2012年芸術の秋ラノベ祭りのようです
( ´_ゝ`)デザート×キャラバンのようです(´<_` )
  そのご



290 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/04/21(日) 19:46:32 ID:M.Sc.APo0

(;´_ゝ`)「……」(´<_`;)


ひび割れた大地を超え。広がるのは一面の砂。
吹き抜ける風に、砂が舞い上げられる。
舞い上げられた砂は辺りを舞い、地表の形を少しずつ変えていく。


( ;_ゝ;)「……茶が……めっちゃしみるんだが」

((´<_` ;)「……耐えろ」


口にした香草の清涼感が、殴り合いでできた傷に痛みをもたらす。
それは兄者も弟者も同様のようで、両者の眉根にはしっかりと皺がよっている。
口に広がる痛みに涙しながら、兄者は茶をごくりと飲み込んだ。


(´<_` )「……やっぱり減らすか、香草」

(;´_ゝ`)「いや、でも入ってないと物足りなくないか?」


(;'A`)「二人揃って何やってるんだか」

(*^ω^)「とっても楽しそうだお!」


広がる砂丘の只中にいるよく似た二人の男と、白と紫の二匹の精霊。
――彼らは今、のんびりと休憩中だった。

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291 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/04/21(日) 19:47:46 ID:M.Sc.APo0




( ´_ゝ`)デザート×キャラバンのようです(´<_` )



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292 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/04/21(日) 19:48:36 ID:M.Sc.APo0




そのご。  ようこそ、ソーサク遺跡へ



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293 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/21(日) 19:50:02 ID:M.Sc.APo0


(;´_ゝ`)「いやー、さすがに暑くていろいろと無理ー」

(´<_` )「もう正午だかららな。しばらくは暑いぞ、兄者」


ニダーとのーの盗賊二人組から別れて幾ばくか。
一同はラクダに乗ってひた進み、兄者の体力が限界を迎えはじめた頃、休憩を取ることになった。


( ^ω^)「おっおー、ブーンは平気だおー」

('A`)「影なめんな」

ヾ(;´_ゝ`)ノ「この裏切りものどもめ!!」


騒ぐ兄者他二匹から目をそらして、弟者は周囲を見回す。
風は相変わらず吹いている。しかし、この程度ならば視界が利かなくなるなくなることはないだろう。
兄者の天候予測でも風、気温ともに良好と出ているし、この先天候だけは心配しなくてもいいらしい。


(´<_` )「しばらく休むとするか」


熱砂の中を吹く風は、体から水分と体力を奪い去ろうかとするように容赦なく体を焼いていく。
しかし、この程度の暑さならばこの季節においては当たり前のことだ。
弟者は手にした茶を一口飲み、やはり傷に染みたのかその表情を再びしかめた。

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294 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/21(日) 19:52:26 ID:M.Sc.APo0


( ^ω^)「オトジャー、何してるんだお?」

(´<_` )「……」


弟者はブーンの見ている横で、荷袋から鍋を取り出す。
そしてその中に、同じく袋に用意されていた食材を適当に切って放り込む。
その間、弟者はブーンに視線を向けず、言葉も発しようとはしなかった。


( ´ω`)「また無視されたおー」

('A`)「お前もメゲないよな」


ヨシヨシ( ´_ゝ`)ノ(´ω` )オー


(´<_`#)


オトジャ タン コワイ( ;´_ゝ`)ノ(^ω^ ;)ヤメテー


('A`)「……お前ら、本当に楽しそうだよな」

.

295 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/21(日) 19:54:18 ID:M.Sc.APo0


( ´_ゝ`)「ところで、弟者さんは何してるんですか?」

(´<_` )「腹減ったから飯」


弟者はそう答えながらも、動かす手を止めない。
茶の入っているポットをどかして、食材を適度に炒めはじめる。
鍋が熱せられれるのにしたがって、じゅぅぅと音が上がり周囲には香ばしい匂いが立ち上る。


(;´_ゝ`)「えー、市場でいろいろと食っただろ」

(´<_` )「さんざん動き回ったから、腹が減った件について。
      やはり砂丘は疾走するものではないな……あれは疲れた」


(*^ω^)「おー、またご飯だおー。おいしいんだおー」

(;'A`)「また、食うとな」


そう答えながらも弟者の目は、鍋と食材を真剣に見つめ続けている。
野菜に火が通ったことを確認してから、水とともに香草を鍋の中へと入れた。


( ´_ゝ`)「まあ、わからんでもないがな。俺も腹減ったし」

.

296 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/21(日) 19:56:33 ID:M.Sc.APo0

(´<_` )「兄者よ。暇ならさっき奪った武器でも処分しておけ。
      使えない武器があっても危険なだけだ」

(;'A`)「これじゃどっちが盗賊かわかったもんじゃねーな」

(´<_`#)「……」


ドクオの声に、弟者の視線が鍋からドクオへと移る。
その視線の鋭さに、ドクオは手を上下に動かすと顔を蒼く染める。


(;゚A゚)「ごめんなさい、弟様!
    むしらないで、投げないで、刀突きつけないでぇぇぇ!!!」

( ^ω^)「ドクオ。まだ、オトジャは何もしてないお」

( ´_ゝ`)「えーと、武器武器っと」


しかし、一日のうちに同じような出来事が何度か繰り返されると人とは慣れるものである。
この程度なら大丈夫だろうと言わんばかりに兄者は荷物を探り、ブーンは慌てた様子もなくのんびりと声を上げる。


('A`)「うん。お前ら冷たい」


そんな二人の様子に、ドクオは少しだけ泣きたくなった。
理由はわからない。しかし、彼にとって泣きたくなるなんてことは随分と久しぶりで、それが少しだけ嬉しかった。

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298 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/21(日) 19:59:48 ID:M.Sc.APo0


( ´_ゝ`)つ┏━「おとじゃぁぁぁ、お前、銃使えるぅぅぅ?」

(´<_`;)「使えないこともないが、手入れはできんぞ。
      それに粗悪な銃の場合、下手に触ると暴発するぞ」


(;´_ゝ`) ヒィィ ('A`;)

( ^ω^)?


のーとニダーから取り上げた武器の入った袋。その中にある武器たちを掲げて兄者は声を上げる。
弟者は鍋の上に蒸し器を置きながら、その問いに答えていく。


( ´_ゝ`)ノ◯「じゃあ、この何だかわからない輪っかは?」

(´<_` )「使えるわけ無いだろこの阿呆。指切るぞ、指」

(*´_ゝ`)「えーと、じゃあなぁ」


( ^ω^)ノ┃     ♭ヽ('A`)


袋の中の大半は、のーが隠し持っていた使用方法すらもわからない武器の数々だ。
兄者はそれらを一つ一つ取り出しながら、「これはどうする?」といちいち弟者に確認していく。

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299 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/21(日) 20:00:42 ID:M.Sc.APo0


(´<_` )「袋に詰めてたやつはまとめてそのへんに埋めとけ。
      仕込み武器や暗器なんぞがあっても、使いこなせない件」

( ´_ゝ`)「やっぱ、弟者でも無理か」


弟者は蒸し器に小麦粉の練り物を入れながら、火の具合を見る。
どこからか集めてきた枯れ草を火の中に足し、随分と調理に熱中している。


( ´_ゝ`)「あ、そうだ。俺の持ってるナイフと弟者の持ってるセイリュートーは?」

(*^ω^)「セイリュートーってなんかかっこいい響きだお!」

(;'A`)「危うくオレに刺さるとこだった、あのナイフ……」


が、兄者の声が聞こえると同時に弟者は腰に下げた青竜刀をスラリと抜いた。
あいも変わらず弟者の表情は変化に乏しいが、その瞳はいきいきと輝いている。


+(´<_` )「これはいい刀だ、俺がもらう。
       機能と威力しか追求していないにもかかわらず、洗練された見た目。
       そして何より、あの男の馬鹿力にも耐えうるその丈夫さ。きっと名のある職人が鍛えたに違いない。
       それにしてもあの盗賊、刀の手入れだけは欠かさなかったらしいな。随分と、美しい刀身をしている」

(;´_ゝ`)「い、いきいきとしてますね弟者くん……」

(´<_` )「そうか? ナイフは兄者の好きにしていいぞ」

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300 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/21(日) 20:02:35 ID:M.Sc.APo0



( ´_ゝ`) ざっくざくー

( ^ω^) ざっくざくー

('A`) ざっくざくー


ヾ('A`)ノ 武器入り袋ダバァー

( ´_ゝ`) ダバァー

(*^ω^) ダバァーだおー


( ^ω^) 砂ドシャー

(*´_ゝ`) ドシャー

('A`)ゝ どしゃー



( ´_ゝ`)b「よし終了! さーて、弟者ぁぁぁぁ」


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301 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/21(日) 20:04:21 ID:M.Sc.APo0

(´<_`*)「……」

( ^ω^)「おー、すごいおー」


弟者が先程まで見ていた鍋は煮込みの段階に入ったのか、火にかけられたままになっている。
かわりに弟者が手にしているのは大きめの皿。
その中には白い粉と水が注がれ、弟者はそこにおもむろに手を突っ込んだところだった。


