由があった。

珍しいものは狙われるものだ。
ベルはまだ巣で鳴く事しか出来なかった頃、密漁者に捕まった。
高額での取引を目的としたか、火属性の竜がいない北へと輸送される中、
このソウサクで見つかり、保護されたのだ。

一人で狩りも出来ない小さな竜。
巣に戻そうにも、危険な場所故立ち入れない。
珍しさと危険さから、彼女は国のトップに命を委ねられる事となった。

現王、父者。

ソウサクを統べる王は、腕を組んで唸った。
国の治安の為に殺すべきか。
生かし育てるべきか。
その時点で3人の子の親となっていた父者は悩みに悩んでいた。
更に元来心の優しい王である。
子竜の入った檻の前で、国と命を天秤にかけて目を閉じる。

9 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/25(日) 22:41:12 ID:QXb7/AYI0
(*・_ゝ・)「ちちじゃー」

(・<_・*)「なにしてるんだー?」

そこにぽてぽてと入ってきたのは、3歳程の双子の兄弟。

 彡⌒ミ
(; ´_ゝ`)「お前たち、危ないから入ってきちゃ…」

(*・_ゝ・)「あー、りゅうだ!」

(・<_・*)「ちっちゃいりゅうだ!」

檻の中にいれられた子竜を怖がる様子も無く、双子は声を上げる。
その様子に、一瞬きょとりと瞬きした竜は。

(*・_ゝ・)「わらったー!」

(・<_・*)「ないたー!」

きゅいきゅいと、愛らしく喉を鳴らした。

檻の周囲を笑いながらくるくる回る双子に合わせ、子竜は首を動かす。
まだ歯も生えていない口を大きく開けて、目を細め。
人に懐かないはずの竜は、楽しそうに双子と遊んでいた。

彡⌒ミ
( ´_ゝ`)「…ふむ…」

父者は決意する。

10 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/25(日) 22:43:02 ID:QXb7/AYI0
彡⌒ミ
( ´_ゝ`)「…2人とも」

(*・_ゝ・)「なぁに?」

(・<_・*)「なに?」

彡⌒ミ
( ´_ゝ`)「この子が大きくなるまでの面倒を、お前たちに見てもらいたい」

(・<_・*)「めんどう?」

彡⌒ミ
( ´_ゝ`)「友達に、なってほしいって事だよ」

父者の言葉に、双子の目がきらきらと輝いた。

(*・_ゝ・)「ともだち!」

(・<_・*)「いいよ!」

やったね、やったね、と、喜んで手を取り合う双子の向こう。
子竜もまた嬉しそうに、小さな羽根を檻の中で一杯に広げ、きゅいと一声鳴いた。

11 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/25(日) 22:44:01 ID:QXb7/AYI0




( ´_ゝ`)「あれから17年…」

水色の頬に擦り寄る赤い火竜。
対極の色をした一人と一匹は、賑やかな町を見下ろす。

( ´_ゝ`)「お前ももう、立派な大人の竜になったよな」

青年の手がベルの頭を優しく撫でた。

小さな双子より更に小さかった子竜は、双子の愛情を一身に受けて育った。
美味しいご飯も用意して、数日に一回、子竜と一緒に食事もする。
高い場所を好む飛竜の特性の為に、城にあった古い塔を改築し、その天辺を彼女の家とした。
広い場所、気持ちの良い風。
幼い頃から兄弟のように育った彼女の為に出来ることを、双子は何でもやってきた。

今や彼らを乗せられるほどに大きくなり。
獰猛な火竜の性格を微塵も見せず、心優しい竜になった。

けれど。


( ´_ゝ`)「…空、好きか?ベル」


ベルは一度も、空を飛んだことが無い。

12 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/25(日) 22:45:42 ID:QXb7/AYI0
(´<_` )「やっぱりここか、兄者」

( ´_ゝ`)「弟者」

背後の扉が開き、黄緑色の毛並みの青年が入ってきた。
2人の顔はとても似ていて、毛色の違いを分かっていても一瞬見比べてしまう。
けれどよく見てみれば、兄者と呼ばれた青年の方が若干背が低い。

