2012年芸術の秋ラノベ祭りのようです
( ^ν^)二日間のようです



1 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/20(火) 20:31:56 ID:tM5yJ2IIO


――プルルルル プルルルル


(#^ν^)


――プルルルル プルルルル


(#^ν^)「……うっせぇ」


――プルルルル プルルルル


(#^ν^)「チッ!」

盛大な舌打ちをして、やっと男は立ち上がった。

カーテンを締め切った暗い部屋、唯一の光源はパソコンのディスプレイだ。
何日も掃除していない部屋の衛生状態は悪い。
部屋の主である男の髪はボサボサで、服装はトレーナーにスウェット。
――彼の職業は一目見れば明らかである。

2 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/20(火) 20:32:52 ID:tM5yJ2IIO

男は乱暴に部屋のドアを開け、階下に向かう。
やはり乱暴に階段を降り、よく整頓された明るいリビングに入った。
彼の気分を害する諸悪の根源は目の前だ。

――プルルルル プルルルル

(#^ν^)

いまだけたたましく鳴る固定電話を睨み付ける。
そして、線を抜く為に手を伸ばして……やめた。

( ^ν^)「一言くらい言ってやっても罰は当たるまい」

男は思いついた。
自分の充実した時間をぶちこわした奴を怒鳴り付けてやろう。
思い知らせてやるんだ、この俺に喧嘩を売ったらどうなるかを。

――プルルルル プルルルル

男は受話器に手を伸ばす。
一度息を吸い込んで、受話器を取った。

(#^ν^)「てめえ今何時だと思ってやがるこの……!」

『ニュッ君?』

( ^ν^)「やろ……?」

3 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/20(火) 20:34:07 ID:tM5yJ2IIO

『ニュッ君? 元気?』

( ^ν^)(……誰だ?)

受話器の向こうから聞こえてくるのはやけに親しげな男の声。
たぶん聞いたことはない、
しかし電話の声というものは往々にして地声とは変わるものだから、記憶はたいして当てにならない。

そんな謎の声が自分の名前を知っているものだから、ニュッは思わず怒鳴るのをやめてしまった。

『あれ、番号間違えた? 連絡網間違えてたのかよ荒巻の野郎……』

( ^ν^)「……お前、荒巻を知ってるのか?」

荒巻、それはニュッが高校三年生の頃の担任の名だ。
定年を間近に控えた男であったが、早くもボケが始まっているのではないかと言われる程に忘れっぽい男であった。

『知ってるも何も、俺、荒巻の最後のクラスの生徒だったし。というかお前、やっぱりニュッ君だろ』

( ^ν^)「ふん。俺の名を知りたければお前から名乗れ」

やっぱり相手はかつてのクラスメイトらしい。
しかし何の用事だろうか。
高校を卒業して半年以上が経った。
その間、ニュッと連絡を取ったクラスメイトは一人もいない。

4 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/20(火) 20:35:29 ID:tM5yJ2IIO

『仕方ないなぁ。俺はモララーだよ、モララー。クラス一のイケメンの』

モララー、ニュッはその名前を聞いてはっきりと一人の人物を思い出すことが出来た。
モララーは外見だけは良かったらしく、常に彼女がいた。
それだけでニュッにとっては親の仇のように憎い相手だった。
そんなわけでニュッとモララーの交流はほぼなく、繋がりといえば同じクラスに所属していたことくらいである。

さらに言えばモララーはどこかの有名大学に進学したはずだが、そんな男が自宅警備に精を出す男に一体何の用だろうか。

( ^ν^)「で、モララーがなんで俺に電話を?」

親しくもなかった、むしろ嫌悪感を持ってさえいた相手からの突然の電話に、ニュッは不機嫌を隠すこともしない。
それとは対照的にモララーは楽しげに笑って、声をひそめて言った。

『実は、儲け話があってさ――』

儲け話。
つい最近までならニュッは確実に笑い飛ばしていたであろう。
うまい話に裏があることなど百も承知、インターネットで被害者の話に触れては愚かな彼らを嘲笑っていた。

しかし今はニュッにものっぴきならない事情があった。
昨日、パートタイマーな母は彼の面倒を見ることを放棄することを匂わせた。
自宅警備員のニュッは外に出て食っていくことなど、おそらく不可能なのだ。

6 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/20(火) 20:36:56 ID:tM5yJ2IIO

『お前にしか頼めないんだよ。一緒に儲けようぜ』

受話器を握り締める。

( ^ν^)(ここで一山当てとけば俺は――)

家を追い出されても腐れニート生活を続けられる!
一度吸ってしまった甘い蜜、人が簡単に忘れられるはずもないのだ。

かくしてニュッはモララーの儲け話に乗ることとなった。
今度の木曜日の朝に会おうと告げられた彼は簡単な別れの挨拶の後に電話を切り、受話器を置いた。

( ^ν^)「はぁ……寝よ」

慣れない電話で疲労困憊。
ニュッは再び乱暴な足取りで自室に戻る。


この時のニュッはまだ知らない。
このモララーの電話が、ニュッにとっての『人生を変える二日間』の始まりであることを――

.