(;´_ゝ`)て「弟者さん、おもむろにパンをこねようとするのやめて!」

(´<_` )「ああ、兄者か。結局、ナイフはどうしたんだ?」


兄者の声に答えながらも、弟者の動きは止まらない。
小麦粉を混ぜ、その形がまとまり出したところで、力を入れてこね続ける。


(;´_ゝ`)「せっかくだし貰うことにしたけど……って、もう本格的に生地作り出してるし」

(´<_` )「腹が減ったんだから仕方がないだろう」

( ´_ゝ`)「いや、今日中に帰る予定だよな? ジカン カカルゾ」

d(´<_` )「先のことより、目先の飯のほうが大切ですが何か」

(;'A`)「コイツ言い切りやがった」


(;'A`)ゴメン         (´<_`#)


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302 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/21(日) 20:06:44 ID:M.Sc.APo0




細かな小麦の練り物の上にかけられた、香辛料のきいた野菜のスープ。
その隣には、つい先程焼きあがったばかりのできたてのパン。


( ´_ゝ`)「……流石だな、弟者。
      これには正直、お兄ちゃんびっくりだわ」


(´<_` ) モグモグ

(;´_ゝ`)「返事もしないし」

( ^ω^)「アニジャも無視されたのかお?」

( ´_ゝ`)「ブーン、お前……」


ムシサレ(*^ω^)人(´く_` )ナカマー


(´<_`#)つ スッ


(;'A`)「おい、やめろ。刀とか出そうな勢いだから、ほんとやめて」


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303 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/21(日) 20:08:51 ID:M.Sc.APo0

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(*´_ゝ`)「あー、満腹満腹。いやぁ、美味かった、うん」

⊂二( ^ω^)二⊃「アニジャたちばっかりごはん食べてずるいおー」

( ´_ゝ`)「どうだー、いいだろー」


食事を済ませ食後のお茶を飲み終わった兄弟は、再びラクダへと乗っていた。
荒巻には兄者とドクオ、中嶋の上には弟者。そして、二頭のラクダのそばをブーンが飛ぶ。
そんな馴染みになりつつある隊列で彼らは進んでいく。


('A`)「弟者って飯作るんだな」

( ´_ゝ`)「俺もだけど、あいつは食うのが好きだからな。腹が減るたびによく何か作ってる件
      姉者はごはん係とか言っていたな」


袋に放り込まれていた食材を、適当にぶった切って煮ただけ。
兄者にはそう見えたのだが、これがなかなかどうして美味かった。
蕃茄の酸っぱい味に干し肉から出た旨味と舌を刺す辛味。少々傷口には染みるがたまらない味だった。
家に戻ったらまた作ってもらいたいものだと、兄者は一人頷く。

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304 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/21(日) 20:10:21 ID:M.Sc.APo0


風の音と、ラクダが砂を踏む音だけが響く。
周りに見えるのは、黄色に輝き連なり続ける砂の丘たち。
兄者の被り布の下では汗がふきだし、流れることのないまま蒸発し消えていく。


(;´_ゝ`)「お前は涼しそうでいいよなぁ……」

('A`)「そうか?」

( ´_ゝ`)「同じ景色ばっかで流石に飽きたわー」

⊂二( ^ω^)二⊃「おっおー、でもブーンは楽しいお」


周囲に見える光景は、ほとんど変化がない。
その中を進み続けると、時間の感覚までもが失せていく。
歩き続けるラクダの振動と、時折交わされる会話。それ以外には何もない、空白の時間がただ流れていく。


( ´_ゝ`)ノシ「弟者ぁー、あとどのくらいで到着だ?」

(´<_` )「ここまで来れば、あと少しだ」

(;´_ゝ`)「そのあと少しがどれくらいか、聞きたいんだが……」


遠くに見えていた遺跡の姿はかなり近くなっているが、未だその道のりは遠い。
満たされた腹に、ラクダの規則的な振動が重なり、兄者の瞼が少しずつ落ちていく。

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305 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/21(日) 20:12:15 ID:M.Sc.APo0


('A`)「兄者ー、寝たら荒巻から落ちるぞー」

(*-_ゝ-)「んー、わかってるわかって……」


荒巻の頭の上からドクオが声をかけるが、兄者の首はガクリと下がるだけ。
ラクダから落ちても死にはしないだろうが、それでも兄者は人間だから万が一ということもある。


(;'A`)「おい、おいっ!」

( -_ゝ-).。oO


あわてて荒巻の頭から兄者の首へとドクオは飛び移るが、兄者の意識はほとんど夢へと落ちかけている。
ドクオは小さな体で、兄者の首を何度も叩くが目を覚ます様子はかけらも見えない。


(#'A`)「起きろ、このっ!」


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306 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/21(日) 20:14:18 ID:M.Sc.APo0

⊂二( ;゚ω゚)二⊃「あああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


( ; ゚_ゝ゚)パチッ


ドクオが張り上げた声は、それよりも大きなブーンの声でかき消された。
荒巻がブーンの声に不満そうな声をあげ、体を大きく動かす。
その衝撃に兄者の目が開き、驚きの表情を浮かべる。


( ;´_ゝ`)「え、何、ど、どうした?!」

('A`)「何ってそりゃあ、ブーンのやつが……」

(*^ω^)「アニジャ、オトジャ見るお!!!」


ブーンが兄者とドクオの周囲をさかんに飛び回り、ある方向を指差す。
指が示す方向は巨大な砂丘。兄者とドクオはその方向をじっと眺める。
はじめは訝しげにしかめられていた二人の表情が驚きに変わるまでに、それほどの時間はかからなかった。


(*´_ゝ`)「なんと!!!」

(;'A`)「すっげーな、なんだあれ」


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307 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/21(日) 20:16:09 ID:M.Sc.APo0


(*´_ゝ`)σ「おい、弟者も見てみろ!」


兄者は喜びの表情を浮かべ、中嶋に乗る弟者へと声をかける。
弟者はそんな兄者の様子に鬱陶しそうに顔をしかめながらも、兄者が指差す先に視線を向ける。


(´<_` )「……」


目に入るのは、なだらかな曲線を描く大きな砂丘。
はじめはそう見えた。しかし、それが間違いだということに弟者は気づく。

――砂丘が動いている。
いや、動いているのは砂ではない。
砂と同じ色をした巨大な何か。それが砂をかきわけながら進んでいく。


(´<_`;)「――あれ、は?」


長い体、丸い頭には首がない。
胴らしき部分から飛び出した腕は短く、薄い板の様だ。
後ろ足はなく、かわりに巨大な尾が体を支えている。

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308 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/21(日) 20:18:31 ID:M.Sc.APo0







――そのカタチを例えるならば、それは魚に似ていた。


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309 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/21(日) 20:20:34 ID:M.Sc.APo0

しかし、それが魚であるはずがない。
魚は砂を泳がないし、その形もかなり異なっている。
そして、何より大きさが違った。


(´<_`;)「……あれは、何だ?」


これまで見た何よりも巨大な生物。
人の世の法則を越えたとてつもなく大きな何か。
精霊や人、動物なんてくくりが馬鹿らしくなるほどにそれは大きかった。


(*´_ゝ`)「すごいよな! びっくりするよな、あれ」

(;'A`)「……オレも初めて見たぞ」


それは異様な光景だった。
その生き物は砂の中を尾をくねらせて泳いでいる。


(*^ω^)「砂クジラだお! 100年に一度くらいしか見られないんだお」

('A`)「何だそれ」

( ^ω^)「んー、ブーンも見るのは500年ぶりくらいだから、実は全然わかんねーですお」

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310 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/21(日) 20:22:14 ID:M.Sc.APo0


( ´_ゝ`)「すっごいなー、弟者。
       世界にはこんな見たことのないようなものが、いっぱいあるんだな」


驚きのあまりに思考が完全に止まっていた弟者は、その言葉によって意識を引き戻された。
視線を向けると、兄者が子供のように笑っている。


(*´_ゝ`)「なあ、弟者。もっと近くまで見に行かないか?」

(´<_` )「……」


好奇心に輝いた、瞳。
あれがどんなものかわからないのに、兄者は子供のようにはしゃいでいる。
それを見た弟者の心に、自身ではどうしようもない苛立ちがはしる。


( <_  )「……兄者はいつもそうだ」

( ´_ゝ`)「?」

(´<_` )「そうやって妙なものを見るたびに、ヘラヘラと笑って近づいて。
      ――自分がそれで、どれだけ危ない目に合ったか、わかってないのか?!」


まるで子供のようだと、弟者は思う。
――兄者ではなくて、自分自身が。
子供のようにわけもなく苛立って、その文句を兄にぶつけている。

.

