■2012年芸術の秋ラノベ祭りのようです
└( ´_ゝ`)デザート×キャラバンのようです(´<_` )
└そのよん
- 185 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/03/17(日) 21:59:45 ID:T2xLTBNg0
ラクダは砂丘を疾駆する。
こいつらどうしてこんなにも早いんだと嘆くと、兄者はラクダの首にしがみついていた顔をなんとか上げた。
ブーンが魔力を使う気配が先ほどからない。ひょっとしたらこれは――と、兄者は考える。
(;´_ゝ`)「ブーン、攻撃の方は?!」
(^ω^;)「もう何も飛んでこないお」
弟者はどうやら、あの盗賊の元へと到達したらしい。
ここからでは確認することができないが、弟者のことだから戦っているのかもしれない。
( ´_ゝ`)「……とりあえずは、ひとあ、あんしししっ」
( ;゚_ゝ゚)そ「……やばっ」
ぐらりと体が大きくゆれる感覚がして、兄者はラクダ――荒巻の首に回した手に力を込める。
荒巻たちの暴走を止めないことには、ろくに話も出来ないらしい。
兄者はあいも変わらずラクダの首にしがみつきながらも、顔だけをブーンへと向けた。
(;´_ゝ`)「ブーン。中嶋を任せられるか?」
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- 186 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/03/17(日) 22:00:46 ID:T2xLTBNg0
( ´_ゝ`)デザート×キャラバンのようです(´<_` )
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- 187 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/03/17(日) 22:01:46 ID:T2xLTBNg0
そのよん。 人生とは戦いの連続である
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- 188 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/17(日) 22:03:59 ID:T2xLTBNg0
(;^ω^)「お? でも、ブーンは」
砂漠を疾走するラクダが二頭。
その内の一頭に乗った兄者に見据えられて、ブーンは戸惑ったような表情を浮かべた。
( ´_ゝ`)「精霊のお前なら、動物と話せるだろ。
正直、俺一人じゃ荒巻と中嶋は抑えられない……ってうへぇあ!」
兄者はブーンにそう訴えかけると、体のバランスを崩したようだった。
「もう死ぬ、ぜったいに死ぬぅー」と叫びながら、彼は荒巻の鞍にのった足に力を込める。
ラクダの背に乗り続けてるだけも、すでに必死なこの状況。兄者が弟者のラクダの手綱を手に持ち続けるのはそろそろ限界の様だった。
(;^ω^)「わかった、やるお」
( ´_ゝ`)b「流石だよな、ブーン。これで安心だー」
(; ゚ω゚)「手を話しちゃ危ないお、アニジャ!」
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- 189 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/17(日) 22:05:40 ID:T2xLTBNg0
兄者の手から手綱を受け取ると、ブーンは中嶋の耳元に近づく。
それから、彼もしくは彼女が怯えないようにほんの少しだけ魔力を込めると、ブーンは口を開いた。
( ^ω^)「もう《大丈夫》だお」
《大丈夫》、という音の響きに中嶋の低い唸り声が止まる。
ささやかながらも込められた魔力は、発せられた言葉をほんの少しだけ真実にする。
ブーンの口にした言葉は、中嶋を安心させるためのごく弱い暗示となって響く。
ブーンの使ったそれは、ほんの小さな魔法だった。
( ^ω^)ノシ「もう大丈夫だおー、ナカジマ。
石も飛んでこないし、安心だおー」
ブーンの小さな手が、中嶋の耳の後ろを撫でる。
羽を動かしながら飛び、中嶋の首筋をさすり話しかけていく。
( ^ω^)「ナカジマー、もう怖くないお」
怖くないという言葉の意味は、ブーンにはよくわからない。
それでも、こういう時は怖いって思うものなのだと遠い昔のブーンは知っていたような気がする。
かれこれ400年くらい前だろうか。兄者や弟者どころか、“流石”の街が生まれるよりもはるかに前のことである。
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- 190 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/17(日) 22:08:15 ID:T2xLTBNg0
( ^ω^)「だから、もう落ち着くお」
あのころ自分にあった感情はどこへ行ってしまったのだろう。と、ブーンは考える。
ブーンはこの400年何も変わっていないはずなのに、いつの間にか随分とわからないことが増えてしまった。
(*^ω^)「お?」
そんな思いをはせていたブーンの横で、中嶋の足が止まる。
大きなまつ毛を瞬かせながら、中嶋はブーンに顔を寄せた。
( ^ω^)「どうしたんだお?」
中嶋はその首をブーンにこすりつける。
その動きはまるでブーンを慰めているかのようだった。が、ブーンはそれに気づかない。
(;^ω^)「お、ブーンは食べ物じゃないお」
中嶋のごわごわとした毛の感触を感じながら、ブーンはラクダにかじられていたドクオの姿を思い出す。
そして、ドクオのようにかじられないといいなぁと、呑気なことを考えるのであった。
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- 191 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/17(日) 22:10:04 ID:T2xLTBNg0
(;^ω^)「ナカジマー、もういいかお?」
中嶋に首をこすりつけられた状況のまま、動けなくなっていたブーンの耳が聞き慣れた声を捉えた。
その声の主は……と、ちょっと考えこんでから、兄者の声かなとブーンは判断する。
“流石”の街の双子たちは、見た目以外で見分けようとするとかなり難しい。
なにしろ違いと言ったら、声の高さがほんの少し違うだけ。
声質も、精霊を見る眼も、魔力を感じ取った時の反応も、おそらく魔力も。そして、何より人を構成する上で最も大切な要素までも同じだ。
見た目が違うのが不思議に思えるほど、あの双子は同じ存在なのだ――と、ブーンは思っている。
(;´_ゝ`)ノシ「おい、ブーン!!!」
ヾ( ^ω^)ノシ「やっぱり、アニジャだお!」
……ブーンの予想の通り、姿を現したのは兄者だった。
そもそも状況から言っても兄者が来るほうが自然なのだが、ブーンは予想が当たったことが楽しいと思ったらしい。
中嶋の周囲を勢い良く飛び回りながら、ブーンは両腕を振った。
(;´_ゝ`)「今からそっち行くから、ちょっと待ってろ」
(*^ω^)「わかったお!」
砂丘の影からひょっこりと姿を表した兄者は、機嫌の悪そうな荒巻を引き連れていた。
兄者は荒巻とともにブーンのもとへと駆け出そうとして、――おもいっきり転んだ。
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- 192 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/17(日) 22:12:35 ID:T2xLTBNg0
(;^ω^)「あちゃー」
思わずその場で跳ねあがって、ブーンは兄者の様子を見守る。
兄者は苦笑いをしながら立ち上がると、荒巻の手綱を引き走りだそうとして――、ふたたび転んだ。
(; ^ω^)「大丈夫かおー?」
( ´_ゝ`)「あー、平気平気ー」
兄者は取り立てて慌てた様子もなく立ち上がると、砂を払う。
そして、同じ調子で歩き出したが、その動きはどことなくふらふらしており一歩踏み出すたびによろけている。
それでも、兄者は荒巻の手綱を手放さずに進み――、三度目の転倒をした。
(; ^ω^)「アニジャは歩いてるのかお? それとも転んでるのかお?」
( ´_ゝ`)「一応、全力疾走のつもりなのだが。……砂か、砂がいかんのか?!」
(;^ω^)「おー」
「そんな目で見るなー」と荒巻の手綱を持っていない方の手をふりながら、兄者は訴える。
そして彼のそんな動きに、荒巻は不機嫌そうにうなり声をあげた。
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- 193 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/17(日) 22:14:17 ID:T2xLTBNg0
(;´_ゝ`)「……仕方ないだろう。運動と名のつく能力の大半は弟者が持ってるんだから」
それからまた数回ほど転び、ぜいぜいと息を乱しながら、兄者はブーンと中嶋の元へと到着した。
荒巻にやられたのか、頭に被った飾り布の布地がよだれでべったりと光っている。
そして、ブーンと再会した途端、兄者は意味不明な泣き言を並べ立て始めた。
( ;_ゝ;)「あー、お兄ちゃん悲しいー
お兄ちゃんにはもうかっこいいとこくらいしか残ってないわー」
( ^ω^)「大丈夫だお。アニジャはかっこいいだけじゃなくて、とっても楽しいお!」
( ´_ゝ`)「ブーン」
( ^ω^)「アニジャ」
ナカヨシー(*´_ゝ`)人(^ω^*)ナカヨシー
ドクオか弟者がいたならば確実に口を挟んだであろうが、この場には残念ながら二人ともいなかった。
兄者とブーンは互いに手を取り友情を深めると、これまで来た道を振り返った。
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- 194 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/17(日) 22:19:23 ID:T2xLTBNg0
(;^ω^)「オトジャは大丈夫かお」
( ´_ゝ`)「弟者がやられることはないとは、思うが……」
ブーンの言葉に、兄者は目を閉じ黙りこむ。
普段賑やかな兄者が急に黙りこむと、ブーンはとたんに胸がざわざわとする。
そんな心境の変化にびっくりとして、ブーンはあわてて兄者の飾り布をひっぱった。
( ´_ゝ`)「どうした、ブーン?」
(;^ω^)「えーと、あと」
( ´_ゝ`)「落ち着かないのか?」
( ^ω^)「おちつかない」
兄者の言葉にブーンはきょとんとした顔を見せた。
しかし、その顔はすべて満面の笑みに変わる。
何が原因であるかはわからないが、兄者の言葉はブーンにとってどうやら嬉しいものであったらしい。
(*^ω^)「たぶん、ブーンは落ち着かないってやつなんだお!」
( ´_ゝ`)「おお、そうかそうか」
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- 195 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/17(日) 22:20:20 ID:T2xLTBNg0
そして、兄者は再び目を閉じた。
しばらく黙り込んだ後に、「んーどうしようかなー神様ー仏様ー母者様ー」などとつぶやいてから目を開く。
そして、うんと頷くと兄者は腕を上げた。
( ´_ゝ`)ノ「よし、戻ろう!」
( ^ω^)「戻るのかお?」
( ´_ゝ`)「今のところ怪我はしてないみたいだが、あいつにしては苦戦しているみたいだ」
( ^ω^)「そう、なのかお?」
兄者はどうやら自信満々のようだが、ブーンにはその理由がよくわからない。
ブーンの目ではここから離れてしまった場所にいる弟者の姿は見えない。
でも、兄者が言うのならばそうなのだろうと、とりあえずブーンは納得することにする。
( ´_ゝ`)「正直、俺が行ったところで足手まといにしかならんが。
まあ、お出迎えがきたほうがあいつも嬉しかろう。多分、きっと、そうだといいなぁ」
(;^ω^)「それ、本当かお?」
(;´_ゝ`)ノシ「いや、別に今、適当にでっち上げたとかそんなことはないからな! な!」
( ^ω^)「それならいいおー」
ここにドクオがいたのならば、「そんなわけねぇだろ」とでも言い出しただろうが、残念ながら彼は未だ行方不明のままだ。
どうみても兄者の態度は不審なのだが、ブーンはニコニコとした表情で納得している。
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- 196 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/17(日) 22:21:17 ID:T2xLTBNg0
(;´_ゝ`)ゝ「だいぶ弟者から、離れてしまったようだな」
足元の砂を踏みしめて、兄者は周囲を見回す。
これまで荒巻に乗ることに必死でわからなかったが、どうやらいつの間にやら本格的な砂丘地帯に突入してしまったらしい。
先程まで転がっていた岩たちは姿を消し、周囲には太陽の光に輝く砂ばかりが広がっている。
( ^ω^)つ「おー。でも、ずっとまっすぐに進んできたからすぐに戻れるお」
(;´_ゝ`)ゝ「ふむ。まっすぐか……」
ブーンの指差す方向を見て、兄者はため息をつく。
見るからに越えるのが大変そうな、巨大な砂丘。その砂で形作られた山の上に、荒巻たちの足跡が残っている。
一瞬、回り道はないものかと思ったが、そうすると道に迷ってしまいそうなので、兄者は諦めることにした。
( ´_ゝ`)「がんばれ、荒巻。今の俺達には君が頼りだ。
ブーン、このまま中嶋のことを頼めるか?」
(*^ω^)「了解だお! ナカジマ、ブーンたちを頼むおー」
兄者の声に荒巻は低い唸りをあげ嫌がり、中嶋はおとなしく首を縦にふり答える。
ラクダたちの足は下が砂地でも関係ないのか、目の前の山にも怯むこともない。
荒巻の高い背に乗っても、視界を塞ぐ砂丘にため息をつきながら、兄者は荒巻の足を進めていく。
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- 197 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/17(日) 22:22:43 ID:T2xLTBNg0
( ´_ゝ`)ゝ「んー、弟者はどこだー」
( ^ω^)ゝ「んー、もいっこくらい砂丘を超えなきゃいけないみたいだお?」
片手を目の上に軽く上げながら兄者がつぶやくと、中嶋の手綱を握ったまま飛んでいたブーンが答えた。
その言葉に兄者は「あーあ」と嘆くと、がくりと首を落とす。
(;´_ゝ`)「うえー、どんだけ走ったんだよ荒巻ぃー、中嶋ぁー」
(;^ω^)「むー、ナカジマもアラマキも怖かったんだから仕方がないお」
( ´_ゝ`)「……怖いねぇ」
「お」と表情を変えてブーンの姿を見やった兄者の表情が、ふと変わる。
荒巻と中嶋が登りはじめた砂丘。
その砂丘の一角。彼らが目指す方向とは少しずれたところに、一瞬鮮やかな色彩が見えた……ような気がする。
( ´_ゝ`)σ「ブーン、ちょっと待て。こっちこっち!」
( ^ω^)「どうしたお?」
( ´_ゝ`)σ「なんか、なんか見えた!」
_,
( ^ω^)「おー」
.