7 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/20(火) 20:40:13 ID:tM5yJ2IIO




( ^ν^)二日間のようです






.

8 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/20(火) 20:41:46 ID:tM5yJ2IIO


指定された待ち合わせ場所に向かってくる一台の乗用車が見える。
ニュッは持参した缶コーヒーを一気に飲み干した。
白い車は徐々に速度を落とし、静かに停止した。

( ・∀・)「久しぶり!」

車から降りた髪を染めたイケメンは、軽く手を上げてニュッに声を掛ける。

( ^ν^)「……久しぶり」

( ・∀・)「おや、元気ないね」

( ^ν^)「……」

ニュッの顔には覇気がない。
というのも彼は昼夜逆転の生活をしていた為に、朝の6時という時間は本来なら寝ているはずの時間だからである。
眠気覚ましにと買ったコーヒーを飲んだはいいものの、眠気は完全には覚めなかった。

( ・∀・)「まあいいか。ニュッ君にやってもらうのは、あくまで俺の補佐だし。
      さあさあ、さっさと助手席に乗って!」

わけがわからないままにニュッはモララーの指示に従う。

9 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/20(火) 20:42:47 ID:tM5yJ2IIO

( ・∀・)

( ^ν^)「……」

( ・∀・)「あれ、ニュッ君、もしかして俺に見惚れちゃった? ダメダメ、俺はそっちの気はないから」
   _,
( ^ν^)「……」

モララーの冗談に苛立つ。
先程から車は平坦な舗装道路を走っているにもかかわらず、ガタガタとうるさい。
それもモララーの実に危なっかしいドライビングテクニックのせいだ。
ニュッはモララーの方を見るのをやめ、窓の外に視線を向けた。

そもそも、モララーは自意識過剰が過ぎる。
久しぶりに会った人間の顔が気になるのは、ごく普通のことだ。

( ^ν^)(だから嫌いなんだが)

高校時代よりさらに嫌な雰囲気になった元クラスメイトの隣で居心地の悪さを感じる。

それから、さらに30分程車に揺られた。
見回すと周囲は住宅街。
それも誰でも名を聞いたことがあるような高級住宅街で、立ち並ぶのは豪邸ばかり。
どの家も億単位の代物であることは貧乏人でもわかる。

11 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/20(火) 20:44:39 ID:tM5yJ2IIO

( ^ν^)「……」

ところで、ニュッはいまだに自分がこれから何をするか知らなかった。

川 ゚ -゚) ζ(゚ー゚*ζ

目の前の歩道を二人の幼い少女達が歩いているのも、特に気にしなかった。
しかし、モララーは言った。

( ・∀・)「車止めるから、あの二人を後部座席に押し込め。すばやくな」

( ^ν^)「え?」

聞き返した。
しかし返事を聞く前に車は止まった。
丁度数秒後に少女達が通り過ぎるような位置に、だ。

ζ(゚ー゚*ζ「……?」

川;゚ -゚)「なんだ!?」

(;^ν^)「俺が聞きたい!」

周囲には人も車もない。
すばやく車から降りたモララーと協力して、少女達を車に押し込んだ。

12 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/20(火) 20:45:45 ID:tM5yJ2IIO

( ・∀・)「手を縛って、猿轡噛ませて……。
      さあ、行くぞ!」

( ^ν^)「どこに?」

( ・∀・)「お前は知らなくていい」

ニュッはバックミラー越しに後部座席を見る。
動きを封じられた少女達はおとなしく、こちらの様子をうかがっている。

( ^ν^)「……身代金」

呟きに対する返事はない。
背後の二人が金持ちの娘であることは一目でわかる。

儲け話――その正体を知ったニュッは動揺していた。
危険な話かもしれないとは思った、しかし。

( ^ν^)(今日から俺も犯罪者……)

常日頃バカにしている人種と自分が同列の存在になるのには不快感があった。

13 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/20(火) 20:46:46 ID:tM5yJ2IIO

( ^ν^)(事前説明くらいしろよ)

( ^ν^)「このクズ野郎」

( ・∀・)「何か言った?」

( ^ν^)「別に?」

もう二人の少女を誘拐してしまった。
後には引けない。
それに誘拐くらいなら、無事に子供達を返せば問題はないだろうという甘い考えがある。
隣で最悪のドライビングテクニックを披露している男の考えは知らないがなんとかなるだろう。

( ^ν^)(だって、今まではなんとかなったし。人生ヌルゲー)

それからはモララーの話を半分くらい聞きつつうとうとしていると、人気のない道路に出ていることに気付いた。

( ・∀・)「ここだ」

そう言ってモララーが車を止めたのは工場の駐車場。
錆付いた鉄屑が放置されているから廃工場だと分かる。
ニュッはモララーの後に続いて、豪胆にも眠りこけている少女達を車から下ろした。

