2012年芸術の秋ラノベ祭りのようです
川 ゚ -゚)は案内をするようです



118 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/11/18(日) 02:40:19 ID:2BfBrE7o0

( ^ω^)「おっ?」

川 ゚ -゚)「お目覚めですか?内藤ホライゾンさん」

気がつくと、僕は彼岸花が咲き乱れる場所にいた。
そして目の前には同年代くらいのセーラー服の女の人。
どうしてこんな所に?どうして僕の名前を?頭の中で次々に出てくる疑問を口に出そうとすると、

川 ゚ -゚)「初めまして。死神のクーです。貴方は死にましたので、迎えに来ました」

彼女はそんな事を言った。
頭の中を埋め尽くしていた疑問は全て吹き飛び、

( ;^ω^)「ファッ!? 」

間抜けな声が、僕の口から自然と漏れたのであった。

川 ゚ -゚)「どうかしましたか?」

( ;^ω^)「いやいやいやいや! 死神!? 君がかお!? 」

川 ゚ -゚)「はい。死んだ方が落ち着けられるように、このような姿をしていますが」

( ;^ω^)「おぉ……」

121 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/11/18(日) 02:42:35 ID:2BfBrE7o0

彼女は淡々とそう言うのだが、信じられない……とも、僕は思えなかった。
この彼岸花だらけの場所もそうだが、

川 ゚ -゚)「内藤さんのイメージする死神の姿にもなれますよ」

そんな事を言う彼女の姿がまるで陽炎のようにぼやけたので、僕は彼女の言葉を信じざるを得なかった。
そう、彼女は死神。そして

( ^ω^)「僕は、死んだのかお」

川 ゚ -゚)「はい」

(::..^ω^)「そして女子高生で心を落ち着けるような奴なのかお……」

川 ゚ -゚)「まぁ、男性にとって女性というのはそういう物ですよ。それに、この同年代の姿は見慣れているものですよね?」

川 ゚ -゚)「それでは、この矢印の看板に従って行きましょうか。案内しますよ。そのための、死神ですから」

少しだけ微笑みながら、彼女は歩き出す。

川 ゚ -゚)「あ、靴忘れてた」




川 ゚ -゚)は案内をするようです


122 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/11/18(日) 02:43:17 ID:2BfBrE7o0

( ^ω^)「あの、クーさん」

川 ゚ -゚)「はい。何ですか?」

靴を履いたクーさんの後を歩きながらしばらく経った頃、僕は先ほどから思っていたことを尋ねてみた。

( ^ω^)「死んだっていうのは……」

川 ゚ -゚)「はい。内藤さんは死にましたよ」

( ^ω^)「そんなきっぱりと……あ、いやそうじゃなくて」

川 ゚ -゚)「その死んだ記憶が無いのが、やはり気になりますか」

僕の疑問をクーさんは代わりに言い当てる。
このことからも、あぁやっぱりこの人は死神で、僕は死んだのだというのをまた実感する。

川 ゚ -゚)「そうですね、例外なく人が死んだ時、その記憶というのは一時的に無くなります」

( ^ω^)「そうなんですかお?」

川 ゚ -゚)「えぇ。そして、今こうして歩いてるのはその記憶をもう一度集める為なんです」

( ^ω^)「どうしてですかお?」

川 ゚ -゚)「……」

( ^ω^)「……」

124 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/11/18(日) 02:44:14 ID:2BfBrE7o0

僕の質問に淡々と答えていたクーさんは、この時だけ少しの間を置いた。

川 ゚ -゚)「まぁ、冷静になる為ですかね」

( ^ω^)「お」

川 ゚ -゚)「それより、記憶はどうですか」

5本目の矢印の看板を過ぎる。
クーさんにそう言われて、わずかに頭部に違和感があるのに僕は気づく。
どうやら矢印を過ぎるごとに、記憶が徐々に戻っていくようだ。

矢印の看板の裏には、時間割表だとか教科書の切れ端が張ってある。
これが原因なのだろうか。僕にはわからない。

( ^ω^)「何か、ちょっとここまで出掛かっているというか」

川 ゚ -゚)「そうですか。わかりました」

クーさんはまた淡々と答えると、静かに歩き出す。
相変わらず周りは彼岸花だけ。クーさんにもこの状況にも少しだけ慣れだした所為で、逆にこの沈黙がきつい。
矢印をいくつか通り過ぎる。