- 198 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/17(日) 22:24:08 ID:T2xLTBNg0
( ^ω^)「なにも見えんお」
(;´_ゝ`)σ「いや、いるし!」
兄者は荒巻の手綱を引っ張ると、荒巻の進む方向を変える。
そのまま手綱を操って、先ほど何か色が見えた方に進んでいく。
( ´_ゝ`)「ほら、見ろ」
(;^ω^)「そう言われれば……」
砂丘の尾根の向こうには、さきほどまで彼らが休憩していたのと同じ荒野が見える。
それを望むようにして、人一人をすっぽりと覆えるような赤い布が広がっている。
そして、その下には何やら人らしき影……。それは、もう露骨に怪しいといわんばかりの光景だった。
( ´_ゝ`)σ「ブーン、行くぞ!」
(;^ω^)「え? 行くのかお?」
ブーンは戸惑った顔を浮かべるが、兄者は荒巻の速度上げ一人突き進む。
その姿を見て、ブーンは慌てて中嶋の耳元によると、兄者の後を追いかけるようにお願いする。
( ^ω^)「というわけで、お願いしますおナカジマ」
ブーンの声に中嶋は、優しい鳴き声で答えた。
.
- 199 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/17(日) 22:26:11 ID:T2xLTBNg0
( ´_ゝ`)「おい、そこの布っ!」
兄者の声に、地に横たわっていた赤い布は――いや、その下にいる人物はびくりと震えた。
赤い布がもぞりと動くと、その下にいる何者かが体を起こす気配がした。
(;´_ゝ`)「そ、そちらにいらっしゃるのはどなたでしょうか?
あ、俺そんなに怪しいものじゃないですよ。兄者といいまして」
( A * )「……」
布の下に誰かがいると思っていなかったのか、それとも話しかけた後のことは考えていなかったのか……。
兄者は威勢よく掛け声をかけたわりには、弱気な態度で布の下にいた何者かに話しかけた。
(゚A゚* )「――あ」
( ;゚_ゝ゚)「へ?」
赤い布が落ちる。
そこにいたのは、妹者よりも少し大きいくらいの年頃の少女だった。
赤と白、そして黄を基調とした東方の服。
驚いたように目を見開いた顔には大きな猫の耳。よくみれば、その耳には赤い花をかたどった飾りをつけている。
薄紫色の毛並みに長い尾の、猫のような少女がそこにいた。
.
- 200 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/17(日) 22:28:04 ID:T2xLTBNg0
(; ゚_ゝ゚)「……」
どうして、子供がこんな所に……。しかも、たったの一人で。
兄者は呆然と少女の顔を見つめる。
キンッ
混乱して何も言えない彼の耳がぴくりと動き、かすかに金属音を拾う。
最初に脳裏に閃いたのは、弟の名前。
それから、先ほどの音が剣戟の音であるということに兄者は気づく。
(゚A゚* )「……あの」
状況は確認できないが、弟者とあの盗賊はまだ戦っている。
下手をしたら、ここが戦場になる可能性も高い。
(;´_ゝ`)「そこのお嬢ちゃん! ここは危ないぞ!!」
(゚A゚* )「へ、え?」
.
- 201 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/17(日) 22:30:08 ID:T2xLTBNg0
(;^ω^)「アニジャーっ、大丈夫かお?」
(;´_ゝ`)「俺は大丈夫だが……」
追いついてきたブーンと中嶋の姿を振り返り、兄者は何か思いついたのかはっとした表情を浮かべる。
ブーンたちの姿と自らが乗る荒巻の姿を交互に見比べ、それから兄者は少女を見つめた。
視線を受けた少女の表情が固まっていく。その様子を見て取って、兄者はその表情を笑みに変える。
少女が怯えないように、兄者は笑顔を浮かべたまま、できうる限りの優しい声で話しかけた。
(*´_ゝ`)「お嬢ちゃん。ちょっとの間、俺と一緒に来てもらってもいいか?」
(゚A゚; )「あの……」
_,
(*´_ゝ`)「さっきも言ったけど、今ちょーっとだけ、ここは危ないんだ。
ほんとーぉに申し訳ないんだが、ちょっとだけ。ちょっとだけだから、ね?」
どう見ても不審者丸出しの言葉。
しかし、兄者の名誉のために言うならば、彼は年端の行かない少女に欲情する趣味は持っていない。
単に、真剣を持った男二人がすぐ近くにいるような場所に、幼い子供が一人でいることを嫌っただけである。
( ´_ゝ`)「ブーン、いけるか?」
(;^ω^)「はへ?」
( ´_ゝ`)σ「あの子を荒巻に乗っけてやってくれないか?
俺の鞍の前の方に乗せるから、ちょっと頼むわ」
.
- 202 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/17(日) 22:32:12 ID:T2xLTBNg0
少女の周りには同行者の姿はおろか、乗り物姿さえも見えない。
兄者とて砂漠の民であるから、その不自然さは十分理解している。
しかし、それでも彼はこの場に少女を放置することを選ばなかった。
( ^ω^)b「まかせるお!」
(゚A゚; )「え? あ、どないしはったんです?」
少女はこのあたりではほとんど聞かない言葉遣いで言った。
東の大都よりも、はるかに東。東の果ての島で使われるのに近い言葉。しかし、そのことを兄者は知らない。
ただ、この少女は随分と遠くから来たのだなぁとだけ兄者は理解する。
(;´_ゝ`)「緊急事態だ。しばらくの間我慢してくれ」
( ^ω^)つ 《飛ぶお》
ブーンの手が動き、言葉ともとれない奇妙な音が兄者の耳に響く。
魔力を感じ取るとき特有の肌がぞわぞわと粟立つ感触は、兄者にとってどうにも慣れない。
弟者が魔法を好まないのは、この体質も影響しているのではないかと兄者は思う。
((゚A゚; )「え、や。何?」
( ´_ゝ`)「おっと、余計なことを考えている場合ではなかったな」
.
- 203 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/17(日) 22:34:20 ID:T2xLTBNg0
兄者はその場からふわりと“飛んだ”少女の体を抱きとめると、自分の座る鞍の前の方に座るようにと誘導する。
少女の体は見た目よりもはるかに華奢で、力のほとんどない兄者でもどうにかなるくらいだった。
( ^ω^)「これでいいのかお?」
( ´_ゝ`)b「流石だな、ブーン。まさに完璧な仕事ぶりだ」
(゚A゚; )「えと、あの」
少女は兄者の手から離れて地面に降りようとして、荒巻の背の高さに怖気づいたようだった。
ラクダという生き物は、大人の男よりも背が高い。
その鞍の上となると体の小さな少女では、なかなか逃げられない。
( ´_ゝ`)「ここは今、盗賊と“流石”の自警団員が戦っていて危険だ。
あのままあそこにいたら、巻き込まれる可能性が高い」
(゚A゚* )「……」
( ´_ゝ`)「だから、お嬢ちゃんの身柄は俺が一時的に保護させてもらう。
まあ、ここは街でもないし、俺は弟者じゃないからそんな権限なんてないんだけどな」
_,
( ^ω^)「アニジャが難しいこと言ってるお」
(*´_ゝ`)ノ「え? 俺って、超かっこいい? 照れるじゃないか!」
.
- 204 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/17(日) 22:36:03 ID:T2xLTBNg0
少女は兄者の言葉になにやら考え込んでいるようだった。
胸の前でぎゅっと小さな手を握り、兄者に問いかけた。
(゚A゚; )「えと、お兄さんはその、エライ人なん?」
( ´_ゝ`)「いやー、俺は別に偉くないけどね。
でも、妹がいるから、こんなところで女の子が一人なのはほっとけないみたいな感じで」
ヾ( ^ω^)ノシ「オトジャのほうが多分エライおー」
ヽ(;´_ゝ`)ノ コノ ウラギリ モノー ワーヾ(^ω^*)ノシ
少女はぎゅっと目を閉じる。
そして、砂丘の向こうの方向をじっと見てから、口を開いた。
(゚A゚* )「……その、ちょっとの間お世話かけます」
(*´_ゝ`)b「俺は兄者=流石。しばらくのあいだよろしくなー」
( ^ω^)∩「ブーンはブーンだお!」
彼らの挨拶に、少女はこくりと頷く。
……しかし、彼女は自らの名前を名乗ろうとはしなかった。
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- 205 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/17(日) 22:38:13 ID:T2xLTBNg0
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<*ヽ`∀´>「ウェーハハハハハ! 千載一遇の好機!」
男が振り上げた青龍刀に力を込める。
それが目に入っているというのに、弟者は男にへと突っ込んでいく。
( <_ )つ==|ニニニ二フ
大地を踏みしめる足は、人の速さを超え――。
一撃を加えた時よりも、男が武器を振り下ろすよりも、はるかに速く。
弟者は瞬く間に男の真横を通り過ぎると、すれ違いざまにその腹を撫で切った。
<;ヽ`∀´>「……くっ」
男の口から苦痛のうめきがあがるが、弟者は立ち止まらない。
青龍刀の間合いから完全に外れる場所まで来たところで、弟者はようやく振り返ると立ち止まった。
.