311 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/21(日) 20:24:14 ID:M.Sc.APo0


( ´_ゝ`)「……弟者」


兄弟の間に沈黙が落ちる。
弟者の顔には、何の表情も浮かんでいない。
……兄者は弟へむけて話しかけようと口を開きかけ、


(;^ω^)「んー、でも行くのはやめたほうがいいと思うお」


ブーンにしては珍しく歯切れの悪い言葉に、その動きを止めた。
ブーンはその場にふわりと浮かび上がったまま、少しだけ眉を寄せている。


(;´_ゝ`)「どうした、ブーン。お前にしては随分と珍しいな」

(;^ω^)「砂クジラに近づいて死んじゃったやつ、ブーンはいっぱい知ってるお」

( ;゚_ゝ゚)「なん……だと……」


聞き流せない発言に、兄者の意識は弟者からブーンへと完全に移る。
ブーンは砂クジラのことを百年に一度くらいしか見ることが出来ないと言っていた。
だというのに、死んだやつをいっぱい知っているとはどういうことなのだろうか。


(;'A`)「そ、それって人間のことだよな。精霊は大丈夫だよな?」

( ´ω`)「ブーンは、精霊とか幻獣とか魔物がいっぱいやられたって聞いてますお」

.

312 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/21(日) 20:26:38 ID:M.Sc.APo0


(;゚A゚)「ホントか? そもそも、オレらってそんなに簡単に死ぬもんなの」

( ´ω`)「そりゃあ、ブーンたちだってちゃんと生き物ですから」

└('A`)┐「今すぐ逃げよう。うん。そうしよう、オレ。
      羽をむしられるとか、投げられるとか、刀とかナイフとか突きつけられる程度じゃ絶対すまない」


ドクオとブーンが言い合うのを横目に眺めながら、兄者は砂クジラの巨体を眺める。
上へ下へとうごめく尾。砂と同じ色の体。目や口は一体どこにあるのだろうか、ここからではよく見えない。
その姿は、とてもじゃないけれど危険な生物には見えない。


( ´_ゝ`)「……危ないかもしれないけど、もうちょっと近くで」


( ´_>`)「兄者「アニジャ」(^ω^; )


( ; ゚ω゚)「人間はブーンたちとちがってすぐ死んじゃうから、とっても危ないお!!」

(#´_>`)「どうして自分から危険に向かって全力疾走しようとするんだ、この馬鹿兄者、死ねっ!!!!」


ブーンとドクオが騒いでいる今のうちと言わんばかりに荒巻の足を進めようとした兄者を、弟者とブーンが止める。
二人は先ほどの続きと言わんばかりに口を開くと、兄者に向かって一気にまくし立てた。
これまで会話が一切なかったとは思えないほどぴったりと合った二人の声に、兄者は「うへぇ」と小さな声を上げた。


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313 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/21(日) 20:28:10 ID:M.Sc.APo0


(;´_ゝ`)σ「でも、せっかくだし」


(#´_>`)「兄者「アニジャ!!!!」(゚ω゚ ; )

(;´_ゝ`)「ふ、二人同時に怒られた件について」


弟者とブーンの勢いに、兄者は思わず首をすくめる。
そんな兄者の首を、先程からずっと首元にいたドクオがポンポンと軽く叩く。
慰めてくれるのかと、兄者はドクオへと視線を向け……


('A`)「そりゃそうだろ」

ヾ(#´_ゝ`)ノシ「ドクオの裏切り者ーっ!!」


……その思いは見事に、裏切られた。
兄者はその場で小さな子供のようにバタバタと両手を振って、不満を丸出しにする。


ヾ( ;_ゝ;)ノシ「ひどいや、ひどいや! ちょっと近づいてみたいって思っただけじゃないか!」

(´<_` )「泣いたふりをしても無駄……」


――そんな弟者の声を遮るようにして、唸るような低い、低い音がした。

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314 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/21(日) 20:30:32 ID:M.Sc.APo0


(;'A`)「何だ?!」


音が聞こえたのは、砂クジラの方向。
一体何が起こったのかと、あわてて視線を向け、彼らは見た。


(*^ω^)「おおおおお!!」


とてつもなく広い、砂クジラの背。
そこから、天に向けて砂が吹き上がる。
砂は空の一角を黄に染めて舞い上がり、地に落ちていく。
砂が消えた空に残ったのは、赤に青に黄色に色を変える虹のような光。


(*´_ゝ`)「弟者っ、弟者見えるかあれっ!!!」

(´<_`;)「あれは……」


低いうなりは音を変えながら、低く、低く響いていく。
それは、まるで歌のような音の連なり。
兄者と弟者の肌と毛並みがざわりと粟立つ。


(´<_`;)「魔力、なのか?」


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315 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/21(日) 20:33:10 ID:M.Sc.APo0


砂クジラは歌い、砂と光と魔力を吹き上げる。
空に揺らめく光は、色を変えながら美しく広がっていく。


(*´_ゝ`)「すごいなぁ」

(;'A`)「本当にあれは生き物なのか?」


その光景を見守る一同の姿など気にもとめないで、砂クジラは悠然と泳ぐ。
砂を飲み込みその背から砂と、魔力をまき散らして進んでいく。


( ^ω^)「ブーンにもあれが本当は何なのかわかんないんだお」

(´<_` )「……」

(*^ω^)「でも、ブーンはやっぱりすごいと思うんだお」


100年に一度の神秘。
砂を泳ぐ巨大な生物は、北へ向かって泳いでいく。


(´<_` )「……すごいな、本当に」


弟者の小さな声は、誰にも届かないままに消える。
遠ざかっていく巨大な生物の姿を、一同はただ立ち尽くしたままで見送っていた。


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316 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/21(日) 20:34:42 ID:M.Sc.APo0

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――――――――――――


荒巻の足が、ざりりと土を踏む。
その背がひときわ大きく揺れ、砂地から大地へと乗り上げたことに兄者は気づいた。
視線をあげると、人の手によって作られた柵がすぐ近くに立ち並んでいるのが見える。


(*´_ゝ`)「ついに着いたぞ、弟者」

(´<_` )「長かったな、兄者」


砂よけに作られた柵の向こうに広がるのは、草と背の低い木々と、白い柱の群れ。
そして、そのさらに奥にそびえるのは白いひときわ大きな建物の姿だった。


ソーサク遺跡。


魔王が支配したといわれる暗黒の時代の遺産。
白い柱の群れと白い石造りの建物が残るこの場所は、かつてはあまたの者を飲み込んだ死地だったと言われている。
人が消えればまずこの地を捜索しろ。それが常識になっていた時代があるほどに、ここは危険な地であった。

草が生い茂り、背が低いながらも木々は生え、ここからは見えないが水も出る。
それだけ豊かな土地でもかかわらず、人が暮らす様子がないのはひとえにこの土地が恐れられているからだ。

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317 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/21(日) 20:37:29 ID:M.Sc.APo0


('A`)「ここが目的地なのか?」

( ^ω^)「そうみたいだお」


兄者の飾り布の下から、顔を出しながらドクオが言う。
大きく揺れ動く荒巻の頭よりも兄者の肩回りの方が快適だったらしく、ドクオは兄者の肩の辺りから動く気配がない。
それに気づいたらしい弟者が険しい顔を向けるが、ドクオは意地でも動くつもりはないようだった。


( ´_ゝ`)「いやぁ〜」

( ^ω^)「どうしたお、アニジャ?」


ドクオと弟者の水面下の攻防には気もくれず、兄者は荒巻の背の上で大きく伸びをする。
その動きにドクオは抗議の声を上げるが、兄者は特に気にした様子を見せなかった。


( ´_ゝ`)「あの後は、見事に何も起きないままに到着したな。
      さっきのニダやん者の一族郎党とか属国とかなんやかんやが、仕返しにくるのかと思ったが」

(;'A`)「それはないわー。っていうか、落ちるから急に動くのやめて」

(;^ω^)「……す、砂クジラはすごかったと思うお」

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318 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/21(日) 20:38:24 ID:M.Sc.APo0

∩( ´_ゝ`)∩「いや、それだけじゃなくてだな。バインバイーンでボインボイーンな謎の美女とか。
         巨大な怪鳥とか、ランプの巨人とか、空飛ぶ木馬や絨毯とか、首を切ろうとするおっかない王様とか。
         砂漠で道に迷ったり、水がつきたところでこの俺が真の力を発揮してとか、そういう胸おどる感じの冒険をだなぁ」

(´<_`#)「……」


兄者は自身の描く理想の冒険について、腕を振りながら力説する。
が、傍らを進む弟がドクオではなく自分に怒りの表情を向けていることに気づくと、慌てて黙りこむ。
しばらく黙りこんでも、弟者の表情が戻る様子はない。兄者はそれを見て取ると、恐る恐る口を開いた。


(;´_ゝ`)「ええと、……怪鳥とかランプの精とかにはもう会ったことがあるからもういいかな、なんて」

(;'A`)て「会ったことあるのかよ!」

(´<_`#)「……」

(;´_ゝ`)ゴメンナサイ


弟の表情に、とうとう兄者が謝罪の言葉を口にする。
弟者が怒りだした理由はなんとなくは予想はつくものの、少々理不尽ではないかと兄者は思った。


('A`)「お前さんの頭の中が最高に幸せなことだけわかったわ」

( ^ω^)「幸せって楽しいことだお? だったら、それでいいと思うんだお!」


時刻は、太陽が空の中心をとうに過ぎた昼過ぎ。一同は相も変わらず平和であった。

.