徐々に、歩いている道に机などが現れるようになってきた。
まるで学校の中にいるみたいだ。

125 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/11/18(日) 02:45:00 ID:2BfBrE7o0

( ^ω^)「クーさんは、学校とかあるんですかお?」

川 ゚ -゚)「え、学校ですか?」

いやいくら沈黙がきついからって何を聞いてるんだ。
死神だぞ。バカか。僕はバカか。あるわけがないだろ。

( ;^ω^)「す、すみませんお。その格好とか机やらを見てたらつい」

川 ゚ -゚)「まぁ、ありましたね」

あるんかい。
でも意外だな。どんな学校だったんだろう。

( ^ω^)「へぇ、死神の学校って何だか凄そうですお。楽しいところなんですかお?」

川 ゚ -゚)「やはり授業は退屈でしたね。ですけど、ツンデレ……私の友人なのですが、彼女のおかげで楽しかったですよ」

( ^ω^)「へぇ、ツンデレさん。どんな人……人?なんですかお?」

川 ゚ -゚)「感情の激しい方で、可愛いものには目がない子でしたね。今は江戸川区担当なんですが、元気かなぁ」

死神って担当してる地域あるんだ……。
っていうかクーさん意外と喋るんだな。きまずかった空気も随分と良くなってきた。

( ^ω^)「おっおっおっ」

川 ゚ -゚)「どうかしましたか?」

126 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/11/18(日) 02:45:42 ID:2BfBrE7o0

( ^ω^)「いや、クーさんはその友達の事が大切なんだなっていうのが凄く伝わってきて」

川 ゚ -゚)「そうですかね」

( ^ω^)「そうですおー」

もう何本目ぐらいだろうか。矢印の看板も大分通り過ぎてきた。
クーさんとの会話も大分弾んできていて、あぁ何だか青春している。夢だった学園ライフって、こういうのだったな。
……僕の学校での生活って、どんなだったっけ。こういうのに憧れて、アレ、じゃあつまりこういうのには無縁で。
むしろ悲惨で、アレ、そうだ、たしか、殴られて蹴られて無視されて脅されて折られて泣かされて─────






──────────頭部の違和感が、不愉快に






(   ω )「おえええぇぇぇ!!!! 」

川 ゚ -゚)「大丈夫ですか?」

クーさんが背中を摩る。だけどそれも不愉快で、背中の傷が痛くなってクーさんの手をはじく。
思い出した。僕が、死んだ記憶。そして理由。
僕は。


(   ω )「自殺……」

川 ゚ -゚)「えぇ、そうです」

128 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/11/18(日) 02:46:23 ID:2BfBrE7o0

(   ω )「クーさん、一つ聞いて良いですかお?」

川 ゚ -゚)「何ですか?」

(  ω^)「この矢印の反対へ進んだら」

川 ゚ -゚)「現世に行けますよ。浮遊霊となって」

川 ゚ -゚)「恨みも、晴らすことが出来ますよ」

( ゚ω゚)「そうですかお。じゃあ、僕は」

川 ゚ -゚)「ですが、ダメです」

( ゚ω゚)「邪魔するんですかお?案内だけじゃないんですかお?」

川 ゚ -゚)「えぇ。私は案内しか出来ません。ですが内藤さん」

川 ゚ -゚)「あなたはまだ全ての記憶を思い出していない」

川 ゚ -゚)「思い出してください。あなたの学校生活で、大切だったのを」

( ゚ω゚)「大切なのなんて────

また、違和感が頭部に。
それは痛みのような、痒みのような、うずまいているような、両手で頭を押さえる。
そして違和感が一層強まったとき、

129 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/11/18(日) 02:47:04 ID:2BfBrE7o0