14 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/20(火) 20:47:48 ID:tM5yJ2IIO


廃工場の中は窓からの明かりがなければ真っ暗であった。
夜はどうするのだろう、ニュッがそう訊ねると。

( ・∀・)「この俺をなめてもらっちゃあ困るなあ」

モララーはいくつもの懐中電灯を取り出してみせた。
準備万端である。

( ・∀・)「ニュッ君は知ってるか? この子、内藤グループトップの娘なんだ」

ζ(-、-*ζ

( ^ν^)「内藤グループって……食品から衣料品から多岐に渡る事業で大成功を収めた超ホワイト企業っつー……」

ニュッは内藤グループに関するあらゆる情報を記憶から掻き集めていた。

内藤グループとはこの国に住んでいる者で知らぬ者はいない大企業集団の総称である。
というのも、グループ内子会社の一部はその分野のトップの業績を誇り、それを統括するのが内藤グループのトップなのだ。
先代、そして先々代が築き上げた栄光はいまだ絶賛子育て中の若き男が受け継いだ。

しかし内藤グループが敵対企業から揃いに揃ってバケモノと揶揄される理由はそればかりではない。
組織が非常にクリーン、そして社員の待遇が破格なのである。
あらゆる罵詈雑言、悪意のはびこるネット上においても真っ正面から内藤グループを批判出来る者がいないのも、それが所以だ。

15 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/20(火) 20:48:55 ID:tM5yJ2IIO

( ^ν^)「お前……本気か?」

( ・∀・)「ああ本気だ。金の為、手段は選んでいられないだろう?」

ニュッにしてみれば、せいぜい町工場の上役のお嬢ちゃんを誘拐した気でいた。
それなのに。

( ・∀・)「俺はちょっと買い出し行ってくるから、そいつらの見張り頼む。
      くれぐれも堂々としてろよ。じゃないとなめられるからな!」

無責任な主犯は子供のお守りを共犯に任せて出かけてしまった。

( ^ν^)「どうすっかなあ……」

腰を下ろしたニュッは、ちらりと少女達を見る。
片方は内藤グループのお嬢様と分かった。
しかしもう一人はどこの誰だろう。

川 ' -`)「ん……」

( ^ν^)「お」

少女は丁度いいタイミングで目を覚ます。
しかし腕と足はロープで拘束されている為、上手く起き上がることは出来ない。

16 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/20(火) 20:49:53 ID:tM5yJ2IIO

川 ゚ -゚)「これは……何だ……?」

( ^ν^)「お前は誘拐されたんだよ」

川 ゚ -゚)「……誰?」

( ^ν^)「こっちが聞きたい」

川 ゚ -゚)「私は素直クーだ。お前のような犯罪者に名乗る名はない」

( ^ν^)(しっかり名乗ってるぞ……)

クーはどうやら抜けたところのある子供らしい。
喋り方は年齢のわりにしっかりしているが、それがかえって奇妙なアンバランスを生んでいる。

ζ(-、-*ζ「うん……うるさいな……」

ニュッとクーがいまいち噛み合わない会話をしていると、内藤グループのお嬢様であるデレが目覚めた。

ζ(゚ー゚*ζ「クーちゃん、おはよー……」

まだ眠気が残っているようで、口調がたどたどしい。

17 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/20(火) 20:51:31 ID:tM5yJ2IIO

川 ゚ -゚)「デレちゃん、おはよー。どうやら私たちは誘拐されたみたいだよ」

ζ(゚ー゚*ζ「……ゆうかい?」

川 ゚ -゚)「うん」

さすが有名企業の息女と言うべきか、デレの理解は早かった。
しかし、彼女の反応は意外や意外、ニュッも思わず腰を抜かしそうになるようなものであった。

ζ(゚ー゚*ζ「誘拐かー。わたしたちは、いつお家に帰れるんだろうね」

( ^ν^)(なんだこいつ……)

モララーの話ではこのデレという少女、まだ小学一年生のはずである。
それなのにこの落ち着きよう。
もはや肝が据わっているというレベルではない、貫禄さえ感じる程だ。

ぼんやりするニュッ。
しかしデレはそんなことも気にせず、楽しそうに言う。

ζ(゚ー゚*ζ「お兄さん、なんてお名前なの?」

( ^ν^)「……お前に名乗る名はない」

18 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/20(火) 20:52:48 ID:tM5yJ2IIO

先程のクーとの会話を意識しての発言だ。
当然、デレに伝わるはずもない。

ζ(゚、゚*ζ「えー」

川 ゚ -゚)「デレちゃん、そいつは私たちを誘拐した犯罪者だぞ。馴々しくしたら殺されちゃうよ」

( ^ν^)「そこまで悪い奴じゃねーよ」

川 ゚ -゚)「嘘だ。この前テレビで見たぞ。お金を貰ったら人質を殺すんだ」

( ^ν^)(なんてもん見せてんだよ、こいつの親は……)