( ^ω^)「良かった!いたんだお!!」

(;´_ゝ`)「あー…見つかっちゃったか」

弟者の背後から飛び出してきたブーンに、兄者は苦い顔をした。

(#^ω^)「僕は兄者の妖精だお!?何で置いて行くんだお!信じらんねえお!」

(;´_ゝ`)「すまん、すまんかった、だから耳を引っ張るのはやめいててててて」

ぐいぐい三角形の耳を上に思い切り引っ張られ、兄者が悲鳴を上げる。
ご立腹のブーンは、ふんすと鼻息荒く耳を離した。

(#^ω^)「明日の服の用意してくれてる人たち、僕よりも怒ってるお」

(;´_ゝ`)「…だろうなあ」

(#^ω^)「兄者は王様になるのに、自覚足りなさすぎるんだお」

兄者の頭の上に無遠慮に乗っかった白い妖精は、足を揺らしてべちべちと兄者の額を蹴る。
引っ張られるのと違い、元々軽いブーンがそんな事をした所で大して痛くは無いが、兄者はもう一度すまんと謝った。

('A`)「そんなんで大丈夫かよ、兄者」

弟者の肩に座るドクオが呆れて言う。
細い腕を組んで問いかけてくるドクオにも、兄者は困ったように笑うだけだ。

13 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/25(日) 22:48:50 ID:QXb7/AYI0

(´<_` )「ベル、すまないな、迷惑かけて」

兄者の前までやってきた弟者が、ベルの頭をゆっくりと撫でる。
鼻の頭をぐいぐいと手に押し付け、喉を鳴らした彼女に、弟者は優しく表情を崩した。

(´<_` )「で?兄者はまた何で抜け出したんだ?」

今の時間であれば、明日の儀式で着る衣装のチェックを受けているはずだ。
兄者が20歳になる日を、父者が正式に世代交代する日と決めて以降、兄者はちゃんと公務を全うしてきた。
面倒な仕事も、嫌な相手との謁見も、国の歴史や帝王学の勉強も、泣き言いわずに行ってきたのだ。
それが何故、今になって。

('A`)「元々は自由な性格してるしなあ。王様になんの面倒くさくなったか?」

(;^ω^)「そんなの困るお、王国妖精として受け入れられないお!?」

ブーンとドクオは、世界の元となる光と闇の妖精だ。
国という基盤を作るために、土地に宿るこの属種の精霊の力を借りなければならない。
その為国を統べる王族は生まれてすぐに必ず、その土地に住む精霊と契約し、
彼らが作り出す小さな妖精を従えなければならないのだ。
本来ならば王族一人につき二人の妖精を持つが、双子の兄弟である兄者と弟者には、二人で二人の妖精が付いたのだった。
王国妖精とは、そんな彼らに付けられた地位の名前である。

( ´_ゝ`)「そうじゃない。安心しろ、ブーン」

慌てるブーンに、兄者はくすくすと笑う。

( ´_ゝ`)「王になる事を嫌だと思った事は無い。
      俺はこの国が大好きだし、それを護れる地位にいる事を誇り思うよ。
      法術の勉強を人一倍がんばって、大神官にまでなって、俺をサポート
      してくれるって言ってくれた弟者もいる。
      王になる事に不満なんかないんだ」

(´<_` )「なら」

( ´_ゝ`)「不満は無い。不満じゃない。ただ」

14 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/25(日) 22:50:45 ID:QXb7/AYI0
ベルが。


羽を畳んだまま、ベルは首を伸ばしてこちらを見ていた。
金色の目を兄者と弟者に向け、大人しく話を聞いている。

( ´_ゝ`)「…父者が言った事、覚えてるだろ弟者」

(´<_` )「…」

( ´_ゝ`)「この子が大きくなるまで、面倒を見る」

大きくなるまで。
大きくなって、大人になったら、空に返そう。
父者は、最初にそう双子に告げていた。

地を走る地竜は大人しいものも多く、大昔から人との接点がある生き物だ。
故に、家畜としての役割もこなしてきた。
けれど飛竜はそうではない。
地竜と違い温厚でなく、群れを作らないその性質から、飼われた事がない。
野生なのだ。