- 206 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/17(日) 22:40:10 ID:T2xLTBNg0
(´<_` ).。oO(やはり、斬りつけても攻撃は通らない。か)
男との間の距離を図りながら、弟者は思考する。
男の長衣はどれだけ観察しても腹にあたる部分に血の染みどころか、傷ひとつない。
先ほどと同じ。確かに攻撃が通った感触があったというのに、切り裂かれた形跡はどこにもない。
( <_ ).。oO(魔道具か、もしくは魔法か。服だけじゃなく身体の強化もしているな)
弟者は奥歯を噛み締め、自分を抑えこむ。
今は激情に流されている場合ではない。ここで仕損じては、俺に危害が及ぶ。
弟者は、男の姿を見据えると口を開く。
<;ヽ`∀´>「い、一世一代の攻撃だったようだが、ウリには無駄だったようニダね」
(´<_` )「は、どうだか」
<#ヽ`∀´>「な、う、ウリは東の大陸の果てにある全ての起源の大国でも名のしれた男ニダ!
お前らみたいな有象無象のへなちょこ野郎とは違うニダ!」
男の顔色が赤くなるのと見て取ると、弟者は口元に笑みを浮かべる。
口の端を吊り上げ、しかし視線は相手を見下したまま。感情を乗せない平坦な声を出す。
(´<_,` )「ふーん。で?」
.
- 207 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/17(日) 22:42:06 ID:T2xLTBNg0
その言葉の効果は劇的だった。
男の赤くなった顔が一瞬白くなり、それからすぐに怒りで沸騰する。
(´<_` )「その有象無象のへなちょこ野郎相手に、何もできないのは誰か。
そうだな。小一時間ほど問い詰めたいものだな。一体何処の誰が、そんなマヌケなことをするのかと」
<#`∀´> >「――なっ」
(´<_`*)「まったく、ド低能にもほどがある」
声を上げて笑いながらも、弟者の目は男との距離を測り続ける。
そして、掲げた曲刀を鞘に戻すと、やれやれと肩をすくめて見せた。
(´<_,`*)「お前さんのご立派な国とやらの程度が知れるな」
<#ヽ ∀ >「もう許さんニダぁぁぁぁぁ!!!!」
男は青竜刀を頭上に掲げると、弟者に向けて走りだす。
一歩、二歩、三歩。
間合いに入ると同時に振り下ろされる刀を、弟者は後ろに下がって避ける。
<#ヽ゚∀゚>「絶対に殺すっ!!!」
.
- 208 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/17(日) 22:44:07 ID:T2xLTBNg0
そして、繰り出される右からの二撃目と、返す刀での三撃目。
( <_ )「……っ」
弟者の曲刀は鞘にしまわれている。
その無防備きわまりない状態のままで男の二つの攻撃を、後ろへと下がりながら回避していく。
一撃でもかすれば、おそらく最後。
そのギリギリの状況に弟者の頭からは血の気が失せ、息が上手くつけなくなる。
それでも、彼は余裕の表情だけは決して崩そうとしない。
<#ヽ゚∀゚>「これで最後ニダっ!!!」
(´<_` )「当たらん」
再び上段、めいいっぱいの力を込めて男の青竜刀が振り上げられる。
その攻撃を回避できる距離まで、弟者は渾身の力を込めると後ろへ跳ぶ。
着地。
それとほぼ同時に、体を反転。
男の攻撃の行く末は確認せずに、そのまま足に力を込める。
(´<_` )「お前では俺に追いつくことなど、出来ないからな」
<#ヽ ∀ > >「ぐぅぅ」
.
- 209 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/17(日) 22:46:24 ID:T2xLTBNg0
踏み出した足が、砂の感触を伝える。
ひび割れた大地が、砂だけで満ちた砂丘へと姿を変えていく。
<#ヽ゚∀゚> >「ぜったいに、逃がさんニダ!!!」
(´<_` )「いくらでも吠えろ、下衆が」
そして、砂を踏むじゃりりという音と、ぶんっという刀を振るう音。
その音を耳に捉えながら、弟者は砂塵を再び駆けはじめる。
<#ヽ゚∀゚>「待てぇぇぇぇ!!!!」
走りだした弟者の背を狙わんと駆ける、男の姿。
それを確認して、弟者は確信する。
――かかった。
男が追いつけそうで追いつけない、ギリギリの速さを見極めながら走る。
速すぎてもいけないし、遅すぎても命が無い。
命をかけた鬼ごっこなど、とても笑えたものじゃないな――この状況下なのにそんな軽口を思いつく自分に、弟者は呆れる。
.
- 210 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/17(日) 22:48:36 ID:T2xLTBNg0
息はつける。
頭の血の巡りも、今はもう良好。
あとは、最後の詰めでしくじらないだけ。
(´<_` )「そこで待つマヌケがいるか」
首元に手を伸ばす。
指に伝わるのは金属の感触。
気取られぬように細心の注意を払いながら、指を動かしその留め金を外す。
<#ヽ゚∀゚>「信賞必罰、とっととウリに首を差し出すニダァァァァ!!!」
やがて視界に広がりはじめる砂の丘。
弟者はそれをためらうこと無く、駆け上がる。
踏みしめるはじから崩れ落ちていく砂山を、弟者はこともなげに駆け登っていく。
<#ヽ゚∀゚>「ウリがこれくらいで力尽きるかと思ったニダ?!」
それから、少し遅れて男が砂の丘を駆け上がる。
足にも砂が絡みつくが、男の頭の中には弟者をしとめることしか残っていない。
素足に直接履かれた靴に、熱せられた砂が入り込むがそれにすら男は気づかない。
――そして、
.
- 211 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/17(日) 22:50:09 ID:T2xLTBNg0
顔を上げた男の目にうつったのは、一面の薄紫。
夕暮れの終わりに広がる空の色。しかし、当然のことながら今は夕方ではない。
――だとしたら、これは一体……。
……その時、男は完全に不意をつかれていた。
だから、その色彩が弟者の身に着けていたマントの色だと気づけなかったのは仕方のないことだった。
<;ヽ ∀ >「……くっ」
しかし、それでも男はマントの向こうから迫り来る何か――弟者の曲刀を、振り回した手でかろうじて受け止めた。
男の体に働く不可思議な作用は、不意打ちの攻撃でも刃を通さない。
男の体も、服も先程までと変わらず。切り裂かれた様子は一切ない。しかし、それでも痛みまでは完全に消せない。
<;ヽ ∀ >「――っ、たいニダ!」
バサリと音を立て男の顔にマントが落ちる。
男は痛みに顔を歪めながら布を顔からどけようとして、
何かに、足を
とられ、
――地に倒れ込んでいた。
.
- 212 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/17(日) 22:52:46 ID:T2xLTBNg0
下が砂地であるため、男の体にさほどのダメージはない。
<;ヽ`∀´>「――っ!?」
しかし、それでも彼には何が起きているのか、理解できない。
ただ、自分が地に倒れ伏しているという事実に男は狼狽し。
(´<_` )「お前のそれは刃は防げても、衝撃までは殺せない」
声と、
己の上へと落下してくる弟者の姿を見た――
(´<_` )「それに気づかなかった時点で、お前の負けだ」
衝撃。
痛いのかすらわからなくなるほどの振動と熱とともに視界が一気に狭くなる。
チカチカとする光、消えた音、吸えない息……男はなんとか息を吸おうと口を開き、
……それっきり意識は完全に途絶えた。
.
- 213 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/17(日) 22:54:20 ID:T2xLTBNg0
(´<_` )「……」
弟者は立ち上がると、動かなくなった男の顔を踏みつけた。
気絶したらしく、男が反応する様子はない。
それを確認すると、弟者は一息ついてから未だしびれる右腕を振った。
(´<_`;)「……ふぅ」
砂の丘に落ちたマントと、それを留めていた金具を見やる。
そして、小さくため息を付いた。
(‐<_‐;)「かろうじて及第点といったところか」
マントで視界を覆った上での、曲刀による不意打ち。
攻撃が通らないとわかった上で放ったそれは、あくまでも本命を隠すための目眩まし。
――本命は、足払い。
ここは慣れぬ者であれば、砂地に足を取られすぐに立ち上がることはできない。
この上ないほどに単純な手だが上手くはまった場合、その効果は馬鹿にできない。
そして、倒れこんだ男へと向かい、弟者は砂地へと飛び込むようにしながら肘打ちを放ったのだ。
.
- 214 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/17(日) 22:56:36 ID:T2xLTBNg0
l从・∀・ノ!リ人「ちっちゃい兄者、みっけなのじゃ!」
(´<_` ;)「――ぐぇ」
弟者は、今朝方の妹者とのやりとりを思い出す。
あの時の妹者は、突然弟者の体へと飛び込んできた。
子供一人の体重が不意に掛けられただけでも、彼は痛みにうめき声をあげたのだ。
同じ不意打ちの状況で、弟者の全体重と落下の勢いが加わった攻撃を受けた男はどうだったのか。
その結果は、ご覧のとおり。どれだけ不思議な力で身を守ろうと、その衝撃だけで意識が綺麗に刈り取られている。
(´<_` ).。oO(妹者には感謝しないとな)
弟者はここにはいない妹の姿に、感謝をささげた。
.
- 215 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/17(日) 22:58:24 ID:T2xLTBNg0
――――――――――――――――
―――――――――――――――
――――――――――――――
――――――――――――
(;´_ゝ`)「弟者ぁっ! 怪我はしてないか!」
(;^ω^)「オトジャー、大丈夫かお?」
ラクダに乗った兄者と、ラクダの手綱を持ちながら飛ぶブーン。それと、もう一人。
彼らが到着したのは、それから幾ばくもしないうちだった。
一同は盗賊を縛り上げている弟者を確認すると、慌ててラクダから降りた。
⊂二( ^ω^)二⊃「オトジャオトジャー」
⊂( ´_ゝ`)∩「大丈夫か?」
(´<_`;)「……兄者、何だか頭が妙にテカテカしているんだが」
兄者とブーンの声に弟者は手を一旦止めると、ひきつった表情を浮かべた。
どうやら兄者が被った飾り布が、妙な具合に汚れているのが気にかかったらしい。
.