ドラマに出てくる誘拐犯なんて、そんなものかもしれない。
合理的な判断をするなら、自分の顔や声を知る人間は始末するべきなのだ。
しかし成り行きで誘拐犯になったニュッにそのつもりはない。
金さえ手に入ったらどこか遠くにトンズラするつもりだ。

( ^ν^)「とにかくお前らがおとなしくしてりゃ、俺は危害を加えたりしねーよ」

ζ(゚ー゚*ζ「そうだよクーちゃん。この人、きっと悪い人じゃないよ」

川 ゚ -゚)「……まあ、デレちゃんがそう言うなら」

信用してもいいかな、クーはそう言って目を閉じた。

19 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/20(火) 20:53:51 ID:tM5yJ2IIO

川 - _-)「お母さん、私がいないのに気付いたかな」

ζ(゚ー゚*ζ「先生なら気付くんじゃない?」

ニュッは思い出す。
彼とモララーが誘拐したのは登校中の小学生だ。
すぐに教師にばれるだろうが、騒ぎになったら面倒だ。
モララーは何か策でも練っているのだろうか。

( ・∀・)「だだいま。ニュッ君、お守りはどう?」

戻ってきたモララーは手ぶらだった。

( ^ν^)「お前、何してたんだ?」

( ・∀・)「脅迫電話」

( ^ν^)「……」

もう戻れないところまで来てしまった。
それを知ったニュッは、デレの話によって疑問に感じた点をモララーに尋ねることにした。

( ^ν^)「お前、こいつらの学校の方はどうしたんだ?」

( ・∀・)「ああ、そんなこと聞く?
      電話でしっかり釘を刺しといたよ。学校も警察も、この二人が誘拐されたことは知らない」

20 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/20(火) 20:55:22 ID:tM5yJ2IIO

対策はなされていた、ということだ。
ひょんなことから情報が漏れてあっという間に御用、なんていう粗末な展開を避けられたことに、ニュッは感謝する。

( ・∀・)「おまけまで付いてきた時はどうしようかと思ったけど順調順調」

( ^ν^)「こっちの素直クーってのはどこのお嬢さんなんだ?」

( ・∀・)「知らない。用件はデレの親に伝言させたし。
      小さな会社か何かの娘じゃないか?」

ζ(゚ー゚*ζ「クーちゃんのお母さんは女優さんなんだよ」

( ・∀・)「女優?」

ニュッとモララーの会話にデレが割り込む。

ζ(゚ー゚*ζ「素直ヒートって言うの」

川*゚ -゚)「そうだぞ。お母さんはすんごい女優なんだ」

( ・∀・)「素直ヒート、ねぇ……」

素直ヒートとは有名女優の名だ。
子役時代には熱血キャラ一辺倒の芸の幅の狭い三流女優などと言われていたが、それは彼女の本質ではない。
某有名監督に映画の主人公に大抜擢され、そこで悲しい過去を持つ深窓の令嬢を見事に演じ切ってみせたのだ。

21 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/20(火) 20:56:35 ID:tM5yJ2IIO

( ^ν^)「あの巨乳女優か」

( ・∀・)「俺は好みじゃないな」

しかしニュッはその体にしか興味なく、モララーの方は彼女自体が好きではない。

川 ゚ -゚)「む……お母さんはすごいんだぞ……。
     料理とかめちゃくちゃ下手だし掃除の度に何か壊すけど、すっごい女優なんだ……」

ζ(゚ー゚*ζ「そうだよ! すっごく綺麗だし……あと、すっごく優しいし!」

落ち込むクーとフォローに回るデレ。
その姿は一見すると和やかな日常の一部に見えるが、そうではない。
紛れもなく、ここは誘拐事件の人質の監禁現場である。

モララーは上手く話題を切り上げ、言った。

( ・∀・)「そろそろ昼飯にするか」

ζ(゚ー゚*ζ「今何時?」

( ・∀・)「お前らに教える義理はない」

ζ(゚、゚*ζ「えー……」

22 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/20(火) 20:57:41 ID:tM5yJ2IIO

そんなこんなで昼御飯。
モララーが用意したコンビニ弁当を4人で分け合う。
唐揚げ弁当3つ、ペットボトルのスポーツドリンクが3本。

( ^ν^)「……3人前なんだけど」

( ・∀・)「クーの方は予定になかったからな」

川 ゚ -゚)「え、私、お昼ご飯ないのか?」

ζ(゚、゚*ζ「クーちゃんかわいそう……」

モララーはすでに食事を始めている。
暗い、休憩所か何かだったらしい和室の窓際に4人は集まっている。
デレとクーは手を縛られている為、彼女らの食事の采配はニュッとモララーにかかっている、のだが、モララーは興味を示さない。

( ^ν^)「……」

川 ゚ -゚)「私のお昼ご飯……」

ζ(゚、゚*ζ「私の分分けてあげるから泣かないでー」

川 ゚ -゚)「うん……まだ泣いてない……」

23 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/20(火) 20:58:49 ID:tM5yJ2IIO