川 ゚ -゚)「思い出すんだ。内藤ホライゾン」

川 ゚ -゚)「君が大切だったのを、忘れてはいけないものを」



('A`)『おう、飯一緒に食べようぜブーン』


( ゚ω゚)「あ……」

忘れてはいけなかった友人を、僕を悪口でなくあだ名で呼ぶたった一人の友人を、僕は思い出した。

(   ω )「あああああああああああああああああああああああ!!!!!! 」


('A`)『あいつらの事なんか気にするなって! それよりゲーセン行くぞ! 俺が奢ってやるよ!! 』
('A(;;)『おう、財布見つけたぞ。え?これ?転んだだけだよwwwwwお前は気にすんなwww』
('A`)『俺さー、お前と同じ学校で良かったと思ってるよ。趣味も合うし、気が楽だし』
('A`;)『おいヤベーって! このエロゲヤベーって! え、なんでそんな顔すんだよ! おい! 』
('A`)『テスト勉強した?俺?全然してねーよ。昨日も3時間しか寝てないし。え、勉強してないって』



('∀`)『 じゃあなーブーン! また明日な!! 』



(  ω )「ドクオ……」

131 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/11/18(日) 02:48:34 ID:2BfBrE7o0

川 ゚ -゚)「思い出しましたか?」

(  ω )「ぼ、僕には友達がいたんだお……優しくて、ちょっとエロくて、面白くて」

(  ω )「そして、いつも一緒にいてくれて」

( ;ω;)「なのに、なのに僕は、僕は!!!! 」

( ;ω;)「でも! 許せないお! 僕を追い詰めたあいつらを! 殺せるなら喜んで殺してやるんだお! 」

川 ゚ -゚)「……現世まで案内しますよ」

( ;ω;)「え?」

クーさんはスタスタと反対方向へと歩き出す。
一瞬呆けてた僕は、慌ててクーさんの後を追いかけた。

川 ゚ -゚)「私は案内するだけ。死神は、それしか出来ません」

川 ゚ -゚)「しかし、死神の役目はそれだけじゃありません」

川 ゚ -゚)「魂を救える道に、案内するんです」

同時に、彼岸花だらけだった景色が見慣れた景色へと変わる。
僕がいるのはその景色の上、空であった。
どうやら現世……についたらしい。反対方向に進んだ割りに、早く辿り着いたように思えた。

川 ゚ -゚)「こっちです」

スゥっと滑るように進むクーさん。
僕は思うように進めず、泳ぐようにその後を追いかけた。

132 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/11/18(日) 02:49:45 ID:2BfBrE7o0

そして辿り着いたのが、墓地であった。
僕の前に、内藤家ノ墓という墓石がある。
そして、

('A`)「よう、来たぜ」

( ^ω^)「ドクオ……」

川 ゚ -゚)「……」

('A`)「なんつーかよ、死んでんじゃねーよ、おい」

( ^ω^)「……ごめんお」

('A`)「俺一人にすんなよなー。話相手いなくてつまんねーんだよ」

( ^ω^)「ごめんお」

('A`)「エロゲの話、お前としか出来なかったんだぞ?」

( ^ω^)「僕もだお」

('A`)「お前のかーちゃんの弁当、旨かったなぁ」

( ^ω^)「ドクオの弁当も、美味しかったお」

('A`)「昼休みにトランプもしたっけなぁ」

( ^ω^)「ドクオがイカサマしてたの、僕知ってたお」

134 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/11/18(日) 02:51:38 ID:2BfBrE7o0