319 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/21(日) 20:40:25 ID:M.Sc.APo0





草の生える大地では、大きく揺れるラクダの背より、歩くほうがはるかに快適だ。
そういうわけで、荒巻と中嶋の手綱を引きながら兄弟は歩いていた。
何のためにあるのかわからない柱を見上げ、足元に時折転がる石畳の跡らしき石に足を取られながら兄弟は進む。


(´<_` )「到着したわけだが、これからどうするんだ?」

( ´_ゝ`)ゝ「とりあえずは、ギコ者に挨拶をしてだな……」

( ^ω^)「ギコジャってだれだお?」


ブーンの言葉に兄者は大きく頷くと、ふっふっふっと見るからに怪しい笑い声を上げる。
そして、指を大きくつき出すと天を指さした。


<( ´_ゝ`)/「ギコ者とはこの世に混沌をもたらす悪の権化にして最強の刺客!」

(´<_` )「おい、やめろ」

\( ´_ゝ`)>「じゃあ、世界を救う勇者にしとくか? かっこいいぞ?」

(´<_`; )「だから、やめろって」

.

320 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/21(日) 20:42:42 ID:M.Sc.APo0


( ;^ω^)「ギコジャは悪の権化で刺客なのに、世界を救っちゃうのかお?」

('A`)「どうみても嘘だろ、あれ」


彼らが探す知り合い――ギコは、彼ら兄弟の姉である姉者=流石の古くからの知り合いである。
兄弟にとってはギコは、姉者の知り合いという以上に気のおけない兄貴分のような存在でもあった。
ギコは今、“流石”の街からソーサク遺跡へと派遣された調査隊の一員として、この地で調査をしながら暮らしている。


<(;´_ゝ`)/「確かに嘘だけど、もうちょっと素敵な反応を返してくれたって……」

(´<_` )「本人に見つかって殴られても知らんぞ」

( ´_ゝ`)チェー


他愛もないやり取りを繰り広げながら、一同は進む。
何本目かの柱のそばを通り過ぎ、かつては何かに使われていたらしい石が積まれた場所を覗く。
しかし、ギコの姿どころか、人影一つ見えない。


\( ´_ゝ`)/「おーい、誰かいませんかぁ!!! いたら俺が喜びまーす!!!」

\( ^ω^)/「ブーンも楽しいですおー!!」

.

321 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/21(日) 20:45:12 ID:M.Sc.APo0


(´<_` )「叫んだからといって、誰がが見つかるとは限ら……」


呆れたような弟者の言葉が、途中で止まった。
もともと細い目つきを更に鋭く細めて、弟者は薄緑の両耳をぴくりと動かす。
弟者の手が曲刀の柄をつかむ。が、彼はそれを抜こうとはしなかった。


(´<_` )「誰かいるのか?」

(#゚;;-゚)「……見学の……方?」


弟者の呼びかけに答えるようにして、石の壁の向こうから人が姿を表す。
紙束を抱えたまだ若い娘。彼女の顔や手足の至る所に古い傷跡が見え、頭部に生える獣の耳は片方が失われている。
それでも、彼女の姿は美しかった。


(´<_` )「ああ、そうだ。貴女は調査隊の?」

(#゚;;-゚)「うん。……そういうあなたたちは……母者様の……息子さんたち……?」


青い糸で刺繍が施された白いドレスがふわりと風に揺れる。
弟者は曲刀から手を離すと、彼女に向けて言葉を返そうと口を開く。
しかし、それを邪魔したのは、機嫌良さそうに腕を振った兄者だった。

.

322 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/21(日) 20:46:39 ID:M.Sc.APo0

(*´_ゝ`)ノシ「おお、可愛らしいお嬢さん!
         もしよろしければ今度、食事にでも」

( ^ω^)「ごはん! ごはん食べるのかお? ブーンも食べたいお」

(;'A`)「だから、オレらはものを食えないと何度言わせれば」


兄者は娘に嬉々とした表情で話しかける。
どうみても若い女性を逢引に連れだそうとする不審な男なのだが、精霊二人の興味は食事の方にあるらしい。
「さっきのパンが」、とか「スープがおいしそうだった」などとブーンはうれしそうに話をしている。


(#;゚;;-゚)「……かわいらしい? ……え、……食」

L(*´_ゝ`)」「そうですとも、お嬢さんかわいい! 美人! お近づきになりたい!」

(#;゚;;-゚)「そ、……困……」

(´<_` )「そこまでだ、兄者。どう見ても困っているだろうが。
      そういうのは時と場所と相手を選んで、俺のいない時にやってくれ」

(#゚;;-゚)ホッ


( ^ω^)ソウイウノ?       ┐('A`)┌サア?


.

323 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/04/21(日) 20:48:20 ID:M.Sc.APo0

(´<_` )「兄者がとんだ失礼をした。俺からわびよう」

(;´_ゝ`)「わびられてしまった件について。
      ちぇー、わりと本気だったのに。弟者さんのケチー」

(´<_` )「はいはい。どうせ俺はケチですよ、と」


兄者と弟者が改めて名乗ると、娘はソーサク遺跡の調査隊に加わっている一員だと名乗った。
でぃというらしい彼女は、兄者と弟者の名前だけは知っていたらしい。
しかし、実際に顔を見るのは始めてだったようで、二人の顔を見比べると驚いたような表情を浮かべた。


(#゚;;-゚)「……本当に、……同じ顔なんだ」

( ´_ゝ`)ノシ「まあ、兄弟だからな。ちなみに俺のほうがお兄ちゃんですので、よろしく!」

(´<_` )「今日だけで何度、弟に間違えられたことやら」

∩(#´_ゝ`)∩「ムキー! まだ二人だから、全然大丈夫だし!」


兄者は知らないことだが、「兄者は弟である」と間違えた相手は今日少なくとも三人いた。
石板売りの店主と、のーと、ニダー。通行人を加えればもっと増えるのだが、知らぬが花とはこのことである。
でぃは彼ら兄弟のやりとりに微かに口元を和らげながら、問いかけた。


(#゚;;-゚)「……兄者さんと弟者さんは、……どうしてここに?」


.

324 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/21(日) 20:50:11 ID:M.Sc.APo0


(*´_ゝ`)/「それはですね。遺跡見物と、ギコ者に会いにと、ちょっとあれやこれやで来たのですよ」

(;'A`)「あれやこれやって何だよ、オイ」

( ´_ゝ`)b「あれやこれやって言えば、あれやこれやに決まってるじゃないか!」


('A`)エー      アレヤ コレヤー(^ω^ )


精霊が見えないらしいでぃは、兄者とドクオのやりとりに小首をかしげる。
が、そのことについては深く追求しようとはせずに、口を開いた。


(#゚;;-゚)「……案内……しようか?」

(´<_` )「それは助かる。誰も見当たらなくて困っていたところだ」

(#゚;;-゚)「今日はもっと西の辺りに……みんな行ってるから……」


弟者は西へと視線を動かす。しかし、背の低い木や白い柱は目にはいるものの人の姿は見えない。
ここからでも見えないということは、かなり遠くにいるのだろう。
弟者はこれだけ広いと調査するのも一苦労だろうなと思うと同時に、でぃに出会えた幸運に感謝した。

.

325 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/21(日) 20:52:11 ID:M.Sc.APo0


(´<_` )「ギコさんも西に?」

(#゚;;-゚)「ううん。……ギコさんと、お姉ちゃんはこの時間……本部にいるから……」


そう言うとでぃは、北の方角を指さす。
街からもよく見えた、一際大きな白い建物のある方向とは少しそれた地点。
どうやらそこが、調査隊の本拠地となるらしい。


∩(*´_ゝ`)∩「でぃ者にはお姉さまがいらっしゃるので?」

(´<_` )「おい、兄者」

(*´、ゝ`)「ちょっとくらいいいじゃないか、弟者のケチー」

L('A`)」「やーい、ケチー」


ゴメンナサイ(;'A`)⊂(´<_`#)ギリギリ


(;^ω^)ドクオー!!   モウヤメテー('(´く_` ;∩

 _,
(#゚;;-゚) ?


.

326 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/21(日) 20:54:47 ID:M.Sc.APo0

――――――――――――――――
―――――――――――――――
――――――――――――――
――――――――――――


でぃの後に続いて、歩くことしばし。
白い石造りの建物の近くを通り過ぎてさらに進むと、水場が見えはじめる。
そこをさらに通り越して進むと、黒い布によって作られた人工物と、畑らしきものが姿を表した。


( ´_ゝ`)ゝ「ふむ。ここにギコ者がいるのか、それにしても随分と広い」

( ^ω^)「すごいおー」

(#゚;;-゚)「……私たちの……住居もかねてるから……」


黒いで作られた人工物――それはここよりも北に住まう遊牧の民が使う、住居に似ていた。
山羊の毛を織って作った布を張り巡らせた、テントというにはかなり広い天幕。
小さな建物ならばすっぽりと入ってしまいそうなこの場所こそが、ここソーサク遺跡の調査隊の本拠地であった。


(´<_` )「外に作ってあるのは、畑か?」

(#゚;;-゚)「母者様が……遺跡調査の援助の条件にって……
    ……指定された植物の……生育状況も報告してる……」

.