( ^ν^)(……モララーは、鬼だ)

ニュッは大きく溜め息を吐く。
目の前の唐揚げ弁当の包装を解き、箸を持った。

( ^ν^)「俺の分も分けてやるよ」

川 ゚ -゚)「……ほんとに?」

( ^ν^)「ほんとほんと。欝陶しいからさっさと食え」

川*゚ -゚)「うん!」

クーは顔をほころばせ、大きく口を開けた。
唐揚げを一口で収め、咀嚼する。

川*^ -^)

ζ(゚ー゚*ζ「ニュッ君優しい!」

(;^ν^)「ニュッ君言うな!」

穏やかに秋の日は過ぎる。
二人前の食事を三人で分けたデレとクーは特にすべきこともなく、いつしか昼寝を始めた。
本当に肝の据わった少女達である。

24 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/20(火) 21:00:43 ID:tM5yJ2IIO

そんな彼女らを放置して、二人の誘拐犯は建物の外に出ていた。
南中した太陽は犯罪者も照らす。
少し肌寒い風もあまり辛くないような天気だ。

( ・∀・)「ニュッ君はほんと優しいなー」

( ^ν^)「黙れ」

( ・∀・)「まあまあ。だけどさ、ニュッ君にはちゃんと言っておかなきゃならないことがある」
  _,
( ^ν^)「何だ?」

モララーはニヤニヤと馬鹿にするような表情から一転、真面目な顔になる。
ニュッも姿勢をただしてそれを聞くことにする。

( ・∀・)「あのさ、ニュッ君、本当に、分かってるならいいけどさ」

( ・∀・)「あんまり、あいつらに同情するなよ?」

( ^ν^)「……」

ニュッは分かっていた。
高校時代から友人も少なく、斜に構えた態度から人に距離を置かれることの方が多かったニュッ。
デレとクーはそんな自分に、親しげに接してくれた。

26 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/20(火) 21:01:58 ID:tM5yJ2IIO

( ^ν^)「安心しろ。俺はロリコンじゃねーし」

否定の言葉はするりと出た。
そういうのには慣れている。

( ・∀・)「……そっか」

それから二人は無言で工場に戻る。

( ^ν^)(ああ、今日は最悪の一日だ!)

.

28 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/20(火) 21:03:21 ID:tM5yJ2IIO


ニュッの目覚めは最悪であった。

( ・∀・)「起きろー。金が手に入るぞー」

なんせ、あまり好きではない、というのは優しい表現で、大嫌いな人種の人間の声で強制的に眠りから覚まされたからである。
モララーは朝からいつもの調子で、余計に腹が立つ。
  _,
( ^ν^)「今何時だよ……」

( ・∀・)「9時。今から君にはやってもらうことがある」

( ^ν^)「何だ?」

( ・∀・)「人質の始末だ」

(;^ν^)「!?」

( ・∀・)「誘拐事件でよくある展開だろ。証拠は残さない、事実を知る者の口は塞ぐ、ってな」

ニュッは愕然とした。
そんな展開、考えていなかった。
昨日のモララーのデレとクーに対する態度というのは冷めてこそいたが、強い悪意は感じられなかった。

何で、そう聞こうとしたが、理由は既に本人が言ってしまっている。
二人の少女は憎むべき犯人達の顔をしっかり見ている、名前も知っている。
彼女らが警察に事情聴取されればニュッとモララーが捕まるのも時間の問題だ。

29 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/20(火) 21:04:18 ID:tM5yJ2IIO

( ^ν^)(だからって……)

人殺し。
ニュッには荷が重すぎる。

( ・∀・)「後で二人が生きてるのを電話越しに確認させて、それから始末する。刃物も用意したから安心しろ」

( ^ν^)「……」

( ・∀・)「塀の中でまずい飯を食うのは嫌だろ?」

モララーの言葉に、ニュッは首を縦に振った。
肯定、モララーはニュッが決心したのだと解す。

顔を洗ってくると言ってモララーが水道に向かったのを見送って、ニュッは言った。

( ^ν^)「起きてるだろ」

ζ(゚、゚*ζ「ばれちゃった」

( ^ν^)「今の話の意味、分かるか?」

ζ(゚ー゚*ζ「わたしとクーちゃん、死んじゃうの?」

( ^ν^)「……」

30 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/20(火) 21:05:29 ID:tM5yJ2IIO

デレは無邪気な顔で、子首を傾げて尋ねる。
ニュッに頷くことは出来ない。
やはり、ニュッには出来ないのだ。


それからクーも起きて、無常にも最期の時は近付く。

( ・∀・)「……さあ、声を聞かせてやれ」

モララーの携帯電話を口元に寄せられたデレが両親を呼ぶ。

ζ(゚ー゚*ζ「パパ、ママ、わたしは元気だよ。クーちゃんも、ちゃんといるよ」

『デレ、聞こえてるお! やっと聞こえたお!』

『良かった……良かったわ……』

『クーは!? クーは無事なのか!?』

川 ゚ -゚)「うん。私もちゃんと生きてるよ!」

少女達はしばしの親達との会話を楽しむ。
しかしその光景もニュッからしてみれば楽しげなものに思えない。
彼は彼女達の未来を知っている、いや、彼こそが二人の未来を握っているのだ。