- 216 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/17(日) 23:00:24 ID:T2xLTBNg0
( ´_ゝ`)ゝ「これは荒巻にもしゃもしゃ食わ――って、そうじゃなくて怪我はないのか!?」
(´<_` )「大丈夫だ。問題ない」
一方の兄者は、ざっと弟の姿を見回し怪我がないことを確認するとほっと息をついた。
それから倒れている盗賊の姿をおそるおそる確認する。
( ^ω^)「動かないお」
(;´_ゝ`)「……生きてはいる、みたいだな」
(-<_- )「とりあえずはな」
弟者は手を動かし、男を縛り終える。それから顔を上げ、その表情を変えた。
あまり動かないながらもそれなりに変化のあった弟者の表情が、失われていく。
(´<_` )「……」
( ´_ゝ`)「弟者?」
視線の先は――、兄者の後方。
彼の影にこっそりと隠れるように立った小さな人影。
.
- 217 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/17(日) 23:02:27 ID:T2xLTBNg0
弟者の手が、曲刀を引き抜く。
花や蔦の文様が刻み込まれた美しい刀が、ためらい一つ見せること無く振るわれる。
目一杯速さで振るわれた曲刀が向かうのは、兄者の向こうの人影。
(; ゚_ゝ゚)「え?」
(;^ω^)「お?」
(゚A゚* )「……」
薄紫の獣の耳を持つ、まだ幼い少女。
彼女の首元へと向かって、弟者の曲刀はつきつけられる。
――しかし、刀はそれ以上先に動こうとはしない。
(´<_` )「……」
(; ゚_ゝ゚)「なん……で……」
何故ならば、
刀をつきつけられた少女のその手には光り輝く凶器が握られ、その武器は――
.
- 218 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/17(日) 23:04:11 ID:T2xLTBNg0
――兄者に突きつけられていた。
.
- 219 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/17(日) 23:06:17 ID:T2xLTBNg0
人生とは戦いの連続である――そう言ったのは彼ら双子の母であったか。
兄者にとってはまさしく今の状況こそ、その言葉にもっともふさわしいものであった。
(; ゚_ゝ゚)「……あばばば」
(;^ω^)「あ、アニジャっ!!」
目の前には曲刀を幼い少女の首へと向ける弟。
そして、背後には手にした武器を自分の腹へと突きつける少女。
両者は武器を互いに突きつけたまま、微動だにしようとしない。
(^A^* )「そりゃあ、ウチだって痛いのは嫌ですもん。
ニダやん風に言うなら、人質ってやつでしょか?」
(´<_` )「……」
一方は笑顔。もう片方は、一切の感情が抜け落ちた無表情。
どちらかが動けば確実に、無事では済まない。その重圧に兄者の体は知らず知らずのうちに震える。
(;´_ゝ`)))..「えーと、これは一体、どういうこと?」
(´<_` )「……そいつはさっきの盗賊の仲間」
.
- 220 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/17(日) 23:08:28 ID:T2xLTBNg0
( <_ )「そして、おそらく……こいつが“魔法使い”だ」
(゚A゚* )「……どうして、ウチがニダやんの仲間やってわからはったの?」
少女は小首をひねりながら、弟者に尋ね返した。
もし自分が単なる通りすがりの少女だったらどうしたのと、彼女は問いかけるが弟者は答えようともしない。
(;^ω^)「ひ、人質? 人質ってなんだお!」
(;´_ゝ`))「すごく危ないってことだ!」
(*^ω^)「なるほど!」
ブーンと兄者は言葉の応酬を交わすが、それで状況が落ち着くはずもない。
むしろ、その場の空気はますます悪くなっているといってもいい。
(゚A゚* )「……だんまりね。まあ、ええよ」
( <_ )「……」
少女は兄者につきつけた凶器に力を込める。
彼女が兄者の腹につきつけられているのは、銀の刀身を輝かせる小さなナイフであった。
小さな――といっても、小柄な少女の手には大きすぎるようで、彼女は弟者を睨みつけながらも何度も握り直していた。
あと少し。あと少しだけ勢いをつけて刺せば、その武器は兄者の服を肌を貫くことだろう。
.
- 221 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/17(日) 23:10:35 ID:T2xLTBNg0
(゚A゚* )「ニダやんを解放して。
そうしてくれはらへんのなら、弟さんがどないなるかわからんよ」
そして、彼女は弟者に向けてきっぱりと言い切った。
首元に突きつけられた刀に怯む様子は一切ない。
無謀なのか、それとも単純に度胸があるのか。
少なくとも彼女は、弟者の攻撃を受けるたびに声を上げていた盗賊よりはるかに肝が座っていた。
(´<_` )「それよりも俺がお前の首を切るほうが早い」
(゚A゚* )「嘘。せやったら、とうにそうしてる」
(;´_ゝ`)「俺、弟じゃなくてお兄ちゃん……」
恐る恐る口に出された兄者の言葉は、少女にも弟にも届かずに消える。
ブーンからは「ブーンはちゃんと知ってるお!」と声があがったのだが、やはり状況に変化はなかった。
(゚A゚* )「ウチは本気や」
(´<_` )「……」
弟者の表情に変化はない。
それは余裕だからではなくて、余裕が無いからこそだ。
.
- 222 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/17(日) 23:12:42 ID:T2xLTBNg0
(゚A゚* )「なんなら、試す?」
脅しのためか、それとも本気なのか……。
少女は兄者の体に突きつけたナイフに力を込めて、その刃先をほんの少しだけ前に進めた。
( ;゚_ゝ゚)「ちょ、お願いヤメテ!!」
(゚<_゚♯)「――」
弟者の体が弾けるように動く。
しかし、その動きよりも速く、動いたものがあった。
.
- 223 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/17(日) 23:14:20 ID:T2xLTBNg0
……それは兄者の腹。正確には彼の身につけた装束の懐部分。
(;゚A゚)「ひっ、何でオレ武器なんてつきつけられてんの!!!」
(;´_ゝ`)「ドクオ!!!」(^ω^;)
そして、辺りに響いたのそれは――ドクオの声だった。
兄者の懐がもぞりと動き、そこからずっと姿を消していたはずのドクオ顔を出す。
.
- 224 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/17(日) 23:17:01 ID:T2xLTBNg0
……ドクオ、よりにもよってそこに隠れていたのか。
兄者とブーンにとってはその程度の感想なのだが、完全に不意をつかれた少女にとってはそれは脅威だった。
予想外の状況に動けなくなる少女。
一方、ドクオの登場にも弟者の動きは止まらなかった。
(;´_ゝ`)⊂(´<_` )グイッ
首を断とうとしていた動きを接近する動きに変えると、弟者は凄まじい速度で兄者の腕をつかむ。
力を入れすぎたせいか、兄者の体勢が崩れ、そのまま倒れかける。
しかし、弟者はそれには構わずに腕を引くと、兄者を少女から強引に引き剥がす。
⊂(;´_ゝ`)∩「痛い! 痛いって、弟者っ!」
(´<_` )「大怪我よりマシだろ」
兄者が少女から十分離れたのを見計らって、弟者はその手を離す。
支えを失ったことで、兄者の体は砂の上にどさりと倒れ落ちるが弟者はそれには気を止めなかった。
(゚A゚; )「――っ」
(;'A`)「なになに、どうしたのこの子?」
(;^ω^)つ「ドクオ! こっち来るお!」
一方、事情のつかめないドクオと少女は、弟者の動きに反応出来なかった。
.
- 225 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/17(日) 23:19:03 ID:T2xLTBNg0
( <_ )「すまない、仕損じた」
少女の手から開放された兄者に向けて、弟者は謝罪の言葉を口にする。
といっても、その眼は少女を見据えたままで、いつでも動き出せるように体勢を整えている。
(;´_ゝ`)∩「いや、しくじったのは俺だ」
(´<_` )「……もう一人いることは予想できたはずだ。
あの男に魔法がつかえるはずがなかったんだから」
弟者は奥歯を噛み、表情を歪めながら言う。
あの男は、自らを助けている“魔法”もしくは“魔道具”の力を理解している様子はなかった。
それどころか、自分が魔法に助けられているということにすら気づいていなかった。
それは男自身が術者でないことに他ならない。だとしたら、男に魔法や魔道具を授けたもう一人がいて当然なのだ。
そしてその術者は、おそらくあの少女。
本人は明言を避けていたが、この状況で出てきたのだ。十中八九彼女が術者で間違いない。
(゚A゚* )「……なんで、精霊が」
(;'A`)「本当にどうなってるんだ?!」
そして、その少女はドクオの姿に呆然としていた。
兄者が助かったことにも、弟者の行動にも思考が向いていない。
.
- 226 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/17(日) 23:20:10 ID:T2xLTBNg0
(´<_` )「……」
(;´_ゝ`)「くっ」
隙だらけの少女に向けて弟者が一歩踏み出そうとするのを、兄者は見た。
弟者の手には抜き身の曲刀。相手は少女だというのに、素手で取り押さえるという発想はそもそも無いらしい。
弟者の顔に表情はなく、ためらう様子など欠片も見せない。
それだけで、兄者には理解できてしまった。
――こいつは、殺す気なのだと。
(;´_ゝ`)「弟者っ!」
Σ(゚A゚* )「――っ!!」
兄者の声に、呆けていた少女の瞳が、はっきりとした理性を取り戻す。
彼女は弟者の姿を見やると、ためらうこともなくその口を開いた。
(゚A゚* )
ぞわりと兄者の肌が粟立つ感触。
毛並みは逆立ち、その耳へと奇妙な音を伝える。
.
- 227 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/17(日) 23:22:19 ID:T2xLTBNg0
(゚A゚# ) 《速く》
少女の口が音を紡ぐ。
――それは、魔力の乗った言葉の羅列だ。
ただの言葉に魔力を込めることで、その言葉を実現可能にするもっとも典型的な魔法。
発する言葉がシンプルであればあるほど。込める魔力が強ければ強いほどその魔法の威力は上がる。
少女の口にした音は、ブーンや、広場で出会った女が戯れに使ったのとは違う。
その目的だけを込めた、強固でシンプルな言葉だった。
( <_ )「……」
(;´_ゝ`)「……ぅ」
弟者を止めるべきであるという思考と、相手は魔法使いであるという戸惑い。
その迷いが、兄者の動きを遅らせた。
彼女の魔法使いとしての実力が高いものであった場合、死ぬのはこちらだ。
(´<_` )
弟者が、肉食の獣の速さで動く。
手にした曲刀が弧を描き、その軌跡を銀に輝かせる。
.
- 228 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/17(日) 23:25:05 ID:T2xLTBNg0
少女の体から鮮血が飛び散るのを、兄者は見た。
.
- 229 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/17(日) 23:26:34 ID:T2xLTBNg0
( A * )「――っ!」
弟者の手にした刀身が、獲物の流した赤い液体でべっとりと濡れる。
切り裂いた部位は腕。
少女が手にしていたナイフが砂の上に、落下する。
(´<_` )「悪いな」
(´<_` )「――そういうのは嫌いなんだ」
身にまとった衣服ごと、柔らかい肉を切り裂いて、それでも弟者の動きは止まらない。
魔法で自身の動きを“速く”した少女よりも、弟者の動きは速い。
むせ返るような血の匂いが、あたりを満たす。
(#´_ゝ`)「やめろっ!!!」
(´<_` )「……」
弟者は空いている手で、体勢を崩した少女の首元を掴み。そのまま、砂の地面に押さえつける。
頭を打ったのか、それとも傷口が痛むのか、少女の顔が苦痛にあえぐ。
( A ; )「……いた……ぃ」
.