327 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/21(日) 20:56:22 ID:M.Sc.APo0

魔王が滅び去った後も長らく無人の地であった、ソーサク遺跡。
その調査や発掘をしようものならば、短期では済まないし、相当の資金がかかる。
……彼ら兄弟の母親は、金の使い道には妥協しない。
それにもかかわらず援助しているということは、母者=流石はそれだけの価値をソーサク遺跡に見出しているということだ。


(´<_`;)「母者はここをどうしたいんだ」

( ´_ゝ`)ゝ「んー、遊ばせとくにはもったいない土地だとは言ってたな、確か」

(#゚;;-゚)「……ここに人が住めるか……知りたいみたい……」


なるほどそういうことかと、弟者は納得する。
魔王時代の遺産ともいえるこの遺跡は、完全に手付かずの土地だ。
水と緑。そして、ひょっとしたら作物が順調に育つかもしれない土壌。それだけの条件が揃っている土地はそうない。
魔王時代にここソーサクを死地としていた脅威さえ残っていなければ、あとはやりたい放題というわけだ。


(;´_ゝ`)「母者は怖いが、決して魔神や悪鬼ではない。
     でぃ者。危険だと思ったら、さっさとみんなで安全に気をつけて街へ帰るのだぞ」

(;'A`)「なんでカーチャンについての話で、魔神や悪鬼が出てくるんだよ」

∩(;´_ゝ`)∩「お前は母者や姉者の怖さを知らない」

( ^ω^)「カーチャンって、怖いのかお?」

( ´_ゝ`)b+「当然だ」

.

328 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/21(日) 20:58:44 ID:M.Sc.APo0

(´<_`;)「……母者も姉者も、末恐ろしい」


弟者は魔王が支配していた頃を知らない。
もちろん知識としては持っているが、それはあくまでも書物や人から話を聞いたという程度である。
しかし、彼らの母親の世代は違う。実際に魔王の支配を受け、その恐怖に怯えながら生きていたはずだ。
それなのにこの土地に人を住まわせようとするのだから、自分の母親のことながら恐ろしいばかりである。


(#゚;;-゚)「……それでも、私たちは……知りたいと思ったから……きたの……」

(´<_` )「母者と姉者の強制ではない、と?」

(#*゚;;-゚)「そう。私もお姉ちゃんも……ギコさんや他のみんなも……自分で選んだの」


ソーサク遺跡では未だに人が住もうとしない。
弟者や兄者は“流石”の街とその周辺諸国程度しか知らないが、世界には魔王の傷跡が癒えぬ地も多いという。
魔王が倒れ数十年がたった今でも、その恐怖は拭いきれてはいないのだ。
それでも、彼らは自ら志願して調査に出た。下手をしたら、命を落とす可能性さえあったのに。


(´<_` )「強いな」

(#゚;;-゚)「……そうでもないよ。……でも、ここはキレイで平和……みんなが怖がりすぎてるだけ……
    ……だから……安心して、見学していいよ……」


弟者は、振り返る。
これまで歩いてきたソーサク遺跡は、強い日差しを浴びてもなお穏やかだった。

.

329 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/21(日) 21:00:42 ID:M.Sc.APo0


(´<_` )「……怖がりすぎてるだけ、か」


弟者はでぃの言葉を繰り返す。
その言葉が何か別の特別な意味があるかのように弟者は繰り返し呟くと、天を仰ぐ。


( ^ω^)「オトジャ、どうしたお?」

(´<_` )「……いや、別に」


かけられた言葉に返事を返した所で、弟者はその相手がブーンであることに気づく。
そうと気づいた瞬間にはもう、弟者の眉はひそめられ、表情は渋いものに変わっている。
そして、その後は無言。さきほどうっかり漏らした言葉が嘘のように、弟者は言葉を話そうとはしない。

 _,
(´<_` )「……」

(*^ω^)「お?」


( ´_ゝ`)ノシ「おーい、弟者ぁー、ブーンどうしたー?」

(;'A`)「なんだ? また、ブーンが無視されたのか?」


⊂二(*^ω^)二⊃「おっおー、ドクオにはナイショだおー」

.

331 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/21(日) 21:02:17 ID:M.Sc.APo0


(#゚;;-゚)σ「……ここから入って……ギコさんと、お姉ちゃんが……いるから」


でぃは一行の様子が落ち着くのを確認すると、その歩みを留めた。
杭と丈夫な縄で支えられた黒い天幕の一角を指さすと、「行って」と一同を促す。


( ´_ゝ`)「でぃ者は行かないのか?」

(#゚;;-゚)「……私は、……二人のラクダさんを……つないでおくから……」

( ´ω`)「荒巻と中嶋とは、お別れなのかお?」

(;'A`)「どうがんばってもあの建物?にラクダは入らないだろうが。 ラクダ デカスギル…」


草や作物を食わないように、ラクダやヤギなどの家畜はまとめて飼育しているのだと、でぃは途切れ途切れの声で説明する。
「だから、安心して」というでぃの親切に甘えることにして、兄弟は荒巻と中嶋――二頭のラクダを彼女に預けることにした。


(´<_` )「いろいろと、すまないな。感謝する」

(#*゚;;-゚)「気にしないで……私も……楽しかった」


.

332 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/21(日) 21:05:11 ID:M.Sc.APo0

(*´_ゝ`)ノ「でぃ者、よければ今度本当にご飯食べようなー」

(´<_` )「……兄者」

(;´_ゝ`)「……もちろん弟者やギコ者や、お姉さんともご一緒で」

(;'A`)て「こいつ弟者の無言の圧力に負けやがった!」


でぃは荒巻と中嶋の手綱を手に取ると、二頭のラクダを器用に操る。
荒巻も、中嶋も不満そうな声を上げること無く、おとなしくでぃに従う。


( ´ω`)ノシ「荒巻、中嶋も元気でだお」


ブーンの声に中嶋が声を上げて、垂れ下げていた尾を上げる。
それに合わせてか荒巻も、のんびりとしているがどこか機嫌がよさそうな声を上げた。


(#*゚;;-゚)ノシ「……兄者さんも、弟者さんも……楽しんできてね……」

(*´_ゝ`)ノシ「ありがとうなー、でぃ者ー」

('A`)ノシ「またなー」


荒巻と中嶋を連れて去っていくでぃの姿に、弟者もまた小さく手を降った。

.

333 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/21(日) 21:06:11 ID:M.Sc.APo0




黒い布をくぐって中に入ると、そこには下手な家よりずっと広い空間が広がっていた。
内部は布によって仕切られ、仕事場と生活の場が分けているようだ。
入り口をくぐってすぐの空間には敷物がひかれ、机と棚が並べられている。
至る所に紙の束や、本が積み上げられ。その傍らには木箱が並べられていた。


(,, Д )「――誰だ? でぃ……じゃないな」


そして、木箱の上にだらしなく座る男が一人。
細く長い尾をくねらせながら、青い毛並みをした猫のような男が声を上げる。
ピンと立った獣の耳だけを出して、ターバンを巻いた頭。ゆったりとした長衣を纏い、その上から外衣を着込んだ姿。
しかし、何よりも目を引くのは、彼の手に携えられた見るからに重そうな槍斧――ハルバードだった。


(*´_ゝ`)ノシ「おお、ギコ者! 久しいな」

(,,゚Д゚)「誰かと思えば、流石んとこの坊主共じゃねーか!」


兄者は見るからに物騒な男に怯む様子なく話しかけ、弟者は小さく片手を上げた。
青い猫のような立ち姿の男。彼こそが兄弟が探し求めていた相手、ギコ=ハニャーンだった。


( ^ω^)「あれが、ギコ者かお?」

('A`)「みたいだな」

.

334 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/21(日) 21:08:28 ID:M.Sc.APo0


(* ー )「声が聞こえるけど、誰か来てるの?」


挨拶を交わす一同の元に、鈴のなるような声が響く。
その声に、兄者と弟者は聞き覚えが合った。
これはよく姉者のもとに遊びに来ている優しいお姉さん――しぃの声ではないかと兄者は見当をつける。


(,,゚Д゚)「しぃもこっちに来い、流石の坊主どもが来てるんだ」

(*゚ー゚)o│「姉者の弟さんたち?」


そして、仕切りの布の向こうから姿を表したのは、兄者の推測通りしぃだった。
赤の刺繍で美しく飾られた、肌の露出のほとんどない黒のドレス。
薄桃色に色づく猫の耳だけを出して黒の被り布を身につけ、それを赤い帯で留めている。


(´<_` )「そうか、調査隊の代表はしぃさんだったか」

(*´_ゝ`)「なんと! ということは、しぃ者がでぃ者のお姉さんか!」


でぃは本部にギコとお姉ちゃんがいると言っていた。
よく注意してみればしぃの顔立ちは、先ほど道案内をしてくれたでぃと似ていた。


(*゚ー゚)「二人とも久しぶりね。確かに、でぃは私の妹だけど知り合いだったかし……」

.