31 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/20(火) 21:06:37 ID:tM5yJ2IIO

モララーは無言でサバイバルナイフをニュッに手渡す。
デレとクーは気付いていない。
電話が終わると同時に二人を殺さなければならない。

ζ(゚ー゚*ζ「うん、絶対帰るからね」

( ^ν^)(殺せるのか、俺が、人殺しなんか出来るのか……?)

ナイフを握り締めた右手の発汗が酷い。
油断すればナイフを取り落としそうな程だ。

( ^ν^)(いや……俺は……)

初めて、自分以外の為に何かしたいと思った。

( ^ν^)「……」

(#^ν^)「ここはどっかの森の中の廃工場だ!!」

力の限り叫んだ。
デレとクーの近くで、電話の向こうにはっきり聞こえるように叫んだ。
まさか自分にこんな大声が出せるとは思わなかった。

( ・∀・)「お前……!」

32 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/20(火) 21:07:54 ID:tM5yJ2IIO

モララーは急いで電話を取り上げた。
すかさず二人の人質にナイフを向けるが、ニュッの動作の方が早かった。

右手でデレを拘束する縄を切り、手を取る。
左腕でクーを抱えあげる。

ζ(゚ー゚*ζ「ナイフ貸して! わたしがクーちゃんの縄を切るから!」

( ^ν^)「分かった」

( ・∀・)「……」

ニュッはデレとクーを庇うようにモララーと向き合う。
デレは慣れない手付きながらも、クーの拘束を解いた。

( ・∀・)「こんなところで裏切るとはね」

( ^ν^)「悪いな。俺はやっぱりお前が嫌いだ」

( ・∀・)「イケメンに嫉妬? これだからロリコン野郎は」

(#^ν^)「だからロリコンじゃねーって!」

デレからナイフを受け取り、構える。
構えると言っても、ただ右腕を前に突き出しただけの格好で隙も多い。
デレとクーは手を繋いでニュッの後ろに隠れている。

33 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/20(火) 21:09:07 ID:tM5yJ2IIO

( ・∀・)「だけど馬鹿だなぁ。今俺に逆らおうなんて考えなければ、いい夢見ながら死ねたのにさ」

川;゚ -゚)「あ、あれ……!」

モララーはナイフを左手に持ちかえ、懐から何かを取り出した。

( ・∀・)「某通販で82%引きで買った拳銃の錆にしてくれる!!」

( ^ν^)(拳銃の錆ってなんだよ)

モララーはナイフをしまって、両手で拳銃を構えた。
しかし腕は震えていて、狙いは全く定まっていない。
明らかに拳銃を持ったことがない様子だ。

( ^ν^)「!?」

パンッ、短い発砲音が響いた。

ζ(゚ー゚;ζ「ニュッ君!」

(;^ν^)「え……マジで……?」

川;゚ -゚)「血……」

35 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/20(火) 21:10:34 ID:tM5yJ2IIO

左手で頬に触れると、生暖かい感触。
クーの言うとおり、血だ。

(;・∀・)「ふ……はははは! 見たか、俺の華麗な銃捌き!」

拳銃からは煙が上がっている。
本当に撃ったようだ。
モララーはまた慣れない様子で拳銃を構える。

ニュッは考える、この絶体絶命のピンチを脱出する方法を。
自分の肩にかかるのは三人分の命の重さ。
ニュッは、おそらく人生における最高速度で頭を回転させた。

( ^ν^)「あ!」

( ・∀・)「何、どうし……」

モララーが言い終える前にニュッは駆け出した。
右手にはナイフ、左手にはデレ。
デレは左手でクーと手を繋いでいる。

発砲音が背後に響く。
しかしモララーは三発、全弾を外した。

36 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/20(火) 21:11:56 ID:tM5yJ2IIO

川 ゚ -゚)「あれ、こっちは……」

( ^ν^)「どうした?」

ζ(゚ー゚*ζ「出口と反対だよ」

( ^ν^)「えっ」

そういえばこんな長い廊下は初めて通った。
それを自覚した瞬間、発砲音が一つ。

( ・∀・)「追い詰めたぞ。おとなしく始末されろ」

(;^ν^)「やなこった」

ニュッ達はコンテナの影に身を隠す。
身長より高いから、弾は当たらない。

( ・∀・)「今なら楽に死ねるぞ」

( ^ν^)「……」

この状況、まずしなければならないのは時間稼ぎだ。

37 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/20(火) 21:13:21 ID:tM5yJ2IIO