- 230 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/17(日) 23:28:35 ID:T2xLTBNg0
弟者はその顔に向かって、緩やかな曲線を描く刀を突きつけ。
そのままその刀を切――
( <_ )「死ね」
(;´_ゝ`)つ「弟者待て!」
兄者の声が響いたのは、弟者が声を発すると同時。
(;^ω^)「あ、あうあう」
(;'A`)「な、なあ。本当にどうなってるんだ?!」
(´<_` )「……」
弟者は手の動きを、ピタリと止める。
しかし、視線は未だ少女を睨みつけたまま。その目は決して、兄者を見ようとしない。
(;´_ゝ`)「殺すな。殺しはよくないぞー」
(´<_` )「それはできない」
.
- 231 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/17(日) 23:30:35 ID:T2xLTBNg0
(;'A`)「おいおい、これマズイんじゃねぇの?」
( ´ω`)「……だお」
ドクオは慌ててふらふらとした動きで弟者の顔の回りを飛び回る。
が、その動きすらも弟者は目に入れようとしない。
彼の眼は少女の姿だけを、まったく感情のこもらない眼で睨み続けている。
(;´_ゝ`)「やめろ、弟者」
(´<_` )「ここは街じゃない。今後の憂いを断つためにも、盗賊は殺すのが鉄則だ」
(;´_ゝ`)「……うっ。でも、殺すのはよくないと思うのだが」
(´<_` )「殺すなというならば、最低でも舌を切るか喉を潰すことになるがいいな。
……念をいれるなら、手足も潰さねばなるまい」
(゚A゚* )「……っ」
寸前で止められた刀が、少女の肌をほんの少しかすめる。
致命傷には成り得ない小さな傷。しかし、彼女の肌からは血が滲みその紫の毛並みを汚す。
(;'A`)て「やめろ、弟っ!」
.
- 232 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/17(日) 23:32:24 ID:T2xLTBNg0
ドクオの言葉にも、弟者は耳を貸す様子がない。
このままではダメだ。と兄者は声を上げ――、
(#´_ゝ`)「ううっ、ダメ絶対!」
あいも変わらず倒れこんだままの視界の端に、あるものの姿をとらえる。
それは縛られた姿で気を失った盗賊の姿と……薄紫の布でしつらえられた、弟者が身に着けていたはずのマントだった。
(#´_ゝ`)「絶対に殺すな、首も舌も手足も潰したらダメ!!」
兄者は叫びながらもマントをつかむと――、そこに縫い付けられている隠しに手を伸ばす。
幾ばくかの金貨と銀貨が触れる。しかし、兄者の目的はそれではない。
さらに指を進め、兄者はついにそれを掴んだ。
(; _ゝ )「……」
触れた途端に、全身に伝わる悪寒。
視界に光がはじけ。赤や青の光が渦巻く。
その感覚を強引にねじ伏せると、兄者はそれをマントから引きずり出す。
――それは、幾重にも文様や文字が刻み込まれた銀の腕輪だった。
.
- 233 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/17(日) 23:34:30 ID:T2xLTBNg0
(´<_` )「……」
あれほどうるさかった兄者の声がいつの間にか止んでいることに、弟者は気づいた。
代わりになにやら羽音が聞こえるが、そちらは今は関係ない。
関係有るのは目の前の――、
(;A゚* )「……や、」
目に涙を浮かべながらも、なおも言葉を発しようとする少女の口を、手で押さえつける。
面倒だがこのまま舌を引きずり出せば、魔法を使われる心配はなくなる。
――いや、それよりもひと思いにやってしまうか。
そんな思考が、弟者の頭によぎる。
兄はおそらくこの少女を解放しろと言うだろう。
……幼いから、殺しはよくないから、たったそれだけ理由で。
甘すぎる。いつもそうだ。兄者には自分がいかに危険にさらされていたのか、全く自覚がないのだ。
(´<_` ).。oO(ならば、いっそ)
(#´_ゝ`)「――待て!」
曲刀を握り直した弟者に向けて、兄者の大声が上がる。
それから砂を踏み、こちらへと駆け寄る音。
.
- 234 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/17(日) 23:36:24 ID:T2xLTBNg0
兄者の、足が視界に入る。
息を荒げ、なかば転がるようになりながらも、その足は止まらない。
(´<_` )「もう十分に待った。邪魔をするな」
(#´_ゝ`)「いいや、ジャマさせてもらうね!
お前さんには堪え性というものが圧倒的に足りない。それではいかんぞと」
兄者の様子はいやに自信に満ち溢れている。
弟者は少女の口元を強く押さえつけながら、兄者の様子を見やる。
( ´ω`)「……アニジャ」
(;'A`)て「おい、無茶はするなよ」
( ´_ゝ`)b「大丈夫だ。この俺が来たからにはもう安心だ!」
(#'A`)て「よりにもよって、お前だから心配してるんだよ!」
兄者の様子は普段と何ら変わりはない。
しかし、いや……その手に何かを掴んでいる。
(´<_`; ).。oO(まさか、)
それが何か悟った瞬間、弟者は息を飲んだ。
銀の腕輪――未だに見慣れぬそれは今日、手に入れたばかりのものだ。
.
- 235 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/17(日) 23:38:25 ID:T2xLTBNg0
――――――――――――――――
―――――――――――――――
――――――――――――――
――――――――――――
それは昼前。
物売りの声と、人々の歓声。肉や食材の焼ける香ばしい匂いと、煙草や香草の鼻を突く臭い。
広場に立つ黒と紫を基調とした、小さなテント。
川 ゚ -゚)「やれやれ。よくもまあ、飽きないものだな。
いつまでもここで揉められては困るし、一つ提案がしたいのだが……」
魔法石板売りの店主から買った石板を返すと言い出した弟者と、それにつられて大騒ぎになった一同。
一同の様子を呆れ半分で見守っていた店主は、手首にはめた腕輪に手をやるとそっと口を開いた――
川 ゚ ー゚)「どうだろう、魔力封じというものに興味はあるかな?」
(´<_` )「……秘術の一つだと聞いているが」
彼女は口元に薄く笑みを浮かべると、腕輪を外す。
素材はおそらく銀。中央に嵌めこまれているのは、丸く加工された水晶か。
全面に刻み込まれた文字や模様は、装飾品としてはあまり見かけないものであった。
.
- 236 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/17(日) 23:40:55 ID:T2xLTBNg0
(´<_` )「……」
その腕輪を見たとたん、――これはあまり良くないものだ、と弟者は直感した。
同じ事を兄者も感じたようで、「うへぇー」と言いながらその表情を歪ませた。
それだけではなく、兄者はそのまま体をぶるりと震わせると、両腕をさすり出す。
( ^ω^)「これはなんだお?」
川 ゚ ー゚)「これはちょっと特殊なものなんだ。
一説には、魔神の持ち物だったとも言われている」
(;'A`)「げぇぇっ、魔神かよー」
弟者は店主の言葉に自分でも気づかないうちに、奥歯を噛み締めていた。
魔神――それは、精霊や竜なんかよりもはるかに格上の、それこそ神に等しい力を持った存在だ。
……それはもちろん、悪い意味で。
神と等しい力をもちながらも、気向くのままに魔力を振るい好き放題をする。
善行をすることもあれば、悪行もすることもある――と、世間一般では言われる存在だ。
川 ゚ ー゚)「そう怖い顔をするな。あくまでも噂だ」
薄く笑った表情は崩さないまま、彼女はそっと腕輪に指を這わせる。
そのまま彼女がそっと息を吸うと、弟者の肌がざわりと反応する。
.
- 237 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/17(日) 23:45:05 ID:T2xLTBNg0
これは、魔力だ。
この女はこれから、魔法を使う。漂う魔力の量は、先ほどの戯れに使った暗示よりもはるかに強い。
弟者の手は腰に下げた曲刀へと伸びていた。
得体のしれない腕輪と、魔神、それから魔法石板と、魔法使い。
それらは弟者にとって刀を抜くのに十分な理由となった。
(;´_ゝ`)「おい、弟者待て!」
(´<_`#)「止めるな、兄者」
弟者の様子に気づいたのか、兄者の手が弟者の肩にかかる。
それを振り払おうとして、弟者は自分の行動が遅かったことを悟る。
川 ゚ -゚) 《 》
――魔法が発動する。
しかし、店主の発した音が何を示すのか弟者にはわからなかった。
……こういった魔法のたぐいが生じた場合、それが何を示す言葉なのか弟者には大抵読み取ることができる。
それが出来ないということは、それこそ弟者の理解を越える高度な魔法か、未知の魔法か。
魔法封じという言葉もあながち嘘ではないかもしれないと、店主を睨みつけながらも弟者は理解する。
川 ゚ -゚)「……これでこの腕輪は魔法や魔力を封印するようになった。
残念ながら、効果は一度だけだがな」
.
- 238 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/17(日) 23:46:07 ID:T2xLTBNg0
(*^ω^)「おお、すっごいおー」
(;'A`)「魔力封じなんて貴重なもんを……随分とまぁ、大盤振る舞いなことで」
川 ゚ -゚)「これをやるから、お前たちは私の石板をおとなしく引き取って帰れ。
石板が気に食わないならばこれを使って封じればいいし、それ以外に使っても一向に構わん」
そして、店主は使い方を説明すると腕輪を机の上に放る。
弟者は無言で店主と、腕輪を見比べる。
(´<_` )「……それ以外に使っても、か」
(;´_ゝ`)「弟者さん。なんで、そこで俺の顔を見るのかな?」
(´<_` )「実験台が必要だと思ってな」
(; ゚_ゝ゚)「ちょ、おま、目、目が本気!! それ一度っきりしか使えないんだぞ!
魔法嫌いなのに、魔道具使うとかちょっと考えなおせ! 考えなおして下さい!!!」
銀の腕輪を拾い上げると、弟者はマントの隠しへとしまう。
二枚の魔法石板を抱えたままの兄者の腕を引きその場を離れるよう促すと、店主へ向けて言い放った。
(´<_` )「いいだろう、交渉成立だ」
川 ゚ ー゚)「お前なら、きっとそう言うと思ったよ」
.
- 239 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/17(日) 23:47:36 ID:T2xLTBNg0
――――――――――――――――
―――――――――――――――
――――――――――――――
――――――――――――
一度きりの、魔力を封じる銀の腕輪。
その腕輪が今、兄者の手に握られている――。
兄者の意図はその動きでもう明らかだ。
(*'A`)「なるほど魔力封じか!」
(;^ω^)「え? え?」
魔力を封じて少女を解放する。
兄者の大馬鹿野郎は一度しか使えない貴重な道具を、たったそれだけのために浪費するつもりらしい。
(´<_`#)「――兄者」
少女の口から手を離し伸ばした弟者の手は、空を切った。
舌打ちし、兄者を捉えようと体を起こすが――、
(´<_`; )「――な、」
.
