■2012年芸術の秋ラノベ祭りのようです
└( <●><●>)一人の世界のようです
- 1 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/11/25(日) 15:38:11 ID:Iu/RaBhI0
- ( <●><●>)「......」
私はとある、町外れに住んでいる。
勿論友などなく、一人静かに暮らす。
音は自然の風と水、そして時おり近くの林から動物たちの息づかいが聞こえる程度。
私の大好きな読書をするにはもってこいの住みかだ。
誰もいない空間、これほど素晴らしいものはないだろう。
( <●><●>)「......」パラリ
今日も私は一人、本の世界へと入っていく。
本はさまざまなことを知っている。
私はそれを知るのが堪らなく楽しい。
時には本の世界の主人公に、時には脇役、時には傍観者。
たった一人であるはずの私がさまざまな人へと変化していく。
( <●><●>)「......」パラリ
人はこれを妄想といい笑い飛ばすかもしれない。
しかし、それでいい。
私は、このたった一人の世界が好きなのだから。
- 2 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/11/25(日) 15:40:39 ID:Iu/RaBhI0
- ( <●><●>)「......」パタリ
またひとつ、物語が終わった。
ほんの少しの寂しさを感じながらも新たな本を探すために書斎へと潜る。
ここにはたくさんの宝が眠っている。
私にとってここは、聖地のような場所だった。
ここさえあれば、友もなにもかも、要らないとさえ感じられる。
( <●><●>)「......おや?」
分厚い本に紛れ、一冊の絵本が床に置かれていた。
クレヨンで殴り書きをしたような表紙に乱雑な文字で『だいすき』とだけ書き込まれていた。
( <●><●>)「落書き......ですか」
見慣れないそれを拾い上げ、埃を払い落としながら、私は絵本を開いた。
- 3 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/11/25(日) 15:41:27 ID:Iu/RaBhI0
- 目を開けるとそこは、ヘンテコな場所だった。
ぐちゃぐちゃに塗りつぶされた月
適当に作られた星。
まっ平らで色の変化のない大地。
これだけでも十分におかしな世界だ。
だが、そのなかで一段と目を引くものがあった。
( <●><●>)「......」
目の前にひとつの糸電話が置かれている。
糸は長く、どこまでも続いていた。
そっと私はそれを拾い上げ、耳に当てる。
『......』
『......』
( <●><●>)「もしもし?」
『......%$?』
( <●><●>)「はい?」
『#*?`?]--:+`=<'』
- 4 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/11/25(日) 15:42:07 ID:Iu/RaBhI0
- ( <●><●>)
赤子のような、ギンギンと頭に響く声が糸電話から耳へと伝わってくる。
一言で表すならその声は不快だった。
『?##-/!#$+#''』
声はまだ響いている。
そもそもこれは声なのだろうか。
私の知らない何かが、ただ鳴ってるだけなのかもしれない。
だから私は。
ープツリ
糸を切った。
- 5 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/11/25(日) 15:42:48 ID:Iu/RaBhI0
- ( <●><●>)「......」パタリ
私は静かに絵本を閉じた。
最初から最後まで意味のわからない物だった。
書かれた文字は意味のないような羅列。
とても、読めたものではない。
( <●><●>)「......おや」
窓から外を見ると辺りはもう暗くなっていた。
この絵本にどうやら気をとられ過ぎていたようだ。
( <●><●>)「今日はあまり読めませんでした」
書斎の扉を閉め、自室へと戻る。
自室は絵本とは違い、何も音がなく、静かだった。
- 6 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/11/25(日) 15:43:32 ID:Iu/RaBhI0
- ( <●><●>)「さて、今日は何を読みましょうか」
今日も私は飽きることなく新たな物語を求め、本をあさる。
今日はどんな物語に出会えるのか。
この胸の高鳴りこそが私がここまで本に魅せられている原因なのかもしれない。
( <●><●>)「......これは」
そして、今日も見つけてしまった。
ぐちゃぐちゃに作られた絵本。
『ぼくも』と書かれただけの落書きだ。
( <●><●>)「......」
こんなもの、捨ててしまえばいいのだ。
別に読んだって何も面白くはない。
だけど私は。
ーパラリ
今日もその絵本を開いた。