( ^ν^)「いいか、お前ら。俺が合図したらすぐ出口に向かうんだ」

川 ゚ -゚)「ニュッ君は?」

( ^ν^)「俺が死ぬはずがない」

ζ(゚ー゚*ζ「うん、分かった。クーちゃんと二人で逃げるよ」

ニュッはデレの手を離した。
そして、モララーに大声で言った。

( ^ν^)「お前はどうしてこんなことをしたんだ?」

( ・∀・)「お前と同じ、金が欲しいからだよ」

( ^ν^)「どうして金が欲しい?」

( ・∀・)「……まぁ、どうせ死ぬお前になら話してもいいか」

モララーが突っ込んでくる気配はない。
弾には限りがあるせいだ。
どちらも動けない、なら心理戦に持ち込まれるのは必然だ。

( ・∀・)「あれだよ、あれ。モテ男にも色々とあるんだよ。
      腐れニートには分からないだろうけど!」

38 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/20(火) 21:15:03 ID:tM5yJ2IIO

( ^ν^)「うやむやにするのか?」

(;・∀・)「あーもう言うよ。言えばいいんだろ!
      カジノですったんだよ! 学費も! 生活費も!」

( ^ν^)「……カジノってなんだよ」

( ・∀・)「違法カジノ。ラウンジ駅の裏手にそういう地下施設があるんだ」

違法カジノ、ニュッにはあまり聞き慣れない言葉だ。。
この国でカジノは規制されている。
だから国内のカジノは全て違法ということになる。

( ^ν^)(たしか最近ニュースでもあったな。VIP市内のビルでそんなのが摘発されたって。
       流行ってるのか?)

( ・∀・)「誘拐に動機も何もあるか。ただ金が欲しい、お前もそうだろ?」

( ^ν^)「ド下手ギャンブラーよりましな理由だ」

( ・∀・)「腐れニートがよく言う」

場は膠着している。
しかしニュッには動かす手がない。
サバイバルナイフ一本で拳銃を持った相手に立ち向かうなんて馬鹿げた話、ゲームや漫画の中だけで十分だ。

39 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/20(火) 21:16:09 ID:tM5yJ2IIO

( ・∀・)「なぁ、ニュッ君。いつまでもそうしてたって埒があかない」

( ^ν^)「分かってる。お前がさっさとどっかに消えればいいんだろ。もしくは死ね」

( ・∀・)「言ってろ。お前が出てきた瞬間、頭に風穴空けてやる」

( ^ν^)「出来るならやってみろよ」

( ・∀・)「言ったな……。こう見えて俺の趣味は射撃で外したことなんか一度もない」

( ^ν^)「ほぅ……なら、さっきのは何だったんだ?」

(;・∀・)「使い慣れてない拳銃なんだよ」

( ^ν^)「銃によって腕が変わる? 見栄張ってるだけだろ」

(#・∀・)「ならお前も拳銃使ってみるか? できんのか、腐れニート風情に!!」

( ^ν^)「俺は腐れニートじゃねぇ。黙れ脳みそスポンジが!
       ギャンブルでろくに勝てない奴は黙ってろ」

(#・∀・)「大学受験失敗したクズ野郎に言われる筋合いはない!!」

( ^ν^)(すっかり頭に血がのぼってるな)

40 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/20(火) 21:18:00 ID:tM5yJ2IIO


それから汚い罵り合いはまだ続く。
ニュッはデレとクーを逃がす機会を窺うが、モララーも意外と我慢強い。
彼が脇を簡単に通してくれるようには見えなかった。

(;^ν^)(いい加減疲れた……)

こんなに喋ったのは久しぶりだ。
昨日もよく喋ったが、それにしても今日は異常だ。
大半がモララーに対する罵詈雑言であるという事実が非常に残念ではあるが。

普段限りなく引きこもりに近いニートであるニュッは、もう疲れていた。
口を動かすだけでも体力というのは案外消耗するものなのだ。
モララーの方はあまり疲れた様子でないのが余計に腹立たしい。

( ^ν^)(何か別の手を考えるか……)

これ以上の時間稼ぎは厳しい。
そう思ったニュッの服の裾を小さな手が引いた。

ζ(゚ー゚*ζ「ニュッ君、大丈夫。さっきニュッ君が電話に言ってくれたから」

( ^ν^)「は?」

川 ゚ -゚)「デレちゃんを信じろ。これだからくされにーとは」

( ^ν^)「意味分かってないだろ」

41 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/20(火) 21:19:43 ID:tM5yJ2IIO

小声の会話だから、おそらくモララーには聞こえていない。
しかしニュッにはデレの言葉の意味が全く理解できない。

ζ(゚ー゚*ζ「大丈夫だよ。だからあと少しだけ、時間が欲しいの」

( ・∀・)「どうした、急に黙って。命乞いの練習でも始めたか?」

( ^ν^)(……)