- 240 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/17(日) 23:49:09 ID:T2xLTBNg0
前進に砂が絡みついているのでないかと思うほど、体が重くのしかかり上手く動くことができない。
自分のものとも思えない、その動きに弟者は愕然とする。
(*´_ゝ`)b「ちょっと、持って行かせてもらった」
(´<_`#)「くっ」
一方の兄者の動きは、これまでとは完全に別人。
砂丘で転んでいた時とは比べ物にならない速さで、弟者の腕をかいくぐり少女へと駆け寄る。
( `ω´)「がんばるお、アニジャ!」
(#'A`)ノ「行けー!!」
それでもなお兄者を阻もうとする弟者の顔に、ドクオが張り付く。
弟者は怒りの表情を浮かべながら引き剥がそうとするが、ドクオも渾身の力で耐える。
⊂(´<_`#)「どけっ、この羽虫っ!」
(#'A`)「いーやーだー!!」
弟者がドクオに気を取られた隙に、兄者は少女の元へとたどり着いた。
.
- 241 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/17(日) 23:50:07 ID:T2xLTBNg0
(;A゚* )「……」
少女はその瞳に涙こそにじませてはいたものの、泣いてはいなかった。
ただその表情は青ざめ、その手は小さく震えている。
_,
(;´_ゝ`)「ごめんな」
(;A゚* )「……」
そして兄者は震える少女の左腕に、銀の腕輪をはめた。
嵌めこまれた水晶が光ったように見えたが、それも一瞬のこと。
すぐにその光も見えなくなる。
(゚A゚* )「――な、なに?」
(*´_ゝ`)ノ「ほい、たった今を持ちましてお嬢ちゃんの魔力は封印させてもらいましたー。
この腕輪が外れるまでは、絶対に魔法を使うことは出来ません!」
そう少女に向けてへらりと笑う兄者の顔に向けて――間髪入れず弟者の拳がつきささった。
ヘブッ(´く_`(#⊂(´<_`#)
.
- 242 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/17(日) 23:53:07 ID:T2xLTBNg0
(;'A`)「スマン、弟止めるの無理だった!」
(; ゚ω゚)て「今日、4回目だお!」
痛みを訴える頬を抑えながら、兄者は弟の姿を睨みつける。
弟者が怒りの表情を浮かべていることに怯み、あわてて謝りそうになるがそれを何とかこらえ兄者は言う。
( ´_ゝ`)「弟者よ、痛いではないか」
(´<_`#)「殴ったのだから、当然だ。
……兄者は、自分が何をしたのかわかっているのか?」
(#´_ゝ`)「弟の狼藉を止めたに決まってるだろ。
これでめでたく魔力封印。魔法も使えないから解放しても大丈夫で、万々歳ですぅ!」
そう言い切った兄者の頬に、再び弟者の拳が唸る。
その拳は避ける暇もなく、兄者の頬に直撃する。
殴られたのは先程とは反対の頬。弟者は思い切り殴ったのか、痛いことこの上ない。
しかし、それでも兄者は引こうとはしなかった。
(´<_`#)「兄者はわかっていない!」
(#´_ゝ`)「いいや、わかっている。
俺は謝らないし、絶対に止めるからな!」
.
- 243 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/17(日) 23:54:06 ID:T2xLTBNg0
同じ顔の二人が声を荒げ罵り合う。
両者はお互いしか目が入っていない。そして、精霊たちも兄弟たちの姿に完全に動きを止めている。
その隙を突いて――動いたものがいた。
(゚A゚* )「――――強くっ!!!」
先程まで震えていた少女が起き上がりながら、声を上げている。
しかし、それは魔法ではなく、単なる言葉として周囲に響いた。
少女が体から組み上げようとした魔力は、どうあがいても形にならない。
いや、組み上げようにも魔力そのものが今の彼女には捉えられない。
少女の顔がこわばりその視線は自らの腕――、はめられた腕輪へと落ちる。
(゚A゚; )「――っ」
腕輪に手をやるが、幾度試しても外れる様子がない。
決して頑丈そうではないのに、まるで意志があるかのように少女の腕から離れようとしない。
普通の腕輪ではない。少女はその瞬間にようやく理解した。
(゚A゚; )「魔力……封じ……」
魔力の封印。そんなことができる者は、そうめったにいない。
――だから、そんなものは嘘なのだと信じて、少女は逆転に賭けた。
なのに、なのに、なのにっ!
.
- 244 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/17(日) 23:56:16 ID:T2xLTBNg0
( <_ )「だから、言っただろ」
どちらのものかわからない、男の声。
その声に少女は自分の残りの時間が尽きたことを、あきらめと共に悟った。
ああ、ニダやん。すまんかったなぁと――彼女は心のなかで、縛られ倒れたままの男に向けて謝罪する。
顔を上げて、少女は見る。
(´<_` )「殺すべきだって」
銀の光。
翻るシャムシールの刃。それが、彼女の視界いっぱいに映り……
(♯゚_ゝ゚)「――やめろっ!!!」
そして、鈍い音とともに少女の体に衝撃が走った――。
.
- 245 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/17(日) 23:58:33 ID:T2xLTBNg0
――――――‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
‐‐‐‐‐‐‐‐‐
(゚A゚* )
< `∀´>つε=(~⌒) 「なんだガキか。生者必滅、さっさとのたれ死ぬといいニダ」
( A;* )「……ぅ」
<;`д´>て
< `―´>「……」
< `∀´>「あー、腹いっぱいニダ。もう食いきれないからこれは捨てるニダ。
捨てたものをそこにいる腹をすかせてそうなガキが食べたとしても、ウリには全然っ関係ないニダ」
(゚A゚; )「……あ」
< `∀´>「さっさと食うニダ」
(⌒~)=o(゚A゚* )「ありがとう」
< `∀´>「それ食ったらついてくるニダ
どうせ、ニムには家なんて無いニダ。ウリなら飯くらいは食わせてやれるニダ」
‐‐‐‐‐‐‐‐‐
――――――‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
- 246 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/18(月) 00:00:28 ID:c1EC81wI0
( <_ )「――兄者」
(; _ゝ )「ふぃー、危ね」
( A ; )「……なんで、」
刀は確かに振るわれた。
彼女の頭は激しい衝撃に打たれ、それに耐え切れずに首はがくりと揺れた。
目がくらみ、なかなか焦点を結んでくれない。しかし、それでも彼女は血の一滴もこぼすことはなかった。
(゚A゚; )「……あ、」
代わりに落ちたのは、花の飾り。
彼女が耳に飾っていた赤い花をかたどったそれは、無残にも割れ。原型を留めていない。
あの男が、攻撃を外すとは思えない。
それでも外したというのならば、その原因がどこかにあるはずだ。
そう、その原因となったのは――
(;´_ゝ`)「大丈夫だったか、お嬢ちゃん」
.
- 247 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/18(月) 00:02:05 ID:c1EC81wI0
(;'A`)「おい、止めるならもうちょっとマシな方法あっただろ!」
( ´_ゝ`)「今の俺じゃあれが限界なんだよ」
これまで殴られるばかりだった兄者の拳が、弟者の頬へとつきささっていた。
おそらく少女の命を護るために振るわれたであろう兄者の拳。それをまともに受けた弟者は、兄の姿をギロリと睨みつけた。
弟者の瞳は激情が燃え、その表情にもはっきりと怒りの色が浮かぶ。
(;^ω^)て「アニジャっ!」
⊂(´<_`#)「こんのっ、ド低能がっ!」
弟者の表情の変化に兄者がほっとしたのもつかの間、今度は弟者の拳が兄者に向かって振るわれた。
ブーンの声もむなしく、反応が遅れた兄者はその拳をもろに受ける。
兄者の体がふらつくが、それでも彼は倒れずに弟の姿を睨みつけた。
兄者の顔に怒りの表情が浮かぶ。同じ顔をした二人は、まったく同じ表情で向かい合った。
(∩ _ゝ )「――っ、やったな弟者」
(´<_`#)「なぜわかならない。俺は、俺の――」
(#´_ゝ`)「違うっ、お前はただ魔法使いを殺したいだけだ!」
(´<_`#)「それの何が悪い!」
.
- 248 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/18(月) 00:04:11 ID:c1EC81wI0
怒声を上げる兄弟。二人の拳が動いたのは同時だった。
両者の頭に避けるなどという思考はない。
あるのは、ぶんなぐってやりたいという衝動だけ。
そして、振るわれた拳は、数秒の間をおいて両者の頬をえぐった。
(;^ω^)て
(;'A`)「……うわぁ」
痛みと、それを上回る衝撃に二人はよろけ、一歩後退る。
しかし、そんなためらいはほんの一瞬で、すぐにお互いの胸ぐらを掴み始めた。
その一連の動きは――まるで、鏡に写ったかのように、そっくり同じ。
(´<_`#)「何をしやがる。兄者はアホかとバカかと」
(#´_ゝ`)「そういうお前こそ、アボカドバナナかと」
(´<_`#)「こんな時までふざけるな!」
兄者が弟者の頬を殴りつければ、仕返しのように弟者も兄者の頬を殴りさらに蹴りを加える。
腹を蹴られた兄者は顔をしかめると、弟者を蹴り倒し、そのまま馬乗りの体制になる。
そして、そのまま抵抗の出来ない弟者の顔を殴りつける。
.
- 249 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/18(月) 00:06:37 ID:c1EC81wI0
(´<_`#)「こん……の」
(; _ゝ )「ぐっ」
弟者を殴りつけるのに必死になっていた兄者の体を、弟者の肘が打つ。
必死の力を込めたのか。それとも、当たりどころが良かったためか、兄者の体が怯む。
その一瞬の隙を突いて、弟者は体を傾け兄者の下から脱出する。
その弟者の動きに今度は、兄者の体勢が崩れた。
それを弟者は見逃さず、今度は弟者が兄者に馬乗りになる体勢となる。
弟者の拳は兄者の頬を、瞼を、鼻を殴りつけていく。
(;゚ω゚)「な、な、な、何をしてるんだお!」
('A`)「……よくもまあ、やるもんだ」
(;^ω^)「ああいうのはよくないお! ブーンは全然楽しくないお」
お互いに一切引く気配はない。
蹴りつけ、衣服をひっぱり、引きずり倒し、殴る。
口が切れ、瞼が腫れようともその動きは止まらない。
顔面をかばう腕ごと殴りとばし、蹴り飛ばす。そして、殴られ、蹴り飛ばされる。
(;^ω^)「もうやめるお!」
.