335 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/21(日) 21:10:50 ID:M.Sc.APo0


(;゚ー゚)て「――って、どうしたの、二人ともずいぶんひどい顔をしてるわ」


兄弟の顔に目を留めると同時に、穏やかだったしぃの表情が変わる。
慌てて兄者と弟者のそばに駆け寄り、しぃは兄弟の顔と様子をじっと見つめる。


( ´_ゝ`)て「なんと、しぃ者にひどい顔といわれるとは!」

('A`)「やーい、ひどい顔ー」


∩( `_ゝ´)∩ ムキー   ∩(^ω^ )∩ブーン モ マネスルオー


(´<_` )「落ち着け、兄者。これではしぃさんが、『兄者は不細工だ』と暴言をはいたようではないか」

(,,#-Д-)「しぃはそんなこと言う女じゃない」

(;゚ー゚)「こんなに腫れちゃって……。痣とか傷もあちこちにあるし、どうしたの?」

(;´_ゝ`)「……ゴメンナサイ」

(;゚ぺ)「えっと、それはいいから……一体どうしたの」


しぃの問いかけに兄弟は顔を見合わせる。
ふむ。どうする? と互いに言葉を交わした後、弟者が口を開いた。

.

336 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/21(日) 21:12:07 ID:M.Sc.APo0


(´<_` )「いろいろあってな」

(;´_ゝ`)「待て、弟者。流石にそれじゃわからん。
      ええと、お茶飲んでたら盗賊に襲われたりして……」

(,,#゚Д゚)「何だと、俺が成敗してやる。何処でやられた、相手は何人だ!!」


兄者の言葉に、ギコは手にした槍斧を握り立ち上がる。
このまま何処かに殴りこみに行こうとでもする勢い。しかし、兄者の方は平然とした様子で言葉を続ける。


( ´_ゝ`)「盗賊はどうにかなったんだけど、その後全力で弟者と殴り合いまして」

('A`)「その結果がこれだな」

(;^ω^)「あうあう」

(,,;゚Д‐)「あー、ケンカか? 随分と派手にやりあったもんだ」

(;゚ー゚)「さすがは姉者の弟さん……ケンカはほどほどにね」


やる気を削がれた表情で再び座り込むギコとは対照的に、しぃは胸元から小さな袋を取り出す。
そして、その中からさらに奇妙な形の小さな入れ物を取り出すと、その蓋をあけた。
しぃが入れ物を傾けると、その中からは二つの丸薬が転がり出した。

.

337 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/21(日) 21:14:49 ID:M.Sc.APo0

( ´_ゝ`)+「しぃ者、それは?」

(*゚ー゚)「仙丹っていうお薬よ。大都にいる知り合いのツテで手に入れたんだけど、よく効くから飲んで」

(´<_` )「ふむ、大都というと……」


大都とは東方にある大国の名前である。
彼らが住まう砂漠の地や、西方とは違った独特の文化によって支えられた大都は、東方随一の大国として栄えている。


(´<_`;)「東の……」


しかし、弟者の脳裏に浮かんだのは華やかな大国ではなくて、別のこと。


<ヽ`∀´> (゚A゚* )


独特の訛で話す男と、少女の二人連れ――ニダーとのーの姿だ。
彼ら二人は東方特有の服を着て、このあたりではほとんど見ない武器を持っていた。
東方――と聞いて、弟者が先ほどまで戦っていた相手のことを思い浮かべたのは仕方のないことだろう。


(´<_` )「東方といえば得体のしれない物が多いと聞く、申し訳ないがそれは断らせて」

.

338 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/21(日) 21:16:27 ID:M.Sc.APo0

(;´_ゝ`)∩「だがしかし、しぃ者が出してくれたものと言ったら飲まないわけには」

Σ(´<_`;)「ちょっと待て、人の話を聞いていたのか! 露骨に怪しいだろそれ」


兄者は仙丹とかいう怪しげな丸薬を手に目をつぶる。
それには、さすがの弟者もぎょっとした表情を浮かべる。


(;>_ゝ<)∩「弟者がいらんというなら、俺が飲む!」

(´<_`;)「おいやめろ、兄者が飲むくらいなら俺が……」

⊂(#´_ゝ`)∩「とか言って、飲まないつもりだろ。お前のやりそうなことは、こっちとらわかってるんだ!」


コノー∩(#´_ゝ`)⊃∩(´<_`#)アマイッ!   (^ω^;)ヤメテ!


(;'A`) ……


(*^ー^)「ちゃんと二人分あるから、しっかり飲んでね」

ゴゴゴ:::::::(,,# Д ):::::::「ちゃんと飲めよ」


(;´_ゝ`)「……ハイ」(´<_`; )


.

339 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/21(日) 21:18:55 ID:M.Sc.APo0




\(*´_ゝ`)/「すごいぞ弟者、体が軽いしどこも痛くない」
 _,
(´<_` )「本当に大丈夫なのか、これは?」


結論から言うと、その薬はよく効いた。よく効き過ぎたとも言える。
なにしろ飲み薬だというのに痛みだけではなく、痣や、切り傷や擦り傷といった外傷までもが綺麗に治っている。
まるで魔法ではないかと、弟者は眉をしかめる。


(*^ー^)「ギコくんもよく使ってるから、大丈夫よ」

(,,*゚Д゚)b グッ

(*´_ゝ`)b「なら、安心だな!」

(*^ω^)b「安心って何かわからないけど、安心だお!」

d('A`)「じゃあ、せっかくだしオレも安心と言っておこう」

 _,
(´<_`; ).。oO(不安なことこの上ない)


何が安心なのだと弟者は思うが、しぃやギコの手前口にするのだけは我慢した。

.

340 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/21(日) 21:21:39 ID:M.Sc.APo0

(*´_ゝ`)ノシ「ギコ者もしぃ者も久しぶりー!」


ひとしきり体を見回しどこも痛くないのを確認した跡に、兄者は改めてギコとしぃに挨拶をはじめた。
弟者もそれに合わせるようにして、軽く手を挙げる。
が、それを見た兄者は腕で弟の体を軽くつついた。


( ´_ゝ`)「弟者も挨拶」

(´<_` )「した」

( ´_ゝ`)∩「してないだろ。はい弟者ー、面倒臭がってないで、ちゃんとこんにちはーして。久しぶりでもいいぞー」

(´<_` )「……コンニチハー」

(*´_ゝ`)b「よし、偉いぞ弟者!」


('A`)「これはひどい」

(,,゚Д゚)「恐ろしいまでに、感情のこもってない挨拶だったな」

(;゚ー゚)「うーん、まぁいいんじゃないかしら? って、あら?」


(*゚ー゚)      ('A`)(^ω^*)


(*゚ー゚)「あなたたちさっきからいるみたいだけど、精霊ね」

.

341 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/21(日) 21:22:45 ID:M.Sc.APo0

                      . .
(*゚ー゚)「精霊を連れているなんて、あの弟者君にしては珍しいじゃない」

(´<_` )「ほしいならやるから、こいつらを二度と俺や兄者の目につかないところに持って行ってくれ」

(*゚ー゚)「あらダメよ」


立ち話もなんだからと、お茶を用意しながらしぃは弟者に話しかける。
兄弟よりも年が上の余裕なのか。それとも、単に弟者の態度に慣れているだけなのか。
彼女は出来上がったばかりのお茶を兄弟に差し出すと、ドクオやブーンに向けて笑いかけた。


(*^ー^)「ね?」

(*'A`)ポッ

(*'A`)「……何だこの感情は……」

( ^ω^)+「これはきっと変ってやつだお」

(*'A`)「そうか、これが変か……」

( ´_ゝ`)「……変、なのか?」

(*'A`)「変……」


(´<_`; ).。oO(恋だ。この阿呆ども)

.

342 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/21(日) 21:24:44 ID:M.Sc.APo0

  _,
(,,;゚Д゚)「よりにもよって弟者が精霊ねぇ……とうとう、趣旨替えでもしたのか?」


しぃが笑いかける方角を見て首をひねりながら、ギコは言う。
どうやら彼は精霊が見えない質らしく、半信半疑といった表情を浮かべて弟者の顔を見やった。
弟者が魔法や、精霊や幻獣といったわけのわからない生物を毛嫌いしているのは、兄弟と親しい人ならだれでも知っている。
だから、なおさらギコには弟者が精霊を連れているということが信じられないようだった。


(´<_`#)「……」

(,,゚Д‐)「怒るのはいいが刀は抜くなよ。こっちも武器は振り回したくない」


ギコの手には未だ長柄の槍斧が握られている。
相も変わらず木箱の上に座り込んではいるが、いつでも動けるような姿勢が取られている。
弟者はギコの顔を無言で睨みつけると、大きくため息を付いた。


ε=(‐<_‐ )「趣旨替えなんてとんでもない。こいつらのせいで今日は散々だ」

(;´_ゝ`)「えー、でもちゃんといいこともあっただろー、弟者」

(´<_` )「どこがだ。市に行けば兄者が迷子、砂漠に出れば盗賊に出くわす。散々じゃないか」


お茶をずずっと飲みながら、兄者は「そうかー?」と、声を上げる。
しぃの入れたお茶は香草と砂糖だけで作ったさっぱりとした味だ。
うん。こいうのも美味いなと思いながら、兄者はさらに言葉を続けた。

.