ニュッは、デレを信じることにした。

( ^ν^)「黙れクソ野郎。俺はお前と違う」

( ・∀・)「どう違うって?」

( ^ν^)「全て。お前ごときがこの俺に、たとえ口喧嘩でも勝てると思うな」

(#・∀・)「社会のクズが……生意気なんだよ!」

モララーはついにキレた。
拳銃を拙く構えつつ、ニュッの息の根を止めるべく躍り出る。
一丁の銃に弾は一発、予備の弾なんて気の効いたものはない。

(;^ν^)「……っ!」

対するニュッにはナイフが一振り。
ナイフが盾になるはずはない、ナイフで銃弾を切り捨てるなんて芸当が出来るはずもない。

42 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/20(火) 21:22:33 ID:tM5yJ2IIO

だから祈る。
モララーが狙いを外すことだけを祈る。
そしてモララーの指が引き金を引いた瞬間、叫んだ。

(;^ν^)「走れぇッ!!」

ニュッの精一杯の大声。
デレとクーは手を繋いで走りだす。

(;・∀・)「しまっ……!!」

弾はニュッから大きくはずれ、背後にある空のコンテナに小さな穴を開けた。
モララーが反射的に伸ばした手も少女達にかすることさえなかった。

(#・∀・)「こうなったらお前だけでも……!」

ニュッを睨み付けるモララー。
少しの膠着の後、足を前に。

しかし、踏み出そうとするのを止める声。

「動くな、武器を捨てろ!!」

( ・∀・)「えっ?」

いつの間にやら大勢の、重い足音。
先頭を歩いてきた男が言った。

(,,゚Д゚)「おとなしく人質を解放しろ!」

43 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/20(火) 21:24:55 ID:tM5yJ2IIO

(;・∀・)「な、なんなんだ、お前ら!?」

(,,゚Д゚)「俺達は警察だ。銃刀法違反の現行犯でお前を逮捕する!」

予想もしなかった出来事に動揺したモララーは拳銃を落としていた。
いかつい刑事は拳銃を味方の方に蹴り飛ばし、両脇の仲間と一緒にモララーを捕縛した。

(;^ν^)「助かった……」

ニュッは危機を脱した安堵から座り込む。
警察官のすぐ隣にいたデレとクーも抱き合って、同じように床に座っていた。

(,,゚Д゚)「誘拐犯確保っと。
     ……ん? お前は何だ?」

( ^ν^)「……俺? 俺は……」

口を挟もうとする二人の人質を制し、誘拐犯は――

.

44 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/20(火) 21:28:03 ID:tM5yJ2IIO

素晴らしいタイミングで警察官らが現れたのには訳がある。

デレがランドセルに入れて持ち歩いている携帯電話にはGPS機能が付いていたのだ。
デレとクーの親達は大事な大事な娘達の居場所をとっくに把握していたが、
誘拐犯を刺激しない為に警察とは水面下で連絡を取り合うようにしていた。

犯人はGPSに気付かない間抜けということで、
デレの父親の知人である刑事を通して警察に事件の存在が知らされたのは初日の昼過ぎだ。
それ以降、モララー達の潜む廃工場の近くには巧妙に警察官達が配備されていた。
その為、工場から逃げ出したデレとクーを発見した直後に警察は突入することが出来たのだ。




事件から二週間後、ラウンジ市内の違法カジノが摘発された。
元締めの配下には様々な違法業種が収まっており、それらも一掃された。
初犯、それも大学生の起こした誘拐事件のおまけとしては十分過ぎるものである。

今現在、事件は裁判の最中だ。
主犯である男には殺人未遂の容疑も加わり、実刑は免れないという。
一方共犯の男は、人質であった二人の少女の証言により、減刑される見通しだ。

.

45 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/20(火) 21:31:00 ID:tM5yJ2IIO


ζ(゚ー゚*ζ「ニュッ君、ニュッ君がちゃんとした人になったら、また会いたいな」

( ^ν^)「そういうこと言うな。親が悲しむぞ」

川 ゚ -゚)「ニュッ君は私たちの命の恩人だから、きっといっぱい塀の中に手紙を書くんだ」

( ^ν^)「一応裁判も始まってないんだから不吉なこと言うな」

(,,゚Д゚)「行くぞ」

ζ(゚、゚*ζ「ま、待って」

( ^ν^)「ん?」

ζ(゚ー゚*ζ「ニュッ君、格好よかったから、お礼」

( ^ν^)ζ(゚ー゚*ζ

( ^ν^)ζ(-、-*ζ


(;^ν^)「!?」

川;゚ -゚)「で、デレちゃん。そういうのはカップルにならないとしちゃいけないんだぞ!」

(,,゚Д゚)「最近の若い子はまったく……」

ζ(^ー^*ζ「また、会おうね」

(;^ν^)

( ^ν^)「……ああ」

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46 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/11/20(火) 21:32:35 ID:tM5yJ2IIO




「こうして全て終わってみれば、あれは俺の人生において最も重要な二日間だったのかもな」

男は少女の手を取って、呟いた。



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支援イラスト『>>23・漫画化』 同スレ>>61より


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