('A`)「放課後はゲーセンに行ったな。お前弱かったなぁ」

( ^ω^)「…… 」

('A`)「休日は適当にどっちかの家行ったりさ」

('A )「適当にさ、遊び行ったり」

('A )「もっと遊びたかった」

('A;)「もっとトランプやりたかった」

('A;)「これからも、くだらない話をしたかったなぁ」

(;A;)「どっか遠いとこに旅行もしたかった! 」

(;A;)「もっとお前と話がしたかった!! 」

(;A;)「もっと、もっともっともっともっと!!! お前といたかった!!!! 」

(;A;)「ごめんなぁ、イジメ止められなくてよぉ」

(;A;)「くそ!! 何でだよぉ!!! 何で勝手に死んでんだよバカヤロウ!!!! 」

(;A;)「ふざけんじゃねぇぞ!!! ブーン!!!!!! 」

(;A;)「俺が死ぬまで待ってろよてめぇ! 来世でまた友達になってやるよ!!! 」

135 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/11/18(日) 02:52:31 ID:2BfBrE7o0

(   ω )「クー、さん」

川 ゚ -゚)「はい」

( ;ω;)「僕、バカだったお」

( ;ω;)「あんな風に泣いてくれる人がいたのに」

( ;ω;)「もう、話すことも出来ないんだお」

( ;ω;)「ドクオと、もう会えないんだお」

( ;ω;)「もっと、一緒に、いたかったなぁ」

川 ゚ -゚)「……はい」

137 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/11/18(日) 02:53:15 ID:2BfBrE7o0

川 ゚ -゚)「内藤さんには今、選択肢があります」

あの後もう一度、彼岸花だらけの場所まで僕達は来た。
目の前には2つの道がある。

川 ゚ -゚)「この矢印の通りに行けば、内藤さんは転生します。何時になるかは、わからないですが」

川 ゚ -゚)「もしかしたらすぐにでも転生するかもしれませんし、50年、100年後かもしれません」

川 ゚ -゚)「そして反対側へいけば、現世で浮遊霊となります」

川 ゚ -゚)「浮遊霊となれば、人にも手を出せます。しかし、手を出せば魂は穢れて転生は出来ません」

川 ゚ -゚)「何もしなくても、現世に長く居ること自体が罪です。魂は時間とともに穢れ、自我も失うでしょう」

川 ゚ -゚)「私が案内できるのは、ここまでです」

138 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/11/18(日) 02:54:44 ID:2BfBrE7o0

( ^ω^)「クーさん」

川 ゚ -゚)「なんですか?」

( ^ω^)「ありがとうございますお。死んだ時の記憶、恨み辛みがそのままだったら僕は迷わず現世に行ってましたお」

( ^ω^)「……このままここにいるっていうのは」

川 ゚ -゚)「すみません、それは出来ません」

( ^ω^)「そうですかお……わかりましたお」

( ^ω^)「……僕は、転生への道を行きますお」

川 ゚ -゚)「わかりました」

そうして、僕は矢印の通りに足を進める。
後ろには、クーさんが付いてきてくれた。
しばらく歩いていると、大きな扉に辿り着いた。どうやら、ここが最終地点のようだ。

川 ゚ -゚)「……最後に何か、ありますか?」

( ^ω^)「お?じゃあ……一つだけ」

川 ゚ -゚)「はい」

( ^ω^)「もしも、ドクオを虐めるような奴が出たら懲らしめてやってくださいお」

ダメもとで、クーさんにそんな事を頼んでみる。

139 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/11/18(日) 02:55:33 ID:2BfBrE7o0

川 ゚ -゚)「わかりました。良いですよ」

良いのかよ。あっさりと了承されて、少し拍子抜けしてしまった。

川 ゚ -゚)「手は出せませんからね、不幸に会う様願いますよ」

( ^ω^)「死神がですかお?」

川 ゚ -゚)「死神だからですよ。効果は期待できると思いますよ」

( ^ω^)「おっおっおっおっ。頼もしいですお」

ひとしきり笑うと、僕はドアを開ける。
思っていたよりもドアは軽く開かれ、そこには真っ白な道が続いていた。

( ^ω^)「それじゃ、これで」

川 ゚ -゚)「はい」

( ^ω^)「ありがとう、クーさん」

僕はクーさんに別れを告げると、真っ白な道へと足を運び

川 ゚ -゚)「来世では、良い人生を」

そんな死神の頼もしい言葉を背に受けて、僕は──────


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