- 7 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/11/25(日) 15:44:12 ID:Iu/RaBhI0
- ( <●><●>)「......」
相変わらずそこはメチャクチャな世界だった。
なにもない平原にただポツリと糸電話が落ちている。
( <●><●>)「......もしもし?」
『......#/<!ん』
( <●><●>)「おや?」
今日は雑音に混じってなにか、声が聞こえた。
細々としていて、聞き取りにくかったが確かにそれは久しぶりに聞いたひ他人の声だ。
- 8 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/11/25(日) 15:45:11 ID:Iu/RaBhI0
- ( <●><●>)「あなたは誰なんですか?」
『$'<!+て?/+#'お-』
( <●><●>)「......駄目か」
少し聞こえた所でそれは雑音にはかわりなかった。
不快なノイズが響く。
頭が、割れるように痛い。
( <●><●>)「......五月蝿い」
ープツリ
私はまた、糸を切った。
- 9 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/11/25(日) 15:45:51 ID:Iu/RaBhI0
- (;<●><●>)「......ふぅ」
絵本から現実の世界に帰ってきても頭痛はまだする。
ぐわんぐわんと世界が歪み、目の前のものが霞む。
( <●><●>)「......今日はもう、寝ることにしましょう」
まだ外は明るいが、体調が体調だ。
時間はあるんだ。
またゆっくり、明日にでも読もう。
そう思い、私は部屋へと帰っていく。
ほんの少し、ノイズのような音が聞こえたような気がした。
- 10 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/11/25(日) 15:46:37 ID:Iu/RaBhI0
- ( <●><●>)「......またですか」
次の日。
私はまた、書斎にいた。
何を読もうかと部屋にはいるとまるで私を待ち構えるように絵本が足元に落ちていた。
タイトルは『ともだちだよ』
なんとなく、最初のやつに比べて文字やら色が見やすくなっている気がする。
( <●><●>)「......」
表紙のこれは人だろうか?
見覚えがあるようなないような男の子供の絵が描かれていた。
いままでぐちゃぐちゃに描き潰されていたのがきれいになったせいか、何が描かれているか何となく伝わってくる。
( <●><●>)「へぇ......」
つい興味を引かれ、今日もまた私はその絵本を開いた。
- 11 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/11/25(日) 15:47:29 ID:Iu/RaBhI0
- 目を開けるとそこは、暗い、夜の世界だった。
所々不自然だがどこか懐かしさを感じられるような平原。
が、相変わらず平原のど真ん中に糸電話が置かれている。
不自然きわまりない。
( <●><●>)「......もしもし?」
『......!?て』
( <●><●>)「......」
『お!+-ださ>!って+#;ん』
( <●><●>)「......おお」
ノイズが少ない。
声がよく聞こえる。
まあまだ、何をいってるかはさっぱりだが。
- 12 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/11/25(日) 15:48:20 ID:Iu/RaBhI0
- ( <●><●>)「あなたは誰なんですか?」
『びろ+'?'<す』
( <●><●>)「......びろ?」
はて、と首をかしげる。
記憶を呼び起こし"びろ"という名前はいないか探す。
びろ......ビロ?
(;<〇><〇>)「ガッ!?」
痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!
頭が割れるように痛む。
なにか思い出しそうだった。
でも、それどころではない。
はやく、早くこの糸を切らないと。
ープツリ
今日も糸を切った。
- 13 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/11/25(日) 15:49:00 ID:Iu/RaBhI0
- (;<●><●>)「ハァ......ハァ......」
目を開き、現実へと帰ってくる。
おかしい、何かがおかしい。
糸を切ったとき、なにかを失ったかのような感覚に襲われた。
それだけじゃない。
頭がぐちゃぐちゃにかき回されたような錯覚を受ける。
(;<●><●>)「......そうだ。私には友達なんていないじゃないか」
そう、私は一人じゃないか。
なぜ忘れていたのだろうか。
でも、あの時。
一瞬蘇りそうになったあれは。
(;<●><〇>)「グゥ!?」
吐き気。
喉元まで何かが込み上げてくる。
吐き出したい。
でも、何を?