- 250 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/18(月) 00:09:13 ID:c1EC81wI0
('A`)「いいから、やらせとけ。死ぬようなことはないだろ」
(;^ω^)「でも、アニジャもオトジャも間違ってないお。なのににどうして……」
ドクオの言葉にブーンはその表情を歪める。
ブーンの目からみた兄弟はどちらも間違っていないように見えた。
命を脅かす敵は排除すべきだという弟者の主張は正しい。
しかし、それど同時に同族の命を奪いたくないという兄者の思いもまた、間違ってはいない。
('A`)「弟は間違ってはいないだろうけど、オレは兄者に協力する。
ブーン。お前はどうなんだ?」
(;^ω^)「……お」
助けを求めるように動いたブーンの視線が、少女の姿を見た。
弟者の手から開放された少女が、後退りをするとフラリと立ち上がる。
(゚A゚* )「……」
少女にはもはや魔法を使おうとするそぶりも、武器を拾おうとするそぶりもなかった。
二度の反撃の失敗は彼女から抵抗する気力を根こそぎ奪い去っていた。
彼女は力ない足取りで歩くと、未だ縛り付けられたままの盗賊の元へとたどり着く。
.
- 251 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/18(月) 00:10:19 ID:c1EC81wI0
(゚A゚* )「ニダやん……」
しかし、少女の手は男の縛めをほどこうとはしない。
うちひしがれた表情で彼女は、男を見下ろしている。
(;A;* )「ニダやん。ごめん。ごめんなぁ……」
(;^ω^)「……」
少女の目から涙があふれこぼれていく。
その姿にかわいそうだという言葉がブーンの脳裏に浮かぶ。
胸の中にただよう痛いようなむずむずする感じは、いつかの感情の名残だ。
('A`)「おい、お前さん。気持ちはわかるが、逃げようとはするなよ」
そんなブーンの様子には気づかないまま、ドクオは声を上げる。
ドクオは少女の傍ら、その視線の前を危なっかしい姿勢で飛び回る。
('A`)「オレが言うのも何だが、兄者はなんの義理もないお前さんのために弟にケンカ売ってるんだ。
それを無駄にするような行動はやめろ。余計なことをすれば、今度こそ弟がやらかしかねん。それに……」
:.。.('∀`).。.:「兄者ならなんとかするさ!」
.
- 252 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/18(月) 00:13:01 ID:c1EC81wI0
( ^ω^)「……ドクオ」
ドクオの弾けるような笑顔に、ブーンは言葉を失った。
その理由はわからないが、知らないほうがいい感情の作用によるものの気がして、ブーンは話を変えることにした。
( ^ω^)「そういうドクオこそ、まっさきに逃げたおね」
+('A`)「え?」
(゚A゚* )「……精霊はん。何、言わはってるんやろ」
そんな二人のやり取りは、少女の耳には届かなかった。
彼女の耳は精霊の声を捉えることができない。
しかし、訴えるような精霊たちの姿に、何か大切なことを言われているような気がして、彼女はそっと目を閉じる。
(‐A‐* )「……」
耳を澄ましてどれだけ集中してみても、精霊の声は聞き取れない。
その代わりなのだろうか、自分に向けて「ごめんな」と告げた男の声と表情が浮かんで消える。
武器を突きつけた相手に言う言葉とはとても思えない。優しい声。
.
- 253 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/18(月) 00:14:21 ID:c1EC81wI0
ああ、そうか。
あの男は彼女がニダやんと呼ぶ男と同じ、とんでもない馬鹿なのだと少女は悟る。
……そう悟ったと同時に、彼女の心は折れた。
(゚A゚* )「あーあ。ウチの負けやわ」
裏切られたというのに、兄弟相手に拳を交えて少女の命を守ろうとするとんでもないお人好し。
そんな相手を、これ以上裏切ることなんてできない。
したくないと……彼女は思ってしまった。
(;A;* )「……ニダやん」
お人好しに拾われたことで永らえた命だ。
その最期がお人好しのために終わるのであれば、その帳尻だってあっている。
(;A;* )「ごめんなぁ。助けてあげられなくて……」
ただ、その思いが、選択が、ニダやんの命を救うことにならないことだけが、胸に痛かった。
.
- 254 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/18(月) 00:16:14 ID:c1EC81wI0
――――――――――――――――
―――――――――――――――
――――――――――――――
――――――――――――
はたしてドクオの言葉通り、兄弟はしばらく殴りあった後、その動きを止めた。
砂山の上に体を投げ出し、二人はぐったりと動かなくなる。
( ノ_ゝ`)「……あー、口の中切れてら」
(ノ<_` )「調子に乗るからだ、ド阿呆」
互いの顔は腫れ上がりボロボロ。
それでも、互いの口は減る様子がない。
しかし、互いの表情は先程までとは違い、随分と晴れやかになっていた。
殴りあったのことでお互いにスッキリとしたのだろう。向けられる言葉も随分と落ち着いていた。
彼らの母である母者=流石の教えの一つ、納得するまで殴り合え。
その言葉は彼らにとって思いの外、有効であるようだった。
(♯ノ_ゝ`)ノ「とにかく、もう魔法が使えないんだから、この子は解放!」
(ノ<_`#)「その件で報復でもされたらどうする!」
(♯ノ_ゝ`)「その時は、その時だ!」
.
- 255 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/18(月) 00:18:30 ID:c1EC81wI0
そう言い切った兄者の声の鋭さに、弟者はため息をついた。
普段は適当なことしか言わないのに、こうと決めたことは断固として譲ろうとしない。
兄のそういった性格を、弟者は誰よりも知っていた。
( ´_ゝ`)「弟者ぁー」
兄者がポツリと声を上げる。
( ´_ゝ`)「やっぱり、殺しはよくない。
ほら、後味悪いし、きっと後悔しちゃうんだぜ☆彡」
(´<_` )「……」
二人とも、こんなところでいつまでも貴重な体力を消費するわけにはいかないということは理解していた。
まだ、道のりは半分きたかどうか。
だけど、彼らはまだこんな所で足踏みをしている。
(´<_` )「……俺が言うなら」
(;´_ゝ`)て「いや、お前は何も言ってないし!」
そして、長い沈黙の末に弟者は言った。
その言葉に兄者は笑いかけてから、あわててツッコミを入れる。
弟者の表情が不満そうに歪むが、兄者はそれを無視して言葉をつむぐ。
.
- 257 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/18(月) 00:20:31 ID:c1EC81wI0
( ´_ゝ`)「まあ、封じたもんはもうどうしようもないしな」
(´<_` )「いかんともしがたいが、封じてしまったものは仕方がない」
(*´_ゝ`)「ほう、わかってくれるか弟者!」
兄者はぱっと明るい表情になると、体を起こす。
両手を天に掲げパタパタと振り彼なりに喜びを表現すると、再び弟の姿を見やる。
(´<_` )「こうなった兄者には何を言っても無駄だからな。
……まったく、困った兄を持ったものだ」
( ´_ゝ`)b「だけど、流石だろ?」
(´<_` )「知るか」
ヽ(;´_ゝ`)ノ「いや、でも流石だっただろ。今のは!」
(´<_` )「……さてな」
そう言って、血をにじませ腫れ上がった顔をした兄弟は笑いあった。
.
- 258 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/18(月) 00:22:44 ID:c1EC81wI0
――――――――――――――――
―――――――――――――――
――――――――――――――
――――――――――――
( ´_ゝ`)「ブーンも、ドクオも心配かけたな。めでたいことに話はどうにかまとまったぞ」
(;'A`)「なんというか、お前さんたちはよくもまあ、あんなに殴りあったもんだな」
( ´ω`)「ブーンはもうこんなのやだお」
腫れ上がった顔はそのままにして、兄弟はブーンの元へと舞い戻った。
彼ら二匹は、先ほどまで弟者が生命を狙っていた少女の回りを飛び回っている。
( ´_ゝ`)「それから、」
兄者は少女へと視線を動かす。
ナイフも魔法も失った少女は、盗賊の傍らに座り込んでいる。
そんな彼女に向けて、兄者は笑顔を作ると声をかけた。
( ´_ゝ`)「ごめんな。ひどい目にあわせてしまって」
(゚A゚* )「……、お兄はんは、ほんまにアホな人やわ」
.
- 259 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/18(月) 00:25:16 ID:c1EC81wI0
どこか呆然としていた少女の瞳が、その顔が柔らかい表情を取り戻す。
ほっとしたような、すがるようなその少女の表情に、兄者の胸が少しだけ痛みを訴える。
(-A-* )「うちらの負けや」
少女はぽつりとつぶやく。
そして、その言葉とともに、少女は服の下から何かを落とした。
( ´_ゝ`)「ん?」('A`)
( ^ω^)「お?」
銃。金属で作られた刃。裁縫に使うには巨大すぎる針。
よくぞまあ集めたものだと言わんばかりの武器が、少女の服の下からは出てくる。
武器の数々に兄者の顔が一瞬固まり、その顔がさっと青くなる。
ナイフではなくてこちらの武器が使われていたら……それは考えたくもない想像だった。
(;´_ゝ`)「……弟者、やっぱお前が正しかったかもしれん」
(´<_` )「言い出したのは兄者だからな、ちゃんと責任はとれ」
(;'A`)「こぇー、こぇーわー」
(゚A゚* )「ウチもニダやんも投降する」
兄弟の言葉に少女は笑いを漏らすと、少女は負けを認めた。
.
- 260 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/18(月) 00:26:18 ID:c1EC81wI0
・
・
・
<#ヽ`∀´>「のーちゃんに何するニダ!」
砂漠に男の声が響く。
盗賊の男――彼は相変わらず縛り付けられた体勢のままで、一同から見下されていた。
(;'A`)「こいつ、ずっと寝てたのか」
(*´_ゝ`)ノ「おはよう! なんかよくわかならいお茶の人!」
<#ヽ`∀´>「お茶はお前らのほうニダ!
なんたる侮辱、なんたる屈辱! 縛られてさえなければお前らなんて」
チャッ( ´_>`)つ==|ニニニ二フ<#ヽ`∀´>「ケチョンケチョンに……」
(;^ω^)「やめて!」
(;´_ゝ`)「弟者さん、止まって!」
兄者の声に、弟者は曲刀を鞘へと収める。
弟者が刀をしまうのをちゃんと確認してから、その様子を眺めていた少女は声を上げた。
.
- 261 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/18(月) 00:28:05 ID:c1EC81wI0
(゚A゚* )「ニダやん。ウチらはもう負けたんよ」
少女の服は先ほどまでの戦闘で、いたるところが破れ、血がにじんでいる。
しかし、傷を負った腕には今は包帯が巻かれ、きちんと手当がされていた。
首の傷も同様で、兄者が持っていた薬によって治療がされていた。
<;ヽ`∀´>「のーちゃんなんで……。
巻き込まれないように、街にいろって」
(゚A゚* )「ニダやんは阿呆やなぁ。ウチが二ダやんを見捨てるわけないやろ。
ニダやんにはウチがついてなきゃあかんもん。
……まあ、今回ばかりは力及ばずやったけど」
少女の傷。それを見て取るった男の表情が、凍りついたように歪む。
少女はそれに困ったように笑うと、兄者を、そして弟者を見やった。
(´<_` )「相方は投降した。本来ならお前たちは殺されてしかるべきだが」
<;ヽ´∀`>「の、の、のーちゃん大丈夫アルか! じゃなかった、大丈夫ニダっ!」
(´<_` )「話を聞け。本来なら、二人とも殺すべきなのだが、
……とある筋からの要請で、それはしない」
(*´_ゝ`)「えっへん」
兄者の声に弟者は口元を曲げるが、すぐにその表情をとりつくろう。
そして、何事もなかったかのような表情を浮かべると、再び男へと向き直った。
.