( ´_ゝ`)「このままじゃ、ベルは何にも出来なくなる」

他の飛竜と出会い。
番いとなり、子を授かり。
愛し、育て、共に飛ぶ。
飛竜の生命としての役割を、何一つ出来ないままになる。

(-<_- )「…」

( ´_ゝ`)「俺が王になったら、前みたいにベルの傍にはいられない」

(´<_` )「…そうだろうな」

( ´_ゝ`)「お前だってそうだ。
      俺の傍にいて国政に携わるって事は、ベルの傍にいられないって事になる」

( ´ω`)「兄者…」

頭の上に乗っていたブーンが、不安そうに兄者を見下ろす。
兄者の目は、ベルの金色の目を悲しそうに見つめていた。

15 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/25(日) 22:52:34 ID:QXb7/AYI0
('A`)「…お前ら、本当双子だよなあ」

弟者の肩に止まっていたドクオが、小さな声で言う。

('A`)「弟者もここ暫く、ずっと飛竜の関連書籍眺めてたもんな」

(´<_`;)「ドクオ」

('A`)「いいだろ別に、兄者と気持ちは一緒だったんだから。へるもんでもなし」

弟者が制止するも、ドクオは意にも返さず突っぱねる。
弟者も同じ事を考えていたのだと知った兄者は、苦虫を潰したような表情の彼を暫し見た後、表情を緩めた。

( ´_ゝ`)「…本当なら、ずっと一緒にいたいんだ」

ベルを見る。
美しい金の目は、じっと兄者を見たまま動かない。

( ´_ゝ`)「子供の頃みたいに、皆でここで遊んで、美味しい飯食って、一緒に寝て。
      それはとても幸せなことなんだ」

(´<_` )「…」

( ´_ゝ`)「だから黙ってた。でも俺知ってたんだ。
      ベルが空を見てることも、翼を広げて羽ばたいてることも。
      でも、一緒にいたかった、だから引き伸ばした、本当は」

16 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/25(日) 22:53:51 ID:QXb7/AYI0
続く言葉は、首筋に頭を寄せてきたベルの頭によって遮られた。
ぐるる、と。
喉を鳴らすベルに、兄者はしがみつく。
屈強な鱗に覆われた首に腕を回し、抱きしめた。

(  _ゝ )「ベル、なあ、ベル」




空、好きか。




.

17 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/25(日) 22:54:46 ID:QXb7/AYI0
兄者の腕から離れ。
ベルは首を天に向けた。
長く、一声鳴く。
咆哮は室内を木霊し、開かれた石ぐるみの窓から空に響いた。
ベルがゆっくりと立ち上がる。

(´<_` )「ベル」

顔を両手で覆う兄者の肩を抱きながら、弟者がベルを見上げた。
金色の目が彼を捉えて、首をほんの少し傾けると、兄者にしたようにその首に顔を寄せてくる。
弟者は兄者を抱えていない左腕で、ベルを引き寄せた。

(´<_` )「お前には、お前の道がある」

ここがいいなら、いればいい。
弟者はそう考えていた。
来れる回数は少なくなるが、世話係が消えるわけではない。
ベルがそれでもいいのなら、ずっとここにいてもいい。
そう考えていたのだ。

けれど、彼女は空がいいと鳴いた。

(´<_` )「飛べるか、ベル」

ベルはばさりと大きな翼を広げた。

(´<_` )「ブーン!ドクオ!」

( ^ω^)「任せるお!」

('A`)「はいよ!」

窓縁に大きな足を乗せたベルの横を、ブーンとドクオが飛ぶ。
姿勢を低くして、ベルは塔の中から外へと頭を出した。

広がるのは、育った国。
目指すのは、青い空。

ベルの足が、地を蹴った。

18 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/25(日) 22:57:05 ID:QXb7/AYI0
(;´_ゝ`)「ベル!!!」

顔から手を離し、涙目のままで、兄者は下降していった大きな身体を追う。
窓縁から下を見ると、ふらふらとしながら、翼をばたつかせるベルを捕らえた。

(;^ω^)「がんばるお!しっかりはばたくんだお!!」

(;'A`)「サポートしてやる、怖くないから全力で上に行け!」

妖精の魔力は、人の持つものより強力だ。
周囲を飛びまわる二人は、必死にベルの身体に浮力をかける。
街の上空を不安定に飛び回ったため、人々からは悲鳴があがっている。
建物に当たりそうになるのを寸前で避け。