(;<●><●>)「......訳がわからない」
フラフラと部屋に戻り、横になる。
部屋は絵本の中の時のように不快な音に包まれていた。
- 14 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/11/25(日) 15:50:27 ID:Iu/RaBhI0
- その日、私は夢を見た。
誰かが屋上にいる。
それを他の誰かが背後から必死に叫んで追いかける。
( <●><●>)「あ」
落ちた。
屋上にいた男が落ちた。
漫画とか本のような奇跡が起こることもなく落ちた。
ただ、地面を赤く染め動かなくなる。
そんな惨めな男の姿を見ながら、先程叫んで追いかけていた男は泣いていた。
泣いて、叫んだ。
『〇〇〇〇〇〇!!』
( <●><●>)「あれ?」
聞こえない。
彼はなんと叫んだんだ?
空気は震えている。
耳に届いている。
なのに、聞こえない。
でも、聞こえないはずなのに。
- 15 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/11/25(日) 15:51:27 ID:Iu/RaBhI0
- ( <●><●>)「......懐かしい?」
どこかで聞いたことのあるような錯覚を受ける。
どこだ?
彼は私となんの関係があったんだ?
( <●><●>)「......あ」
目の前に糸電話がある。
その糸の先は彼に続いていた。
もしこれを使えば彼と話せるだろうか?
私の疑問に答えてくれるのだろうか。
( <●><●>)「もしもし?」
私は、糸電話を手に取る。
『......ワカッテマス?』
懐かしい声が、聞こえた。
- 16 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/11/25(日) 15:52:07 ID:Iu/RaBhI0
- ( <●><●>)「......はい、あなたは?」
『忘れちゃったんですか?〇〇〇〇ですよ』
( <●><●>)「......」
また、聞こえなかった。
その言葉に必死に耳をおおってるかのように聞こえない。
『おひさしぶりなんです。元気でしたか?』
( <●><●>)「ええ、元気ですよ」
『それはよかったんです』
( <●><●>)「......」
『......』
沈黙。
だというのに、どこか懐かしく、心地いい。
- 17 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/11/25(日) 15:53:01 ID:Iu/RaBhI0
- 『あの日以来、ですね』
( <●><●>)「あの日?」
『貴女が〇〇〇した日のことです』
( <●><●>)「......」
『......ごめんなさい』
( <●><●>)「......何で謝るんですか?」
『僕がいけなかったんです。君を、止められなかった』
( <●><●>)「......」
『あの日、君があんなことになったのって』
( <●><●>)「......やめてください」
『あれは』
( <●><●>)「やめてください!」
『僕のせいで』
(#<●><●>)「違います!」
出せる限りの声を振り絞る。
違う。
違うんだ。
あれは、そうあれは。
- 18 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/11/25(日) 15:53:54 ID:Iu/RaBhI0
- ......
あれ?
あれって、なんだ?
(#<●><●>)「違います!あれは!あれは!」
あれってなんだっけ?
わからない。
でも、わかる。
矛盾だらけ。
何かを、忘れてる気がする。
私はあれを忘れている。
そうだ、あれは。
あの、自殺をしたのは。
( <●><●>)「......あれは、私だ」
下を見下ろす。
真っ赤な血を地面に吐き出しながら這いつくばっているあれは、私だ。
なら、ここにいる私は?
この、私はなんだ?