- 262 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/18(月) 00:30:22 ID:c1EC81wI0
('A`)「素直に兄者からの頼みって言えばいいのに、弟者のやつ……」
( ^ω^)「おっおー。でも、本当によかったお」
ブーンは明るい表情で言うと、兄者や少女の回りを勢い良く飛び回る。
それを眺めるドクオの表情もどことなく明るい。おそらく彼も機嫌が良いのであろう。
<;ヽ`∀´>「ふ、ふん。このウリが唯々諾々と従うと思ったニダ? そうはいかないニダ!
そんな事言って、動けないウリやのーちゃんを騙し討ちに」
(゚A゚# )「ニダやん。怒ってもええ?」
<;ヽ´Д`>「のーちゃん!」
少女の剣幕に男の表情がみるみる歪む。
そんな男の表情を見ながら、弟者は再び声をあげる。
(´<_` )「武器は回収させてもらう。最低限の水だけは持たせてやるからあとは何処にでも行くといい」
(*´_ゝ`)ノ「なー、こいつの武器ってこれだろー!!」
<;ヽ`∀´>て「う、ウリの愛刀ちゃんがぁぁぁぁ!! 天はウリにかくも艱難辛苦を味わえと」
兄者が男の近くに転がっていた刀を拾い上げると、男が大袈裟にも悲鳴を上げる。
弟者は兄者から刀を受け取ると、まじまじとその刀身を眺めた。
.
- 263 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/18(月) 00:32:16 ID:c1EC81wI0
(´<_` )「――東方の武器だな」
( ´_ゝ`)「へー」
男の獲物は青龍刀。
美術品としても通じそうな弟者のシャムシールとは異なり、男のそれは無骨な切るためだけの刀だ。
装飾は柄の先にとりつけられた布のみ。柄には布が巻きつけてあるだけ。
柄にも刀身にも、鞘でさえも余計なものは一切ない。
それは純粋に戦いのためだけに作られた、武器であった。
<;ヽ`Д´>「ああ、ウリの愛刀ちゃん……」
(゚A゚* )「ニダやん、みっともない。それが条件やさかい、しゃあないやろ」
<;ヽ`∀´>て「のーちゃん冷たい!」
弟者は青龍刀を軽く振るう。
幅広のその刀は弟者の動きに、風を切り唸りをあげる。
(´<_` )「ふむ。少し軽いが……悪くはないな」
(*´_ゝ`)ノシ「弟者ーっ、そのままじゃ危ないから鞘も貰っちゃおうぜ!」
(´<_` )「ああ、俺がやるから兄者は下がってろ。マタ ヒトジチ ニ サレルゾ」
(;´_ゝ`) …ゴメン
.
- 264 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/18(月) 00:34:48 ID:c1EC81wI0
まばたきほどの間に男から鞘は奪い取られ、弟者は奪い取った獲物をその身につける。
それに不満気な声を上げたのは、刀の元の持ち主と兄者の二人である。
<ヽ;∀;>「ウリの愛刀ちゃん……」
ヾ(#´_ゝ`)ノシ「弟者ばっかずるいぞー! 俺もそういうかっこいい武器ほしい!」
(´<_` )「兄者にはナイフをやっただろうが。あとその他もろもろ」
(;´_ゝ`)「……あのナイフにはちょっと苦い思い出しかないので。
っていうか、銃とかその他もろもろとか使い方すらわからないですしおすし」
弟者の腰には青龍刀とシャムシール。
そして、兄者の腰には小さなナイフが一つ。その他のよくわからない武器たちは袋に詰めて荒巻の上に。
男と少女の武器をあらかた取り上げたのを確認したところで、弟者は少女に向けて問いかける。
(´<_` )「他に武装は?」
(゚A゚* )「帯のところ。ほとんど使わへんけど、かっこええからて腰帯剣仕込んでる」
<;ヽ゚∀゚>「のーちゃぁぁぁぁん!!!」
(;'A`)「容赦ねぇなあの嬢ちゃん」
相方に裏切られたショックで男が声を上げるが、弟者はそれに構わず器用にも武装を剥ぎ取る。
.
- 265 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/18(月) 00:37:51 ID:c1EC81wI0
( ^ω^)「これも武器かお?」
_,
(;´_ゝ`)「東方怖ぇー」
,_
(´<_`; )「流石にこれは……」
(;'A`)「武器にかけるなんとも無駄な労力……人間ってすごいんだな」
帯を模した鞘に仕込まれた剣。その姿は流石に衝撃的だったらしく、四人はそれぞれ声を上げる。
彼らはしばしその武器を眺めた後に、荒巻の背にした袋に放りこんだ。
(´<_` )「これで全部か」
<ヽ`∀´>「それはどうかな。ウリには実は隠された必殺技とか伝説の武器とかがあって……」
(゚A゚* )「せやな、これで全部や」
<;ヽ`Д´>「だから、のーちゃぁぁぁぁん!!!」
弟者は少女の言葉に頷き返すと、兄者にラクダに乗るように促す。
兄者は少女の姿を心配そうに眺めていたが、「荒巻―ぃ」と声を上げるとラクダにまたがった。
空をとぶのが苦手なドクオが、急げとばかりに兄者に続く。
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- 266 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/18(月) 00:38:36 ID:c1EC81wI0
( ´_ゝ`)「おーい、弟者ぁー」
(´<_` )「わかった」
兄者がラクダを乗るのを確認してから、弟者は盗賊たちへと再び向き直る。
何やら揉めはじめた男と少女の会話を中断しようと、弟者は口を開き――、その言葉を失った。
<#ヽ`∀´>「覚えていやがれニダー!!!
この屈辱、たとえウリが忘れようとも十億一兆の群集たちが」
(゚A゚; )「ニダやん。盗賊稼業なんてアコギな商売、もうやめたほうがええよ」
∩<#`∀´>⊃「やるニダ!! ウリはこの無限砂漠で伝説とうたわれる極悪非道の大悪人になるニダー!!!」
(゚A゚# )「うっさい! このボケ!!」
(;^ω^)「あばばばばば」
縛り付けられたままの男に、少女の回し蹴りがあびせられている。
一度や二度ではなく、三度や四度。
その光景を間近に見ていたブーンは、何か感じるものがあったのか「あばばば」と奇声を上げている。
(゚A゚* )「あ」
(´<_`; )「……」
(゚A゚* )「なんやもう、いろいろとご迷惑をかけまして。
ニダやんのこと助けてくれはって、感謝の言葉しかあらしまへん」
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- 267 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/18(月) 00:41:37 ID:c1EC81wI0
自分を殺しかけた相手を前にして、少女には動じる様子がない。
それどころか、口元に淡く笑みを浮かべると弟者の顔をじっと見つめた。
(´<_` )「……」
(;^ω^)「オトジャ……もう怖いことはもうやめるお……」
(゚A゚* )「ニダやんはどうか知らんけど、ウチは本気で弟さんのこと潰す気やった。
さかい、ウチが殺されるのは当然。せやけど、ニダやんだけは……」
助けたかったから。
少女は言外にそう言うと、弟者に向かって微笑む。
<#ヽ`∀´>「のーちゃん、そいつからとっとと離れるニダ!」
(^A^* )「きっと、アニさんとウチは似とるんよ。
アニさんの弟さんが、ニダやんみたいなお人好しやったみたいにね」
(´<_` )「……お前の言う弟が誰のことだか、本気でわからないな」
<#ヽ`Д´>「のーちゃん!」
男の声に、少女は「やかまし!」と怒鳴り返す。
二人の姿に背を向けながら、弟者は声を上げた。
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- 268 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/18(月) 00:42:38 ID:c1EC81wI0
(´<_` )「俺達の姿が見えなくなったら、そいつの縄をほどいてやれ。あとは知らん」
弟者の声に、少女はどんな表情を浮かべたのか。
それを弟者は知らない。しかし、きっと悪いものではなかったのだろう。
( ω )「よかったおね!」
( A * )「……おおきに」
弟者はそのまま自分のラクダ――中嶋の元へと向かう。
武器も取り上げたし、水も分けた。これ以上ここにいてもやることはない。
( ´_ゝ`)b「流石だな、弟者」
(´<_` )「いいから、行くぞ」
('A`)「だってよ、兄者」
(;´_ゝ`)「なんと! せっかく流石だなと言ったのに、ノリが悪いな弟者」
⊂二( ;^ω^)二⊃「アニジャもオトジャもドクオも置いてかないでおー!!」
最後に聞こえたブーンの声を背にしながら、弟者はラクダの背へとまたがった。
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- 269 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/18(月) 00:44:38 ID:c1EC81wI0
男と少女の二人組を背にして、ラクダは進みだす。
荒巻と中嶋の足が砂を踏む、その瞬間に兄者は大きく振り返った。
( ´_ゝ`)ノ「聞き忘れてたー! お嬢ちゃんはなんて名前なんだー?」
目いっぱいに張り上げた兄者の声に、少女はにっこりと笑う。
それは、花がさくような笑みだった。
(゚A゚* )「ウチはのー! それからこっちが、ニダやん!」
その声を聞いて、兄者の顔に笑顔が浮かぶ。
背後を振り返った不安定な体勢のままに、兄者はその手をブンブンと大きく振る。
(*´_ゝ`)ノ「のー者もニダやん者も元気でな!」
⊂二( ^ω^)二⊃「元気でーだおー!」
(´<_`; ).。oO(よりにもよって、元気でな、はないだろう)
(;'A`)「いくらなんでもそこで、元気でな、はないだろう……」
?('A`) (´<_`#)
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- 270 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/18(月) 00:46:13 ID:c1EC81wI0
そして、“流石”の街の一行は旅立っていく。
向かう先は、砂丘の山の向こう。その姿をのぞかせるソーサク遺跡。
<#ヽ`∀´>「ウリはニダやん者じゃなくて、ニダーニダ!!!
艱難辛苦、臥薪嘗胆耐えに耐えいつか、いつかぁぁぁぁぁ!!!」
( *゚A゚)ノシ「ほんまにおおきに! それと、かんにんなぁぁぁ!!!
どこまでも続いていく砂丘。
走り去っていった一行に向けて、響く二人組の声。
(゚A゚* )「じゃあ、もうちょっとしたらウチらも行こか」
<;ヽ`∀´>「のーちゃん、その前にこの縄ほどいてほしいニダ」
盗賊と少女。
ちぐはぐだけれども、きっちりと噛み合った二人組。
(^A^* )「ニダやんが、ちゃんと反省したらな」
<;ヽ`Д´>て アイゴー
彼ら二人がこれからどうなっていくのか、――それはまた別の話である。
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- 271 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/18(月) 00:47:13 ID:c1EC81wI0
そのよん。 人生とは戦いの連続である
おしまい
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