343 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/21(日) 21:26:15 ID:M.Sc.APo0


(*´_ゝ`)ノ「でもいいこともあっただろ。空飛ぶ魚とか、砂クジラとか、火トカゲとかも見れた件について」

(;゚Д゚)「なんだそれ。……砂、クジラ?」

∩(´<_`#)「精霊、竜、飛ぶ透明魚に、火トカゲ、砂クジラ……
        ……たった一日でどれだけ得体のしれない生物に近づけば気が済むんだ! 兄者はアホか? 今度こそ死ぬのか!」

∩;´_ゝ`)∩三「お、弟者、怒るのは良くない。それに、殴るのはもっと良くない!」


ツネルノモ ダメェェ ('( ; ゚_ゝ゚>а(´<_`#)ムギュー


('A`)アキラメロン

(;^ω^)「あばばばば」


а(´<_`#)「兄者には反省の色というものはない様だな」

('( ; ゚_ゝ゚>「……い、いやでも。ブーンもドクオもピンクたんもダイオードもシャーミンもいい奴だぞ!
       差別イクナイ! 嫌がるのダメゼッタイ! 怖がるの反対! っていうか、地味に痛い! ヤメテ!」


なんとか弟者の頬をつねり返そうと、兄者は奮戦する。
が、その動きはわかりやすすぎるめたか、弟者に軽くかわされるだけだ。

.

344 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/21(日) 21:28:29 ID:M.Sc.APo0

(,,゚Д゚)「あー、ケンカなら外でやれよー」

(*゚−゚)「……百年周期で砂漠を回遊する、生ける神秘。
     幻想種なのか、はたまたそのように進化した生き物なのか。それは神のみぞ知る」


今にもケンカを始めそうな兄弟を止めようかどうしようか悩んでいたギコのすぐ傍らから、しぃの硬い声が上がる。
彼女は部屋に転がっていた本の1ページを開いていた。


(,,;゚Д゚)「なんだそれ」

(;゚ー゚)「……砂クジラ。マルタスニム卿の『幻想生物研究録』の記述よ」

(,,゚Д゚)「まさか、本当にいるのかそれ」


ギコはしぃの手にした本のページを覗きこむ。
そこに記された砂クジラの大きさに一瞬眉をしかめ、それからため息を付いた。


(;-Д-)「迷子に、盗賊。それに怪しげな生物がごまんと。トドメは百年周期のバケモンときた。
     あー、やっぱり双子だからかねぇ。そんなに厄介事ばっかり合うっていうのは」

(#゚ー゚)「ギコくん!」


ギコが漏らした言葉に、しぃの叱責の声が飛ぶ。
その声に暴れまわっていた兄弟の動きがピタリと止まる。

.

345 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/21(日) 21:30:14 ID:M.Sc.APo0


――双子は災いを呼ぶ。


それは様々な土地で伝わる伝承の一つである。
本来は一人で生まれるはずなのに、何らかの原因で分かたれて生まれた彼らは常に恐れられている。
人とヒトでないものの混じり物。死に近い存在。自ら命を絶った罪人の生まれ変わり。
双子についての伝説はいくつもあるが、彼ら兄弟の住まう砂漠の地ではこう言われている。


同じ胎から同時に複数生まれた子は、人間の出来損ないである。
その中でも同じ顔と性別の双子は、一つの魂が不完全にわかれた特に危険な存在。
それ故に、――速やかに殺せ、と。


双子が生まれたのならば、殺されるか、引き離して育てられるのが普通だ。
人々は双子の存在を忌避する。
だから、同じ顔の彼ら兄弟が市を歩けばそれだけで目立つ。

石板売りの店主や盗賊二人が、兄者と弟者をまるで年の離れた兄弟であるかのように話したのも当然のこと。
この地で暮らす彼らには――双子の兄弟が行動を共にしているという発想がそもそもない。

兄者も弟者も特別な事情がない限り、自らを双子だとは言わない。
そして、それは彼らの家族も同じである。


だから、兄者=流石と、弟者=流石が双子の兄弟であると知っている人間はほんの僅かしかいない。

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346 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/21(日) 21:32:56 ID:M.Sc.APo0


(´<_` )「……」

( ^ω^)「?」

('A`)「双子が? なんでだ?」


(;´_ゝ`)「……」


ドクオの問いかけに、兄者が珍しくも沈黙する。
苦い表情を浮かべたその顔は、弟者ではないかと錯覚するくらいによく似ていた。
兄者は答えない。ギコとしぃも硬い表情のまま声を上げない。その場には沈黙が流れ……、


(´<_` )「双子っていうのは不吉なんだ」


そう声を上げたのは、これまで頑としてドクオやブーンと話をしようとはしなかった弟者だった。
弟者はまるでそれが誇らしいことであるかのように、言葉を放つ。
普段よりもやや上ずったその声は、兄者のものと完全に変わらなかった。


(;'A`)「……よく意味がわからないんだが」

( ^ω^)「そうなのかお、アニジャ?」


(;´_ゝ`)「うぇー、俺その話好きじゃないんだよなー」

.

349 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/21(日) 21:36:35 ID:M.Sc.APo0


(´<_` )「だが、真実だ」


とりあえず話はしたものの、兄者の口調は珍しく歯切れが悪い。
そんな兄者に向けて、弟者はいつもどおりの淡々とした口調で言う。


(´<_` )「――そうだろう、俺?」

(  _ゝ )「……」

('∀`)「――っは、何だそれw」


弟者の視線は兄者の顔をまっすぐ見据えている。
ドクオの茶々を入れる調子の声にも、怒りの表情すら見せない。
兄者はそんな弟者の様子に声を詰まらせたが、すぐにへらぁと笑いを浮かべた。


ヾ( ; * `、ゝ´)ノシ「いーや、俺はお前じゃないぞ。
           それに不吉を呼ぶも何も、ただの迷信ではないか!」

(´<_` )「そうじゃないのは、兄者が一番知っているだろう」


(;゚ー゚)「ちょっと、ギコくん。ギコくんが余計なこと言うから」

(,,;‐Д‐)「……すまねぇ」

.

350 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/21(日) 21:38:06 ID:M.Sc.APo0


(´<_` )「同じ胎から同時に生まれた人の出来損ない。それが双子だ。
      そんなものが存在すれば、災いが起きるといわれるのは当然だろう?」

ヾ(#`_ゝ´)ノシ「いーや、そんなもんはウサンクサイ伝説だね。
          性別が違ったり、顔が違えば大丈夫なんてテキトーにもほどがあるだろ!」

(´<_` )「……兄者」


本来ならばいるはずのない、双子の兄弟。
彼らの間に流れる空気は今や、ギコやしぃが入り込めないほどに重い。
そんな彼らのやり取りの中、話に乗り遅れたブーンとドクオの声がぽつりと響いた。


( ^ω^)「さっきから言ってるそれって、二人がおんなじなのと関係あるのかお?」

('A`)「はぁ、なんだよそれ?」


ギコとしぃには聞こえないブーンの声。それは、先程から兄弟が交わす言い争いの核心をついていた。
ブーンはドクオの問いかけに、「えーと」と、わずかに口ごもった後に、今日たびたび思ってきたことを口にした。


(;^ω^)「えっと、なんだよっていわれると困っちゃうけど。
      二人は同じなんだお。顔とか、声とか、精霊を見る目と耳とか、魔力とか、それに――魂も」

(;'A`)「え? そんなはずないだろ。だって魂だぞ魂」


.

351 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/21(日) 21:40:24 ID:M.Sc.APo0

ブーンの声に、ドクオの動きが止まる。
細い目を何度も瞬かせ、それから兄者と弟者の姿を見比べる。


( ^ω^)「んー、ブーンはドクオより精霊として長いからなんとなくわかっちゃうんだお。
      魂ってのは、人を構成する上で最も大切な要素だお。だから、魂が同じっていうのは絶対に有り得ないお」


だけど、とブーンは言う。
いつもと同じ、やわらかい笑顔のままでブーンははっきりと口にした。


( ^ω^)「だけど、二人の魂は同じなんだお。同じっていうより、一つの魂?」

(;'A`)「いやいや、それこそありえない! 絶対、お前の思い違いだ。
    そりゃあ似てるとこもあるだろうが、弟者のほうが背もデカイし、毛色だって違うし、性格だって全然違う。
    そんだけ違うなら、完全に別人だろうが!!」

( ´_ゝ`)「やっぱそう思うよな、な!
      みんな気にしすぎなんだよ、ほんと!」


ドクオの勢いに、兄者がここぞとばかりにまくし立てる。
それに反論しようとして、弟者の口が何かを言いたげに開く。
しかし、彼が言葉を発するよりも早く、ブーンが心なしか落ち込んだ声で呟いた。


( ´ω`)「そうかお。……でも、ブーンは二人はおんなじだって思うんだお」

.

352 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/21(日) 21:42:27 ID:M.Sc.APo0


(´<_` )「……」

( ´ω`)「おー、どうしたおオトジャ」


弟者の手がブーンに伸びる。
兄者やドクオと同じように殴られるのではないかとブーンはその目をおもいっきり閉じる。
しかし、いつまでたっても痛みは訪れない。かわりに、柔らかい手の感触がブーンの頭に伝わる。


( ^ω−)「お」

(;゚A゚)て !