- 19 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/11/25(日) 15:54:37 ID:Iu/RaBhI0
- 『......やっと思い出してくれた』
( <●><●>)「......あなたは、いえ、私は何者なんだ?」
『次はもっと昔を思い出してください』
( <●><●>)「......え?」
『僕との、最初の思い出を』
( <●><●>)「なにを......っ!?」
気がつくとそこは書斎だった。
溢れんばかりの本。
そのなかにひときわ目立つ子供が二人いた。
床に二人で寝そべり、なにかを描いている。
( <●><●>)「......あ」
子供はぐちゃぐちゃに画用紙を塗りつぶしていく。
緑のそれは、平原に変化していく。
黒のそれは、夜空へと変化していく。
黄色いそれは、月や星へと。
- 20 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/11/25(日) 15:55:23 ID:Iu/RaBhI0
- ( <●><●>)「......彼らは一体」
『だいすき』
『僕も』
『友達だよ』
『忘れないでね』
『うん、約束』
『うん、約束だ。ワカッテマス』
( <●><●>)「......あ」
ああ、そうか。
彼らは。
あの、小さな子供たちは。
- 21 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/11/25(日) 15:56:09 ID:Iu/RaBhI0
- ( <●><●>)「......次は何を描こうか」
『糸電話』
画用紙に糸電話が描かれていく。
( <●><●>)「どうしてですか?」
『この平原で迷子になっても大丈夫なように』
目の前に、夜の平原が表れる。
( <●><●>)「それはいいですね」
『うん、いいよねワカッテマス』
足元には、ひとつの糸電話。
( <●><●>)「ええ、そうですね」
私はそれを拾い上げ、一人の名を呼ぶ。
( <●><●>)「......ビロード」
- 22 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/11/25(日) 15:56:58 ID:Iu/RaBhI0
- 『!!』
『やっと、名前を呼んでくれましたね』
( <●><●>)「ようやく思い出しました。全部、しっかりと」
『それは、よかったんです』
( <●><●>)「役に立ちましたね、糸電話」
『僕のお陰なんです』
クスクスと小さな笑いが糸を通じて私に届く。
ああ、やはり彼は彼のままだ。
( <●><●>)「......ありがとう」
- 23 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/11/25(日) 15:57:40 ID:Iu/RaBhI0
- 『でも、まだ終わってないんです』
( <●><●>)「え?」
『ワカッテマス、僕は君に聞かなきゃいけない』
『君の、自殺の理由を』
( <●><●>)「......」
( <●><●>)「......くだらないことです」
『くだらない?』
( <●><●>)「原因は単なる、いじめです」
- 24 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/11/25(日) 15:58:45 ID:Iu/RaBhI0
- ( <●><●>)「私はただ怖いんです、他人と繋がることが」
( <●><●>)「いつも、一人だった。でも、誰かと一緒にいたいとは思えなかった」
( <●><●>)「そんな私に、いじめのグループは目をつけました」
( <●><●>)「だから私は、一人きりになるために、飛びました」
『......相談とかは』
( <●><●>)「私には友がいません。相談なんて、できるはずが」
『僕は!』
( <●><●>)「......」
『僕は、君の友達なんですよ?』
( <●><●>)「......ええ、そうでしたね」
『忘れちゃ、嫌なんです』
( <●><●>)「ええ......もう、忘れません」
- 25 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/11/25(日) 15:59:26 ID:Iu/RaBhI0
- 『......糸』
( <●><●>)「え?」
『糸は、切りますか?』
( <●><●>)「......」
( <●><●>)「切りません、絶対」
( <●><●>)「この糸は、絶対に」
( <●><●>)「ずっと、友達です。ビロード」
『もちろんなんです、ワカッテマス』
私は糸電話を地面に置いた。
辺りを見渡してみる。
ハリボテの夜空が崩れていく。
夢が、終わる。
空は明るくなり、光が差し込んでくる。
光と共に誰かが呼んでいる声がする。
ああ、この声は。
ええ、ちゃんと聞こえますよ。
糸電話なんかなくても。
ちゃんと、私に届いてます。
心配しないでください。
今、起きますから。
- 26 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/11/25(日) 16:00:13 ID:Iu/RaBhI0
- (;<●><ー>)「......むっ?」
目を開けるとそこは、見知らぬ白い天井だった。
機械やらチューブやらに繋がれた体はとてつもなく、重い。
ただ、一番重い原因になってるのは。
( ><)「......おはようなんです」
( <●><●>)「友の目覚めに上にのるとはなかなかやりますね、ビロード」
( ><)「えへへ」
( <●><●>)「誉めてませんよ」
ああ、懐かしい。
この感覚。
長いこと夢を見ていて失われていたこの感覚。
なぜ、私はこんなにも大切なことを忘れていたのだろうか。
- 27 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/11/25(日) 16:00:59 ID:Iu/RaBhI0
- ( ><)「......糸電話」
( <●><●>)「え?」
( ><)「糸電話、持ってきましょうか?」
( <●><●>)「もう、いりませんよ」
二人で笑いあう。
そう、これでいいじゃないか。
私はあんな世界にいなくても、幸せなんだ。
私はこれからも、この男との糸は切ることができないだろう。
それはたぶん、この世で一番幸せなことだ。
- 28 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/11/25(日) 16:01:50 ID:Iu/RaBhI0
- 「なあ」
「はい?」
「だいすきだ」
「僕もなんです」
「友達だよ」
「もちろん」
「「ずっと繋がってる」」
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