19 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/25(日) 22:57:56 ID:QXb7/AYI0
(;^ω^)「あがれおぉお!!」


(;'A`)「いけええぇぇえ!!」


(´<_`;)「ベル!!」


(;´_ゝ`)「あがれえぇぇええ!!」


4人が叫ぶ。
ベルが思い切り、羽ばたいた。




高度を増すベルの身体。
どんどんと青い空へ届くように。

( ^ω^)「解除!!」

('∀`)「いよっしゃああ!!」

妖精達がかけていた浮力を解いても、ベルは塔よりも上を飛んでいた。
大きな翼は自信を持って羽ばたかれ、落ちる心配はもうなさそうだ。

20 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/25(日) 22:59:11 ID:QXb7/AYI0
( ´_ゝ`)「…飛んだ」

(´<_` )「…飛んだな」

その姿を見つめていた兄弟は、ぽつりとそう呟く。
彼女が飛んだということは、同時に、別れを示す。
兄者が下唇を噛んだ。

(´<_` )「…ん?」

ベルの姿が大きくなってくる。
こちらに向かって飛んできているようだ。

( ^ω^)ノシ「兄者!弟者!」

周りを飛び続けていたブーンが、手を振りながら二人を呼んだ。
ベルは横向きに塔に近づくと、二人を見ながら一つ鳴いた。

('∀`)「乗せてくれるとよ」

乗りやすい位置まで身体を落としたベルの背中。
それを見ると、兄者は困ったように隣にいた弟者に視線を泳がせる。

(´<_` )「…行こう、兄者」

ベルがこれから、生きる世界だ。

そう弟者が促すと、兄者は決心したように一歩踏み出した。
前に兄者が座り、後ろに弟者が乗る。
それを確認したベルは、大きく翼を羽ばたかせ、青い空を目指した。
風圧に若干押され君のドクオが、ベルの鼻先にくっついた。

( ´_ゝ`)「…う、っわ…!」

(´<_` )「凄いな…!」

塔よりも、ずっとずっと高い。
眼下に見える街並みはとても小さくて、周囲を囲む砂漠はとても広かった。
陽炎が揺らめき、青い空も揺れている。
風が運んでくる砂粒は、太陽の光を反射し輝いて。

美しかった。

21 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/25(日) 23:02:10 ID:QXb7/AYI0
( ´_ゝ`)「…ここが、ベルの世界」

感嘆の声を洩らす。
自分が暮らす国とは違う、自由で気高い飛竜の世界。

兄者はベルの首に抱きついた。







(*´_ゝ`)「ベル、ベル!ありがとう、見せてくれてありがとう!」

(´<_`;)「兄者、落ちるぞ」

(*´_ゝ`)「お前はここで生きるんだな、幸せになるんだな!!」

ベルが咆えてそれに応える。
弟者は優しく、ベルの身体を撫で。
兄者の目から、涙がこぼれた。

(*;_ゝ;)「忘れないからな、お前と生きてた全部全部、忘れないから、だから…っ」






どうか、幸せに。







.

22 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/25(日) 23:03:34 ID:QXb7/AYI0
華やかな式典も佳境に入った。
王冠の交換式を終え、新王はパレードへと向かう。
人々の歓声。
式典を盛り上げる音楽。
止まない拍手。
白く美しい地竜の引く馬車に乗りこんだのは、新王と、その双子の弟。

( ´_ゝ`)「行くか、弟者」

(´<_` )「仰せの通りに、王」

( ´_ゝ`)「かたっくるしいなあ」

(´<_` )「…せめて式典終わるまではちゃんとしろ」

( ´_ゝ`)「…あ!」

王の御披露目も兼ねた馬車は、上部がない乗り込み式のものだ。
兄者が空を見上げると、そこに小さな影が差した。

羽ばたく翼。
大きな身体。

(´<_` )「…兄者の晴れ舞台だから、見に来てくれたんだな」

弟者が小さく笑う。

(*´_ゝ`)「笑われないようにしなきゃな!」

釣られて、兄者も笑った。

23 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/25(日) 23:04:33 ID:QXb7/AYI0




砂漠の中にある国の、とある日の出来事。
空は青く、どこまでも、どこまでも澄んでいた。








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