(;゚ー゚)「……え?」

(,,゚Д゚)「?」


ぽんぽんと弟者の手が、優しくブーンの頭をなでる。
その行動に、ドクオとしぃはぎょっとした表情を浮かべ、

  _,
( ´_ゝ`)


兄者は一人眉根を寄せた。

.

353 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/21(日) 21:44:25 ID:M.Sc.APo0

(,,-Д-)「……」
  _,
( ´_ゝ`)「……」

(,,゚Д゚)「……おい」


一同がそれぞれの反応を浮かべる中で、ただ一人ギコだけが状況を理解できていなかった。
ブーンとドクオの姿を見ることの出来ない彼にとっては、険悪だった兄弟が言葉を切り黙り込んだようにしか見えない。


(,,#゚Д゚)「ああ、もうこの話はやめだやめ!!
     大体、あの母者様が双子がどうのこうのなんて与太話なんぞ信じるわけがないだろうがゴルァ!!」


(;´_ゝ`)て ビクッ  Σ(゚A゚)


その場の空気に耐えられなくなったのか、ギコは立ち上がると不満をぶちまけるように声を上げた。
が、周囲の者たちの驚いた表情に気づくと、頭をかきながらバツの悪そうな声を上げた。


Б(,,;-Д-)「うっかり話を出しちまったオレもオレだが、そろいもそろって辛気くせぇ」

v(;´_ゝ`)>「そ、そうだよな、ギコ者。はっはっはー、いやぁー、まいったまいった」

(*゚−゚)「もー。ギコくんが悪いんだから、ちゃんと反省してよ」

.

354 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/21(日) 21:47:03 ID:M.Sc.APo0


(´<_` )「……」

(;^ω^)「大丈夫かおー、オトジャー」


兄者としぃが場をとりなすように明るい声を上げるが、弟者は沈黙を保ったままだ。
その様子を見て取ったブーンが声を上げるが、弟者は何も答えない。
まるで先ほどの行動などなかったかのように弟者は振舞っている。


(,,゚Д゚)「で、坊主どもは一体何しに来たんだ?
    まさか母者様や、あのクソ女のお使いって柄でもないだろ?」

(*゚−゚)「もう、ギコくん。いくら知り合いだからって、そんなふうに言うのはよくないわ」

('A`)「誰のことだ?」

(;^ω^)「ブーンにはわからんですお」


ドクオとブーンの視線が兄者に向かうが、彼は沈黙している。
兄者は薄水色の耳をしょげたように垂れさせた後、取り繕うかのように声を上げた。


(;´_ゝ`)「まあ恐ろしいことになりそうな気配の話は横に置いといてだ。
      ……ギコ者。この前、街に戻ってきた時に遺跡の話をしていただろう?」

(,,゚Д゚)「ああ、そういやぁしたな」

.

355 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/04/21(日) 21:48:48 ID:M.Sc.APo0

( ´_ゝ`)ノ「その話の中で出たとあるものだが。機会があれば持って行くといいと言っていただろ?」
 _,
(,,゚Д゚)「そんな話したか?」

( ´_ゝ`)「確かにしていたぞ! ギコ者、ほら」


そう言いながら、兄者はギコの耳元に小声で話しかける。
眉をひそめたギコの表情が次第に柔らかなものになり、兄者の言葉が終わると同時に両手を打ち付けた。


(,,*゚Д゚)「やけにもったいぶった言い方をするから、何かと思えば。
     いいぞ、案内してやるからじゃんじゃん持っていってくれ」

(;゚ー゚)「ちょっと、あまり勝手なことをするのは……」


ボソボソ(,,゚Д゚k(*゚ー゚)!


(*^ー^)「あら、そういうことだったのね。
     いいわ、私の方からも神殿の探索許可を出すから行ってきてちょうだい」


ギコが耳打ちで伝えてきた言葉に、しぃは小さな笑い声を上げた。
本当はいちいち許可なんていらないんだけどね、といたずらっぽく笑いながらしぃは責任者らしく許可をだした。


( ´_ゝ`)o彡゜「流石はしぃ者、話がわかる」

.

356 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/21(日) 21:50:36 ID:M.Sc.APo0

(*^ワ^)「ちゃんと見つかるといいわね」

( ´_ゝ`)b「任せておけ!」


兄者が親指を立てて、しぃに笑いかける。
そのやりとりをずっと無言で眺めていた弟者は、会話が終わりと見るとようやく声を上げた。


(´<_` )「……よくわからないが、どうやら話がまとまったようだな」

( ^ω^)b「そうみたいだお」

('A`*)「しぃさんの笑顔……すばらしぃ」


ギコは槍斧の柄を肩で支えると、そのまま出入り口へ向かい歩き出す。
「もう行くの?」というしぃの問いかけに、「ああ」と短く答えると、ギコは敷物の上で座り込んでいる兄弟を見やった。
ギコの動きに兄者は慌てて残っていた茶を飲み干し、弟者は出されていた茶菓子の残りをたくしへと放り込む。


(,,゚Д゚)∩「よし、行くぞ坊主ども……と、精霊だったか?」

( ^ω^)∩「そうだお! ブーンは精霊だお!」

('A`)「こうやって数に入れてもらえるのはいいもんだな……」


(,,^Д^)「とっておきの場所に案内してやる!」

.

357 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/21(日) 21:52:45 ID:M.Sc.APo0

――――――――――――――――
―――――――――――――――
――――――――――――――
――――――――――――



(;´_ゝ`)「とっておきとは聞いてはいたが……」

(´<_`;)「まさか、この中だと言うのではないだろうな」


(,,゚Д゚)「いいや、これがそのとっておきの場所だ。
     しぃも言っていただろ、神殿の探索許可を出すってな」


しぃと別れ、ギコの後について進んだ先。
目の前にそびえ立つ白い建物の姿に、兄弟たちは言葉を失った。
“流石”の街からも見ることのできるそれは、ソーサク遺跡においてもっとも大きく、象徴的な建物であった。


(*^ω^)「あ、さっき近くを通ったとこだお!」

('A`)「一体なんなんだろうなぁ、これは……」


太陽の日差しをうけてまばゆく輝く白い外壁は、“流石”の街を取り囲む城壁よりもはるかに高い。
東方とも西方とも、もちろん“流石”の街で見かけるどの建物とも違う独特の造り。
建物の正面と思しき場所からは、大階段がまっすぐ地上へ向けて伸びている。

.

358 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/21(日) 21:54:26 ID:M.Sc.APo0


(,,゚Д゚)「ソーサク遺跡郡、第一史跡。オレたちは単純に神殿と呼んでいる」


ギコはその大階段を慣れた調子で上がっていく。
古く見えるもののしっかりとした造りらしく、ギコの体重がかかっても、びくともしない。
ギコの後ろをドクオを肩にのせた兄者と、ブーンが続く。


(´<_` )「ここが神殿?」

(,,゚Д‐)「そう呼んでるってだけで、実際のところはわからねぇ。
     しぃが言うには魔王時代よりもずっと前の宗教施設か何かじゃないかって話だが、詳しいことはまだこれからだな」

( ´_ゝ`)「ふむ。魔王時代よりも前となぁ……」


白い石造りの建物は古くはあるものの、兄者の目にはそれほど昔の建物に見えない。
柱も階段も壁面も、崩れ落ちているところは殆ど無い。
目を凝らしてみると、白いばかりに見えた壁には蔦と動物の浮き彫りが施されているのが見えた。


( ^ω^)「その頃ならたぶん、ブーンはいたお……」

('A`)「魔王時代って魔王のやつがいた時代か?
   ……それより前だと、オレはまだ存在もしないぜ」

(;´_ゝ`)「おお、ブーン者。お前はなんと長生きなのだ……」

.

359 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/21(日) 21:55:50 ID:M.Sc.APo0


(,,-Д-)「何だか話し中のようだが、言い忘れてたから改めていうぜ」


階段を登り切った先。
柱と柱にはさまれた入り口らしき空間で、一足先を進んでいたギコが振り返る。


( ´_ゝ`)「ん、どうしたギコ者?」

(´<_` )「何か問題でも?」

(,,゚Д‐)「いいや、別にそう大したことじゃねぇから安心しろ」


強い日差しと石材の作り出す影に阻まれて、その内部は上手く見通せない。
しかし、その内部には彼らが見たことのない光景が広がっているのだろう。
それは兄者にとって。いや、弟者やブーンたちにとっても心躍らせるものに間違いなかった。


(,,゚Д゚)「――ようこそ、ソーサク遺跡へ」


青い尻尾を器用に動かしながら、白い歯を見せてギコは笑う。
兄弟はそれに一瞬、顔を見合わせると大きく吹き出した。


(´<_` )「ああ、それを言い忘れていては大変だ」

(*´_ゝ`)b「改めて頼むぞ、ギコ者」


旅に出ようと兄者が言い出してから、二刻と半分ほど。
――ついに彼らはソーサク遺跡の中心部へと足を踏み入れたのだった。

.

360 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/04/21(日) 21:56:49 ID:M.Sc.APo0


そのご。  ようこそ、ソーサク遺跡へ



おしまい

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